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特許7198482糖化合物、糖化合物の製造方法、ENGase活性検出用組成物、新規ENGaseのスクリーニング方法、及びENGase活性阻害剤のスクリーニング方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】糖化合物、糖化合物の製造方法、ENGase活性検出用組成物、新規ENGaseのスクリーニング方法、及びENGase活性阻害剤のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 15/04 20060101AFI20221222BHJP
   C07H 5/06 20060101ALI20221222BHJP
   C07H 9/02 20060101ALI20221222BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
C07H15/04 E CSP
C07H5/06
C07H9/02
G01N21/64 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018188693
(22)【出願日】2018-10-03
(65)【公開番号】P2020055786
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 一郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 希実
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される糖化合物であって、
【化1】

(式(I)中、Rはそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R’はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又はアミノ基の保護基を、R”はそれぞれ独立して単結合、第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、アミド基(-NR’CO-)、オキシ基(-O-)、カルボニル基(-CO-)、オキシカルボニル基(-OCO-)、又は第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、オキシ基(-O-)、及びカルボニル基(-CO-)からなる群より選択される少なくとも1種の基を含んでいてもよい炭素原子数1~6の2価の炭化水素基を、Z及びZは何れか一方が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じる蛍光基を、もう一方が前記蛍光基に対応する消光基を表す。)
前記ヒドロキシル基の保護基は、メチル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、tert-ブチル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、又はtert-ブチルジフェニルシリル基であり、
前記アミノ基の保護基は、t-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、アセチル基、トリフルオロアセチル基(Tfa)、p-トルエンスルホニル基(Ts)、又は2-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)であり、
前記蛍光基と前記消光基の組合せが、下記(i)~(iv)の何れかである、糖化合物。
(i)下記式(d-1)で表される蛍光基と下記式(a-1)で表される消光基の組合せ
【化2】

(式(d-1)中、R’は水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又は前記アミノ基の保護基を表す。)
(ii)下記式(d-2)で表される蛍光基と下記式(a-1)で表される消光基の組合せ
【化3】

(式(d-2)中、Rは水素原子又は前記ヒドロキシル基の保護基を表す。)
(iii)下記式(d-3)で表される蛍光基と下記式(a-1)で表される消光基の組合せ
【化4】

(式(d-3)中、Rは水素原子又は前記ヒドロキシル基の保護基を、R’は水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又は前記アミノ基の保護基を表す。)
(iv)下記式(d-4)で表される蛍光基と下記式(a-2)で表される消光基の組合せ
【化5】

(式(d-4)及び(a-2)中、R’はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又は前記アミノ基の保護基を表す。)
【請求項2】
請求項に記載の糖化合物を含むエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)活性検出用組成物。
【請求項3】
下記式(IV)で表される化合物から下記式(I)で表される化合物を生成する反応工程を含む、糖化合物の製造方法であって、
【化6】

(式(I)及び(IV)中、Rはそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R’はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又はアミノ基の保護基を、R”はそれぞれ独立して単結合、第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、アミド基(-NR’CO-)、オキシ基(-O-)、カルボニル基(-CO-)、オキシカルボニル基(-OCO-)、又は第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、オキシ基(-O-)、及びカルボニル基(-CO-)からなる群より選択される少なくとも1種の基を含んでいてもよい炭素原子数1~6の2価の炭化水素基を、Z及びZは何れか一方が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じる蛍光基を、もう一方が前記蛍光基に対応する消光基を表す。)
前記ヒドロキシル基の保護基は、メチル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、tert-ブチル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、又はtert-ブチルジフェニルシリル基であり、
前記アミノ基の保護基は、t-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、アセチル基、トリフルオロアセチル基(Tfa)、p-トルエンスルホニル基(Ts)、又は2-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)であり、
前記蛍光基と前記消光基の組合せが、下記(i)~(iv)の何れかである、糖化合物の製造方法。
(i)下記式(d-1)で表される蛍光基と下記式(a-1)で表される消光基の組合せ
【化7】

(式(d-1)中、R’は水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又は前記アミノ基の保護基を表す。)
(ii)下記式(d-2)で表される蛍光基と下記式(a-1)で表される消光基の組合せ
【化8】

(式(d-2)中、Rは水素原子又は前記ヒドロキシル基の保護基を表す。)
(iii)下記式(d-3)で表される蛍光基と下記式(a-1)で表される消光基の組合せ
【化9】

(式(d-3)中、Rは水素原子又は前記ヒドロキシル基の保護基を、R’は水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又は前記アミノ基の保護基を表す。)
(iv)下記式(d-4)で表される蛍光基と下記式(a-2)で表される消光基の組合せ
【化10】

(式(d-4)及び(a-2)中、R’はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又は前記アミノ基の保護基を表す。)
【請求項4】
下記式(II-1)で表される化合物と下記式(III-1)で表される化合物を反応させて下記式(IV-1)で表される化合物を生成する糖転移反応工程と、
【化11】

前記式(IV-1)で表される化合物から前記式(IV)で表される化合物を生成する反応工程とをさらに含む、請求項3に記載の糖化合物の製造方法。
【請求項5】
被検化合物をエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)の候補に接触させる接触工程、及び
前記被検化合物を接触させたエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)の候補に請求項1に記載の糖化合物を接触させて、前記糖化合物の分解活性を確認する活性確認工程
を含む、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)のスクリーニング方法。
【請求項6】
被検化合物をエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)に接触させる接触工程、及び
前記被検化合物を接触させたエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)に請求項1に記載の糖化合物を接触させて、前記糖化合物の分解活性を確認する活性確認工程
を含む、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)活性阻害剤のスクリーニング方法。
【請求項7】
下記式(I´)で表される糖化合物であって、
【化12】

(式(I´)中、Rはそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R’はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又はアミノ基の保護基を、R”はそれぞれ独立して単結合、第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、アミド基(-NR’CO-)、オキシ基(-O-)、カルボニル基(-CO-)、オキシカルボニル基(-OCO-)、又は第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、オキシ基(-O-)、及びカルボニル基(-CO-)からなる群より選択される少なくとも1種の基を含んでいてもよい炭素原子数1~6の2価の炭化水素基を、Rは水素原子、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルラクトサミン、又はシアリルラクトサミンを、Rは水素原子、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルラクトサミン、又はシアリルラクトサミンを、Z及びZは何れか一方が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じる蛍光基を、もう一方が前記蛍光基に対応する消光基を表す。)
前記ヒドロキシル基の保護基は、メチル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、tert-ブチル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、又はtert-ブチルジフェニルシリル基であり、
前記アミノ基の保護基は、t-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、アセチル基、トリフルオロアセチル基(Tfa)、p-トルエンスルホニル基(Ts)、又は2-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)であり、
前記蛍光基と前記消光基の組合せが、下記(i)~(iv)の何れかである、糖化合物。
(i)下記式(d-1)で表される蛍光基と下記式(a-1)で表される消光基の組合せ
【化13】

(式(d-1)中、R’は水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又は前記アミノ基の保護基を表す。)
(ii)下記式(d-2)で表される蛍光基と下記式(a-1)で表される消光基の組合せ
【化14】

(式(d-2)中、Rは水素原子又は前記ヒドロキシル基の保護基を表す。)
(iii)下記式(d-3)で表される蛍光基と下記式(a-1)で表される消光基の組合せ
【化15】

(式(d-3)中、Rは水素原子又は前記ヒドロキシル基の保護基を、R’は水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又は前記アミノ基の保護基を表す。)
(iv)下記式(d-4)で表される蛍光基と下記式(a-2)で表される消光基の組合せ
【化16】

