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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】電極評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20221221BHJP
   G01N 27/04 20060101ALI20221221BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G01N27/00 L
G01N27/04 Z
G01N27/416 302M
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022509170
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2020029743
(87)【国際公開番号】W WO2022029862
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】内藤 勝之
(72)【発明者】
【氏名】信田 直美
(72)【発明者】
【氏名】齊田 穣
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-041982(JP,A)
【文献】国際公開第2016/013478(WO,A1)
【文献】特表2018-514060(JP,A)
【文献】特開2016-004836(JP,A)
【文献】特開2006-349387(JP,A)
【文献】国際公開第2020/054018(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0236769(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
G01N 27/416
G01N 17/00-17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰イオンを含む液に銀を含む電極の少なくとも一部を接触させた状態で、電圧を前記電極に印加する印加工程と、
前記印加工程の後に、前記電極のシート抵抗を測定する測定工程と、
を備えた電極評価方法。
【請求項2】
前記電極は光透過性を有する、請求項1記載の電極評価方法。
【請求項3】
前記液は、水を含む、請求項1または2に記載の電極評価方法。
【請求項4】
前記陰イオンは、ハロゲンイオンを含む、請求項1記載の電極評価方法。
【請求項5】
前記陰イオンは、塩化物イオンを含む、請求項1記載の電極評価方法。
【請求項6】
前記電極は、銀または銀合金を含むナノワイヤを含む、請求項1記載の電極評価方法。
【請求項7】
前記電極は、銀を含む第1層と、前記銀を含む層と積層され、酸化物を含む第2層と、を含む、請求項1記載の電極評価方法。
【請求項8】
前記電圧は、0.8V以下である、請求項1記載の電極評価方法。
【請求項9】
前記印加工程は、前記電圧を繰り返し変化させることを含む、請求項1記載の電極評価方法。
【請求項10】
前記電極の光透過率の変化を測定する透過率測定工程をさらに備えた請求項1記載の電極評価方法。
【請求項11】
前記印加工程の前に、前記電極のシート抵抗を測定する前測定工程をさらに備えた請求項1記載の電極評価方法。
【請求項12】
前記印加工程と前記測定工程との間に、前記電極を洗浄し、前記洗浄の後に乾燥させる工程をさらに備えた、請求項1記載の電極評価方法。
【請求項13】
前記印加工程と前記測定工程とを繰り返す、請求項1記載の電極評価方法。
【請求項14】
前記電極は、前記電圧が印加される端子部分を含み、
前記印加工程において、前記端子部を前記液に接触させないで、前記電極の一部を前記液に接触させる、請求項1記載の電極評価方法。
【請求項15】
前記印加工程において、導電ペーストを介して前記電極の前記少なくとも一部に電圧を印加する、請求項1記載の電極評価方法。
【請求項16】
前記印加工程において、前記電極の側面を前記液に接触させないで、前記電極の一部を前記液に接触させる、請求項1記載の電極評価方法。
【請求項17】
前記印加工程において、前記電極の側面を前記液に接触させる、請求項1記載の電極評価方法。
