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特許7198392高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物、高発泡倍率発泡体、タイヤ、音響用部材、シール材、ホース、ベルト、電線被覆、断熱材、ゴム用発泡倍率向上剤、発泡体の発泡倍率を向上させる方法、及び高発泡倍率発泡体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物、高発泡倍率発泡体、タイヤ、音響用部材、シール材、ホース、ベルト、電線被覆、断熱材、ゴム用発泡倍率向上剤、発泡体の発泡倍率を向上させる方法、及び高発泡倍率発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/06 20060101AFI20221221BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20221221BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20221221BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C08J9/06 CEQ
C09K3/00 111B
C08L21/00
C08K5/3445
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022547856
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2021047785
(87)【国際公開番号】W WO2022138795
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2020216785
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021077364
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021137854
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 誠一
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/045575(WO,A1)
【文献】特開2008-189911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/06
C09K 3/00
C08L 21/00
C08K 5/3445
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)、(b)、(c)及び(d)を含む、高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物。
(a)ゴム成分
(b)化学発泡剤
(c)下記式(1)で表される化合物又はその塩
(d)加硫剤及び架橋剤からなる群より選択される少なくとも一種
【化1】
〔式中、Rは、水素原子、アルキル基、又はアラルキル基を示し、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基をさらに有していてもよい。〕
【請求項2】
前記ゴム成分は、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム(SIBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン-イソプレン-スチレン三元ブロック共重合体(SIS)、及びスチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(SBS)から選ばれる少なくとも一種のジエン系ゴムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分は、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)、六フッ化プロピレン-フッ化ビニリデン共重合体(FKM)、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体(FEPM)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロビニルエーテル共重合体(FFKM)、メチルシリコーンゴム(MQ)、ビニル・メチルシリコーンゴム(VMQ)、フェニル・メチルシリコーンゴム(PMQ)、アクリルゴム(ACM)、多硫化ゴム(T)、及びエピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)から選ばれる少なくとも一種の非ジエン系ゴムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記R、前記R及び前記Rが水素原子であり、前記Rがメチル基である、請求項1~3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
さらに成分(e)発泡助剤を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の組成物を発泡させた高発泡倍率発泡体。
【請求項7】
請求項1~5の何れか1項に記載の組成物又は請求項6の発泡体を用いて作製されたタイヤ、音響用部材、シール材、ホース、ベルト、電線被覆、又は断熱材。
【請求項8】
発泡体の発泡倍率を向上させる方法であって、
ゴム成分、化学発泡剤、及び下記式(1)で表される化合物又はその塩を混合する工程を含む方法。
【化2】
〔式中、Rは、水素原子、アルキル基、又はアラルキル基を示し、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基をさらに有していてもよい。〕
【請求項9】
発泡体の製造方法であって、
(a)ゴム成分、及び(c)下記式(1)で表される化合物又はその塩を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに
【化3】
〔式中、R は、水素原子、アルキル基、又はアラルキル基を示し、R 、R 及びR は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基をさらに有していてもよい。〕
前記工程(A)で得られる混合物、(b)化学発泡剤、及び(d)加硫剤及び架橋剤からなる群より選択される少なくとも一種を混合する工程(B)を含む、高発泡倍率発泡体の製造方法。
【請求項10】
請求項に記載の発泡体の発泡倍率指数が103以上である、高発泡倍率発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物、高発泡倍率発泡体、タイヤ、音響用部材、シール材、ホース、ベルト、電線被覆、断熱材、ゴム用発泡倍率向上剤、発泡体の発泡倍率を向上させる方法、及び高発泡倍率発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム発泡体は、軽量性及び断熱性等に優れていることから、タイヤ用部材、音響用部材、シール材、ホース、ベルトといった様々な用途に用いられている(特許文献1、2)。
【0003】
一般的に、ゴム発泡体は、ゴム成分に化学発泡剤を添加して熱を加え、化学発泡剤が分解する際に発生するガスにより、発泡させる方法で製造される。発泡体の用途にもよるが、製造効率や発泡体の物性等の観点から、製造される発泡体の発泡倍率が大きい程、好ましい。
【0004】
発泡倍率の大きい発泡体を製造する方法として、大量の発泡剤をゴム成分に添加する方法があるが、この方法だと、全ての発泡剤に熱が十分加わらず、分解しない発泡剤が発泡体の中に残る可能性があり、この残存発泡剤が発泡体の物性(強度等)に影響を与え、好ましくない。また、発泡剤の量を増やす分、コストもかかる。
【0005】
そこで、発泡剤の使用を増量する以外の方法により、発泡体の発泡倍率を向上させる方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-122160号公報
【文献】特開2002-165294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような事情に鑑み、本発明の目的とするところは、高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物、高発泡倍率発泡体、タイヤ、音響用部材、シール材、ホース、ベルト、電線被覆、断熱材、ゴム用発泡倍率向上剤、発泡体の発泡倍率を向上させる方法、及び高発泡倍率発泡体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、化学発泡剤を含むゴム成分にピラゾロン系の化合物を加えることで、高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物を得ることができることを見出した。本発明者らは、かかる知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下の高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物、高発泡倍率発泡体、タイヤ、音響用部材、シール材、ホース、ベルト、電線被覆、断熱材、ゴム用発泡倍率向上剤、発泡体の発泡倍率を向上させる方法、及び高発泡倍率発泡体の製造方法を提供する。
【0010】
項1.
下記成分(a)、(b)、(c)及び(d)を含む、高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物。
(a)ゴム成分
(b)化学発泡剤
(c)下記式(1)で表される化合物又はその塩
(d)加硫剤及び架橋剤からなる群より選択される少なくとも一種
【0011】
【化1】
【0012】
〔式中、Rは、水素原子、アルキル基、又はアラルキル基を示し、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基をさらに有していてもよい。〕
【0013】
項2.
前記ゴム成分は、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム(SIBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン-イソプレン-スチレン三元ブロック共重合体(SIS)、及びスチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(SBS)から選ばれる少なくとも一種のジエン系ゴムである、項1に記載の組成物。
【0014】
項3.
前記ゴム成分は、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)、六フッ化プロピレン-フッ化ビニリデン共重合体(FKM)、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体(FEPM)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロビニルエーテル共重合体(FFKM)、メチルシリコーンゴム(MQ)、ビニル・メチルシリコーンゴム(VMQ)、フェニル・メチルシリコーンゴム(PMQ)、アクリルゴム(ACM)、多硫化ゴム(T)、及びエピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)から選ばれる少なくとも一種の非ジエン系ゴムである、項1に記載の組成物。
【0015】
項4.
前記R、前記R及び前記Rが水素原子であり、前記Rがメチル基である、項1~3の何れかに記載の組成物。
【0016】
項5.
さらに成分(e)発泡助剤を含む、項1~4の何れかに記載の組成物。
【0017】
項6.
項1~5の何れかに記載の組成物を発泡させた高発泡倍率発泡体。
【0018】
項7.
項1~5の何れかに記載の組成部又は請求項6の発泡体を用いて作製されたタイヤ、音響用部材、シール材、ホース、ベルト、電線被覆、又は断熱材。
【0019】
項8.
下記式(1)で表される化合物又はその塩を含む、ゴム用発泡倍率向上剤。
【0020】
【化2】
【0021】
〔式中、Rは、水素原子、アルキル基、又はアラルキル基を示し、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基をさらに有していてもよい。〕
【0022】
項9.
発泡体の発泡倍率を向上させる方法であって、
ゴム成分、化学発泡剤、及び下記式(1)で表される化合物又はその塩を混合する工程を含む方法。
【0023】
【化3】
【0024】
〔式中、Rは、水素原子、アルキル基、又はアラルキル基を示し、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基をさらに有していてもよい。〕
【0025】
項10.
発泡体の製造方法であって、
成分(a)、及び(c)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに
前記工程(A)で得られる混合物、成分(b)、及び(d)を混合する工程(B)を含む、高発泡倍率発泡体の製造方法。
【0026】
項11.
