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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】精米施設の生産管理システム
(51)【国際特許分類】
   B02B 5/02 20060101AFI20221222BHJP
   G06Q 50/02 20120101ALI20221222BHJP
【FI】
B02B5/02 Z
G06Q50/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018193721
(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公開番号】P2020059013
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(72)【発明者】
【氏名】平田 直美
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-196194(JP,A)
【文献】特開2000-122702(JP,A)
【文献】世界のウェブアーカイブ|佐竹電機株式会社クラウドシステム達人シリーズ共同乾燥調整施設向けシステム,2018年09月02日,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20180902093439/https://www.satakedenki.co.jp/system.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02B 5/02
G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の精米施設の生産管理を行う基幹コンピュータシステムと、特定の精米施設でのみ生産計画、生産管理及び品質管理を行うコンピュータシステムと、前記特定の精米施設とは異なる精米施設でのみ生産計画、生産管理及び品質管理を行うコンピュータシステムと、前記基幹コンピュータシステムを閲覧するための携帯情報端末とが、所定のネットワークによって相互に通信可能となっている精米施設の生産管理システムであって、
前記基幹コンピュータシステムは、前記特定の精米施設及び前記特定の精米施設とは異なる精米施設からなる複数の精米施設を一括して稼働管理し、前記精米施設に搬入される原料穀物を、精米施設を特定するための工場の固有識別情報と、原料穀物の仕入れ先情報との少なくとも2つの情報を関連付けてデータ管理し、前記原料穀物の仕入れ先情報に基づいてデータ抽出を行い、
前記基幹コンピュータのモニタ画面には、特定の商社が関与するトレース情報を表示するトレース画面を表示可能となし、前記トレース画面には、前記固有識別情報、ロット番号、付加情報、混米情報及び包装情報を含む表が表示されるとともに、前記特定の商社が関与する精米の加工利益費を表示する加工利益費表示部と、工場経費や人件費を表示する内訳費用表示部とが前記表の下段に設けられることを特徴とする生産管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精米施設の生産管理システムに関し、詳しくは、複数の精米施設の稼働状況を把握し、原価管理や経営管理に活かすことのできる生産管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、精米施設(精米工場)における効率化を目的として、生産計画や生産管理を行うコンピュータシステムや、品質管理を目的として、製造履歴(トレーサビリティ)検索を行うコンピュータシステムが知られている(特許文献1、2、3、4等を参照)。
【0003】
しかし、これらコンピュータシステムにあっては、単一の精米施設の稼働管理を想定しているものであった。したがって、複数の施設を運営している精米業者は各施設ごとに表計算ソフトや手作業で数値を集計するなど煩雑な稼働管理を行わざるを得ず、複数の施設を一括して稼働管理することができなかった。また、商社などコメの搗精を委託している業者は、委託先での精米施設の稼働状況や製造履歴を見ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-288245号公報
【文献】特開2007-196194号公報
【文献】特開2017-205724号公報