【請求項18】
前記電極は、銀を含む第1膜と、前記第1膜と積層された第2膜と、を含み、
前記第2膜は、グラフェン、有機半導体及び無機半導体よりなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1記載の電極評価方法。
【請求項19】
前記測定工程は、4探針法で前記シート抵抗を測定することを含む、請求項1記載の電極評価方法。
【請求項20】
前記印加工程における少なくとも一部の期間において、前記電圧は、対極の電位を規準にして正である、請求項1記載の電極評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電極評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、太陽電子などの電子装置などに電極が用いられる。電極の特性を効率的に評価する方法が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-73746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、特性を効率的に評価可能な電極評価方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、電極評価方法は、陰イオンを含む液に銀を含む電極の少なくとも一部を接触させた状態で、電圧を前記電極に印加する印加工程を含む。前記測定工程は、前記印加工程の後に、前記電極のシート抵抗を測定する測定工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る電極評価方法を例示するフローチャート図である。
図2図2は、第1実施形態に係る電極評価方法を例示する模式図である。
図3図3(a)~図3(d)は、第1実施形態に係る電極評価方法が適用される電極を例示する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電極評価方法を例示するフローチャート図である。
図2は、第1実施形態に係る電極評価方法を例示する模式図である。
図1に示すように、実施形態に係る電極評価方法は、印加工程(ステップS110)及び測定工程(ステップS120)を含む。電極評価方法は、この他、後述する前測定工程(ステップS105)及び洗浄・乾燥工程(ステップS115)をさらに含んでも良い。以下、これらの工程の例について説明する。
【0009】
図2に示すように、印加工程では、評価対象の電極10の少なくとも一部を液20に接触させた状態で、電極10に電圧を印加する。
【0010】
電極10は、銀を含む。例えば、電極10は、基体10sなどの上に設けられても良い。電極10は、例えば、光透過性を有する。
【0011】
例えば、容器25に液20が入れられる。液20は、陰イオンを含む。1つの例において、液20は、水を含む。液20は、例えば、水溶液である。例えば、陰イオンは、ハロゲンイオンを含む。例えば、陰イオンは、塩素イオンを含む。1つの例において、陰イオンは、塩化物イオンを含む。
【0012】
例えば、液20に電極10の少なくとも一部が漬けられる。例えば、電極10は、端子部分11を含む。端子部分11に電圧が印加される。例えば、端子部分11に、導電ペースト56などにより、配線55が電気的に接続される。配線55は、制御部51と電気的に接続される。図2の例では、配線55に電流計52が設けられる。電流計52は、省略しても良い。制御部51と対極31とが配線31wにより電気的に接続される。対極31は、液20と接する。この例では、対極31の少なくとも一部が、液20に漬けられる。制御部51は、例えば、電源などを含む。制御部51は、制御回路を含んでも良い。
【0013】
印加工程では、液20に電極10の少なくとも一部を接触させた状態で、電圧を電極10に印加する。1つの例において、例えば、印加工程の少なくとも一部の期間において、印加する電圧は、液20に接する対極31の電位を規準にして正である。印加する電圧は、例えば、0.05V以上1V以下である。例えば、印加する電圧は、0.08V以上0.8V以下でも良い。印加する時間は、例えば、0.1分以上60分以下である。このような印加工程により、電極10の特性が変化する。例えば、電極10が劣化する。印加工程は、電極10の特性の変化を促進させる。
