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特許7198398表面処理無機粒子、無機粒子含有組成物、熱伝導性硬化物、構造体および積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】表面処理無機粒子、無機粒子含有組成物、熱伝導性硬化物、構造体および積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20221222BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20221222BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20221222BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20221222BHJP
   B32B 1/00 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
C08L75/04
C08K3/22
C08K9/06
B32B9/00 A
B32B1/00 Z
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022096773
(22)【出願日】2022-06-15
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2021183107
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100124936
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 恵子
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康平
(72)【発明者】
【氏名】権藤 亮介
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-248350(JP,A)
【文献】特表2020-500982(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068418(WO,A1)
【文献】特表2015-511646(JP,A)
【文献】特公昭47-023675(JP,B1)
【文献】特開2007-126633(JP,A)
【文献】特開2019-099728(JP,A)
【文献】特開2016-098328(JP,A)
【文献】国際公開第2011/070865(WO,A1)
【文献】特開2006-290725(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108504315(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08G18/00- 18/87
B32B 9/00
B32B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均一次粒子径0.05~100μm、含水量が0.5質量%以下の熱伝導性無機粒子(A)と、熱伝導性無機粒子(A)の表面に形成された被覆層と、を有する表面処理無機粒子(D)であって、
熱伝導性無機粒子(A)が酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、およびベーマイトからなる群より選択される少なくともいずれかであり、
前記被覆層は、
一般式(1): Si(R)(R)(R)(R
で表されるシラン化合物に由来する成分を50質量%以上有し、
但し、一般式(1)中のR~Rのうち2つは互いに独立して、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表し、他の2つは互いに独立して、無置換のアルキル基、置換基を有するアルキル基、およびフェニル基からなる群より選択される少なくとも1種を表す、若しくは、R~Rのうち3つは互いに独立して、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表し、他の1つは無置換のアルキル基、置換基を有するアルキル基、およびフェニル基からなる群より選択される少なくとも1種を表し、前記置換基が(メタ)アクリル基またはイソシアネート基であり、
前記熱伝導性無機粒子(A)が酸化アルミニウムの場合、前記シラン化合物が以下の(I)~(III)のいずれかを満たし、
前記熱伝導性無機粒子(A)が水酸化アルミニウムまたはベーマイトの場合、前記シラン化合物が以下の(IV)を満たし、
表面処理無機粒子(D)100質量%に対して前記シラン化合物が0.05~3質量%であり、
含水量が0.2質量%以下であり、かつ疎水化度が35%以上である、ポリイソシアネート系組成物用の表面処理無機粒子(D)。
(I):R ~R のうち少なくとも1つが炭素数3~10の無置換のアルキル基である。
(II):R ~R のうち少なくとも2つが炭素数1~10の無置換のアルキル基である。
(III):R ~R のうち少なくとも2つが無置換のフェニル基である。
(IV):R ~R のうち少なくとも1つが炭素数6~10の無置換のアルキル基である。
【請求項2】
一般式(1)において、前記置換基は(メタ)アクリル基、前記アルコキシ基の炭素数は1~10、前記アリールオキシ基の炭素数は6~10、前記無置換のアルキル基の炭素数は1~10、から選択され、疎水化度が40~95%である、請求項1記載の表面処理無機粒子(D)。
【請求項3】
熱伝導性無機粒子(A)が非球状粒子である、請求項1に記載の表面処理無機粒子(D)。
【請求項4】
熱伝導性無機粒子(A)の比表面積をAx,表面処理無機粒子(D)の比表面積をDxとしたとき、Dx/Ax=0.3~0.8である、請求項1に記載の表面処理無機粒子(D)。
【請求項5】
熱伝導性無機粒子(A)の含水量をAy、表面処理無機粒子(D)の含水量をDyとしたとき、Dy/Ay=0.05~1である、請求項1に記載の表面処理無機粒子(D)。
【請求項6】
粉体粒度D50が1~100μm、嵩密度が0.3~2g/cmである、請求項1に記載の表面処理無機粒子(D)。
【請求項7】
無機粒子(E)と、反応性有機溶媒(C)とを含有し、
無機粒子(E)は、
請求項1~6いずれか記載の表面処理無機粒子(D)、
表面処理無機粒子(D)に該当しない、表面処理されていてもよい熱伝導性無機粒子(A)、および
表面処理無機粒子(D)および熱伝導性無機粒子(A)に該当しない、表面処理されていてもよい熱伝導性フィラー(F)のいずれか一種以上であり、
無機粒子(E)として表面処理無機粒子(D)を少なくとも含み、
熱伝導性フィラー(F)は、熱伝導率が5W/(m・K)以上の無機フィラーであり、
反応性有機溶媒(C)は、ポリイソシアネート化合物(C1)を含む無機粒子含有組成物。
【請求項8】
更に、分散剤(B)を含む、請求項7記載の無機粒子含有組成物。
【請求項9】
反応性有機溶媒(C)は、さらにポリオール化合物(C2)を含有する、請求項7記載の無機粒子含有組成物。
【請求項10】
無機粒子(E)100質量部あたり、反応性有機溶媒(C)を5~40質量部、分散剤(B)を0.01~4質量部含み、
分散剤(B)の含水量が1質量%以下である、請求項8記載の無機粒子含有組成物。
【請求項11】
無機粒子(E)が70~95質量%含まれる、請求項7記載の無機粒子含有組成物。
【請求項12】
無機粒子(E)100質量%中に、表面処理無機粒子(D)を10~100質量%含む、請求項7記載の無機粒子含有組成物。
【請求項13】
無機粒子(E)100質量%中に含まれる表面処理無機粒子(D)の量が10~100質量%であり、
無機粒子(E)を100質量%としたとき、平均一次粒子径0.05μm以上10μm以下の無機粒子(a1)を10~30質量%、平均一次粒子径10μm超過30μm以下の無機粒子(a2)を30~70質量%、平均一次粒子径30μm超過100μm以下の無機粒子(a3)を15~40質量%含有し、(a1)、(a2)および(a3)の合計で80~100質量%含み、
反応性有機溶媒(C)が、ポリイソシアネート化合物(C1)およびポリオール化合物(C2)を主成分として含み、
無機粒子(E)100質量部に対する反応性有機溶媒(C)の量が5~40質量部であり、分散剤(B)の量が0.01~4質量部である請求項8記載の無機粒子含有組成物。
【請求項14】
ポリイソシアネート化合物(C1)の25℃における粘度が10~10,000mPa・sである、請求項7記載の無機粒子含有組成物。
【請求項15】
無機粒子(E)100gあたり、無機粒子(a1)~(a3)の表面積の合計値をXm、表面処理無機粒子(D)の前記被覆層を構成する前記一般式(1)で表されるシラン化合物の合計量をYgとしたとき、(Y/X)×1000が1.0~5.0である、請求項13記載の無機粒子含有組成物。
【請求項16】
分散剤(B)を含み、当該分散剤(B)が、
カルボキシル基を有する陰イオン性界面活性剤、または、
酸価5~200mgKOH/g、かつ重量平均分子量500~100,000の高分子型分散剤を含む、請求項7記載の無機粒子含有組成物。
【請求項17】
分散剤(B)を含み、当該分散剤(B)が、
酸価5~200mgKOH/g、かつ重量平均分子量1,000~50,000の、ポリエーテル構造またはポリエステル構造を有する高分子型分散剤を含む、請求項7記載の無機粒子含有組成物。
【請求項18】
分散剤(B)を含み、当該分散剤(B)が、
カルボキシル基を有し、酸価5~150mgKOH/g、アミン価0~30mgKOH/g、かつ重量平均分子量1,000~50,000の高分子型分散剤を含み、
無機粒子(E)100質量部に対して、反応性有機溶媒(C)が5~40質量部、分散剤(B)が0.01~4質量部である、請求項7記載の無機粒子含有組成物。
【請求項19】
分散剤(B)を含み、当該分散剤(B)が、ポリエーテル構造またはポリエステル構造を有する高分子型分散剤であり、主鎖にポリエーテル構造またはポリエステル構造を有する高分子、および側鎖にポリエーテル構造を有するビニル系高分子からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項7記載の無機粒子含有組成物。
【請求項20】
35℃における3時間後の粘度変化率が0.8~3.0である、請求項7記載の無機粒子含有組成物。
【請求項21】
請求項記載の無機粒子含有組成物を硬化させてなる、熱伝導率が1~8W/(m・K)である、熱伝導性硬化物。
【請求項22】
膜厚が0.01~10mmである、請求項21記載の熱伝導性硬化物。
【請求項23】
部材(M1)と、部材(M2)と、部材(M1)および部材(M2)の間に形成された、請求項21記載の熱伝導性硬化物とを備えた構造体。
【請求項24】
シート状基材(S1)と、請求項21記載の熱伝導性硬化物と、シート状基材(S2)とをこの順に備えた積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱伝導性硬化物、構造体および積層体、並びにこれらの製造に使用する表面処理無機粒子およびこれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、並びにこれに搭載するバッテリーの小型化、高機能化および多機能化が進むにつれ、ますます効率的な放熱技術の開発が求められている。放熱が不充分であると電子機器等の正常な作動が妨げられ、劣化、故障、破損の原因となる恐れがある。
【0003】
放熱技術として、金属板、ヒートシンク、熱伝導性シート、或いは熱伝導性硬化物層等を発熱体と接触させる方法がある。
【0004】
熱伝導性硬化物層は、例えば、熱伝導性無機粒子を含む硬化性組成物をペースト状にして塗布するか、または接着対象物間に硬化性組成物を注入した後、硬化させて得られる。熱伝導性無機粒子としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機粒子が知られている。これらの無機粒子は、主として材料の熱伝導性および入手性の観点から選定されることが多い。
【0005】
熱伝導性硬化物層は、熱伝導性無機粒子が占める体積濃度が高く、高密度に充填されているほど、良好な熱伝導性を発現する。しかし、熱伝導性無機粒子をペースト中に高濃度に配合すると、粘度およびチキソ性が増大して、塗工あるいは注入が困難となる問題がある。また、このようなペーストから硬化物を得ることができたとしても、熱伝導性無機粒子のパッキング性および気泡の抜けが悪く、良好な熱伝導性が得られなくなる問題がある。
【0006】
特許文献1には、酸化アルミニウムの表面をシランカップリング剤で表面処理することで、エポキシ樹脂媒体中への濡れ性を改善することが記載されている。また、特許文献2では、酸化アルミニウムの表面をシランカップリング剤で表面処理して、疎水性表面処理することが記載されている。また、特許文献3には、ポリオール化合物およびポリイソシアネート化合物を媒体として、アルミナを分散する分散剤として、リン酸エステル系陰イオン性分散剤を使用することが開示されており、粘度が改善されたことが記載されている。
【0007】
特許文献4には、熱伝導性無機粒子である窒化ホウ素とアルミナのそれぞれにシランカップリング剤を作用させ、重合性化合物(重合性オキシラニル化合物、重合性アミン化合物)を用いることで粒子間の結合を実現し、金属/金属間、金属/半導体間、金属/樹脂間などの接着性に優れることが記載されている。さらに、特許文献5には、ポリオールを含む主剤組成物とポリイソシアネートを含む硬化性組成物とに、粒径の異なる3種類のアルミナ粒子を混錬することで、熱伝導度、絶縁性、粘度やチキソトロピー性に優れた2液型ウレタン系接着剤組成物が得られることが記載されている。
【0008】
特許文献6には、無機物と、ポリイソシアネートと、数平均分子量および量の範囲が異なる2種類のポリオール混合物とを含有するポリウレタン樹脂組成物が開示されている。また、特許文献7には、水酸基含有化合物と、イソシアネート基含有化合物と、アルミナ、水酸化アルミニウム等から選択される無機充填材とを含有するポリウレタン樹脂組成物が開示されている。さらに、特許文献8には、難燃剤として被覆された金属水酸化物とリン含有難燃剤とを含み、ハイドロタルサイト及び/又はフィロシリケートを必須成分とするポリウレタン樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-104832号公報
【文献】特開2005-306718号公報
【文献】国際公開第2019/190107号
【文献】国際公開第2019/139057号
【文献】国際公開第2018/212553号
【文献】特開2010-248350号公報
【文献】国際公開第2015/068418号
【文献】国際公開第2013/135680号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
表面処理無機粒子は、核となる無機粒子の周囲に被覆層(表面処理層)が形成された構造を持つ粒子であり、被覆層の形成に用いた材料の化学構造によって、粒子表面の極性および反応性が大きく変わる。形成された表面処理層の性状によって、粒子の吸湿性および媒体への濡れ性、さらに得られるスラリーの粘性、分散安定性および反応性にも大きな影響があるため、その化学構造の選定が重要となる。
【0011】
熱伝導性無機粒子は、様々な組成、形状、表面処理状態および一次粒子径を有するものが既に上市されている。これらの無機粒子は、粒子の表面組成によって表面処理層の形成性、好適な分散剤の化学構造、媒体への濡れ性等が大きく異なる。
【0012】
ポリイソシアネート化合物を用いた硬化性組成物において、表面処理層の親水性、疎水性のバランス、および官能基の反応性の制御が充分ではなく、特に高濃度に粒子を配合したときの組成物のハンドリング性および貯蔵安定性に課題があった。その結果、得られる硬化物の硬化性および熱伝導性も充分ではなかった。
【0013】
本開示は上記背景に鑑みてなされたものであり、ハンドリング性良好で、かつ貯蔵安定性が良好な無機粒子含有組成物を得ることができるポリイソシアネート系組成物用の表面処理無機粒子、これを含む無機粒子含有組成物、並びに、前記組成物を硬化させてなる熱伝導性硬化物、構造体および積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、上記課題を解決し得ることを見出し、本開示を完成するに至った。
[1]: 平均一次粒子径0.05~100μmの熱伝導性無機粒子(A)と、熱伝導性無機粒子(A)の表面に形成された被覆層と、を有する表面処理無機粒子(D)であって、
熱伝導性無機粒子(A)が酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、および窒化アルミニウムからなる群より選択される少なくともいずれかであり、
前記被覆層は、
一般式(1 ): Si(R)(R)(R)(R
で表されるシラン化合物に由来する成分を50質量%以上有し、
但し、一般式(1)中のR~Rのうち2つは互いに独立して、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表し、他の2つは互いに独立して、無置換のアルキル基、置換基を有するアルキル基、およびフェニル基からなる群より選択される少なくとも1種を表す、若しくは、R~Rのうち3つは互いに独立して、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表し、他の1つは無置換のアルキル基、置換基を有するアルキル基、およびフェニル基からなる群より選択される少なくとも1種を表し、前記置換基が(メタ)アクリル基またはイソシアネート基であり、
