(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】ブラインドリベットインサート、ブラインドリベットインサートが装着された部材およびこのようなブラインドリベットインサートを部材開口部内に装着する方法
(51)【国際特許分類】
F16B 19/10 20060101AFI20221221BHJP
B21J 15/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F16B19/10 F
B21J15/00 U
(21)【出願番号】P 2022524576
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2021056275
(87)【国際公開番号】W WO2021190951
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-05-12
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522166080
【氏名又は名称】ベルホフ オタル エス.エー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ルソー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ペロウド,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ビリーマズ,バスティアン
(72)【発明者】
【氏名】フリソン,ジャン-ロワ
(72)【発明者】
【氏名】バーリール、エマニュエル
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-516048(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1557577(EP,A2)
【文献】欧州特許出願公開第3366932(EP,A1)
【文献】中国実用新案第202140399(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 19/10
B21J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラインドリベットインサート(1
)であって、
a.環状フランジを形成する支承頭部(10)と、
b.前記支承頭部(10)の下面(14)から延在し、先端部(42)と末端部(44)と前記先端部(42)から前記末端部(44)まで長手方向に延在する円筒状ボア(46)とを備え、前記末端部(44)付近に雌ねじ部(50)が設けられた第1のボアセグメントと前記先端部(42)付近に前記第1のボアセグメント(48)の直径よりも大きい直径を有する第2のボアセグメント(52)とを有するシャンク(40)であって、前記第2のボアセグメント(52)を囲む壁は前記シャンク(40)の変形可能領域を形成する、シャンクと、
を備える、ブラインドリベットインサート(1)であり、
c.前記支承頭部(10)の下面(14)は、前記シャンク(40)に対して同心円状に配置され、前記ブラインドリベットインサート(1)が取り付けられた状態で封止リング(70)を収容するように適合された環状首下溝(16)を備え、
d.少なくとも1つの環状保持シャンク溝(18)が、前記ブラインドリベットインサート(1)を取り付ける前に前記封止リング(70)を予荷重位置に保持するために、前記支承頭部(10)の下面(14)に隣接して配置されて、前記シャンク(40)の周りに円周方向に延在する、ブラインドリベットインサート(1)。
【請求項2】
前記支承頭部(10)は、前記ラインドリベットインサート(1)の長手方向にフランジ厚さを有し、前記環状保持シャンク溝(18)は、前記フランジ厚さに等しい長手方向の最大幅を有する前記環状フランジ(10)の下面(14)を起点とする、前記シャンク(40)の円周方向保持領域内に位置決めされる、請求項1に記載のブラインドリベットインサート(1)。
【請求項3】
前記シャンク(40)は、部分的に円形の断
面を有する環状保持シャンク溝(18)を備える円筒状外壁を有する、請求項2に記載のブラインドリベットインサート(1)。
【請求項4】
前記環状保持シャンク溝(18)は、前記保持シャンク溝(18)の複数の円周方向部分セクタを画定する半径方向ウェブによって規則的に分離される、請求項3に記載のブラインドリベットインサート(1)。
【請求項5】
