IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベイジンウェスト・インダストリーズ・カンパニー・リミテッドの特許一覧

特許7198337油圧ストロークストップ構造を備える油圧サスペンションダンパ
<>
  • 特許-油圧ストロークストップ構造を備える油圧サスペンションダンパ 図1
  • 特許-油圧ストロークストップ構造を備える油圧サスペンションダンパ 図2
  • 特許-油圧ストロークストップ構造を備える油圧サスペンションダンパ 図3
  • 特許-油圧ストロークストップ構造を備える油圧サスペンションダンパ 図4
  • 特許-油圧ストロークストップ構造を備える油圧サスペンションダンパ 図5a
  • 特許-油圧ストロークストップ構造を備える油圧サスペンションダンパ 図5b
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】油圧ストロークストップ構造を備える油圧サスペンションダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/58 20060101AFI20221221BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20221221BHJP
   F16F 9/49 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F16F9/58 A
F16F9/34
F16F9/49
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021208162
(22)【出願日】2021-12-22
(65)【公開番号】P2022106664
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】202110018285.1
(32)【優先日】2021-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】17/485,459
(32)【優先日】2021-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510288840
【氏名又は名称】ベイジンウェスト・インダストリーズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BEIJINGWEST INDUSTRIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.85 Puan Road,Doudian Town,Fangshan District,Beijing,The People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100175617
【弁理士】
【氏名又は名称】三崎 正輝
(72)【発明者】
【氏名】マレック カロル コントニー
(72)【発明者】
【氏名】ラファル コンラッド キヴィオール
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-101825(JP,A)
【文献】特開2017-072246(JP,A)
【文献】特開2015-161404(JP,A)
【文献】特開2015-068428(JP,A)
【文献】国際公開第2018/155339(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/002595(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0009840(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/58
F16F 9/34
F16F 9/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ダンパであって、
作動液が充填されたチューブと、
前記チューブ内において軸に沿って摺動可能に配置されて前記チューブを反発チャンバと圧縮チャンバとに分割するメインピストンアッセンブリであって、前記油圧ダンパの反発および圧縮ストロークの際に前記チューブ内の前記作動液の流れを制御する反発・圧縮バルブアッセンブリを有するメインピストンアッセンブリと、