表面処理無機粒子(D)100質量%に対して前記シラン化合物が0.05~3質量%であり、
含水量が0.2質量%以下であり、かつ疎水化度が35%以上である、ポリイソシアネート系組成物用の表面処理無機粒子(D)。
[2]: 一般式(1)において、前記置換基は(メタ)アクリル基、前記アルコキシ基の炭素数は1~10、前記アリールオキシ基の炭素数は6~10、前記無置換のアルキル基の炭素数は1~10、から選択され、疎水化度が40~95%である、[1]記載の表面処理無機粒子(D)。
[3]: 熱伝導性無機粒子(A)が非球状粒子である、[1]または[2]に記載の表面処理無機粒子(D)。
[4]: 熱伝導性無機粒子(A)の比表面積をAx,表面処理無機粒子(D)の比表面積をDxとしたとき、Dx/Ax=0.3~0.8である、[1]~[3]いずれかに記載の表面処理無機粒子(D)。
[5]: 熱伝導性無機粒子(A)の含水量をAy、表面処理無機粒子(D)の含水量をDyとしたとき、Dy/Ay=0.05~1である、[1]~[4]いずれかに記載の表面処理無機粒子(D)。
[6]: 粉体粒度D50が1~100μm、嵩密度が0.3~2g/cmである、[1]~[5]いずれかに記載の表面処理無機粒子(D)。
[7]: 無機粒子(E)と、反応性有機溶媒(C)とを含有し、
無機粒子(E)は、
[1]~[6]いずれか記載の表面処理無機粒子(D)、
表面処理無機粒子(D)に該当しない、表面処理されていてもよい熱伝導性無機粒子(A)、および
表面処理無機粒子(D)および熱伝導性無機粒子(A)に該当しない、表面処理されていてもよい熱伝導性フィラー(F)のいずれか一種以上であり、
無機粒子(E)として表面処理無機粒子(D)を少なくとも含み、
熱伝導性フィラー(F)は、熱伝導率が5W/(m・K)以上の無機フィラーであり、
反応性有機溶媒(C)は、ポリイソシアネート化合物(C1)を含む無機粒子含有組成物。
[8]: 更に、分散剤(B)を含む、[7]記載の無機粒子含有組成物。
[9]: 反応性有機溶媒(C)は、さらにポリオール化合物(C2)を含有する、[7]または[8]記載の無機粒子含有組成物。
[10]: 無機粒子(E)100質量部あたり、反応性有機溶媒(C)を5~40質量部、分散剤(B)を0.01~4質量部含み、
分散剤(B)の含水量が1質量%以下である、[7]~[9]のいずれか記載の無機粒子含有組成物。
[11]: 無機粒子(E)が70~95質量%含まれる、[7]~[10]のいずれか記載の無機粒子含有組成物。
[12]: 無機粒子(E)100質量%中に、表面処理無機粒子(D)を10~100質量%含む、[7]~[11]記載の無機粒子含有組成物。
[13]: 無機粒子(E)100質量%中に含まれる表面処理無機粒子(D)の量が10~100質量%であり、
無機粒子(E)を100質量%としたとき、平均一次粒子径0.05μm以上10μm以下の無機粒子(a1)を10~30質量%、平均一次粒子径10μm超過30μm以下の無機粒子(a2)を30~70質量%、平均一次粒子径30μm超過100μm以下の無機粒子(a3)を15~40質量%含有し、(a1)、(a2)および(a3)の合計で80~100質量%含み、
反応性有機溶媒(C)が、ポリイソシアネート化合物(C1)およびポリオール化合物(C2)を主成分として含み、
無機粒子(E)100質量部に対する反応性有機溶媒(C)の量が5~40質量部であり、分散剤(B)の量が0.01~4質量部である[7]~[12]のいずれか記載の無機粒子含有組成物。
[14]: ポリイソシアネート化合物(C1)の25℃における粘度が10~10,000mPa・sである、[7]~[13]のいずれか記載の無機粒子含有組成物。
[15]: 無機粒子(E)100gあたり、無機粒子(a1)~(a3)の表面積の合計値をXm、表面処理無機粒子(D)の前記被覆層を構成する前記一般式(1)で表されるシラン化合物の合計量をYgとしたとき、(Y/X)×1000が1.0~5.0である、[13]記載の無機粒子含有組成物。
[16]: 分散剤(B)を含み、当該分散剤(B)が、
カルボキシル基を有する陰イオン性界面活性剤、または、
酸価5~200mgKOH/g、かつ重量平均分子量500~100,000の高分子型分散剤を含む、[7]~[15]のいずれか記載の無機粒子含有組成物。
[17]: 分散剤(B)を含み、当該分散剤(B)が、
酸価5~200mgKOH/g、かつ重量平均分子量1,000~50,000の、ポリエーテル構造またはポリエステル構造を有する高分子型分散剤を含む、[7]~[16]のいずれか記載の無機粒子含有組成物。
[18]: 分散剤(B)を含み、当該分散剤(B)が、
カルボキシル基を有し、酸価5~150mgKOH/g、アミン価0~30mgKOH/g、かつ重量平均分子量1,000~50,000の高分子型分散剤を含み、
無機粒子(E)100質量部に対して、反応性有機溶媒(C)が5~40質量部、分散剤(B)が0.01~4質量部である、[7]~[17]のいずれか記載の無機粒子含有組成物。
[19]: 分散剤(B)を含み、当該分散剤(B)が、ポリエーテル構造またはポリエステル構造を有する高分子型分散剤であり、主鎖にポリエーテル構造またはポリエステル構造を有する高分子、および側鎖にポリエーテル構造を有するビニル系高分子からなる群より選択される少なくとも1種である、[7]~[18]のいずれか記載の無機粒子含有組成物。
[20]: 35℃における3時間後の粘度変化率が0.8~3.0である、[7]~[19]のいずれか記載の無機粒子含有組成物。
[21]: [7]~[20]のいずれか記載の無機粒子含有組成物を硬化させてなる、熱伝導率が1~8W/(m・K)である、熱伝導性硬化物。
[22]: 膜厚が0.01~10mmである、[21]記載の熱伝導性硬化物。
[23]: 部材(M1)と、部材(M2)と、部材(M1)および部材(M2)の間に形成された、[21]または[22]記載の熱伝導性硬化物とを備えた構造体。
[24]: シート状基材(S1)と、[21]~[23]のいずれか記載の熱伝導性硬化物と、シート状基材(S2)とをこの順に備えた積層体。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、ハンドリング性良好で、かつ貯蔵安定性が良好な無機粒子含有組成物を得ることができるポリイソシアネート系組成物用の表面処理無機粒子、これを含む無機粒子含有組成物、並びに、前記組成物を硬化させてなる熱伝導性硬化物、構造体および積層体を提供できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示について詳細に説明する。なお、本開示の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本開示の範疇に含まれることは言うまでもない。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。また、本明細書において「フィルム」や「シート」は同義であり、厚みによって区別されないものとする。また、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。本明細書に記載する数値は、後述する[実施例]に記載の方法にて得られる値をいう。
【0017】
1.表面処理無機粒子(D)
本開示に係る表面処理無機粒子(D)は、ポリイソシアネート系組成物用の表面処理無機粒子(D)であって、平均一次粒子径0.05~100μmの熱伝導性無機粒子(A)と、熱伝導性無機粒子(A)の表面に形成された被覆層と、を有する。熱伝導性無機粒子(A)は、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイトおよび窒化アルミニウムからなる群より選択される少なくともいずれかである。
前記被覆層は、下記一般式(1)で表されるシラン化合物に由来する成分を50質量%以上有する。
一般式(1): Si(R)(R)(R)(R
但し、一般式(1)中のR~Rのうち2つは互いに独立して、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表し、他の2つは互いに独立して、無置換のアルキル基、置換基を有するアルキル基、およびフェニル基からなる群より選択される少なくとも1種を表す、又は、
~Rのうち3つは互いに独立して、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表し、他の1つは無置換のアルキル基、置換基を有するアルキル基、およびフェニル基からなる群より選択される少なくとも1種を表し、前記置換基が(メタ)アクリル基またはイソシアネート基である。
【0018】
表面処理無機粒子(D)100質量%に対して、一般式(1)で表される前記シラン化合物が0.05~3質量%である。また、表面処理無機粒子(D)の含水量(含水率)は0.2質量%以下であり、かつ表面処理無機粒子(D)の疎水化度は35%以上である。
【0019】
本開示のポリイソシアネート系組成物用の表面処理無機粒子(D)の利用分野は特に制限はないが、ポリイソシアネート化合物を含有する、ポリイソシアネート系組成物用として好適であり、特に熱伝導性硬化性組成物として好適に用いることができる。本表面処理無機粒子(D)は、熱伝導性シート、熱伝導性接着剤、半導体封止パッケージ用途、部品内蔵基板用途等に用いることができ、熱伝導性を付与する用途に特に好適である。表面処理無機粒子(D)は、通常、他の成分を含む組成物で用いられる。本開示の無機粒子含有組成物(以下、「本組成物」ということがある)は、後述する。
【0020】
本開示の表面処理無機粒子(D)によれば、ハンドリング性が良好で、かつ貯蔵安定性が良好な無機粒子含有組成物が得られる表面処理無機粒子(D)を提供できる。その主たる理由は、前記被覆層を有することで、表面処理無機粒子(D)の粒子表面を安定化して易分散性を付与しつつ、さらに効果的に吸湿を抑制することができることによると考えられる。無機粒子を高濃度に配合した組成物は粘度・チキソ性(すなわち、粘性)が増大してしまう問題があるが、前記被覆層を有する表面処理無機粒子(D)を用いることにより粘性(viscosity)の増大を抑制することができる。また、無機粒子を高濃度に配合した組成物は貯蔵安定性が低下しやすいが、前記被覆層を有する表面処理無機粒子(D)を用いることにより貯蔵安定性の低下を抑制することができる。このため、無機粒子含有組成物において良好な硬化性が得られ、熱伝導性良好な硬化物を提供することが可能となる。
【0021】
1-1.熱伝導性無機粒子(A)
熱伝導性無機粒子(A)は、前述したように、平均一次粒子径0.05~100μmの粒子であり、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイトおよび窒化アルミニウムからなる群より選択される少なくともいずれかである。このような熱伝導性無機粒子(A)を用いることにより熱伝導性、誘電率および比重を最適化できる。前記平均一次粒子径の好適範囲は0.05~50μmであり、0.1~30μmであることがより好ましく、0.5~30μmであることがより好ましく、0.5~10μmであることがさらに好ましく、1~10μmであることが特に好ましい。熱伝導性無機粒子(A)の中でも、酸化アルミニウム、ベーマイト、および水酸化アルミニウムが好ましく、酸化アルミニウムおよび水酸化アルミニウムがさらに好ましい。上記平均一次粒子径の熱伝導性無機粒子(A)であれば、各種の市販品、合成品を単独で、もしくは2種以上を併せて使用することができる。
【0022】
熱伝導性無機粒子(A)の形状は特に限定されるものではないが、例えば、球状、丸み状の球状粒子、フレーク状、鱗片状、フィラメント状等の非球状粒子が挙げられる。これらのうちでも、非球状粒子が好ましい。製造コストの観点からは、丸み状粒子または破砕粉粒子がより好ましく、破砕粉粒子が特に好ましい。
【0023】
熱伝導性無機粒子(A)の真球度は、0.5~1.2であることが好ましく、0.5~0.95であることがより好ましく、0.5~0.85であることが特に好ましい。真球度は走査型電子顕微鏡の拡大画像から算出することができる。走査型電子顕微鏡の拡大画像から任意の粒子を選択し、その粒子の投影面積(A)と周囲長(M)を測定し、この周囲長(M)をもつ真球を想定したときの半径(r)=M/2πから真球の面積(B)=π×(M/2π)を算出する。こうして測定・算出した面積A、Bから真球度(A/B)を算出する。20個の粒子について真球度を測定し、その平均値を真球度とする。
【0024】
熱伝導性無機粒子(A)のアスペクト比は特に限定されるものではないが、アスペクト比は1.05~20であることが好ましく、1.1~10であることがより好ましく、1.1~1.5であることが特に好ましい。アスペクト比が20以下であると、粒子の充填が容易である。また、1.05以上であると工業的に安価に入手することができる。
【0025】
熱伝導性無機粒子(A)の破砕粉は、例えば、一軸破砕機、二軸破砕機、ハンマークラッシャー、ボールミル等を用いて、塊状の無機物質を破砕することで得られる。一般に破砕粉は安価であるが、形状や粒度分布のばらつきが大きく、さらに粒子表面が不均質で比表面積が大きい。そのため、スラリーが高粘度化する上、貯蔵安定性も悪くなり、取り扱いが難しい。また、一般に粒子の形状が球状である方が、非球状である場合よりも高密度に充填されて良好な熱伝導性を得ることができる。本開示の表面処理無機粒子(D)においては、熱伝導性無機粒子(A)として破砕粉のような非球状粒子を用いた場合であっても、粘度およびハンドリング性が良好なスラリーを得ることができ、良好な熱伝導性を得ることができる。その理由は推測の域を出ないが、破砕処理により形成された不安定な面(表面自由エネルギーの高い)に一般式(1)で表されるシラン化合物に由来する成分を50%以上有する表面処理剤が吸着することによる安定化効果によると考えられる。さらに、粒子表面に前記被覆層が形成されることにより、粒子内の結晶水の放出が抑制される効果と、粒子表面の荒れを埋める形で処理剤が吸着されるために比表面積が小さくなり、その他成分との相互作用が抑制される効果であると考えられる。
【0026】
熱伝導性無機粒子(A)の含水量は、熱伝導性無機粒子(A)100質量%中、0.01~1質量%であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましく、0.2質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることが特に好ましい。含水量をこの範囲内とすることで、表面処理工程における粒子の凝集を抑制することができる。
【0027】
熱伝導性無機粒子(A)の比表面積は0.1~10m/gであることが好ましく、0.15~8m/gであることがより好ましく、0.3~8m/gであることがさらに好ましく、2~8m/gであることが特に好ましい。
【0028】
酸化アルミニウムは、各種市販品を使用できる。例えば、昭和電工社製のASシリーズ(丸み状アルミナ)、住友化学社製のA-21、A-26、A-210、AM-21、AM-210、AM-27、AM-28B、ALM-41-1、ALM-43、AL-M7
3A、AL-S43B、AMS-5020F、AES-23等が挙げられる。
【0029】
水酸化アルミニウムは、各種市販品を使用できる。例えば、住友化学社製のC-12、C-31、C-310、C-305、C-301N、CL-310、CL-303、C-302A、CW-350、CW-325LV、CW-308等が挙げられる。
【0030】
1-2.被覆層
表面処理無機粒子(D)において、熱伝導性無機粒子(A)の表面に形成された被覆層は、前述したように、一般式(1)で表されるシラン化合物に由来する成分を50質量%以上有する。
【0031】
一般式(1)で表されるシラン化合物を選択することで、表面処理無機粒子(D)への疎水性の付与と、本組成物のハンドリング性および貯蔵安定性と、後述する硬化物の熱伝導率とを高度に両立することができる。前記シラン化合物は、単独もしくは2種以上併せて使用することができる。
【0032】
一般式(1)で表されるシラン化合物に由来する成分は、被覆層100質量%を基準として、70質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましい。前記成分を50質量%以上含有することで、熱伝導性無機粒子(A)に適度な疎水性を付与しつつ、ポリイソシアネート系組成物において、スラリーの粘度と貯蔵安定性とを高度に両立できる。さらに、粉末の生産性を高めることができる。
【0033】
一般式(1)で表されるシラン化合物は、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどのトリアルコキシシラン化合物;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジフェニルシランなどのジアルコキシシラン化合物;
3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン化合物;
3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物;などが挙げられる。
【0034】