前記半径方向ウェブは、前記環状保持シャンク溝(18)内で円周方向に延在し、そのことにより円周方向サブセクションにおいて前記環状保持シャンク溝(18)を充填する、請求項4に記載のブラインドリベットインサート(1)。
【請求項6】
前記シャンク(40)は、多角形の外側断
面を含み、前記環状保持シャンク溝(18)は、前記多角形シャンク(40)の角部領域にそれぞれ個別に位置決めされた複数の溝部分に分離される、請求項2に記載のブラインドリベットインサート(1)。
【請求項7】
前記環状首下溝(16)および前記環状保持シャンク溝(18)は、中間固定
縁によって分離される、
請求項1乃至6の一項に記載のブラインドリベットインサート(1)。
【請求項8】
前記環状首下溝(16)は、圧縮状態にある前記保持リングを収容するための部分的に円形または部分的に曲線の断面を有する、
請求項1乃至7の一項に記載のブラインドリベットインサート(1)。
【請求項9】
前記保持シャンク溝(18)は、前記支承頭部(10)と前記シャンクの変形可能領域(40)との間の前記シャンクの非変形可能領域(56)内に位置決めされる、
請求項1乃至8の一項に記載のブラインドリベットインサート(1)。
【請求項10】
前記保持シャンク溝(18)は、前記支承頭部(10)の下面(14)の真下の保持領域内に位置決めされ、前記保持領域は、前記支承頭部(10)の下面(14)から軸方向に、前記長手方向支承頭部厚さの2
倍の最大延長を有する、
請求項1乃至9の一項に記載のブラインドリベットインサート(1)。
【請求項11】
前記封止リング(70
)が前記環状保持シャンク溝(18)内に配置される、
請求項1乃至10の一項に記載のブラインドリベットインサート(1)。
【請求項12】
請求項11に記載のブラインドリベットインサート(1)が取り付けられる装着穴(O)を有する部材(C)であって、前記装着穴(O)の周縁が環状フランジ(10)と前記ブラインドリベットインサート(1)の圧着ビード(60)との間に挟持されることにより前記封止リング(70)が環状首下溝(16)内で圧縮される、部材(C)。
【請求項13】
請求項11に記載のブラインドリベットインサート(1)を部材(C)の装着穴(O)に取り付ける方法であって
、
a.前記ブラインドリベットインサート(1)を前記開口部(O)に挿入するステップ(S1)と、
b.挿入中に、前記封止リング(70)を前記開口部(O)の縁部によって環状保持シャンク溝(18)から環状首下溝(16)内へ変位させるステップ(S2)と、
c.前記ブラインドリベットインサート(1)を長手方向に圧着ビード(60)へと変形させて、前記部材(C)を環状フランジ(10)と前記圧着ビード(60)との間に挟持し、前記封止リング(70)を前記環状首下溝(16)内で圧縮するステップ(S3)と、
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラインドリベットインサート(特に、ブラインドリベットナット)、ブラインドリベットインサートが装着された部材、およびこのようなブラインドリベットインサートを部材開口部内に装着する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラインドリベットナットの構成においてしばしば使用されるブラインドリベットインサートは、部材開口部内に装着されて、追加の部材もしくは周辺部品のための取付位置またはその部材自体のための取付位置を実現する。水、ガスまたは化学物質のような周囲媒体の外部影響は、接続部もしくは部材によって覆われる任意の構造体の安定性および/または寿命に影響を及ぼす場合がある。その結果、ブラインドリベットナットは、ブラインドリベットナットと部材との間の接触界面を封止し得る部材開口部内に装着される。
【0003】
例えば、EP 3 366 932 A1(欧州特許出願公開第3366932号公報)に開示されているように、カラーとカラーの下に配置されたOリングとを有するブラインドリベットインサートが挙げられる。Oリングの位置をカラーまたは支承頭部の下に維持するために、環状溝が頭部の底面に設けられ、シール(例えば、Oリング)を収容する。
【0004】
不都合なことに、これらのインサートは十分な機械的強度を付与しない。さらに、シールは繊細であり、インサートをその挿入位置のスロットまたは開口部に挿入する間に損傷を受ける可能性がある。加えて、このようなシールは、インサートを支持体に取り付ける間に外れてしまう可能性がある。実際に、インサートの組立体は、接合部を移動させる傾向がある振動、摩擦、高圧および衝撃を発生させる可能性があり、その結果、所望の封止性が失われる。この現象は、インサートが自動車用途で潤滑される場合、またはインサートが、装着後に、高温での表面処理または塗料もしくはワニスの塗布に供される場合に増幅される。
