(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】クロック切替え装置
(51)【国際特許分類】
H03L 7/14 20060101AFI20221221BHJP
H03L 7/08 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
H03L7/14 130
H03L7/08 210
(21)【出願番号】P 2021199376
(22)【出願日】2021-12-08
(62)【分割の表示】P 2018000732の分割
【原出願日】2018-01-05
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091513
【氏名又は名称】井上 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 薫
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-113718(JP,A)
【文献】特開昭63-287206(JP,A)
【文献】特開平09-064731(JP,A)
【文献】特開平09-018306(JP,A)
【文献】特開2006-287736(JP,A)
【文献】特開平04-043717(JP,A)
【文献】特開平10-013226(JP,A)
【文献】特開昭63-142715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F1/04-1/14
H03K5/00-H03K5/26
H03L1/00-9/00
H04L7/00-7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のクロックをn(nは偶数)逓倍する第1の逓倍回路と、
前記第1のクロックが途絶えたときに切り替えて使用される第2のクロックを
逓倍する第2の逓倍回路と、
前記n逓倍され
た後の第1のクロックの周波数
と同じ周波数である検出用のクロックを動作クロックとして、前記第1のクロックの有無を検出する検出回路と、
前記検出回路により第1のクロックが途絶えたことを検出したときに出力される検出信号により、第1のクロックが途絶えた後も自走する前記第1の逓倍回路の出力から第2の逓倍回路の出力に切り替える選択回路と、
前記選択回路の後段に配置され、当該選択回路から出力されるパルスをカウントするカウンタを含み、カウントしたカウンタ値に基づいて、前記選択回路から出力されるクロックを1/nに分周する分周回路と、を備え
、
前記第1の逓倍回路から出力される第1のクロックの周波数と第2の逓倍回路から出力される第2のクロックの周波数とが同じであり、
前記検出回路は、前記第1のクロックの有無を検出することに加えて、前記第2のクロックの有無を検出するように構成され、
前記検出用のクロックは、前記選択回路に入力され、
前記選択回路は、前記検出回路が前記第1のクロック及び第2のクロックが途絶えていることを検出したときに出力される検出信号により、前記検出用のクロックを選択して前記分周回路に出力することを特徴とするクロック切替え装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のクロック及び第2のクロックの一方が断になったときに他方に切り替える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば放送電波を発する基地局では、クロック(クロック信号)により例えばDDS(Direct Digital Synthesizer)を介して搬送波を生成し、例えばOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)などのベースバンド信号により変調を行って情報を送信している。このシステムに用いられるクロックとしては、基地局内の上位システムに設けられている、例えばVCXO(Voltage Controlled Crystal Oscillator:電圧制御発振器)から配信されるクロックを参照クロックとするPLL(Phase Locked Loop)回路の出力信号が用いられる。
【0003】
またVCXOの出力周波数が環境温度により変化すると、送信する映像や音声が歪むなどの不具合が生じるため、基地局の外から配信される極めて周波数が安定しているクロック、例えばRb(ルビジウム)発振器から出力されるクロック(高安定クロック)の周波数とVCXOから出力されるクロックの周波数とを比較し、その周波数差をベースバンド変調部に送信している。ベースバンド変調部では、前記周波数差によりDDSの読み出しクロックを補正し、VCXOの出力周波数の変動の影響を抑えるようにしている。
