(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 29/04 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
B66B29/04 H
(21)【出願番号】P 2021541892
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2019033874
(87)【国際公開番号】W WO2021038783
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 雄司
(72)【発明者】
【氏名】仲條 勇人
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-091405(JP,A)
【文献】意匠登録第1602797(JP,S)
【文献】特開2016-179876(JP,A)
【文献】特開2017-114595(JP,A)
【文献】特開昭62-036291(JP,A)
【文献】中国実用新案第206172776(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 25/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
欄干部を支持するデッキ部と、前記デッキ部の長手方向の端部に設けられ、前記欄干部の移動手摺が出入りするインレット部と、を備えた乗客コンベアにおいて、
前記インレット部は、
前記移動手摺が出入りする挿入凹部が設けられたインレットカバーと、
前記インレットカバーに配置された安全機構と、
前記挿入凹部に配置される支持部材と、を有し、
前記インレットカバーにおける乗客の出入り口側である正面部は、前記移動手摺の移動方向に対して傾斜し、前記挿入凹部が設けられ、
前記安全機構は、
前記移動手摺の周囲の一部を囲むと共に前記挿入凹部に一部が挿入され、出入り口側の先端部が前記移動方向に対して傾斜した検出体と、
前記検出体の変位を検出する検出スイッチと、を有し、
前記支持部材は、前記挿入凹部の側壁部と、前記検出体における前記挿入凹部に挿入された突出部との間に介在されて、前記突出部を支持し、
前記挿入凹部は、
前記正面部側の開口端である正面側開口端部と、
前記正面側開口端部とは反対側の開口端である内側開口端部と、
前記正面側開口端部から前記内側開口端部に向けて延在する第1側壁部と、
前記第1側壁部と対向し、前記正面側開口端部から前記内側開口端部に向けて延在する第2側壁部と、を有し、
前記第1側壁部における前記正面側開口端部から前記内側開口端部までの長さは、前記第2側壁部における前記正面側開口端部から前記内側開口端部までの長さよりも長く設定され、
前記検出体は、前記内側開口端部を臨み、前記突出部が突出する本体部を有し、
前記突出部は、
前記第1側壁部と対向する第1側面部と、
前記第2側壁部と対向する第2側面部と、を有し、
前記第1側面部における前記本体部から前記先端部までの長さは、前記第2側面部における前記本体部から前記先端部までの長さよりも長く設定され、
前記支持部材は、前記第1側面部と前記第1側壁部との間に配置される
乗客コンベア。
【請求項2】
前記本体部は、前記インレットカバー又は前記デッキ部の内部おいて前記移動方向に沿って移動可能に支持される
請求項
1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記支持部材は、前記第1側壁部に取り付けられる
請求項
1に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記検出体には、前記先端部から前記本体部にかけて連続する切り込みが形成されている
請求項
1に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記正面部は、前記移動方向と直交する幅方向の内側の一端部が外側の他端部よりも前記デッキ部に接近する方向に傾斜している
請求項
1に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インレット部に安全機構を設けた乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアは、建築構造物に設置されるフレームと、このフレーム内に設けられて循環移動する無端状に連結された複数の踏段とを備えている。複数の踏段には、無端状のチェーンが連結されており、このチェーンが回転駆動することで、複数の踏段が循環移動する。さらに、フレームには、複数の踏段の移動方向に沿って一対の欄干部が立設されている。この欄干部は、デッキ部により支持されている。デッキ部には、欄干部の移動手摺が出入りするインレット部が設けられている。
【0003】