【0005】
したがって、本発明の目的は、これらの不利点を克服することである。本発明のさらなる目的は、部品結合体の確実な移送 および装着を保証するために互いに効果的に接続される封止リングと組み合わせた、ブラインドリベットインサート(例えば、ブラインドリベットナット)を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
上記目的は、請求項1に記載のブラインドリベットインサート、請求項10に記載のブラインドリベットインサートが装着された部材、および請求項11に記載の部材開口部への上記ブラインドリベットインサートの取付方法によって達成される。さらなる好ましい実施形態および発展形態は、以下の説明、図面および添付の特許請求の範囲から得られる。
【0007】
本発明は、ブラインドリベットインサート、特にブラインドリベットナットを提供する。以下でブラインドリベットナットと称する場合、一般に、上述のブラインドリベットインサートの可能な構造体を表すものとする。本発明のブラインドリベットインサートは、環状フランジを形成する支承頭部と、支承頭部の下面から延在し、先端部と末端部と先端部から末端部まで長手方向に延在する円筒状ボアとを備え、末端部付近に雌ねじ部が設けられた第1のボアセグメントと先端部付近に第1のボアセグメントの直径よりも大きい直径を有する第2のボアセグメントとを有するシャンクとを備える。第2のボアセグメントを取り囲む壁は、例えばシャンクの末端部分と比較してシャンクの減肉部を有するようなシャンクの変形可能領域を形成する。支承頭部の下面は、シャンクに対して同心円状に配置され、ブラインドリベットインサートが取り付けられた状態で封止リングを収容するように適合された環状首下溝を備える。さらに、少なくとも1つの環状保持シャンク溝が、ブラインドリベットインサートを取り付ける前に封止リングを予荷重位置に保持するために、支承頭部の下面に隣接して配置されて、シャンクの周りに円周方向に延在する。
【0008】
本発明のブラインドリベットインサートは、部材とブラインドリベットインサートとの封止接続部の形成を容易にするために、ブラインドリベットインサートと封止リングとの確実な組み合わせを提供することができる。そのためには、本発明のブラインドリベットインサートは、異なる位置で封止リングを収容し、位置決めし、移動させ、保持するように適合された少なくとも2つの溝の組み合わせを提供する。1つの好ましい実施形態によれば、1つの保持溝のみが支承頭部の下面に隣接して配置される。環状保持シャフト溝は、封止リング(例えば、Oリング)をブラインドリベットインサートのシャンクの外面上に位置決めして保持するように適合される。この位置において、封止リングは、前記保持シャンク溝内の摩擦接続によって確実に固定される。加えて、封止リングと保持溝との間の好ましい押し込み嵌合は、ブラインドリベットインサートがバルク材料として移送される場合であっても、封止リングのシャンクへの確実な固定を支援する。
【0009】
さらに、シャンクの先端部の保持シャンク溝と、リベット頭部の底面の環状首下溝とは、互いに近接して位置決めされる。近接位置は、部材開口部におけるブラインドリベットインサートの封止固定を達成するために封止リングが保持溝から首下溝内に容易に移動され得るという条件を満たす。「容易に移動する」という用語は、首下溝内または少なくとも支承頭部の底面の直接隣接している/底面の下の位置(好ましくは、底面と接触する位置)への封止リングの移動を完了するために余分な労力または余分な工具が必要でないという好ましい事実を指す。封止リングのこの移動は、好ましくは、ブラインドリベットインサートが装着される部材開口部の縁部によって実現される。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、ブラインドリベットインサートの環状フランジは、ブラインドリベットインサートの長手方向にフランジ厚さを有し、環状保持シャンク溝は、フランジ厚さに等しい長手方向の最大幅を有する環状フランジの下面を起点とするシャンクの円周方向保持領域内に位置決めされる。
【0011】
既に上述したように、唯一の保持シャンク溝および首下溝は、互いに近接して位置決めされることが好ましい。近接した位置決めは、保持シャンク溝がリベット頭部の底面の直下の保持領域に位置することよって強調される。好ましい保持領域は、リベット頭部の底面を起点とするシャンクの長手方向に、好ましくは長手方向頭部厚さの2倍に、より好ましくは長手方向頭部厚さのたった1倍に相当する最大延長を有する。また、保持部分は、以下に説明するように、非変形可能な軸方向のシャンク領域の一部を形成することが好ましい。長手方向頭部厚さは、シャンクの長手方向に測定されたリベット頭部の底面と上面との間の距離である。2つの溝間の好ましい近接距離に基づいて、部材開口部の縁部は、保持溝から首下溝内にまたは首下溝の近くに封止リングを変位させる、すなわち移動または転動させることができる。