そしてVCXOから配信される第1のクロックと既述の高安定クロックである第2のクロックとをセレクタ(選択回路)に入力し、第1のクロックが途絶えたとき(断の状態になったとき)には、セレクタにより第2のクロックに切り替えて運用が停止しないようにしている。
【0004】
また前記PLL回路やセレクタなどを含むユニットには、第1のクロック供給用の信号ケーブル及び第2のクロック供給用の信号ケーブルを介して夫々第1のクロック及び第2のクロックが供給される。このためユニットの設置場所を変更するときなどにおいて例えば両ケーブルが抜かれることがあり、その場合には、PLL回路中のVCXOの制御電圧を所定値に固定して、クロックが途絶えないようにしている。なお、ユニットの位置を変更しない場合であっても、オペレータが誤って例えば第1のクロック供給用の信号ケーブルをユニットから抜くと、第1のクロックが途絶えた状態になる。
【0005】
以上述べたシステムにおいては、次のような課題がある。
第1のクロックが途絶えて第2のクロックに切り替わるまでの一瞬の間、PLL回路への参照クロックの供給が停止し、このためPLL回路の位相比較回路において位相の不一致が発生し、VCXOへ供給する周波数制御信号が大きく変動してしまう。この結果、PLL回路の出力信号である、ベースバンド変調部に供給する動作クロックの周波数も大きく変動し、画像信号や音声信号が著しく劣化してしまう。
また両クロックが途絶えたときに、PLL回路を固定値制御として動作させた場合、どちらかのクロックが復帰してPLL回路がオープンループからクローズループに戻ったときに、固定値とされている電圧値から再度周波数の引き込みが始まる。このためPLL回路の出力周波数が一時的に大きく変動し、同様の問題が起こる。
【0006】
特許文献1には、PLL回路の参照クロックである基準クロックが断になったときに、予備の発振器からのクロック信号BCをM分周したクロック信号MCに切り替える技術が記載されている。この技術においては、クロック信号MCは、PLL回路のN分周回路によってN分周されたクロック信号NCに位相制御されている。
しかしながら特許文献1の技術においては、基準クロック信号RCが断になったときに位相比較回路15へのクロック信号の入力が一瞬途絶えるため、N分周されたパルス信号の位相が本来の位相とずれ、結局PLL回路の出力信号の周波数が大きく変動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、第1のクロックの入力が途絶えたことにより第2のクロックに切替えるときに、クロックの変動を抑えることのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のクロック切替え装置は、第1のクロックをn(nは偶数)逓倍する第1の逓倍回路と、
前記第1のクロックが途絶えたときに切り替えて使用される第2のクロックを逓倍する第2の逓倍回路と、
前記n逓倍された後の第1のクロックの周波数と同じ周波数である検出用のクロックを動作クロックとして、前記第1のクロックの有無を検出する検出回路と、
前記検出回路により第1のクロックが途絶えたことを検出したときに出力される検出信号により、第1のクロックが途絶えた後も自走する前記第1の逓倍回路の出力から第2の逓倍回路の出力に切り替える選択回路と、
前記選択回路の後段に配置され、当該選択回路から出力されるパルスをカウントするカウンタを含み、カウントしたカウンタ値に基づいて、前記選択回路から出力されるクロックを1/nに分周する分周回路と、を備え、
前記第1の逓倍回路から出力される第1のクロックの周波数と第2の逓倍回路から出力される第2のクロックの周波数とが同じであり、
前記検出回路は、前記第1のクロックの有無を検出することに加えて、前記第2のクロックの有無を検出するように構成され、
前記検出用のクロックは、前記選択回路に入力され、
前記選択回路は、前記検出回路が前記第1のクロック及び第2のクロックが途絶えていることを検出したときに出力される検出信号により、前記検出用のクロックを選択して前記分周回路に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、第1のクロックをn逓倍する第1の逓倍回路及び第2のクロックを逓倍する第2の逓倍回路を設け、検出回路が第1のクロックの断を検出したときに選択回路により第1の逓倍回路の出力から第2の逓倍回路の出力に切替えるようにしている。第1の逓倍回路は、入力信号である第1のクロックが途絶えた後も自走する(逓倍されたクロックがしばらくの間出力される)ため、自走している間に第2のクロックに切替えることで、クロックが消失することがない。そして選択回路の後段に、カウンタを含むと共にカウントしたカウンタ値に基づいて、選択回路から出力されるクロックを1/nに分周する分周回路を設けているため、クロックの切替え前後のクロックの位相差は、選択回路に入力されたクロックの1周期分よりも小さく抑えられる。従って第1のクロックが途絶えてクロックが切り替わるときのクロックの変動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のクロック切替え装置の実施形態の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】セレクタに入力されるクロックの有無とセレクタにより選択されるクロックとの関係を示す説明図である。
