(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】電波伝送路障害物確認方法
(51)【国際特許分類】
H04B 17/30 20150101AFI20221222BHJP
G06Q 50/32 20120101ALI20221222BHJP
A01G 23/00 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
H04B17/30
G06Q50/32
A01G23/00 551Z
(21)【出願番号】P 2019011109
(22)【出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】三村 直
(72)【発明者】
【氏名】森永 光雄
【審査官】浦口 幸宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-312021(JP,A)
【文献】特開2020-053881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/30
G06Q 50/32
A01G 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信アンテナ間の電波伝送の際に障害となる少なくとも一つの障害物についての平面位
置P
0と、鉛直位置V
0からなる幾何学的配置G
0を測定するための測定手段を設置する
設置工程と、
前記通信アンテナ間に形成されるフレネルゾーンを選択して、このフレネルゾーンの既
知の幾何学的配置G
fを記憶部から取得する選択・取得工程と、
前記フレネルゾーンと、前記障害物を含む空間の画像を撮像して表示部に表示する撮像
・表示工程と、
表示された前記画像上で、前記障害物のうち、前記幾何学的配置G
0を測定する対象を
選択して対象障害物を決定する決定工程と、
GPSを利用して、前記対象障害物の前記幾何学的配置G
0を測定する測定工程と、
前記測定工程の後に実施される樹高演算工程と、
取得された前記幾何学的配置G
fと、測定された前記対象障害物の前記幾何学的配置G
0を比較して、前記幾何学的配置G
fと前記幾何学的配置G
0が重複する重複領域がある
場合に、前記対象障害物が前記フレネルゾーンの範囲内に侵入していると判定する侵入判
定工程
と、
前記侵入判定工程の後に実施される樹高予測工程を備え、
前記記憶部は、樹高と、樹木種類毎の成長速度を考慮した樹木の成長予測パターンと、
前記通信アンテナが設置される地表領域の既知の平面位置P
g0と、鉛直位置V
g0から
なる幾何学的配置G
gが記憶されてお
り、
前記樹高演算工程は、前記対象障害物の前記平面位置P
0と一致する前記地表領域の前
記平面位置P
g0における前記鉛直位置V
g0を、前記記憶部から取得する鉛直位置取得
工程と、
前記測定工程において測定された前記対象障害物の前記鉛直位置V
0から、取得した前
記鉛直位置V
g0を差し引き、前記対象障害物の高さL
0を演算する高さ演算工程を有し
、
前記樹高予測工程は、前記対象障害物が樹木であるか否かを判定する樹木判定工程と、
前記対象障害物が樹木であると判定された場合に、前記対象障害物の前記樹木種類を特
定する樹木種類特定工程と、
前記高さ演算工程において演算された前記対象障害物の前記高さL
0と、前記樹木種類
特定工程において特定された前記樹木種類と、の組み合わせに対応する前記成長予測パタ
ーンを前記記憶部から選択する成長パターン選択工程と、
選択された前記成長予測パターンに従って所望の期間後における前記対象障害物の高さ
L
01を演算するとともに、この高さL
01に前記地表領域の前記鉛直位置V
g0を加え
て前記所望の期間後における前記対象障害物の鉛直位置V
01を演算する第1の成長予測
工程を有し、
この第1の成長予測工程が実施された場合に、演算された前記鉛直位置V
01について
、前記侵入判定工程が繰り返されることを特徴とす
る電波伝送路障害物確認方法。
【請求項2】
前記記憶部は、過去に前記測定工程において測定された前記対象障害物(以下、過去対
象障害物という。)についての、平面位置P
0p、鉛直位置V
0p、高さL
0p及びその
測定時期T
0pが記憶されており、
前記樹木判定工程の後に実施される同一障害物処理工程を備え、
この同一障害物処理工程は、前記測定時期T
0p後の測定時期T
0に測定された前記対
象障害物の前記平面位置P
0と、前記記憶部に記憶された前記過去対象障害物の前記平面
位置P
0pと、を比較して、前記平面位置P
0が前記平面位置P
0pと一致する場合に、
前記測定時期T
0に前記平面位置P
0に存在する前記対象障害物が、前記測定時期T
0p
に前記平面位置P
0pに存在した前記過去対象障害物と同一であると判定する同一障害物
判定工程と、
前記対象障害物の前記測定時期T
0及びこの測定時期T
0に測定された前記対象障害物
の前記高さL
0と、前記過去対象障害物の前記測定時期T
0p及びこの測定時期T
0pに
測定された前記高さL
0pと、を用いて、前記所望の期間後における前記対象障害物の高
さL
02を演算するとともに、この高さL
02に前記地表領域の前記鉛直位置V
g0を加
えて前記所望の期間後における前記対象障害物の鉛直位置V
02を演算する第2の成長予
測工程を有し、
前記同一障害物判定工程において、前記対象障害物が前記過去対象障害物と同一でない
と判定された場合に、前記樹木種類特定工程乃至前記第1の成長予測工程が実施され、
前記同一障害物判定工程において、前記対象障害物が前記過去対象障害物と同一である
と判定された場合に、前記樹木種類特定工程乃至前記第1の成長予測工程の代わりに、前
記第2の成長予測工程が実施され、
前記第1の成長予測工程、又は前記第2の成長予測工程が実施された場合に、それぞれ