項10に記載の発泡体の発泡倍率指数が103以上である、高発泡倍率発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0027】
以上にしてなる本発明に係る高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物は、優れた発泡倍率を有する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0029】
(1.高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物)
本発明の高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物は、下記成分(a)、(b)、(c)及び(d)を含む。
(a)ゴム成分、
(b)化学発泡剤、
(c)下記式(1)で表される化合物又はその塩、
(d)加硫剤及び架橋剤からなる群より選択される少なくとも一種。
【0030】
【化4】
【0031】
〔式中、Rは、水素原子、アルキル基、又はアラルキル基を示し、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基をさらに有していてもよい。〕
【0032】
成分(a)、(b)、(c)及び(d)を含むことにより、高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物を得ることができる。
【0033】
本発明の高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物は、ただ単に成分(a)と(b)と(c)と(d)とを混合しただけのものであってもよいし、成分(a)と(b)と(c)と(d)とを混合後に成分(b)が発泡したものであってもよい。つまり、成分(a)、(b)、(c)及び(d)を如何なる順序で混合した態様も含まれる。
【0034】
(1.1.成分(a):ゴム成分)
成分(a)は、ゴム成分である。かかるゴム成分としては、特に制限はなく、例えば、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴム、並びにジエン系ゴムと非ジエン系ゴムとの混合物等が挙げられる。
【0035】
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム(SIBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン-イソプレン-スチレン三元ブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(SBS)等、及びこれらの変性ジエン系ゴムが挙げられる。中でも、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムが好ましい。
【0036】
天然ゴムとしては天然ゴムラテックス、技術的格付けゴム(TSR)、スモークドシート(RSS)、ガタパーチャ、杜仲由来天然ゴム、グアユール由来天然ゴム、ロシアンタンポポ由来天然ゴムなどが挙げられ、更にこれら天然ゴムを変性した、エポキシ化天然ゴム、メタクリル酸変性天然ゴム、ハロゲン変性天然ゴム、脱蛋白天然ゴム、マレイン酸変性天然ゴム、スルホン酸変性天然ゴム、スチレン変性天然ゴムなどの変性天然ゴムなどを使用することも好ましい。
【0037】
変性ジエン系ゴムには、主鎖変性、片末端変性、両末端変性などの変性手法によるジエン系ゴムが包含される。ここで、変性ジエン系ゴムの変性官能基としては、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基などの各種官能基が挙げられ、これら官能基は1種又は2種以上が変性ジエン系ゴムに含まれていてもよい。
【0038】
ジエン系ゴムの製造方法は、特に制限はなく、乳化重合、溶液重合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などが挙げられる。また、合成ジエン系ゴムのガラス転移点も、特に制限はない。
【0039】
非ジエン系ゴムとしては、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)、六フッ化プロピレン-フッ化ビニリデン共重合体(FKM)、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体(FEPM)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロビニルエーテル共重合体(FFKM)、メチルシリコーンゴム(MQ)、ビニル・メチルシリコーンゴム(VMQ)、フェニル・メチルシリコーンゴム(PMQ)、アクリルゴム(ACM)、多硫化ゴム(T)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)等、及びこれらの変性非ジエン系ゴムが挙げられる。中でも、ブチルゴム、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)が好ましい。
【0040】
変性非ジエン系ゴムには、主鎖変性、片末端変性、両末端変性などの変性手法による非ジエン系ゴムが包含される。ここで、変性非ジエン系ゴムの変性官能基としては、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基などの各種官能基が挙げられ、これら官能基は1種又は2種以上が変性合成非ジエン系ゴムに含まれていてもよい。
【0041】
非ジエン系ゴムの製造方法は、特に制限はなく、乳化重合、溶液重合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などが挙げられる。また、合成非ジエン系ゴムのガラス転移点においても、特に制限はない。
【0042】
また、天然ゴム及びジエン系ゴムの二重結合部のシス/トランス/ビニルの比率については、特に制限はなく、いずれの比率においても好適に用いることができる。また、ジエン系ゴムの数平均分子量および分子量分布についても、特に制限はなく、数平均分子量500~3000000、分子量分布1.5~15が好ましい。非ジエン系ゴムとしては、公知のものを広く使用することができる。
【0043】
ゴム成分は、1種単独で又は2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。中でも、好ましいゴム成分としては、天然ゴムとブタジエンゴムの混合物である。
【0044】
ゴム組成物中の成分(a)、(b)、(c)及び(d)の合計100質量%中における成分(a)の含有量は、1~99質量%とすることが好ましく、5~98質量%とすることがより好ましい。成分(a)が1質量%以上含まれることにより、ゴム組成物に弾性を付与することができる。一方、ゴム組成物中に含まれる成分(a)が99質量%以下であることにより、ゴム組成物のコストを低減させ、その結果、経済性を向上させることが可能である。
【0045】
(1.2.成分(b):化学発泡剤)
化学発泡剤としては、特に限定はなく、公知の化学発泡剤を広く使用することが可能である。例えば、アゾジカルボンアミド、N,N´-ジニトロソペンタンメチレンテトラミン、p,p´-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、ジアゾアミノベンゼン、ヒドラゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート、アゾビスイソブチロニトリル、クエン酸モノナトリウムなど有機酸及びそれらの金属塩等の有機系化学発泡剤及び、重曹、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、酢酸アルミニウム、亜硝酸アンモニウム、ホウ化水素ナトリウム等の無機系化学発泡剤が挙げられる。
【0046】
上記化学発泡剤は、1種単独で、又は2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。
【0047】
上記化学発泡剤の中でも、アゾジカルボンアミド、p,p´-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、又は重曹が好ましい。
【0048】
これら発泡剤は、その表面を化学処理したものであってもよい。このような発泡剤は、発泡剤の固化防止、分散性、粉塵抑制、加工性、保存性等の点で優れる。また、このような発泡剤を用いて得られる組成物、及び発泡体は、機械物性の向上、気泡の微細化等の点で優れる。
【0049】
アゾジカルボンアミドのメジアン径は、0.1~1,000μmであることが好ましく、1~100μmであることがより好ましく、1~50μmであることが特に好ましい。アゾジカルボンアミドのメジアン径が0.1~1,000μmであることにより、分散性及び気泡の均一性を向上させることができる。
【0050】
成分(b)の配合量は、ゴム組成物中の上記成分(a)100質量部に対して、0.1~100質量部であることが好ましく、0.1~80質量部であることがより好ましく、0.5~60質量部であることが更に好ましく、1~50質量部であることが特に好ましい。
【0051】
ゴム組成物中の成分(a)、(b)、(c)及び(d)の合計100質量%中における成分(b)の含有量は、0.01~95質量%であることが好ましく、0.05~90質量%であることがより好ましく、0.1~50質量%であることが更に好ましく、0.5~30質量%であることが特に好ましい。成分(b)が0.01質量%以上含まれることにより、成分(a)の発泡倍率を向上させることができる。一方、ゴム組成物中に含まれる成分(b)が95質量%以下であることにより、ゴム組成物のコストを低減させ、経済性を向上することができる。
【0052】
(1.3.成分(c):式(1)で表される化合物又はその塩)
成分(c)は、下記式(1)で表される化合物もしくはその塩(以下、当該化合物及びその塩を総称して、単に「化合物(1)」ともいう。)である。
【0053】
【化5】
【0054】
〔式(1)中、Rは、水素原子、アルキル基、又はアラルキル基を示し、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。〕
【0055】