【0012】
さらに好ましくは、ブラインドリベットインサートのシャンクは、部分的に円形の断面、好ましくは半円形の断面を有する環状保持シャンク溝を備える円筒状外壁を有する。ブラインドリベットナットまたはインサートの好ましい実施形態によれば、シャンクは、円筒状の外形を有する。シャンクの別の好ましい形状として、シャンクは、例えば、ブラインドリベットナットの六角形シャンク(以下参照)のような多角形断面形状を有する。シャンクの形状のこのような変形例は一般に知られており、上述の本発明の環状首下溝とシャンクの保持溝との組み合わせと組み合わされるのが好ましい。
【0013】
ブラインドリベットインサートのシャンクが円筒状外形を有する場合、環状保持シャンク溝は、保持シャンク溝の複数の円周方向部分セクタを画定する半径方向ウェブによって規則的に分離されるのが好ましい。
【0014】
さらに好ましくは、半径方向ウェブは、環状保持シャンク溝内で円周方向に延在し、そのことにより円周方向サブセクションにおいて環状保持シャンク溝を部分的または完全に半径方向に充填する。
【0015】
上記の定義に基づいて、少なくとも2つの半径方向ウェブは、保持シャンク溝がこれらの半径方向ウェブで充填されるように保持シャンク溝内に位置決めされる。この構成に基づいて、封止リングは、これらの半径方向ウェブによって(例えば、互いに円周方向に規則的に離間された2つ、3つ、4つまたはそれ以上の半径方向ウェブによって)、保持溝から部分的に持ち上げられる。この構造は、ブラインドリベットインサートを移送および/または位置決めする間に、封止リング(例えば、Oリング)に十分な保持力を付与する。同時に、これらの半径方向ウェブは、保持シャンク溝内の封止リングの保持力をわずかに低減させる。これは、好ましくは、半径方向ウェブによって保持シャンク溝から封止リングを部分的に持ち上げることにより、保持シャンク溝と封止リングとの間の押し込み嵌合が半径方向ウェブの領域においてわずかに解消されることによる。その結果、保持シャンク溝の保持力は、部材による保持溝から環状首下溝への封止リングの容易な移動に適合され得る。
【0016】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、ブラインドリベットインサートのシャンクは、多角形の外側断面(好ましくは、六角形の外側断面)を含み、環状保持シャンク溝は、多角形シャンクの角部領域にそれぞれ個別に位置決めされた複数の溝部分に分離される。
【0017】
さらに好ましくは、ブラインドリベットインサートは、多角形の外側シャンク形状と組み合わせて使用される。したがって、シャンクは、六角形、七角形、または八角形の断面を有する。シャンクの角張った断面により、ブラインドリベットインサートは、相補的な形状の部材開口部内に回転しないように配置され得る。さらに、このようなシャンクの角張った設計は、ブラインドリベットインサートの回転を防止するまたは発生させるための工具の使用を容易にする。
【0018】
さらに好ましくは、ブラインドリベットインサートの環状首下溝および環状保持シャンク溝は、中間固定縁、特に、連続的に延在する固定縁によって分離される。好ましくは、この中間固定縁は、封止リングのための装着障害物および取り外し障害物を形成するように適合される。ブラインドリベットインサートを部材開口部に挿入する間のみ、開口部の周縁は保持シャンク溝内に配置された封止リングに当接する。当接部は、封止リングを首下位置に均一に移動させるために、封止リングの全周にわたって形成されるのが好ましい。中間固定縁により、封止リングは、バルク材料の処理または移送中に振動または部分的当接で代替されない場合がある。さらに、中間固定縁は、環状首下溝に直接位置決めされる場合に封止リングの解放を防止するように適合されるのが好ましい。その結果、ブラインドリベットインサートを部材開口部内に取り付ける際に、封止リングが部材によって環状首下溝内に押し込まれることも支援される。
【0019】