一般式(1)は、前記置換基は(メタ)アクリル基、前記アルコキシ基の炭素数は1~10、前記アリールオキシ基の炭素数は6~10、前記無置換のアルキル基の炭素数は1~10、から選択されることがより好ましい。また、アルコキシ基の炭素数は1~5であることがより好ましく、1~3であることが特に好ましい。
【0035】
前記ケイ素原子に直接結合する無置換のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれかであることが好ましく、直鎖状または分岐状であることがより好ましく、直鎖状であることが特に好ましい。また、前記無置換のアルキル基の炭素数は2~10であることが更に好ましく、4~8であることが特に好ましい。無置換のアルキル基の炭素数を上記範囲内にすることで、粒子に効果的に疎水性を付与しつつ、反応性有機溶媒(C)に対する分散性および貯蔵安定性を向上することができる。
【0036】
前記ケイ素原子に直接結合する置換基を有するアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれかであることが好ましく、直鎖状または分岐状であることがより好ましく、直鎖状であることが特に好ましい。前記置換基を有するアルキル基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、2~4であることが特に好ましい。
【0037】
表面処理無機粒子(D)100質量%に対して一般式(1)で表される前記シラン化合物は0.05~3質量%であり、好ましくは0.05~2質量%であり、より好ましくは0.1~2質量%、さらに好ましくは0.1~1.5質量%であり、特に好ましくは0.5~1.5質量%である。0.05~3質量%含有することで、表面処理無機粒子(D)の疎水性および生産性を高め、スラリーとしたときの分散安定性を図り、また、硬化物としたときの熱伝導性に優れる特性を高度に両立できる。
【0038】
前記被覆層の形成に使用する一般式(1)のシラン化合物としては、アルキル基またはフェニル基を有するアルコキシシラン、シランカップリング剤、分子内にアルコキシシリル基を有するシリコーンオリゴマー等を用いることができる。これらのうちでも、アルキル基またはフェニル基を有するアルコキシシランまたはシランカップリング剤であることが好ましく、アルキル基またはフェニル基を有するアルコキシシランであることがより好ましい。上記シラン化合物は、各種の市販品、合成品を単独で、もしくは2種以上を併せて使用することができる。
【0039】
一般式(1)のシラン化合物の一実施形態として、粒子に効果的に疎水性を付与して吸湿性を抑制する観点から、ケイ素原子に結合する無置換のアルキル基を有することが好ましい。また、一般式(1)のシラン化合物の一実施形態として、ケイ素原子に結合するフェニル基を有することが好ましい。このような表面処理無機粒子(D)を含有する無機粒子含有組成物を用いることにより、熱伝導性が良好な硬化物を得ることが可能となる。
また、一般式(1)のシラン化合物の一実施形態として、ケイ素原子に結合する、(メタ)アクリル基を有するアルキル基を有することが好ましい。前記化合物を有する被覆層を用いた表面処理無機粒子(D)を含有するポリイソシアネート系の硬化性の無機粒子含有組成物を用いることにより、ハンドリング性良好かつ貯蔵安定性良好なペーストを得ることが可能となり、また、熱伝導性良好な硬化物を得ることが可能となる。
【0040】
一般式(1)のシラン化合物と併用して用いることができる他のシラン化合物としては、例えば、以下のようなシランカップリング剤が挙げられる。すなわち、ケイ素原子に、アルコキシ基、アリールオキシ基のような加水分解性基が少なくとも1つ結合したものであり、これに加えて、置換基を有するアルキル基、アルケニル基、アリール基、スチリル基等が少なくとも1つ結合したものが挙げられる。前記アルキル基の置換基は、アミノ基、アルコキシ基、エポキシ基、メルカプト基、ウレイド基、酸無水物基、イソシアヌレート基等が置換したもの等を用いることができる。
【0041】
前記シランカップリング剤は、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン化合物;
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリプロポキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
3-クロロプロピルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物などが挙げられる。
【0042】
一般式(1)のシラン化合物と併用して用いることができる前記シランカップリング剤以外の表面処理剤としては、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等の各種カップリング剤、およびリン酸塩系の表面処理剤等が挙げられる。これらの表面処理剤は、一般式(1)のシラン化合物と併用して、順次または同時に添加して用いることができる。
【0043】
チタネートカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル・アミノエチル)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ジイソプロピルビス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート等が例示できる。
【0044】
アルミニウム系カップリング剤としては、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アセトメトキシアルミニウムジイソプロピレート、アセトエトキシアルミニウムジイソプロピレート、アセトエトキシアルミニウムジイソプロピレート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジ-n-ブトキシドモノメチルアセテート、アルミニウムジ-n-ブトキシドモノエチルアセテート等を挙げることができる。
【0045】
また、ジルコニウム系カップリング剤としては、テトラノルマルプロポキシジルコニウム、テトラノルマルブトキシジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニ
ウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等を挙げることができる。
【0046】
1-3.疎水化度、pH、含水量等
表面処理無機粒子(D)の疎水化度は35%以上であり、40%以上が好ましく、45%以上がより好ましい。また、疎水化度は95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、85%以下であることがさらに好ましく、60%以下であることが特に好ましい。疎水化度を35%以上とすることで、粒子の吸湿性と、反応性有機溶媒(C)への濡れ性と、ペーストの貯蔵安定性とを高度に両立できる。
【0047】
表面処理無機粒子(D)のpHは8~10であることが好ましく、8~9であることがより好ましく、8.2~8.8であることが特に好ましい。pH8~10となるように被覆層を形成することで、表面処理無機粒子(D)の生産性と、粒子の吸湿性と、ポリイソシアネート化合物(C1)との反応性抑制とを高度に両立することができる。
【0048】
表面処理無機粒子(D)の含水量は、表面処理無機粒子(D)100質量%中、0.2質量%以下であり、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることがさらに好ましく、0.03質量%以下であることが特に好ましい。含水量を0.2質量%以下にすることで、無機粒子含有組成物中での水によるポリイソシアネート化合物(C1)の劣化を抑制することができる。下限値は0質量%である。
【0049】
熱伝導性無機粒子(A)の含水量をAy、表面処理無機粒子(D)の含水量をDyとしたとき、Dy/Ay=0.05~1であることが好ましく、0.1~0.8であることがより好ましく、0.2~0.5であることが特に好ましい。含水量の比率を0.05~1の範囲にすることで、被覆層の形成性が向上し、表面処理後の吸湿性を効果的に抑制することができる。
【0050】
表面処理無機粒子(D)の水を除く揮発性成分の含有量は、表面処理無機粒子(D)100質量%中、0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、0.03質量%以下であることが特に好ましい。表面処理無機粒子(D)の水を除く揮発性成分の含有量は、熱重量測定計を用いて計測した重量減少量から、カールフィッシャー型水分計を用いて得た水分量を差し引くことで算出できる。熱重量測定計(示差熱-熱重量同時測定装置(Thermo plus EVO2 TG-DTA8122、リガク社製))の重量減少量は、サンプル5mgを、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で40℃から140℃まで昇温し、140℃で10分間保持したときの値である。
【0051】
表面処理無機粒子(D)の比表面積は0.05~5m/gであることが好ましく、0.10~4m/gであることがより好ましく、0.25~4m/gであることがさらに好ましく、1~3m/gであることが特に好ましい。
【0052】
熱伝導性無機粒子(A)の比表面積をAx、表面処理無機粒子(D)の比表面積をDxとしたとき、Dx/Ax=0.2~0.9であることが好ましく、0.3~0.8であることがより好ましく、0.3~0.5であることが特に好ましい。0.2~0.9の関係となるとき、表面処理無機粒子(D)の吸湿性を抑え、スラリーとしたときの粘度および貯蔵安定性を特に良好にする効果を得ることができる。比表面積が大きい粒子は不均質な形状のために活性の高い粒子表面を持つと考えられるが、被覆層の形成によって、形状の不均質さ、および粒子表面の活性を低減することができると考えられる。
【0053】
表面処理無機粒子(D)の粉体粒度(粉末の平均粒子径)D50は1~100μmであることが好ましく、1~70μmであることがより好ましく、1~30μmであることがさらに好ましく、1~10μmであることが特に好ましい。
また、表面処理無機粒子(D)の嵩密度は0.3~3g/cmであることが好ましく、0.5~2g/cmであることがより好ましい。粉体粒度D50および嵩密度をこの範囲内とすることで、粉末としてのハンドリング性を良好にしつつ、粉末を媒体中で容易に解すことができる。
【0054】
2.表面処理無機粒子(D)の製造
表面処理は、公知の無機粒子の表面改質方法により行うことができる。例えば、流体ノズルを用いた噴霧方式、せん断力のある攪拌機、ミキサー等を用いた乾式法、および水系または有機溶剤を溶媒として用いた湿式法が挙げられる。表面処理工程においてせん断力をかける場合は、無機粒子の変形および破壊が起こらないように調整して処理することが望ましい。
【0055】
以下、噴霧方式および乾式法について記述する。表面処理無機粒子(D)は、例えば、熱伝導性無機粒子(A)を容器に仕込み、攪拌混合下、表面処理剤をスプレー噴霧または滴下し、均質になるように攪拌を継続した後、乾燥することにより製造できる。乾燥後、凝集物がある場合は、任意にボールミル等で粉砕することができる。
【0056】
シラン化合物は、予め水および/またはアルコール溶液として調製したものを使用することができる。シラン化合物溶液は、溶媒中の水の質量比率が5~30%であることが好ましく、10~20%であることがより好ましい。また、シラン化合物溶液中のシラン化合物質量比率は10~80%であることが好ましく、20~50%であることがより好ましい。
【0057】
表面処理無機粒子(D)は、例えば、シラン化合物、水および/またはアルコール等の溶媒成分、および必要に応じて酸性化合物、塩基性化合物、或いは加水分解縮合触媒を配合し、均質な溶液または分散液とする。次いで、これに熱伝導性無機粒子(A)を添加して、充分に撹拌混合および/または分散処理し、続いて乾燥することで製造できる。
【0058】
撹拌混合に使用する装置は、例えば、ディスパー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー、プラネタリーミキサー、トリミックス、ホモジナイザーミキサー、ニーダーの混錬混合装置、タンブラーミキサー、振動式撹拌機、アトライター、ロールミル等が挙げられる。撹拌混合では、混合液が均質で流動性のある状態にすることが好ましい。
【0059】
予備混合に使用する装置は、例えば、ディスパー、プラネタリーミキサー、ホモジナイザーミキサーが挙げられる。予備混合では、混合液が均質で流動性のある状態にすることが好ましい。
【0060】
撹拌混合時の温度は、表面処理層の形成、表面処理剤同士が反応する副反応を抑制する面で30~200℃が好ましく、70~160℃がより好ましく、90~150℃が特に好ましい。
【0061】
撹拌混合時間は、装置の違いや反応スケールにより適宜調整されるが、1~20時間が好ましく、1~10時間がより好ましく、1~5時間が特に好ましい。
【0062】
溶媒成分としては、水または水溶性有機溶媒を用いることが好ましい。水または沸点が40~200℃のアルコール類を用いることがより好ましく、沸点60~150℃のアルコール類を用いることが特に好ましい。
【0063】
また、表面処理反応を行う雰囲気のpHを調整する目的で、酸性化合物および/又は塩基性化合物を配合することができる。酸性化合物としては、塩酸、硫酸等の無機酸、或いは各種有機酸を用いることができる。塩基性化合物としては、アンモニア、アミン類、アンモニウム塩化合物、または金属水酸化物等を用いることができる。この中でも、アンモニアまたはアンモニウム塩化合物を用いることがより好ましい。
【0064】
また、シラン化合物の加水分解縮合触媒としては、公知の触媒を適宜選択して用いることができる。例えば、有機スズ化合物、有機チタニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物の有機金属化合物が挙げられる。これらは単独で用いても、複数種を併用してもよい。
【0065】
前記有機金属化合物としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ビスアセチルアセテート、ジオクチル錫ビスアセチルラウレート、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネート、テトラキスエチレングリコールメチルエーテルチタネート、テトラキスエチレングリコールエチルエーテルチタネート、ビス(アセチルアセトニル)ジプロピルチタネート、アセチルアセトンアルミニウム、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノノルマルブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテートジノルマルブチレート、およびアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。特に、反応性、溶解性の観点から、テトラブチルチタネート、アルミニウムエチルアセトアセテートジノルマルブチレート、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノノルマルブチレートおよびこれらの加水分解物が好ましい。
【0066】
乾燥工程に使用する装置は、例えば、箱型乾燥機、真空乾燥機、スプレードライ乾燥機、振動式乾燥機が挙げられる。乾燥工程では、水分や有機溶媒成分等の揮発性成分を充分に除去しつつ、粉末状にすることが好ましい。乾燥物がブロック状になる場合、乾燥機に金属球等を入れて撹拌するか、乾燥後に粉砕機等を用いて粉砕することで、良好な粉末を得ることができる。
【0067】
乾燥温度は、揮発性成分を除去しつつ表面処理層の形成状態を制御する面で70~300℃が好ましく、80~200℃がより好ましく、80~150℃が特に好ましい。
【0068】
乾燥時間は、装置の違い、反応スケール、溶媒成分の種類、並びに比率により適宜調整されるが、1~20時間が好ましく、1~10時間がより好ましく、1~5時間が特に好ましい。
【0069】
3.無機粒子含有組成物
本開示の無機粒子含有組成物(以下、「本組成物」ともいう)は、無機粒子(E)と、反応性有機溶媒(C)とを含有する。本組成物においては、無機粒子(E)として表面処理無機粒子(D)を少なくとも一種を含む。また、反応性有機溶媒(C)はポリイソシアネート化合物(C1)を含む。なお、「無機粒子および反応性有機溶媒(C)を含有する組成物」を「スラリー」と呼ぶことがある。
【0070】
本組成物は、硬化性組成物として用いることができる。特に熱伝導性硬化性組成物として好適に用いられる。本組成物には、更に分散剤(B)を添加してもよい。分散剤(B)を表面処理無機粒子(D)に併用することで、より効果的にハンドリング性を高め、貯蔵安定性をより優れたものとすることができる。
【0071】
3-1.無機粒子(E)
本明細書において「無機粒子(E)」とは、(i)表面処理無機粒子(D)、(ii)表面処理無機粒子(D)に該当しない、表面処理されていてもよい熱伝導性無機粒子(A)、および(iii)表面処理無機粒子(D)および熱伝導性無機粒子(A)に該当しない、表面処理されていてもよい熱伝導性フィラー(F)のいずれか一種以上である。すなわち、無機粒子(E)は、前述した(i)~(iii)から選択されるいずれか一種以上である。本組成物は、無機粒子(E)のうち、少なくとも(i)の表面処理無機粒子(D)を一種以上含む。本組成物の無機粒子(E)は、(i)の表面処理無機粒子(D)と併用して、(ii)または/および(iii)の粒子を含むことができる。