(式(d-4)及び(a-2)中、R’はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又は前記アミノ基の保護基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖化合物に関し、より詳しくはエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)活性の検出に利用することができる糖化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
「ペプチドN-グリカナーゼ(PNGase)」や「エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)」は、真核細胞の細胞質に広く存在する糖鎖脱離酵素であり、小胞体における糖タンパク質の品質管理機構において重要な役割を担っていることが知られている。近年、PNGase遺伝子(Ngly1)の変異に基づいた遺伝子疾患「Ngly1欠損症」の存在も明らかになり(非特許文献1参照)、生育遅延、四肢の筋力低下、不随意運動、肝機能異常、脳波異常等の重篤な症状を呈することも明らかになっている。また、PNGaseの非存在下において、ENGaseがN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を1つだけ残した「N-GlcNAcタンパク質」を生成して、これが凝集体として蓄積する現象が確認されており(非特許文献2参照)、この現象がNgly1欠損症の病態発現に関与しているものと考えられている。一方で、PNGaseとENGaseの両方を欠いた細胞において、モデルタンパク質が正常に分解されたことも報告されており、Ngly1欠損症においてはENGase活性を阻害することでその病態を改善できるのではないかと期待されている。
【0003】
抗体医薬品などのタンパク質性のバイオ医薬品のほとんどは糖タンパク質である。タンパク質の構造は遺伝子によって制御されるため不均一性はないが、タンパク質上の糖鎖は酵素反応の連携によって制御されるために不均一性が生じることが知られている。医薬品の均一性、また抗体医薬品では抗体上に結合した糖鎖の構造によってその活性が100倍以上も異なることが示されており(例えば、協和発酵キリンのポテリジェント技術)、タンパク質上の糖鎖構造を均一化する必要がある。近年、タンパク質上の糖鎖を均一化する方法としてENGaseによる糖鎖モデリング法が注目されている(非特許文献3、非特許文献4参照)。すなわち、ENGaseの糖加水分解活性によりタンパク質上から糖鎖を切断後、タンパク質上に残されたGlcNAc残基に対して、糖加水分解活性を減じたENGase変異体により、糖鎖をタンパク質上に転移させる糖転移反応によって任意の糖鎖構造をタンパク質上に導入できるようになっている。
【0004】
しかし、タンパク質上からENGaseによって糖鎖を切断する1段階目の反応を触媒
する酵素は限定されている。特に抗体上の糖鎖に多く見られるフコース残基が結合した糖鎖に作用するENGaseは限られており、効率的かつ様々な非還元末端側糖鎖構造に対応したフコースつき糖鎖を切断する新規のENGase探索が求められている。しかしENGaseの活性測定は、糖タンパク質や糖プペプチドを基質として糖鎖切断反応をSDS-PAGEやHPLCによって追跡する必要があり、網羅的な酵素探索は困難であった。また、ENGaseの基質特異性をタンパク質工学的に拡張する試み(非特許文献3参照)においても同様に、変異体スクリーニングが問題となっていた。
【0005】
このような背景のもと、フコースが結合した糖鎖構造に作用するENGase活性を簡易的に検出することができれば、抗体医薬品の修飾に有効な新規ENGaseの探索が可能になる。本発明者らは、ENGase活性を簡易的に検出することができれば、ENGase活性阻害剤等の開発に役立つ有効な手段になり得ると考え、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じる蛍光基と消光基を特定の五糖構造に導入した糖化合物を開発し、既に報告している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-222590号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Need, A. C., et al., J. Med. Genet. 2012, 49, 353-361.
【文献】Chengcheng Huang, et al., “Endo-beta-N-acetylglucosaminidase forms N-GlcNAc protein aggregates during ER-associated degradation in Ngly1-defective cells”, PNAS. 2015, 112, 1398-1403.
【文献】J. Biol. Chem., 2016, Vol. 291, 23305-23317.
【文献】J. Biol. Chem., 2016, Vol291, 9356-9370
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ENGase活性の検出に利用することができる新規な化合物や、新規のENGaseをスクリーニングする方法、ENGase活性阻害剤のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じる蛍光基と消光基を特定の多糖構造に導入した糖化合物が、ENGase活性の検出に有効であることを見出し、本発明を完成させた。本発明は、以下の通りである。
【0010】
〔1〕下記式(I)で表される糖化合物。
【化1】
(式(I)中、Rはそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R’はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又はアミノ基の保護基を、R”はそれぞれ独立して単結合、第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、アミド基(-NR’CO-)、オキシ基(-O-)、カルボニル基(-CO-)、オキシカルボニル基(-OCO-)、又は第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、オキシ基(-O-)、及びカルボニル基(-CO-)からなる群より選択される少なくとも1種の基を含んでいてもよい炭素原子数1~6の2価の炭化水素基を、Z及びZは何れか一方が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じる蛍光基を、もう一方が前記蛍光基に対応する消光基を表す。)
〔2〕前記蛍光基と前記消光基の組合せが、下記(i)~(iv)の何れかである、〔1〕に記載の糖化合物。
(i)下記式(d-1)で表される蛍光基と下記式(a-1)で表される消光基の組合せ
【化2】
(式(d-1)中、R’は水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又はアミノ基の保護基を表す。)
(ii)下記式(d-2)で表される蛍光基と下記式(a-1)で表される消光基の組合せ
【化3】
(式(d-2)中、Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を表す。)
(iii)下記式(d-3)で表される蛍光基と下記式(a-1)で表される消光基の組合せ
【化4】
(式(d-3)中、Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R’は水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又はアミノ基の保護基を表す。)
(iv)下記式(d-4)で表される蛍光基と下記式(a-2)で表される消光基の組合せ
【化5】
(式(d-4)及び(a-2)中、R’はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又はアミノ基の保護基を表す。)
〔3〕〔1〕又は〔2〕に記載の糖化合物を含むエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)活性検出用組成物。
〔4〕下記式(IV)で表される化合物から下記式(I)で表される化合物を生成する反応工程を含む、糖化合物の製造方法。
【化6】
(式(I)及び(IV)中、Rはそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R’はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又はアミノ基の保護基を、R”はそれぞれ独立して単結合、第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、アミド基(-NR’CO-)、オキシ基(-O-)、カルボニル基(-CO-)、オキシカルボニル基(-OCO-)、又は第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、オキシ基(-O-)、及びカルボニル基(-CO-)からなる群より選択される少なくとも1種の基を含んでいてもよい炭素原子数1~6の2価の炭化水素基を、Z及びZは何れか一方が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じる蛍光基を、もう一方が前記蛍光基に対応する消光基を表す。)
〔5〕下記式(II-1)で表される化合物と下記式(III-1)で表される化合物を反応させて下記式(IV-1)で表される化合物を生成する糖転移反応工程を含む、糖化合物の製造方法。
【化7】
〔6〕被検化合物をエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)の候補に接触させる接触工程、及び
前記被検化合物を接触させたエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)の候補に下記式(I)で表される糖化合物を接触させて、前記糖化合物の分解活性を確認する活性確認工程
を含む、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)のスクリーニング方法。
【化8】
(式(I)中、Rはそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R’はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又はアミノ基の保護基を、R”はそれぞれ独立して単結合、第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、アミド基(-NR’CO-)、オキシ基(-O-)、カルボニル基(-CO-)、オキシカルボニル基(-OCO-)、又は第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、オキシ基(-O-)、及びカルボニル基(-CO-)からなる群より選択される少なくとも1種の基を
含んでいてもよい炭素原子数1~6の2価の炭化水素基を、Z及びZは何れか一方が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じる蛍光基を、もう一方が前記蛍光基に対応する消光基を表す。)
〔7〕被検化合物をエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)に接触させる接触工程、及び
前記被検化合物を接触させたエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)に下記式(I)で表される糖化合物を接触させて、前記糖化合物の分解活性を確認する活性確認工程
を含む、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)活性阻害剤のスクリーニング方法。
【化9】
(式(I)中、Rはそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R’はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又はアミノ基の保護基を、R”はそれぞれ独立して単結合、第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、アミド基(-NR’CO-)、オキシ基(-O-)、カルボニル基(-CO-)、オキシカルボニル基(-OCO-)、又は第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、オキシ基(-O-)、及びカルボニル基(-CO-)からなる群より選択される少なくとも1種の基を含んでいてもよい炭素原子数1~6の2価の炭化水素基を、Z及びZは何れか一方が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じる蛍光基を、もう一方が前記蛍光基に対応する消光基を表す。)