前記メインピストンアッセンブリに取り付けられるとともに封止ピストンロッドガイドを通って前記油圧ダンパの外部に案内されるピストンロッドと、
を備える油圧ダンパであって、
前記チューブの少なくとも一端部には追加のストロークストップ構造が配置されており、
前記ストロークストップ構造は、
前記チューブの直径より直径が小さく、前記チューブへの入口開口部を有する狭窄部分であって、断面積が前記狭窄部分に沿って前記入口から減少していく少なくとも一つの軸方向溝が少なくとも部分的に形成される狭窄部分と、
前記チューブの直径より直径が小さく、前記メインピストンアッセンブリとともに移動可能であり、さらなる減衰力を生成するよう前記狭窄部分において摺動可能に配置されるように構成される追加ピストンアッセンブリと、
を備えており、
前記追加ピストンアッセンブリは、
前記メインピストンアッセンブリに対して遠位側で前記ピストンロッドに固定されるプラスチック・リングガイドと、
前記リングガイドによって案内され、前記チューブの前記狭窄部分の内壁と摺動嵌合するよう構成される、環隙間を有するリングと、
前記メインピストンアッセンブリに対して近位側で前記ピストンロッドに固定される保持部材と、
を備えており、
前記リングは、径方向隙間を空けて前記リングガイドの内側軸方向リムを囲繞するとともに、前記保持部材と前記リングガイドの保持面との間で軸方向に移動可能であり、
前記内側軸方向リムは、前記保持面によって形成される少なくとも一つの径方向チャネルと流体連通状態にある少なくとも一つの環状チャネルを形成しており、
前記リングガイドは、前記ピストンロッドにおける環状スロットと係合し、前記リングガイドを前記ピストンロッドに係止するよう径方向内側に前記軸に向かって延設される少なくとも一つの固定突起を有しており、
前記少なくとも一つの固定突起は、前記リングガイドの前記内側軸方向リムに配置されており、
前記少なくとも一つの固定突起の高さは、前記リングガイドの前記内側軸方向リムと前記リングとの間の前記径方向隙間より大きい、
油圧ダンパ。
【請求項2】
前記少なくとも一つの固定突起は、前記リングガイドの前記内側軸方向リムの、前記メインピストンアッセンブリに対する近位側の端部に配置されている、
請求項1に記載の油圧ダンパ。
【請求項3】
前記少なくとも一つの径方向チャネルは、前記保持面によって形成される少なくとも2つの径方向チャネルを有しており、前記少なくとも2つの径方向チャネルは、前記内側軸方向リムの周囲で流体連通するよう接続されている、
請求項1または2に記載の油圧ダンパ。
【請求項4】
前記少なくとも一つの径方向チャネルは、少なくとも2つの径方向チャネルを有しており、
前記保持面は、前記少なくとも2つの径方向チャネルのうちの2つの間に環状部分を形成しており、前記環状部分の幅は、前記リングの前記環隙間より大きい、
請求項1または2に記載の油圧ダンパ。
【請求項5】
前記保持面は、前記径方向チャネルの間に環状部分を形成しており、前記環状部分の幅は前記リングの前記環隙間より大きい、
請求項3に記載の油圧ダンパ。
【請求項6】
前記チューブの前記狭窄部分は、インサートの態様である、
請求項1に記載の油圧ダンパ。
【請求項7】
前記インサートはプラスチック製である、
請求項6に記載の油圧ダンパ。
【請求項8】
前記チューブの前記狭窄部分は、プラスチック製のインサートの態様である、
請求項2から5のいずれか1項に記載の油圧ダンパ。
【請求項9】
前記ストロークストップ構造は、反発ストロークストップ構造である、
請求項1から8のいずれか1項に記載の油圧ダンパ。
【請求項10】
前記油圧ダンパは、ツインチューブダンパである、
請求項1から9のいずれか1項に記載の油圧ダンパ。
【請求項11】
前記油圧ダンパは自動車用油圧サスペンションダンパである、
請求項1から10のいずれか1項に記載の油圧ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油圧ダンパに関し、特にチューブとメインピストンアッセンブリとピストンロッドとを有する自動車用油圧サスペンションダンパに関する。チューブには作動液が充填される。メインピストンアッセンブリは、チューブ内において軸に沿って摺動可能に配置されてチューブを反発チャンバと圧縮チャンバとに分割する。メインピストンアッセンブリは、ダンパの反発および圧縮ストロークの際にチューブ内の作動液の流れを制御する反発・圧縮バルブアッセンブリを有する。