ここで熱伝導性フィラー(F)は熱伝導率が5W/(m・K)以上の無機フィラーをいう。(ii)は、「一般式(1)で表されるシラン化合物に由来する成分を50質量%以上有する被覆層」に該当しない「被覆層」を有する熱伝導性無機粒子(A)、および被覆層を有しない熱伝導性無機粒子(A)を包含する。また、「無機フィラー」とは無機材料で構成されたフィラーをいい、「フィラー」とは、室温および大気圧にて固体であって、組成物の各成分に対し、これらの成分が室温よりも高い温度まで、特にそれらの軟化点またはそれらの融点まで高められた場合でも不溶である、任意の物質をいう。熱伝導性フィラー(A)の具体例として、金属系フィラー、炭素系フィラーが例示できる。ここで金属系フィラーとは、金属を含むフィラーであり、炭素系フィラーは、炭素を含むフィラーをいう。
【0072】
本組成物100質量%に対する、無機粒子(E)の量は70~95質量%であることが好ましく、80~95質量%であることがより好ましく、85~95質量%であることがさらに好ましく、88~94質量%であることが特に好ましい。無機粒子(E)を高濃度に配合することで、熱伝導性が良好な硬化物を得ることができるようになる。
【0073】
本組成物中に含まれる無機粒子(E)を100質量%としたとき、表面処理無機粒子(D)は10~100質量%であることが好ましく、15~100質量%であることがより好ましく、20~80質量%であることがさらに好ましく、20~65質量%であることがさらに好ましく、20~50質量%であることが特に好ましい。表面処理無機粒子(D)を10~100質量%の比率で配合することで、ハンドリング性良好かつ貯蔵安定性良好な組成物を得ることができる。
【0074】
3-2.分散剤(B)
本組成物は、分散剤(B)を含有させてもよい。分散剤(B)を添加することにより、表面処理無機粒子(D)を反応性有機溶媒(C)中に効果的に分散させることができる。
【0075】
無機粒子(E)100質量部に対する分散剤(B)の量は、0.01~4質量部が好ましく、0.01~2質量部がより好ましく、0.1~1.5質量部がさらに好ましく、0.25~1.5質量部がさらに好ましく、0.5~1.25質量部が特に好ましい。0.01~4質量部の分散剤(B)を配合することで、本組成物中での粒子の分散性および貯蔵安定性に優れ、さらに、本組成物の硬化性および熱伝導性を効果的に引き出すことができる。
【0076】
分散剤(B)の含水量は、分散剤(B)100質量%中、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることが特に好ましい。1質量%以下の範囲に制御することで、水分によるポリイソシアネート化合物(C1)の劣化を抑制することができる。
【0077】
分散剤(B)中に含まれる、水を除く活性水素を有する分子量500以下の揮発性化合物の含有量は、分散剤(B)100質量%中、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることが特に好ましい。分散剤(B)中には、その合成に伴う反応副生物、或いは未反応物が不純物として含まれる場合があるが、水を除く活性水素を有する分子量500以下の揮発性化合物の含有量をこの範囲で制御することで、本組成物中の硬化性成分との反応を抑制し、本組成物の貯蔵安定性および硬化性を良好にすることができる。
水を除く活性水素を有する分子量500以下の揮発性化合物の含有量は、分散剤(B)の分子量分布を測定した時のピーク強度面積比から算出できる。
【0078】
分散剤(B)の酸価は5~200mgKOH/gが好ましく、5~150mgKOH/gがより好ましく、5~120mgKOH/gがさらに好ましく、20~120mgKOH/gが特に好ましい。5~200mgKOH/gの酸価を有することで、粒子の分散性、経時分散安定性、およびペーストの貯蔵安定性が向上する。
【0079】
分散剤(B)が酸性官能基を有する場合、酸性官能基を塩基で中和した中和塩として用いることができる。中和に用いる塩基は、例えば、アンモニア、アミン化合物、または、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物を用いることができる。
【0080】
分散剤(B)のアミン価は0~40mgKOH/gが好ましく、0~30mgKOH/gがより好ましく、0~10mgKOH/gがさらに好ましく、実質的に0mgKOH/gであることが特に好ましい。
【0081】
分散剤(B)の水酸基価は0~30mgKOH/gが好ましく、0~10mgKOH/gがより好ましく、実質的に0mgKOH/gであることが特に好ましい。
【0082】
分散剤(B)の種類は特に限定されないが、界面活性剤、高分子型分散剤等が挙げられる。界面活性剤としては、陰イオン性、陽イオン性、両性またはノニオン性の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の好適な例として、カルボキシル基を有する陰イオン性界面活性剤が例示できる。
【0083】
分散剤(B)の好適な一実施形態として、カルボキシル基を有する陰イオン性界面活性剤が例示できる。また、酸価5~200mgKOH/g、かつ重量平均分子量500~100,000の高分子型分散剤が例示できる。また、酸価5~200mgKOH/g、かつ重量平均分子量1,000~50,000の、ポリエーテル構造またはポリエステル構造を有する高分子型分散剤が例示できる。
また、分散剤(B)の好適な一実施形態として、酸価5~120mgKOH/g、かつ重量平均分子量1,000~10,000の高分子型分散剤が例示できる。また、好適な例として、酸価5~30mgKOH/g、アミン価10~40mgKOH/g、かつ重量平均分子量1,000~10,000の高分子型分散剤が挙げられる。特に好ましい例として、カルボキシル基を有し、酸価5~120mgKOH/g、かつ重量平均分子量1,000~10,000の高分子型分散剤が挙げられる。
分散剤(B)は、各種の市販品、合成品を単独で、もしくは2種以上の分散剤を併せて使用できる。
【0084】
本組成物の分散剤(B)の好適例として、カルボキシル基を有し、酸価5~150mgKOH/g、アミン価0~30mgKOH/g、かつ重量平均分子量1,000~50,000の高分子型分散剤を含む態様がある。この場合において、無機粒子(E)100質量部に対して、反応性有機溶媒(C)が5~40質量部、分散剤(B)が0.01~4質量部であることが好ましい。
【0085】
3-2-1.高分子型分散剤
前記高分子型分散剤は、公知の分散剤を使用できる。(メタ)アクリル系高分子、ポリウレタン系高分子、ウレタンアクリレート系高分子、ポリエーテル系高分子、ポリエステル系高分子、高分子主鎖中にポリエーテル構造またはポリエステル構造を有する高分子等の各種高分子を用いることができる。側鎖にポリエーテル構造を有するビニル系高分子も好適である。分散剤(B)は、各種の市販品、合成品を単独で、もしくは2種以上の分散剤を併せて使用することができる。
【0086】
高分子型分散剤は、ポリエーテル構造またはポリエステル構造を有する高分子であることが好ましい。
前記ポリエーテル構造は、アルキレンオキシ単位を有することが好ましく、アルキレンオキシ単位の炭素数は2~5であることが好ましく、2~3であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。
また、前記ポリエステル構造を構成するエステル結合の繰り返し単位間の炭素数は、エステル結合を構成するα炭素を1つ目として、3~10であることが好ましく、4~7であることがより好ましく、5~6であることがさらに好ましく、6であることが特に好ましい。
これらのポリエーテル構造またはポリエステル構造を有する高分子を使用することで、低粘度かつ経時分散安定性が良好な無機粒子含有組成物を得ることができるようになる。
【0087】
高分子型分散剤は、主鎖にポリエーテル構造またはポリエステル構造を有する高分子、ウレタンアクリレート系高分子、側鎖にポリエーテル構造を有するビニル系高分子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、主鎖にポリエーテル構造またはポリエステル構造を有する高分子、またはウレタンアクリレート系高分子であることがより好ましく、主鎖にポリエーテル構造またはポリエステル構造を有する高分子であることが特に好ましい。これらの高分子は、各種公知の方法により合成することができる。
【0088】
主鎖にポリエステル構造を有する高分子は、例えば、多価カルボン酸化合物とポリアルコールとを脱水縮合すること、カルボキシル基と水酸基を有する化合物を自己縮合すること、または、ラクトン類を開環重合することにより得ることができる。ラクトン類を開環重合することにより得た高分子であることが特に好ましい。ポリエステル構造を有する高分子は、さらに二塩基酸または酸無水物を反応させることもできる。
【0089】
主鎖にポリエーテル構造を有する高分子は、例えば、分子末端に水酸基等の反応性官能基を有するポリアルキレンオキシ鎖を有する高分子と、二塩基酸または酸無水物とを反応させることで得ることができる。
【0090】
分散剤(B)の一実施形態として、主鎖にポリエーテル構造またはポリエステル構造を有し、二塩基酸または酸無水物に由来するカルボキシル基を有する高分子型分散剤が好ましい。また、前記ポリエーテル構造を構成するアルキレンオキシ単位の炭素数が2~5が好ましい。また、前記ポリエステル構造を構成するエステル結合間の炭素数が3~10である分散剤(B)が好ましい。
【0091】
ウレタンアクリレート系高分子は、ウレタン結合と(メタ)アクリレート構造を有していれば特に限定されず、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル系高分子とイソシアネート化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0092】
側鎖にポリエーテル構造を有するビニル系高分子は、例えば、エチレン性不飽和基と(ポリ)アルキレンオキシ鎖とを有する単量体と、エチレン性不飽和基を有する単量体を共重合することにより得ることができる。エチレン性不飽和基を有する単量体としては、各種ビニル系モノマーや(メタ)アクリル系モノマー、無水マレイン酸やマレイミド等を用いることができる。
【0093】
高分子型分散剤は酸価を有する官能基としてリン酸基またはカルボキシル基を有することが好ましく、カルボキシル基を有することがより好ましい。高分子型分散剤の好適例として、酸価を有する高分子型分散剤が例示できる。
【0094】
高分子型分散剤の重量平均分子量は、500~100,000が好ましく、1,000~50,000がより好ましく、1,000~20,000がさらに好ましく、1,000~10,000がさらに好ましく、1,000~5,000が特に好ましい。500~100,000の範囲の重量平均分子量を有することで、分散安定性をより向上しつつ、無機粒子を高濃度に配合することが可能となる。
【0095】
3-3.反応性有機溶媒(C)
反応性有機溶媒(C)は、硬化反応が可能な媒体であり、ポリイソシアネート化合物(C1)を含む。反応性有機溶媒(C)は、さらに、ポリオール化合物(C2)を含んでいてもよい。本明細書において、反応性有機溶媒(C)の主成分とは、反応性有機溶媒(C)100質量%に対して80~100質量%含有する成分をいう。より好ましくは95~100%であり、実質的に100%であることが更に好ましい。反応性有機溶媒(C)として、ポリイソシアネート化合物(C1)とポリオール化合物(C2)を主成分とする場合には、これらの合計量を80~100質量%とすればよい。
【0096】
3-3-1.ポリイソシアネート化合物(C1)
ポリイソシアネート化合物(C1)は、イソシアネート基の平均官能基数が2個以上のポリイソシアネート化合物である。ポリイソシアネート化合物(C1)の数平均分子量は100~10000が好ましく、ポリイソシアネート化合物(C1)の25℃における粘度は10~10,000mPa・sであることが好ましい。
【0097】
ポリイソシアネート化合物(C1)の種類は特に限定されるものではないが、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネートを用いることができ、脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートを用いることがより好ましい。脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートを用いることで、良好なポットライフ、柔軟性、耐候性を得ることができる。
【0098】
1分子中にイソシアネート基を2個有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、等の芳香族ジイソシアネート;
エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;
ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;
3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート[別名:イソホロンジイソシアネート]、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネートメチル、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。また、これらの化合物の変性物を用いることもできる。これらの化合物は、各種の市販品、合成品を単独で、もしくは2種以上を併せて使用することができる。
【0099】
また、1分子中にイソシアネート基を3個有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン等の芳香族ポリイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられ、前記で説明したジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体が挙げられる。
【0100】
ポリイソシアネート化合物(C1)のイソシアネート基の少なくとも一部がブロック化剤によりブロックされているブロック化イソシアネートを用いてもよい。具体例としては、ポリイソシアネート化合物(C1)のイソシアネート基を、ε-カプロラクタム、MEK(メチルエチルケトン)オキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピラゾール、フェノール等でブロックしたもの等が挙げられる。
【0101】
ポリイソシアネート化合物(C1)の数平均分子量は100~10000が好ましく、200~5000であることがより好ましく、200~2000であることが特に好ましい。なお、数平均分子量は分散剤(B)と同様の方法により測定して得ることができる。
【0102】
ポリイソシアネート化合物(C1)のイソシアネート基の平均官能基数は2個以上であり、2~4個であることがより好ましく、2~3個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
【0103】
ポリイソシアネート化合物(C1)の粘度は10~10000mPa・sが好ましく、10~2000mPa・sであることが好ましく、100~1000mPa・sであることがより好ましく、100~500mPa・sであることが特に好ましい。
ポリイソシアネート化合物(C1)の粘度は、25℃下、ブルックフィールド型粘度計(英弘精機社製「HB」、スピンドルSC4-14)を用いて、スピンドル回転速度50rpm、測定時間1分間にて測定して得た値である。
上記の分子量、イソシアネート基の平均官能基数、粘度のポリイソシアネート化合物(C1)を使用することで、無機粒子を高濃度に配合しつつ、良好な接着強度を得ることができる無機粒子含有組成物が得られるようになる。
【0104】
3-3-2.ポリオール化合物(C2)
ポリオール化合物(C2)は、水酸基の平均官能基数が2個以上のポリオール化合物であり、数平均分子量100~10000、粘度10~10000mPa・sであることが好ましい。
【0105】
ポリオール化合物(C2)の種類は特に限定されるものではないが、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリカーボネートポリオー
ル、および、ひまし油系ポリオール等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオールが好ましく、ポリエステルポリオールが特に好ましい。
【0106】
ポリエステルポリオールとしては、各種公知のものを用いることができる。ポリエステルポリオールとしては例えば、1種以上のポリオール成分と1種以上の酸成分とのエステル化反応によって得られる化合物(エステル化物);ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;等が挙げられる。
【0107】
原料のポリオール成分としては、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等が挙げられる。