【文献】特開2018-14028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点にかんがみ、複数の施設を運営している業者や、商社などコメの搗精を委託している業者であっても、簡便に各施設の稼働状況を把握し、原価管理や経営管理に活かすことのできる管理システムを提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、複数の精米施設の生産管理を行う基幹コンピュータシステムと、特定の精米施設でのみ生産計画、生産管理及び品質管理を行うコンピュータシステムと、前記特定の精米施設とは異なる精米施設でのみ生産計画、生産管理及び品質管理を行うコンピュータシステムと、前記基幹コンピュータシステムを閲覧するための携帯情報端末とが、所定のネットワークによって相互に通信可能となっている精米施設の生産管理システムであって、
前記基幹コンピュータシステムは、前記特定の精米施設及び前記特定の精米施設とは異なる精米施設からなる複数の精米施設を一括して稼働管理し、前記精米施設に搬入される原料穀物を、精米施設を特定するための工場の固有識別情報と、原料穀物の仕入れ先情報との少なくとも2つの情報を関連付けてデータ管理し、前記原料穀物の仕入れ先情報に基づいてデータ抽出を行い、前記基幹コンピュータのモニタ画面には、特定の商社が関与するトレース情報を表示するトレース画面を表示可能となし、前記トレース画面には、前記固有識別情報、ロット番号、付加情報、混米情報及び包装情報を含む表が表示されるとともに、前記特定の商社が関与する精米の加工利益費を表示する加工利益費表示部と、工場経費や人件費を表示する内訳費用表示部とが前記表の下段に設ける、という技術的手段を講じた。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1記載の精米施設の生産管理システムでは、複数の精米施設の生産管理を行う基幹コンピュータシステムと、特定の精米施設でのみ生産計画、生産管理及び品質管理を行うコンピュータシステムと、前記特定の精米施設とは異なる精米施設でのみ生産計画、生産管理及び品質管理を行うコンピュータシステムと、前記基幹コンピュータシステムを閲覧するための携帯情報端末とが、所定のネットワークによって相互に通信可能となっている精米施設の生産管理システムであって、
前記基幹コンピュータシステムは、前記特定の精米施設及び前記特定の精米施設とは異なる精米施設からなる複数の精米施設を一括して稼働管理し、前記精米施設に搬入される原料穀物を、精米施設を特定するための工場の固有識別情報と、原料穀物の仕入れ先情報との少なくとも2つの情報を関連付けてデータ管理し、前記原料穀物の仕入れ先情報に基づいてデータ抽出を行い、
前記基幹コンピュータのモニタ画面には、特定の商社が関与するトレース情報を表示するトレース画面を表示可能となし、前記トレース画面には、前記固有識別情報、ロット番号、付加情報、混米情報及び包装情報を含む表が表示されるとともに、前記特定の商社が関与する精米の加工利益費を表示する加工利益費表示部と、工場経費や人件費を表示する内訳費用表示部とを前記表の下段に設ける構成としたので、商社などコメの搗精を複数の精米施設に委託している業者であっても、委託先ごとの精米施設の稼働状況や製造履歴を閲覧することができる。これにより、複数の精米施設の原価管理や経営管理に活かすことができる。
【0010】
また前記基幹コンピュータシステムが、前記精米施設に搬入される原料穀物を、精米施設を特定するための工場の固有識別情報と、原料穀物の仕入れ先情報との少なくとも2つの情報を関連付けてデータ管理するため、各精米施設への原料穀物の搬入時、まず最初に、工場の固有識別情報及び仕入れ先情報の2つの情報を前記原料穀物に付与しさえすれば、商社など委託業者側では、以後の精米、混米、計量及び包装の各工程における稼働状況を捉えて、原料穀物の仕入れ先情報に基づいた各精米施設の利益額を把握することができる。
【0011】
