(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20221221BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/24 B
(21)【出願番号】P 2021550739
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2019038465
(87)【国際公開番号】W WO2021064775
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
(72)【発明者】
【氏名】伊東 勝道
(72)【発明者】
【氏名】森木 秀一
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 裕保
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-108722(JP,A)
【文献】特許第5570332(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な車体、または、車体に移動可能に装設された作業機と、
前記作業機または前記車体を駆動するアクチュエータと、
前記作業機または前記車体の移動範囲を設定する移動範囲設定装置と、
周辺の障害物の位置を検出する障害物位置検出装置と、
前記アクチュエータを制御する制御装置と、
を備えた作業機械において、
前記制御装置は、
前記移動範囲に基づいて前記アクチュエータを制御する第1制御指令を演算する第1制御指令演算部と、
前記移動範囲の内側の前記障害物の位置に基づいて前記アクチュエータを制御する第2制御指令を演算する第2制御指令演算部と、
前記第1制御指令と前記第2制御指令のうち、前記作業機または前記車体がより早く停止する方、もしくは、より大きく減速する方を選択して前記アクチュエータの制御を実行する制御実行部と、
を備え
、
前記第1制御指令演算部は、前記作業機または前記車体が、前記移動範囲の外側に出るまでの余裕量を演算してその値を第1余裕量とし、前記第1余裕量が大きいほど大きくなるように前記作業機または前記車体の第1速度制限値を設定してその値を前記第1制御指令とし、
前記第2制御指令演算部は、前記作業機または前記車体が、前記移動範囲の内側の前記障害物と接触するまでの余裕量を演算してその値を第2余裕量とし、前記第2余裕量が大きいほど大きくなるように前記作業機または前記車体の第2速度制限値を設定してその値を前記第2制御指令とし、
前記制御実行部は、前記第1速度制限値と前記第2速度制限値の小さい方の値を速度制限値とし、前記アクチュエータの速度が前記速度制限値よりも大きい時は、前記アクチュエータの速度が前記速度制限値以下になるように制御を行い、
前記第1余裕量が予め決めた下限値よりも大きく、かつ、前記第2余裕量が予め決めた上限値よりも小さい場合、前記第1余裕量と前記第2余裕量が同じでも、前記第2速度制限値は前記第1速度制限値よりも小さい
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
移動可能な車体、または、車体に移動可能に装設された作業機と、
前記作業機または前記車体を駆動するアクチュエータと、
前記作業機または前記車体の移動範囲を設定する移動範囲設定装置と、
周辺の障害物の位置を検出する障害物位置検出装置と、
前記アクチュエータを制御する制御装置と、
を備えた作業機械において、
前記制御装置は、
前記移動範囲に基づいて前記アクチュエータを制御する第1制御指令を演算する第1制御指令演算部と、
前記移動範囲の内側の前記障害物の位置に基づいて前記アクチュエータを制御する第2制御指令を演算する第2制御指令演算部と、
前記第1制御指令と前記第2制御指令のうち、前記作業機または前記車体がより早く停止する方、もしくは、より大きく減速する方を選択して前記アクチュエータの制御を実行する制御実行部と、
を備え
、
前記第1制御指令演算部は、前記作業機または前記車体が、前記移動範囲の外側に出るまでの余裕量を演算してその値を第1余裕量とし、前記第1余裕量が大きいほど大きくなるように前記作業機または前記車体の第1速度制限値を設定してその値を前記第1制御指令とし、
前記第2制御指令演算部は、前記移動範囲の内側の前記障害物の周囲を障害物存在範囲に設定し、前記作業機または前記車体が、前記障害物存在範囲に入るまでの余裕量を演算してその値を第2余裕量とし、前記第2余裕量が大きいほど大きくなるように前記作業機または前記車体の第2速度制限値を設定してその値を前記第2制御指令とし、
前記制御実行部は、前記第1速度制限値と前記第2速度制限値の小さい方の値を速度制限値とし、前記アクチュエータの速度が前記速度制限値よりも大きい時は、前記アクチュエータの速度が前記速度制限値以下になるように制御を行う
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の作業機械において、
前記アクチュエータは、前記車体を走行させるためのアクチュエータであり、
前記第1制御指令演算部は、前記作業機または前記車体が、前記移動範囲の外側に出るまでの走行距離を演算してその値を第1余裕量とし、
前記第2制御指令演算部は、前記作業機または前記車体が、前記障害物に接触するまでの走行距離、または、前記障害物の周囲に設定した障害物存在範囲に入るまでの走行距離を演算してその値を第2余裕量とする
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1
または2に記載の作業機械において、
前記アクチュエータは、前記車体を旋回させるためのアクチュエータであり、
前記第1制御指令演算部は、前記作業機または前記車体が、前記移動範囲の外側に出るまでの旋回角度を演算してその値を第1余裕量とし、
前記第2制御指令演算部は、前記作業機または前記車体が、前記障害物に接触するまでの旋回角度、または、前記障害物の周囲に設定した障害物存在範囲に入るまでの旋回角度を演算してその値を第2余裕量とする
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1
または2に記載の作業機械において、
前記アクチュエータは、前記作業機を移動させるためのシリンダであり、
前記第1制御指令演算部は、前記作業機が、前記移動範囲の外側に出るまでの前記アクチュエータの変位量を演算してその値を第1余裕量とし、
前記第2制御指令演算部は、前記作業機が、前記障害物に接触するまでの前記アクチュエータの変位量、または、前記障害物の周囲に設定した障害物存在範囲に入るまでの前記アクチュエータの変位量を演算してその値を第2余裕量とする
ことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項1
または2に記載の作業機械において、
前記第2制御指令演算部は、前記移動範囲が設定されていない時は、場所に関係なく前記障害物の位置に基づいて前記アクチュエータを制御する第2制御指令を演算することを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル、ブルドーザ、ホイールローダ、締固め機械、トラック等の、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
作業領域内へ進入した作業者やダンプトラック等の進入物と、作業機械のアタッチメントが接触する可能性が高い時は、アタッチメントの旋回を停止する制御を行う作業機械が知られている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載の作業機械は、旋回中心を基点としたアタッチメントの方位と進入物の方位とのなす角度間隔が閾値よりも小さくなると、旋回停止制御を開始する。その角度間隔の閾値は、旋回角速度が速いほど大きく、また、旋回慣性モーメントが大きいほど大きくなるように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法のように進入物に対する停止制御を行う場合、進入物は動くので、進入物に接触する可能性を低くするためには、ある程度余裕をもって旋回停止制御を開始する必要がある。その場合、実際には接触しない時でも停止制御が行われる場合があり、作業領域内で作業機械が停止する頻度が増え、作業効率が悪くなるという課題があった。
【0005】