化合物(1)における「アルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、更に、1-エチルプロピル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、5-プロピルノニル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等を加えた炭素数5~18の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の炭素数3~8の環状アルキル基等が挙げられる。
【0056】
化合物(1)における「アラルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ベンジル、フェネチル、トリチル、1-ナフチルメチル、2-(1-ナフチル)エチル、2-(2-ナフチル)エチル基等が挙げられる。
【0057】
化合物(1)における「アリール基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ジヒドロインデニル、9H-フルオレニル基等が挙げられる。
【0058】
これらアルキル基、アラルキル基、及びアリール基は、置換可能な任意の位置にそれぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。該「置換基」としては、特に限定はなく、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、ホルミル基、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。該置換基は、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個有していてもよい。
【0059】
化合物(1)における「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びアスタチン原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子である。
【0060】
化合物(1)における「アミノ基」としては、-NHで表されるアミノ基だけでなく、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n-ブチルアミノ、イソブチルアミノ、s-ブチルアミノ、t-ブチルアミノ、1-エチルプロピルアミノ、n-ペンチルアミノ、ネオペンチルアミノ、n-ヘキシルアミノ、イソヘキシルアミノ、3-メチルペンチルアミノ基等の直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6程度のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジエチルアミノ基等の直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~2程度のアルキル基を2つ有するジアルキルアミノ基等の置換アミノ基も含まれる。
【0061】
化合物(1)における「アミノアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、アミノメチル、メチルアミノメチル、エチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、エチルメチルアミノメチル、ジエチルアミノメチル、2-アミノエチル、2-(メチルアミノ)エチル、2-(エチルアミノ)エチル、2-(ジメチルアミノ)エチル、2-(エチルメチルアミノ)エチル、2-(ジエチルアミノ)エチル、3-アミノプロピル、3-(メチルアミノ)プロピル、3-(エチルアミノ)プロピル、3-(ジメチルアミノ)プロピル、3-(エチルメチルアミノ)プロピル、3-(ジエチルアミノ)プロピル基等の炭素数1~7程度のアミノアルキル基、モノアルキル置換アミノアルキル基又はジアルキル置換アミノアルキル基等が挙げられる。
【0062】
化合物(1)における「アルコキシカルボニル基」としては、特に限定はなく、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0063】
化合物(1)における「アシル基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチル、プロピオニル、ピバロイル基等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキルカルボニル基が挙げられる。
【0064】
化合物(1)における「アシルオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、n-ブチリルオキシ基等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アシルオキシ基等が挙げられる。
【0065】
化合物(1)における「アミド基」としては、特に限定はなく、例えば、アセトアミド、ベンズアミド基等のカルボン酸アミド基;チオアセトアミド、チオベンズアミド基等のチオアミド基;N-メチルアセトアミド、N-ベンジルアセトアミド基等のN-置換アミド基;等が挙げられる。
【0066】
化合物(1)における「カルボキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシ-n-プロピル、カルボキシ-n-ブチル、カルボキシ-n-ペンチル、カルボキシ-n-ヘキシル基等のカルボキシアルキル基が挙げられる。
【0067】
化合物(1)における「ヒドロキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシ-n-プロピル、ヒドロキシ-n-ブチル基等のヒドロキシアルキル基が挙げられる。
【0068】
化合物(1)における「アルコキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ基の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基;シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシ基等の環状アルコキシ基等が挙げられる。
【0069】
化合物(1)における「アリールオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェノキシ、ビフェニルオキシ、ナフトキシ基等が挙げられる。
【0070】
化合物(1)における「アルキルチオ基」としては、特に限定はなく、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、及びn-プロピルチオ基等が挙げられる。
【0071】
化合物(1)における「アリールチオ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ビフェニルチオ基等が挙げられる。
【0072】
化合物(1)の中でも、Rが水素原子である化合物が好ましい。
【0073】
化合物(1)の中でも、Rが、水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、アラルキル基、又はアリール基である化合物が好ましく、水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基である化合物がより好ましく、メチル基である化合物が更に好ましい。
【0074】
化合物(1)の中でも、R及びRの少なくとも一方が水素原子である化合物が好ましく、R及びRが共に水素原子である化合物がより好ましい。
【0075】
化合物(1)の中でも、Rが水素原子であり、Rが水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、アラルキル基、又はアリール基であり、R及びRが共に水素原子である化合物が好ましく、Rが水素原子であり、Rが水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基であり、R及びRが共に水素原子である化合物が更に好ましく、Rが水素原子であり、Rがメチル基であり、R及びRが共に水素原子である化合物が特に好ましい。
【0076】
式(1)で表される化合物としては、例えば、5-ピラゾロン、3-メチル-5-ピラゾロン、3-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-フェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-プロピル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-ウンデシル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-ベンジル-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)オン、及び5-メチル-2-(4-ニトロフェニル)-1H-ピラゾール-3(2H)-オン等が挙げられる。
【0077】
中でも、式(1)で表される化合物として好ましい化合物は、5-ピラゾロン、3-メチル-5-ピラゾロン、3-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-フェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、及び3-プロピル-1H-ピラゾール-5(4H)-オンがより好ましく、3-メチル-5-ピラゾロンが特に好ましい。
【0078】
本発明の高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物における成分(c)としては、上記した化合物を一種のみ単独で含んでもよいし、二種以上を混合して含んでもよい。
【0079】
化合物(1)の中には、互変異性体を生じるものがある。互変異性化が可能である(例えば、溶液中である)場合に、互変異性体の化学平衡に達し得る。化合物(1)は、例えば、式(2)~(7)で表されるような互変異性体として存在することができる。
【0080】
前記式(1)において、R及びRが水素原子である化合物(化合物(1)-A)には、以下の式(2)~(4)で表される互変異性体が存在する。
【0081】
【化6】
【0082】
〔式中、R及びRは前記に同じである。〕
【0083】
前記式(1)において、Rが水素原子である化合物(化合物(1)-B)には、以下の式(5)~(6)で表される互変異性体が存在する。
【0084】
【化7】
【0085】
〔式中、R、R及びRは前記に同じである。〕
【0086】