【0014】
このような印加工程の後に、測定工程(図1のステップS120)において、電極10のシート抵抗を測定する。測定工程は、4探針法でシート抵抗を測定することを含んでも良い。4探針法を用いることで、シート抵抗を安定して測定できる。例えば、シート抵抗の分布を簡便に測定できる。
【0015】
実施形態においては、電極10の特性を簡単に評価できる。上記のような印加工程を経ることで、例えば、電極10の特性(例えば化学的な特性など)の変化が加速する。化学的な変化に伴って、電気的な特性(例えばシート抵抗)の変化が生じると考えられる。例えば、化学的な変化に伴って光学的な特性(例えば透過率)が変化する。例えば、電気的な特性(例えばシート抵抗)の変化を評価することで、他の特性(例えば光学的な特性)の変化を推定できる。
【0016】
実施形態においては、測定工程の前に、印加工程が実施される。印加工程において、電極10の特性の変化が短時間に生じる。印加工程は例えば加速試験である。印加工程を行った後に測定工程を実施することで、実使用状態における電極10の特性の長期的な変化を、短時間で評価できる。実施形態によれば、特性を効率的に評価可能な電極評価方法を提供できる。
【0017】
実施形態に係る評価方法は、例えば、電極10を含む電子装置の製造ロットから得られるサンプルを評価する際に適用されても良い。例えば、抜き取り試験が実施される。これにより、例えば、電子装置に関する、性能把握、製造歩留まり、または、信頼性データなどが得られる。実施形態に係る評価方法は、例えば、電子装置の設計の検討時に実施されても良い。実施形態に係る評価方法は、例えば、電子装置の製造条件の検討時に実施されても良い。
【0018】
例えば、電極10に欠陥などがあると、欠陥を通して陰イオン(X)が、電極10のうちの銀を含む部分に到達し易い。この時、電極10に印加される電圧による電位により、陰イオンが酸化される。これにより、例えば、以下の(1)式の反応が生じる。以下において、「X」は、陰イオンである。または、銀が拡散して、液20に溶解し、陰イオンと反応する。これらの両者が生じる場合もある。

+ Ag → AgX +e (1)

印加する電圧の極性が逆の場合、以下の(2)式の逆反応が生じる。

AgX +e → X + Ag (2)

この反応に基づく電子のやり取りで、電流が観測される。
【0019】
上記の(1)式及び(2)式の両方の反応において、電圧が印加される前の電極10の状態から、電極10の構造が変化する。これにより、電極10のシート抵抗が上昇する場合が多い。
【0020】
1つの例において、電圧の印加には、例えば、アンペロメトリーが適用できる。この場合、一定の電圧を印加して電流値が検出される。別の例において、電圧の印加には、例えば、ボルタンメトリーが適用できる。この場合、電圧を変化させて電流値が測定される。実施形態においては、電圧の印加には、上記のいずれの方法も適用してよい。
【0021】
実施形態において、サイクリックに電圧を印加して、電流値の応答の変化を検出して、電極10の構造の変化を加速させても良い。例えば、ボルタンメトリーにおいて、電圧を時間に対して1次関数で変化させても良い。例えば、サイクリックボルタンメトリーが適用されても良い。これにより、解析がより容易になる。
【0022】
実施形態において、電極10に印加する電圧を適切に設定することで、例えば、液20の水の電解による酸素発生または水素発生が抑制できる。電圧は、例えば、対極31の電位を規準にして、-0.5V以上+0.8V以下であることが好ましい。例えば、サイクリックボルタンメトリーを適用する場合、電圧の変化速度は、例えば、2.5mV/s以上50mV/s以下である。電圧の変化速度は、例えば、10mV/s以上25mV/s以下でも良い。このように、実施形態において、印加工程は、電圧を繰り返し変化させることを含んでも良い。実施形態において、印加工程は、電圧を周期的に変化させることを含んでも良い。
【0023】
実施形態において、例えば、陰イオン及び銀に正の電圧を印加して、電極10の劣化を加速させる。実施形態において、例えば、陰イオンに対する劣化だけでなく、酸素、水、または、硫黄成分などによる、欠陥に基づく劣化を、より短時間で推定することができる。
【0024】