【
図3】
図1に示すクロック切替え装置の各部のタイムチャートである。
【
図4】
図3に示すタイムチャートの一部を拡大して示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るクロック切替え装置を含む放送機器を示すブロック図であり、放送機器は例えば放送用の基地局に設けられている。クロック切替え装置は、第1のクロックをn(nは偶数)逓倍する逓倍器を構成する第1の逓倍回路1と、前記第1のクロックが途絶えたときに切り替えて使用される第2のクロックをn逓倍する逓倍器を構成する第2の逓倍回路2と、を備えている。この実施形態においては各逓倍回路1、2はクロックを8逓倍するように構成されている。
第1のクロックは、放送機器の上位装置に設けられているVCXOから出力される信号であり、信号ケーブルを介して放送機器に送られる。第2のクロックは、第1のクロックよりも周波数安定性が高いクロック、例えば基地局の外部に設けられているRb発振器から配信される信号であり、信号ケーブルを介して放送機器に送られる。なお、第1のクロックは以後の説明では、従属同期クロックと呼ぶ場合もある。
【0013】
図1中の31はTCXOであり、第1のクロック及び第2のクロックが途絶えたことを検出する、即ちクロックの断を検出するための検出用のクロックを出力する。この例では、第1のクロック及び第2のクロックのいずれもが途絶えたときにTCXO31のクロックを後述のPLL回路の参照クロックとして使用することから、TCXO31のクロックは第2のクロックと同じ周波数に設定されている。またこの例では、TCXO31のクロックの環境温度に対する周波数安定性は、第1のクロックの周波数安定性よりも劣っている。
3は、逓倍器を構成する第3の逓倍回路であり、検出用のクロックの周波数を少なくとも第1のクロックの周波数の2倍以上の周波数とするためのものである。この例では、第3の逓倍回路3は、検出用のクロックを8逓倍するように構成されている。なおTCXO31から出力されたクロックは、逓倍前後のいずれにおいても検出用のクロックと呼ぶものとする。
【0014】
4は、クロック断検出回路であり、第1の逓倍回路1に入力される第1のクロック及び第2の逓倍回路2に入力される第2のクロックを取り込み、これらのクロックの断を検出する(クロックが途絶えているか否かを判定する)ために設けられている。クロック断検出回路4は、第3の逓倍回路3により8逓倍された検出用のクロックを動作クロックとし、第1のクロック及び第2のクロックの断の有無を判定している。具体的には、動作クロックの5クロック以上の間、第1のクロック(第2のクロック)の「L」レベルが続いた場合、あるいは第1のクロック(第2のクロック)が「L」レベルから「H」レベルに移行した後、動作クロックの4クロック以内に、第1のクロック(第2のクロック)が「H」レベルから「L」レベルに移行した場合にクロック断と判定する。
【0015】
クロック断検出回路4は、例えば各々ロジック回路からなる第1のクロックの断検出部、第2のクロックの断検出部を備えており、各断検出部はクロックが有るときには「0」がクロック切替え信号として出力され、クロックが無いとき(断であるとき)には「1」がクロック切替え信号として出力されるように構成されている。従ってクロック断検出回路4からは2ビットの信号線をなす2本のビット線を介して「0、0」(第1のクロック及び第2のクロックのいずれもが入力されているとき)、「1、0」(第1のクロックが断であるとき)、「0、1」(第2のクロックが断であるとき)、「1、1」(第1のクロック及び第2のクロックのいずれもが入力されているとき)のいずれかの信号がクロック切替え信号として出力される。
【0016】
5は選択回路(セレクタ)、6は分周回路である。選択回路5は、第1の逓倍回路1~第3の逓倍回路3の各出力信号路の中から一つを選択して分周回路6の入力端に接続するように、言い換えれば各逓倍回路1~3から送られる、逓倍された各クロック(第1のクロック、第2のクロック、TCXO31からのクロック)のいずれかを選択して分周回路6に送るように構成されている。選択回路5における前記出力信号路の選択は、クロック断検出回路4から出力される既述のクロック切替え信号に基づいて行われる。