ピストンロッドは、メインピストンアッセンブリに取り付けられるとともに、封止ピストンロッドガイドを通してダンパの外部に案内される。さらに、チューブの少なくとも一端部にはストロークストップ構造が配置される。ストロークストップ構造は、狭窄部分と追加ピストンアッセンブリとを有する。狭窄部分は、チューブの直径より直径が小さく、チューブへの入口開口部を有する。断面積が狭窄部分に沿って入口から減少していく少なくとも一つの軸方向溝が、狭窄部分に、少なくとも部分的に形成される。追加ピストンアッセンブリの直径は、チューブの直径よりが小さい。追加ピストンアッセンブリは、メインピストンアッセンブリとともに移動可能であり、さらなる減衰力を生成するよう狭窄部分において摺動可能に配置されるように構成されている。追加ピストンアッセンブリは、プラスチック・リングガイドとリングと保持部材とを有する。プラスチック・リングガイドは、メインピストンアッセンブリに対して遠位側でピストンロッドに固定される。リングは、環隙間を有し、リングガイドによって案内されるとともに、チューブの狭窄部分の内壁と摺動嵌合するよう構成される。保持部材は、メインピストンアッセンブリに対して近位側でピストンロッドに固定される。リングは、径方向隙間を空けてリングガイドの内側軸方向リムを囲むとともに、保持部材とリングガイドの保持面との間で軸方向に移動可能である。内側軸方向リムは、保持面によって形成される少なくとも一つの径方向チャネルと流体連通状態にある少なくとも一つの環状チャネルを形成する。リングガイドは、ピストンロッドにおける環状スロットと係合し、リングガイドをピストンロッドに係止するよう径方向内側に軸に向かって延設される少なくとも一つの固定突起を有する。
【背景技術】
【0002】
この種の油圧反発ストップ構造を有する油圧ダンパは、欧州特許出願公開第3153738号明細書に開示されている。リングガイドおよびリングは、追加ピストンアッセンブリがチューブの狭窄部分にありストロークの方向がストップ構造の作動の方向とは反対方向に変化するときに開くリターンバルブを形成している。リングガイドは、リングガイドの保持面に配置される固定突起を有する。固定突起は、ピストンロッドと係合するよう、リングガイドの保持面から径方向内側に軸に向かって延設される。また、リングガイドの保持面は、間にブリッジを形成する複数の径方向チャネルによって分けられている。
【0003】
こうして、プラスチック・リングガイドはピストンロッドにスナップロックされる。しかしながら、ストップ構造の作動の方向とは反対方向にピストンロッドが高速で移動するときに、比較的高い圧力がリングガイドの保持面と当接するリングに作用し、そしてまた固定突起に作用し、これにより、リングガイドがピストンロッドから外れる可能性があることが分かった。また、この高速移動の際にリングの環隙間が保持面におけるブリッジと一列に並ぶと、ブリッジはギャップ内に押圧され嵌まって動かなくなる可能性がある。これらの状況のどちらの場合でも、油圧ストップ構造の機能は損なわれる。最終的に、このようなプラスチック・リングガイドのピストンロッドとの適切なスナップロックを確実に行うためには、固定突起が配置されるリングガイドの保持面の軸方向長によって、望ましくはないが、油圧ストップ構造の動作長を低減することが考えられる。
【0004】
米国特許出願公開第2018/195574号明細書には、内側シリンダにおいて端部に配置される第二シリンダを有する追加ストロークストップ構造と、ピストンロッドの移動と共に移動するよう第二シリンダを通ってぴったりと嵌まるように挿入できるように構成される第二ピストンと、を備える油圧ダンパが開示されている。第二ピストンは、ストッパとキャッスルとピストンリングとを有する。ストッパは、ピストンロッドに連結される。キャッスルは、塑性流動によってストッパと一体化され、キャッスルとストッパとの間で、第二ピストンの外周にリング溝を形成する。ピストンリングは、ストッパとキャッスルとによって形成されるリング溝に固定される。ピストンリングは、リング溝において軸方向に移動可能でありかつリング溝に保持される。ピストンリングは、円周方向において両端を有している環状形状を有する。ピストンリングの円周方向における両端は、ピストンリングを部分的に切断することによって形成されている。ストッパは、金属で形成されており、径方向外側に広げられる環状溝を用いてピストンロッドに取り付けられる。係合部分は、ストッパの一部である。
【0005】