、前記第1の成長予測工程において演算された前記鉛直位置V
01、又は前記第2の成長
予測工程において演算された前記鉛直位置V
02について、前記侵入判定工程が繰り返さ
れることを特徴とする請求項
1に記載の電波伝送路障害物確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信アンテナ間の電波伝送の際に障害となる障害物を検知可能な電波伝送路障害物確認装置およびこれを用いた電波伝送路障害物確認方法に係り、特に、障害物が樹木の場合に、樹木種類毎の成長を予測して将来的に障害が発生する時期を予測することのできる電波伝送路障害物確認装置およびこれを用いた電波伝送路障害物確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信アンテナ間に形成されるフレネルゾーンに侵入し、電波伝送の際に障害となっている障害物を発見するため、方位磁石と双眼鏡を使用した目視による確認を行っていた。
しかし、確認対象の通信アンテナが数百メートルから数十キロメートル程度遠方にあることで気象状況によっては確認が不可能であったり、方位磁石が周囲の構造物の影響によって誤動作したりするため、障害物がフレネルゾーンに侵入していることを見逃すケースがあった。そのため、目視以外の方法で、障害物の侵入を発見できる技術が求められていた。
また、障害物が樹木の場合では、成長によって樹高が徐々に高くなって来ることから、樹木がフレネルゾーンに侵入してくる時期を的確に把握できることが望ましい。
このような要請を満たすため、フレネルゾーンに侵入する樹木に関するものではないが、配電線に影響を及ぼす樹木の伐採時期の決定を支援するための技術が開発されており、それに関して発明が既に開示されている。
【0003】
特許文献1には「伐採時期決定支援システム」という名称で、配電線に近接する樹木の伐採時期の決定を支援するシステムに関する発明が開示されている。
以下、特許文献1に開示された発明について説明する。特許文献1に開示された発明は、配電線に関するデータを含む地図データを格納する地図データベースと、樹木別成長データを格納する樹木別成長データベースと、樹木データを格納する樹木データベースと、 少なくとも樹木データ及び樹木別成長データに基づいて樹木の成長シミュレーションを行う成長シミュレーション手段と、成長シミュレーションに基づいて配電線に近接する樹木を伐採する時期を予測する伐採時期予測手段と、樹木データ登録・変更手段を具備することを特徴とする。
【0004】
このような特徴を有する発明においては、成長シミュレーション手段が、樹木別成長データベースに格納された樹木データと、樹木データベースに格納された樹木別成長データに基づいて、それぞれ樹木番号が付されることで識別可能となっている樹木の成長シミュレーションを行う。さらに、伐採時期予測手段は、成長シミュレーションに基づいて各樹木を伐採する時期を予測する。したがって、作業員が配電線網を巡回せずとも、配電線に近接する樹木の伐採時期を予測することができる。
また、樹木データ登録・変更手段が、新たな樹木データを樹木データベースに登録するように機能し、又は樹木データベースに既に登録されている樹木データを修正する。したがって、正確な樹木データを利用して配電線に近接する樹木の伐採時期を予測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された発明においては、予め配電線に近接する樹木を選択する必要がある。具体的な選択方法についての記載は見られないが、目視や配電線周囲の画像撮影をすることで選択可能になると考えられる。しかし、フレネルゾーンは配電線と異なり目視不能であるため、特許文献1に開示された発明を直ちにフレネルゾーンの範囲内に侵入する障害物の選択に適用することはできない。
また、配電線に近接する樹木を選択した後、その種類を特定する必要もあるが、自動的又は客観的に特定されるという記載も見られないため、この特定はおそらく作業員によってなされるものと考えられる。そのため、特定結果が作業員それぞれの知識や経験に依存することになるので、最終的に、予測された伐採時期の再現性や精度が良好でない可能性がある。
さらに、樹木データを新規に登録、又は修正する場合には、手入力しなければならないことから、例えば複数の樹木を伐採後新たな樹木データを構築する際の手間が煩雑となる。
【0007】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、フレネルゾーンに侵入する障害物を容易に選択可能であり、また障害物が樹木である場合に、その種類を自動的かつ客観的に特定することで、障害物がフレネルゾーンに侵入する時期を精度良く予測できる電波伝送路障害物確認装置およびこれを用いた電波伝送路障害物確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1の発明は、通信アンテナ間の電波伝送の際に障害となる少なくとも一つの障害物の、幾何学的配置G0を測定するために設置される測定手段と、この測定手段と通信可能に接続される制御部と、この制御部と通信可能に接続される表示部と、通信アンテナ間の障害物を含む空間の画像を撮像して表示部に表示する撮像部と、制御部と通信可能に接続され、通信アンテナ間に形成されたフレネルゾーンの既知の幾何学的配置Gfが記憶された記憶部を備え、制御部は、幾何学的配置G0と幾何学的配置Gfを比較して、幾何学的配置G0と幾何学的配置Gfが重複する重複領域がある場合に、障害物がフレネルゾーンの範囲内に侵入していると判定することを特徴とする。
【0009】
このような構成の発明において、測定手段としては、例えば、レーザー距離計が使用される。また、制御部と、表示部と、記憶部としては、一般的なパーソナルコンピュータを使用できる。この場合、レーザー距離計は、制御部からの指令を受信又は測定値を制御部へ送信可能に、無線通信手段又は有線通信手段を介して、制御部と接続されている。