好ましくは、環状首下溝は、圧縮状態の封止リングを収容するための部分的に円形または部分的に曲線の断面を有する。封止リングが円形または角度付きまたは楕円形の断面を有する場合があるとしても、円形断面を有する公知のOリングが封止リングの最も一般的な設計であると思われる。このような封止リングを環状首下溝内に収容するために、溝設計は、好ましくは、その断面形状が封止リング設計と同様のハーフパイプとして形成される。さらに、首下溝の好ましい設計は、収容すべき封止リングの容積以下の封止リングの収容容積を規定する。
【0020】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、上述の実施形態に係るブラインドリベットインサートは、環状保持シャンク溝内に配置される封止リング(好ましくは、Oリング)を備える。さらに好ましくは、環状保持シャンク溝は、収容すべき封止リングまたはOリングにサイズが適合されたハーフパイプ設計を有する。
【0021】
本発明はさらに、封止リングと組み合わせたブラインドリベットインサートが取り付けられる装着穴を有する部材であって、装着穴の周縁が環状フランジとブラインドリベットインサートの圧着ビードとの間に挟持されることにより封止リングが環状首下溝内で圧縮される部材を備える。部材と環状フランジの底面との間の封止リングの圧縮配置により、部材開口部内でのブラインドリベットインサートの液密な位置決めが達成されるのが好ましい。さらに、環状首下溝の収容容積によって、ブラインドリベットインサートは、フランジと部材表面との間の金属同士の接触を確実にし、支持体または部材におけるブラインドリベットインサートの効果的な機械的接続強度を確保する。
【0022】
ブラインドリベットインサートと部材との上述の組み合わせを製造するために、以下の取付方法が使用される:ブラインドリベットインサートを支持体または部材の装着穴内に挿入するステップ、挿入ステップ時に、封止リングを装着穴の縁部によって環状保持シャンク溝から環状首下溝内にまたは支承頭部の底面の直下に挿入して変位させるステップ、ブラインドリベットインサートを長手方向に圧着ビードへと変形させて、部材を環状フランジと圧着ビードとの間に挟持するステップ、および封止リングを環状首下溝内で圧縮するステップ。
【0023】
以下に、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。利点および特徴は、非限定的な例として挙げられ、添付図面に示される本発明の特定の実施形態および実装形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】ブラインドリベットインサート群を代表するブラインドリベットナットの斜視図である。
【
図2】好ましい円筒形状を有する貫通孔とブラインドリベットナットの好ましい唯一の環状保持シャンク溝内に位置決めされる封止リングとを含むブラインドリベットナットの好ましい実施形態の縦断面図である。
【
図4a】環状保持シャンク溝を分割する規則的に配置された半径方向ウェブを有する好ましい環状保持シャンク溝を含む円形断面のシャンクを有するブラインドリベットナットの好ましい実施形態を示す図であり、環状保持シャンク溝内に封止リングが配置されていない状態の図である。
【
図4b】封止リングが環状保持シャンク溝内に配置された状態の
図4aの好ましい実施形態を示す図である。
【
図5】ブラインドリベットナットの支承頭部の上面図の好ましい実施形態を示す図である。
【
図6】部材が支承頭部とブラインドリベットナットの圧着ビードとの間に固定され、圧縮された封止リングが首下溝内に保持されるように、部材開口部内に取り付けられたブラインドリベットナットの拡大図である。
【
図7】多角形シャンクと支承頭部の環状保持シャンク溝内に位置決めされた封止リングとを有するブラインドリベットナットの好ましい実施形態の縦断面図である。
【
図8】
図7の円で囲まれた領域の拡大図であり、封止リングが保持シャンク溝内に配置された状態の図である。
【
図9】環状保持シャンク溝を通って延在するブラインドリベットナットの好ましい多角形シャンクの半径方向断面図である。
【
図10】
図7のブラインドリベットナットの好ましい実施形態の底面図である。
【
図11】
図7のブラインドリベットナットの好ましい実施形態の上面図である。
【
図12】部材と多角形シャンクを有するブラインドリベットナットとの間の好ましい接続部の拡大図である。
【
図13】フローチャートに示されるステップに従うブラインドリベットインサートの取付方法の好ましい実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1を参照すると、ブラインドリベットナットの好ましい構成を有するブラインドリベットインサート1が示されている。以下では、一般的なブラインドリベットインサート群に関する本発明を、ブラインドリベットナット1の構造の詳細に基づいて説明する。