〔8〕下記式(I´)で表される糖化合物。
【化10】
(式(I´)中、Rはそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R’はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又はアミノ基の保護基を、R”はそれぞれ独立して単結合、第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、アミド基(-NR’CO-)、オキシ基(-O-)、カルボニル基(-CO-)、オキシカルボニル基(-OCO-)、又は第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、オキシ基(-O-)、及びカルボニル基(-CO-)からなる群より選択される少なくとも1種の基を含んでいてもよい炭素原子数1~6の2価の炭化水素基を、Rは水素原子、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルラクトサミン、又はシアリルラクトサミンを、Rは水素原子、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルラクトサミン、又はシアリルラクトサミンを、Z及びZは何れか一方が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じる蛍光基を、もう一方が前記蛍光基に対応する消光基を表す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ENGase活性を簡易的に検出することができ、新規のENGaseやENGase活性阻害剤等を効率的にスクリーニングすることができる。
特にフコースが結合した糖鎖に作用するENGase活性を簡易的に検出することができ、フコースが結合した糖鎖に作用する新規のENGaseや、フコースが結合した糖鎖に作用するENGaseの活性阻害剤等を効率的にスクリーニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1で得られた化合物9のHNMRのチャートである。
図2】実施例1で得られた化合物9のHNMRのチャートである。
図3】実施例1で得られた化合物9の13CNMRのチャートである。
図4】実施例1で得られた化合物9の13CNMRのチャートである。
図5】実施例1で得られた化合物12のHNMRのチャートである。
図6】実施例1で得られた化合物12のHNMRのチャートである。
図7】実施例1で得られた化合物12の13CNMRのチャートである。
図8】実施例1で得られた化合物12の13CNMRのチャートである。
図9】実施例1で得られた化合物13のHNMRのチャートである。
図10】実施例1で得られた化合物13のHNMRのチャートである。
図11】実施例1で得られた化合物13の13CNMRのチャートである。
図12】実施例1で得られた化合物13の13CNMRのチャートである。
図13】実施例1で得られた化合物14のHNMRのチャートである。
図14】実施例1で得られた化合物14のHNMRのチャートである。
図15】実施例1で得られた化合物14の13CNMRのチャートである。
図16】実施例1で得られた化合物14の13CNMRのチャートである。
図17】実施例1で得られた化合物15のHNMRのチャートである。
図18】実施例1で得られた化合物15のHNMRのチャートである。
図19】実施例1で得られた化合物15の13CNMRのチャートである。
図20】実施例1で得られた化合物15の13CNMRのチャートである。
図21】実施例1で得られた化合物2のHNMRのチャートである。
図22】実施例1で得られた化合物2のHNMRのチャートである。
図23】実施例1で得られた化合物2の13CNMRのチャートである。
図24】実施例1で得られた化合物2の13CNMRのチャートである。
図25】実施例1で得られた化合物16のHNMRのチャートである。
図26】実施例1で得られた化合物16のHNMRのチャートである。
図27】実施例1で得られた化合物16の13CNMRのチャートである。
図28】実施例1で得られた化合物16の13CNMRのチャートである。
図29】実施例1で得られた化合物17のHNMRのチャートである。
図30】実施例1で得られた化合物17のHNMRのチャートである。
図31】実施例1で得られた化合物18のHNMRのチャートである。
図32】実施例1で得られた化合物18のHNMRのチャートである。
図33】実施例1で得られた化合物1のHNMRのチャートである。
図34】実施例1で得られた化合物1のHNMRのチャートである。
図35】実施例2で行った反応混合液のHPLCクロマトグラムである。図中の数字19で示す矢印は化合物19のピークを示し、数字21で示す矢印は化合物21のピークを示す。
図36】実施例2で行った反応混合液のHPLCクロマトグラムである。図中の数字22で示す矢印は化合物22のピークを示し、数字24で示す矢印は化合物24のピークを示す。
図37】実施例2で行った反応混合液のHPLCの結果について、reaction time (min)と加水分解率(%)の関係を示す。
図38】実施例2で行った酵素反応をマイクロプレートリーダーにより追跡した結果である。
図39】実施例2で行った酵素反応をマイクロプレートリーダーにより追跡した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の詳細を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
また、本明細書では六糖構造の糖化合物を例にして記載する部分もあるが、それは一例に過ぎず、七糖構造の糖化合物や八糖構造の糖化合物、九糖構造の糖化合物、十糖構造の糖化合物であってもよい。例えば、後述する式(I´)で表される化合物が挙げられる。
【0014】
<糖化合物>
本発明の一態様である糖化合物(以下、「本発明の糖化合物」と略す場合がある。)は、下記式(I)で表される化合物である。
【化11】
(式(I)中、Rはそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R’はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又はアミノ基の保護基を、R”はそれぞれ独立して単結合、第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、アミド基(-NR’CO-)、オキシ基(-O-)、カルボニル基(-CO-)、オキシカルボニル基(-OCO-)、又は第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、オキシ基(-O-)、及びカルボニル基(-CO-)からなる群より選択される少なくとも1種の基を含んでいてもよい炭素原子数1~6の2価の炭化水素基を、Z及びZは何れか一方が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じる蛍光基を、もう一方が前記蛍光基に対応する消光基を表す。)
【0015】
本発明者らは、ENGaseが式(I)中の六糖構造に対して、特定の位置を選択的に切断する特異性があることを見出しており、切断によって分離される位置に蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じる蛍光基(ドナー)と消光基(アクセプター)を配置した糖化合物を合成して、これがFRETプローブとして実際に利用できることを確認した。例えば、下記式で表される反応中の糖化合物は、式(I)のZの位置に蛍光基としてN-メチルアントラニル基を、式(I)のZの位置に消光基として2,4-ジニトロフェニル基を有しており、ENGaseによって糖鎖が切断されると、蛍光基と消光基の距離が離れて蛍光基の蛍光発光の強度変化等が生じるため、ENGase活性が検出できる。
【化12】
なお、「蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じる蛍光基」と「蛍光基に対応する消光基」とは、蛍光基と消光基とが蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を生じる任意の組合せであることを意味する。
【0016】
本発明の糖化合物は、下記式(I)で表される化合物であるが、式(I)に該当するものであれば具体的種類は特に限定されず、使用目的等にあわせて適宜選択することができる。
【化13】
式(I)中のRは、それぞれ独立して「水素原子」又は「ヒドロキシル基の保護基」を表しているが、ヒドロキシル基の保護基としては、メチル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、tert-ブチル基等のエーテル系保護基;アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等のアシル系保護基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-
ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基等のシリルエーテル系保護基等が挙げられる。
【0017】
式(I)中のR’は、それぞれ独立して「水素原子」、「炭素原子数1~6の炭化水素基」、又は「アミノ基の保護基」を表しているが、「炭化水素基」とは直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素-炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよい炭素原子及び水素原子のみからなる基を意味するものとする。
炭化水素基としては、メチル基(-CH、-Me)、エチル基(-C、-Et)、n-プロピル基(-、-Pr)、i-プロピル基(-、-Pr)、n-ブチル基(-、-Bu)、t-ブチル基(-、-Bu)、n-ペンチル基(-11)、n-ヘキシル基(-13,-Hex)、シクロヘキシル基(-11,-Cy)、フェニル基(-C,-Ph)等が挙げられる。
アミノ基の保護基としては、t-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)等のアルコキシカルボニル系保護基;アセチル基、トリフルオロアセチル基(Tfa)等のアシル系保護基;p-トルエンスルホニル基(Ts)、2-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)等のアルキル(アリール)スルホニル基等が挙げられる。
【0018】
式(I)中のR”は、それぞれ独立して「単結合」、「第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)」、「アミド基(-NR’CO-)」、「オキシ基(-O-)」、「カルボニル基(-CO-)」、「オキシカルボニル基(-OCO-)」、又は「第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、オキシ基(-O-)、及びカルボニル基(-CO-)からなる群より選択される少なくとも1種の基を含んでいてもよい炭素原子数1~6の2価の炭化水素基」を表しているが、「単結合」とは、下記式で表される構造のように後述するZやZが糖の六員環に直接結合していることを意味する。
【化14】
「第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)」、「アミド基(-NR’CO-)」、「オキシ基(-O-)」、「カルボニル基(-CO-)」、「オキシカルボニル基(-OCO-)」とは、下記式で表される構造のように後述するZやZがこれらの基を介して糖の六員環に結合していることを意味する。
【化15】
「2価の炭化水素基」とは、2つの結合位置を有する炭化水素基を意味し、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素-炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよいことを意味する。また、「第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、オキシ基(-O-)、及びカルボニル基(-CO-)からなる群より選択される少なくとも1種の基を含んでいてもよい」とは、下記式で表される構造のように、炭化水素基の炭素骨格の内部及び/又は末端にこれらの基を含んでもよいことを意味する。
【化16】
【0019】
及びZは「何れか一方が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じる蛍光基」を、「もう一方が前記蛍光基に対応する消光基」を表しているが、蛍光基と消光基の組合せは、Bachem社等の「FRET SUBSTRATES」やAngew. Chem. Int. Ed. 2006,45,4562-4588.に記載されている構造等が挙げられる。この中でも、蛍光基と消光基の組合せとしては、下記(i)~(iv)のものが好ましい。