【0010】
また、障害物の幾何学的配置G0とは、障害物の平面位置及び鉛直位置である。このうち、平面位置は、例えば、緯度及び経度であり、鉛直位置は、標高、又はGPSを利用する場合は楕円体高で表現される。フレネルゾーンの幾何学的配置Gfも上記と同様である。また、フレネルゾーンの幾何学的配置Gfとは、通信アンテナ間に形成された三次元の閉じた空間の境界と内部を特定するものである。
上記構成の発明においては、測定手段は、制御部からの指令に従って障害物の幾何学的配置G0を測定する。測定された幾何学的配置G0は制御部へ送信され、制御部において予め記憶部に記憶されたフレネルゾーンの既知の幾何学的配置Gfと比較される。そして、幾何学的配置G0と幾何学的配置Gfが重複する重複領域がある場合に障害物がフレネルゾーンの範囲内に侵入していると判定する。
【0011】
次に、第2の発明は、測定手段は、障害物の幾何学的配置G0を演算可能なレーザー距離計であることを特徴とする。
このような構成の発明において、第1の発明の作用に加えて、測定手段は、例えば、測定手段が設置された場所の幾何学的位置を認識できるGPS信号受信器と、レーザー光を用いて測定手段から障害物までの直線距離を測定できる距離計と、測定手段から障害物までの傾斜角を測定できる傾斜センサーと、測定手段から障害物までの方位角を測定できる方位センサーを備えることで、障害物の幾何学的配置G0(例えば経度、緯度及び楕円体高)をリアルタイムで演算し、制御部へ送信することが可能なものが考えられる。
【0012】
続いて、第3の発明は、通信アンテナ間の電波伝送の際に障害となる少なくとも一つの障害物についての平面位置P0と、鉛直位置V0からなる幾何学的配置G0を測定するための測定手段を設置する設置工程と、通信アンテナ間に形成されるフレネルゾーンを選択して、このフレネルゾーンの既知の幾何学的配置Gfを記憶部から取得する選択・取得工程と、フレネルゾーンと、障害物を含む空間の画像を撮像して表示部に表示する撮像・表示工程と、表示された画像上で記障害物のうち、幾何学的配置G0を測定する対象を選択して対象障害物を決定する決定工程と、GPSを利用して、対象障害物の幾何学的配置G0を測定する測定工程と、取得された幾何学的配置Gfと、測定された対象障害物の幾何学的配置G0を比較して、幾何学的配置Gfと幾何学的配置G0が重複する重複領域がある場合に、対象障害物がフレネルゾーンの範囲内に侵入していると判定する侵入判定工程を備えることを特徴とする。
【0013】
このような構成の発明においては、平面位置は、例えば、経度及び緯度、又は平面直角座標で表される。鉛直位置は、楕円体高であるが、標高に換算されても良い。
設置工程においては、目的の通信アンテナの間に存在する障害物までの距離を測定可能と思われる大まかな位置に、測定手段を設置する。次に、選択・取得工程は、表示部上で行われる。なお、設置工程と、選択・取得工程は、その順序が逆になっても良い。
さらに、決定工程において、幾何学的配置G0を測定する対象障害物を決定するため、フレネルゾーンに侵入している可能性のある障害物が選択される。次の測定工程において、決定された対象障害物についてのみ、幾何学的配置G0が測定され、侵入判定工程において、決定された対象障害物がフレネルゾーンの範囲内に侵入しているか否かを判定する。
【0014】
さらに、第4の発明は、第3の発明において、記憶部は、樹高と、樹木種類毎の成長速度を考慮した樹木の成長予測パターンと、通信アンテナが設置される地表領域の既知の平面位置Pg0と、鉛直位置Vg0からなる幾何学的配置Ggが記憶されており、測定工程の後に実施される樹高演算工程と、侵入判定工程の後に実施される樹高予測工程を備え、樹高演算工程は、対象障害物の平面位置P0と一致する地表領域の平面位置Pg0における鉛直位置Vg0を、記憶部から取得する鉛直位置取得工程と、測定工程において測定された対象障害物の鉛直位置V0から、取得した鉛直位置Vg0を差し引き、対象障害物の高さL0を演算する高さ演算工程を有し、樹高予測工程は、対象障害物が樹木であるか否かを判定する樹木判定工程と、対象障害物が樹木であると判定された場合に、対象障害物の樹木種類を特定する樹木種類特定工程と、高さ演算工程において演算された対象障害物の高さL0と、樹木種類特定工程において特定された樹木種類と、の組み合わせに対応する成長予測パターンを記憶部から選択する成長パターン選択工程と、選択された成長予測パターンに従って所望の期間後における対象障害物の高さL01を演算するとともに、この高さL01に地表領域の鉛直位置Vg0を加えて所望の期間後における対象障害物の鉛直位置V01を演算する第1の成長予測工程を有し、この第1の成長予測工程が実施された場合に、演算された鉛直位置V01について、侵入判定工程が繰り返されることを特徴とする。
【0015】
このような構成の発明においては、第3の発明の作用に加えて、対象障害物が樹木であるか否かを判定する樹木判定工程を備えることで、対象障害物が樹木でない場合には直ちに侵入判定工程に進み、対象障害物が樹木である場合には樹木種類特定工程、成長パターン選択工程、第1の成長予測工程を介して侵入判定工程に進む。侵入判定工程は、例えば、対象障害物がフレネルゾーンに侵入したと判定されるまで繰り返される。
【0016】