【0026】
本発明の異なる好ましい実施形態を示す
図1、
図2および
図7によれば、ブラインドリベットナット1は、支承頭部10およびシャンク40を有する細長い本体を備える。細長い本体は、長手方向中心軸Lに沿って延在する。
【0027】
支承頭部10は、シャンク40の先端部に位置決めされる。支承頭部10は、上面12と下面14(底面とも呼ばれる)とを有する環状フランジとして形成される。環状フランジは、好ましくは、長手方向軸Lの周りに軸対称状に延在する。
【0028】
図6および
図12に例示的に示されるように、ブラインドリベットナット1が部材Cの部材開口部O内で締結される場合、下面14は部材表面に当接する。以下でより詳細に説明するように、部材Cの開口部Oの縁部および周囲は、フランジ10の下面14とシャンク40の変形可能領域54に形成された圧着ビード60との間に挟持される。
【0029】
ブラインドリベットナット1の好ましい実施形態によれば、シャンク40の変形可能領域54は、圧着ビード60を形成するための機械的変形を容易にするまたは支持する構造的特徴部を有さない。これに関連して、変形可能領域54においてブラインドリベットナット1の機械的安定性を弱めることも好ましい。そのためには、ブラインドリベットナット1の壁形成の構造的代替形態、例えば、半径方向肉厚を減少させる(
図2参照)、弱化ローレットおよび/または円周方向に分布した凹部(図示せず)を組み込む形態が使用される。
【0030】
さらに好ましくは、支承頭部10の下面14と変形可能領域54との間に非変形可能領域56があり、変形可能領域54は圧着ビード60の形成によって制限される(
図2、
図3、
図6、
図7参照)。非変形可能領域56は、支承頭部10の下面14を起点とする軸方向のシャンク部分を示す。非変形可能領域56は、部材Cの部材開口部Oを通って延在する。部材開口部O内の位置に応じて、非変形可能領域56は、圧着ビード60を形成しない、または部材開口部O内でブラインドリベットナット1を締結もしくは封止するように変形する。したがって、「非変形」は、部材Cにおいてブラインドリベットナット1を締結または封止するために支持することも必要とすることもない、このシャンク領域のみにおけるブラインドリベットナット変形が存在しないかまたは存在し得ることを意味する。
【0031】
シャンク40は、支承頭部10に隣接して配置される先端部42を備える。シャンク40の末端部44は、先端部42の反対側に配置される。さらに、円筒状ボア46は、先端部42から末端部44まで長手方向軸Lと同軸に延在する。
【0032】
円筒状ボア46は、支承頭部10および先端部42から末端部44まで長手方向に延在する。ブラインドリベットナット1の好ましい構成に応じて、末端部44は外側に対して開放または閉鎖されており、すなわち、円筒状ボア46は貫通孔または止まり穴を形成する。
【0033】
好ましくは、第1のボアセグメント48は、末端部44付近に延在し、雌ねじ部50が設けられる。雌ねじ部50は、相補的な形状の雄ねじ部を有する取付シャフトまたは締結ねじ付きボルトもしくはねじ(図示せず)を収容するようになっている。好ましくは、取付シャフトを用いて、シャフトの既知の圧縮運動に基づいてシャンク40が圧縮またはクリンチされ、そのことにより圧着ビード60が形成される。取付プロセスまたは圧着プロセスの完了後、ブラインドリベットナット1は、支承頭部10と圧着ビード60との間に部材を挟持することによって開口部O内に締結される。
【0034】
先端部42付近には、第2のボアセグメント52が設けられる。第2のボアセグメント52は、雌ねじ部50を含む第1のボアセグメント48と比較して、より薄い肉厚によって制限される。第2のボアセグメント52の減肉部は、部材Cの開口部O内にブラインドリベットナット1を取付または締結する間に変形するその能力による圧着ビード60の形成を既知の方法で容易にする。第2のボアセグメント52の減肉部に応じて、内径は第1のボアセグメント48と比較してより大きくなる。
【0035】
図2に示される第1の実施形態によれば、シャンク40は、円形断面の中空円筒形状を有する。
図7に示されるさらなる好ましい実施形態によれば、シャンク40は、正六角柱の形状を有する。さらに、
図2の円筒状シャンク40と同様に、その末端部44が円錐状に尖っている。
【0036】