さらに前記基幹コンピュータシステムが、前記原料穀物の仕入れ先情報に基づいてデータ抽出を行い、特定の商社が関与するトレース情報を表示するため、精米加工時の加工日時,使用する精米機の機種,水分,白度,搗精度,歩留りなどの精米加工情報、各商品ごとに決定した品種の配合割合などを示す混米情報、どのくらいの量を精米加工したのかの製品重量、製品出荷想定袋数などを示す計量情報、包装した製品・在庫状況を把握する包装情報、工場出荷日時、出荷先を示す出荷情報など、特定の商社が関与する原料穀物の製造履歴管理をすることが可能になる。特に、前記基幹コンピュータのモニタ画面には、前記基幹コンピュータのモニタ画面には、特定の商社が関与するトレース情報を表示するトレース画面を表示可能となし、前記トレース画面には、前記固有識別情報、ロット番号、付加情報、混米情報及び包装情報を含む表が表示されるとともに、前記特定の商社が関与する精米の加工利益費を表示する加工利益費表示部と、工場経費や人件費を表示する内訳費用表示部とを前記表の下段に設けてあるから、一目で利益額が把握でき、原価管理や経営管理に活かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る精米の生産管理システムを概略的に示す説明図である。
図2図1の精米生産管理システムの作用を概略的に示す模式図である。
図3】基幹コンピュータシステムのモニタ画面に表れる精米生産確認画面である。
図4】精米生産確認画面から仕入れ先情報に基づいてデータ抽出を行ったトレース画面である。
図5】第2実施形態の精米生産管理システムの作用を概略的に示す模式図である。
図6】第2実施形態の精米施設において、各工程を経る毎にロット番号が次々と更新される事例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明の精米施設の生産管理システムを具体化した実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る精米施設の生産管理システム10は、複数の精米施設を運営している業者や、各地の精米施設にコメの搗精を委託している商社が精米の生産管理を行う基幹コンピュータシステム40と、特定の精米施設aでのみ生産計画、生産管理及び品質管理を行い、当該施設内でのみ製造履歴(トレーサビリティ)検索を行うコンピュータシステム20と、精米施設aとは異なる特定の精米施設bでのみ生産計画、生産管理及び品質管理を行い、当該施設内でのみ製造履歴(トレーサビリティ)検索を行うコンピュータシステム30と、携帯情報端末50とが、インターネット等の所定のネットワーク60によって相互に通信可能となっている。前記基幹コンピュータシステム40は、前記複数の施設(例えば、特定の精米施設a及び特定の精米施設b)を一括して稼働管理するよう構成されたシステムである。
【0014】
基幹コンピュータシステム40は、上記複数の精米施設(特定の精米施設a及び特定の精米施設b)を運営している業者や商社等によって管理されているから、その取り扱うデータ量も多くなるために、データ蓄積用の大容量のデータサーバ41を設置している。そして、基幹コンピュータシステム40は、周知のコンピュータシステムでよく、CPU等からなる制御部、液晶モニタ等として構成される表示部、マウスやキーボード等として構成される操作部、記憶部、通信部などを備えて構成している。
【0015】
次に、基幹コンピュータシステム40と、特定の精米施設aのコンピュータシステム20及び特定の精米施設bのコンピュータシステム30との間でデータ管理を行うフローについて図2を参照して説明する。
【0016】
図2に示すように、特定の精米施設a用のコンピュータシステム20には、最初に原料となる玄米の仕入れ先情報Siが入力される。仕入れ先情報Siとしては、各農家から集荷した玄米を農業協同組合(農協又はJAという)から入手したものであるか、又は、各農家からの直接買い付けにより集荷した玄米を商社から入手したものであるかを指し示す。仕入れ先情報Siの詳細な付加情報Fuとして、米粒情報(米粒の品質ランク、食味値、生産者名、生産年、生産地、品種、栽培方法、減農薬対象、化学肥料)を取得してもよい。
【0017】
次に、精米施設aの荷受部において、入荷した玄米のロット番号情報Loが入力される。玄米は、1トン容量のフレキシブルコンテナ容器に詰め込まれて流通することが多く、精米施設aで荷受したとき、入荷したフレキシブルコンテナ1トンごとに1ロットとしてロットナンバーを付与し、ロット毎の品質管理を行う方式を採用する。これにより、後工程の製造履歴(トレーサービリティ)管理(製品の所在を明らかにすること)をすることが可能になる。なお、これに限らず、30kg容量の紙袋で換算した重量(例えば、1.2トンを1ロットとすれば、30kgの紙袋が40袋を1ロット単位とするなど)で適宜ロットを決定するとよい。
【0018】
