(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置の室外機
(51)【国際特許分類】
F25B 39/04 20060101AFI20221221BHJP
F25B 6/02 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F25B39/04 S
F25B6/02 Z
(21)【出願番号】P 2021527415
(86)(22)【出願日】2020-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2020017206
(87)【国際公開番号】W WO2020261734
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2019117288
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕昭
(72)【発明者】
【氏名】小澤 光輔
(72)【発明者】
【氏名】松本 憲二郎
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 允嗣
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-228975(JP,A)
【文献】特開2013-195016(JP,A)
【文献】実開昭52-009938(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 39/04
F25B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凝縮器と、
複数の前記凝縮器と同数設けられ、それぞれの前記凝縮器の出口に接続されている複数の受液器と、を備え、
複数の前記凝縮器は、冷媒の入口側で互いに接続されているとともに、冷媒の出口側で対応する前記受液器と個別に接続されており、
複数の前記受液器は、冷媒の入口よりも設置状態における下方に冷媒の出口が設けられており、冷媒の出口側で互いに接続されて
おり、
前記凝縮器の容量と、前記受液器の容量との容量比が、1対1で接続される複数の前記凝縮器と複数の前記受液器とで同一の容量比に形成されていて、
複数の前記受液器に対して共通で設けられている過冷却器をさらに備え、
前記過冷却器は、互いに接続されている複数の前記受液器の出口側に接続されており、複数の前記受液器から流出した冷媒を冷却する冷凍サイクル装置の室外機。
【請求項2】
前記凝縮器と前記受液器との間の経路が冷媒配管により直接接続されている請求項1記載の冷凍サイクル装置の室外機。
【請求項3】
複数の前記凝縮器は、同一容量のものであり、
複数の前記受液器は、同一容量に形成されている請求項1または2記載の冷凍サイクル装置の室外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷凍サイクル装置の室外機に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクル装置は、冷凍機(コンデンシングユニット)等の室外機とショーケースや空調機等の室内機との間を配管で接続して冷媒を循環させている。このとき、凝縮器の出口側においては、冷媒が気液混合状態になることがあるものの、冷凍サイクル装置を効率的に利用するためには、凝縮器の後段側に配置される過冷却器に対して冷媒を液体状態で搬送することが望ましい。そのため、一般的には、例えば特許文献1に示されているように凝縮器の出口側に受液器を設けることで、後段側に冷媒を液体状態で搬送するようにしている。この受液器は、例えばレシーバなどとも称されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、室外機に複数の凝縮器が設けられることがある。そして、接続される室内機などの負荷装置の仕様や配管長によっては、複数の凝縮器から供給される冷媒を受液するために、大容量の受液器が必要になることがある。
【0005】