また、国際特許出願公開第2018/155339号には、環状溝に嵌められる環状爪部を用いてピストンロッドに取り付けられる金属ホルダの態様の、同様のストップ構造を開示している。環状溝は、ピストンロッドの外周上に円周方向に沿って形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許出願公開第3153738号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/195574号明細書
【文献】国際特許出願公開第2018/155339号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、ストロークの端部において減衰力をスムーズに増加させることができ、汎用性のあるダンパ調整能力を提供でき、コスト面で効率的であり、製造が簡単であり、リングガイドの軸方向高さを低減できしたがってストロークストップ構造の有効機能距離を長くでき、リングガイドの保持機能を向上できる特徴を有し、そしてリングガイドが封止リングの環隙間に入り込んで挟まってしまう可能性を排除できる簡単な構成の油圧ストップ構造を有する油圧ダンパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明にかかるダンパは、始めに記載した種類のダンパにおいて、少なくとも一つの固定突起がリングガイドの内側軸方向リムに配置されており、少なくとも一つの固定突起の高さが、リングガイドの内側軸方向リムとリングとの間の径方向隙間より大きい。
【0009】
このように、リングガイドには、ピストンロッドの環状溝と係合し封止リングによって径方向外側で係止されるセルフロックアッセンブリクリップが配置されている。
【0010】
好ましくは、少なくとも一つの固定突起は、リングガイドの内側軸方向リムの、メインピストンアッセンブリに対する近位側の端部に配置される。
【0011】
好ましくは、保持面によって形成される少なくとも二つの径方向チャネルは、内側軸方向リムの周囲で流体連通するよう接続される。
【0012】
好ましくは、保持面の径方向チャネル間の環状部分の幅は、リングの環隙間より大きい。
【0013】
好ましくは、チューブの狭窄部分は、インサートの態様であり、好ましくは、プラスチック製である。
【0014】
これにより、ダンパ構造を簡単化できる。
【0015】
好ましくは、ストロークストップ構造は反発ストロークストップ構造であり、油圧ダンパはツインチューブダンパである。
【0016】
本開示を、添付した以下の図面を参照しながら好ましい実施形態として説明し例示する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明にかかるダンパを備える車両サスペンションの部分斜視図を示す。
図2】反発ストロークの端部における、油圧ストロークストップ構造が作動状態にある、本開示の実施形態にかかるダンパの概略断面図である。
図3】油圧ストロークストップ構造の追加ピストンアッセンブリの構成要素を示す図2の部分拡大図であり、油圧ストロークストップ構造の作動による反発ストローク(上側)と圧縮ストローク(下側)とにおける機能を例示する部分拡大図とともに示している。
図4】油圧ストロークストップ構造の追加ピストンアッセンブリのリングガイドの概略斜視図である。
図5a】リングガイドの側面図を示す。
図5b】リングガイドの正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に、上部装着器102と、上部装着器102の上面の周囲に配置された複数のネジ103と、を用いて車体101に取り付けられた、本開示のダンパ1を備える例示的な車両サスペンションの一部を概略的に示す。上部装着器102は、コイルバネ104とダンパ1のピストンロッド5とに接続される。ダンパ1のチューブ2は、車両ホイール106を支持するステアリングナックル105に接続される。
【0019】
図2は、本発明にかかるツインチューブダンパ1の一の実施形態を示す。ダンパ1は、外側チューブ2とメインチューブ3とを備える。メインチューブ3には、粘性の作動液が充填される。メインチューブ3の内部には、可動ピストンアッセンブリ4が配置される。可動ピストンアッセンブリ4は、封止ピストンロッドガイド6を通してダンパ1の外部に案内されるピストンロッド5に取り付けられている。またダンパ1は、メインチューブ3の他端に固定されるベースバルブアッセンブリ7を有する。ピストンアッセンブリ4は、チューブ3の内面と摺動嵌合を形成し、チューブ3を反発チャンバ11(ピストンロッドガイド6とピストンアッセンブリ4との間)と圧縮チャンバ12(ピストンアッセンブリ4とベースバルブアッセンブリ7との間)とに分割する。追加補償チャンバ13が、ベースバルブアッセンブリ7の反対側に配置される。