本発明の目的は、作業者やダンプトラック等と接触する可能性を低くしつつ、作業効率の悪化を抑制することのできる作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の作業機械の一態様は、移動可能な車体、または、車体に移動可能に装設された作業機と、前記作業機または前記車体を駆動するアクチュエータと、前記作業機または前記車体の移動範囲を設定する移動範囲設定装置と、周辺の障害物の位置を検出する障害物位置検出装置と、前記アクチュエータを制御する制御装置と、を備えた作業機械において、前記制御装置は、前記移動範囲に基づいて前記アクチュエータを制御する第1制御指令を演算する第1制御指令演算部と、前記移動範囲の内側の前記障害物の位置に基づいて前記アクチュエータを制御する第2制御指令を演算する第2制御指令演算部と、前記第1制御指令と前記第2制御指令のうち、前記作業機または前記車体がより早く停止する方、もしくは、より大きく減速する方を選択して前記アクチュエータの制御を実行する制御実行部と、を備え、前記第1制御指令演算部は、前記作業機または前記車体が、前記移動範囲の外側に出るまでの余裕量を演算してその値を第1余裕量とし、前記第1余裕量が大きいほど大きくなるように前記作業機または前記車体の第1速度制限値を設定してその値を前記第1制御指令とし、前記第2制御指令演算部は、前記作業機または前記車体が、前記移動範囲の内側の前記障害物と接触するまでの余裕量を演算してその値を第2余裕量とし、前記第2余裕量が大きいほど大きくなるように前記作業機または前記車体の第2速度制限値を設定してその値を前記第2制御指令とし、前記制御実行部は、前記第1速度制限値と前記第2速度制限値の小さい方の値を速度制限値とし、前記アクチュエータの速度が前記速度制限値よりも大きい時は、前記アクチュエータの速度が前記速度制限値以下になるように制御を行い、前記第1余裕量が予め決めた下限値よりも大きく、かつ、前記第2余裕量が予め決めた上限値よりも小さい場合、前記第1余裕量と前記第2余裕量が同じでも、前記第2速度制限値は前記第1速度制限値よりも小さいことを特徴とする。また、本発明の作業機械の他態様は、移動可能な車体、または、車体に移動可能に装設された作業機と、前記作業機または前記車体を駆動するアクチュエータと、前記作業機または前記車体の移動範囲を設定する移動範囲設定装置と、周辺の障害物の位置を検出する障害物位置検出装置と、前記アクチュエータを制御する制御装置と、を備えた作業機械において、前記制御装置は、前記移動範囲に基づいて前記アクチュエータを制御する第1制御指令を演算する第1制御指令演算部と、前記移動範囲の内側の前記障害物の位置に基づいて前記アクチュエータを制御する第2制御指令を演算する第2制御指令演算部と、前記第1制御指令と前記第2制御指令のうち、前記作業機または前記車体がより早く停止する方、もしくは、より大きく減速する方を選択して前記アクチュエータの制御を実行する制御実行部と、を備え、前記第1制御指令演算部は、前記作業機または前記車体が、前記移動範囲の外側に出るまでの余裕量を演算してその値を第1余裕量とし、前記第1余裕量が大きいほど大きくなるように前記作業機または前記車体の第1速度制限値を設定してその値を前記第1制御指令とし、前記第2制御指令演算部は、前記移動範囲の内側の前記障害物の周囲を障害物存在範囲に設定し、前記作業機または前記車体が、前記障害物存在範囲に入るまでの余裕量を演算してその値を第2余裕量とし、前記第2余裕量が大きいほど大きくなるように前記作業機または前記車体の第2速度制限値を設定してその値を前記第2制御指令とし、前記制御実行部は、前記第1速度制限値と前記第2速度制限値の小さい方の値を速度制限値とし、前記アクチュエータの速度が前記速度制限値よりも大きい時は、前記アクチュエータの速度が前記速度制限値以下になるように制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業者やダンプトラック等と接触する可能性を低くしつつ、作業効率の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルの側面図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルのシステム構成図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態の制御装置の機能ブロック構成図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態の制御装置の第1制御指令演算部の演算処理を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第1の実施の形態の制御装置の第2制御指令演算部の演算処理を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第2の実施の形態の制御装置の第2制御指令演算部の演算処理を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第3の実施の形態の制御装置の第1制御指令演算部の演算処理を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第3の実施の形態の制御装置の第2制御指令演算部の演算処理を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の第3の実施の形態の制御装置の第1制御指令演算部で用いる第1速度制限値と第2制御指令演算部で用いる第2速度制限値の一例を示す図である。
【
図10】本発明の第4の実施の形態の制御装置の第2制御指令演算部の演算処理を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の第5の実施の形態の制御装置の機能ブロック構成図である。
【
図12】本発明の第5の実施の形態の制御装置の第1制御指令演算部の演算処理を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の第5の実施の形態の制御装置の第2制御指令演算部の演算処理を示すフローチャートである。
【
図14】本発明の第6の実施の形態の制御装置の機能ブロック構成図である。
【
図15】本発明の第6の実施の形態の制御装置の第1制御指令演算部の演算処理を示すフローチャートである。
【
図16】本発明の第6の実施の形態の制御装置の第2制御指令演算部の演算処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、作業機械として油圧ショベルを例にとって本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、ブルドーザ、ホイールローダ、締固め機械、トラック等、作業機械全般に適用可能であり、油圧ショベルに限定されるものではない。
【0010】
以下の実施の形態の説明において、同一の機能を有する部分には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略するものとする。
【0011】
[第1の実施の形態]
初めに、本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0012】
<全体構成>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルの側面図である。
図1において、油圧ショベル1は、クローラ式の自走可能な走行体10と、走行体10上に旋回可能に設けた旋回体20および旋回体20に俯仰動可能に装設したフロント作業機30を備えている。なお、請求の範囲の「作業機械」は油圧ショベル1に相当し、請求の範囲の「作業機」はフロント作業機30に相当し、請求の範囲の「車体」は走行体10および旋回体20に相当する。
【0013】
走行体10は、一対のクローラ11a、11bおよびクローラフレーム12a、12b(
図1では片側のみを示す)、各クローラ11a、11bを独立して駆動制御する一対の走行用油圧モータ13a、13bおよびその減速機構等で構成されている。アクチュエータとしての各走行用油圧モータ13a、13bの駆動力が減速機構等を介して各クローラ11a、11bに伝達され、その駆動力により油圧ショベル1(の走行体10)を作業領域内(後述する移動範囲内)で走行(移動)させる。
【0014】
旋回体20は、旋回フレーム21と、旋回フレーム21上に設けられた、原動機としてのエンジン22と、旋回用油圧モータ27と、旋回用油圧モータ27の回転を減速する減速機構26等から構成されている。アクチュエータとしての旋回用油圧モータ27の駆動力が減速機構26を介して走行体10に伝達され、その駆動力により下部の走行体10に対して上部の旋回体20(旋回フレーム21)を旋回駆動させる。
【0015】
また、旋回体20にはフロント作業機30が搭載されている。フロント作業機30は、ブーム31と、ブーム31を駆動するためのブームシリンダ32と、ブーム31の先端部近傍に回転自在に軸支されたアーム33と、アーム33を駆動するためのアームシリンダ34と、アーム33の先端に回転可能に軸支されたバケット35と、バケット35を駆動するためのバケットシリンダ36等で構成されている。アクチュエータとしてのブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36の駆動力により旋回体20(旋回フレーム21)に対してフロント作業機30(ブーム31、アーム33、バケット35)を移動させる。
【0016】
さらに、旋回体20の旋回フレーム21上には、上述した走行用油圧モータ13a、13b、旋回用油圧モータ27、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36等の油圧アクチュエータを駆動するための油圧システム40が搭載されている。なお、以下では、走行用油圧モータ13a、13b、旋回用油圧モータ27、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36を、油圧アクチュエータ13a、13b、27、32、34、36と称することがある。