前記式(1)において、Rが水素原子である化合物(化合物(1)-C)には、以下の式(7)で表される互変異性体が存在する。
【0087】
【化8】
【0088】
〔式中、R、R及びRは前記に同じである。〕
【0089】
上記式(2)~(7)で表される互変異性体と、化合物(1)とは、何れの異性体も共存する平衡状態に達している。よって、別段の記載がない限り、本明細書において、化合物(1)のすべての互変異性体の形態は、本発明の範囲内である。
【0090】
また、式(1)で表される化合物の塩としては、特に限定はなく、あらゆる種類の塩が含まれる。このような塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;ジメチルアンモニウム、及びトリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩等が挙げられる。
【0091】
本発明の高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物における成分(c)としては、化合物(1)が任意の割合で含まれる混合物を含んでもよい。
【0092】
上記成分(c)の配合量は、高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物中の上記成分(a)100質量部に対して、0.01~50質量部とすることが好ましく、0.05~30質量部とすることがより好ましく、0.1~20質量部とすることが更に好ましく、0.3~10質量部とすることが特に好ましい。
【0093】
ゴム組成物中の成分(a)、(b)、(c)及び(d)の合計100質量%中における成分(c)の含有量は、0.01~50質量%であることが好ましく、0.05~30質量%であることがより好ましく、0.1~20質量%であることが更に好ましく、0.2~6質量%であることが特に好ましい。成分(c)が0.01質量%以上含まれることにより、成分(a)の発泡倍率を向上させることができる。一方、ゴム組成物中に含まれる成分(c)が50質量%以下であることにより、ゴム組成物のコストを低減させ、経済性を向上することができる。
【0094】
上記成分(b)と(c)の配合割合は、成分(b)と(c)の合計質量を100質量部としたときの上記成分(c)の割合は、0.1~80質量部が好ましく、1~75質量部がより好ましく、3~70質量部が更に好ましく、5~65質量部が特に好ましい。
【0095】
(1.4.成分(d):加硫剤及び架橋剤からなる群より選択される少なくとも一種)
成分(d)は加硫剤及び架橋剤からなる群より選択される少なくとも一種である。加硫剤、架橋剤をそれぞれ単独で使用しても良いし、加硫剤と架橋剤を一緒に使用しても良い。
【0096】
加硫剤としては、硫黄、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス-(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等があるが、その中でも硫黄が好ましい。一種のみ単独で含んでもよいし、二種以上を混合して含んでもよい。
【0097】
架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジヘキシルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシジ-イソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、p-ベンゾキノンジオキシム、酸化鉛、酸化亜鉛、メルカプトベンゾチアゾール、2,2´-ジベンゾチアゾリルジスルフィド等があるが、その中でもジクミルパーオキサイドが好ましい。一種のみ単独で含んでもよいし、二種以上を混合して含んでもよい。
【0098】
上記成分(d)の配合量は、高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物中の上記成分(a)100質量部に対して、0.01~10質量部とすることが好ましく、0.05~8質量部とすることがより好ましく、0.1~7質量部とすることが更に好ましく、0.3~5質量部とすることが特に好ましい。
【0099】
ゴム組成物中の成分(a)、(b)、(c)及び(d)の合計100質量%中における成分(d)の含有量は、0.01~10質量%であることが好ましく、0.05~8質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることが更に好ましく、0.3~3質量%であることが特に好ましい。成分(d)が0.01質量%以上含まれることにより、架橋することができる。一方、ゴム組成物中に含まれる成分(d)が10質量%以下であることにより、組成物のコスト削減、臭気の低減をすることができる。
【0100】
(1.5.成分(e):発泡助剤)
本発明の高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物には、さらに成分(e)として発泡助剤を添加することも好ましい。かかる発泡助剤としては、特に限定されず、従来から発泡助剤として汎用されているものを使用することができる。例えば、尿素、尿素と脂肪酸及び脂肪酸金属塩との混合物、チオウレア、テトラメチルウレア、ジメチルチオウレア、セミカルバジド、カルボヒドラジドなどの尿素化合物、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛、トルエンスルホン酸亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、炭酸亜鉛などの亜鉛化合物、二酸化鉛、三塩基性鉛などの鉛化合物等が挙げられる。
【0101】
上記発泡助剤は、1種単独で、又は2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。
【0102】
上記成分(e)の配合量は、ゴム組成物中の上記成分(a)100質量部に対して、0.05~100質量部とすることが好ましく、0.1~80質量部とすることがより好ましく、0.5~60質量部とすることが更に好ましく、1~30質量部とすることが特に好ましい。
【0103】
上記尿素化合物は、上記成分(b)としてのアゾジカルボンアミド、N,N´-ジニトロソペンタンメチレンテトラミン、p,p´-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、ヒドラゾジカルボンアミドとの併用が好ましく、アゾジカルボンアミドとの併用が更に好ましい。
【0104】
本発明のゴム組成物に上記尿素化合物を添加することにより、発泡剤の分解を早期化することができる。
【0105】
また、尿素化合物100質量部に対して、上記成分(b)を1~1000質量部とすることが好ましい。
【0106】
上記亜鉛化合物は、上記成分(b)としてのアゾジカルボンアミド、N,N´-ジニトロソペンタンメチレンテトラミン、p,p´-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、ヒドラゾジカルボンアミドとの併用が好ましい。
【0107】
また、亜鉛化合物100質量部に対して、上記成分(b)を1~1000質量部とすることが好ましい。
【0108】
上記鉛化合物は上記成分(b)としてのアゾジカルボンアミド、N,N´-ジニトロソペンタンメチレンテトラミン、p,p´-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、ヒドラゾジカルボンアミドとの併用が好ましい。
【0109】
また、鉛化合物100質量部に対して、上記成分(b)を1~1000質量部とすることが好ましい。
【0110】
ゴム組成物中の成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の合計100質量%中における成分(e)の含有量は、0.01~50質量%とすることが好ましく、0.05~40質量%とすることがより好ましく、0.1~20質量%とすることが更に好ましい。成分(e)が0.01質量%以上含まれることにより、成分(a)の発泡倍率を向上させることができる。一方、ゴム組成物中に含まれる成分(e)を50質量%以下とすることにより、ゴム組成物のコストを低減させ、経済性を向上することができる。
【0111】
(1.6.その他配合剤)
本発明の高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物には、上記成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)以外にも、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、カーボンブラック、無機充填剤、老化防止剤、オゾン防止剤、軟化剤、加工助剤、ワックス、樹脂、オイル、ステアリン酸等の炭素数8~30の脂肪酸、酸化亜鉛(ZnO)、加硫促進剤、加硫遅延剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0112】
カーボンブラックは、通常ゴムの靱性を向上させるために用いられる。なお、本明細書においては、無機充填材にカーボンブラックは含まれない。
【0113】
カーボンブラックとしては、特に制限はなく、例えば、市販品のカーボンブラック、Carbon-Silica Dual phase filler等が挙げられる。ゴム成分にカーボンブラックを含有することにより、ゴムの電気抵抗を下げて、帯電を抑止する効果、更にゴムの強度を向上させる効果を享受できる。
【0114】
具体的に、カーボンブラックとしては、例えば、高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N110、N134、N220、N234、N330、N339、N375、N550、HAF、FEF、GPF、SRFグレードのカーボンブラック等が挙げられる。中でも、好ましいカーボンブラックは、SAF、ISAF、IISAF、N134、N234、N330、N339、N375、HAF、又はFEFグレードのカーボンブラックである。
【0115】
カーボンブラックのDBP吸収量としては、特に制限はなく、好ましくは60~200cm/100g、より好ましくは70~180cm/100g、特に好ましくは80~160cm/100gである。
【0116】
また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA、JISK6217-2:2001に準拠して測定する)は、好ましくは30~200m/g、より好ましくは40~180m/g、特に好ましくは50~160m/gである。