従来のインレット部としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、検出体の基部に配置され、かつ、検出体に対し着脱自在であり、検出体が侵入した状態でインレットスイッチを操作する保持部材と、検出体の外周面に進行方向と平行に設けられたガイド溝とを備えた技術が記載されている。さらに、特許文献1には、欄干の下部内部に設けられ、ガイド溝をガイドするガイドレールを有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、意匠性の観点からインレット部を上方から見て踏段の移動方向に対して斜めに形成した乗客コンベアが提案されている。しかしながら、特許文献1に記載された技術では、インレット部を斜めに形成することは考慮しておらず、検出体が捻れ、安全性が低下するおそれがあった。
【0006】
上記の問題点を考慮し、インレット部が斜めに形成された乗客コンベアにおいて、安全性の向上を図ることができる乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、乗客コンベアは、欄干部を支持するデッキ部と、デッキ部の長手方向の端部に設けられ、欄干部の移動手摺が出入りするインレット部と、を備えた乗客コンベアである。
インレット部は、移動手摺が出入りする挿入凹部が設けられたインレットカバーと、インレットカバーに配置された安全機構と、挿入凹部に配置される支持部材と、を有している。インレットカバーにおける乗客の出入り口側である正面部は、移動手摺の移動方向に対して傾斜している。また、正面部には、挿入凹部が設けられている。安全機構は、移動手摺の周囲の一部を囲むと共に挿入凹部に一部が挿入され、出入り口側の先端部が移動方向に対して傾斜した検出体と、検出体の変位を検出する検出スイッチと、を有している。支持部材は、挿入凹部の側壁部と、検出体における挿入凹部に挿入された突出部との間に介在されて、突出部を支持する。
【0008】
また、他の乗客コンベアのインレット部は、移動手摺が出入りする挿入凹部が設けられたインレットカバーと、インレットカバーに配置された安全機構と、を有している。
インレットカバーにおける乗客の出入り口側である正面部は、移動手摺の移動方向に対して傾斜している。正面部には、挿入凹部が設けられている。安全機構は、移動手摺の周囲の一部を囲むと共に挿入凹部に一部が挿入され、出入り口側の先端部が移動方向に対して傾斜した検出体と、検出体の変位を検出する検出スイッチと、を有している。そして、挿入凹部の側壁部と、検出体における挿入凹部に挿入された突出部の一部は、互いに接触する。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の乗客コンベアによれば、安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態例にかかる乗客コンベアの構成例を示す概略構成図である。
【
図2】実施の形態例にかかる乗客コンベアの出入り口を示すもので、
図2Aは出入り口の一例を示す平面図、
図2Bは出入り口の他の例を示す平面図である。
【
図3】実施の形態例にかかる乗客コンベアのインレット部を示す斜視図である。
【
図4】実施の形態例にかかる乗客コンベアのインレット部を示す正面図である。
【
図5】実施の形態例にかかる乗客コンベアのインレット部を上側から見た平面図である。
【
図6】実施の形態例にかかる乗客コンベアのインレット部におけるインレットカバーを水平方向で切断した断面図である。
【
図7】実施の形態例にかかる乗客コンベアのインレット部を水平方向で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、乗客コンベアの実施の形態例について、
図1~
図7を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0012】
1.実施の形態例
1-1.乗客コンベアの構成例
まず、実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる乗客コンベアの構成について、
図1~
図2A、
図2Bを参照して説明する。
図1は、乗客コンベアを示す概略構成図である。
図2A及び
図2Bは、乗客コンベアの出入り口を示す平面図である。なお、
図2A及び
図2Bでは、欄干部を除去した状態を示している。
【0013】
図1に示す乗客コンベア1は、建築構造物の上階床と下階床に設置される傾斜型の乗客コンベア、いわゆるエスカレーターである。
図1に示すように、乗客コンベア1は、建築構造物に設置されたフレーム2と、上部乗降床3Aと、下部乗降床3Bと、デッキ部4と、複数の踏段5と、欄干部7と、を備えている。また、乗客コンベア1は、不図示の駆動機構と、下部スプロケット10と、上部スプロケット11と、備えている。
【0014】
フレーム2は、上階床と下階床にまたがって設置されている。フレーム2は、傾斜区間と、上水平区間と、下水平区間から構成されている。以下、フレーム2における下階床から上階床に向かって延在する方向をフレーム2の長手方向とする。フレーム2の長手方向と直交し、かつ鉛直方向とも直交する方向をフレーム2の幅方向とする。
【0015】