【0017】
油圧システム40は、作動油タンク、油圧ポンプ、レギュレータ、コントロールバルブ等から構成されるが、これらについては後述する
図2を用いて説明する。
【0018】
また、センサ類として、フロント作業機30には、ブーム傾斜角センサ51、アーム傾斜角センサ52、バケット傾斜角センサ53が搭載されている。旋回体20の旋回フレーム21上には、旋回角度センサ54、GNSS受信装置55a、55b(
図1では片側のみを示す)、障害物位置検出装置56a、56bが搭載されている。
【0019】
ブーム傾斜角センサ51はブーム31の地面に対する傾斜角を検出し、アーム傾斜角センサ52はアーム33の地面に対する傾斜角を検出し、バケット傾斜角センサ53はバケット35の地面に対する傾斜角を検出する。これらの傾斜角センサ51、52、53は、IMU(Inertial Measurement Unit)と呼ばれる慣性計測装置であってもよく、その場合、ブーム31、アーム33、バケット35が動く時の加減速の影響を補正し、正確な傾斜角を計測することができる。
【0020】
旋回角度センサ54は、電気抵抗や磁気を用いた角度センサで、走行体10と旋回体20の相対角度を検出する。
【0021】
GNSS受信装置55a、55bは、アンテナと受信機から構成され、GNSS受信装置55a、55bの地球に対する位置(水平座標と高さ)を検出する。なお、GNSS(Global Navigation Satellite System)は、衛星を使って測位を行うシステムの総称である。
【0022】
障害物位置検出装置56a、56bは、カメラやレーダによって構成し、作業者やダンプトラック等、接触すべきではない周辺の障害物の、旋回体20に対する位置を検出する。なお、
図1では障害物位置検出装置は旋回体20(旋回フレーム21)の前後に2つ搭載しているが、搭載位置は任意に変更可能であるし、1つでも良いし、3つ以上でも良い。
【0023】
<システム構成>
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルのシステム構成図である。
図2に示すように、本システムは、エンジン22、エンジンコントローラ23、走行用油圧モータ13a、13b、旋回用油圧モータ27、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36、作動油タンク46a、46b、油圧ポンプ41a、41b、そのレギュレータ42a、42b、パイロットバルブ43a~43d、コントロールバルブ44、パイロット圧制御電磁弁45a~45l、ブーム傾斜角センサ51、アーム傾斜角センサ52、バケット傾斜角センサ53、旋回角度センサ54、GNSS受信装置55a、55b、障害物位置検出装置56a、56b、エンジンコントロールダイヤル61、移動範囲設定装置62、制御装置100で構成される。
【0024】
エンジン22は、エンジンコントローラ23によって制御され、エンジンコントローラ23は、制御装置100が出力するエンジン回転数目標値に実際のエンジン回転数が一致するように、エンジン22の燃料噴射量や燃料噴射タイミングを調整する。
【0025】
油圧ポンプ41a、41bは、可変容積型の油圧ポンプで、エンジン22によって回転駆動され、回転数と容積の積に比例した作動油を(作動油タンク46a、46bからコントロールバルブ44を介して油圧アクチュエータ13a、13b、27、32、34、36に)吐出する。
【0026】
レギュレータ42a、42bは、制御装置100からの制御指令に従って駆動され、油圧ポンプ41a、41bの容積を変更する。
【0027】
走行Lパイロットバルブ43aは、対応する操作レバー(不図示)の前後方向の傾きに応じて、走行L前進パイロット圧Pa、走行L後進パイロット圧Pbを生成する。走行Rパイロットバルブ43bは、対応する操作レバー(不図示)の前後方向の傾きに応じて、走行R前進パイロット圧Pc、走行R後進パイロット圧Pdを生成する。旋回・アームパイロットバルブ43cは、対応する操作レバー(不図示)の前後方向と左右方向の傾きに応じて、旋回右パイロット圧Pe、旋回左パイロット圧Pf、アームダンプパイロット圧Pg、アームクラウドパイロット圧Phを生成する。ブーム・バケットパイロットバルブ43dは、対応する操作レバー(不図示)の前後方向と左右方向の傾きに応じて、ブーム下げパイロット圧Pi、ブーム上げパイロット圧Pj、バケットクラウドパイロット圧Pk、バケットダンプパイロット圧Plを生成する。なお、パイロットバルブ43a~43dは、前記のように、例えば油圧ショベル1の運転席に設けられた対応する操作レバーをオペレータが動かすことによってパイロット圧Pa~Plを生成するようにしても良いし、自動運転のように、オペレータが操作レバーを動かさなくても、制御装置100による制御指令によってパイロット圧Pa~Plを生成するようにしても良い。
【0028】
コントロールバルブ44は、各油圧アクチュエータ13a、13b、27、32、34、36に対応したパイロット圧Pa~Plによって駆動され、油圧ポンプ41a、41bから油圧アクチュエータ13a、13b、27、32、34、36へ流れる流量と、油圧アクチュエータ13a、13b、27、32、34、36から作動油タンク46a、46bへ流れる流量を調整する。
【0029】
パイロット圧制御電磁弁45a~45lは、制御装置100の制御指令に従ってパイロット圧Pa~Plを制限し(パイロット圧が制限値以上の時は制限値まで低減し、制限値以下の時は何もしない)、後で説明するように、油圧アクチュエータ13a、13b、27、32、34、36を減速したり、停止したりする。
【0030】
エンジンコントロールダイヤル61は、例えば油圧ショベル1の運転席にあってオペレータがエンジン回転数を指示する手段であり、オペレータがエンジンコントロールダイヤル61をひねるとダイヤル角度に応じて出力電圧が変化する。
【0031】
移動範囲設定装置62は、本油圧ショベル1の移動範囲(=作業領域)を設定し、その情報を制御装置100へ出力する。移動範囲とは、予定している作業内容において、油圧ショベル1が走行したり、旋回したり、フロント作業機30を使って作業を行うことにより、走行体10、旋回体20、フロント作業機30が移動する範囲のことである。なお、移動範囲設定装置62は、油圧ショベル1の運転席にあってオペレータが操作・設定することによって制御装置100へ情報を送っても良いし、油圧ショベル1の外側にあり、無線によって制御装置100へ情報を送っても良い。
【0032】
制御装置100は、エンジンコントロールダイヤル61の出力電圧に基づいて、エンジン回転数目標値をエンジンコントローラ23に出力する。また、パイロット圧Pa~Plをセンサによって検出し、その検出値とパイロット圧制御電磁弁45a~45lの指令値に基づいて、油圧アクチュエータ13a、13b、27、32、34、36へ流す流量を確保するようにレギュレータ42a、42bを制御する。
【0033】
また、制御装置100は、後で説明するように、パイロット圧制御電磁弁45a~45lを制御することで、油圧アクチュエータ13a、13b、27、32、34、36を減速したり、停止したりする。パイロット圧制御電磁弁45a~45lの制御方法に関して、
図3等を用いて説明する。
【0034】
<制御装置の機能ブロック構成および制御内容>
図3は、本発明の第1の実施の形態の制御装置100の機能ブロック構成図である。
図3は、制御装置100によるパイロット圧制御電磁弁45a~45lの制御方法の一例、特に、そのうちの走行に関連するパイロット圧Pa~Pdを制御するパイロット圧制御電磁弁45a~45dの制御方法の一例を示している。
【0035】
制御装置100は、図示しないが、各種演算を行うCPU、CPUによる演算を実行するためのプログラムを格納するROMやHDD等の記憶装置、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM、他の機器とデータを送受信する際のインタフェースである通信インタフェース(通信I/F)等を含むマイクロコンピュータ(マイコン)として構成される。制御装置100の各機能は、CPUが、記憶装置に格納された各種プログラムをRAMにロードして実行することにより、実現される。
【0036】
制御装置100の旋回体現在位置・向き演算部101では、GNSS受信装置55a、55bで検出したGNSS受信装置55aの位置とGNSS受信装置55bの位置から、旋回体20の旋回中心の位置と、旋回体20の向き(方位)を演算して出力する。
【0037】
走行体現在位置・向き演算部102では、旋回体現在位置・向き演算部101で演算した旋回体20の位置と同じ値を、走行体10の位置として出力する。また、旋回体現在位置・向き演算部101で演算した旋回体20の向きと、旋回角度センサ54が検出した旋回角度(走行体10と旋回体20の相対角度)から、走行体10の向きを演算して出力する。
【0038】