【0117】
無機充填材としては、ゴム工業界において、通常使用される無機化合物であれば、特に制限はない。使用できる無機化合物としては、例えば、シリカ;γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al・HO);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)];炭酸アルミニウム[Al(CO]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO・9HO)、チタン白(TiO)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al)、クレー(Al・2SiO)、カオリン(Al・2SiO・2HO)、パイロフィライト(Al・4SiO・HO)、ベントナイト(Al・4SiO・2HO)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO、Al・3SiO・5HO等)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO、MgSiO等)、ケイ酸カルシウム(Ca・SiO等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al・CaO・2SiO等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)・nHO]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO]、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が挙げられる。これらの無機充填材は、ゴム成分との親和性を向上させるために、該無機充填材の表面が有機処理されていてもよい。
【0118】
無機充填材としては、ゴム強度を付与する観点からシリカが好ましく、より好ましくはシリカ単独で、又はシリカとゴム工業界で通常使用される無機化合物の1種以上とを併用することができる。無機充填材として、シリカ及びシリカ以外の上記無機化合物を併用する場合には、無機充填材の全成分の合計量が上記範囲となるように適宜調整すればよい。シリカは、ゴム強度を付与することができるため添加することが好ましい。
【0119】
シリカとしては、市販のあらゆるものが使用できる。中でも、好ましいシリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ、又はコロイダルシリカであり、より好ましくは湿式シリカである。これらのシリカは、ゴム成分との親和性を向上させるために、シリカの表面が有機処理されていてもよい。
【0120】
シリカのBET比表面積としては、特に制限はなく、例えば、40~350m/gの範囲が挙げられる。BET比表面積がこの範囲であるシリカは、ゴム靱性及びゴム成分中への分散性を両立できるという利点がある。該BET比表面積は、ISO5794/1に準拠して測定される。
【0121】
この観点から、好ましいシリカとしては、BET比表面積が80~300m/gの範囲にあるシリカであり、より好ましくは、BET比表面積100~270m/gであるシリカであり、特に好ましくは、BET比表面積110~270m/gの範囲にあるシリカである。
【0122】
かかるシリカの市販品としては、Quechen Silicon Chemical Co.,Ltd.製の商品名「HD165MP」(BET比表面積=165m/g)、「HD115MP」(BET比表面積=115m/g)、「HD200MP」(BET比表面積=200m/g)、「HD250MP」(BET比表面積=250m/g)、東ソー・シリカ株式会社製の商品名「ニップシールAQ」(BET比表面積=205m/g)、「ニップシールKQ」(BET比表面積=240m/g)、デグッサ社製の商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積=175m/g)等が挙げられる。
【0123】
本発明の高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物にカーボンブラックを配合する場合には、カーボンブラックの配合量は、特に限定はなく、例えば、ゴム組成物中の上記成分(a)100質量部に対して、通常1~200質量部であり、好ましくは2~150質量部であり、より好ましくは3~120質量部である。
【0124】
本発明の高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物に無機充填材を配合する場合、無機充填材の配合量は、特に限定はなく、例えば、上記成分(a)100質量部に対して、通常1~200質量部であり、好ましくは2~150質量部であり、より好ましくは3~120質量部である。
【0125】
本発明の高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物にカーボンブラック及び無機充填材の両方を配合する場合には、両成分の合計量が上記範囲になるように適宜調整すれば良い。
【0126】
また、上記カーボンブラック及び/又は無機充填材が配合されたゴム組成物においては、カーボンブラック及び/又はシリカによるゴム組成物の靱性を高める目的、又はゴム組成物の引裂き強度と共に耐摩耗性を高める目的で、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤を配合してもよい。
【0127】
上記カーボンブラック及び/又は無機充填材と併用可能なシランカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなシランカップリング剤として、例えばスルフィド系、ポリスルフィド系、チオエステル系、チオール系、オレフィン系、エポキシ系、アミノ系、アルキル系のシランカップリング剤が挙げられる。
【0128】
スルフィド系のシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド等が挙げられる。これらの内、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが特に好ましい。
【0129】
チオエステル系のシランカップリング剤としては、例えば、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0130】
チオール系のシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール等を挙げることができる。
【0131】
オレフィン系のシランカップリング剤としては、例えば、ジメトキシメチルビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-(メトキシジメトキシジメチルシリル)プロピルアクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート等を挙げることができる。
【0132】
エポキシ系のシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、トリエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0133】
アミノ系のシランカップリング剤としては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-エトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0134】
アルキル系のシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、メチルトリエトキシシランが好ましい。
【0135】
これらシランカップリング剤の中でも、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを特に好ましく使用することができる。
【0136】
カーボンブラック及び/又は無機充填剤と併用可能なチタネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなチタネートカップリング剤として、例えばアルコキシド系、キレート系、アシレート系のチタネートカップリング剤が挙げられる。
【0137】
アルコキシド系のチタネートカップリング剤としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラステアリルチタネート等を挙げることができる。これらの内、テトライソプロピルチタネートが好ましい。
【0138】
キレート系のチタネートカップリング剤としては、例えば、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、ドデシルベンゼンスルホン酸チタン化合物、リン酸チタン化合物、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンエタノールアミネート、チタンオクチレングリコレート、チタンアミノエチルアミノエタノレート等を挙げることができる。これらの内、チタンアセチルアセトネートが好ましい。
【0139】
アシレート系のチタネートカップリング剤としては、例えば、チタンイソステアレート等を挙げることができる。
【0140】
カーボンブラック及び/又は無機充填剤と併用可能なアルミネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなアルミネートカップリング剤として、9-オクタデセニルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブトキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート等が挙げることができる。これらの内、9-オクタデセニルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートが好ましい。
【0141】
カーボンブラック及び/又は無機充填剤と併用可能なジルコネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなジルコネートカップリング剤として、例えばアルコキシド系、キレート系、アシレート系のジルコネートカップリング剤が挙げられる。