ブラインドリベットナット1は、六角形のシャンク40を有するものとして示されているが、六角形に限定されない異なる多角形断面を有し得る。六角形または多角形の外側輪郭により、シャンク40の断面にサイズが適合された適切な形状の穴内にシャンクが配置されると、穴O内でのシャンク40の回転が防止される。尖った端部は、開口部Oへのシャンク40の導入を容易にする。支承頭部10は、シャンク40の長手方向軸Lに対して直角に延在し、平面円板の形状を有する。あるいは、支承頭部10は、多角形(例えば、正方形または六角形)の形状を有し得る。
【0037】
シャンク40の先端部42に隣接して、本発明の好ましい一実施形態によれば、封止リング70を収容して保持するための環状保持シャンク溝18が1つのみ形成される(
図2、
図3、
図7、
図8参照)。さらに好ましくは、少なくとも1つの環状保持シャンク溝18は、非変形可能領域56内に配置される。封止リング70は、好ましくは、変形可能な材料(例えば、プラスチック、天然ゴムもしくは合成ゴムのようなエラストマー材料、またはシリコーン)から作製される。本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、2つまたは3つの環状保持シャンク溝18が、支承頭部10から近距離に形成される。
【0038】
さらに好ましくは、封止リング70は、円形または楕円形の断面を有するOリングの構成を有する。好ましいOリング構成は、環状保持溝18内での封止リング70の位置決めおよび保持を支援する。
【0039】
そのためには、封止リング70は、環状保持溝18の基底部におけるシャンク40の外径以下である内径を有するのが好ましい。この寸法により、封止リング70は環状保持溝18内で確実に保持され、環状保持溝18から環状首下溝16内へと容易に移動され得る。
【0040】
さらに好ましくは、封止リング70は、環状首下溝16内に収容可能である溝容積よりも大きい材料容積を有する。環状首下溝16に対する封止リング70の容積適合により、環状首下溝16は、ブラインドリベットナット1の開口部O内への取付プロセス中に完全に充填されて封止接続が達成され得る。好ましくは首下溝16の収容容積と比較して封止リング70の容積が大きいことにより、追加の封止リング材料がシャンク外面に向かって半径方向内方へかつ部材Cの開口部O内へと変位される。その結果、支承頭部10の底面14とシャンク40の外面と部材Cとの間の封止リング70の封止効果が増大する。
【0041】
図6および
図12に示されているように、封止リング70の圧縮されかつ部分的に変位された材料は、部材Cの異なる表面領域に接触する。支承頭部10の底面14が好ましくは部材Cに直接接触する間、封止リング70の材料は、支承頭部10の底面14に面する部材表面ならびに部材Cの開口部Oの内面を部分的に覆う。その結果、開口部Oの内径とシャンク40の外径との間の直径公差から生じ得る間隙は、封止リング70の変位した材料で封止充填される。
【0042】
そのためには、封止リング70の変位した材料は、好ましい実施形態によれば、環状首下溝16内および環状保持シャンク溝18内に部分的に収容される。
【0043】
環状首下溝16に近接して封止リング70を確実に保持するために、環状保持シャンク溝18は、シャンク40の保持領域内に配置されるのが好ましい。シャンク40の保持領域は、好ましくは、支承頭部10の底面14を起点とし、支承頭部10の厚さ、すなわち上面12と底面14との間の距離に対応する最大幅を有する。環状保持シャンク溝18と環状首下溝16との近接した組み合わせにより、保持溝18内に配置された封止リング70を有するブラインドリベットナット1は、部材開口部O内へのブラインドリベットナット1の取付および圧着プロセス中に効果的に封止される。
【0044】
円形断面のシャンク40を有する好ましいブラインドリベットナット1を参照すると(
図2および
図4参照)、環状保持シャンク溝18は、部分的に円形断面を有する。好ましくは、保持シャンク溝18は、封止リング70の外形に適合するように、半円形の断面形状を有する。このことにより、封止リング70は、ブラインドリベットナット1の移送および加工中に保持溝18内に確実に保持される。
【0045】
部材Cの開口部O内にブラインドリベットナット1を締結するためには、まず、封止リング70が装着されたブラインドリベットナット1が開口部Oに挿入される(ステップS1)。開口部Oの内径はブラインドリベットナット1のシャンク外径に厳密に適合されるので、開口部Oの内壁とシャンク40の外壁との間には小さい公差間隙80しか存在しない。これに関して、「小さい」とは、公差間隙80が環状保持溝18に隣接するシャンク40の半径方向外面を越える封止リング70の延長分よりもサイズが小さいことを意味する。その結果、部材Cは、ステップS2において、挿入ステップS1中に、保持溝18から支承頭部10の底面14へと封止リング70を変位させる。
【0046】