走行体位置・向き演算部103では、走行体現在位置・向き演算部102から入力した走行体10の現在の位置と向きから、最大速度で走行した場合の走行体10の将来の位置と向きを演算する。例えば、前進方向に最大速度で走行した場合の0.1秒後、0.2秒後、0.3秒後、・・・、2.0秒後の位置と、後進方向に最大速度で走行した場合の0.1秒後、0.2秒後、0.3秒後、・・・、2.0秒後の位置を演算する。将来の向きは、現在の向きと同じとする。なお、現在、走行している最中であれば、その軌跡を保つように走行した場合の0.1秒後、0.2秒後、0.3秒後、・・・、2.0秒後の位置と向きを演算しても良い。走行体位置・向き演算部103からは、走行体位置・向き演算部103で演算した走行体10の将来の位置と向きの情報と、走行体現在位置・向き演算部102で演算した走行体10の現在の位置と向きの情報を合わせて出力する。
【0039】
旋回体位置・向き演算部104では、走行体位置・向き演算部103で演算した走行体10の将来の位置と同じ値を、旋回体20の将来の位置とする。また、走行体位置・向き演算部103で演算した走行体10の将来の向きと、旋回角度センサ54が検出した旋回角度(走行体10と旋回体20の相対角度)から、(将来の旋回角度が現在と同じであると仮定して)旋回体20の将来の向きを演算する。旋回体位置・向き演算部104からは、旋回体位置・向き演算部104で演算した旋回体20の将来の位置と向きの情報と、旋回体現在位置・向き演算部101で演算した旋回体20の現在の位置と向きの情報を合わせて出力する。
【0040】
ブーム位置・向き演算部105では、旋回体位置・向き演算部104から入力した旋回体20の現在と将来の位置と向きから、ブーム31の旋回体20との接続部の現在と将来の位置を演算し、その演算値とブーム傾斜角センサ51で検出したブーム31の傾斜角から、ブーム31のアーム33との接続部の現在と将来の位置を演算し、その演算値をブーム31の現在と将来の位置として出力する。また、旋回体位置・向き演算部104から入力した旋回体20の現在と将来の向きと同じ値を、ブーム31の現在と将来の向きとして出力する。
【0041】
アーム位置・向き演算部106では、ブーム位置・向き演算部105から入力したブーム31の現在と将来の位置と向きと、アーム傾斜角センサ52で検出したアーム33の傾斜角から、アーム33のバケット35との接続部の現在と将来の位置を演算し、その演算値をアーム33の現在と将来の位置として出力する。また、ブーム位置・向き演算部105から入力したブーム31の現在と将来の向きと同じ値をアーム33の現在と将来の向きとして出力する。
【0042】
バケット位置・向き演算部107では、アーム位置・向き演算部106から入力したアーム33の現在と将来の位置と向きと、バケット傾斜角センサ53で検出したバケット35の傾斜角から、バケット35の先端の現在と将来の位置を演算し、その演算値をバケット35の現在と将来の位置として出力する。また、アーム位置・向き演算部106から入力したアーム33の現在と将来の向きと同じ値をバケット35の現在と将来の向きとして出力する。
【0043】
第1制御指令演算部108では、上述した各演算部103~107が出力した情報と移動範囲設定装置62で設定した移動範囲の情報を入力とし、基本的に移動範囲設定装置62で設定した移動範囲に基づいて油圧アクチュエータ13a、13b、27、32、34、36を制御するための第1制御指令を演算する。
【0044】
第1制御指令演算部108では、
図4のフローチャートに示した演算を行う。初めに、移動範囲設定装置62で移動範囲が設定されているかどうかを判定する(S201)。移動範囲が設定されている場合は(S201:Yes)、走行体10、旋回体20、ブーム31、アーム33、バケット35の一部が、現在または将来、移動範囲の外側に出るかどうかを判定する(S202)。移動範囲の外側に出る場合は(S202:Yes)、最も早く出るまでの時間(現在、移動範囲の外側に出ている時は、ゼロ)と、走行の最大速度を乗じることで、出るまでの走行距離(余裕量)を演算し、その値を第1余裕量とする(S203)。移動範囲の外側に出ない場合や(S202:No)、移動範囲が設定されていない場合は(S201:No)、十分大きな値(後述する第1閾値よりも大きな値)を第1余裕量とする(S204)。そして、第1余裕量が第1閾値以下かどうかを判定し(S205)、第1余裕量が第1閾値以下の時は(S205:Yes)、停止指令を第1制御指令として出力し(S206)、第1余裕量が第1閾値より大きい時は(S205:No)、動作継続指令を第1制御指令として出力する(S207)。第1閾値は、あらかじめ設定した固定値でも良いし、下り坂では止まりにくくなることを考慮して、下る方向の傾斜が強いほど大きくなるように閾値を変更しても良い。
【0045】
一方、第2制御指令演算部109では、上述した各演算部103~107が出力した情報と移動範囲設定装置62で設定した移動範囲の情報と障害物位置検出装置56a、56bで検出した障害物の位置の情報を入力とし、基本的に障害物位置検出装置56a、56bで検出した障害物の位置に基づいて油圧アクチュエータ13a、13b、27、32、34、36を制御するための第2制御指令を演算する。
【0046】
第2制御指令演算部109では、
図5のフローチャートに示した演算を行う。初めに、移動範囲設定装置62で移動範囲が設定されているかどうかを判定する(S301)。移動範囲が設定されている場合は(S301:Yes)、移動範囲の内側に障害物があるかどうかを判定する(S302)。移動範囲が設定されていない場合は(S301:No)、場所に関係なく障害物があるかどうかを判定する(S303)。S302またはS303で障害物がある場合は(S302、S303:Yes)、走行体10、旋回体20、ブーム31、アーム33、バケット35の一部が、現在または将来、障害物に接触するかどうかを判定する(S304)。障害物に接触する場合は(S304:Yes)、最も早く接触するまでの時間(仮に、現在、障害物に接触している時は、ゼロ)と、走行の最大速度を乗じることで、接触するまでの走行距離(余裕量)を演算し、その値を第2余裕量とする(S305)。障害物に接触しない場合や(S304:No)、S302またはS303で障害物がない場合は(S302、S303:No)、十分大きな値(後述する第2閾値よりも大きな値)を第2余裕量とする(S306)。そして、第2余裕量が第2閾値以下かどうかを判定し(S307)、第2余裕量が第2閾値以下の時は(S307:Yes)、停止指令を第2制御指令として出力し(S308)、第2余裕量が第2閾値より大きい時は(S307:No)、動作継続指令を第2制御指令として出力する(S309)。第2閾値は、あらかじめ設定した固定値でも良いし、下り坂では止まりにくくなることを考慮して、下る方向の傾斜が強いほど大きくなるように閾値を変更しても良い。
【0047】
作業者やダンプトラック等の障害物は移動する場合があるので、障害物(移動範囲に進入する障害物)に対する停止制御は、移動範囲に対する停止制御よりも余裕をもって(早いタイミングで)行うことが望ましい。
【0048】
そこで、第2制御指令演算部109で設定する第2閾値は、第1制御指令演算部108で設定する第1閾値よりも大きい値に設定する。一例として、第2閾値は5m、第1閾値は2mに設定する。また、第2制御指令演算部109で設定する第2閾値は、障害物位置検出装置56a、56bで検出した位置に誤差があることを考慮して、比較的大きい値に設定しても良い。
【0049】
図3に戻り、制御実行部110では、第1制御指令演算部108から入力した第1制御指令と第2制御指令演算部109から入力した第2制御指令の少なくとも片方が停止指令の時は、そのうちの適切な停止指令を選択し、走行を停止する(詳しくは、油圧アクチュエータとしての走行用油圧モータ13a、13bを停止する制御を行う)ために、コントロールバルブ44に入る走行L前進パイロット圧Pa、走行L後進パイロット圧Pb、走行R前進パイロット圧Pc、走行R後進パイロット圧Pdをカットする(0MPaにする)ように、パイロット圧制御電磁弁45a~45dを制御する。
【0050】
詳しくは、制御実行部110では、第1制御指令演算部108から入力した第1制御指令と第2制御指令演算部109から入力した第2制御指令の片方が停止指令の時は、その停止指令を選択し、上述したように、パイロット圧制御電磁弁45a~45dを制御する。
【0051】
また、制御実行部110では、第1制御指令演算部108から入力した第1制御指令と第2制御指令演算部109から入力した第2制御指令の両方が停止指令の時は、そのうちの走行をより早く停止する方(油圧アクチュエータとしての走行用油圧モータ13a、13bをより早く停止する方)の停止指令を選択し、上述したように、パイロット圧制御電磁弁45a~45dを制御する。
【0052】
この時、残りのパイロット圧制御電磁弁45e~45lに関しては、パイロット圧をカットしても良いし、カットしなくても良い。パイロット圧をカットして動きを止めれば、走行だけでなく全てのアクチュエータが止まるので、オペレータは油圧ショベル1全体の動きを理解しやすい。パイロット圧をカットしなければ、走行以外の動きは継続されるので、利便性が良い。
【0053】
いずれの場合も、上述した走行停止制御により、車体(走行体10、旋回体20)や作業機(フロント作業機30のブーム31、アーム33、バケット35)が、設定した移動範囲の外側に出たり、検出した障害物と接触したりする可能性を低くすることができる。
【0054】