そして、第5の発明は、第4の発明において、記憶部は、過去に測定工程において測定された対象障害物(以下、過去対象障害物という。)についての、平面位置P0p、鉛直位置V0p、高さL0p及びその測定時期T0pが記憶されており、樹木判定工程の後に実施される同一障害物処理工程を備え、この同一障害物処理工程は、測定時期T0p後の測定時期T0に測定された対象障害物の平面位置P0と、記憶部に記憶された過去対象障害物の平面位置P0pと、を比較して、平面位置P0が平面位置P0pと一致する場合に、測定時期T0に平面位置P0に存在する対象障害物が、測定時期T0pに平面位置P0pに存在した過去対象障害物と同一であると判定する同一障害物判定工程と、対象障害物の測定時期T0及びこの測定時期T0に測定された対象障害物の高さL0と、過去対象障害物の測定時期T0p及びこの測定時期T0pに測定された高さL0pと、を用いて、所望の期間後における対象障害物の高さL02を演算するとともに、この高さL02に地表領域の鉛直位置Vg0を加えて所望の期間後における対象障害物の鉛直位置V02を演算する第2の成長予測工程を有し、同一障害物判定工程において、対象障害物が過去対象障害物と同一でないと判定された場合に、樹木種類特定工程乃至第1の成長予測工程が実施され、同一障害物判定工程において、対象障害物が過去対象障害物と同一であると判定された場合に、樹木種類特定工程乃至第1の成長予測工程の代わりに、第2の成長予測工程が実施され、第1の成長予測工程、又は第2の成長予測工程が実施された場合に、それぞれ、第1の成長予測工程において演算された鉛直位置V01、又は第2の成長予測工程において演算された鉛直位置V02について、侵入判定工程が繰り返されることを特徴とする。
【0017】
このような構成の発明においては、第4の発明の作用に加えて、現在の測定時期T0に平面位置P0に存在する対象障害物が、過去の測定時期T0pに平面位置P0pに存在した過去対象障害物と同一であると判定する同一障害物判定工程を備えることで、対象障害物が過去対象障害物と同一でない場合には、第1の成長予測工程が実施され、対象障害物が過去対象障害物と同一である場合には、第2の成長予測工程が実施されるものである。
第2の成長予測工程では、過去対象障害物の測定時期T0p及びこの測定時期T0pに測定された高さL0pと、を用いて、所望の期間後における対象障害物の高さL02を演算する。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、測定手段を用いて障害物の幾何学的配置G0を測定すると、その測定結果が直ちに制御部へ送信され、障害物がフレネルゾーンの範囲内に侵入しているか否かを知ることができるので、労力と手間を軽減することができる。
【0019】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、測定手段がレーザー距離計であるため、高精度の測定値を得ることができる。また、障害物の幾何学的配置G0をリアルタイムで演算することが可能なため、迅速に測定値を得ることができる。
【0020】
第3の発明によれば、測定手段を設置して対象障害物を決定し、その幾何学的配置G0を測定することにより、対象障害物がフレネルゾーンの範囲内に侵入しているか否かを判定することができるため、従来のように目視せずとも障害物の侵入を簡単に発見できる。
【0021】
第4の発明によれば、第3の発明の効果に加えて、侵入判定工程において、対象障害物がフレネルゾーンに侵入したと判定されるまで繰り返されることにより、最初の測定時に樹木である対象障害物がフレネルゾーンに侵入していなくても、将来的に侵入する時期を正確に予測できる。
【0022】
第5の発明によれば、第4の発明の効果に加えて、最も新しく測定対象となった対象障害物が、過去の過去対象障害物と同一であるか否かを判定することが可能である。この結果、同一と判定された場合には実測した過去対象障害物の高さL0p等を用いて、所望の期間後における対象障害物の高さL02を演算できるので、将来的に障害物がフレネルゾーンへ侵入する時期をより正確に予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例1に係る電波伝送路障害物確認装置の構成図である。
【
図2】実施例2に係る電波伝送路障害物確認方法の工程図である。
【
図3】実施例2に係る電波伝送路障害物確認方法を構成する設置工程において、測定手段を設置する際の配置図である。
【
図4】実施例2に係る電波伝送路障害物確認方法のデータの流れを示すフロー図である。
【
図5】実施例3に係る電波伝送路障害物確認方法の工程図である。
【
図6】実施例3に係る電波伝送路障害物確認方法を構成する樹高演算工程のデータの流れを示すフロー図である。
【
図7】実施例3に係る電波伝送路障害物確認方法を構成する樹高予測工程のデータの流れを示すフロー図である。
【
図8】(a)及び(b)は、それぞれ実施例3に係る電波伝送路障害物確認方法を構成する成長パターン選択工程で使用される、針葉樹の成長予測パターン及び広葉樹の成長予測パターンである。
【
図9】実施例4に係る電波伝送路障害物確認方法のデータの流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0024】
本発明の第1の実施の形態に係る電波伝送路障害物確認装置について、
図1及び
図3を用いて詳細に説明する。
図1は、実施例1に係る電波伝送路障害物確認装置の構成図である。
図3は、本実施例の電波伝送路障害物確認方法を構成する設置工程において、測定手段を設置する際の配置図である。
図1及び
図3に示すように、実施例1に係る電波伝送路障害物確認装置1は、通信アンテナ50,51間の電波伝送の際に障害となる少なくとも一つの障害物52の、幾何学的配置G
0を測定するために設置される測定手段2と、この測定手段2と有線通信回線2bを介して通信可能に接続される制御部3と、この制御部3と通信可能に接続される表示部4と、通信アンテナ50,51間の障害物52を含む空間の画像を撮像して表示部4に表示する撮像部2aと、制御部3と通信可能に接続され、通信アンテナ50,51間に形成されたフレネルゾーンFの既知の幾何学的配置G