支承頭部10の底面14が部材Cに押し付けられるので、封止リング70は首下溝16内および公差間隙80内に押し込まれる。同時に、シャンク40は、部材開口部O内にブラインドリベットナット1を固定する圧着ビード60へと部分的に変形される(ステップS3)。
【0047】
図4aは、環状保持シャンク溝18の位置におけるシャンク40の半径方向断面図である。好ましい実施形態によれば、環状保持シャンク溝18は、複数の半径方向ウェブ20によって分離される。好ましくは、半径方向ウェブ20は、環状保持シャンク溝18の基底部を起点として半径方向外方に延在する。さらに、半径方向ウェブ20は、好ましくは、環状保持シャンク溝18の円周方向サブセクションを充填し、そのことにより環状保持シャンク溝18内に円形セグメントを形成する。したがって、保持溝18は、半径方向ウェブ20の位置では封止リング70を一部のみを収容することができる、または封止リング70を収容することができない。
【0048】
本発明の好ましい構成によれば、複数の半径方向ウェブ20は、環状保持シャンク溝18内に規則的に分布している。さらに好ましくは、3つの半径方向ウェブ20は、
図4に示されるように、互いに対して円周方向に等間隔に配置される。4つまたは5つの等間隔で分布する半径方向ウェブ20を使用するのも好ましい。保持溝18内のシャンク40の周囲が大きい場合、または封止リング70の弾性がかなり低い場合には、保持シャンク溝18から首下溝16への封止リング70の変位を支援するためには、4つ以上の半径方向ウェブ20が好ましい。
【0049】
隣接する半径方向ウェブ20間で、封止リング70は、保持溝18の円周方向に延びる部分セクタ19内に保持される。封止リング70は、半径方向ウェブ20を横断するので、保持溝18の外方に部分的に位置決めされ、その結果、保持溝によって封止リング70に加えられる保持力が低減される(
図4b参照)。半径方向ウェブ位置における封止リング70の半径方向外側の位置により、部材Cは、増大した表面積で封止リング70に当接して封止リングを変位させる。したがって、封止リング70は、より少ない半径方向ウェブ20を有するかまたは全く半径方向ウェブ20を有さない保持シャンク溝18と比較して、より容易に変位され得る。
【0050】
図9は、多角形の断面形状を有するシャンク40の好ましい実施形態を示す。さらに、
図9は、環状保持シャンク溝18の位置におけるシャンク40の半径方向断面図である。シャンク40が多角形であるため、保持シャンク溝18は多角形シャンク40の角部領域にのみ延在する。溝部分18のそれぞれの角部領域は、部材Cによる変位の前に封止リング70を保持する。
【0051】
図3、
図6、
図8、および
図12の好ましい実施形態を参照すると、中間固定縁22は、好ましくは、環状首下溝16と環状保持シャンク溝18との間に配置される。中間固定縁22は、シャンク40の周りに連続的にまたは部分的に延在する。さらに好ましくは、中間固定縁22は、封止リング70の変位障害物を画定する。このことにより、封止リング70は、1つの環状保持シャンク溝18内のその予荷重位置においてさらに支持される。
【0052】
最後に、
図6および
図12は、ブラインドリベットナット1と部材Cとの間の封止接続部の好ましい実施形態を示す。そのためには、円形(
図6)または多角形のシャンク40(
図12)を有する好ましいブラインドリベットナット1が部材開口部Oに挿入され、シャンク40が圧縮または圧着される。その結果、シャンク40の変形領域が圧着ビード60へと変形され、そのことにより部材Cが支承頭部10と圧着ビード60との間に挟持される。支承頭部10の底面14が部材Cに直接接触している間、封止リング70は、好ましくは、首下溝16および保持溝18内で、封止状態で圧縮され、変形される。これに関連して、首下溝16は、圧縮された封止リング70を完全には収容しないように適合され、そのことにより、材料を保持溝18内へ変位させることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 ブラインドリベットインサート
10 支承頭部
12 上面
14 底面
16 環状首下溝
18 環状保持シャンク溝
19 円周方向セクタ
20 半径方向ウェブ
22 固定縁
40 シャンク
42 先端部
44 末端部
46 円筒状ボア
48 第1のボアセグメント
49 凹部またはローレットまたは半径方向減肉部
50 雌ねじ部
52 第2のボアセグメント
54 非変形可能領域
56 変形可能領域
60 圧着ビード
70 封止リング
80 シャンクと部材開口部との間の公差間隙
L 長手方向軸
C 部材
O 部材開口部