なお、制御実行部110では、第1制御指令演算部108から入力した第1制御指令と第2制御指令演算部109から入力した第2制御指令の両方が動作継続指令の時は、現在の走行を継続するために、コントロールバルブ44に入る走行L前進パイロット圧Pa、走行L後進パイロット圧Pb、走行R前進パイロット圧Pc、走行R後進パイロット圧Pdを維持するように、パイロット圧制御電磁弁45a~45dを制御する。
【0055】
このように、第1の実施の形態の作業機械としての油圧ショベル1は、移動可能な車体(走行体10、旋回体20)、または、車体に移動可能に装設された作業機(フロント作業機30のブーム31、アーム33、バケット35)と、前記作業機または前記車体を駆動するアクチュエータ(走行用油圧モータ13a、13b、旋回用油圧モータ27、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36)と、前記作業機または前記車体の移動範囲を設定する移動範囲設定装置62と、周辺の障害物の位置を検出する障害物位置検出装置56a、56bと、前記アクチュエータを制御する制御装置100と、を備える。前記制御装置100は、前記移動範囲に基づいて前記アクチュエータを制御する第1制御指令を演算する第1制御指令演算部108と、前記移動範囲の内側の前記障害物の位置、または、前記移動範囲が設定されていない時の前記障害物の位置に基づいて前記アクチュエータを制御する第2制御指令を演算する第2制御指令演算部109と、前記第1制御指令と前記第2制御指令のうち、前記作業機または前記車体がより早く停止する方を選択して前記アクチュエータの制御を実行する制御実行部110と、を備える。
【0056】
また、前記第1制御指令演算部108は、前記作業機または前記車体が、前記移動範囲の外側に出るまでの余裕量を演算してその値を第1余裕量とし、前記第1余裕量が第1閾値以下の時は前記第1制御指令を停止指令とし、前記第1余裕量が前記第1閾値より大きい時は前記第1制御指令を動作継続指令とする。前記第2制御指令演算部109は、前記作業機または前記車体が、前記移動範囲の内側の前記障害物、または、前記移動範囲が設定されていない時の前記障害物と接触するまでの余裕量を演算してその値を第2余裕量とし、前記第2余裕量が第2閾値以下の時は前記第2制御指令を停止指令とし、前記第2余裕量が前記第2閾値より大きい時は前記第2制御指令を動作継続指令とする。前記制御実行部110は、前記第1制御指令と前記第2制御指令の少なくとも片方が停止指令の時は、前記アクチュエータを停止する制御を行う。前記第2閾値は、前記第1閾値よりも大きい。
【0057】
ここで、前記第2閾値は、前記第1閾値よりも大きいので、障害物に対する停止制御は、移動範囲に対する停止制御よりも余裕をもって(早いタイミングで)行うことが可能となる。
【0058】
以上のように、第1の実施の形態によれば、障害物に対しては余裕をもって停止制御を行うが、移動範囲に対しては比較的余裕をもたないで(余裕代を最小限に抑えて)停止制御を行うので、あらかじめ移動範囲を設定して作業者やダンプトラック等が設定した移動範囲の内側に入らないようにすれば、車体が停止する頻度を抑えることができ、作業効率の悪化を抑制できる。また、作業者やダンプトラック等が本作業機械の移動範囲の内側に入った時は、車体は余裕をもって停止制御を行うので、作業者やダンプトラック等と接触する可能性を低くすることができる。
【0059】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0060】
第2の実施の形態は、第1の実施の形態の制御装置100の第2制御指令演算部109の演算内容が異なるだけで、他は第1の実施の形態と同じである。
【0061】
第2の実施の形態の第2制御指令演算部109では、
図6のフローチャートに示した演算を行う。
図6のS301~S303、S306~S309の演算内容は、第1の実施の形態(
図5参照)と同じである。本第2の実施の形態では、S302またはS303で障害物がある場合は(S302、S303:Yes)、障害物の周囲を、障害物が現在または将来に存在する可能性のある範囲として設定する(この範囲を障害物存在範囲と呼ぶ)(S311)。この範囲は、あらかじめ設定した固定値でも良いし、障害物が移動することを考慮して、時間の経過につれて大きくなるようにしても良い。時間の経過につれて大きくなるようにする場合、障害物存在範囲は、現在の範囲と、0.1秒後、0.2秒後、0.3秒後、・・・、2.0秒後の範囲を、それぞれ設定する。また、障害物存在範囲は、障害物の周囲、数mの円形の領域でも良いし、障害物が移動することを考慮して、移動方向側が大きくなるようにしても良い。次いで、走行体10、旋回体20、ブーム31、アーム33、バケット35の一部が、現在または将来、障害物存在範囲に入るかどうかを判定する(S312)。障害物存在範囲に入る場合は(S312:Yes)、障害物存在範囲に入るまでの時間(仮に、現在、障害物存在範囲に入っている時は、ゼロ)と、走行の最大速度を乗じることで、入るまでの走行距離(余裕量)を演算し、その値を第2余裕量とする(S313)。
【0062】
第2の実施の形態では、障害物の周囲に設定した障害物存在範囲に対して停止制御を行うため、障害物そのものに対しては余裕をもった停止制御を行うことになる。よって、第1の実施の形態とは異なり、第2制御指令演算部109で設定する第2閾値は、第1制御指令演算部108で設定する第1閾値よりも大きくしなくても良い。一例として、第2閾値は、第1閾値と同じ値(例えば2m)に設定しても良い。
【0063】
このように、第2の実施の形態では、前記第1制御指令演算部108は、前記作業機または前記車体が、前記移動範囲の外側に出るまでの余裕量を演算してその値を第1余裕量とし、前記第1余裕量が第1閾値以下の時は前記第1制御指令を停止指令とし、前記第1余裕量が前記第1閾値より大きい時は前記第1制御指令を動作継続指令とする。前記第2制御指令演算部109は、前記移動範囲の内側の前記障害物の周囲、または、前記移動範囲が設定されていない時の前記障害物の周囲を障害物存在範囲に設定し、前記作業機または前記車体が、前記障害物存在範囲に入るまでの余裕量を演算してその値を第2余裕量とし、前記第2余裕量が第2閾値以下の時は前記第2制御指令を停止指令とし、前記第2余裕量が前記第2閾値より大きい時は前記第2制御指令を動作継続指令とする。前記制御実行部110は、前記第1制御指令と前記第2制御指令の少なくとも片方が停止指令の時は、前記アクチュエータを停止する制御を行う。
【0064】
以上のように、第2の実施の形態においても、障害物に対しては余裕をもって停止制御を行うが、移動範囲に対しては比較的余裕をもたないで(余裕代を最小限に抑えて)停止制御を行うので、あらかじめ移動範囲を設定して作業者やダンプトラック等が設定した移動範囲の内側に入らないようにすれば、車体が停止する頻度を抑えることができ、作業効率の悪化を抑制できる。また、作業者やダンプトラック等が本作業機械の移動範囲の内側に入った時は、車体は余裕をもって停止制御を行うので、作業者やダンプトラック等と接触する可能性を低くすることができる。
【0065】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
【0066】
第3の実施の形態は、第1の実施の形態の制御装置100の第1制御指令演算部108、第2制御指令演算部109、制御実行部110の演算内容が異なるだけで、他は第1の実施の形態と同じである。
【0067】
第3の実施の形態の第1制御指令演算部108では、
図7のフローチャートに示した演算を行う。
図7のS201~S203の演算内容は、第1の実施の形態(
図4参照)と同じである。本第3の実施の形態では、走行体10、旋回体20、ブーム31、アーム33、バケット35の一部が、現在または将来、移動範囲の外側に出ない場合や(S202:No)、移動範囲設定装置62で移動範囲が設定されていない場合は(S201:No)、後述する
図9で第1速度制限値が最大速度になる余裕量X1よりも十分大きな値を第1余裕量とする(S221)。次いで、
図9を用いて、第1余裕量から第1速度制限値を演算し、その値を第1制御指令として出力する(S222)。
【0068】
図9の第1速度制限値は、油圧アクチュエータ13a、13b、27、32、34、36を減速、停止する制御を行うための速度制限値(速度上限値)であり、第1余裕量が大きいほど大きくなるように(言い換えれば、第1余裕量が小さいほど小さくなるように)設定する。
図9の値は、あらかじめ設定した固定値でも良いし、下り坂では止まりにくくなることを考慮して、下る方向の傾斜が強いほど小さくなるように値を変更しても良い。
【0069】
一方、第3の実施の形態の第2制御指令演算部109では、
図8のフローチャートに示した演算を行う。
図8のS301~S305の演算内容は、第1の実施の形態(
図5参照)と同じである。本第3の実施の形態では、走行体10、旋回体20、ブーム31、アーム33、バケット35の一部が、現在または将来、障害物に接触しない場合や(S304:No)、S302またはS303で障害物がない場合は(S302、S303:No)、後述する
図9で第2速度制限値が最大速度になる余裕量X2よりも十分大きな値を第2余裕量とする(S321)。次いで、
図9を用いて、第2余裕量から第2速度制限値を演算し、その値を第2制御指令として出力する(S322)。