陰イオンの濃度に応じて、例えば、電極10と陰イオンとの反応し易さ、及び、銀の溶出のし易さが変化する。例えば、陰イオンの濃度が高いと、感度が上昇する。1つの例において、陰イオンの濃度は、例えば、0.002mol/L(モル/リットル)以上2mol/L以下である。
【0025】
印加工程において、窒素ガスが液20に導入されても良い。例えば、液20中に窒素ガスの泡が導入されても良い。例えば、銀は、酸素と反応して酸化する。液20中に窒素ガスが導入されることで、例えば、銀はと酸素との反応が抑制される。例えば、印加工程は、窒素ガス雰囲気中で実施されても良い。1つの例において、印加工程における温度は、例えば、15℃以上30℃以下である。
【0026】
実施形態において、陰イオンは、例えば、ハロゲンイオン、水酸化物イオン、硫化物イオン及び炭酸イオンよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。ハロゲンイオンにおいて、銀との反応性が高い。陰イオンとして、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、及び、フッ化物イオンよりなる群から選択された少なくとも1つが用いられても良い。これらのイオンから選ぶことで、例えば、陰イオンのサイズ、または、反応電位を変化させることができる。水酸化物イオンにおいて、銀との反応性が高い。水酸化物イオンを用いることで、例えば、アルカリ性状態での電極10の劣化の評価が容易になる。硫化物イオンを用いることで、例えば、空気中の硫化水素成分による電極10の劣化の評価が容易になる。炭酸イオンを用いることで、例えば、空気中の二酸化炭素成分による電極10の劣化の評価が容易になる。
【0027】
例えば、電極10は、太陽電池、有機EL素子または光センサなどの電子装置に用いられる。このような用途において、例えば、銀を含む電極10が用いられる場合がある。例えば、電極10として、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)/(AgまたはAg合金)/ITOが用いられる。例えば、電極10として、銀ナノワイヤが用いられる場合がある。これらの材料により、例えば、低い抵抗、及び、高い光透過率と、が得られる。
【0028】
銀を含む電極10において、銀がハロゲンイオン、水酸化物イオン、硫化物イオン、または、炭酸イオン等によって劣化する場合がある。銀は、マイグレーションし易い。銀がマイグレーションすると、例えば、水などと反応して、酸化銀が形成される。これにより、電極10が劣化する。さらに、電子装置に含まれる、電極10以外の部材が劣化し易い。例えば、電子装置に含まれる活性部に銀が到達すると、活性部の性能が低下する。例えば、光電変換層に、インジウムなどの金属イオン、または、ハロゲンイオンなどが入ると、活性部の性能が低下する。例えば、活性部に含まれる元素(例えばイオンなども含む)が活性部から移動すると、活性部の性能が低下する。
【0029】
例えば、銀を含む電極10の特性を短時間に効率的に評価する方法が望まれる。実施形態によれば、電極10の特性を効率的に評価可能な電極評価方法が提供される。
【0030】
図3(a)~図3(d)は、第1実施形態に係る電極評価方法が適用される電極を例示する模式的断面図である。
図3(a)に示すように、電極10は、基体10sの上に設けられても良い。基体10sは、例えば、ガラスを含んでも良い。基体10sは、例えば、樹脂を含んでも良い。
【0031】
1つの例において、電極10は、銀ナノワイヤを含む。銀ナノワイヤは、銀または銀合金を含む。電極10は、銀層を含んでも良い。電極10は、銀合金層を含んでも良い。
【0032】
図3(b)に示すように、1つの例において、電極10は、第1層10a及び第2層10bを含む。第2層10bは、第1層10aと積層される。積層の順番は任意である。第1層10aは、銀を含む。第1層10aは、銀を含む合金を含んでも良い。第2層10bは、酸化物を含む。第2層10bは、例えば、酸化物導電体(例えば、ITOなど)を含む。第1層10a及び第2層10bは、光透過性を有する。
【0033】
図3(c)に示すように、電極10は、第1層10a、第2層10b及び第3層10cを含んでも良い。第1層10aは、第2層10bと第3層10cとの間にある。第1層10aは、銀を含む。第1層10aは、銀合金を含んでも良い。第2層10b及び第3層10cは、例えば、酸化物導電体(例えば、ITOなど)を含む。第1~第3層10a~10cは、光透過性を有する。