【0142】
アルコキシド系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート等を挙げることができる。この内、ノルマルブチルジルコネートが好ましい。
【0143】
キレート系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩等を挙げることができる。この内、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートが好ましい。
【0144】
アシレート系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム等を挙げることができる。この内、ステアリン酸ジルコニウムが好ましい。
【0145】
本発明においては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0146】
本発明の高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物のシランカップリング剤の配合量は、上記カーボンブラック及び/又は無機充填材100質量部に対して、0.1~20質量部とすることが好ましく、3~15質量部とすることがより好ましい。0.1質量部以上であれば、ゴム組成物の引裂き強度向上の効果をより好適に発現することができ、20質量部以下であれば、ゴム組成物のコストが低減し、経済性が向上する。
【0147】
(2.高発泡倍率発泡体)
本発明は、上記の高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物を発泡させた高発泡倍率発泡体に係る発明を包含する。かかる発泡体には、成形することにより成形体となった態様も含まれる。
【0148】
本発明の高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物における高発泡倍率発泡体とは、成分(a)、(b)及び(d)を含み、成分(c)を含まない組成物から製造された発泡体(以下、発泡体X)の式2で表される発泡倍率指数よりも大きな発泡倍率指数を有するものであると、定義される。また、本明細書において、高発泡倍率発泡体とは、発泡倍率指数が101以上のものであると定義される。ここで、発泡倍率指数は、下記式1及び2に基づき算出される値である。高発泡倍率発泡体の中でも、発泡倍率指数が103以上である発泡体が好ましく、105以上である発泡体が更に好ましく、110以上である発泡体が特に好ましい。なお、成分(a)、(b)、(c)及び(d)を含む組成物(以下、本発明のゴム組成物)から製造された発泡体と発泡体Xで使用された成分(b)の添加量は同じである。
【0149】
式1:発泡倍率=発泡成形前の比重/発泡成形後の比重×100
式2:発泡倍率指数=(本発明のゴム組成物から製造された発泡体の発泡倍率)×100/(発泡体Xの発泡倍率)
【0150】
例えば、成分(a)がブチルゴムの場合の高発泡倍率発泡体の発泡倍率指数は、120以上であり、130以上が更に好ましく、140以上が特に好ましい。
【0151】
例えば、成分(a)が天然ゴムとブタジエンゴムの併用の場合の高発泡倍率発泡体の発泡倍率指数は、103以上であり、105以上が更に好ましく、110以上が特に好ましい。
【0152】
例えば、成分(a)がエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)の場合の高発泡倍率発泡体の発泡倍率指数は、103以上であり、105以上が更に好ましく、110以上が特に好ましい。
【0153】
(3.タイヤ、音響用部材、シール材、ホース、ベルト、電線被覆、及び断熱材)
さらに本発明は、上記の高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物、高発泡倍率発泡体より製造されたタイヤ、音響用部材、シール材、ホース、ベルト、電線被覆、及び断熱材に係る発明を包含する。
【0154】
本発明のタイヤとしては、例えば、空気入りタイヤ(ラジアルタイヤ、バイアスタイヤ等)、ソリッドタイヤ等が挙げられる。
【0155】
タイヤの用途としては、特に制限はなく、例えば、乗用車用タイヤ、高荷重用タイヤ、モーターサイクル(自動二輪車)用タイヤ、スタッドレスタイヤ等が挙げられ、中でも、乗用車用タイヤ又はスタッドレスタイヤに好適に使用できる。
【0156】
本発明のタイヤの形状、構造、大きさ及び材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0157】
本発明のタイヤにおいて、上記ゴム組成物は、特にトレッド部、サイドウォール部、ビードエリア部、ベルト部、カーカス部及びショルダー部から選ばれる少なくとも一つの部材に用いられる。
【0158】
中でも、空気入りタイヤのタイヤトレッド部、又はサイドウォール部を当該ゴム組成物で形成するのが好ましく、タイヤトレッド部を当該ゴム組成物で形成するのが特に好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0159】
トレッド部とは、トレッドパターンを有し、路面と直接接する部分で、カーカスを保護するとともに摩耗及び外傷を防ぐタイヤの外皮部分であり、タイヤの接地部を構成するキャップトレッド及び/又はキャップトレッドの内側に配設されるベーストレッドをいう。
【0160】
サイドウォール部とは、例えば、空気入りラジアルタイヤにおけるショルダー部の下側からビード部に至るまでの部分であり、カーカスを保護するとともに、走行する際に最も屈曲の激しい部分である。
【0161】
ビードエリア部とは、カーカスコードの両端を固定し、同時にタイヤをリムに固定させる役目を負っている部分である。ビードとは高炭素鋼を束ねた構造である。
【0162】
ベルト部とは、ラジアル構造のトレッドとカーカスとの間に円周方向に張られた補強帯である。カーカスを桶のたがの様に強く締付けトレッドの剛性を高めている。
【0163】
カーカス部とは、タイヤの骨格を形成するコード層の部分であり、タイヤの受ける荷重、衝撃、及び充填空気圧に耐える役割を果たしている。
【0164】
ショルダー部とは、タイヤの肩の部分で、カーカスを保護する役目を果たす。
【0165】
本発明のタイヤは、タイヤの分野において、これまでに知られている方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気;窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0166】
また、本発明の音響部材としては、スピーカーエッジ、吸音材、遮音材、防振材、除振材等を挙げることができる。本発明のシール材としては、ゴムパッキン、オイルシール、止水材、目打ち材、ウェザーストリップ、及びガラスランチャンネル等を挙げることができる。本発明のホースとしては、ラジエーターホース、水道用ホース、及びコンクリート運搬用ホース等を挙げることができる。本発明のベルトとしては、伝動ベルト、コンベアベルト、及びVベルト等を挙げることができる。本発明の電線被覆としては、送電線用の被覆等を挙げることができる。本発明の断熱材としては、冷媒、熱媒等を輸送するための配管用断熱材、床・壁などの断熱材等を挙げることができる。
【0167】
本発明の高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物を伝動ベルト、特にコンベアベルトに用いる場合、例えば、前記ゴム組成物を補強材に密着させ、加硫することにより製造することができる。具体的には、前記ゴム組成物を押出成形等することによってシート状のカバーゴム層を製造し、補強材を該カバーゴム層で上下から挟み込み、このベルト成形品を金型にセットして所定の温度及び圧力で所定時間加硫する。なお、補強材は、コンベアベルトの用途に応じ、サイズ等を考慮して通常コンベアベルトに用いられるものを適宜選択して使用することができる。
【0168】
(4.発泡倍率向上剤)
本発明はさらに、発泡倍率向上剤(ゴム用発泡倍率向上剤)に関する発明を包含する。本明細書において、発泡倍率向上剤とは、化学発泡剤に作用する(化学発泡剤の分解温度を下げる)ことによる発泡の促進を行う発泡助剤とは異なり、ゴム組成物に作用し、発泡倍率を向上させることができる剤のことであると定義される。
【0169】
本発明の発泡倍率向上剤(ゴム用発泡倍率向上剤)は、より具体的には、タイヤ用発泡倍率向上剤、音響部材用発泡倍率向上剤、シール材用発泡倍率向上剤、ホース用発泡倍率向上剤、ベルト用発泡倍率向上剤、電線被覆用発泡倍率向上剤、又は断熱材用発泡倍率向上剤であり、上記成分(c)を含む。
【0170】
なお、本発明の発泡倍率向上剤に含まれる上記成分(c)には、上記化合物(1)の互変異性体も包含される。
【0171】
本発明の発泡倍率向上剤の配合量は、ゴム組成物中の上記成分(a)100質量部に対して、通常0.01~50質量部であり、好ましくは0.05~40質量部であり、より好ましくは0.1~30質量部であり、更に好ましくは0.5~10質量部である。本発明のゴム用添加剤の配合量が、成分(a)100質量部に対して0.01質量部以上であることにより、ゴム組成物の発泡倍率を向上させ、一方、ゴム用添加剤の配合量が成分(a)100質量部に対して50質量部以下であることにより、経済的に好ましい。
【0172】
本発明の発泡倍率向上剤は、成分(c)それ自体であることが好ましいが、適宜、充填剤等のその他の成分を含んでもよい。
【0173】
本発明の発泡倍率向上剤中の上記成分(c)と上記成分(b)の配合割合は、本発明の発泡倍率向上剤中の上記成分(c)と上記成分(b)の合計質量を100質量部としたときの本発明の発泡倍率向上剤の割合は、0.1~80質量部が好ましく、1~75質量部がより好ましく、3~70質量部が更に好ましく、5~65質量部が特に好ましい。
【0174】
本発明の発泡倍率向上剤をゴム成分に添加することで、ゴム組成物の発泡倍率を向上することができる。
【0175】
(5.発泡体の発泡倍率を向上させる方法)
本発明は、発泡体の発泡倍率を向上させる方法に係る発明を包含する。
【0176】
本発明の発泡体の発泡倍率を向上させる方法は、ゴム成分、化学発泡剤、及び下記式(1)で表される化合物又はその塩(化合物(1))を混合する工程を含む方法である。
【0177】
【化9】
【0178】
〔式中、Rは、水素原子、アルキル基、又はアラルキル基を示し、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基をさらに有していてもよい。〕