原料の酸成分としては、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリック酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、1,14-テトラデカン二酸、ダイマー酸、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-エチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、およびこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0108】
ポリエステルポリオールは、ジイソシアネートを反応させたポリエステルウレタンポリオールであってもよいし、酸無水物を反応させてカルボキシル基を導入したものであってもよい。
ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、無水メリット酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル無水物が挙げられる。
トリメリット酸エステル無水物としては、例えば、炭素数2~30のアルキレングリコール又はアルカントリオールを無水トリメリット酸でエステル化反応させてなるエステル化合物が挙げられ、具体的には、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等が挙げられる。
【0109】
ポリエーテルポリオールとしては、公知のものを用いることができる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、1分子中に複数の活性水素基を有する活性水素基含有化合物を開始剤として用い、1種以上のオキシラン化合物を付加重合させて得られる化合物(付加重合物)が挙げられる。
【0110】
前記開始剤としては、水酸基含有化合物およびアミン類等が挙げられる。具体的には、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、N-アミノエチルエタノールアミン、イソホロンジアミン、およびキシリレンジアミン等の2官能開始剤;グリセリン、トリメチロールプロパン、およびトリエタノールアミン等の3官能開始剤;ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、および芳香族ジアミン等の4官能開始剤等が挙げられる。オキシラン化合物としては、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、およびブチレンオキシド(BO)等のアルキレンオキシド(AO);テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。
【0111】
ポリエーテルポリオールとしては、活性水素含有化合物のアルキレンオキシド付加物(ポリオキシアルキレンポリオールとも言う)が好ましい。中でも、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、末端にエチレンオキシド(EO)を付加させたPPG(PPG-EO)、およびポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール等の2官能ポリエーテルポリオール;グリセリンのアルキレンオキシド付加物等の3官能ポリエーテルポリオール等が好ましい。
【0112】
ポリオール化合物(C2)の数平均分子量は100~10000であることが好ましく、200~5000であることがより好ましく、200~2000であることが特に好ましい。なお、数平均分子量は分散剤(B)と同様の方法により測定して得ることができる。
【0113】
ポリオール化合物(C2)の水酸基の平均官能基数は2個以上であり、2~4個であることがより好ましく、2~3個であることが特に好ましい。
【0114】
ポリオール化合物(C2)の粘度は10~10000mPa・sであることが好ましく、10~2000mPa・sであることが好ましく、100~1000であることがより好ましく、100~500であることが特に好ましい。
ポリオール化合物(C2)の粘度は、25℃下、ブルックフィールド型粘度計(英弘精機社製「HB」、スピンドルSC4-14)を用いて、スピンドル回転速度50rpm、測定時間1分間にて測定して得た値である。
上記の分子量、水酸基の平均官能基数、粘度のポリオール化合物(C2)を使用することで、無機粒子を高濃度に配合しつつ、良好な接着強度を得ることができる無機粒子含有組成物が得られるようになる。
【0115】
本組成物は、無機粒子(E)100質量部に対する反応性有機溶媒(C)の量が5~40質量部であることが好ましく、5~33.3質量部であることがより好ましく、5~25質量部であることがさらに好ましく、5~18質量部であることが特に好ましい。
【0116】
3-4.その他の成分
本組成物は、さらに、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、反応促進剤、硬化触媒、レオロジー調整剤、有機溶剤、着色剤、エポキシ化合物等の硬化性成分、酸化防止剤等の安定化剤、難燃剤、可塑剤、イオン捕捉剤等の各種添加剤を含有する組成物である。これらの適宜追加される各材料について特に制限はなく、単独もしくは2種類以上併せて使用することができる。本開示の無機粒子含有組成物は、熱伝導性硬化物層の形成に特に好適に用いることができる。
【0117】
レベリング剤や消泡剤を用いることで、硬化物の外観や密度を向上することができる。レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチンが挙げられる。消泡剤としては、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物、ビニルエーテルポリマーやオレフィンポリマー等が挙げられる。
【0118】
反応促進剤は、特に限定はなく、通常のポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との反応により得られる樹脂の硬化剤として常用されている化合物を用いることができる。例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノール系化合物、ジブチル錫化合物などが挙げられる。
より具体的には、例えば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレートのような金属系触媒;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7のような3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミン;が挙げられる。
【0119】
硬化触媒は、ポリイソシアネート化合物(C1)とポリオール化合物(C2)との反応の促進に寄与する。また、ポリイソシアネート化合物(C1)がブロック化されている場合は、硬化触媒により脱ブロック化することができる。硬化触媒としては、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0120】
難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機フィラー系難燃剤、有機金属塩系難燃剤が挙げられる。
【0121】
可塑剤としては、例えば、流動パラフィンが挙げられる。
【0122】
レオロジー調整剤は、無機粒子含有組成物にチキソ性を付与して、無機粒子の沈降を抑制する。また、組成物の塗工性に寄与する。レオロジー調整剤としては、増粘剤やレオロジーコントロール剤として販売されている各種材料等を用いることができる。
【0123】
有機溶剤は、反応性有機溶媒(C)とは異なる化合物であり、沸点が100℃以下の化合物であることが好ましい。粘度を低減して無機粒子含有組成物を均一に混合できるようにするために、任意に含まれてもよい。VOCの観点から、無溶剤型で用いることがより好ましい。
【0124】
硬化性成分として、エポキシ基を2個以上有する化合物を添加することができる。このようなエポキシ化合物を配合することで、硬化物に柔軟性や耐熱性を付与することができる。
【0125】
イオン捕捉剤は、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性を保つことができる。
【0126】
本組成物は、さらに、本開示の効果を損なわない範囲で、その他各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、無機粒子(E)に含まれない無機粒子、例えば、マイカ、タルク、ガラスフレーク等の無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等)、防錆剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、結晶核剤、吸湿剤、硬化反応を調整するための触媒が挙げられる。
【0127】
3-5.含水量、粘度等
本組成物中の含水量は0.01~0.5質量%であることが好ましく、0.01~0.3質量%であることがより好ましく、0.01~0.1質量%であることが特に好ましい。
【0128】
本組成物の粘度は、1~500Pa・sであることが好ましく、1~200Pa・sであることがより好ましく、1~100Pa・sであることがさらに好ましく、1~50Pa・sであることがさらに好ましく、1~30Pa・sであることが特に好ましい。
なお、粘度値は、実施例に記載の方法にて、ブルックフィールド型粘度計(英弘精機社製「HB」、サンプルの粘度値が200Pa・s以下の場合はスピンドルSC4-14、粘度値が200Pa・s超過の場合はスピンドルSC4-25)を用いて、サンプル温度25℃、スピンドル回転速度50rpm、測定時間1分間で測定したときの値である。
【0129】
本組成物の35℃における3時間後の粘度変化率は0.7~5.0であることが好ましく、0.8~4.0であることがより好ましく、0.8~3.0であることがさらに好ましく、1.0~2.5であることが特に好ましい。
なお、粘度変化率は、実施例に記載の方法にて、ブルックフィールド型粘度計(英弘精機社製「HB」、サンプルの粘度値が200Pa・s以下の場合はスピンドルSC4-14、粘度値が200Pa・s超過の場合はスピンドルSC4-25)を用いて、サンプル温度25℃、スピンドル回転速度50rpm、測定時間1分間で測定したときの値を用いて算出した値である。
また、無機粒子(E)100gあたり、無機粒子(E)の表面積の合計値をXm、表面処理無機粒子(D)の前記被覆層を構成する前記一般式(1)で表されるシラン化合物の合計量をYgとしたとき、(Y/X)×1000が1.0~5.0であることが好ましい。無機粒子(E)の比表面積に対し、上記数値の範囲内で一般式(1)により表されるシラン化合物を配合することで、粒子の吸湿の抑制と硬化物の熱伝導率を高度に両立できる。
【0130】
3-6.好適な他の実施形態
好適な他の実施形態に係る無機粒子含有組成物として、表面処理無機粒子(D)を少なくとも一種含む無機粒子(E)と、分散剤(B)と、ポリイソシアネート化合物(C1)を含む反応性有機溶媒(C)とを含有する組成物において、以下の条件を有するものがある。すなわち、無機粒子(E)を100質量%としたとき、平均一次粒子径0.05μm以上10μm以下の無機粒子(a1)を10~30質量%、平均一次粒子径10μm超過30μm以下の無機粒子(a2)を30~70質量%、平均一次粒子径30μm超過100μm以下の無機粒子(a3)を15~40質量%含有し、(a1)、(a2)および(a3)の合計で80~100質量%含む態様が例示できる。無機粒子(a1)、無機粒子(a2)および無機粒子(a3)の全部が表面処理無機粒子(D)、またはいずれかが表面処理無機粒子(D)で、残りが熱伝導性無機粒子(A)とする態様が好適である。さらに、反応性有機溶媒(C)が、ポリイソシアネート化合物(C1)およびポリオール化合物(C2)を主成分として含む。また、無機粒子(E)100質量部に対する反応性有機溶媒(C)の量が5~40質量部であり、分散剤(B)の量が0.01~4質量部である。
【0131】
無機粒子(a1)は、平均一次粒子径0.05μm以上10μm以下の粒子であり、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.5μm以上10μm以下であることがより好ましく、1μm以上5μm以下であることが特に好ましい。
【0132】
無機粒子(a2)は、平均一次粒子径10μm超過30μm以下の粒子であり、15μm以上30μm以下であることが好ましく、20μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0133】
無機粒子(a3)は、平均一次粒子径30μm超過100μm以下の粒子であり、30μm超過70μm以下であることが好ましく、30μm超過50μm以下であることがより好ましい。
【0134】
無機粒子(a1)~(a3)の平均一次粒子径をそれぞれこの範囲に設定することで、粒子が高密度に充填された硬化物を得ることができ、良好な熱伝導率を得ることができる。
【0135】
無機粒子含有組成物中に含まれる無機粒子(E)の量を100質量部としたとき、無機粒子(a1)、無機粒子(a2)、および無機粒子(a3)の合計量は80~100質量部であり、90~100質量部であることが好ましく、95質量部~100質量部であることがより好ましく、実質的に100質量部であることが特に好ましい。
【0136】
無機粒子含有組成物中に含まれる無機粒子(E)の量を100質量部としたとき、無機粒子(a1)の量は10~30質量部であり、10~25質量部であることが好ましく、15~25質量部であることがより好ましく、15~20質量部であることが特に好ましい。
また、無機粒子(a2)の量は30~70質量部であり、40~70質量部が好ましく、45~65質量部がより好ましく、45~60質量部が特に好ましい。
また、無機粒子(a3)の量は15~40質量部であり、15~35質量部が好ましく、15~30質量部がより好ましく、15~25質量部がさらに好ましく、15~20質量部が特に好ましい。
【0137】
無機粒子(a1)~(a3)の比率をそれぞれこの範囲に設定することで、ハンドリング性良好かつ硬化性良好な無機粒子含有組成物を得ることができ、また、熱伝導率良好な硬化物を得ることができるようになる。
【0138】
また、無機粒子含有組成物中に含まれる無機粒子(E)の量を100gとし、このときの無機粒子(a1)~(a3)の表面積の合計値をXm、表面処理無機粒子(D)の前記被覆層を構成する一般式(1)で表されるシラン化合物の合計量をYgとしたとき、(Y/X)×1000が1.0~5.0であることが好ましく、2.0~4.0であることがより好ましく、2.5~4.0であることがさらに好ましく、2.5~3.5であることが特に好ましい。無機粒子(E)の比表面積に対し、上記数値の範囲内で一般式(1)により表されるシラン化合物を配合することで、粒子の吸湿の抑制と硬化物の熱伝導率を高度に両立できる。
【0139】
4.無機粒子含有組成物の製造
本組成物は、例えば、反応性有機溶媒(C)であるポリイソシアネート化合物(C1)、分散剤(B)および必要に応じて消泡剤や安定化剤を配合し、均質な溶液または分散液としてから、表面処理無機粒子(D)、必要に応じて熱伝導性無機粒子(A)、その他無機粒子、ポリオール化合物(C2)等を添加して、充分に撹拌混合した後に分散処理することで製造することができる。
【0140】
撹拌混合に使用する装置は、例えば、ディスパー、プラネタリーミキサー、トリミックス、ホモジナイザーミキサー、ニーダー等の混錬混合装置、タンブラーミキサー、振動式撹拌機、アトライター、ロールミル等が挙げられる。撹拌混合では、混合液が均質で流動性のある状態にすることが好ましい。
【0141】
また、分散処理に用いる分散機は、ビーズミル、コロイドミル、プラネタリーミキサー、トリミックス、ホモジナイザーミキサー、ニーダー等の混錬混合装置、アトライター、ロールミル、自転公転ミキサー等が挙げられる。使用する分散機は、無機粒子含有組成物のハンドリング性や無機粒子の凝集の度合いに応じて、適宜設定することができる。
【0142】
分散時の温度は、無機粒子(D)の分散性、分散剤(B)と反応性有機溶媒(C)間の化学反応、装置の摩耗を抑制する面で10~50℃が好ましく、40℃以下がより好ましく、35℃以下が特に好ましい。
【0143】
分散時間は、無機粒子の粒度のサンプリングを行いながら適宜調整する。分散時間は、装置の違いにより異なるところ、0.1~10時間程度が好ましく、0.5~5時間がより好ましく、1~5時間が特に好ましい。
【0144】
5.熱伝導性硬化物およびその製造方法
本組成物は、硬化することで熱伝導性の硬化物を形成し、これにより、対象物を接着することができる。例えば、部材(M1)と、部材(M2)と、部材(M1)および部材(M2)の間に形成された熱伝導性硬化物を備えた構造体を好適に得ることができる。
前記構造体は、例えば、部材(M1)に無機粒子含有組成物を塗工し、部材(M2)で前記硬化性組成物を挟んでから硬化して接着する工程、または、部材(M1)および部材(M2)の間の界面に無機粒子含有組成物を注入して硬化する工程により得ることができる。硬化物の形状は特に限定されず、立体形状であっても、層状(シート状)であってもよい。