そして、荷受した玄米が精米施設aで精米加工が行われるか又は精米施設bで精米加工が行われるのかを示す施設(工場)固有の識別情報Faを付与するようにするとよい。
【0019】
さらに、コンピュータシステム20には、精米加工時の加工日時、使用する精米機の機種、水分、白度、搗精度、歩留りなどの精米加工情報Kaや、各商品ごとに決定した品種の配合割合などを示す混米情報Koや、どのくらいの量を精米加工したのかの製品重量、製品出荷想定袋数などを示す計量情報Keや、包装した製品と在庫状況とを把握して生産計画などを示す包装情報Hoや、工場出荷日時、出荷先などを示す出荷情報Suなどが入力される。
【0020】
同様に、特定の精米施設b用のコンピュータシステム30にも、仕入れ先情報Si、ロット番号情報Lo、工場固有の識別情報Fb、精米加工情報Ka、混米情報Ko、計量情報Ke、包装情報Ho及び出荷情報Suが入力されている。
【0021】
そして、図1図2に示すように、前記コンピュータシステム20及び30は、インターネット等の所定のネットワーク60によって相互に通信可能となっている。同様に、上記複数の精米施設を運営している業者や商社等によって管理される基幹コンピュータシステム40についても、インターネット等の所定のネットワーク60によって相互に通信可能となっている。これにより、遠隔地から精米施設a又はbの各種情報を取得したり、遠隔地から各種情報を編集して閲覧可能となっている。
【0022】
なお、図1図2に示す携帯情報端末50は、例えば、携帯電話やスマートフォン、タブレット端末など無線通信機能を有する携帯型の情報処理端末を想定しているが、コンピュータシステム20、コンピュータシステム30、基幹コンピュータシステム40及びデータサーバ41に蓄積されるデータを安易に書き換え可能とすると、信頼性が損なわれるので、携帯情報端末50では書き換え不可とするように、読み込み(閲覧)専用の権限に設定するのが望ましい。
【0023】
図3は、基幹コンピュータシステム40のモニタ画面に表れる精米生産確認画面100であり、図4は、図3の精米生産確認画面100から仕入れ先情報を基に抽出したトレース画面200である。この画面100には、各精米施設(a又はb)に搬入される際、仕入れ先情報から得られるロット毎の原料穀物の特性と、該原料穀物が前記精米施設にてロット毎処理された際に使用される運転パラメータと、精米施設から搬出されるロット毎の製品穀物の特性と、が対応付けられて表示される。
【0024】
図3の精米生産確認画面100には、工場固有の識別情報F(施設aか、施設bか又は施設cかの表示)、ロット番号Lo、原料の仕入れ先情報Si、付加情報Fu、及び精米加工情報Kaなどが表示されている。なお、図3に図示されていないが、精米加工情報Kaに引き続いて、混米情報Ko、計量情報Ke、包装情報Ho及び出荷情報Suなどを列記してもよい。そして、画面100の下段には、本日の稼働状況表示ボタン101、当月の売上高表示ボタン102、在庫状況表示ボタン103、仕入れ先トレースボタン104、及び終了ボタン105が設けられている。図3の仕入れ先トレースボタン104を押し下げると、仕入れ先情報を基に抽出したトレース画面200(図4)が表れる。
【0025】
図4のトレース画面200は、精米生産確認画面100から仕入れ先情報(例えば、原料の仕入れ先が商社Zである)に基づいてデータ抽出を行ったトレース画面である。トレース画面200には、標題Hの下に表201が表示され、この表201には、工場固有の識別情報F、ロット番号Lo、付加情報Fu、精米加工情報Ka、混米情報Ko、及び包装情報Hoなどが表示されている。表201の下段には、当月の売上高表示ボタン202、在庫状況表示ボタン203、及び終了ボタン204が設けられるとともに、商社Zが関与する加工利益費表示部205、内訳費用表示部206も設けられている。
【0026】
そして、図4のトレース画面200は、加工利益費表示部205に精米の加工利益費が表示され、内訳費用表示部206に工場経費や人件費などが表示されるようになっている。すなわち、商社Zにとっては、精米の生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であるから、公然と知られないように秘密に管理することが重要である。したがって、商社Zに関与しない外の者が閲覧できないような閲覧権限を付与するのが重要である。
【0027】