【0179】
なお、本発明の発泡体の発泡倍率を向上させる方法は、ただ単にゴム成分、化学発泡剤、及び化合物(1)を混合する工程であってもよいし、ゴム成分と化合物(1)とを混合後に化学発泡剤を混合する工程であってもよい。つまり、ゴム成分、化学発泡剤、及び化合物(1)を如何なる順序で混合した態様も含まれる。
【0180】
(6.高発泡倍率発泡体の製造方法)
本発明の高発泡倍率発泡体の製造方法としては、上記成分(a)、(b)、(c)、及び(d)を含む、本発明の高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物を発泡させる方法が挙げられる。
【0181】
本発明の高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物の製造方法としては、上記成分(a)、(b)、(c)及び(d)を混合すればよく、必要に応じてその他配合剤を混合すればよい。配合する順序は適宜設定されれば良い。例えば、上記成分(a)、(b)、及び(c)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物及び上記成分(d)を混合する工程(B)を含む方法、上記成分(a)、及び(b)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、成分(c)及び(d)を混合する工程(B)を含む方法、上記成分(a)、及び(c)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、成分(b)及び(d)を混合する工程(B)を含む方法等が挙げられる。それらの方法の中でも、上記成分(a)、及び(c)を含む原料成分を混練する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、成分(b)、及び(d)を混合する工程(B)を含む方法が好ましい。次いで、得られたゴム組成物を発泡させる工程(C)をさらに含むことにより、より高発泡倍率発泡体、例えば、発泡倍率指数が103以上の高発泡倍率発泡体を得ることができる。
【0182】
(6.1.工程(A))
工程(A)は、上記成分(a)、(b)、及び(c)を含む原料成分を混合する工程(A1)、上記成分(a)、及び(b)を含む原料成分を混合する工程(A2)、又は上記成分(a)、及び(c)を含む原料成分を混合する工程(A3)である。本工程(A)においては、上記成分(a)、及び(c)を含む原料成分を混合する工程(A3)が好ましい。
【0183】
工程(A)では、更に必要に応じて、上記のその他の配合剤等を配合することができる。本明細書において、「混合」には、単に混ぜ合わせるという態様のみならず、いわゆる「混練」という態様も含まれるものとする。
【0184】
工程(A)においては、上記成分(a)並びに、上記成分(b)及び(c)からなる群より選択される少なくとも一種を含む原料成分を混合する。これらの混合方法においては、各成分の全量を一度に混合してもよく、粘度調整等の目的に応じて、各成分を分割投入して混合してもよい。各成分を均一に分散させるために、混合操作を繰り返し行ってもよい。また、充填剤を予め湿式方法および又は乾式混合方法によりゴムに添加した充填剤マスターバッチゴムを使用しても良い。
【0185】
また、本発明の高発泡倍率発泡体に、カーボンブラック及び/又は無機充填剤を添加し、混合する場合における、工程(A)における別の混合方法としては、上記成分(a)並びに、上記成分(b)及び(c)からなる群より選択される少なくとも一種を混合する工程(A-1)、並びに工程(A-1)で得られた混合物とカーボンブラック及び/又は無機充填剤を含む原料成分とを混合する工程(A-2)を含む二段階の混合方法を挙げることができる。
【0186】
工程(A)におけるゴム組成物を混合する際の温度としては、特に制限はなく、例えば、ゴム組成物の温度の上限が100~190℃であることが好ましく、110~175℃であることがより好ましく、120~170℃であることが更に好ましい。
【0187】
工程(A)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、1分間から8分間であることが更に好ましい。
【0188】
工程(A-1)における上記成分(a)及び(c)を混合する際の温度としては、ゴム組成物の温度の上限が60~190℃であることが好ましく、70~160℃であることがより好ましく、80~150℃であることが更に好ましい。該混合温度が60℃より低いと反応が進行せず、また、190℃以上になると、ゴムの劣化が進行するためである。
【0189】
工程(A-1)における混合時間としては、10秒間~20分間が望ましく、30秒間~10分間であることがより好ましく、60秒間~7分間であることがさらに好ましい。該混合時間を10秒以上とすることにより反応を充分に進行させることが可能である。一方、混合時間を20分間以内とすることにより、生産性の面で優れる。
【0190】
工程(A-2)における工程(A-1)で得られた混合物とカーボンブラック及び/又は無機充填剤とを混合する際の温度としては、特に制限はなく、例えば、混合物の温度の上限が100~190℃であることが好ましく、110~175℃であることがより好ましく、130~170℃であることが更に好ましい。
【0191】
工程(A-2)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、1分間から8分間であることが更に好ましい。
【0192】
(6.2.工程(B))
工程(B)は、工程(A)で得られる混合物と、上記成分(d)とを混合する工程であって、該混合物が工程(A1)で得られた混合物の場合は上記成分(d)を混合する工程であり、該混合物が工程(A2)で得られた混合物の場合は上記成分(c)及び(d)を混合する工程であり、該混合物が工程(A3)で得られた混合物の場合は上記成分(b)及び(d)を混合する工程である。
【0193】
工程(B)では、さらに必要に応じて、加硫促進剤等を配合することができる。
【0194】
工程(B)は、加熱条件下で行うことができる。該工程の加熱温度としては、特に制限はなく、例えば、60~140℃であることが好ましく、80~120℃であることがより好ましく、90~120℃であることが更に好ましい。
【0195】
混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、60秒間から5分間であることが更に好ましい。
【0196】
工程(A)から工程(B)に進む際には、前段階の工程終了後の温度より、30℃以上低下させてから次の工程(B)へ進むことが好ましい。
【0197】
本発明の高発泡倍率発泡体の製造方法において、通常、ゴム組成物に配合されるステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤等の各種配合剤を、必要に応じて、工程(A)又は工程(B)において添加することができる。
【0198】
上記した配合剤は、工程(A)又は工程(B)のどちらか一方で添加してもよいし、あるいは工程(A)及び工程(B)に分けて添加してもよい。
【0199】
(6.3.工程(C):加硫(及び/又は架橋)・発泡工程)
工程(C)は、工程(B)で得られる混合物を加熱して、加硫(及び/又は架橋)と発泡とを行う工程である。
【0200】
加熱温度としては、混合した成分(b)が分解する温度以上であればよく、例えば、50~300℃であることが好ましく、80~250℃であることがより好ましく、100~200℃であることが更に好ましい。
【0201】
加熱時間としては、特に制限はなく、例えば、5秒間から24時間であることが好ましく、10秒間から12時間であることがより好ましく、5分間から3時間であることが更に好ましい。
【0202】
また、工程(C)は、加圧下で行ってもよい。加える圧力としては、特に制限はなく、例えば、0.1~300kgf/cmであることが好ましく、10~250kgf/cmであることがより好ましく、50~200kgf/cmであることが更に好ましい。
【0203】
加圧時間としては、特に制限はなく、例えば、5秒間から24時間であることが好ましく、10秒間から12時間であることがより好ましく、5分間から3時間であることが更に好ましい。本工程(C)は、工程(B)で得られる混合物を金型等に充填して、行行われるのが好ましく、加圧プレスや加硫缶を用いてもよい。
【0204】
上記成分(a)、及び(c)を含む原料成分を混練する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、成分(b)、及び(d)を混合する工程(B)を含む方法が好ましい。この方法で得られたゴム組成物を発泡させることで、より高発泡倍率発泡体、例えば、発泡倍率指数が103以上の高発泡倍率発泡体を得ることができるからである。
【0205】
(6.4.タイヤ)
本発明における高発泡倍率発泡体を用いたタイヤは、特に制限されず、例えば、以下の方法で作製することができる。
【0206】
まず、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機等を用いて、上記工程(A)及び(B)の混合を行う。その後、押出工程において押出して加工され、例えば、トレッド用部材、又はサイドウォール用部材として成形される。続いて、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で上記工程(C)の加熱及び加圧操作を行うことで、高発泡倍率発泡体を用いて作製されたタイヤを得ることができる。
【0207】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例
【0208】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0209】
実施例1~7、及び比較例1~2:高発泡倍率発泡体の製造
下記表1の工程(A)に記載の各成分をその割合(質量部)で混合し、バンバリーミキサーで混合した。混合物の温度が60℃以下になるまで養生させた後、表1の工程(B)に記載の各成分をその割合(質量部)で投入し、混合物の最高温度が70℃以下になるよう調整しながら混合した後、160℃に加熱して、高発泡倍率発泡体を製造した。
【0210】
実施例1~7及び比較例1~2:発泡倍率指数
発泡倍率は電子比重計(ALFA MIRAGE製MDS-300)を用いて発泡成形前後の比重を測定し、発泡倍率を算出した。
【0211】