【0145】
また、部材(M1)および部材(M2)の形状は特に限定されず、立体形状、シート状基材等が挙げられる。例えば、本開示の無機粒子含有組成物を、積層体を構成する接着剤層として使用することができ、シート状基材(S1)と、熱伝導性硬化物と、シート状基材(S2)とをこの順に備えた積層体を好適に得ることができる。
前記積層体は、シート状基材(S1)に本開示の無機粒子含有組成物を塗工し、硬化してシート状の硬化物を形成し、さらにシート状基材(S2)を積層して得ることができる。また、シート状基材(S1)に本開示の無機粒子含有組成物を塗布、乾燥してシート状の硬化物を形成し、熱伝導性接着シートとして使用することができる。
【0146】
熱伝導性硬化性組成物として用いる場合、パワーモジュールやバッテリーモジュールなどの電子機器やモジュールの放熱させたい部位と、さらに必要に応じて金属板やヒートシ
ンク等の放熱部材と、熱伝導性硬化性組成物から得た硬化物層をそれぞれ接触させることで、良好な放熱性を得ることができる。その際に使用される本開示の無機粒子含有組成物の形態に特に制限はないが、液状あるいはペースト状にすることが好ましい。液状またはペースト状にすることで、接着面に容易に塗工、または、接着物間の界面に注入することができ、次いで硬化させることで、接着性が良好な硬化物層を形成することができる。
また、本組成物を半硬化した状態で使用する場合は、シート状に半硬化させた後、接着させたい部材と接触させた上で硬化をさらに進行させて使用することができる。固形状に設計する場合は、粉体状、チップ状、あるいはシート状等にしたものを接着面の界面に設置し、加熱させて固形状の無機粒子含有組成物を溶融させた後硬化させ、接着剤として機能させることができる。
【0147】
本組成物の塗工方法は特に限定されないが、例えばローラ形式で塗工することができ、25~120℃程度に加熱したローラを用いて、前記組成物を対象物の表面に塗工することができる。また、グラビアコーター等各種公知の方法を用いることができる。
【0148】
本組成物の硬化方法は特に限定されないが、常温または加温下でエージングする方法が挙げられる。硬化反応のためのエージング期間は、例えば40℃で1~5日程度である。
【0149】
前記硬化物の膜厚は0.01~10mmが好ましく、0.01~5mmがより好ましく、0.1~5mmが特に好ましい。硬化物の厚さを上記範囲とすることで、良好な熱伝導性を得つつ、充分な接着強度を得ることができる。
【0150】
ポリイソシアネート化合物(C1)およびポリオール化合物(C2)に基づく硬化性組成物とすることで、使用温度環境下、特に約-35℃~約+80℃の温度範囲において、良好な粘弾性、強度を得ることができる。
【0151】
前記硬化物の熱伝導率は、1~8W/(m・K)であることが好ましく、1.5~6W/(m・K)であることがより好ましく、1.8~6W/(m・K)であることがさらに好ましく、2~5W/(m・K)であることがさらに好ましく、2.5~5W/(m・K)であることが特に好ましい。硬化物の熱伝導率は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【実施例
【0152】
以下、実施例に基づき、本開示を詳細に説明するが、本開示は実施例に限定されない。本実施例中、特に断り書きが無い場合には、部は質量部を、%は質量%を表す。実施例および比較例で使用した材料を以下に示す。なお、以下の表において、熱伝導性無機粒子(A)等は単に(A)などと表記する。
【0153】
<熱伝導性無機粒子(A)>
・酸化アルミニウムA(SHJQ Chemical Technology Co. Ltd.製HCA-40):平均一次粒子径40μm、比表面積0.157m/g、破砕粉(非球状粒子)。
・酸化アルミニウムB(SHJQ Chemical Technology Co. Ltd.製HCA-20):平均一次粒子径25μm、比表面積0.366m/g、破砕粉(非球状粒子)。
・酸化アルミニウムC(Suzhou Ginet New Material Technology Co. Ltd.製YC-2):平均一次粒子径2μm、比表面積5.513m/g、破砕粉(非球状粒子)。
・水酸化アルミニウムA(住友化学社製CW-325LV):非球状粒子。
・水酸化アルミニウムB(製造例1、粉砕処理品):容量900mLのガラス瓶にイソプロピルアルコールを300部、水酸化アルミニウムAを200部加え、1.25mmΦジルコニアビーズ200部をメディアとして、ペイントシェーカーで9時間攪拌・混合処理して水酸化アルミニウムAの粉砕を行った。その後、得られた分散液を濾過し、濾別したものを120℃で充分に加熱乾燥することで、水酸化アルミニウムBを得た。破砕粉(非球状粒子)。
・水酸化アルミニウムC(製造例2):製造例1のペイントシェーカーの攪拌・混合処理時間を6時間に変更した以外は、製造例1と同様に行い、水酸化アルミニウムCを作製した。破砕粉(非球状粒子)。
・水酸化アルミニウムD(製造例3):製造例1のペイントシェーカーの攪拌・混合処理時間を3時間に変更した以外は、製造例1と同様に行い、水酸化アルミニウムDを作製した。破砕粉(非球状粒子)。
・水酸化アルミニウムE(製造例4):ステンレス製のビーカーに水酸化アルミニウムAを100部仕込み、攪拌しながら235℃で6時間加熱処理することで、水酸化アルミニウムEを作製した。加熱処理による水酸化アルミニウムの重量減少率は5.8%であった。また、粉末X線回折(XRD)測定にて2θ=約14.5度にベーマイト由来の強い回折パターンを確認することができ、そのベーマイト転化率は約25%だった。水酸化アルミニウムを加熱して部分的にベーマイト化させる場合、粒子の表面で主として転化が起こることが知られており、水酸化アルミニウムEの粒子表面はベーマイトであると推測できる。非球状粒子。
・水酸化アルミニウムF(製造例5):製造例1の水酸化アルミニウムAを水酸化アルミニウムEに変更した以外は、製造例1と同様に行い、水酸化アルミニウムFを作製した。破砕粉(非球状粒子)。
【0154】
<熱伝導性無機粒子(A)の評価>
水酸化アルミニウムA~Fの平均一次粒子径、含水量Ay、比表面積Ax、D50、疎水化度を表1に示す。
[平均一次粒子径]
熱伝導性無機粒子(A)の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡の拡大画像から50粒子を選択して測長し、平均値を算出した。なお、粒子画像が例えば楕円形である場合、長軸と短軸の平均値の長さを使用する。
[含水量]
熱伝導性無機粒子(A)の含水量は、カールフィッシャー型水分計(三菱化学アナリテック社製「CA-200」、電量法測定)を用いて測定した。熱伝導性無機粒子(A)1~2gを量り取り、140℃で加熱し、気化した水分量を測定した。なお、熱伝導性無機粒子(A)を表面処理する場合には、表面処理直前に測定を行った。
[疎水化度]
熱伝導性無機粒子(A)の疎水化度は、メタノールウェッタビリティ試験を行うことにより得た。具体的には、25℃下、500mL容器に熱伝導性無機粒子(A)を0.5gとイオン交換水50mLを入れ、スターラーにより攪拌しているところへメタノールを滴下し、熱伝導性無機粒子(A)の全量がイオン交換水に懸濁されたときの滴下量を求めた。そして、次の式により算出した。なお、ここで言う熱伝導性無機粒子(A)の全量がイオン交換水に懸濁されたときとは、スターラーによる攪拌を止めたときに液面に再度浮遊する無機粒子がほぼ無い状態を表す。
疎水化度(%)=メタノール滴下量(mL)×100/(メタノール滴下量(mL)+イオン交換水量(mL))
[比表面積]
熱伝導性無機粒子(A)の比表面積は、Macsorb HM model-1220(Mountech社製)を用いて測定を行い、窒素ガス吸着法によるBET比表面積として得た。
[粉体粒度D50]
熱伝導性無機粒子(A)の粉体粒度D50は、島津製作所社製のレーザー回折式粒子径分布測定装置SALD-2300を用いて乾式で測定した。熱伝導性無機粒子(A)の屈折率は、熱伝導性無機粒子(A)の屈折率文献値とし、例えば酸化アルミニウムでは屈折率パラメータを1.70-0.10iとして解析を実施した。測定結果から積算(累積)質量百分率で積算値50%の粒度(メディアン径)を算出し、粉末の平均粒子径D50とした。
【0155】
【表1】
【0156】
<表面処理剤(シラン化合物等)>
・ジメチルジメトキシシラン
・n-プロピルトリメトキシシラン
・ヘキシルトリメトキシシラン
・ヘキシルトリエトキシシラン
・オクチルトリエトキシシラン
・デシルトリメトキシシラン
・ヘキサデシルトリメトキシシラン
・ジメトキシジフェニルシラン
・3-アミノプロピルトリメトキシシラン
・3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物
・3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン
・TC-1040(マツモトファインケミカル社製、リン酸エステルチタン錯体)
【0157】
<表面処理無機粒子(D)等の調製>
[実施例1(製造例p1-1)]
ステンレス容器にイソプロピルアルコール50部とヘキシルトリエトキシシラン0.08部を仕込み、ディスパーで撹拌して充分に溶解させた。その後、ディスパー撹拌下、酸化アルミニウムAを99.92部仕込み、温度70℃下2時間混合処理を行ってスラリーを作製した。
得られたスラリーを取出し、乾燥機に移して、常圧下80℃で2時間乾燥した後、減圧下100℃で2時間乾燥し、表面処理無機粒子(D)を作製した。得られた表面処理無機粒子は含水量0.01%、疎水化度84%、粒子のpH8.8、粉体粒度D50が48μm、嵩密度1.8g/mLだった。
【0158】
[実施例2~8、12]
実施例1の材料およびその使用量を表2Aに記載した通りに変更した以外は、実施例1と同様に行い実施例2~8、12の表面処理無機粒子(D)をそれぞれ作製した。
【0159】
[実施例9]
ステンレス容器に酢酸3-メトキシブチル50部とヘキシルトリエトキシシラン1部を仕込み、ディスパーで撹拌して充分に溶解させた。その後、ディスパー撹拌下、酸化アルミニウムCを99部仕込み、温度70℃下2時間混合処理を行ってスラリーを作製した。
得られたスラリーを取出し、乾燥機に移して、減圧下120℃で5時間乾燥し、表面処理無機粒子(D)を製造した。
【0160】
[実施例10]
ステンレス容器にイソプロピルアルコール50部とヘキシルトリエトキシシラン1部を仕込み、ディスパーで撹拌して充分に溶解させた。その後、ディスパー撹拌下、水酸化アルミニウムAを99部仕込み、温度70℃下2時間混合処理を行ってスラリーを作製した。
得られたスラリーを取出し、乾燥機に移して、常圧下80℃で2時間乾燥した後、減圧下100℃で2時間乾燥し、表面処理無機粒子(D)を製造した。
【0161】
[実施例11]
プラスチック容器にヘキシルトリエトキシシラン10部、水9部、イソプロピルアルコール81部を仕込み、ディスパーで攪拌して充分に溶解させてシラン溶液を調製した。
次いで、プラネタリーミキサー(ハイビスミックス2P-03、プライミクス社製)に水酸化アルミニウムAを99部仕込み、20rpm攪拌下、調製したシラン溶液10部を20分間かけて滴下した後、充分に均質になるよう2時間攪拌を継続した。得られた混合物を取出し、乾燥機に移して、常圧下80℃で2時間乾燥した後、減圧下100℃で2時間乾燥し、表面処理無機粒子(D)を製造した。
【0162】
[実施例13]
ステンレス容器にイソプロピルアルコール50部とヘキシルトリメトキシシラン1.2部を仕込み、ディスパーで撹拌して充分に溶解させた。その後、ディスパー撹拌下、水酸化アルミニウムBを98.8部仕込み、温度70℃下2時間混合処理を行ってスラリーを作製した。
得られたスラリーを取出し、乾燥機に移して、常圧下90℃で2時間乾燥した後、減圧下100℃で2時間乾燥し、表面処理無機粒子(D)を作製した。得られた表面処理無機粒子は含水量0.19%、疎水化度69%、粒子のpH8.6、粉体粒度D50が1.9μm、嵩密度0.7g/mLだった。
【0163】
[実施例14~20]
実施例13の材料およびその使用量を表2Cに記載した通りに変更した以外は、実施例13と同様に行い実施例14~20の表面処理無機粒子(D)をそれぞれ作製した。
【0164】
[実施例21]
実施例11の材料およびその使用量を表2Cに記載した通りに変更した以外は、実施例11と同様に行い実施例21の表面処理無機粒子(D)を得た。
【0165】
[比較例1,4~9]
実施例1の材料およびその使用量を表2A、2Cに記載した通りに変更した以外は、実施例1と同様に行い比較例1、4~9の表面処理無機粒子をそれぞれ製造した。
【0166】
[比較例2]
ステンレス容器にイソプロピルアルコール40部とヘキシルトリメトキシシラン5部を仕込み、ディスパーで撹拌して充分に溶解させた。その後、ディスパー撹拌下、酸化アルミニウムCを95部仕込み、温度70℃下1時間混合処理を行ってスラリーを製造した。得られたスラリーを取出し、乾燥機に移して、200℃で3時間加熱乾燥した後、減圧下120℃で2時間乾燥し、表面処理無機粒子を作製した。得られた表面処理無機粒子は非常に硬く、粉末状に解すことは困難な状態だった。過剰量のシラン化合物が酸化アルミニウムCの粒子間を強固に固着したためだと推測できる。なお、比較例3は、酸化アルミニウムCに対して表面処理を行わずにそのまま用いた。
【0167】
<表面処理無機粒子(D)等の評価>
[含水量]
表面処理無機粒子(D)の含水量は、カールフィッシャー型水分計(三菱化学アナリテック社製「CA-200」、電量法測定)を用いて測定した。サンプル3~4gを140℃で加熱し、気化した水分量を測定した。
[疎水化度]
表面処理無機粒子(D)の疎水化度は、熱伝導性無機粒子(A)と同様の方法で行った。[pH]
表面処理無機粒子(D)のpHは、IPA:水=1:1の混合溶液中に表面処理無機粒子(D)を1質量%となるように添加した後、超音波分散機(発信周波数40kHz、出力130W)で10分間処理したときの、温度25℃下におけるpHを求めた。
[比表面積]
表面処理無機粒子(D)の比表面積は、熱伝導性無機粒子(A)と同様の方法により測定することにより求めた。
[粉体粒度D50]
表面処理無機粒子(D)の粉体粒度D50は、熱伝導性無機粒子(A)と同様の方法により測定した。表面処理無機粒子(D)の屈折率は、熱伝導性無機粒子(A)の屈折率の文献値とした。
[嵩密度]
表面処理無機粒子(D)の嵩密度は、スコットボリュームメータ(筒井理化学器械社製ASTM-B-329-98型)を用いて測定した。表面処理無機粒子(D)粉末をふるい(75φ×20mm、目開き2000μm)を介して、上部よりステンレス製試料容器からあふれ出るまで投入し、あふれたら直ちにスライドグラスを用いて過量分をすり落とし、その質量を秤量した。次の計算式により、嵩密度を算出した。
嵩密度(g/mL)=(測定した質量(g))÷(試料容器密度(25mL))
【0168】
【表2A】
【0169】
【表2B】
【0170】
【表2C】
【0171】
【表2D】
【0172】
実施例1~21の表面処理無機粒子(D)は、いずれも含水量が0.2質量%以下、疎水化度35~95%の範囲内であり、表面処理無機粒子(D)100質量部に対する前記シラン化合物の量が0.05~3質量部の範囲内であった。
一方、チタネート系の表面処理剤を用いた比較例1の無機粒子は、含水量が0.15%、疎水化度が20%、pH7.2であった。また、各種シラン化合物を用いた比較例4~7、9の表面処理無機粒子は、疎水化度が0%であった。比較例4,5の表面処理無機粒子は、数mmの砕きにくい大きな塊状の粒子が生成しており、全体を均質に解すことが困難であった。
【0173】
[実施例13,14,19~20、比較例7、8]
表面処理無機粒子(D)等の加熱重量減少率試験および疎水化度の結果を図2Eに示す。加熱重量減少率試験は、以下の方法により行った。疎水化度は前述の通りである。加熱重量減少率試験は、熱伝導性無機粒子(A)の加熱重量減少率をA1、この熱伝導性無機粒子(A)を表面処理して得た表面処理無機粒子(D)の加熱重量減少率をD1とし、D1とA1の差を評価することにより行った。
加熱重量減少率A1及びD1は、熱重量測定計を用いて計測した重量減少量から算出した。熱重量測定計(示差熱-熱重量同時測定装置(Thermo plus EVO2 TG-DTA8122、リガク社製))の重量減少量は、サンプル5mgを、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で40℃から140℃まで昇温し、140℃で5分間保持した後、さらに昇温速度10℃/分で300℃まで昇温したときの、240℃到達時点での値である。その評価結果を表2Eに示す。
評価基準は以下の通りとした。
++:(A1-D1)が0.8%以上(良好)。
+:(A1-D1)が0.5%以上0.8%未満(可)。
NG:(A1-D1)が0.5%未満(不良)。
【0174】
【表2E】
【0175】
実施例13、14,21、比較例7、8は、いずれも熱伝導性無機粒子(A)として水酸化アルミニウムBを用いて得た表面処理無機粒子である。また、実施例19、実施例20は、それぞれ水酸化アルミニウムE、Fの表面処理前後での比較である。これらの結果から、一般式(1)のシラン化合物で疎水化度35%以上となるように表面処理することにより、良好な加熱重量減少率試験結果が得られることが分かる。その理由は推測の域を出ないが、表面処理層の存在により、熱伝導性無機粒子(A)の化学構造内に含まれる水分の放出が抑制されたためだと考えられる。