【0070】
図9の第2速度制限値は、油圧アクチュエータ13a、13b、27、32、34、36を減速、停止する制御を行うための速度制限値(速度上限値)であり、第2余裕量が大きいほど大きくなるように(言い換えれば、第2余裕量が小さいほど小さくなるように)設定する。
図9の値は、あらかじめ設定した固定値でも良いし、下り坂では止まりにくくなることを考慮して、下る方向の傾斜が強いほど小さくなるように値を変更しても良い。
【0071】
作業者やダンプトラック等の障害物は移動する場合があるので、障害物(移動範囲に進入する障害物)に対しては余裕をもって減速、停止できるように、第2制御指令演算部109で用いる第2速度制限値は、少なくとも一部の範囲(詳しくは、第1余裕量が予め決めた下限値であって第1速度制限値がゼロになる値よりも大きく、かつ、第2余裕量が予め決めた上限値であって第2速度制限値が最大速度になる値よりも小さい場合)では、第1余裕量と第2余裕量が同じでも、第1制御指令演算部108で用いる第1速度制限値よりも小さい値に設定する。また、第2制御指令演算部109で用いる第2速度制限値は、障害物位置検出装置56a、56bで検出した位置に誤差があることを考慮して、比較的小さい値に設定しても良い。
【0072】
第3の実施の形態の制御実行部110では、第1制御指令演算部108から入力した第1制御指令(第1速度制限値)と第2制御指令演算部109から入力した第2制御指令(第2速度制限値)の小さい方(換言すれば、油圧アクチュエータ13a、13b、27、32、34、36、ひいては、車体(走行体10、旋回体20)または作業機(フロント作業機30のブーム31、アーム33、バケット35)がより大きく減速する方)の値を選択して走行速度制限値とし、走行速度が走行速度制限値よりも大きい時は、走行速度を走行速度制限値以下にする(詳しくは、油圧アクチュエータとしての走行用油圧モータ13a、13bの回転速度が走行速度制限値に対応した回転速度制限値よりも大きい時は、走行用油圧モータ13a、13bの回転速度が回転速度制限値以下になるように制御を行う)ために、コントロールバルブ44に入る走行L前進パイロット圧Pa、走行L後進パイロット圧Pb、走行R前進パイロット圧Pc、走行R後進パイロット圧Pdを制限するように、パイロット圧制御電磁弁45a~45dを制御する。
【0073】
上述した本制御により、車体(走行体10、旋回体20)や作業機(フロント作業機30のブーム31、アーム33、バケット35)が、設定した移動範囲の外側や障害物に近づくにつれて走行速度が低くなるので、設定した移動範囲の外側に出たり、検出した障害物と接触したりする可能性を低くすることができる。
【0074】
このように、第3の実施の形態では、前記制御装置100は、前記移動範囲に基づいて前記アクチュエータを制御する第1制御指令を演算する第1制御指令演算部108と、前記移動範囲の内側の前記障害物の位置、または、前記移動範囲が設定されていない時の前記障害物の位置に基づいて前記アクチュエータを制御する第2制御指令を演算する第2制御指令演算部109と、前記第1制御指令と前記第2制御指令のうち、前記作業機または前記車体がより大きく減速する方を選択して前記アクチュエータの制御を実行する制御実行部110と、を備える。
【0075】
また、前記第1制御指令演算部108は、前記作業機または前記車体が、前記移動範囲の外側に出るまでの余裕量を演算してその値を第1余裕量とし、前記第1余裕量が大きいほど大きくなるように前記作業機または前記車体の第1速度制限値を設定してその値を前記第1制御指令とする。前記第2制御指令演算部109は、前記作業機または前記車体が、前記移動範囲の内側の前記障害物、または、前記移動範囲が設定されていない時の前記障害物と接触するまでの余裕量を演算してその値を第2余裕量とし、前記第2余裕量が大きいほど大きくなるように前記作業機または前記車体の第2速度制限値を設定してその値を前記第2制御指令とする。前記制御実行部110は、前記第1速度制限値と前記第2速度制限値の小さい方の値を速度制限値とし、前記アクチュエータの速度が前記速度制限値よりも大きい時は、前記アクチュエータの速度が前記速度制限値以下になるように制御を行う。前記第1余裕量が予め決めた下限値よりも大きく、かつ、前記第2余裕量が予め決めた上限値よりも小さい場合、前記第1余裕量と前記第2余裕量が同じでも、前記第2速度制限値は前記第1速度制限値よりも小さい。
【0076】
ここで、前記第1余裕量と前記第2余裕量が同じでも、前記第2速度制限値は前記第1速度制限値よりも小さいので、障害物に対しては余裕をもって減速、停止することができる。
【0077】
以上のように、第3の実施の形態においても、障害物に対しては余裕をもって減速制御を行うが、移動範囲に対しては比較的余裕をもたないで(余裕代を最小限に抑えて)減速制御を行うので、あらかじめ移動範囲を設定して作業者やダンプトラック等が設定した移動範囲の内側に入らないようにすれば、車体が減速する頻度を抑えることができ、作業効率の悪化を抑制できる。また、作業者やダンプトラック等が本作業機械の移動範囲の内側に入った時は、車体は余裕をもって減速制御を行うので、作業者やダンプトラック等と接触する可能性を低くすることができる。
【0078】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。
【0079】
第4の実施の形態は、第3の実施の形態の制御装置100の第2制御指令演算部109の演算内容が異なるだけで、他は第3の実施の形態と同じである。
【0080】
第4の実施の形態の第2制御指令演算部109では、
図10のフローチャートに示した演算を行う。
図10のS301~S303、S321、S322の演算内容は、第3の実施の形態(
図8参照)と同じである。また、
図10のS311~S313の演算内容は、第2の実施の形態(
図6参照)と同じである。
【0081】
第4の実施の形態では、障害物の周囲に設定した障害物存在範囲に対して減速制御を行うため、障害物そのものに対しては余裕をもった減速制御を行うことになる。よって、第3の実施の形態とは異なり、第2制御指令演算部109で用いる第2速度制限値は、第1制御指令演算部108で用いる第1速度制限値よりも小さくしなくても良い。一例として、第2速度制限値は、第1速度制限値と同じ値に設定しても良い。
【0082】
このように、第4の実施の形態では、前記第1制御指令演算部108は、前記作業機または前記車体が、前記移動範囲の外側に出るまでの余裕量を演算してその値を第1余裕量とし、前記第1余裕量が大きいほど大きくなるように前記作業機または前記車体の第1速度制限値を設定してその値を前記第1制御指令とする。前記第2制御指令演算部109は、前記移動範囲の内側の前記障害物の周囲、または、前記移動範囲が設定されていない時の前記障害物の周囲を障害物存在範囲に設定し、前記作業機または前記車体が、前記障害物存在範囲に入るまでの余裕量を演算してその値を第2余裕量とし、前記第2余裕量が大きいほど大きくなるように前記作業機または前記車体の第2速度制限値を設定してその値を前記第2制御指令とする。前記制御実行部110は、前記第1速度制限値と前記第2速度制限値の小さい方の値を速度制限値とし、前記アクチュエータの速度が前記速度制限値よりも大きい時は、前記アクチュエータの速度が前記速度制限値以下になるように制御を行う。
【0083】
以上のように、第4の実施の形態においても、障害物に対しては余裕をもって減速制御を行うが、移動範囲に対しては比較的余裕をもたないで(余裕代を最小限に抑えて)減速制御を行うので、あらかじめ移動範囲を設定して作業者やダンプトラック等が設定した移動範囲の内側に入らないようにすれば、車体が減速する頻度を抑えることができ、作業効率の悪化を抑制できる。また、作業者やダンプトラック等が本作業機械の移動範囲の内側に入った時は、車体は余裕をもって減速制御を行うので、作業者やダンプトラック等と接触する可能性を低くすることができる。
【0084】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態を説明する。
【0085】
第5の実施の形態は、第1の実施の形態の制御装置100によるパイロット圧制御電磁弁45a~45lの制御方法が異なるだけで、他は第1の実施の形態と同じである。
【0086】
上述した第1の実施の形態では、パイロット圧制御電磁弁45a~45lのうちの走行に関連するパイロット圧Pa~Pdを制御するパイロット圧制御電磁弁45a~45dを制御することで、車体(走行体10、旋回体20)を減速したり、停止したりする制御を行うものとしたが、第5の実施の形態では、旋回に関連するパイロット圧Pe、Pfを制御するパイロット圧制御電磁弁45e、45fを制御することで、車体(旋回体20)を減速したり、停止したりする制御を行うものとする。
【0087】
図11は、本発明の第5の実施の形態の制御装置100の機能ブロック構成図である。
図11は、制御装置100によるパイロット圧制御電磁弁45a~45lの制御方法の一例、特に、そのうちの旋回に関連するパイロット圧Pe、Pfを制御するパイロット圧制御電磁弁45e、45fの制御方法の一例を示している。
図11の旋回体現在位置・向き演算部101、ブーム位置・向き演算部105、アーム位置・向き演算部106、バケット位置・向き演算部107の演算内容は第1の実施の形態(