【0034】
図3(d)に示すように、電極10は、第1膜10f及び第2膜10gを含んでも良い。第1膜10fは、銀を含む。第1膜10fは、光透過性を有する。第2膜10gは、第1膜10fと積層される。例えば、第1膜10fは、基体10sと第2膜10gとの間にある。第2膜10gは、例えば、グラフェン、有機半導体及び無機半導体よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。これらの材料を含む第2膜10gは、例えば、陰イオンに対するパッシベーション効果を有する。第2膜10gを含む電極10の評価が行われても良い。
【0035】
電極10が合金を含む場合、合金は、例えば、Pd、Pt、Au、Sn、Zn及びCuよりなる群から選択された少なくとも1つと、銀と、を含む。
【0036】
電極10の銀を含む部分の厚さは、例えば、2nm以上20nm以下である。厚さが2nm以上であることで、例えば、低い電気抵抗が得られる。厚さが、20nm以下であることで、例えば、高い光透過率が得られる。厚さは、例えば、3nm以上15nm以下であることがより好ましい。
【0037】
電極10が銀ナノワイヤを含む場合、銀ナノワイヤの平均の直径は、例えば、20nm以上200nm以下である。平均の直径が20nm以上であることで、高い安定性が得られる。平均の直径が、200nm以下であることで、高い光透過率が得られる。
【0038】
電極10(及び、それに含まれる層または膜など)の厚さに関する情報は、例えば、電子顕微鏡による観察により得られる。銀ナノワイヤの直径は、例えば、電子顕微鏡などによる観察により得られる。観察は、例えば、電極10に表面または断面などで行われて良い。
【0039】
銀ナノワイヤの直径は、例えば、銀ナノワイヤの平面画像における幅でも良い。銀ナノワイヤの幅が、1本の銀ナノワイヤ中で変化する場合は、1本の銀ナノワイヤ中の3つの位置における測定値の平均を、その銀ナノワイヤの直径として用いて良い。これらの値の平均値として、例えば、ランダムな50の測定点において得られた値の平均値(例えば、算術平均)を用いて良い。
【0040】
実施形態において、印加工程の1つの例において、電極10の側面15を液20に接触させても良い(図2参照)。印加工程の別の例において、電極10の側面15を液20に接触させないで、電極10の一部を液20に接触させても良い。例えば、側面15をカバーするカバー材を設けることで、側面15を液20に接触させないことができる。側面15は、例えば、電極10の切断面でも良い。例えば、切断面における耐性を効率的に評価できる。切断面による評価により、例えば、スクライブ等で形成される側面15(例えば端面)における特性の劣化に関する情報が得られる。
【0041】
図2に示すように、実施形態において、参照電極32が設けられても良い。参照電極32は、液20と接する。参照電極32は、例えば、液20に漬けられる。参照電極32は、例えば、配線32wにより、制御部51と電気的に接続される。図2の例では、配線32wは、配線31wと電気的に接続される。参照電極32により、例えば、電位の基準点が与えられ、測定の安定性や再現性が向上する。
【0042】
例えば、制御部51は、対極31(及び参照電極32)と、電極10と、の間に電圧を印加する。電圧は、制御部51により制御される。例えば、電流計52で、対極31(及び参照電極32)と、電極10と、の間に流れる電流を測定しても良い。電流は、電極10に含まれる銀と、陰イオンと、の反応、または、銀イオンの溶解に基づく。
【0043】
対極31は、例えば、白金、金、及び、炭素電極よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。これらの材料は、化学的に安定である。対極31は、白金を含むことが好ましい。
【0044】
既に説明したように、印加工程において、例えば、導電ペースト56を介して電極10の少なくとも一部に電圧を印加する。導電ペースト56は、例えば、銀ペーストである。このような方法により電圧を印加することで、例えば接触抵抗が小さくなる。例えば、試料の作製が容易になる。
【0045】