次に、上記実施形態における管理システムの作用について説明する。複数の工場を運営している業者や、商社などコメの搗精を委託している業者は、予め基幹コンピュータシステム40と、特定の精米施設aでのみ生産計画、生産管理及び品質管理を行うコンピュータシステム20と、特定の精米施設bでのみ生産計画、生産管理及び品質管理を行うコンピュータシステム30と、の間をネットワーク60によって相互に通信可能とするシステムを構築しておく。
【0028】
そして、商社などコメの搗精を委託している業者が基幹コンピュータシステム40内のアプリケーションプログラムを起動させると、各工場の稼働状況を一覧で把握することができ、原価管理や経営管理に活かせる有用な情報が取得される。
まず、原料玄米の仕入れ時、入荷作業者が施設a(又はb)にあるコンピュータシステム20(又は30)のマウス、キーボード又はバーコード読み取り装置などを利用して原料となる玄米をどこから入手したものであるかの仕入れ先情報Siを取得する。これと同時に、工場固有の識別情報Fとロット番号Loとを取得する。これにより、原料となる玄米(例えば、1トン容量のフレキシブルコンテナに詰め込まれた玄米)を、ロット番号Loと工場固有の識別情報Fと仕入れ先情報Siの3つの情報で関連付けて特定することが可能となる。
【0029】
次に、ロット番号Loと工場固有の識別情報Fと仕入れ先情報Siの3つの情報で関連付けられた玄米は、精米施設の加工作業者によって、さらに、精米加工時の加工日時、使用する精米機の機種、水分、白度、搗精度、歩留りなどの精米加工情報Kaや、各商品ごとに決定した品種の配合割合などを示す混米情報Koや、どのくらいの量を精米加工したのかの製品重量、製品出荷想定袋数などを示す計量情報Keや、包装した製品と在庫状況とを把握して生産計画などを示す包装情報Hoや、工場出荷日時、出荷先などを示す出荷情報Suなどの加工情報が関連付けられる。
【0030】
そして、コンピュータシステム20(又は30)に一時的に保管されたデータは、基幹コンピュータシステム40へ情報が送信され、図3に示すような統合されたデータベースとなる。
【0031】
次に、商社Zの経営部門、経理部門の担当者は、図3の統合データベースから仕入れ先情報に基づき、商社Zに特化した有用情報に加工する(図4)。
【0032】
図4を参照すると、工場固有識別情報Fの欄には施設aと施設bの識別情報の記載があり、複数の工場のデータを取り込んで一括管理していることが分かる。すなわち、商社Zなど複数の施設でコメの搗精を委託している業者であっても、簡便に各工場の稼働状況を把握することができる。また、図4のトレース画面200には、商社Zの関与する加工利益費表示部205及び内訳費用表示部206が設けられ、一目で利益額が把握でき、原価管理や経営管理に活かすことができる。
【0033】
[第2実施形態]
第2実施形態では、精米施設の各工程を経る毎に、ロット番号が次々と更新されていく事例を示す。この事例では、精米施設の各工程を経る毎に、新規なロット番号が生成されてくる。このため、仕入れ先情報を取得する際の紐付は、ロット番号を必ずしも取得する必要がない。
【0034】
図5図6は、特定の精米施設A用のコンピュータシステム20や精米施設B用のコンピュータシステム30に各精米の工程を経る毎に、新規なロット番号が付与される事例を示す。
【0035】
精米施設A用のコンピュータシステム20において、まず、最初に各処理を識別する基礎として、工場固有識別情報Fと、仕入れ先情報Siと、の2つの情報が挙げられる。
【0036】
図6の「精米施設Aに付属するコンピュータ20のデータ処理画面」の表を参照すると、その一行目には搬入されてくる原料玄米の情報が記載される。一行目の末尾にある原料玄米の仕入れ先情報Si「仕入れ先Z」には、まず、工場固有の識別情報Fのうち精米施設Aで処理されることを示す識別情報「A」が付与される。次に、張込工程におけるロット番号「1223001」、投入タンク情報「AA01」、投入重量「3,000」、経歴「新潟県産コシ1等紙30kg」がそれぞれ付与される。
【0037】
二行目には、一行目(前工程)の張込情報に加えて、本工程の精米工程の情報が付与される。取出ロットの欄には、投入タンク「AA01」にあるロット番号「1223001」の原料玄米を利用することが示される。次いで、同様の工場固有の識別情報「A」、新規なロット番号「1223002」、投入タンク情報「BA01」、投入重量「2,700」、取出重量「3,000」、経歴「新潟県産コシ1等紙30kg」、付加情報「白米水分14.5%」が付与される。