【0017】
選択回路5は、第1のクロックが第1の逓倍回路1に入力されている場合、即ちクロック切替え信号が「0、0」あるいは「0、1」であるときには、第1の逓倍回路1の出力端が選択され、第1のクロックが断かつ第2のクロックが第2の逓倍回路2に入力されている場合、即ちクロック切替え信号が「1、0」であるときには、第2の逓倍回路2が選択され、両クロックが断である場合、即ちクロック切替え信号が「1、1」であるときには、第3の逓倍回路3が選択されるように構成されている。
図2は、第1のクロック及び第2のクロックの有無と選択回路5で選択されたクロックとの関係を示している。
【0018】
分周回路6は、この例では選択回路5により選択されたクロックをカウントする3ビットのカウンタを備えており、カウンタのカウンタ値のMSB(最上位ビット)を出力するように構成されている。カウンタは、十進法で0から7までの値を出力することから、MSBはカウント値が0~3までは「0」、カウント値が4~7までは「1」であり、従ってMSBは、分周回路6に入力されたクロックを1/8に分周されたクロックに相当する。なお、分周回路6においては、カウンタ値のMSBをそのまま出力させてもよいが、反転させて出力させてもよい。反転の有無については、本実施形態の作用、効果に何ら影響を与えるものではないが、後述の
図3のタイムチャートでは、MSBを反転させた信号をPLL回路の参照クロックとしている。
分周回路6は、このような構成に限られるものではなく、選択回路5から出力されるクロックの周波数を逓倍前の周波数に、即ち1/n(この例では1/8)に分周する構成であれば、上述の構成に限られるものではない。
【0019】
分周回路6の後段には、PLL回路7が設けられている。PLL回路7は、分周回路6から出力されるクロックを参照クロックとして、VCXO71の出力信号の周波数を分周回路72にて1/Nに分周した信号と参照クロック(参照信号)との位相を位相比較部73にて比較し、その比較量に応じた制御電圧によりVCXO71の出力周波数を制御するように構成されている。
【0020】
81は、ベースバンド変調部であり、PLL回路7から出力される出力信号をクロックとして、このクロックに対応する搬送波にベースバンド送信信号を載せて高周波変調部82を介して送信するための回路部である。ベースバンド変調部81には、クロックをアナログ波として出力するために例えば「背景技術」の項目にて述べたようにDDSが設けられている。
第1のクロックに説明を戻すと、第1のクロックは第2のクロックに比べて周波数の安定性が低いことから、例えば環境温度により周波数が変動することから、補正値算出回路83にて第1のクロックと第2のクロックとの周波数差を検出し、検出した周波数差を用いてDDSの動作を補正している。具体的には、PLL回路7から出力されたクロックの周波数を前記周波数差に対応する補正値により補正して、即ち第1のクロックの周波数が第2のクロックの周波数よりも高い場合(低い場合)には補正値だけ差し引いて(加算して)、DDSの動作を安定化させ、送信信号の劣化を抑えている。
またこの例では、第1のクロック及び第2のクロックが断になったときに(途絶えたときに)、TCXO31の出力信号をクロックとして使用することから、TCXO31の出力信号を第1のクロックに同期させるための周波数同期回路32が設けられている。周波数同期回路32は、例えばTCXO31と共にPLL回路を構成するように、TCXO31の出力を分周する分周器、当該分周器からの周波数信号と第1のクロックとの位相を比較する位相比較器などを備えている。なお、周波数同期回路32は、設けなくともよい。
【0021】
次に上述の実施形態の作用について説明する。今、例えば基地局内の上位装置に設けられたVCXOから送られる第1のクロック(従属同期クロック)、Rb発振器から送られる第2のクロック、及び
図1に示す放送機器の近くに設置されているTCXO31から送られる第3のクロックが夫々逓倍回路1~3に入力されているものとする。この場合には、クロック断検出回路4の2ビットのクロック切替え信号は、「0、0」であることから、選択回路5では、第1の逓倍回路1にて8逓倍された第1のクロックが選択されている。そして第1のクロックが分周回路6に送られ、8分周されて逓倍前の元の周波数に戻り、PLL回路7の位相比較器73に参照クロックとして入力される。
そしてPLL回路7から出力された周波数信号がクロックとしてベースバンド変調部81に入力され、このクロックの周波数が補正値算出回路83から得られる補正値により補正され、補正後のクロックに基づいて生成された搬送波にベースバンド送信信号が載せられて送信される。