【0020】
ピストンアッセンブリ4が軸Aに沿って移動する際に反発チャンバ11と圧縮チャンバ12との間を通過する作動液の流れ(フロー)を制御するために、ピストンアッセンブリ4は、圧縮バルブアッセンブリ42および反発バルブアッセンブリ41を備える。またベースバルブアッセンブリ7は、ダンパ1の反発・圧縮ストロークの際に、それぞれ、追加補償チャンバ13と圧縮チャンバ12との間を通過する作動液のフローを制御するために、反発バルブアッセンブリ71および圧縮バルブアッセンブリ72を有する。当業者にはよく知られている通り、バルブアッセンブリ41,42,71,72は、ダンパ1の所望の特性を形成するために用いることができる設計パラメータを与え、軸A回りに配置される複数のフローチャネルと、それらチャネルを覆い、ダンパ1の反発ストロークおよび圧縮ストロークにおいて作動液の圧力により撓むまたは移動する複数の弾性的可撓性または可動ディスクと、を備えることができる。
【0021】
当業者には知られている通り、モノチューブダンパの場合には、摺動可能なパーティションをベースバルブアッセンブリ7の代わりに配置でき、液補償チャンバ13の代わりに補償ガスチャンバを形成するパーティションの反対側の空間に加圧気体を充填できることは明らかであろう。
【0022】
ダンパ1には、ストロークストップ構造8がさらに配置される。ストロークストップ構造8は、反発チャンバ11に配置される狭窄部分82と、ピストンロッド5に取り付けられる追加ピストンアッセンブリ83と、を備える。追加ピストンアッセンブリ83は、反発ストロークの端部において追加的な減衰力を生成するよう狭窄部分82に摺動可能に配置されるように構成される。
【0023】
本実施形態においては、ストロークストップ構造8が反発ストロークストップ構造として機能しているが、ストロークストップ構造を、追加的にまたは他の選択肢として圧縮チャンバ12の端部に(ベースバルブアッセンブリ7の上方にまたはモノチューブブダンパの場合には摺動可能なパーティションの上方に)配置して、圧縮ストロークストップ構造として機能させることができることは明らかであろう。
【0024】
本実施形態において、狭窄部分82は、メインチューブ3の拡張部分31に固定されるとともにピストンロッドガイド6に隣接している追加プラスチックインサート81の態様である。このような狭窄部分は、反発チャンバ11または圧縮チャンバ12の内部領域におけるチューブ3自体の適切な内部成形によって容易に形成できることは、当業者にとって自明であろう。
【0025】
狭窄部分82(インサート81によって形成される)には、入口部分821と溝部分822とが配置されている。入口部分821は円錐状に形成されており、反発チャンバ11内へと延設される。入口部分821は、六つの等角度に間隔を空けて配置された半円形の径方向溝823を有する。径方向溝823は、溝部分822内へと延び、六つの円形の軸方向溝824と連結する。軸方向溝824は、インサート81の内面で軸Aに沿ったある点で消失するよう、軸Aに対して多少傾斜した対称軸を有する。
【0026】
図3に示す通り、追加ピストンアッセンブリ83は、プラスチック・リングガイド833と、ある一定の径方向隙間dを空けてリングガイド833を囲繞する金属リング832と、リングガイド833に隣接する保持部材831と、を備える。リングガイド833および保持部材831は、メインピストンアッセンブリ4に対して、それぞれ遠位側および近位側にある。
【0027】
リング832は、保持部材831とリングガイド833の保持面8334との間で軸方向に移動可能であり、径方向にある程度収縮可能である環隙間8321を有する。
【0028】
図4図5aおよび図5bに示す通り、リングガイド833は、ピストンロッド5を囲繞する内側軸方向縁部(リム)8333を有する。また、リングガイド833は、八つの等角度に間隔を空けて配置される環状チャネル8331を有する。環状チャネル8331の間にはブリッジが形成される。環状チャネル8331は、保持面8334によって形成(define)される径方向チャネル8332へと延びている。リングガイド833は、さらに、内側軸方向リム8333に配置される四つの固定突起8335を有する。本実施態様において、固定突起8335は、内側軸方向リム8333の、メインピストンアッセンブリ4に対する近位側の端部に配置される。固定突起8335は、径方向内側に軸Aに向かって延設され、ピストンロッド5における環状スロット51と係合してリングガイド833を係止する。金属保持部材831は、ピストンロッド5上で絞られて、その固定突起8311がピストンロッド5の追加環状スロット52内に配置される。図3に示す通り、固定突起の高さDは、内側軸方向リム8333とリング832との間の径方向隙間dより大きい。