【0038】
三行目には、二行目(前工程)の精米情報に加えて、本工程のブレンド工程の情報が付与される。取出ロットの欄には、投入タンク「BA01」にあるロット番号「1223002」の精米を利用することが示される。次いで、同様の工場固有の識別情報「A」、新規なロット番号「1223003」、投入タンク情報「CA01」、投入重量「1,000」、取出重量「1,000」、経歴「コシブレンド」、付加情報「50%」が付与される。
【0039】
四行目には、三行目(前工程)のブレンド工程と同様のブレンド工程の情報が付与されるが、取出ロットが三行目とは異なるものとなっている。取出ロットの欄には、図外のロット番号「1222042」の精米を利用することが示される。次いで、同様の工場固有の識別情報「A」、上記同様のロット番号「1223003」、投入タンク情報「CA01」、投入重量「1,000」、取出重量「1,000」、経歴「コシブレンド」、付加情報「50%」が付与される。
【0040】
五行目には、三行目及び四行目(前工程)のブレンド工程に加えて、本工程の包装工程の情報が付与される。取出ロットの欄には、投入タンク「CA01」にあるロット番号「1223003」のブレンド米を利用することが示される。次いで、同様の工場固有の識別情報「A」、新規なロット番号「1223004」、投入タンク情報「Sei1」、投入重量「500」、取出重量「500」、経歴「業務用米」、付加情報「5kg100袋」が付与される。
【0041】
六行目には、原料玄米の仕入れ先情報Siに前記「仕入れ先Z」とは異なる、新たな「仕入れ先Y」を受け入れ処理されることが記載されている。この際、段落0034の記載と同様の処理が行われる。すなわち、工場固有の識別情報Fのうち精米施設Aで処理されることを示す識別情報「A」が付与され、次に、張込工程におけるロット番号「1223005」、投入タンク情報「AA03」、投入重量「900」、経歴「宮城県産ササ1等紙30kg」がそれぞれ付与される。
【0042】
次に、図6の「精米施設Bに付属するコンピュータ30のデータ処理画面」の表を参照する。その一行目には搬入されてくる原料玄米の情報が記載される。仕入れ先情報Si「仕入れ先Z」には、まず、工場固有の識別情報Fのうち精米施設Bで処理されることを示す識別情報「B」が付与される。次に、荷受工程におけるロット番号「1223001」、投入タンク情報「AA01」、投入重量「3,000」、経歴「新潟コシ1等紙30kg」がそれぞれ付与される。
【0043】
二行目には、一行目の荷受情報に加えて、本工程の玄米精選工程の情報が付与される。取出ロットの欄には、投入タンク「AA01」にあるロット番号「1223001」の原料玄米を利用することが示される。次いで、同様の工場固有の識別情報「B」、新規なロット番号「1223002」、投入タンク情報「BA01」、投入重量「2,940」、取出重量「3,000」、経歴「新潟コシ1等紙30kg」が付与される。
【0044】
三行目には、二行目の玄米精選情報に加えて、本工程の精米工程の情報が付与される。取出ロットの欄には、投入タンク「BA01」にあるロット番号「1223002」の精選玄米を利用することが示される。次いで、同様の工場固有の識別情報「B」、新規なロット番号「1223003」、投入タンク情報「CA02」、投入重量「2,650」、取出重量「2,940」、経歴「新潟コシ1等紙30kg」、付加情報「白米水分14.5%」が付与される。
【0045】
四行目には、三行目の精米情報に加えて、本工程の白米精選工程の情報が付与される。取出ロットの欄には、投入タンク「CA02」にあるロット番号「1223003」の精米を利用することが示される。次いで、同様の工場固有の識別情報「B」、新規なロット番号「1223004」、投入タンク情報「DA03」、投入重量「1,000」、取出重量「1,000」、経歴「新潟コシ」、付加情報「100%」が付与される。
【0046】
五行目には、四行目の白米精選した精米を用いて、包装工程を行う工程の情報が付与される。取出ロットの欄には、投入タンク「CA02」にあるロット番号「1223003」の精米を利用することが示される。次いで、同様の工場固有の識別情報「B」、新規なロット番号「1223005」、投入タンク情報「ZA01」、投入重量「500」、取出重量「500」、経歴「新潟県産コシヒカリ」、付加情報「10kg50袋」が付与される。
【0047】