(i)下記式(d-1)で表される蛍光基と下記式(a-1)で表される消光基の組合せ
【化17】
(式(d-1)中、R’は水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又はアミノ基の保護基を表す。)
(ii)下記式(d-2)で表される蛍光基と下記式(a-1)で表される消光基の組合せ
【化18】
(式(d-2)中、Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を表す。)
(iii)下記式(d-3)で表される蛍光基と下記式(a-1)で表される消光基の組合せ
【化19】
(式(d-3)中、Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R’は水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又はアミノ基の保護基を表す。)
(iv)下記式(d-4)で表される蛍光基と下記式(a-2)で表される消光基の組合せ
【化20】
(式(d-4)及び(a-2)中、R’はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又はアミノ基の保護基を表す。)
なお、式(d-1)~(d-4)及び式(a-1)及び(a-2)中のRとR’としては、前述のものと同様のものが挙げられる。
【0020】
本発明の糖化合物としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化21】
【0021】
<糖化合物の製造方法1>
本発明の糖化合物の製造方法は、特に限定されず、公知の有機合成反応、化学酵素法等を組み合せて製造してもよいが、下記式(IV)で表される化合物から下記式(I)で表される化合物を生成する反応工程を含む方法によって製造することが好ましい。
【化22】
(式(I)及び(IV)中、Rはそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R’はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又はアミノ基の保護基を、R”はそれぞれ独立して単結合、第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、アミド基(-NR’CO-)、オキシ基(-O-)、カルボニル基(-CO-)、オキシカルボニル基(-OCO-)、又は第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、オキシ基(-O-)、及びカルボニル基(-CO-)からなる群より選択される少なくとも1種の基を含んでいてもよい炭素原子数1~6の2価の炭化水素基を、Z及びZは何れか一方が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じる蛍光基を、もう一方が前記蛍光基に対応する消光基を表す。)
【0022】
上記反応工程は、通常溶媒中で行われる。溶媒としては、リン酸緩衝液等の緩衝液(pH5~7)、30%以下のジメチルスルホキシド(DMSO)水溶液、30%以下のメタノール水溶液、30%以下のアセトン水溶液等が挙げられる。
また、上記反応工程の詳細としては、例えば、式(IV)で表される化合物として下記化合物18を、式(I)で表される化合物として下記化合物1を想定した場合、例えば、化合物18をDMSOに溶解し、DMAPを加えた後、N-メチルアントラニル酸、HATUを加え室温で撹拌し、洗浄、精製等をして化合物1を得ることができる。
【化23】
【化24】
【0023】
上記反応工程に使用する式(IV)で表される化合物の調製方法は、特に限定されないが、例えば、式(IV)で表される化合物として化合物18を想定した場合には、下記式で表される反応経路を辿る方法が挙げられる。
【化25-1】
【化25-2】
【0024】
<糖化合物の製造方法2>
本発明の一態様は、下記式(II-1)で表される化合物と下記式(III-1)で表される化合物を反応させて下記式(IV-1)で表される化合物を生成する糖結合反応工程を含む、糖化合物の製造方法である。
尚、本製造方法の好ましい一態様は、前記<糖化合物の製造方法1>に記載した、化合物2と化合物3を反応させて化合物16を生成する糖結合反応工程を含む、糖化合物の製造方法である。すなわち、当該製造方法で製造される糖化合物は、本発明の糖化合物を製造する際の中間生成物ということもできる。
【化26】
上記反応工程は、通常溶媒中で行われる。溶媒としては、ジクロロエタンやクロロホルム、トルエンなどの有機溶媒等が挙げられる。
【0025】
また、上記反応工程の詳細としては、式(II-1)で表される化合物として下記化合物2を、式(III-1)で表される化合物として下記化合物3を、式(IV-1)で表される化合物として下記化合物16を想定した場合、例えば、化合物3と化合物2をジクロロメタンに溶解し、乾燥モルキュラーシーブズ、トリフルオロメタンスルホン酸銀、ハフノセンジクロリドへ、キャノラーを用いて加え、低温で撹拌し、トリエチルアミンを用いて反応を終了し、希釈や濾過、洗浄、精製等をして化合物16を得ることができる。
【化27】
【0026】
上記反応工程に使用する式(II-1)で表される化合物の調製方法は、特に限定されないが、例えば、式(II-1)で表される化合物として下記化合物2を想定した場合には、下記式で表される反応経路を辿る方法が挙げられる。
【化28-1】
【化28-2】
【0027】
上記反応工程に使用する式(III-1)で表される化合物の調製方法は、特に限定されないが、例えば、上記式(III-1)で表される化合物として下記化合物3を想定した場合には、下記式で表される反応経路を辿る方法が挙げられる。
【化29】
【0028】
<エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)活性阻害剤のスクリーニング方法>
ENGase活性阻害剤は、抗体医薬品の糖鎖モデリングを行う際、ENGaseで抗体上の糖鎖を切断、反応が進行したのち、残った酵素活性を完全に阻害するのに有用である。。本発明の糖化合物は、ENGase活性を簡易的に検出することができるため、被検化合物に接触させたENGaseを本発明の糖化合物と接触させて、本発明の糖化合物の分解活性を確認することで、ENGase活性阻害剤を効率的にスクリーニングすることができる。なお、被検化合物をENGaseに接触させる接触工程(以下、「接触工程」と略す場合がある。)、及び被検化合物を接触させたENGaseに式(I)で表される糖化合物を接触させて、糖化合物の分解活性を確認する活性確認工程(以下、「活性確認工程」と略す場合がある。)を含むENGase活性阻害剤のスクリーニング方法も本発明の一態様である。
【0029】
接触工程は、被検化合物をENGaseに接触させる工程である。接触させる被検化合物の質量は、ENGaseの1ngに対して、通常7.5μg以上、好ましくは15μg以上であり、通常150μg以下、好ましくは75μg以下である。
【0030】
活性確認工程は、被検化合物を接触させたENGaseに式(I)で表される糖化合物を接触させて、糖化合物の分解活性を確認する工程である。接触させる式(I)で表される糖化合物の質量は、ENGaseの1ngに対して、通常3μg以上、好ましくは30μg以上であり、通常500μg以下、好ましくは300μg以下である。
【0031】
活性確認工程における式(I)で表される糖化合物の分解活性の確認方法は、特に限定されないが、式(I)で表される糖化合物の蛍光基に基づいた蛍光発光の強度変化を観測する方法、式(I)で表される糖化合物の消光基に基づいた紫外線(UV)の吸収波長等を観測する方法が挙げられる。例えば、被検化合物を接触させていないENGaseの糖化合物の分解活性と、被検化合物を接触させたENGaseの糖化合物の分解活性を比較し、被検化合物を接触させたENGaseの方が糖化合物の分解活性が劣っていた場合に、被検化合物はENGase活性の阻害作用がある(ENGase活性阻害剤である。)
と判断することができる。
【0032】
本発明のスクリーニング方法が対象とするENGaseとしては、Nature Communication, 2018, 9. pp. 1874や、J. Biol. Chem., 2016, Vol291, 23305-23317.に記載のもの
が挙げられ、具体的にはEndo-F3やEndo-MW251N等のフコースが結合した抗体上の糖鎖などに作用するENGaseが挙げられる。
【0033】
<エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)のスクリーニング方法>
本発明の一態様は、被検化合物をエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)の候補に接触させる接触工程、及び前記被検化合物を接触させたエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)の候補に式(I)で表される糖化合物を接触させて、前記糖化合物の分解活性を確認する活性確認工程を含む、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)のスクリーニング方法である。
【0034】
本発明の糖化合物は、ENGase活性を簡易的に検出することができるため、ENGaseの候補を本発明の糖化合物と接触させて、本発明の糖化合物の分解活性を確認することで、新規のENGaseを効率的にスクリーニングすることができる。
その他、本態様における接触工程及び活性確認工程の態様については、前記<エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)活性阻害剤のスクリーニング方法>における接触工程及び活性確認工程の態様を援用する。ただし、活性確認工程における式(I)で表される糖化合物の分解活性の確認方法としては、例えば、被検化合物を接触させたENGaseの候補の糖化合物の分解活性を測定し、対照に対して有意な活性を示した場合には、ENGaseとして有用である、新規のENGaseであるなどと判断することができる。
【0035】
本発明の他の一態様である糖化合物は、下記式(I´)で表される化合物である。
【化30】
(式(I´)中、Rはそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R’はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、又はアミノ基の保護基を、R”はそれぞれ独立して単結合、第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、アミド基(-NR’CO-)、オキシ基(-O-)、カルボニル基(-CO-)、オキシカルボニル基(-OCO-)、又は第二級若しくは第三級アミノ基(-NR’-)、オキシ基(-O-)、及びカルボニル基(-CO-)からなる群より選択される少なくとも1種の基を含んでいてもよい炭素原子数1~6の2価の炭化水素基を、Rは水素原子、N-アセ
チルグルコサミン、N-アセチルラクトサミン、又はシアリルラクトサミンを、Rは水素原子、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルラクトサミン、又はシアリルラクトサミンを、Z及びZは何れか一方が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じる蛍光基を、もう一方が前記蛍光基に対応する消光基を表す。)
【0036】
上記式(I´)の糖化合物としては、例えば、RがN-アセチルラクトサミンであり、RがN-アセチルラクトサミンである組み合わせ、RがN-アセチルラクトサミンであり、RがN-アセチルグルコサミンである組み合わせ、RがN-アセチルグルコサミンであり、RがN-アセチルラクトサミンである組み合わせ、RがN-アセチルグルコサミンであり、RがN-アセチルグルコサミンである組み合わせ、RがN-アセチルグルコサミンであり、Rが水素原子である組み合わせ、Rが水素原子であり、RにN-アセチルグルコサミンである組み合わせ等が挙げられる。
また、上記式(I´)の糖化合物として、例えば10糖の糖化合物としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化31】
【実施例
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0038】
<実施例1:式(I)で表される糖化合物の製造>
(Methoxyphenyl 4,6-O-benzylidene-3-O-pivaloyl-2-O-tert-butyldimethylsilyl-α-D-
mannopyranosyl-(1-3)-[4,6-O-benzylidene-3-O-pivaloyl-2-O-tert-butyldimethylsilyl-α-D-mannopyranosyl-(1-6)]-β-D-galactopyranosyl-(1-4)-3,6-di-O-benzyl-2-deoxy-2-phthalimido-β-D-glucopyranoside (9)の合成)
【化32】