実施形態において、4探針法でシート抵抗を測定する場合、1つの方向に沿って4つの針が並ぶ。最近接の2つの針の間隔は、例えば、約1mmである。間隔が短いことで、例えば、シート抵抗の分布を測定し易い。4探針法を用いることで、例えば、電極10が第2膜10gを含む場合も、シート抵抗を測定し易い。
【0046】
既に説明したように、印加工程において、例えば、導電ペースト56を介して電極10の少なくとも一部に電圧を印加する。導電ペースト56は、例えば、銀ペーストである。このような方法により電圧を印加することで、例えば接触抵抗が小さくなる。例えば、試料の作製が容易になる。
【0047】
図1に示すように、実施形態に係る電極評価方法は、印加工程の前に、電極10のシート抵抗を測定する前測定工程(ステップS105)をさらに含んでも良い。初期状態の電極10の特性を評価することで、より適切な評価結果が得られる。
【0048】
図1に示すように、実施形態に係る電極評価方法は、印加工程と測定工程との間に、電極10を洗浄し、洗浄の後に乾燥させる工程(洗浄・乾燥工程)(ステップ)をさらに含んでも良い。洗浄及び乾燥により、安定した状態の電極10を評価できる。例えば、より正確な評価結果が得られる。
【0049】
図1に示すように、印加工程と測定工程とを繰り返しても良い。これにより、劣化の進行の程度に関する情報が得られる。例えば、例えば、より正確な評価結果が得られる。
【0050】
実施形態において、評価方法は、電極10の光透過率の変化を測定する透過率測定工程をさらに含んでも良い。
【0051】
以下、評価の例について説明する。
【0052】
(第1評価例)
基体10sの上に電極10が設けられる。基体10sは、厚さが約100μmのPETフィルムである。電極10は、図3(c)に例示した構成を有する。第1層10aは、銀とPbとを含む合金を含む。第1層10aの厚さは、5nmである。第2層10bは、ITOを含む。第2層10bの厚さは、45nmである。第3層10cは、ITOを含む。第3層10cの厚さは、45nmである。印加工程の前の電極10のシート抵抗(初期値)は、8Ω□~9Ω□である。電極10は、1.5cm×4cmのサイズに切断される。配線55(チタン線)は、導電ペースト56(銀ペースト)により、電極10に固定される。導電ペースト56が設けられた部分が、シリコーンテープで保護される。電極10は、4つの側面を含む。液20は、塩化ナトリウム水溶液である。液20における陰イオンの濃度は、0.5mol/Lである。
【0053】
第1試料においては、4つの側面のうちの2つの側面が、シリコーンテープで保護される。この状態で、図2に例示した電極評価装置110を用いて、サイクリックボルタンメトリーにより、電極10に電圧を印加する。電極評価装置110において、対極31は白金板である。参照電極32は、銀/塩化銀電極である。電圧の印加において、電圧は、-0.5Vと+0.8Vとの間で変化する。電圧の変化の速度は、25mV/sである。電圧の変化の回数は15である。
【0054】
第1試料を水洗し、乾燥させる。その後に測定されたシート抵抗は、9Ω/□~10Ω/□である。
【0055】
(第2評価例)
第2評価例において、電極10は、図3(d)に例示した構成を有する。第2膜10gは、グラフェンを含む。グラフェンは、例えば、酸化グラフェンの水分散を塗布製膜し、水和ヒドラジン蒸気で還元して形成される。第1膜10fは、厚さが20nmの銀薄膜である。印加工程の前の電極10のシート抵抗(初期値)は、3Ω/□~4Ω/□である。電極10は、1.5cm×4cmのサイズに切断される。配線55(チタン線)は、導電ペースト56(銀ペースト)により、電極10に固定される。導電ペースト56が設けられた部分が、シリコーンテープで保護される。電極10は、4つの側面を含む。液20は、塩化ナトリウム水溶液である。液20における陰イオンの濃度は、0.05mol/Lである。
【0056】
第2試料において、4つの側面が、シリコーンテープで保護される。この状態で、サイクリックボルタンメトリーにより、電極10に電圧を印加する。電圧の印加において、電圧は、-0.5Vと+0.8Vとの間で変化する。電圧の変化の速度は、25mV/sである。電圧の変化の回数は15である。
【0057】
第2試料を水洗し、乾燥させる。その後に測定されたシート抵抗は、6Ω/□~7Ω/□である。
【0058】
(第3評価例)