しかしながら、受液器は、例えば高圧ガス保安法への対応や製造設備の大きさの制約などによって、単純に大容量化することが困難な場合がある。また、単に受液器の数を増やして必要とされる容量を確保するとしても、複数の受液器に対して気液を均等に分配することは困難である。すなわち、受液器を大容量化する際には、製造上の困難性や構造の複雑化を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の凝縮器を備える構成において、凝縮器の後段側に液体状態の冷媒を容易に搬送することができる冷凍サイクル装置の室外機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の冷凍サイクル装置の室外機は、複数の凝縮器と、複数の凝縮器と同数設けられ、それぞれの凝縮器の出口に接続されている複数の受液器と、を備え、複数の凝縮器は、冷媒の入口側で互いに接続されているとともに、冷媒の出口側で対応する受液器と個別に接続されており、複数の受液器は、冷媒の入口よりも設置状態における下方に冷媒の出口が設けられており、冷媒の出口側で互いに接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態における冷凍サイクル装置の構成を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の冷凍サイクル装置1は、室外機2と、負荷装置としての室内機3とを備えている。これら室外機2と室内機3との間は、冷媒が循環する外部配管4によって接続されている。本実施形態では、空調用の冷凍サイクル装置1を想定しているが、室外機2は、機器の冷却やショーケースにおける物品の冷却用など、いわゆる冷凍機(コンデンシングユニット)が対応可能な他の用途にも適用することができる。
【0010】
なお、
図1では説明の簡略化のために1つの室内機3を備える例を示しているが、複数の室内機3を設けるなど、負荷装置が複数接続される構成とすることもできる。また、図示は省略するが、室外機2と室内機3との間は、制御用の電気配線によっても接続されている。
【0011】
室外機2は、筐体5内に、複数の凝縮器6と、凝縮器6と同数の受液器7と、1つの過冷却器8などを備えている。凝縮器6は、いわゆるフィンチューブ型の熱交換器で構成されており、本実施形態では同じ大きさに構成されている。すなわち、同一の寸法で構成され、同一の容量と、同一の熱交換面積を有する凝縮器7が複数、例えば3つ(
図3参照)設けられている。各凝縮器6は、
図1に「IN」として示す冷媒の入口側において分岐配管20を介して互いに並列接続されているとともに、
図1に「OUT」として示す冷媒の出口側において、対応する受液器7と冷媒配管21によって個別に直接接続されている。
【0012】
つまり、各凝縮器6から流出した冷媒は、対応する1つの受液器7に流入する構成となっている。このとき、凝縮器6から流出する冷媒は、気液混合状態になっていることがある。この受液器7は、概ね円筒状に形成されており、設置状態における上方側に、
図1に「IN」として示す冷媒の入口が設けられ、入口よりも下方側に
図1に「OUT」として示す冷媒の出口が設けられている。
【0013】
そのため、
図2に示すように、矢印F1にて示すように凝縮器6側から気液混合状態の冷媒が受液器7に流入すると、重力によって液体状態の冷媒(R)が受液器7の下方側に溜まることになる。つまり、冷媒は、受液器7の内部において気液分離される。そして、出口側に溜まった液体状態の冷媒は、矢印F2にて示すように、出口を通って受液器7から流出する。これにより、受液器7の後段側に液体状態の冷媒が搬送される。
【0014】
このとき、各受液器7は、胴長さが600mm~700mm、その外形(D)が、160mmを超えない大きさに形成されている。また、複数の受液器7を設ける構成としたことにより、それぞれの受液器7に必要となる容積も小さくなっている。そのため、各受液器7は、高圧ガス保安法においては配管や簡易的な容器に区分されるものとなっている。すなわち、比較的小さな容積とすることで、耐圧性能を向上させることができる。各受液器7は、冷媒の出口側において互いに接続されている。
【0015】
受液器7の出口側には、合流配管22を介して接続される過冷却器8が設けられている。過冷却器8は、いわゆるフィンチューブ型の熱交換器で構成されており、各受液器7から流出した冷媒、つまりは、各受液器7の内部において気液分離された冷媒のうち液体状態の冷媒が流入する。すなわち、凝縮器6の後段側に設けられる過冷却器8には、冷媒が液体状態で搬送される。
【0016】
過冷却器8を経由した冷媒は、外部配管4を通って室内機3に搬送される。室内機3は、膨張装置13、室内側熱交換器3a、送風ファン3b、および室内側制御ユニット3cなどを備えている。本実施形態の場合、室内側熱交換器3aは、膨張装置13により減圧された冷媒を蒸発させる空調用の蒸発器として機能する。ただし、室内機3の構成は一例であり、これに限定されない。
【0017】
室内機3を経由した冷媒は、外部配管4を通って室外機2に戻される。この室外機2には、アキュムレータ9、並列に接続された2つの圧縮機10、オイルセパレータ11、および制御ユニット12などが設けられている。外部配管4を通って室外機2に戻された冷媒は、アキュムレータ9によって気液分離された状態で2つの圧縮機10によって圧縮され、オイルセパレータ11で油分が除去された後、分岐配管20を介して各凝縮器6に流入する。