2糖受容体(50 mg, 0.066 mmol)と単糖供与体(81 mg, 0.145 mmol)をジクロロメタ
ン(8 mL)に溶解させ、-78 ℃でキャノラーを用いて乾燥モルキュラーシーブズ(4A, 0.5 g)、N-ヨードコハク酸イミド(49 mg, 0.218 mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸銀(19 mg, 0.073 mmol)へ加えた。-78 ℃で4時間撹拌した後、温度を0 ℃に上げ16時間撹拌し、トリエチルアミンを用いて反応を終了させた。反応液を酢酸エチルで希釈し、不要物をセライト濾過により除去後、チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水、1 M塩酸、
飽和食塩水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶液を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル = 4/1 → 1/1 gradient)により精製し、化合物9(56.1 mg, 0.034 mmol, 51 %)を得た。構造決定のため、化合物9をアセチル化した。得られた化合物のHNMRの測定結果(NMRチャート)を図1図2に示す。また、得られた化合物の13CNMRの測定結果(NMRチャート)を図3図4に示す。
Rf = 0.45(ヘキサン/酢酸エチル = 2/1)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.66-7.30 (m, 17H), 7.05-7.04 (m, 2H), 6.93-6.79 (m, 5H), 6.69-6.65 (m, 2H), 5.60 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 5.57 (s, 2H), 5.44-5.40 (m, 1H), 5.30 (dd, J = 10.3, 3.1 Hz, 1H), 5.19-5.12 (m, 2H), 4.87 (d, J = 1.4 Hz, 1H),
4.77 (dd, J = 34.5, 12.2 Hz, 2H), 4.62-4.58 (m, 1H), 4.50 (dd, J = 12.4, 3.4 Hz, 2H), 4.40 (dd, J = 10.8, 8.4 Hz, 1H), 4.34-4.29 (m, 4H), 4.14-4.00 (m, 4H), 3.91-3.75 (m, 8H), 3.65-3.63 (m, 1H), 3.44 (q, J = 4.9 Hz, 1H), 2.97 (t, J = 9.6 H
z, 1H), 2.11 (d, J = 49.8 Hz, 6H), 1.71-1.60 (m, 3H), 1.32-1.18 (m, 18H), 0.93 (d, J = 9.3 Hz, 19H), 0.12 (s, 3H), 0.07 (s, 3H), 0.05 (s, 3H), 0.03 (s, 3H)
13C-NMR (151 MHz, CDCl3) δ 178.08, 177.92, 170.28, 169.49, 155.65, 151.19, 138.87, 138.23, 137.91, 137.86, 134.11, 129.08, 129.01, 128.87, 128.47, 128.41, 128.28, 128.21, 128.03, 127.44, 126.33, 126.22, 123.70, 118.97, 114.66, 102.57, 101.84, 101.70, 100.90, 97.89, 97.66, 78.01, 77.57, 77.36, 77.15, 76.94, 76.89, 76.82, 75.43, 74.74, 73.90, 72.93, 71.06, 70.86, 70.69, 70.63, 70.51, 70.45, 69.34, 69.18, 68.12, 65.20, 65.11, 64.99, 55.94, 55.90, 39.26, 39.23, 27.63, 27.60, 26.19, 26.12, 21.33, 21.04, 18.31, 0.34
【0039】
(Methoxyphenyl 4,6-O-benzylidene-3-O-pivaloyl-2-O-tert-butyldimethylsilyl-α-D-mannopyranosyl-(1-3)-[4,6-O-benzylidene-3-O-pivaloyl-2-O-tert-butyldimethylsilyl-α-D-mannopyranosyl-(1-6)]-2-O-acetyl-4-azide-4-deoxy-β-D-mannopyranosyl-(1-4)-3,6-di-O-benzyl-2-deoxy-2-phthalimido-β-D-glucopyranoside (12)の合成)
【化33】