第3評価例において、基体10sの上に電極10が設けられる。基体10sは、厚さが約100μmのPETフィルムである。電極10は、図3(c)に例示した構成を有する。第1層10aは、銀であり、第1層10aの厚さは、5nmである。第2層10bは、ITOを含む。第2層10bの厚さは、45nmである。第3層10cは、ITOを含む。第3層10cの厚さは、45nmである。印加工程の前の電極10のシート抵抗(初期値)は、7Ω/□~8Ω/□である。550nmの波長における、電極10の透過率は85%である。電極10は、1.5cm×4cmのサイズに切断される。配線55(チタン線)は、導電ペースト56(銀ペースト)により、電極10に固定される。導電ペースト56が設けられた部分が、シリコーンテープで保護される。電極10は、4つの側面を含む。液20は、塩化ナトリウム水溶液である。液20における陰イオンの濃度は、0.5mol/Lである。
【0059】
第3試料においては、4つの側面のうちの2つの側面が、シリコーンテープで保護される。この状態で、サイクリックボルタンメトリーにより、電極10に電圧を印加する。電圧の印加において、電圧は、-0.5Vと+0.8Vとの間で変化する。電圧の変化の速度は、25mV/sである。電圧の変化の回数は15である。
【0060】
第3試料を水洗し、乾燥させる。その後に測定されたシート抵抗は、50Ω/□~55Ω/□である。550nmの波長における、電極10の透過率は、75%である。
【0061】
(第4評価例)
第4評価例において、電極10は、図3(d)に例示した構成を有する。第2膜10gは、グラフェンを含む。グラフェンは、例えば、酸化グラフェンの水分散を塗布製膜し、水和ヒドラジン蒸気で還元して形成される。第1膜10fは、直径が20nm~40nmの銀ナノワイヤ膜である。印加工程の前の電極10のシート抵抗(初期値)は、10Ω/□~11Ω/□である。電極10は、1.5cm×4cmのサイズに切断される。配線55(チタン線)は、導電ペースト56(銀ペースト)により、電極10に固定される。導電ペースト56が設けられた部分が、シリコーンテープで保護される。電極10は、4つの側面を含む。液20は、塩化ナトリウム水溶液である。液20における陰イオンの濃度は、0.5mol/Lである。
【0062】
第4試料においては、4つの側面のうちの2つの側面が、シリコーンテープで保護される。この状態で、サイクリックボルタンメトリーにより、電極10に電圧を印加する。電圧の印加において、電圧は、-0.5Vと+0.8Vとの間で変化する。電圧の変化の速度は、25mV/sである。電圧の変化の回数は15である。
【0063】
第4試料を水洗し、乾燥させる。その後に測定されたシート抵抗は、15Ω/□~17Ω/□である。
【0064】
(第5評価例)
上記の第3試料を、陰イオンの濃度が0.5mol/Lの塩化ナトリウム水溶液に、室温で3日間浸漬する。この際、電極10に電圧が印加されない。この後、試料を水洗し、乾燥させる。この方法で得られたシート抵抗は、8Ω/□~9Ω/□である。上記の第3評価例の結果に比べて、変化は非常に小さい。
【0065】
(第2実施形態)
第2実施形態は、電極評価装置に係る。電極評価装置110(図2参照)は、例えば、陰イオンを含む液20を保持可能な容器25と、電極10に電圧を印加する制御部51と、を含む。電極評価装置110によれば、電極10の特性を短時間で変化させることができる。電極評価装置110によれば、特性を効率的に評価可能な電極評価装置が提供できる。
【0066】
実施形態によれば、太陽電池などの電子装置に用いられる電極10の特性(例えば、陰イオンに対する耐性)を効率的に短時間で評価できる。例えば、電子装置の実使用状態での電極10の特性が効率的に評価できる。
【0067】
実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んでも良い。
【0068】
(構成1)
陰イオンを含む液に銀を含む電極の少なくとも一部を接触させた状態で、電圧を前記電極に印加する印加工程と、
前記印加工程の後に、前記電極のシート抵抗を測定する測定工程と、
を備えた電極評価方法。
【0069】
(構成2)
前記電極は光透過性を有する、構成1記載の電極評価方法。
【0070】
(構成3)
前記液は、水を含む、構成1または2に記載の電極評価方法。