フレーム2の長手方向の上階床側に形成された上水平区間は、上階床と平行に形成されている。そして、フレーム2の上水平区間には、上部乗降床3Aが設置されている。上部乗降床3Aは、上階床と平行をなし、上階床に載置されている。
【0016】
フレーム2の長手方向の下階床側に形成された下水平区間は、下階床と平行に形成されている。そして、フレーム2の下水平区間には、下部乗降床3Bが設置されている。下部乗降床3Bは、下階床と平行をなし、下階床に設置されている。
【0017】
また、フレーム2における上部乗降床3Aの下方には、不図示の駆動機構と、上部スプロケット11が配置され、フレーム2における下部乗降床3Bの下方には、下部スプロケット10が配置される。上部スプロケット11と駆動機構の駆動軸には、伝達チェーンが巻き掛けられている。駆動機構が駆動すると、上部スプロケット11は、伝達チェーンを介して回転駆動する。
【0018】
上部スプロケット11と下部スプロケット10には、踏段チェーンが巻き掛けられている。踏段チェーンは、その長手方向の両端部が連結された無端状に形成されている。上部スプロケット11が回転することで、下部スプロケット10及び踏段チェーンが回転する。そして、踏段チェーンは、上部スプロケット11と下部スプロケット10の間を循環移動する。
【0019】
踏段チェーンには、複数の踏段5が無端状に連結されている。複数の踏段5は、フレーム2に設けられた不図示のガイドレールに移動可能に支持されている。として、複数の踏段5は、ガイドレールに沿って上部スプロケット11と下部スプロケット10の間を循環移動する。
【0020】
図2Aに示すように、複数の踏段5の幅方向の両端部には、デッキ部4が設置されている。
図1に示すように、デッキ部4は、フレーム2の長手方向に沿って配置される。デッキ部4は、フレーム2の幅方向の両端部の上方おける傾斜区間の全てと、上水平区間及び下水平区間の一部を覆う。
【0021】
欄干部7は、デッキ部4に支持される欄干パネル6と、移動手摺8とを有している。移動手摺8は、欄干パネル6の周縁部に移動可能に支持されている。また、移動手摺8は、複数の踏段5の循環動作に同期して、循環移動する。そして、移動手摺8は、デッキ部4に設けられたインレット部20に出入りする。
【0022】
1-2.インレット部の構成
次に、インレット部20の詳細な構成について
図2A~
図7を参照して説明する。
図3は、インレット部20を示す斜視図、
図4は、インレット部20を示す正面図、
図5は、インレット部を上側から見た平面図である。
【0023】
図2Aに示すように、インレット部20は、デッキ部4における長手方向の両端部、いわゆるデッキ部4の先端部に設けられている。
図3~
図7に示すように、インレット部20は、インレットカバー21と、安全機構50と、支持部材60と、を有している。
【0024】
図2Aに示すように、インレットカバー21における出入り口側である先端部には、踏段5及び移動手摺8(
図5参照)の移動方向に対して傾斜した正面部21cが設けられている。なお、
図2Aに示すインレットカバー21の正面部21cにおける幅方向で対向する他方のインレットカバー21側である内側の一端部は、外側の他端部よりもデッキ部4に接近している。これにより、乗客コンベア1の出入り口は、乗客を踏段5に向かい入れるような形に形成される。その結果、乗客が乗客コンベア1に入り易くすることができる。
【0025】
なお、インレットカバー21の傾斜の向きは、
図2Aに示す例に限定されるものではなく、
図2Bに示すインレットカバー21Bのように、正面部21cにおける外側の他端部が内側の一端部よりもデッキ部4に接近するように傾斜させてもよい。
【0026】
さらに、乗客コンベア1の幅方向の両側に配置された2つのインレットカバーの正面部が、略平行となるように同じ向きに傾斜させてもよい。
【0027】
図3及び
図4に示すように、インレットカバー21の正面部21cには、移動手摺8が出入りする挿入凹部22が形成されている。
【0028】
図6は、インレットカバー21を水平方向で切断した断面図である。
図6に示すように、挿入凹部22は、略筒状に形成されている。挿入凹部22は、正面部21c側の正面側開口端部22cと、正面側開口端部22cとは反対側の内側開口端部22dが開口している。正面側開口端部22cは、正面部21cと同様に、踏段5及び移動手摺8の移動方向に対して傾斜している。
【0029】
また、挿入凹部22は、第1側壁部22aと、第1側壁部22aと対向する第2側壁部22bとを有している。第1側壁部22a及び第2側壁部22bは、正面側開口端部22cから踏段5(
図1及び
図2参照)の移動方向と略平行に延在している。また、正面部21cの傾斜に対応させて、第1側壁部22aにおける正面側開口端部22cから内側開口端部22dまでの長さは、第2側壁部22bにおける正面側開口端部22cから内側開口端部22dまでの長さよりも長く設定されている。
【0030】
図7は、インレット部20を水平方向で切断した断面図である。
図7に示すように、安全機構50は、検出体30と、検出体30の変位を検出する検出スイッチ40と、を有している。