化合物(1.09 g, 0.66 mmol)をジクロロメタン(10 mL)に溶解させ、ピリジン(1.6 mL, 19.8 mmol)を加えた後、0 ℃でトリフルオロメタンスルホン酸無水物(1.1 mL, 6.6
mmol)を加え2.5時間撹拌させた。反応の終了はTLCにより確認した。反応液を酢酸エチ
ルにより希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順に洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル = 7/3 → 酢酸エチルonly gradient)を用いて精製し、得られた化合物をトルエンで共沸、真空乾燥後、トルエン(25 mL)に溶解させ、0 ℃でテトラ
ブチルアンモニウムアジド(0.181 g, 0.726 mmol)を加え室温で4時間反応させた。反応の終了はTLCにより確認した。反応液を酢酸エチルにより希釈し、飽和食塩水、飽和炭酸
水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順に洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル = 7/3 → 酢酸エチルonly gradient)を用いて精製し、得られた化合物をトルエンで共沸、真空乾燥後、トルエン(26 mL)に溶解させ、セシウムアセテート(1.32 g, 6.60 mmol)、18-crown-6(1.92 g, 6.60 mmol)を加え、超音波をかけ一晩反応させた。反応の終
了はTLCにより確認した。反応液を酢酸エチルにより希釈し、飽和食塩水、飽和炭酸水素
ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順に洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル = 4/1 → 酢酸エチルonly gradient)を用いて精製し化合物0.950 g(0.56 mmol, 85 %)を得た。得られた化合物のHNMRの測定結果(NMRチャート)を図5図6に示す。また、得られた化合物の13CNMRの測定結果(NMRチャート)を図7図8に示す。
Rf = 0.40(トルエン/酢酸エチル = 8/1)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.29-7.65 (m, 17H), 6.97-6.66 (m, 9H), 5.54 (t, J = 8.4 Hz, 3H), 5.34-5.32 (m, 1H), 5.31-5.23 (m, 2H), 4.93 (s, 1H), 4.78 (d, J = 2.4
Hz, 1H), 4.76 (s, 1H), 4.69 (s, 1H), 4.63 (s, 1H), 4.51-4.47 (m, 2H), 4.36 (dd,
J = 10.1, 8.8 Hz, 1H), 4.32-4.23 (m, 4H), 4.18-4.04 (m, 4H), 3.95-3.72 (m, 9H),
3.65-3.60 (m, 2H), 3.32 (dd, J = 10.1, 3.3 Hz, 1H), 3.02 (dt, J = 10.0, 2.7 Hz,
1H), 2.24 (s, 3H), 1.66 (d, J = 4.1 Hz, 1H), 1.20 (s, 9H), 1.14 (s, 9H), 0.98 (s, 9H), 0.84 (s, 9H), 0.14-0.09 (m, 6H), -0.09 (d, J = 5.8 Hz, 6H)
13C-NMR (151 MHz, CDCl3) δ 177.91, 177.78, 170.54, 155.61, 151.12, 138.65, 138.29, 137.93, 137.80, 133.96, 131.94, 128.95, 128.85, 128.56, 128.37, 128.34, 128.23, 128.20, 127.44, 126.46, 126.33, 123.62, 118.85, 114.64, 104.29, 101.72, 101.68, 100.21, 97.81, 80.30, 78.55, 77.57, 77.36, 77.15, 76.74, 76.53, 74.93, 74.82, 73.94, 73.65, 71.14, 70.80, 70.69, 70.41, 69.15, 69.04, 68.51, 66.62, 65.63, 65.18, 59.82, 55.93, 55.88, 39.26, 39.18, 27.64, 27.57, 26.06, 25.96, 21.34, 18.34, 18.15, 0.34, -4.20, -4.51, -4.71
【0040】
(Methoxyphenyl 4,6-O-benzylidene-3-O-pivaloyl-α-D-mannopyranosyl-(1-3)-[4,6-O-benzylidene-3pivaloyl-α-D-mannopyranosyl-(1-6)]-2-O-acetyl-4-azido-4deoxy-β-D-mannopyranosyl-(1-4)-3,6-di-O-benzyl-2-deoxy-2-phthalimido-β-D-glucopyranoside (13)の合成)
【化34】
化合物12(0.500 g, 0.290 mmol)をピリジン(3.46 mL)に溶解させ、0 ℃フッ化水素ピリジン(1.39 mL)を加えた後、室温で2日間撹拌し、0 ℃で重曹水を用いて反応を終了させた。反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶液を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン/
酢酸エチル = 18/7 → 21/29 gradient)により精製し、化合物13(0.267 g, 0.180 mmol)を収率62 %で得た。得られた化合物のHNMRの測定結果(NMRチャート)を図9
図10に示す。また、得られた化合物の13CNMRの測定結果(NMRチャート)を図11図12に示す。
Rf = 0.37(トルエン/酢酸エチル = 2/1)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.65-6.68 (m, 28H; aromatic H), 5.61 (d, J= 8.2 Hz, 1
H; H-1a), 5.56 (d, J = 5.2 Hz, 2H; -CHPh), 5.31 (d, J = 3.4 Hz, 1H; H-2b), 5.29-5.25 (m, 2H; H-3c, H-3d), 5.08 (d, J = 1.2 Hz; 1H, H-1c), 5.01 (d, J = 1.4 Hz, 1H; H-1d), 4.87 (d, J = 12.7 Hz, 1H; -CH2Ph), 4.80 (d, J=12.0, 1H; -CH2Ph), 4.54
(s, 1H; H-1b), 4.44 (d, J = 12.0 Hz, 1H; -CH2Ph), 4.38-4.28 (m, 4H; H-2a, H-6c, H-6d, -CH2Ph), 4.25-4.24 (m, 1H; H-2c), 4.22-4.17 (m, 2H; H-3a, H-6c), 4.12 (q, J = 9.6 Hz, 2H; H-4c, H-4d), 4.06-4.05 (m, 1H; H-2d), 4.00-3.89 (m, 2H; H-5c, H-5d), 3.86-3.69 (m, 10H; H-5a, H-6a, H-4b, H-6b, H-6c, H-6d, -OCH3), 3.63-3.62 (d, J = 8.6 Hz, 1H; H-4a), 3.36 (dd, J = 10.0, 3.1 Hz, 1H; H-3b), 3.05-3.02 (m, 1H; H-5b), 2.34 (d, J = 4.5 Hz, 1H), 2.22 (d, J = 3.1 Hz, 1H), 2.20 (s, 3H; -COCH3), 1.23 (s, 9H; -CO(CH3)3), 1.19 (s, 9H; -CO(CH3)3)
13C-NMR (151 MHz, CDCl3) δ 177.26, 176.99, 170.02, 167.98, 155.43, 150.84, 138.47, 137.87, 137.51, 137.44, 133.83, 129.13, 128.87, 128.78, 128.27, 128.19, 128.09, 128.02, 127.29, 126.16, 126.04, 125.39, 123.43, 118.69, 114.44, 102.72 (C-1c), 101.63 (-CHPh), 101.47 (-CHPh), 100.81 (C-1d), 98.76, 97.59 (C-1a), 79.03 (C-3b), 76.91 (C-3a), 76.22, 75.94 (C-4c,d), 74.77(C-2a), 74.54 (C-4a), 73.73 (-CH2Ph), 73.69 (C-5b), 70.27 (C-3d), 70.14 (C-3c), 69.99 (C-2c), 69.93 (C-2b), 69.65
(C-2d), 68.90 (C-6c), 68.68 (C-5a), 68.26 (C-6a), 66.31 (C-6b), 64.91, 64.52 (C-5c,d), 58.99 (C-4b), 55.71 (C-6d), 55.66, 39.12, 39.03, 27.24 (-CO(CH3)3), 27.22 (-CO(CH3)3), 21.07 (-COCH3), 0.10
【0041】
(Methoxyphenyl 2-O-acetyl-4,6-O-benzylidene-3-O-pivaloyl-α-D-mannopyranosyl-(1-3)-[2-O-acetyl-4,6-O-benzylidene-3pivaloyl-α-D-mannopyranosyl-(1-6)]-2-O-acetyl-4-azido-4deoxy-β-D-mannopyranosyl-(1-4)-3,6-di-O-benzyl-2-deoxy-2-phthalimido-β-D-glucopyranoside (14)の合成)
【化35】
化合物13(0.466 g, 0.310mmol)をピリジン(1.5 mL)に溶解させ、0 ℃で無水酢酸(300 μL)を加え、室温で一晩撹拌し、0 ℃でメタノールを用いて反応を終了させた。反
応液を酢酸エチルで希釈し、1 M塩酸、飽和食塩水、飽和重曹水、飽和食塩水の順に洗浄
した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶液を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル = 91/9 → 3/1 gradient)により精製し、化合物14(0.467 g, 0.298 mmol)を収率96 %で得た。得られた化合物のHNMRの測定結
果(NMRチャート)を図13図14に示す。また、得られた化合物の13CNMRの測定結果(NMRチャート)を図15図16に示す。
Rf = 0.61(トルエン/酢酸エチル = 3/1)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.77-6.62 (m, 28H; aromatic H), 5.58 (d, J = 17.9 Hz,
2H -CHPh), 5.56 (d, J = 8.6 Hz, 1H; H-1a), 5.45 (q, J = 1.7 Hz, 1H; H-2c), 5.39-5.35 (m, 3H; H-3c, H-2d), 5.31 (d, J = 3.1 Hz, 1H; H-2b), 5.01 (d, J = 1.4 Hz, 1H; H-1c), 4.94 (d, J = 1.0 Hz, 1H; H-1d), 4.79 (d, J = 12.0 Hz, 1H; -CH2Ph), 4.71 (d, J = 12.7 Hz, 1H; -CH2Ph), 4.56 (s, 1H; H-1b), 4.42 (dd, J = 16.2, 12.4 Hz, 2H; -CH2Ph), 4.36-4.31 (m, 3H; H-2a, H-6c, H-6d), 4.22-4.18 (m, 2H; H-3a), 4.07 (t, J = 9.8 Hz, 1H; H-3d), 4.01 (td, J = 9.6, 2.7 Hz, 2H; H-4c, H-4d), 3.94 (td, J = 9.8, 4.5 Hz, 1H; H-6d), 3.85-3.75 (m, 7H; H-5a, H-6a, H-4b, H-6b, H-5c, H
-5d), 3.70 (s, 3H; -OCH3), 3.60-3.62 (m, 1H; H-4a), 3.32 (dd, J = 10.3, 3.1 Hz, 1H; H-3b), 2.99 (dt, J = 10.2, 2.7 Hz, 1H; H-5b), 2.24 (s, 3H; -COCH3), 2.20 (s,
3H; -COCH3), 1.78 (s, 3H; -COCH3), 1.16 (s, 9H; -CO(CH3)3), 1.09 (s, 9H; -CO(CH3)3)
13C-NMR (151 MHz, CHLOROFORM-D) δ 176.95, 176.90, 170.67, 169.85, 169.56, 155.62, 151.13, 138.51, 138.12, 137.62, 137.60, 133.97, 129.15, 129.08, 128.99, 128.65, 128.44, 128.27, 127.57, 126.44, 126.30, 123.61, 118.84, 114.65, 101.88 (-CHPh), 101.72 (-CHPh), 100.69 (C-1c), 99.32 (C-1b,1d), 97.84 (C-1a), 79.32 (C-3a), 79.07 (C-3b), 76.68 (C-4c), 76.49 (C-3d), 76.36 (C-6), (74.85, 74.81, 74.64)( C-4a, C-5b, -CH2Ph), 73.87, 70.44 (C-2c), 70.04 (C-2d), 69.94 (C-2b), 69.00 (C-2a),
68.92 (C-5a), 68.51, 68.13 (C-6a), 67.79 (C-3c), 66.42, 65.12, 64.51, 58.91 (C-4b), 55.89, 39.15, 39.04, 27.31 (-CO(CH3)3), 27.23 (-CO(CH3)3), 21.23 (-COCH3), 21.18 (-COCH3), 20.69 (-COCH3), 0.34
【0042】
(2-O-acetyl-4,6-O-benzylidene-3-O-pivaloyl-α-D-mannopyranosyl-(1-3)-[2-O-acetyl-4,6-O-benzylidene-3-O-pivaloyl-α-D-mannopyranosyl-(1-6)]-2-O-acetyl-4-azido-4-deoxy-β-D-mannopyranosyl-(1-4)-3,6-di-O-benzyl-2-deoxy-2-phthalimido-D-glucopyranose(15)の合成)
【化36】