【0029】
図2に示す通り、反発ストロークにおいて、追加ピストンアッセンブリ83は、入口部分821に入った後、インサート81の溝部分822に入り、そしてリング832は径方向に収縮してインサート81の内壁と摺動嵌合する。この点において、流体圧力はインサート81の内部領域において高まり、リング832を保持部材831へと押圧し、作動液は、一セットの軸方向溝824を通ってのみインサート81から流れ出ることになり、反発ストロークが進行するにつれて溝824の断面積が減少するので、ピストンロッド5の速度だけでなくその位置にも比例してさらなる減衰力が生成される。
【0030】
最終的には、作動液は軸方向溝824を通って流れることができなくなり、大きい減衰作用が得られる。本開示の他の実施態様においては、追加安全バネを、狭窄部分82内において、ピストンロッドガイド6に取り付けることもできよう。
【0031】
戻りの圧縮ストロークに際に、反発チャンバ11における圧力によりリング832がリングガイド833の保持面8334へと押圧され、これにより、インサート81へと戻る作動液のリターンフローは、断面積が増加していく軸方向溝824だけでなく、リング832に囲繞される環状チャネル8331とリングガイド833の保持面8334によって形成される径方向チャネル8332とを通って流れることが可能となる。本実施態様においては、4ペアの径方向チャネル8332が、内側軸方向リム8333の周囲で流体連通するよう接続されている。
【0032】
したがって、リングガイド833およびリング832は、ストロークの方向が反発から圧縮に変化した場合にのみ開き、圧縮ストロークの際にほぼ制限されることなくインサート81に作動液を充填していくことができる一種のリターンバルブを形成する。そうでない場合、反発ストロークストップ構造8がもはや必要ではない戻りの圧縮ストロークの際の減衰力は、反発ストロークストップ構造8が望まれる反発ストロークの際の減衰力と同等である。
【0033】
図3に示す通り、リングガイド833の保持面と当接するリング832に作用する高い圧力により、固定突起8335が撓むことになる。それにもかかわらず、この撓みが、固定突起8335の高さDより小さい内側軸方向リム8333とリング832との間の径方向隙間dによって、制約を受けるので、リングガイド833はピストンロッド5に係止され続ける。
【0034】
本開示の上記の実施形態は単なる例示である。図は必ずしも一定の比例で拡大縮小されたものではなく、一部の特徴が誇張または極小化されていることもある。しかしながら、これらの因子および他の因子は、本発明の精神や添付の特許請求の範囲に示した保護しようとする範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0035】
1 ダンパ
11 反発チャンバ
12 圧縮チャンバ
13 補償チャンバ
2 外側チューブ
3 メインチューブ
31 拡張部分
4 ピストンアッセンブリ
41 反発バルブアッセンブリ
42 圧縮バルブアッセンブリ
5 ピストンロッド
51 環状スロット(リングガイド)
52 追加環状スロット(保持部材)
6 ピストンロッドガイド
7 ベースバルブアッセンブリ
71 反発バルブアッセンブリ
72 圧縮バルブアッセンブリ
8 ストロークストップ構造
81 インサート
82 狭窄部分
821 入口(円錐状)部分
822 溝部分
823 径方向溝
824 軸方向溝
83 追加ピストンアッセンブリ
831 保持部材
8311 固定突起
832 リング
8321 環隙間
833 リングガイド
8331 環状チャネル
8332 径方向チャネル
8333 内側軸方向リム
8334 保持面
8335 固定突起
101 車体
102 上部装着器
103 ネジ
104 バネ
105 ステアリングナックル
106 車両ホイール
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b