【0018】
このとき、各凝縮器6は、同等の熱交換性能を備えたもの、つまりは、その形状などがほぼ同一のものとなっている。そのため、オイルセパレータ11を経由した冷媒は、各凝縮器6に均等に流入することになる。なお、ほぼ同一とは、一致する状態および予め定められている許容範囲内に納まっている状態を含んでいる。そして、室外機2に設けられている制御ユニット12と、室内機3に設けられている室内側制御ユニット3cとによって各機器が制御され、室外機2と室内機3との間を冷媒が循環することにより冷凍サイクル装置1が動作している。
【0019】
次に、上記した構成の作用について説明する。
前述のように、凝縮器6の出口側においては、冷媒が気液混合状態になることがある一方、冷凍サイクル装置1を効率的に利用するためには、凝縮器6の後段側に配置される過冷却器8に対して冷媒を液体状態で搬送することが望ましい。
【0020】
ただし、受液器7は、例えば耐圧に関する安全性への対応や製造設備の大きさの制約などによって、単純に大容量化することが困難な場合がある。また、単に受液器7の数を増やしても、気液混合状態の冷媒を、1つの凝縮器6から複数の受液器7に対して、または、複数の凝縮器6から複数の受液器7に対して気液を均等に分配することは困難である。
【0021】
そこで、本実施形態では、以下のようにして、複数の凝縮器6を備える構成において、受液器7の大容量化を招くことなく、凝縮器6の後段側に液体状態の冷媒を搬送することができるようにしている。
【0022】
上記したように、本実施形態の室外機2は、複数の凝縮器6と複数の受液器7とを備えている。そして、各凝縮器6は、1つの受液器7にそれぞれ接続されている。すなわち、凝縮器6と受液器7との間の経路には、冷媒の分配用または流量調整用の機構、構造あるいは部材を配置しておらず、冷媒配管21により直接接続されている。ここで、複数の冷媒配管21は、それぞれ略同一の配管長で形成されていることが好ましく、最長のものでも、最短の冷媒配管21の2倍以下であることが好ましい。
【0023】
これにより、例えば1つの凝縮器6から複数の受液器7に対して冷媒を分配したり、複数の凝縮器6から1つの受液器7に冷媒を分配した場合とは異なり、気液混合状態の冷媒の気液を均等に分配する弁等を配置する必要性そのものを無くすことができる。
【0024】
このとき、各受液器7は、設置状態において、冷媒の入口よりも下方に冷媒の出口が設けられている。そのため、受液器7の出口側には、重力によって液体状態の冷媒が溜まることになることから、受液器7の後段側に液体状態の冷媒が流出することになる。
【0025】
そして、各凝縮器6は同等の熱交換性能を備えたものであり、また、各受液器7はほぼ同じ大きさ(容量)と形状(寸法)に形成されていることから、各受液器7からは、ほぼ同じ流量で液体状態の冷媒が流出する。そのため、互いに接続されている複数の受液器7の出口側に接続されている過冷却器8に対しては、受液器7の出口側において冷媒の分配を行わなくても、また、冷媒の流量調整を行わなくても、各受液器7から均等に流出した液体状態の冷媒が供給される。
【0026】
これにより、受液器7と過冷却器8との間の経路においても、冷媒の分配用または流量調整用の機構、構造あるいは部材を配置する必要なく、液体状態の冷媒を過冷却器8に搬送することが可能となり、冷凍サイクル装置1を効率的に利用することができる。
【0027】
また、受液器7を複数設ける構成としたことにより、1つ設ける場合と比べて各受液器7の大きさを相対的に小さくすることができる。これにより、製造設備の大きさの制約を受けにくくなり、製造を容易に行うことが可能となる。また、受液器7を分散させ、各受液器7の寸法・容量を所定以下とすることで、機器としての耐圧性を高め、安全性を高めることができる。特に例えば高圧ガス保安法における配管や簡易的な容器に分類される大きさに受液器7を形成することも可能になり、圧力容器に分類される大きさの場合と比べて高圧ガス安全法を遵守する際の条件が緩和される。
【0028】
特に、圧縮機により冷媒を圧縮する冷凍サイクル装置の室外機において、圧縮機吐出圧力が0.2MPa以上の冷媒を貯留する受液器7の胴部長さを1000mm以下、内径を200mm以下とし、内容積を0.04m^3以下とすることで、高圧ガス保安法における簡易的な容器として扱うことができる。すなわち、このような条件に適合する受液器7とすることで、耐圧性を確保することができるとともに、製造時に行う安全性試験なども簡素化でき製造工程全体を効率的にすることができ、製造コストを低減することができる。