fが記憶された記憶部5を備える。また、フレネルゾーンFの幾何学的配置G
fは、複数対の通信アンテナ毎にそれぞれ記憶部5に記憶されている。なお、障害物の幾何学的配置G
0及びフレネルゾーンFの既知の幾何学的配置G
fは、それぞれ、地理座標(緯度、経度、楕円体高)で表されている。
【0025】
このうち、測定手段2は、測定手段2が設置された場所の幾何学的位置を認識できるGPS信号受信器と、レーザー光を用いて測定手段2から障害物52までの直線距離を測定できる距離計と、測定手段2から障害物52までの仰角を測定できる傾斜センサーと、測定手段2から障害物52までの方位角を測定できる方位センサーを備えることで、障害物52の幾何学的配置G0をリアルタイムで演算可能なレーザー距離計である。また、撮像部2aは、測定手段2と一体的に設けられている。
さらに、制御部3と、表示部4と、記憶部5は、パーソナルコンピュータ6として一体的に構成されている。詳細には、測定手段2が演算した障害物52の幾何学的配置G0と、撮像部2aが撮像した画像は、制御部3へ送信されて表示部4に表示されるとともに、撮影した障害物52が侵入している可能性のあるフレネルゾーンFと関連付けられて記憶部5へ記憶される。
【0026】
電波伝送路障害物確認装置1において、制御部3は、障害物52の幾何学的配置G
0とフレネルゾーンFの幾何学的配置G
fを比較して、幾何学的配置G
0と幾何学的配置G
fが重複する重複領域がある場合、すなわち、幾何学的配置G
0(緯度LAT
0,経度LON
0,楕円体高H
0の成分からなる一つのデータ)がフレネルゾーンFを特定する閉じた空間の境界と内部を示す幾何学的配置G
f(一定間隔毎の、緯度LAT
f,経度LON
f,楕円体高H
fの成分からなるデータ群)に含まれるか否かを判断し、含まれると判断される場合に、障害物52がフレネルゾーンFの範囲内に侵入していると判定する。なお、
図3においては、複数の障害物52のうち、フレネルゾーンFの範囲内に侵入したおそれがあるものを対象障害物52aとして表示している。
電波伝送路障害物確認装置1によれば、測定手段2がレーザー距離計であるため、高精度の幾何学的配置G
0を得ることができる。また、測定手段2が幾何学的配置G
0をリアルタイムで演算することが可能なため、迅速に幾何学的配置G
0を得ることができる。
また、測定手段2を用いて障害物52の幾何学的配置G
0を測定すると、その測定結果が直ちに制御部へ送信されるため、従来技術のような手入力をする必要がなく、また、測定のみにより障害物がフレネルゾーンFの範囲内に侵入しているか否かを知ることができるので、労力と手間を削減することができる。
【実施例2】
【0027】
本発明の第2の実施の形態に係る電波伝送路障害物確認方法について、
図2乃至
図4を用いて詳細に説明する。
図2は、実施例2に係る電波伝送路障害物確認方法の工程図である。
図4は、実施例2に係る電波伝送路障害物確認方法のデータの流れを示すフロー図である。なお、
図1及び
図3で示した構成要素については、
図2及び
図4においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図2に示すように、実施例2に係る電波伝送路障害物確認方法10は、ステップS1の設置工程と、ステップS2の選択・取得工程と、ステップS3の撮像・表示工程と、ステップS4の決定工程と、ステップS5の測定工程と、ステップS6の侵入判定工程と、ステップS7の結果表示工程を備える。
【0028】
ステップS1の設置工程は、
図3に示すように、通信アンテナ50,51間の電波伝送の際に障害となる少なくとも一つの障害物52についての平面位置P
0と、鉛直位置V
0からなる幾何学的配置G
0を測定するための測定手段2を設置する工程である。具体的には、測定手段2は、三脚に支持されて、通信アンテナ50,51間に形成されるフレネルゾーンFと、複数の障害物52を含む空間の画像を撮像可能であり、かつ、障害物52までの距離を測定可能と思われる大まかな位置に設置される。そして、
図2乃至
図4に示すように、測定手段2は、GPSを利用して、測定手段2が設置された場所の幾何学的位置G
0(緯度LAT
0,経度LON
0,楕円体高H
0)を認識する。ここで、平面位置P
0は(緯度LAT
0,経度LON
0)であり、鉛直位置V
0は(楕円体高H
0)である。
【0029】
次に、
図2乃至
図4に示すように、ステップS2の選択・取得工程は、複数対の通信アンテナ(図示せず)間のうち、一対の通信アンテナ50,51間に形成されるフレネルゾーンFを選択して、このフレネルゾーンFの既知の幾何学的配置G
f(緯度LAT
f,経度LON
f,楕円体高H
f)を記憶部5から取得する。
ステップS3の撮像・表示工程は、選択されたフレネルゾーンFの幾何学的配置G
fに基づいて、そのフレネルゾーンFの境界を表す曲線と、複数の障害物52を含む空間の画像を撮像して表示部4(
図1参照)に表示する。
さらに、ステップS4の決定工程は、表示部4に表示された画像上で、複数の障害物52のうち、幾何学的配置G
0を測定する対象を選択して対象障害物52aを決定する。
【0030】
ステップS5の測定工程は、GPSを利用して、対象障害物52aの幾何学的配置G
0を測定する。具体的には、表示部4に表示された対象障害物52aの最上部(
図3中バツ印)を拡大表示し、この最上部に照準を合わせて距離計のレーザー光を発射すると、測定手段2から対象障害物52aの最上部までの直線距離が測定される。併せて、傾斜計及び方位計により測定手段2から対象障害物52aの最上部までの仰角及び方位角が測定されるので、これらの値と測定手段2が設置された場所の幾何学的位置から、例えば三角関数を用いて対象障害物52aの最上部についての幾何学的配置G
0(緯度LAT
0,経度LON
0,楕円体高H
0)が演算される。
【0031】