【0022】
続いて第1のクロックが断になったときのクロックの切替えの様子を
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3において、各信号のタイムチャートごとに付した符号(a)、(b)等は、
図1に示した符号(a)、(b)等に対応しており、また
図3の下部に信号の説明を記載している。
図4は、クロックの切替わりのタイミング付近を拡大して示したタイムチャートである。
時刻t0にて第1のクロックが断になったとすると、クロック断検出回路4では、例えば第1のクロックを8逓倍した周波数に相当する第3の逓倍回路3からの検出用クロックの5個分に対応する時間以上の間、第1のクロックの信号ラインのレベルが「L」レベルとなっているため、第1のクロックが断になったと判断する。なお、
図3の例では、クロック断の検出に対してマージンをとっており、検出用クロックが9個入力される間、第1のクロックの信号ラインのレベルが「L」レベルとなっていることにより、時刻t1にてクロック切替え信号が「1、0」に切り替わる。なお、
図3の(e)では便宜上、切り替え前を「L」レベル、切り替え後を「H」レベルで表している。
一方、第1の逓倍回路1はクロックの入力が途絶えた後、しばらく自走しており(8逓倍のクロックが出力され)、従ってクロック切替え信号が「1、0」に切り替わるタイミング(時刻t1)の直前においても、選択回路5には、第1の逓倍回路1にて8逓倍された第1のクロックが入力されている。既述のように分周回路6内のカウンタのカウンタ値が「0」または「7」になったときに分周回路6の出力信号のレベルが「L」レベルから「H」レベルに変わるため、
図3の例において、カウンタ値が「5」のときに、クロック切替え信号が「1、0」に切り替わったとすると、このタイミングでは、(i)に示すようにPLL回路7に入力される参照クロックのレベルは「L」である。
そして時刻t1にて選択回路5にて選択されるクロックは、第1のクロックから第2のクロックに切り替わり、時刻t1以降に初めて分周回路6に入力されたクロックにより、分周回路6内のカウンタのカウンタ値が「5」から「6」にカウントアップされ、続く第2のクロックによりカウンタ値が、「7」になって、分周回路6の出力信号のレベルが「L」レベルから「H」レベルに変わる。
【0023】
従って、各々8逓倍された第1のクロックと第2のクロックとの位相差の分だけ、カウント値が「5」を維持する時間がこの例では短くなる。このため本来の参照クロック(第1のクロックの断がない場合の参照クロック)と実際の参照クロック(第1のクロックの断が発生して第2のクロックに切り替わった場合の参照クロック)との間で位相差Δtが生じる。しかしながらこの位相差Δtは、逓倍前の第2のクロックの1/8の位相差以内に抑えられ、従ってPLL回路7の出力周波数の変動が抑えられる。
【0024】
また、第2のクロックに切り替わって運用している間であって、第1のクロックが未だ復帰していないときに、第2のクロックの断が発生すると、クロック断検出回路4から出力されるクロック切替え信号は「1、1」となるので、選択回路5は、TCXO31から出力される検出用クロックであって、第3の逓倍回路3にて8逓倍されたクロックが選択される。この場合においても第2のクロックが断になった後も第2の逓倍回路2が自走することから、同様にして分配回路6のカウントの対象となるクロックが第2のクロックから検出用のクロックに切り替わり、分周回路6の出力レベルがカウンタ値に応じて「H」レベルまたは「L」となる。従って同様にPLL回路7の出力周波数の変動が抑えられ、第1のクロック及び第2のクロックのいずれもが断になったときにPLL回路7を「背景技術」の項目にて述べた固定電圧制御モードとする場合に比べて、格段に有利である。
なお第3の逓倍回路3はの逓倍数は「8」に限られるものではなく、2倍以上の周波数に逓倍するものであればよい。
【0025】
以上述べたように上述実施の形態によれば、第1のクロック及び第2のクロックを夫々n逓倍すると共に、逓倍回路1(2)の入力が途絶えた後も自走することを利用し、分周回路6のカウンタ値に基づいて選択回路5から出力されるクロックを1/nに分周しているため、クロックの切替え前後のクロックの位相差を小さく抑えられる。クロックが切り替わるときのクロックの変動を極力抑えることが要請されている、例えば放送電波を発する基地局におけるベースバンド変調を行う場合に使用するクロックの切替えにあたって本発明を適用することは極めて有用である。
【符号の説明】
【0026】
1~3 逓倍回路
31 TCXO
4 クロック断検出回路
5 選択回路
6 分周回路
7 PLL回路
71 VCXO
73 位相比較器
81 ベースバンド変調部