次に、図6の「商社Cに付属するコンピュータ40のデータ処理画面」について説明する。このデータ処理画面は、前記精米施設Aに付属するコンピュータシステム20及び前記精米施設Bに付属するコンピュータシステム30に一時的に保管されたデータを統合したデータベースである。これは、基幹コンピュータシステム40により処理されることとなる。
なお、図5の符号41に示すように、商社Cに付属する基幹コンピュータ40は、精米施設A用のコンピュータ20と精米施設B用のコンピュータ30のマスター登録がそれぞれバラバラに付与されていたものを、マスター登録を共通化するように修正するプログラム備えているのが好ましい。
【0048】
図6の「精米施設Aに付属するコンピュータ20のデータ処理画面」には、仕入れ先情報Siとして「仕入れ先Z」と「仕入れ先Y」との2つの仕入れ先が存在し、図6の「精米施設Bに付属するコンピュータ30のデータ処理画面」には、仕入れ先情報Siとして「仕入れ先Z」のみが存在する。
【0049】
前述のように、仕入れ先情報Siについては、精米施設に搬入されてくる原料玄米の情報であり、精米を行う際の最初の各処理の基礎となるものである。したがって、「仕入れ先Z」と「仕入れ先Y」とは、同じロット番号を承継することはないため、全く別物と区別されるものである。
【0050】
したがって、図6の「商社Cに付属するコンピュータ30のデータ処理画面」には、商社Zから仕入れた原料として、「仕入れ先Z」に特化した有用情報が表れている。つまり、図6の「商社Cに付属するコンピュータ30のデータ処理画面」の一覧表には、「仕入れ先Z」に関連するロット番号「1223001」を継承したコメに関する情報のみが表れていることになる。
【0051】
そして、これらの情報は、商社Zの経営部門、経理部門の担当者により、図4のような経営や、経理に役立つ有用情報に加工するとよい。
【0052】
以上のように本実施形態の精米施設の生産管理システム10によれば、各精米施設の生産計画、生産管理及び品質管理を行うコンピュータシステム20,30と、複数の精米施設を運営している業者や商社が精米の生産管理を行う基幹コンピュータシステム40とを、所定のネットワーク60を介して相互に通信可能な構成としているので、商社などコメの搗精を複数の精米施設に委託している業者であっても、委託先ごとの精米施設の稼働状況や製造履歴を閲覧することができる。これにより、複数の精米施設の原価管理や経営管理に活かすことができるというメリットがある。
【0053】
また、前記基幹コンピュータシステムが、前記精米施設に搬入される原料穀物を、精米施設を特定するための工場の固有識別情報と、原料穀物の仕入れ先情報との少なくとも2つの情報を関連付けてデータ管理するので、複数の精米施設の原価管理や経営管理に活かすとともに、精米施設に搬入される原料玄米の仕入れ先に特化した原価管理や経営管理を行うことができる。
【0054】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上記の発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明の均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、又は、省略が可能である。
【0055】
例えば、建家内を精米機を設置した機械室と利用者が入る客室部とに仕切り、コインなどの料金を投入すると一定時間精米機が稼働して、お客が持ち込んだ玄米を精米処理することができる料金式精米設備(コイン精米設備)にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、精米施設の生産管理システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 生産管理システム
20 コンピュータシステム
30 コンピュータシステム
40 基幹コンピュータ
50 携帯端末
60 ネットワーク
100 精米生産確認画面
101 本日の稼働状況表示ボタン
102 当月の売上高表示ボタン
103 在庫状況表示ボタン
104 仕入れ先トレースボタン
105 終了ボタン
200 トレース画面
201 表
202 当月の売上高表示ボタン
203 在庫状況表示ボタン
204 終了ボタン
205 加工利益費表示部
206 内訳費用表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6