【0176】
<分散剤(B)>
・分散剤1B:エスリーム221P(日油社製)。酸性分散剤(有効成分100%)、重量平均分子量610、酸価170mgKOH/g、含水量0.8%。
・分散剤1C:合成品B1(合成例1-1、有効成分100%)、ポリエステル構造を有する高分子。数平均分子量2430、重量平均分子量3590、酸価49mgKOH/g、含水量0.01%、水を除く活性水素を有する分子量500以下の化合物の含有量が0%。
・分散剤1E:Solsperse21000(ルーブリゾール社製)、ポリエステル構造を有する高分子。12-ヒドロキシステアリン酸の多量体(有効成分100%)、重量平均分子量2500、酸価74mgKOH/g、含水量0.16%。
・分散剤1F:Spredox D-331(DOXA社製)。アミン系官能基を有するポリエーテル化合物(有効成分100%)、重量平均分子量23000、酸価12mgKOH/g、アミン価28mgKOH/g、含水量0.2%。
・分散剤2A:合成品B1(合成例1-1、有効成分100%)、分散剤1Cと同じ。
・分散剤2B:合成品B2(合成例1-2、有効成分100%)、ポリエーテル構造を有する高分子。数平均分子量1600、重量平均分子量2440、酸価99mgKOH/g、含水量0.01%、水を除く活性水素を有する分子量500以下の化合物の含有量が0.5%。
・分散剤2C:合成品B3(合成例1-3、有効成分100%)、ポリエステル構造を有する高分子。数平均分子量1420、重量平均分子量1640、酸価93mgKOH/g、含水量0.01%、水を除く活性水素を有する分子量500以下の化合物の含有量が0.8%。
・分散剤2D:エスリームC-2093I(日油社製、有効成分100%)、エチレングリコールユニットを有するウレタンアクリレート系高分子。重量平均分子量1800、酸価105mgKOH/g、含水量0.1%。
・分散剤2E:アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)、ポリエステル構造を有する高分子。主鎖ポリアリルアミン、側鎖ポリカプロラクトンの共重合体。重量平均分子量50000、酸価17mgKOH/g、アミン価10mgKOH/g、含水量0.97%。
・分散剤2H:マリアリムSC-0505K(日油社製)、側鎖にポリエーテル構造を有するビニル系高分子。(無水)マレイン酸単位および(ポリ)アルキレンオキシ基含有アリルエーテル単位を有する共重合体(有効成分100%)。重量平均分子量10000、酸価155mgKOH/g、含水量0.02%。
・分散剤2I:Solsperse24000GR(ルーブリゾール社製)、ポリエステル構造を有する高分子。主鎖ポリエチレンイミン、側鎖12-ヒドロキシステアリン酸の共重合体(有効成分100%)、重量平均分子量5900、酸価25mgKOH/g、アミン価40mgKOH/g、含水量1%。
・分散剤2M:EFKA PX-4701(BASF社製)、側鎖にポリエーテル構造を有するビニル系高分子。塩基性官能基としてピリジンを有するアクリル樹脂(有効成分100%)、重量平均分子量23000、酸価0mgKOH/g、アミン価40mgKOH/g、含水量0.2%。
・分散剤2P:Joncryl682(BASF社製)。スチレン-アクリル系共重合体(有効成分100%)、重量平均分子量1700、酸価238mgKOH/g、含水量0.38%。
・分散剤4F:ARUFON UH-2000(東亞合成社製)。アクリル系ポリマー(有効成分100%)、重量平均分子量11000、酸価0mgKOH/g、水酸基価20mgKOH/g、含水量0.02%。
なお、分散剤2A~2E、2H、2I及び2Pは、カルボキシル基を有する分散剤である。また、分散剤2A~2E、2H、2I、2M、2P及び4Fにおいて、アミン価について記載のない分散剤のアミン価は、全て0である。
【0177】
<分散剤(B)の合成>
[合成例1-1]:合成品B1
ガス導入管、温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、1-ドデカノール62.6部、ε-カプロラクトン287.4部、触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシド0.1部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で4時間加熱、撹拌した。固形分測定により98%が反応した事を確認した後、ここに無水ピロメリット酸36.6部を加え、100℃で5時間反応させ、酸価の測定で97%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認して反応を終了した。得られた合成品B1は25℃でロウ状固体であり、数平均分子量2430、重量平均分子量3590、酸価49mgKOH/gであった。
【0178】
[合成例1-2]:合成品B2
ガス導入管、温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、1-ドデカノール20.07部、ε-カプロラクトン79.93部、触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシド0.1部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で4時間加熱、撹拌した。固形分測定により98%が反応した事を確認した後、ここにトリメリット酸無水物20.70部を加え、130℃で4時間反応させ、酸価の測定で97%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認して反応を終了した。得られた合成品B2は25℃でロウ状固体であり、数平均分子量1600、重量平均分子量2440、酸価99mgKOH/gであった。
【0179】
[合成例1-3]:合成品B3
ガス導入管、温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、ユニオックスM1000(日油社製、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、数平均分子量1000)100.0部、トリメリット酸無水物19.21部を加え、130℃で4時間反応させ、酸価の測定で97%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認して反応を終了した。得られた合成品B3は25℃でジェル状の柔らかい固体であり、数平均分子量1420、重量平均分子量1640、酸価93mgKOH/gであった。
【0180】
<分散剤(B)の評価>
実施例で使用した分散剤の評価は、含水量、酸価、アミン価、分子量分布を測定することにより行った。
[含水量]
分散剤(B)の含水量は、熱伝導性無機粒子(A)と同様の方法により求めた。なお、分散剤(B)の含水量は、無機粒子含有組成物を作製する直前に測定を行った。
[酸価]
分散剤(B)の酸価は、サンプル溶液0.5~1gに、アセトン80mLおよび水10mLを加えて攪拌して均一に溶解させ、0.1mol/LのKOH水溶液を滴定液として、自動滴定装置(「COM-555」平沼産業製)を用いて滴定し、サンプル溶液の酸価(mgKOH/g)を測定した。そして、サンプル溶液の酸価とサンプル溶液の固形分濃度から、サンプルの固形分あたりの酸価を算出した。
[アミン価]
分散剤(B)のアミン価は、ASTMD 2074の方法に準拠し、測定した全アミン価(mgKOH/g)を固形分換算した値である。
[分子量分布]
分散剤(B)の分子量分布は、RI検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定し、求めた。装置としてHLC-8220GPC(東ソー株式会社製)を用い、分離カラムを2本直列に繋ぎ、両方の充填剤には「TSK-GEL SUPER HZM-N」を2連でつなげて使用し、オーブン温度40℃、溶離液としてTHFを用い、流速0.35mL/minで測定した。サンプルは濃度1mass%となるようTHFに溶解し、20マイクロリットル注入した。分子量はいずれもポリスチレン換算値である。
【0181】
<ポリイソシアネート化合物(C1)>
・反応性有機溶媒C1-1:デュラネートA201H(旭化成社製)。有効成分100%、イソシアネート基20.6質量%、2官能型、数平均分子量670、粘度180mPa・s。
・反応性有機溶媒C1-2:デュラネートD101(旭化成社製)。有効成分100%、イソシアネート基19.7質量%、2官能型、数平均分子量620、粘度800mPa・s。
・反応性有機溶媒C1-3:デュラネートTUL-100(旭化成社製)。有効成分100%、イソシアネート基23.3質量%、イソシアヌレート型、数平均分子量560、粘度700mPa・s。
【0182】
<ポリオール化合物(C2)>
・反応性有機溶媒C2-1:プラクセル303(ダイセル社製)。ポリカプロラクトントリオール、有効成分100%、数平均分子量360、水酸基価540KOHmg/g、粘度3400mPa・s。
【0183】
<添加剤>
・消泡剤:フローレンAC-326F (共栄社化学社製、ビニルエーテルポリマー)
【0184】
<無機粒子含有組成物の評価>
後述する製造方法により実施例等に係る無機粒子含有組成物を製造した。そして、無機粒子含有組成物について、粘度(ハンドリング性)、水分量、貯蔵安定性を以下の基準で評価した。
【0185】
[水分量]
無機粒子含有組成物の水分量は、カールフィッシャー型水分計(三菱化学アナリテック社製「CA-200」、電量法測定)を用いて測定した。サンプル3gを140℃で加熱し、気化した水分量を測定した。
[粘度]
後述する調製例(1)~(5)で製造した無機粒子含有組成物の粘度は、サンプルをあわとり練太郎(シンキー社製、2000rpm)で30秒間攪拌混合した後、直ちにブルックフィールド型粘度計(英弘精機社製「HB」、サンプルの粘度値が200Pa・s以下の場合はスピンドルSC4-14、粘度値が200Pa・s超過の場合はスピンドルSC4-25)を用いて、サンプル温度25℃、スピンドル回転速度50rpm、測定時間1分間にて測定した。なお、表3A中の粘度測定値に「NG」と記入したものは、粘度値が500Pa・sを超過しており、流動性がほとんど無い状態であったことを表し、「-」と記入したものは、無機粒子中に含まれる粗大粒子を充分に解すことができなかったために、測定中にスピンドルと粗大粒子が接触して評価サンプルとして不適だったことを表す。評価基準は以下の通りとした。
+++:粘度値が0Pa・s以上100Pa・s以下(特に良好)。
++:100Pa・s超過200Pa・s以下(良好)。
+:200Pa・s超過500Pa・s以下(可)。
NG:500Pa・s超過(不良)。
[貯蔵安定性]
後述する調製例(1)~(5)で製造した無機粒子含有組成物の貯蔵安定性は、無機粒子含有組成物を35℃にて3時間静置して保存した後の、粘度変化率から評価した。粘度変化率の少ないものほど貯蔵安定性試験の結果が良好である。粘度変化率は、サンプル温度25℃のときの粘度値を使用して下式より算出した。なお、粘度変化率に「-」と記入したものは、貯蔵安定試験後の粘度値が500Pa・sを超過しており、評価できなかったことを表す。
粘度変化率=(35℃にて3時間静置した後の粘度値)/(サンプル調製直後の粘度値)
なお、評価基準は以下の通りとした。
<反応性有機溶媒(C)としてポリイソシアネート化合物(C1)のみを含む場合>
++:粘度変化率が0.5以上2.0以下(良好)。
+:粘度変化率が2.0超過5.0以下(可)。
NG:粘度変化率が5.0超過(長期的な保存には適さない、不良)。
<反応性有機溶媒(C)としてポリイソシアネート化合物(C1)およびポリオール化合物(C2)を含む場合>
++:粘度変化率が1.0以上5.0以下(良好)。
+:粘度変化率が5.0超過12.0以下(可)。
NG:粘度変化率が12超過(可使時間が短い、不良)。
【0186】
<無機粒子含有組成物の調製(1)>
[実施例22]
表3Aに示す組成に従い、プラスチック容器に製造例p1-4(表2A参照)で作製した表面処理無機粒子(D)を78部、反応性有機溶媒(C)としてデュラネートA201Hを21.22部、分散剤(B)としてSpredox D-331を0.78部仕込んだ。次いで、室温下、あわとり練太郎(シンキー社製、2000rpm)で2分間撹拌混錬処理し、無機粒子含有組成物を作製した。得られた無機粒子含有組成物の水分量は0.1%だった。その評価結果を表3Aに示す。
【0187】
[実施例23~30]
実施例22の材料およびその使用量を表3Aに記載した通りに変更した以外は、実施例22と同様に行い、実施例23~30の無機粒子含有組成物をそれぞれ作製した。
【0188】
[実施例31]
表3Bに示す組成に従い、プラスチック容器に製造例p1-3で作製した表面処理無機粒子(D)を39部、酸化アルミニウムBを39部、ポリイソシアネート化合物(C1)としてデュラネートA201Hを7.52部、デュラネートTUL-100を7.51部、ポリオール化合物(C2)としてプラクセル303を6.40部、分散剤(B)を0.47部、消泡剤としてフローレンAC-326Fを0.1部仕込んだ。次いで、室温下、あわとり練太郎(シンキー社製、2000rpm)で2分間撹拌混錬処理し、無機粒子含有組成物を作製した。
【0189】
[実施例32,33]
実施例31の材料およびその使用量を表3Bに記載した通りに変更した以外は、実施例31と同様に行い実施例32,33の無機粒子含有組成物をそれぞれ作製した。
【0190】
[比較例21~27]
実施例22の材料およびその使用量を表3Aに記載した通りに変更した以外は、実施例22と同様に行い比較例21~27の無機粒子含有組成物をそれぞれ作製した。なお、比較例26は、表面処理を施していない酸化アルミニウムC(比較例3(製造例Cp1-5))に対して、ヘキシルトリエトキシシランを混錬処理の直前に添加して得た組成物である。比較例27も同様である。
【0191】
【表3A】
【0192】
【表3B】
【0193】
実施例22~30で得た無機粒子含有組成物は、いずれも粘度100Pa・s以下でハンドリング性良好な粘度であり、さらに、粘度変化率が5.0以下であり貯蔵安定性試験の結果も良好であった。また、実施例31~33で得たポリイソシアネート化合物(C1)およびポリオール化合物(C2)を含有する無機粒子含有組成物は、いずれも粘度100Pa・s以下でハンドリング性良好な粘度であり、貯蔵安定性試験後も流動性が良好な状態であった。熱伝導性無機粒子(A)に特定のシラン化合物により表面処理を行い、疎水化度35~95%、含水量0.2質量%以下となるように制御することで、反応性有機溶媒(C)であるポリイソシアネート化合物(C1)との相互作用や反応性を効果的に抑制することができたものと推測できる。
【0194】
比較例25の組成物は、貯蔵安定性試験後に流動性がほとんどなくなり、試験結果が不良であった。
【0195】
一方、比較例21、24の組成物は、それぞれ酸性官能基を有する表面処理剤で処理した無機粒子を用いて得たものであり、比較例23の組成物は、塩基性官能基であるアミノ基を有する表面処理剤で処理した無機粒子を用いて得たものである。これらの組成物は、調製直後は一見顕著に粘度が低いように見えたが、非常に硬く解すことが困難な1mm以上の粗大粒子が多数残っていた。
これらの表面処理無機粒子を用いた場合、粒子表面に極性が付与されることで粒子が分散しやすくなり、粘度が顕著に低減される。しかしその一方で、極性官能基の一部が表面処理無機粒子同士を強く結着し、非常に硬い粗大粒子が生成されたものと考えられる。
【0196】
比較例22の組成物は、強固に固着した粗大粒子が解れないだけでなく、粘度が非常に高く、貯蔵安定性も悪いものであった。
一方、比較例26、27の組成物は、調製直後は粘度が顕著に低いが、これはシラン化合物が低粘度な溶媒成分として機能しているためである。貯蔵安定性試験後の粘度変化率が非常に高く、さらに非常に強いシラン化合物臭がしており、実用には適さないものだった。
熱伝導性無機粒子(A)に対する表面処理剤として効果的に作用していないシラン化合物成分は、無機粒子含有組成物の貯蔵安定性に対して顕著に悪影響を与えると考えられる。
【0197】
<無機粒子含有組成物の調製(2)>
[実施例41]
表4に示す組成に従い、プラスチック容器に製造例p1-3で作製した表面処理無機粒子(D)を44部、酸化アルミニウムBを44部、ポリイソシアネート化合物(C1)としてデュラネートA201Hを3.9部、デュラネートTUL-100を3.9部、ポリオール化合物(C2)としてプラクセル303を3.22部、分散剤(B)を0.88部、消泡剤としてフローレンAC-326Fを0.1部仕込んだ。次いで、室温下、あわとり練太郎(シンキー社製、2000rpm)で2分間撹拌混錬処理し、無機粒子含有組成物を作製した。
【0198】
[実施例42~47、比較例41,42]
実施例41の材料およびその使用量を表4に記載した通りに変更した以外は、実施例41と同様に行い実施例42~47、比較例41、42の組成物をそれぞれ作製した。なお、各実施例および比較例42の無機粒子(E)の合計は88部とし、比較例41の無機粒子(E)の合計は85部とした。
【0199】
【表4】
【0200】
<熱伝導性硬化物の作製>
[実施例51]