続いて、ステップS6の侵入判定工程は、取得されたフレネルゾーンFの幾何学的配置Gfと、測定された対象障害物52aの幾何学的配置G0を比較して、幾何学的配置Gfと幾何学的配置G0が重複する重複領域がある場合に、対象障害物52aがフレネルゾーンFの範囲内に侵入していると判定する。具体的には、対象障害物52aの 緯度LAT0= フレネルゾーンFの緯度LATf 、かつ対象障害物52aの経度LON0=フレネルゾーンFの経度LONf、かつ対象障害物52aの楕円体高H0≧フレネルゾーンFの楕円体高Hfの下方(地表面に近い方)の境界値、の場合に、対象障害物52aの最上部がフレネルゾーンFの範囲内に侵入していると判定する。
最後に、ステップS7の結果表示工程は、フレネルゾーンFについてのステップS6の侵入判定工程の結果を、表示部4に表示する。
【0032】
実施例2に係る電波伝送路障害物確認方法10によれば、ステップS1の設置工程乃至ステップS7の結果表示工程により、表示部4に表示された画像上で所望の対象障害物52aを選択し、その最上部がフレネルゾーンFの範囲内へ侵入しているか否かを判定できる。
このうち、ステップS1の設置工程によれば、測定手段2を通信アンテナ50,51の近辺に測定手段2を設置しなくても、障害物52までの距離を測定可能と思われる大まかな位置に設置すれば足りるので、従来の目視と比較して大幅に労力と時間を軽減できる。
また、ステップS3の撮像・表示工程によれば、選択されたフレネルゾーンFの境界を表す曲線と、複数の障害物52を含む空間の画像が表示部4(
図1参照)に表示されるため、一目で対象障害物52aを選択し易い。
【0033】
さらに、ステップS5の測定工程によれば、表示部4に表示された対象障害物52aの最上部(
図2参照)を拡大表示し、この最上部に照準を合わせて距離計のレーザー光を発射することができるから、精度良く目的の最上部までの直線距離を測定可能である。そして、距離を測定すると同時に、対象障害物52aの最上部についての幾何学的配置G
0を測定可能なため、従来の目視と比較して極めて簡単に必要な幾何学的配置G
0を得ることができる。
加えて、ステップS6の侵入判定工程によれば、対象障害物52aの幾何学的配置G
0(緯度LAT
0、経度LON
0、楕円体高H
0)について、フレネルゾーンの範囲内に侵入しているか否かを判定できるため、測定時期に最もフレネルゾーンFに接近している障害物を選択することにより、早期かつ正確に電波伝送路における通信障害の発生を防止可能である。
【実施例3】
【0034】
本発明の第3の実施の形態に係る電波伝送路障害物確認方法について、
図5乃至
図8を用いて詳細に説明する。
図5は、実施例3に係る電波伝送路障害物確認方法の工程図である。なお、
図1乃至
図4で示した構成要素については、
図5においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図5に示すように、実施例3に係る電波伝送路障害物確認方法11は、ステップS5の測定工程の後に実施されるステップS8の樹高演算工程と、ステップS6の侵入判定工程の後に実施されるステップS9の樹高予測工程を備える。
なお、記憶部5には、樹高と、樹木種類毎の成長速度を考慮した樹木の成長予測パターン(
図8(a)参照)と、樹齢と樹木種類毎の成長速度を考慮した樹木の成長予測パターン(
図8(b)参照)と、通信アンテナが設置される地表領域の既知の平面位置P
g0と、鉛直位置V
g0からなる幾何学的配置G
gが記憶されている。
また、ステップS5の測定工程の後に、後述するステップS9-4の第1の成長予測工程の繰り返し回数を示す自然数m(m=1,2・・・)が、対象障害物52aの幾何学的配置G
0と関連付けされ、記憶部5に記憶される。なお、繰り返し回数m=1の場合は、そのまま後述するステップS9-1の樹木判定工程へ進む。さらに、ステップS9-4の第1の成長予測工程が実施される度に、繰り返し回数mは、1ずつ増加する。したがって、2回目のステップS6の侵入判定工程以降は、対象障害物52aの樹木種類と成長パターンが既知となっているために、ステップS9-1の樹木判定工程乃至ステップS9-3の成長パターン選択工程が不要なので、繰り返し回数m≠1と判断されて直接ステップS9-4の第1の成長予測工程へ進む。
【0035】
次に、ステップS8の樹高演算工程について、
図6を用いて詳細に説明する。
図6は、実施例3に係る電波伝送路障害物確認方法11を構成する樹高演算工程のデータの流れを示すフロー図である。なお、
図1乃至
図5で示した構成要素については、
図6においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図6に示すように、ステップS8の樹高演算工程は、ステップS8-1の鉛直位置取得工程と、ステップS8-2の高さ演算工程を有する。このうち、ステップS8-1の鉛直位置取得工程は、対象障害物52aの平面位置P
0(具体的には緯度LAT
0,経度LON
0)と一致する地表領域の平面位置P
g0である(具体的には緯度LAT
g0,経度LON
g0)における鉛直位置V
g0(具体的には楕円体高H
g0)を、記憶部5から取得する。
【0036】
続いて、ステップS8-2の高さ演算工程は、ステップS5の測定工程において測定された対象障害物52aの鉛直位置V0(具体的には楕円体高H0)から、取得した鉛直位置Vg0を差し引き、対象障害物52aの高さL0、すなわち本測定時期における樹高を演算する。このように、樹高を予め演算した理由は、後述するステップS9-3の成長パターン選択工程と、ステップS9-4の第1の成長予測工程において、対象障害物52aの高さL0が必要だからである。
そして、ステップ6の侵入判定工程へと進んで、対象障害物52aの最上部がフレネルゾーンFの範囲内に侵入しているか否かを判定する。