【0031】
検出体30は、本体部31と、突出部32とを有している。検出体30は、筒状に形成されている。また、検出体30の側面部には、検出体30の軸方向に沿って本体部31から突出部32の後述する先端部36にかけて連続する切り込み33が形成されている。そのため、検出体30は、鉛直方向で切断した断面形状が略C字状に形成されている。また、切り込み33から移動手摺8を検出体30の筒孔に挿入することができる。これにより、検出体30は、移動手摺8の周囲の一部を囲む。
【0032】
さらに、検出体30は、インレット部20に配置され、不図示のブラケットにより移動手摺8の移動方向に沿って移動可能に支持される。
図4及び
図7に示すように、本体部31は、インレットカバー21内において挿入凹部22の内側開口端部22d側の開口を臨む位置に配置される。そして、本体部31は、不図示のブラケットにより支持される。
【0033】
突出部32は、本体部31から移動手摺8の移動方向に沿って突出している。そして、突出部32は、インレットカバー21に設けた挿入凹部22内に挿入される。突出部32における本体部31とは反対側の先端部36は、正面部21c及び挿入凹部22の正面側開口端部22cと同様に、踏段5及び移動手摺8の移動方向に対して傾斜している。
【0034】
また、突出部32は、挿入凹部22の第1側壁部22aと対向する第1側面部34と、第2側壁部22bと対向する第2側面部35とを有している。第1側面部34における本体部31から先端部36までの長さは、第2側面部35における本体部31から先端部36までの長さよりも長く設定されている。
【0035】
そして、挿入凹部22内に手や異物が侵入すると、突出部32が手や異物により押圧される。そして、検出体30は、インレットカバー21の内側に向けて変位する。なお、検出体30としては、挿入凹部22内に侵入した異物を傷つけない程度の弾力と、外力を後述する検出スイッチ40に確実に伝達可能な剛性を有する部材により形成される。検出体30としては、例えば、ゴム等により形成される。
【0036】
検出スイッチ40は、不図示のブラケットに支持されて、インレットカバー21及びデッキ部4の内部に配置されている。検出スイッチ40は、検出体30が変位した際に、検出体30を支持するブラケット又は検出体30の本体部31によって押圧される。これにより、検出スイッチ40は、検出体30の変位を検出し、インレット部20への異物の侵入を検出する。また、検出スイッチ40は、不図示の制御部に検出信号を出力する。そして、制御部は、検出スイッチ40からの検出信号に基づいて、異常を判断し、乗客コンベア1の動作を停止したり、異常信号を管理センター等に報知したりする。
【0037】
また、
図4及び
図7に示すように、挿入凹部22の第1側壁部22aと突出部32の第1側面部34との間には、隙間が発生している。また、第1側面部34は、第2側面部35よりも長く形成されているため、外力により撓み易い。そのため、
図7に示すように、突出部32の先端部36に対して踏段5及び移動手摺8の移動方向と直交する方向から外力F1が加わると、突出部32は、
図7に示す二点鎖線G1のように第1側壁部22a側に捻れるおそれがある。
【0038】
さらに、第1側面部34と第1側壁部22aとの隙間における正面側開口端22cから内側開口端22dまでの長さが長くなる。その結果、第1側面部34と第1側壁部22aとの隙間に異物が挟まれた場合、挿入凹部22の内部に引き込まれる距離が長くなり、異物が抜けにくくなるおそれがある。
【0039】
これに対して、本例のインレット部20は、支持部材60を有している。支持部材60は、挿入凹部22における第1側壁部22aに取り付けられている。そして、支持部材60は、第1側壁部22aと第1側面部34との間に介在される。すなわち、支持部材60は、挿入凹部22及び突出部32における踏段5及び移動手摺8の移動方向の長さが最も長い箇所に配置される。
【0040】
また、支持部材60は、挿入凹部22内において踏段5及び移動手摺8の移動方向に沿って延在している。これにより、第1側壁部22aと第1側面部34との間に生じた隙間を、支持部材60により埋めることができる。そして、支持部材60は、突出部32における第1側面部34を支持する。
【0041】
突出部32が支持部材60によって支持されることで、突出部32に踏段5及び移動手摺8の移動方向と直交する方向から外力F1が加わった際に、突出部32が第1側壁部22a側に捻れることを、防ぐことができる。これにより、外力F1は、検出体30の先端部36の傾斜によって、踏段5及び移動手摺8の移動方向と平行な方向に分散される。そして、検出体30は、インレットカバー21の内側に向けて変位し、本体部31又は検出体30を支持するブラケットによって検出スイッチ40を押圧することができる。これにより、乗客コンベア1の安全性を高めることができる。
【0042】
さらに、支持部材60により、第1側面部34と第1側壁部22aとの間に異物が侵入することを防止することができる。その結果、検出体30と挿入凹部22との隙間に異物が引き込まれることを抑制することができ、乗客コンベア1の安全性を高めることが可能となる。