【0029】
また、機器使用のための据え付け後においても定期的な保安検査を簡素化または検査実施不要とすることができ、機器としての運用コストを低減することが可能となる。
また、このように分散された受液器7に対応させて、凝縮器6を分散し各受液器7に対して1対1で接続し構成することで、冷媒の分流性も向上させることができ、冷凍サイクルシステムとしての動作が円滑なものとなる。
【0030】
また、受液器7を小型化することにより、室外機2の内部での配置の自由度を高めることができる。そして、配置の自由度が高まることにより、室外機2の性能の低下を抑制することが可能になる。具体的には、
図3に示すように、室外機2の筐体5内には、凝縮器6、圧縮機10、アキュムレータ9、圧縮機10、オイルセパレータ11、および制御ユニット12などが収容されている。
【0031】
このとき、仮に大型受液器を1つ設ける構成の場合には、大型受液器がいずれかの凝縮器6の側面つまりは風路上に配置されることになり、その凝縮器6の熱交換性能の低下を招くおそれがある。換言すると、大型受液器を1つ設ける構成の場合、各凝縮器6の熱交換性能にばらつきを生じさせるおそれがある。
【0032】
これに対して、小型の各受液器7を複数設ける構成の場合には、
図3に示すように、例えば図示左方側の2つの凝縮器6に対して均等な位置関係に配置することなどが容易となり、凝縮器6の熱交換性能にばらつきが生じるおそれを低減できる。そして、凝縮器6の熱交換性能にばらつきが生じなければ、対応する各受液器7に冷媒が同様に流入するとともに、各受液器7からは冷媒が均等に流出することになる。そのため、複数の凝縮器6および複数の受液器7によって一時的に冷媒の経路が分岐している場合であっても、冷媒の分配用や流量調整の構造などを設けることなく過冷却器8に適切に液体状態の冷媒を搬送することができる。
【0033】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
室外機2は、複数の凝縮器6と、複数の凝縮器6と同数設けられ、それぞれの凝縮器6に対して1対1で接続されている複数の受液器7と、を備えている。そして、複数の凝縮器6は、冷媒の入口側で互いに接続されているとともに、冷媒の出口側で対応する受液器7と個別に接続されており、複数の受液器7は、冷媒の入口よりも設置状態における下方に冷媒の出口が設けられている。
【0034】
これにより、1つの凝縮器6からは1つの受液器7に対して冷媒が流出することになるため、冷媒の分配や流量調整を行う必要が無い。したがって、複数の凝縮器6を備える構成において、凝縮器6の後段側に液体状態の冷媒を容易に搬送することができる。
【0035】
また、受液器7を複数設ける構成としたことにより、1つの受液器7の容積を小さくすることが可能になる。したがって、受液器7の大容量化を招くこともない。さらに、筐体5内への配置の自由度が高まることから、例えば1つの凝縮器6に対してその風路を塞ぐような状況を回避することができ、熱交換性能がばらつくことなどを抑制できる。
【0036】
室外機2は、過冷却器8を備えている。そして、過冷却器8は、互いに接続されている複数の受液器7の出口側に接続されている。これにより、過冷却器8には液体状態の冷媒が供給されるようになり、冷凍サイクル装置1を効率的に利用することができる。
【0037】
室外機2は、凝縮器6と受液器7との間の経路には、冷媒の分配用または流量調整用の機構、構造あるいは部材を配置しない。これにより、配管や構造の複雑化を招くことがない。
【0038】
室外機2は、複数の凝縮器6が同一容量に形成されており、共通する熱交換性能となっているとともに、複数の受液器7が同一容量に形成されている。これにより、冷媒の経路が一時的に分岐する場合において、各経路の冷媒流量を均等にすることができる。
また、換言すると凝縮器6の容量と、受液器7の容量との容量比が、1対1で接続される複数の凝縮器6と複数の受液器7とで同一の容量比に形成されている。すなわち、1つの凝縮器6の容量aとし、この凝縮器6の出口に接続される受液器7の容量bとする場合、その他の対に接続された凝縮器6と受液器7との容積比もa:bとなるように構成されている。
【0039】
実施形態では室外機2を要冷機器用または冷房空調用のいわゆる冷凍機(コンデンシングユニット)として用いる例を示したが、冷媒の流れを変える三方弁などを設けることにより、冷却(冷房)運転と加熱(暖房)運転とが可能ないわゆる室外機に用いることもできる。
【0040】
以上、本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。