図3参照)と同じであるが、第1の実施の形態の走行体現在位置・向き演算部102および走行体位置・向き演算部103が省略され、旋回体位置・向き演算部104、第1制御指令演算部108、第2制御指令演算部109、制御実行部110の演算内容は第1の実施の形態と異なる。
【0088】
旋回体位置・向き演算部104では、旋回体現在位置・向き演算部101で演算した旋回体20の現在の向きから、最大角速度で旋回した場合の旋回体20の将来の向きを演算する。例えば、右方向に最大角速度で旋回した場合の0.1秒後、0.2秒後、0.3秒後、・・・、2.0秒後の向きと、左方向に最大角速度で旋回した場合の0.1秒後、0.2秒後、0.3秒後、・・・、2.0秒後の向きを演算する。旋回体20の将来の位置は、旋回体現在位置・向き演算部101で演算した旋回体20の現在の位置と同じとする。なお、現在、旋回している最中であれば、現在旋回している方向でのみ、将来の向きを演算しても良い。旋回体位置・向き演算部104からは、旋回体位置・向き演算部104で演算した旋回体20の将来の位置と向きの情報と、旋回体現在位置・向き演算部101で演算した旋回体20の現在の位置と向きの情報を合わせて出力する。
【0089】
第1制御指令演算部108では、
図12のフローチャートに示した演算を行う。第5の実施の形態の本演算は、第1の実施の形態(のS202、S203)(
図4参照)とS252、S253の演算内容が異なるだけで、他は同じである。
【0090】
本第5の実施の形態では、移動範囲設定装置62で移動範囲が設定されている場合は(S201:Yes)、旋回体20、ブーム31、アーム33、バケット35の一部が、現在または将来、移動範囲の外側に出るかどうかを判定する(第1の実施の形態では、走行体10が移動範囲の外側に出るかどうかの判定も行う)(S252)。移動範囲の外側に出る場合は(S252:Yes)、移動範囲の外側に出るまでの時間(現在、移動範囲の外側に出ている時は、ゼロ)と、旋回の最大角速度を乗じることで、出るまでの旋回角度(余裕量)を演算し、その値を第1余裕量とする(S253)。S252、S253以外は第1の実施の形態と同じ演算を行い、第1制御指令(停止指令、または、動作継続指令)を設定する。
【0091】
第2制御指令演算部109では、
図13のフローチャートに示した演算を行う。第5の実施の形態の本演算は、第1の実施の形態(のS304、S305)(
図5参照)とS354、S355の演算内容が異なるだけで、他は同じである。
【0092】
本第5の実施の形態では、S302またはS303で障害物がある場合は(S302、S303:Yes)、旋回体20、ブーム31、アーム33、バケット35の一部が、現在または将来、障害物に接触するかどうかを判定する(第1の実施の形態では、走行体10が障害物に接触するかどうかの判定も行う)(S354)。障害物に接触する場合は(S354:Yes)、障害物に接触するまでの時間(仮に、現在、障害物に接触している時は、ゼロ)と、旋回の最大角速度を乗じることで、接触するまでの旋回角度(余裕量)を演算し、その値を第2余裕量とする(S355)。S354、S355以外は第1の実施の形態と同じ演算を行い、第2制御指令(停止指令、または、動作継続指令)を設定する。
【0093】
なお、第5の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、第2制御指令演算部109で設定する第2閾値は、第1制御指令演算部108で設定する第1閾値よりも大きい値に設定する。
【0094】
図11に戻り、制御実行部110では、第1制御指令演算部108から入力した第1制御指令と第2制御指令演算部109から入力した第2制御指令の少なくとも片方が停止指令の時は、そのうちの適切な停止指令を選択し、旋回を停止する(詳しくは、油圧アクチュエータとしての旋回用油圧モータ27を停止する制御を行う)ために、コントロールバルブ44に入る旋回右パイロット圧Pe、旋回左パイロット圧Pfをカットする(0MPaにする)ように、パイロット圧制御電磁弁45e、45fを制御する。
【0095】
詳しくは、制御実行部110では、第1制御指令演算部108から入力した第1制御指令と第2制御指令演算部109から入力した第2制御指令の片方が停止指令の時は、その停止指令を選択し、上述したように、パイロット圧制御電磁弁45e、45fを制御する。
【0096】
また、制御実行部110では、第1制御指令演算部108から入力した第1制御指令と第2制御指令演算部109から入力した第2制御指令の両方が停止指令の時は、そのうちの旋回をより早く停止する方(油圧アクチュエータとしての旋回用油圧モータ27をより早く停止する方)の停止指令を選択し、上述したように、パイロット圧制御電磁弁45e、45fを制御する。
【0097】
この時、残りのパイロット圧制御電磁弁45a~45d、45g~45lに関しては、パイロット圧をカットしても良いし、カットしなくても良い。パイロット圧をカットして動きを止めれば、旋回だけでなく全てのアクチュエータが止まるので、オペレータは油圧ショベル1全体の動きを理解しやすい。パイロット圧をカットしなければ、旋回以外の動きは継続されるので、利便性が良い。
【0098】
いずれの場合も、上述した旋回停止制御により、車体(旋回体20)や作業機(フロント作業機30のブーム31、アーム33、バケット35)が、設定した移動範囲の外側に出たり、検出した障害物と接触したりする可能性を低くすることができる。
【0099】
なお、制御実行部110では、第1制御指令演算部108から入力した第1制御指令と第2制御指令演算部109から入力した第2制御指令の両方が動作継続指令の時は、現在の旋回を継続するために、コントロールバルブ44に入る旋回右パイロット圧Pe、旋回左パイロット圧Pfを維持するように、パイロット圧制御電磁弁45e、45fを制御する。
【0100】
以上のように、第5の実施の形態においても、障害物に対しては余裕をもって停止制御を行うが、移動範囲に対しては比較的余裕をもたないで(余裕代を最小限に抑えて)停止制御を行うので、あらかじめ移動範囲を設定して作業者やダンプトラック等が設定した移動範囲の内側に入らないようにすれば、車体が停止する頻度を抑えることができ、作業効率の悪化を抑制できる。また、作業者やダンプトラック等が本作業機械の移動範囲の内側に入った時は、車体は余裕をもって停止制御を行うので、作業者やダンプトラック等と接触する可能性を低くすることができる。
【0101】
なお、ここでは、第5の実施の形態を第1の実施の形態に対する変形形態として説明したが、例えば第2~第4の実施の形態と組み合わせて適用できることは詳述するまでも無い。
【0102】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態を説明する。
【0103】
第6の実施の形態は、第1の実施の形態の制御装置100によるパイロット圧制御電磁弁45a~45lの制御方法が異なるだけで、他は第1の実施の形態と同じである。
【0104】
上述した第1の実施の形態では、パイロット圧制御電磁弁45a~45lのうちの走行に関連するパイロット圧Pa~Pdを制御するパイロット圧制御電磁弁45a~45dを制御することで、車体(走行体10、旋回体20)を減速したり、停止したりする制御を行うものとしたが、第6の実施の形態では、作業機(フロント作業機30)の移動に関連するパイロット圧Pg~Plを制御するパイロット圧制御電磁弁45g~45lを制御することで、作業機(フロント作業機30)を減速したり、停止したりする制御を行うものとする。
【0105】
図14は、本発明の第6の実施の形態の制御装置100の機能ブロック構成図である。
図14は、制御装置100によるパイロット圧制御電磁弁45a~45lの制御方法の一例、特に、そのうちの作業機(フロント作業機30)の移動に関連するパイロット圧Pg~Plを制御するパイロット圧制御電磁弁45g~45lの制御方法の一例を示している。
図14の旋回体現在位置・向き演算部101、バケット位置・向き演算部107の演算内容は第1の実施の形態(
図3参照)と同じであるが、第1の実施の形態の走行体現在位置・向き演算部102および走行体位置・向き演算部103が省略され、それ以外(104~106、108~110)の演算内容は第1の実施の形態と異なる。
【0106】
旋回体位置・向き演算部104では、旋回体現在位置・向き演算部101で演算した旋回体20の現在の位置と向きが将来も継続するものとして、旋回体20の現在と将来の位置と向きの情報を出力する。
【0107】
ブーム位置・向き演算部105では、旋回体位置・向き演算部104から入力した旋回体20の現在の位置と向きから、ブーム31の旋回体20との接続部の現在の位置を演算し、その演算値とブーム傾斜角センサ51で検出したブーム31の傾斜角から、ブーム31のアーム33との接続部の現在の位置を演算する。そして、ブーム31のアーム33との接続部の現在の位置から、最大速度でブーム下げを行った場合のブーム31のアーム33との接続部の将来の位置を演算する。例えば、0.1秒後、0.2秒後、0.3秒後、・・・、2.0秒後の位置を演算する。また、旋回体位置・向き演算部104から入力した旋回体20の現在と将来の向きと同じ値を、ブーム31の現在と将来の向きとする。そして、ブーム31のアーム33との接続部の現在と将来の位置と、ブーム31の現在と将来の向きを出力する。