【0043】
支持部材60としては、検出体30における踏段5及び移動手摺8の移動方向への変位への影響を抑制するために、摩擦係数の低い部材を用いることが好ましい。支持部材60としては、例えば、樹脂や、表面に摩擦低減処理が施された金属等の材料が適用される。
【0044】
なお、第2側壁部22bと第2側面部35との間にも隙間が発生しているが、突出部32は、外力F1によって第2側壁部22b側に捻れる可能性が低い。また、第2側壁部22b及び第2側面部35における挿入凹部22の正面側開口端部22cから内側開口端部22dまでの長さが短く、異物等が第2側壁部22b及び第2側面部35との間の隙間に入り込み難い。そのため、第2側壁部22b及び第2側面部35との間には、支持部材60を設けなくても検出体30の捻れや、検出体30の動作に影響を与えることがない。
【0045】
また、突出部32に対して鉛直方向の上方又は下方から外力が加わると、突出部32は、移動手摺8に接触する。そして、検出体30は、移動手摺8と共に、インレットカバー21の内側に向けて変位するため、確実に検出スイッチ40を押圧することができる。したがって、突出部32と挿入凹部22における鉛直方向の上部と下部との隙間に、支持部材60を設けなくてもよい。
【0046】
なお、第2側壁部22bと第2側面部35との隙間や、突出部32と挿入凹部22における鉛直方向の下部と上部との隙間にも、支持部材60を設けてもよい。
【0047】
なお、上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0048】
上述した実施の形態例では、挿入凹部22の第1側壁部22aに支持部材60を取り付けた例を説明したが、これに限定されるものではなく、突出部32における第1側面部34に支持部材60を取り付けてもよい。
【0049】
上述した実施の形態例では、突出部32における第1側面部34と挿入凹部22の第1側壁部22aとの間に隙間を設け、この隙間を埋める支持部材60を配置した例を説明したが、これに限定されるものではない。
【0050】
例えば、第1側面部34と第1側壁部22aを接触するように、又は異物が入り込まない程度の微少な隙間を空けるようにして、第1側面部34を配置してもよい。また、突出部32における第1側面部34側の厚みを厚く設計し、第1側面部34が第1側壁部22aと接触する、又は異物が入り込まない程度の微少な隙間が空くようにしてもよい。これにより、突出部32の第1側面部34は、挿入凹部22の第1側壁部22aによって支持される。
【0051】
このような構成によっても、検出体30の捻れや、第1側面部34と第1側壁部22aの間に異物が侵入することを防ぐことができる。さらに、突出部32を支持する部材を設ける必要がなくなるため、部品点数の削減を図ることができる。
【0052】
なお、支持部材60を用いずに第1側面部34と第1側壁部22aとの隙間を解消する場合、寸法公差や、建築構造物に乗客コンベア1を設置する度合いによって、検出体30や挿入凹部22が移動手摺8に干渉するおそれがある。そのため、検出体30やインレットカバー21に求められる寸法精度が高くなるだけでなく、検出体30を設置する作業が繁雑になるおそれがある。
【0053】
したがって、上述した実施の形態例のように、第1側面部34と第1側壁部22aとの間に隙間を設けて、この隙間に支持部材60を配置することで、調整代を確保することができ、インレットカバー21や検出体30の設置作業を容易に行うことができる。さらに、インレットカバー21や検出体30に求められる寸法精度を低く抑えることができる。
【0054】
上述した実施の形態例では、傾斜型の乗客コンベアとして、踏段間に段差が生じるエスカレーターを例に挙げて説明したが、本発明の乗客コンベアとしては、踏段間に段差が生じない複数の踏段を有する電動道路、いわゆる動く歩道にも適用できるものである。
【0055】
また、傾斜区間の少なくとも一部に、上水平区間及び下水平区間に対して平行な箇所を設けたフレームを有する乗客コンベアにも適用できるものである。さらに、傾斜区間の延設方向が湾曲して変化することで、上水平区間と下水平区間の延設方向が異なるフレームを有する乗客コンベアに対しても同様に適用できるものである。
【0056】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…乗客コンベア、 2…フレーム、 3A…上部乗降床、 3B…下部乗降床、 4…デッキ部、 5…踏段、 6…欄干パネル、 7…欄干部、 8…移動手摺、 20…インレット部、 21、21B…インレットカバー、 21c…正面部、 22…挿入凹部、 22a…第1側壁部、 22b…第2側壁部、 22c…正面側開口端部、 22d…内側開口端部、 30…検出体、 31…本体部、 32…突出部、 33…切り込み、 34…第1側面部、 35…第2側面部、 36…先端部、 40…検出スイッチ、 50…安全機構、 60…支持部材