比較するために、成分(c)を添加しない以外は、各実施例と同じ配合内容及び同じ製法で発泡体(比較例1及び2)を作製し、その発泡倍率をそれぞれ100とした指数により表し、下記式に基づいて発泡倍率指数を算出した。
【0212】
発泡倍率指数の値が大きい程、発泡倍率が大きく、発泡体として優れている。
【0213】
式:発泡倍率=
発泡成形前の比重/発泡成形後の比重×100
式:発泡倍率指数=
(各実施例1~6の発泡倍率)×100/(比較例1の発泡倍率)
式:発泡倍率指数=
(実施例7の発泡倍率)×100/(比較例2の発泡倍率)
【0214】
【表1】
【0215】
尚、表1における各成分の詳細は、下記の通りである。
※1:成分(a):ブチルゴム;JSR社製、JSR BUTYL 365
※2:カーボンブラックA;東海カーボン社製、シーストSO(N550)
※3:ワックス;大内新興化学社製、サンノック
※4:ステアリン酸;新日本理化社製、ステアリン酸50S
※5:オイル;出光昭和シェル社製、ダイアナプロセスオイルNR-26
※6:酸化亜鉛;堺化学工業社製、「1種」
※7:成分(c):化合物A;大塚化学社製、3-メチル-5-ピラゾロン
※8:加硫促進剤A;大内新興化学社製、ノクセラーM-P
※9:加硫促進剤B;大内新興化学社製、ノクセラーTT-P
※10:成分(d):硫黄;細井化学工業社製、HK200-5
※11:成分(b):発泡剤A;大塚化学社製、ユニフォームAZ VI-40(アゾジカルボンアミド、メジアン径:3.2±0.7μm)
※12:成分(e):発泡助剤;大塚化学社製、ユニフォームAZ 01
※13:成分(b):発泡剤B;大塚化学社製、ユニフォームAZ P-5(重曹)
【0216】
実施例8~18、及び比較例3~4:高発泡倍率発泡体の製造
下記表2の工程(A)に記載の各成分をその割合(質量部)で混合し、バンバリーミキサーで混合した。混合物の温度が60℃以下になるまで養生させた後、表2の工程(B)に記載の各成分をその割合(質量部)で投入し、混合物の最高温度が70℃以下になるよう調整しながら混合した後、160℃に加熱して、高発泡倍率発泡体を製造した。
【0217】
実施例8~18及び比較例3~4:発泡倍率指数
発泡倍率は電子比重計(ALFA MIRAGE製MDS-300)を用いて発泡成形前後の比重を測定し、発泡倍率を算出した。
【0218】
比較するために、成分(c)を添加しない以外は、各実施例と同じ配合内容及び同じ製法で発泡体(比較例3及び4)を作製し、その発泡倍率をそれぞれ100とした指数により表し、下記式に基づいて発泡倍率指数を算出した。
【0219】
発泡倍率指数の値が大きい程、発泡倍率が大きく、発泡体として優れている。
【0220】
式:発泡倍率=
発泡成形前の比重/発泡成形後の比重×100
式:発泡倍率指数=
(各実施例8~15の発泡倍率)×100/(比較例3の発泡倍率)
式:発泡倍率指数=
(各実施例16~18の発泡倍率)×100/(比較例4の発泡倍率)
【0221】
【表2】
【0222】
尚、表2における各成分の詳細は、下記の通りである。
※14:成分(a):天然ゴム;GUANGKEN RUBBER社製、TSR-20
※15:成分(a):ブタジエンゴム;宇部興産社製、UBEPOL BR 150B
※16:シリカ;東ソー社製、ニップシールAQ
※17:カーボンブラックB;東海カーボン社製、シースト7HM(N234)
※18:シランカップリング剤;Evonic Industries社製、Si69
※19:老化防止剤;大内新興化学社製、ノクラック6C
※20:加硫促進剤C;大内新興化学社製、ノクセラーCZ-G
【0223】
実施例19~23、及び比較例5~8:高発泡倍率発泡体の製造
下記表3の工程(A)に記載の各成分をその割合(質量部)で混合し、バンバリーミキサーで混合した。混合物の温度が60℃以下になるまで養生させた後、表3の工程(B)に記載の各成分をその割合(質量部)で投入し、混合物の最高温度が70℃以下になるよう調整しながら混合した後、200℃に加熱して、高発泡倍率発泡体を製造した。
【0224】
実施例19~23及び比較例5~8:発泡倍率指数
発泡倍率は電子比重計(ALFA MIRAGE製MDS-300)を用いて発泡成形前後の比重を測定し、発泡倍率を算出した。
【0225】
比較するために、成分(c)を添加しない以外は、各実施例と同じ配合内容及び同じ製法で発泡体(比較例5~8)を作製し、その発泡倍率をそれぞれ100とした指数により表し、下記式に基づいて発泡倍率指数を算出した。
【0226】
発泡倍率指数の値が大きい程、発泡倍率が大きく、発泡体として優れている。
【0227】
式:発泡倍率=
発泡成形前の比重/発泡成形後の比重×100
式:発泡倍率指数=
(実施例19の発泡倍率)×100/(比較例5の発泡倍率)
式:発泡倍率指数=
(各実施例20~21の発泡倍率)×100/(比較例6の発泡倍率)
式:発泡倍率指数=
(実施例22の発泡倍率)×100/(比較例7の発泡倍率)
式:発泡倍率指数=
(実施例23の発泡倍率)×100/(比較例8の発泡倍率)
【0228】
【表3】
【0229】
尚、表3における各成分の詳細は、下記の通りである。
※21:成分(a):EPDM;住友化学社製、エスプレン505A
※22:カーボンブラックC;旭カーボン社製、#50
※23:軽質炭酸カルシウム;東洋電化工業社製
※24:加硫促進剤D;大内新興化学社製、ノクセラーM
※25:加硫促進剤E;大内新興化学社製、ノクセラーBZ-P
※26:加硫促進剤F;大内新興化学社製、ノクセラーTET-G
※27:加硫促進剤G;大内新興化学社製、ノクセラーTRA
※28:成分(b):発泡剤C;大塚化学社製、ユニフォームAZ 100(p,p‘-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド)
【0230】
実施例24~27、及び比較例9~10:高発泡倍率発泡体の製造
下記表4の工程(A)に記載の各成分をその割合(質量部)で混合し、バンバリーミキサーで混合した。混合物の温度が60℃以下になるまで養生させた後、表4の工程(B)に記載の各成分をその割合(質量部)で投入し、混合物の最高温度が70℃以下になるよう調整しながら混合した後、160℃に加熱して、高発泡倍率発泡体を製造した。
【0231】
実施例24~27及び比較例9~10:発泡倍率指数
発泡倍率は電子比重計(ALFA MIRAGE製MDS-300)を用いて発泡成形前後の比重を測定し、発泡倍率を算出した。
【0232】
比較するために、成分(c)を添加しない以外は、各実施例と同じ配合内容及び同じ製法で発泡体(比較例9~10)を作製し、その発泡倍率をそれぞれ100とした指数により表し、下記式に基づいて発泡倍率指数を算出した。
【0233】
発泡倍率指数の値が大きい程、発泡倍率が大きく、発泡体として優れている。
【0234】
式:発泡倍率=
発泡成形前の比重/発泡成形後の比重×100
式:発泡倍率指数=
(各実施例24~26の発泡倍率)×100/(比較例9の発泡倍率)
式:発泡倍率指数=
(実施例27の発泡倍率)×100/(比較例10の発泡倍率)
【0235】
【表4】
【0236】
尚、表4における各成分の詳細は、下記の通りである。
※29:成分(b):発泡剤D;三協化学社製、セルマイクA(ジニトロペンタメチレンテトラミン)
【0237】
実施例28~32、及び比較例11~12:高発泡倍率発泡体の製造
下記表5の工程(A)に記載の各成分をその割合(質量部)で混合し、バンバリーミキサーで混合した。混合物の温度が60℃以下になるまで養生させた後、表5の工程(B)に記載の各成分をその割合(質量部)で投入し、混合物の最高温度が70℃以下になるよう調整しながら混合した後、200℃に加熱して、高発泡倍率発泡体を製造した。
【0238】
実施例28~32、及び比較例11~12:発泡倍率指数
発泡倍率は、電子比重計(ALFA MIRAGE製MDS-300)を用いて発泡成形前後の比重を測定し、発泡倍率を算出した。
【0239】
比較するために、成分(c)を添加しない以外は、各実施例と同じ配合内容及び同じ製法で発泡体(比較例11及び12)を作製し、その発泡倍率をそれぞれ100とした指数により表し、下記式に基づいて発泡倍率指数を算出した。
【0240】
発泡倍率指数の値が大きい程、発泡倍率が大きく、発泡体として優れている。
【0241】
発泡倍率=発泡成形前の比重/発泡成形後の比重×100
発泡倍率指数=
(実施例28~30の発泡倍率)/(比較例11の発泡倍率)×100
発泡倍率指数=
(実施例31~32の発泡倍率)/(比較例12の発泡倍率)×100
【0242】
実施例28~32、及び比較例11~12:平均セル径指数
平均セル径は、ASTM D2842-69に準拠して、測定した。
【0243】
比較するために、成分(c)を添加しない以外は、各実施例と同じ配合内容及び同じ製法で発泡体(比較例11及び12)を作製し、その平均セル径をそれぞれ100とした指数により表し、下記式に基づいて平均セル径指数を算出した。
【0244】
平均セル径指数の値が小さい程、セル径が緻密であり、発泡体として優れている。
【0245】
平均セル径指数=
(実施例28~30の平均セル径)/(比較例11の平均セル径)×100
平均セル径指数=
(実施例31~32の平均セル径)/(比較例12の平均セル径)×100
【0246】
実施例28~32、及び比較例11~12:引張強度指数
引張強度は、JIS K 6251に準拠して、測定した。
【0247】
比較するために、成分(c)を添加しない以外は、各実施例と同じ配合内容及び同じ製法で発泡体(比較例11及び12)を作製し、その引張強度をそれぞれ100とした指数により表し、下記式に基づいて引張強度指数を算出した。
【0248】
引張強度指数の値が大きい程、引張強度が高く、発泡体として優れている。
【0249】
引張強度指数=
(実施例28~30の引張強度)/(比較例11の引張強度)×100
引張強度指数=
(実施例31~32の引張強度)/(比較例12の引張強度)×100
【0250】
【表5】
【0251】
尚、表5における各成分の詳細は、下記の通りである。
※30:オイル;出光昭和シェル社製、ダイアナプロセスオイルPW-90
※31:成分(b):発泡剤E;大塚化学社製、ユニフォームAZ ULTRA #3170N-I(アゾジカルボンアミド、メジアン径:15±4μm、表面処理品)
【産業上の利用可能性】
【0252】
本発明の高発泡倍率を有する発泡体の製造用ゴム組成物は、ゴム成分、化学発泡剤、上記した式(1)で表される化合物又はその塩、並びに、加硫剤及び架橋剤からなる群より選択される少なくとも一種を含むことにより、高発泡倍率発泡体を提供することができる。