化合物14(0.470 g, 0.298 mmol)をトルエン(750 μL)に溶解させ、アセトニトリル(1 mL)、水(750 μL)を加えた後、-10 ℃でCAN(0.563 g, 1.043 mol)を加えた。-10 ℃で2時間撹拌し、TLCにより反応の終了を確認した。反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和食塩水、飽和重曹水、飽和食塩水の順に洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶液を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル = 17/8 → 1/1 gradient)により精製し化合物15(0.338 g, 0.229 mmol)を収率77 %で
得た。得られた化合物のHNMRの測定結果(NMRチャート)を図17図18に示す。
また、得られた化合物の13CNMRの測定結果(NMRチャート)を図19図20に示す。
Rf = 0.32(トルエン/酢酸エチル = 2/1)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.74-6.77 (m, 24H; aromatic H), 5.58 (d, J = 12.0 Hz,
2H; -CHPh), 5.44-5.39 (m, 2H; H-2c, H-2d), 5.34 (dd, J = 10.3, 3.8 Hz, 1H; H-3c), 5.28-5.24 (m, 2H; H-1a, H-2b), 5.00 (d, J = 1.4 Hz, 1H; H-1c), 4.90 (d, J = 10.0 Hz, 1H; H-1d), 4.80 (d, J = 12.0 Hz, 1H; -CH2Ph), 4.69 (d, J = 12.0 Hz, 1H; -CH2Ph), 4.50 (s, 1H; H-1b), 4.41 (dd, J = 21.5, 12.2 Hz, 2H; -CH2Ph), 4.32 (td,
2H; H-6c), 4.27 (dd, J = 10.7, 8.9 Hz, 1H; H-3a), 4.15 (t, J = 9.5 Hz, 1H; H-4a
), 4.09-4.05 (m, 2H; H-2a, H-4c), 4.03-3.92 (m, 2H; H-5c, H-3d), 3.84-3.72 (m, 7H; H-4a, H-6a, H-6c, H-4d, H-6d), 3.61 (d, J = 9.6 Hz, 1H; H-5a), 3.29 (dd, J = 10.0, 3.1 Hz, 1H; H-3b), 3.14 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 3.03-3.00 (m, 1H; H-5b), 2.20
(d, J = 1.4 Hz, 6H; -COCH3), 1.84 (s, 3H; -COCH3), 1.16 (s, 9 H; -CO(CH3)3), 1.09 (s, 9 H; -CO(CH3)3)
13C-NMR (151 MHz, CDCl3) δ 177.14, 177.01, 170.58, 169.88, 169.63, 168.21, 138.60, 138.08, 137.62, 133.99, 131.97, 129.38, 129.16, 129.10, 129.06, 128.59, 128.55, 128.53, 128.45, 128.30, 127.58, 126.43, 126.33, 125.64, 123.56, 101.88 (-CHPh), 101.74 (-CHPh), 100.74 (C-1c), 99.27 (C-1d), 98.64 (C-1b), 93.28 (C-1a), 79.21 (C-3b), 78.43 (C-4a), 76.68 (C-3d), 76.45 (C-4c), 75.85 (C-3a), 74.73 (C-5a),
74.60 (C-5b), 73.99 (-CH2Ph), 70.43 (C-2c), 70.09(C-6d), 69.90 (C-2b), 68.96 (C-6c), 68.90 (C-4d), 68.65 (C-6a), 68.24 (C-2d), 67.81 (C-3c), 66.73 (C-6b), 65.14 (C-5d), 64.47 (C-5c), 59.16 (C-4b), 57.72 (C-2a), 39.16, 39.09, 27.31 (-CO(CH3)3), 27.24 (-CO(CH3)3), 21.22 (-COCH3), 21.18 (-COCH3), 20.77(-COCH3), 0.34
【0043】
2-O-acetyl-4,6-O-benzylidene-3-O-pivaloyl-α-D-mannopyranosyl-(1-3)-[2-O-acetyl-4,6-O-benzylidene-3-O-pivaloyl-α-D-mannopyranosyl-(1-6)]-2-O-acetyl-4-azido-4-deoxy-β-D-mannopyranosyl-(1-4)-3,6-di-O-benzyl-2-deoxy-2-phthalimido-D-glucopyranosylfluoride (2)の合成)
【化37】