製造例p3-2で作製した無機粒子含有組成物を、プラスチック容器(深さ8mm、直径4cmの円形容器)にすりきりになるよう充填した後、室温下、充分に減圧脱泡した。その後、30℃で6時間静置した後、40℃でさらに6時間静置した。プラスチック容器に充填した無機粒子含有組成物が充分に硬化したことを確認した後、プラスチック容器から取り出し、熱伝導性硬化物を得た。得られた熱伝導性硬化物の評価は、硬化性、発泡性、熱伝導率の測定により行った。その評価結果を表5に示す。
【0201】
[実施例52~57、比較例51,52]
無機粒子含有組成物を表5に記載した通りに変更した以外は、実施例51と同様に行い実施例52~57、比較例51、52の硬化物をそれぞれ作製した。
【0202】
[熱伝導性硬化物の硬化性評価、発泡性評価]
熱伝導性硬化物の硬化性および発泡性の評価は、実施例等について、30℃で6時間および40℃で6時間静置した後の、硬化性組成物の目視評価により行った。
硬化性評価については、充分に硬く硬化しているものを++(良好)、充分に硬化しているが容器から取り出す際に湾曲するものを+(可)、充分に硬化していないものをNG(不可)とした。
発泡性評価については、プラスチック容器にすりきりになるように充填したときの液面から、膨らみが0.5mm未満のものを+++(非常に良好)、0.5mm以上1mm未満のものを++(良好)、1mm以上2mm未満のものを+(可)、2mm以上のものをNG(不可)とした。
[熱伝導率の評価]
実施例等で作製した各熱伝導性硬化物を測定試料とし、熱伝導率測定機Hot Disc TPS500(Hot Disc AB社製、測定端子Kapton Sensors,Bulk(TYPE I,Isotropic),Heating power 1.5W、測定時間10秒、測定温度25度)を用いて、測定端子を2つの測定試料の各平坦面で挟み込むようにセットして測定した。
得られた測定結果をHot Disc Software Ver. 6.0を用いてFine-tuned Analysisにより解析データポイント10~200について解析し、算出された値を熱伝導率とした。
【0203】
【表5】
【0204】
実施例51~57の熱伝導性硬化物は、いずれも良好な硬化性、発泡性、熱伝導率を示した。
一方、比較例51の熱伝導性硬化物は、硬化性が非常に悪く、充分に硬化しない結果となった。また、比較例52の熱伝導性硬化物は、硬化はしたものの膨張が顕著であり、熱伝導率を評価することができなかった。いずれの場合についても、遊離したシラン化合物や水分とイソシアネート基との間で副反応が進行したことによるものと考えられる。
【0205】
<無機粒子含有組成物の調製(3)>
[実施例61(製造例q1-2)]
表6に示す組成に従い、プラスチック容器に製造例p1-3の表面処理無機粒子(D)を81部、反応性有機溶媒(C)としてデュラネートA201Hを18.19部、分散剤(B)として2A(合成品1-1)を0.81部仕込んだ。次いで、室温下、あわとり練太郎(シンキー社製、2000rpm)で2分間撹拌混錬処理し、無機粒子含有組成物を作製した。得られた無機粒子含有組成物の水分量は0.1%だった。その評価結果を表6に示す。
【0206】
[実施例62~73、比較例61]
実施例61の材料およびその使用量を表6に記載した通りに変更した以外は、実施例61と同様に行い実施例62~73、比較例61をそれぞれ作製した。なお、実施例65では、表面処理無機粒子(D)として製造例p1-2で作製した表面処理無機粒子(D)と、製造例p1-3で作製した表面処理無機粒子(D)を1:1の割合で混合したものを使用した。
【0207】
【表6】
【0208】
実施例61~73の無機粒子含有組成物は、いずれも粘度100Pa・s以下でハンドリング性良好な粘度であり、さらに、粘度変化率が5.0以下であり貯蔵安定性も良好であった。実施例61~64と66~71の比較から、特に、分散剤(B)としてカルボキシル基を有し、酸価5~150mgKOH/g、アミン価0~30mgKOH/g、重量平均分子量1000~50000の高分子型分散剤を用いることで、熱伝導性無機粒子(A)および表面処理無機粒子(D)を反応性有機溶媒(C)中に高濃度で分散することが可能となることが分かる。また、実施例61~64と66、71の比較から、分散剤(B)のアミン価が小さいほど、粘度変化率が小さく貯蔵安定性良好な組成物が得られることが分かり、カルボキシル基を有する高分子型分散剤の酸価およびアミン価を上記範囲内とすることで、イソシアネート基との反応性および相互作用を効果的に抑制することができたと推測できる。
【0209】
一方、比較例61の組成物は、粘度が500Pa・sを超え、かつ、貯蔵安定性試験後は流動性がほとんどなく、不良であった。
【0210】
<無機粒子含有組成物の調製(4)>
[実施例74]
表7に示す組成に従い、プラスチック容器に製造例p1-3で作製した表面処理無機粒子(D)を40部、酸化アルミニウムBを40部、ポリイソシアネート化合物(C1)としてデュラネートA201Hを8.94部、デュラネートTUL-100を4.45部、ポリオール化合物(C2)としてプラクセル303を5.69部、分散剤(B)を0.80部、消泡剤としてフローレンAC-326Fを0.12部仕込んだ。次いで、室温下、あわとり練太郎(シンキー社製、2000rpm)で2分間撹拌混錬処理し、無機粒子含有組成物を作製した。その評価結果を表7に示す。
【0211】
[実施例75~78]
実施例74の材料およびその使用量を表7に記載した通りに変更した以外は、実施例74と同様に行い実施例75~78の組成物をそれぞれ作製した。
【0212】
【表7】
【0213】
実施例74~78の無機粒子含有組成物は、いずれも粘度100Pa・s以下でハンドリング性良好な粘度であり、貯蔵安定性試験後も流動性が良好な状態であった。特に実施例74~76は粘度変化率が5.0以下で貯蔵安定性試験の結果も良好であった。
【0214】
<無機粒子含有組成物の調製(5)>
[実施例81]
表8に示す組成に従い、プラスチック容器に製造例p1-8で作製した表面処理無機粒子(D)を無機粒子(a1)として8.6部、無機粒子(a2)として酸化アルミニウムBを43部、無機粒子(a3)として酸化アルミニウムAを34.4部、ポリイソシアネート化合物(C1)としてデュラネートA201Hを4.56部、デュラネートTUL-100を4.56部、ポリオール化合物(C2)としてプラクセル303を3.92部、分散剤(B)を0.86部、消泡剤としてフローレンAC-326Fを0.1部仕込んだ。次いで、室温下、あわとり練太郎(シンキー社製、2000rpm)で2分間撹拌混錬処理し、無機粒子含有組成物を作製した。
【0215】
[実施例82~93]
実施例81の材料およびその使用量を表8に記載した通りに変更した以外は、実施例81と同様に行い実施例82~93をそれぞれ作製した。実施例91を除く各実施例の無機粒子(E)の合計は86部とし、実施例91の無機粒子(E)の合計は90部とした。
なお、無機粒子(a1)として使用した表面処理無機粒子は全て製造例p1-8で作製した表面処理無機粒子(D)であり、無機粒子(a2)として使用した表面処理無機粒子は全て製造例r-10で作製した表面処理無機粒子(D)であり、無機粒子(a3)として使用した表面処理無機粒子は全て製造例p1-1で作製した表面処理無機粒子(D)である。
【0216】
【表8】
【0217】
<熱伝導性硬化物の作製>
[実施例101]
製造例r1-2で作製した無機粒子含有組成物を、プラスチック容器(深さ8mm、直径4cmの円形容器)にすりきりになるよう充填した後、室温下、充分に減圧脱泡した。その後、30℃で6時間静置した後、40℃でさらに6時間静置した。プラスチック容器に充填した無機粒子含有組成物が充分に硬化したことを確認した後、プラスチック容器から取り出し、熱伝導性硬化物を得た。得られた熱伝導性硬化物の評価は、硬化性、発泡性、熱伝導率の測定により行った。その評価結果を表9に示す。
【0218】
[実施例102~113]
実施例101の無機粒子含有組成物を表9に記載した通りに変更した以外は、実施例101と同様に行い実施例102~113の硬化物をそれぞれ作製した。
【0219】
【表9】
【0220】
実施例101~113の熱伝導性硬化物は、いずれも容器への充填性が良好であった。
【0221】
(熱伝導性硬化物の硬化性評価、発泡性評価)
熱伝導性硬化物の硬化性評価および発泡性評価は、実施例101~113について、30℃で6時間および40℃で6時間静置した後の、硬化性組成物の目視評価により行った。
硬化性評価については、充分に硬く硬化しているものを++(良好)、充分に硬化しているが容器から取り出す際に湾曲するものを+(可)、充分に硬化していないものをNG(不可)とした。
発泡性評価については、プラスチック容器にすりきりになるように充填したときの液面から、膨らみが0.5mm未満のものを+++(非常に良好)、0.5mm以上1mm未満のものを++(良好)、1mm以上2mm未満のものを+(可)、2mm以上のものをNG(不可)とした。
【0222】
(熱伝導率の評価)
実施例101~113の熱伝導性硬化物を測定試料とし、熱伝導率測定機Hot Disc TPS500(Hot Disc AB社製、測定端子Kapton Sensors,Bulk(TYPE I,Isotropic),Heating power 1.5W、測定時間10秒、測定温度25度)を用いて、測定端子を2つの測定試料の各平坦面で挟み込むようにセットして測定した。
得られた測定結果をHot Disc Software Ver. 6.0を用いてFine-tuned Analysisにより解析データポイント10~200について解析し、算出された値を熱伝導率とした。
熱伝導率評価については、3.0W/m・K以上のものを特に良好、2.8W/m・K以上3.0W/m・K未満のものを良好、2.5W/m・K以上2.8W/m・K未満のものを可とした。
【0223】
実施例101~113の熱伝導性硬化物は、いずれも良好な硬化性、発泡性、熱伝導率を示した。実施例101~113より、無機粒子(a1)~(a3)を所定の比率で併用して用いることで、熱伝導率良好な硬化物を得られることが分かる。また、特に(Y/X)×1000の値が1.0~5.0のとき、特に良好な硬化性、発泡性、熱伝導率を得ることができる。
実施例104~110は、無機粒子(E)100質量%中、表面処理無機粒子(D)の含有比率がそれぞれ10~100%の場合であり、20~80質量%のとき、特に良好な硬化性、発泡性、熱伝導率を得ることができる。
【0224】
<無機粒子含有組成物の調製(6)>
[実施例121]
表10に示す組成に従い、プラスチック容器に製造例p1-16で作製した表面処理無機粒子(D)を57.8部、他の無機粒子(E)(熱伝導性無機粒子(A))として酸化アルミニウムCを24.7部、ポリイソシアネート化合物(C1)としてデュラネートA201Hを17.0部、分散剤(B)を0.50部仕込んだ。次いで、室温下、あわとり練太郎(シンキー社製、2000rpm)で2分間撹拌混錬処理し、無機粒子含有組成物を作製した。その評価結果を表10に示す。
【0225】
[実施例122~128、比較例121~126]
実施例121の材料およびその使用量を表10に記載した通りに変更した以外は、実施例121と同様に行い実施例122~128、比較例121~126の組成物をそれぞれ作製した。
【0226】
[粘度]
調製例(6)で製造した無機粒子含有組成物の粘度は、以下の点を除き、上述した調製例(1)等と同様の方法で測定した。すなわち、スピンドル回転速度を20rpmに変更した。また、表中の粘度は20rpm粘度である。また、評価基準は、以下の通りとした。なお、表10中の粘度測定値に「NG」と記入したものは、粘度値が500Pa・sを超過しており、流動性がほとんど無い状態であったことを表す。
++:粘度値が0Pa・s以上200Pa・s以下(良好)。
+:200Pa・s超過500Pa・s以下(可)。
NG:500Pa・s超過(不良)。
[貯蔵安定性]
調製例(6)で製造した無機粒子含有組成物の貯蔵安定性は、無機粒子含有組成物を5℃にて24時間静置して保存した後の、粘度変化率Bから評価した。粘度変化率Bの少ないものほど貯蔵安定性試験の結果が良好である。粘度変化率Bは、サンプル温度25℃のときの粘度値を使用して下式より算出した。なお、粘度変化率Bに「-」と記入したものは、貯蔵安定試験後の粘度値が500Pa・sを超過しており、評価できなかったことを表す。
粘度変化率B=(5℃にて24時間静置した後の粘度値)/(サンプル調製直後の粘度値)
なお、評価基準は以下の通りとした。
++:粘度変化率が0.5以上2.0以下(良好)。
+:粘度変化率が2.0超過5.0以下(可)。
NG:粘度変化率が5.0超過(長期的な保存には適さない、不良)。
【0227】
【表10】
【0228】
実施例121~128で得た無機粒子含有組成物は、いずれもハンドリング性良好な粘度であり、さらに粘度変化率が5.0以下であり貯蔵安定性試験の結果も良好であった。
一方、比較例121~126で得た組成物は、それぞれ表面処理していない水酸化アルミニウムA~Fを使用したものだが、作製直後の時点ではハンドリング可能だったものの、貯蔵安定性試験後は著しく粘度が増大し、さらにダマ状の塊が多数できており、使用不可であった。
【0229】
<無機粒子含有組成物の調製(7)>
[実施例141]
表11に示す組成に従い、プラスチック容器に製造例s1-1で作製した表面処理無機粒子(D)を12.75部、他の無機粒子(E)(熱伝導性無機粒子(A))として酸化アルミニウムAを21.25部、酸化アルミニウムBを51部、ポリイソシアネート化合物(C1)としてC1-1を7.84部、C1-3を2.60部、C2-1を4.03部用い、分散剤(B)を0.43部、消泡剤としてフローレンAC-326Fを0.1部仕込んだ。次いで、室温下、あわとり練太郎(シンキー社製、2000rpm)で2分間撹拌混錬処理し、無機粒子含有組成物を作製した。
【0230】
[実施例142~146、比較例141~146]
実施例141の材料およびその使用量を表11に記載した通りに変更した以外は、実施例141と同様に行い、表11に記載の各実施例・比較例の組成物を得た。なお、各実施例、各比較例の無機粒子(E)の合計は85部とした。
【0231】
【表11】
【0232】
実施例141~146で得た無機粒子含有組成物は、いずれもハンドリング性良好な粘度だった。一方、比較例141~146で得た組成物は、粘度が非常に高くハンドリング不可であり、使用不可であった。
【0233】
<熱伝導性硬化物の作製>
[実施例151]
製造例s4-1で作製した無機粒子含有組成物を、プラスチック容器(深さ8mm、直径4cmの円形容器)にすりきりになるよう充填した後、室温下、充分に減圧脱泡した。その後、30℃で6時間静置した後、40℃でさらに6時間静置した。プラスチック容器に充填した無機粒子含有組成物が充分に硬化したことを確認した後、プラスチック容器から取り出し、熱伝導性硬化物を得た。得られた熱伝導性硬化物の評価は、硬化性、発泡性、熱伝導率の測定により行った。その評価結果を表12に示す。
【0234】
[実施例152~156]
実施例151の無機粒子含有組成物を表12に記載した通りに変更した以外は、実施例151と同様に行い実施例152~156の硬化物をそれぞれ作製した。
【0235】
(熱伝導性硬化物の硬化性評価、発泡性評価)
実施例151~156の熱伝導性硬化物の硬化性評価および発泡性評価は、実施例51等の評価方法と同様とした。硬化性および発泡性については実施例51と同一基準で評価した。
【0236】
(熱伝導率の評価)
実施例151~156の熱伝導性硬化物を測定試料とし、実施例51と同様の方法で熱伝導率を測定した。熱伝導率測定機Hot Disc TPS500(Hot Disc AB社製、測定端子Kapton Sensors, Bulk(TYPE I, Isotropic), Heating power 1.5W、測定時間10秒、測定温度25度)を用いて、測定端子を2つの測定試料の各平坦面で挟み込むようにセットして測定した。
得られた測定結果をHot Disc Software Ver. 6.0を用いてFine-tuned Analysisにより解析データポイント10~200について解析し、算出された値を熱伝導率とした。
熱伝導率評価については、2.5W/m・K以上のものを特に良好、2.0W/m・K以上2.5W/m・K未満のものを良好、1.8W/m・K以上2.0W/m・K未満のものを可とした。
【0237】
【表12】
【0238】
実施例151~156の熱伝導性硬化物は、いずれも良好な硬化性、発泡性、熱伝導率を示した。無置換のアルキル基の炭素数が4~8のとき、特に良好な熱伝導率が得られることが分かる。また、実施例155に示すように、特に一次粒子径1~10μmかつBET比表面積が0.05~5m/gの無機粒子(D)を用いたときに、特に優れた良好な熱伝導率を得ることができた。
【要約】
【課題】ハンドリング性および貯蔵安定性が良好な硬化性組成物を形成でき、さらに熱伝導性良好な硬化物を形成できる表面処理無機粒子を提供する。
【解決手段】表面処理無機粒子(D)は、平均一次粒子径0.05~100μmの熱伝導性無機粒子(A)と、被覆層とを有する。熱伝導性無機粒子(A)は、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、および窒化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種であり、被覆層は特定のシラン化合物に由来する成分を50質量%以上有し、表面処理無機粒子(D)は、含水量が0.2質量%以下、疎水化度が35%以上である。粒子(D)に対して前記シラン化合物を0.05~3質量%とする。
【選択図】なし