【0071】
(構成4)
前記陰イオンは、ハロゲンイオンを含む、構成1記載の電極評価方法。
【0072】
(構成5)
前記陰イオンは、塩化物イオンを含む、構成1記載の電極評価方法。
【0073】
(構成6)
前記電極は、銀または銀合金を含むナノワイヤを含む、構成1~5のいずれか1つに記載の電極評価方法。
【0074】
(構成7)
前記電極は、銀を含む第1層と、前記銀を含む層と積層され、酸化物を含む第2層と、を含む、構成1~6のいずれか1つに記載の電極評価方法。
【0075】
(構成8)
前記電圧は、0.8V以下である、構成1~7のいずれか1つに記載の電極評価方法。
【0076】
(構成9)
前記印加工程は、前記電圧を繰り返し変化させることを含む、構成1~8のいずれか1つに記載の電極評価方法。
【0077】
(構成10)
前記電極の光透過率の変化を測定する透過率測定工程をさらに備えた構成1~9のいずれか1つに記載の電極評価方法。
【0078】
(構成11)
前記印加工程の前に、前記電極のシート抵抗を測定する前測定工程をさらに備えた構成1~10のいずれか1つに記載の電極評価方法。
【0079】
(構成12)
前記印加工程と前記測定工程との間に、前記電極を洗浄し、前記洗浄の後に乾燥させる工程をさらに備えた、構成1~11のいずれか1つに記載の電極評価方法。
【0080】
(構成13)
前記印加工程と前記測定工程とを繰り返す、構成1~12のいずれか1つに記載の電極評価方法。
【0081】
(構成14)
前記電極は、前記電圧が印加される端子部分を含み、
前記印加工程において、前記端子部を前記液に接触させないで、前記電極の一部を前記液に接触させる、構成1~13のいずれか1つに記載の電極評価方法。
【0082】
(構成15)
前記印加工程において、導電ペーストを介して前記電極の前記少なくとも一部に電圧を印加する、構成1~14のいずれか1つに記載の電極評価方法。
【0083】
(構成16)
前記印加工程において、前記電極の側面を前記液に接触させないで、前記電極の一部を前記液に接触させる、構成1~15のいずれか1つに記載の電極評価方法。
【0084】
(構成17)
前記印加工程において、前記電極の側面を前記液に接触させる、構成1~15のいずれか1つに記載の電極評価方法。
【0085】
(構成18)
前記電極は、銀を含む第1膜と、前記第1膜と積層された第2膜と、を含み、
前記第2膜は、グラフェン、有機半導体及び無機半導体よりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1~17のいずれか1つに記載の電極評価方法。
【0086】
(構成19)
前記測定工程は、4探針法で前記シート抵抗を測定することを含む、構成1~18のいずれか1つに記載の電極評価方法。
【0087】
(構成20)
前記印加工程における少なくとも一部の期間において、前記電圧は、対極の電位を規準にして正である、構成1~19のいずれか1つに記載の電極評価方法。
【0088】
実施形態によれば、特性を効率的に評価可能な電極評価方法が提供される。
【0089】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、電極評価方法で用いられる電極、液及び制御部などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0090】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0091】
その他、本発明の実施の形態として上述した電極評価方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての電極評価方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0092】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
10…電極、 10a~10c…第1~第3層、 10f、10g…第1、第2膜、 10s…基体、 11…端子部分、 15…側面、 20…液、 25…容器、 31…対極、 31w…配線、 32…参照電極、 32w…配線、 51…制御部、 52…電流計、 55…配線、 56…導電ペースト、 110…電極評価装置
図1
図2
図3