【0108】
アーム位置・向き演算部106では、ブーム位置・向き演算部105から入力したブーム31の現在の位置と向きと、アーム傾斜角センサ52で検出したアーム33の傾斜角から、アーム33のバケット35との接続部の現在の位置を演算する。そして、アーム33のバケット35との接続部の現在の位置から、最大速度でアームダンプを行った場合のアーム33のバケット35との接続部の将来の位置を演算する。例えば、0.1秒後、0.2秒後、0.3秒後、・・・、2.0秒後の位置を演算する。また、ブーム位置・向き演算部105から入力したブーム31の現在と将来の向きと同じ値を、アーム33の現在と将来の向きとする。そして、アーム33のバケット35との接続部の現在と将来の位置と、アーム33の現在と将来の向きを出力する。
【0109】
第1制御指令演算部108では、
図15のフローチャートに示した演算を行う。第6の実施の形態の本演算は、第1の実施の形態(のS202、S203)(
図4参照)とS262、S263の演算内容が異なるだけで、他は同じである。
【0110】
本第6の実施の形態では、移動範囲設定装置62で移動範囲が設定されている場合は(S201:Yes)、バケット35の一部が、現在または将来、移動範囲の外側に出るかどうかを判定する(第1の実施の形態では、走行体10、旋回体20、ブーム31、アーム33が移動範囲の外側に出るかどうかの判定も行う)(S262)。移動範囲の外側に出る場合は(S262:Yes)、バケット35が現在の位置から移動範囲の外側に出るまでの移動距離(余裕量)(現在、移動範囲の外側に出ている時は、ゼロ)を演算し、その値を第1余裕量とする(S263)。なお、ここでの移動距離は、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36の変位量(伸縮量ともいう)に相当する。S262、S263以外は第1の実施の形態と同じ演算を行い、第1制御指令(停止指令、または、動作継続指令)を設定する。
【0111】
第2制御指令演算部109では、
図16のフローチャートに示した演算を行う。第6の実施の形態の本演算は、第1の実施の形態(のS304、S305)(
図5参照)とS364、S365の演算内容が異なるだけで、他は同じである。
【0112】
本第6の実施の形態では、S302またはS303で障害物がある場合は(S302、S303:Yes)、バケット35の一部が、現在または将来、障害物に接触するかどうかを判定する(第1の実施の形態では、走行体10、旋回体20、ブーム31、アーム33が障害物に接触するかどうかの判定も行う)(S364)。障害物に接触する場合は(S364:Yes)、バケット35が現在の位置から障害物に接触するまでの移動距離(余裕量)(仮に、現在、障害物に接触している時は、ゼロ)を演算し、その値を第2余裕量とする(S365)。なお、ここでの移動距離は、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36の変位量(伸縮量ともいう)に相当する。S364、S365以外は第1の実施の形態と同じ演算を行い、第2制御指令(停止指令、または、動作継続指令)を設定する。
【0113】
なお、第6の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、第2制御指令演算部109で設定する第2閾値は、第1制御指令演算部108で設定する第1閾値よりも大きい値に設定する。
【0114】
図14に戻り、制御実行部110では、第1制御指令演算部108から入力した第1制御指令と第2制御指令演算部109から入力した第2制御指令の少なくとも片方が停止指令の時は、そのうちの適切な停止指令を選択し、フロント作業機30の動きを停止する(詳しくは、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36を停止する制御を行う)ために、コントロールバルブ44に入るアームダンプパイロット圧Pg、アームクラウドパイロット圧Ph、ブーム下げパイロット圧Pi、ブーム上げパイロット圧Pj、バケットクラウドパイロット圧Pk、バケットダンプパイロット圧Plをカットする(0MPaにする)ように、パイロット圧制御電磁弁45g~45lを制御する。
【0115】
詳しくは、制御実行部110では、第1制御指令演算部108から入力した第1制御指令と第2制御指令演算部109から入力した第2制御指令の片方が停止指令の時は、その停止指令を選択し、上述したように、パイロット圧制御電磁弁45g~45lを制御する。
【0116】
また、制御実行部110では、第1制御指令演算部108から入力した第1制御指令と第2制御指令演算部109から入力した第2制御指令の両方が停止指令の時は、そのうちのフロント作業機30の動きをより早く停止する方(油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36をより早く停止する方)の停止指令を選択し、上述したように、パイロット圧制御電磁弁45g~45lを制御する。
【0117】
この時、残りのパイロット圧制御電磁弁45a~45fに関しては、パイロット圧をカットしても良いし、カットしなくても良い。パイロット圧をカットして動きを止めれば、フロント作業機30の動きだけでなく全てのアクチュエータが止まるので、オペレータは油圧ショベル1全体の動きを理解しやすい。パイロット圧をカットしなければ、フロント作業機30の動き以外の動きは継続されるので、利便性が良い。
【0118】
いずれの場合も、上述したフロント作業機30の移動停止制御により、作業機(フロント作業機30のブーム31、アーム33、バケット35)が、設定した移動範囲の外側に出たり、検出した障害物と接触したりする可能性を低くすることができる。
【0119】
なお、制御実行部110では、第1制御指令演算部108から入力した第1制御指令と第2制御指令演算部109から入力した第2制御指令の両方が動作継続指令の時は、現在のフロント作業機30の動きを継続するために、コントロールバルブ44に入るアームダンプパイロット圧Pg、アームクラウドパイロット圧Ph、ブーム下げパイロット圧Pi、ブーム上げパイロット圧Pj、バケットクラウドパイロット圧Pk、バケットダンプパイロット圧Plを維持するように、パイロット圧制御電磁弁45g~45lを制御する。
【0120】
以上のように、第6の実施の形態においても、障害物に対しては余裕をもって停止制御を行うが、移動範囲に対しては比較的余裕をもたないで(余裕代を最小限に抑えて)停止制御を行うので、あらかじめ移動範囲を設定して作業者やダンプトラック等が設定した移動範囲の内側に入らないようにすれば、作業機が停止する頻度を抑えることができ、作業効率の悪化を抑制できる。また、作業者やダンプトラック等が本作業機械の移動範囲の内側に入った時は、作業機は余裕をもって停止制御を行うので、作業者やダンプトラック等と接触する可能性を低くすることができる。
【0121】
なお、ここでは、第6の実施の形態を第1の実施の形態に対する変形形態として説明したが、例えば第2~第4の実施の形態と組み合わせて適用できることは詳述するまでも無い。
【0122】
以上のように、本実施の形態によれば、作業者やダンプトラック等と接触する可能性を低くしつつ、作業効率の悪化を抑制することができる。
【0123】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形形態が含まれる。また、上記した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0124】
また、上記の各構成、機能等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0125】
1 油圧ショベル(作業機械)
10 走行体(車体)
11a、11b クローラ
12a、12b クローラフレーム
13a、13b 走行用油圧モータ(アクチュエータ)
20 旋回体(車体)
21 旋回フレーム
22 エンジン
23 エンジンコントローラ
26 減速機構
27 旋回用油圧モータ(アクチュエータ)
30 フロント作業機(作業機)
31 ブーム
32 ブームシリンダ(アクチュエータ)
33 アーム
34 アームシリンダ(アクチュエータ)
35 バケット
36 バケットシリンダ(アクチュエータ)
40 油圧システム
41a、41b 油圧ポンプ
42a、42b レギュレータ
43a~43d パイロットバルブ
44 コントロールバルブ
45a~45l パイロット圧制御電磁弁
46a、46b 作動油タンク
51 ブーム傾斜角センサ
52 アーム傾斜角センサ
53 バケット傾斜角センサ
54 旋回角度センサ
55a、55b GNSS受信装置
56a、56b 障害物位置検出装置
61 エンジンコントロールダイヤル
62 移動範囲設定装置
100 制御装置
101 旋回体現在位置・向き演算部
102 走行体現在位置・向き演算部
103 走行体位置・向き演算部
104 旋回体位置・向き演算部
105 ブーム位置・向き演算部
106 アーム位置・向き演算部
107 バケット位置・向き演算部
108 第1制御指令演算部
109 第2制御指令演算部
110 制御実行部