【0037】
さらに、ステップS9の樹高予測工程について、
図7及び
図8を用いて詳細に説明する。
図7は、実施例3に係る電波伝送路障害物確認方法を構成する樹高予測工程のデータの流れを示すフロー図である。
図8(a)及び
図8(b)は、それぞれ実施例3に係る電波伝送路障害物確認方法を構成する成長パターン選択工程で使用される、針葉樹の成長予測パターン及び広葉樹の成長予測パターンである。なお、
図1乃至
図6で示した構成要素については、
図7においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図7に示すように、ステップS9の樹高予測工程は、ステップS9-1の樹木判定工程と、ステップS9-2の樹木種類特定工程と、ステップS9-3の成長パターン選択工程と、ステップS9-4の第1の成長予測工程を有する。
このうち、ステップS9-1の樹木判定工程は、表示部4に表示されたステップS3の撮像・表示工程で撮像した画像を作業員が確認することで、対象障害物52aが樹木であるか否かを判定する。
次に、ステップS9-2の樹木種類特定工程は、対象障害物52aが樹木であると判定された場合に、対象障害物52aの樹木種類を特定する。この樹木種類の特定は、ステップS3の撮像・表示工程で撮像した画像データについて、画像認識技術を用いた公知のソフトウェアを利用して行われ、針葉樹の杉、檜、松、雑木、又は落葉広葉高木、常緑広葉高木のいずれであるかが特定される。
さらに、ステップS9-3の成長パターン選択工程は、ステップS8の樹高演算工程において演算された対象障害物52aの高さL
0と、ステップS9-2の樹木種類特定工程において特定された樹木種類の組み合わせに対応した成長予測パターンを記憶部5から選択する。
【0038】
続いて、ステップS9-4の第1の成長予測工程は、選択されたステップS9-3の成長予測パターンに従って所望の期間後における対象障害物52aの高さL
01を演算する。
具体的には、
図8(a)に示すように、樹高と、針葉樹の種類を考慮した成長予測パターンによれば、対象障害物52aが杉であり、その高さL
0が5mの場合、1年当たりに0.85m成長するから、1年後の高さは5.85mと予測される。また、
図8(b)に示すように、樹高と、広葉樹の種類を考慮した成長予測パターンによれば、対象障害物52aが落葉広葉高木であり、その高さL
0が15mの場合、5年後の高さは16mと予測される。このように、樹木の成長速度は樹木種類毎に異なっているものの、共通して樹高が高くなるほど鈍化してくるため、樹高と、樹木種類を考慮して樹木の成長を予測可能であることは、その精度向上という点で有効である。
さらに、ステップS9-4の第1の成長予測工程は、高さL
01の予測とともに、この高さL
01に地表領域の鉛直位置V
g0を加えて所望の期間後における対象障害物52aの鉛直位置V
01を演算する。
【0039】
そして、演算された対象障害物52aの平面位置P01、鉛直位置V01について、ステップS6の侵入判定工程が繰り返される。具体的には、緯度LAT01=緯度LATf 、かつ経度LON01=経度LONf、かつ楕円体高H01≧楕円体高Hfの下方(地表面に近い方)の境界値、の場合に、対象障害物52aの最上部がフレネルゾーンFの範囲内に侵入すると判定する。
ステップS6の侵入判定工程において、対象障害物52aがフレネルゾーンFに侵入していると判定されるとき、ステップS7の結果表示工程において、所望の期間後における対象障害物52aの(平面位置P01、鉛直位置V01、高さL01及び所望の期間が経過した測定時期T01)が、表示部4に表示される。
【0040】
実施例3に係る電波伝送路障害物確認方法11によれば、ステップS8の樹高演算工程によって、測定手段2が測定した楕円体高H0と、地表領域の楕円体高Hg0から、対象障害物52aの測定時における高さL0を求めることができる。そのため、ステップS9の樹高予測工程によって、所望の期間後における対象障害物52aの高さL01、すなわち樹高を予測することができる。
このうち、ステップS9-4の第1の成長予測工程によれば、対象障害物52aの測定時における樹高と、樹木種類を考慮した成長予測パターンに従って対象障害物52aの高さL01を演算しているから、対象障害物52aがフレネルゾーンFに侵入する測定時期T01を正確に知ることができ、早期な対処が可能となる。これ以外の電波伝送路障害物確認方法11の作用及び効果は、実施例2に係る電波伝送路障害物確認方法1の作用及び効果と同様である。
【実施例4】
【0041】
本発明の第4の実施の形態に係る電波伝送路障害物確認方法について、
図9を用いて詳細に説明する。
図9は、実施例4に係る電波伝送路障害物確認方法のデータの流れを示すフロー図である。なお、
図1乃至
図8で示した構成要素については、
図9においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図9に示すように、実施例4に係る電波伝送路障害物確認方法12は、ステップS9-1の樹木判定工程の後に実施されるステップS10の同一障害物処理工程を備える。
なお、記憶部5は、過去にステップS5の測定工程において測定された対象障害物52a(以下、過去対象障害物という。)についての、平面位置P
0p(具体的には緯度LAT
0p,経度LON
0p)、鉛直位置V
0p(具体的には楕円体高H
0p)、高さL
0p及びその測定時期T
0pが記憶されている。
また、ステップS5の測定工程の後に、ステップS9-4の第1の成長予測工程の繰り返し回数を示す自然数mの他にも、後述するステップS10-2の第2の成長予測工程の繰り返し回数を示す自然数n(n=1,2・・・)が、対象障害物52aの幾何学的配置G
0と関連付けされ、記憶部5に記憶される。
【0042】
ステップS10の同一障害物処理工程は、ステップS10-1の同一障害物判定工程と、ステップS10-2の第2の成長予測工程を有している。このうち、ステップS10-1の同一障害物判定工程は、測定時期T0pよりも新しい測定時期T0(T0>T0P)に測定された対象障害物の平面位置P0と、記憶部5に記憶された過去対障害物の平面位置P0pと、を比較して、平面位置P0が平面位置P0pと一致する場合に、測定時期T0に平面位置P0に存在する対象障害物が、測定時期T0pに平面位置P0pに存在した過去対象障害物と同一であると判定する。
また、ステップS10-2の第2の成長予測工程は、対象障害物52aの測定時期T0及びこの測定時期T0に測定された対象障害物の高さL0と、過去対象障害物の測定時期T0p及びこの測定時期T0pに測定された高さL0pと、を用いて、所望の期間後の測定時期T02(T02>T0)における対象障害物52aの高さL02を演算するとともに、この高さL02に地表領域の鉛直位置Vg0を加えて所望の期間後における対象障害物の鉛直位置V02を演算する。
具体的には、所望の期間後の対象障害物52aの高さL02=高さL0+[(高さL0-高さL0p)/(測定時期T0-測定時期T0p)]×(測定時期T02-測定時期T0)、所望の期間後の鉛直位置V02=高さL02+鉛直位置Vg0で求められる。なお、所望の期間後の平面位置P02=測定時期T0における平面位置P0=測定時期T0pにおける平面位置P0pである。
【0043】
ステップS10-1の同一障害物判定工程においては、対象障害物52aが過去対象障害物と同一でないと判定された場合に、ステップS9-2の樹木種類特定工程乃至ステップS9-4の第1の成長予測工程が実施される。
一方、ステップS10-1の同一障害物判定工程において、対象障害物52aが過去対象障害物と同一であると判定された場合に、ステップS9-2の樹木種類特定工程乃至ステップS9-4の第1の成長予測工程の代わりに、ステップS10-2の第2の成長予測工程が実施される。すなわち、ステップS9-4の第1の成長予測工程、又はステップS10-2の第2の成長予測工程のうちのいずれか一方が実施される。
よって、ステップS9-4の第1の成長予測工程、又はステップS10-2の第2の成長予測工程が実施された場合に、それぞれ、(平面位置P01、ステップS9-4の第1の成長予測工程において演算された鉛直位置V01)、又は(平面位置P02、ステップS10-2の第2の成長予測工程において演算された鉛直位置V02)について、ステップS6の侵入判定工程が繰り返される。
【0044】
ステップS6の侵入判定工程の後、ステップS10-2の第2の成長予測工程が実施されると、繰り返し回数nの値は増加して2となり、以降、ステップS10-2の第2の成長予測工程が実施される度に繰り返し回数nの値は1ずつ増加する。したがって、1回目のステップS6の侵入判定工程を実施後にステップS10-2の第2の成長予測工程が実施されると、以降、ステップS9-4の第1の成長予測工程が実施されることはなく、繰り返し回数n≠1と判断されてステップS10-2の第2の成長予測工程と、ステップS6の侵入判定工程が繰り返される。
また、実施例3に係る電波伝送路障害物確認方法11と同様に、ステップS9-4の第1の成長予測工程が実施される度に繰り返し回数mの値は1ずつ増加する。したがって、1回目のステップS6の侵入判定工程を実施後にステップS9-4の第1の成長予測工程が実施されると、以降、ステップS10-2の第2の成長予測工程が実施されることはなく、繰り返し回数m≠1と判断されてステップS9-4の第1の成長予測工程と、ステップS6の侵入判定工程が繰り返される。
【0045】
ステップS6の侵入判定工程が実施されることによって、対象障害物52aがフレネルゾーンFに侵入していると判定されるとき、表示部4において、所望の期間後における対象障害物52aの、(平面位置P01、鉛直位置V01、高さL01及び測定時期T01)、又は、(平面位置P02、鉛直位置V02、高さL02及び測定時期T02)が表示される。
したがって、電波伝送路障害物確認方法12によれば、最新の対象障害物52aが、過去の過去対象障害物と同一であると判定することが可能であり、その場合には実測した過去対象障害物の高さL0p等を用いて、所望の期間後における対象障害物の高さL02を演算するから、より正確に将来的に侵入する測定時期T02を予測できる。これ以外の電波伝送路障害物確認方法12の作用及び効果は、実施例3に係る電波伝送路障害物確認方法11の作用及び効果と同様である。
【0046】
なお、本発明に係る電波伝送路障害物確認装置1及び電波伝送路障害物確認方法10~12は、実施例1~4に示すものに限定されない。例えば、測定手段2は、制御部3等と一体的に構成されるほか、無線通信回線を介して別体的に構成されても良い。あるいは幾何学的配置G0は測定手段2ではなく制御部3において演算されても良く、例えばVincenty法を用いて演算されても良い。また、幾何学的配置G0,Gfは、地理座標(緯度、経度、楕円体高)の代わりに、三次元直交座標で表されても良い。さらに、ステップS9-1の樹木判定工程は、作業員が行う代わりに、画像認識技術を用いて自動的に実施されても良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、通信アンテナ間の電波伝送の際に障害となる障害物を、容易かつ早期に発見可能な電波伝送路障害物確認装置およびこれを用いた電波伝送路障害物確認方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…電波伝送路障害物確認装置 2…測定手段 2a…撮像部 2b…有線通信回線 3…制御部 4…表示部 5…記憶部 6…パーソナルコンピュータ 10~12…電波伝送路障害物確認方法 50,51…通信アンテナ 52…障害物 52a…対象障害物