化合物15(0.338 g, 229 mmol)をジクロロメタン(5 mL)に溶解させ、-10 ℃でDAST
(21 μL, 0.13 mmol)を加えた。-10 ℃で1.5時間撹拌し、0 ℃でメタノール飽和重曹水を用いて反応を終了させた。反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶液を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル = 17/8 →14/11 gradient)により精製し化合物2(0.309 g, 0.209 mmol)を収率91 %で得た。得られた化合物のHNMRの測定結果(NMRチ
ャート)を図21図22に示す。また、得られた化合物の13CNMRの測定結果(NMRチャート)を図23図24に示す。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.29-7.70 (m, 24H), 6.76-7.00 (m, 7H), 5.78 (dd, J = 53.6, 7.6 Hz, 1H), 5.53-5.63 (m, 3H), 5.43-5.45 (m, 1H), 5.32-5.39 (m, 4H), 5.26-5.28 (m, 1H), 4.91-5.02 (m, 3H), 4.79-4.82 (m, 1H), 4.68 (d, J = 12.4 Hz, 1H), 4.50 (s, 1H), 4.41-4.44 (m, 2H), 4.15-4.38 (m, 7H), 3.91-4.09 (m, 5H), 3.77-3.85
(m, 8H), 3.56-3.71 (m, 2H), 3.29 (dd, J = 10.1, 3.3 Hz, 1H), 2.96-2.98 (m, 1H),
2.20-2.22 (m, 7H), 1.79 (d, J = 8.6 Hz, 4H), 1.60 (s, 2H), 1.05-1.16 (m, 24H), -0.00 (s, 2H)
13C-NMR (151 MHz, CDCl3) δ 176.72, 176.68, 170.39, 169.64, 169.34, 167.55, 138.
06, 137.62, 137.35, 133.89, 131.59, 128.92, 128.88, 128.84, 128.61, 128.43, 128.38, 128.21, 128.07, 127.44, 127.38, 126.18, 126.04, 123.44, 105.55, 104.14, 101.64, 101.46, 100.45, 99.08, 98.74, 78.81, 78.21, 77.33, 77.12, 76.91, 76.40, 76.21, 75.11, 75.04, 74.60, 74.35, 73.82, 70.17, 69.81, 69.59, 68.75, 68.66, 67.91, 67.87, 67.52, 66.28, 64.90, 64.33, 58.67, 55.68, 55.53, 38.90, 38.81, 27.07, 27.03, 26.98, 20.99, 20.94, 20.44, 0.10
【0044】
(Azidopropyl 2-O-acetyl-4,6-O-benzylidene-3-O-pivaloyl-α-D-mannopyranosyl-(1-3)-[2-O-acetyl-4,6-O-benzylidene-3-O-pivaloyl-α-D-mannopyranosyl-(1-6)]-2-O-acetyl-4-azido-4deoxy-β-D-mannopyranosyl-(1-4)-3,6-di-O-benzyl-2-deoxy-2-phthalimido-β-D-glucopyranosyl-(1-4)-[3,4,6-tri-O-benzyl-α-L-fucopyranosyl-(1-6)] 4-benzyl-2deoxy-2-phtalimido-β-D-glucopyranoside (16)の合成)
【化38】
2糖受容体3(32 mg, 0.030 mmol)と4糖供与体2(60 mg, 0.034 mmol)をジクロロメタン(6 mL)に溶解させ、-40 ℃で乾燥モルキュラーシーブズ(4A, 0.5 g)、トリフルオ
ロメタンスルホン酸銀(24 mg, 0.094 mmol)、ハフノセンジクロリド(18 mg, 0.0018 g)へキャノラーを用いて加えた。-40 ℃で4時間撹拌した後、トリエチルアミンを用いて
反応を終了させた。反応液を酢酸エチルで希釈し、不要物をセライト濾過により除去後、飽和重曹水、飽和食塩水の順で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶液を減圧留去した。得られた残渣をゲル濾過クロマトグラフィー(SX-1 トルエン100 %)により6糖画分を分取し、その後シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル =
43/7 → 33/17 gradient)により精製し、化合物16(37.8 mg, 0.016 mmol, 54 %)を得た。得られた化合物のHNMRの測定結果(NMRチャート)を図25図26に示す。また、得られた化合物の13CNMRの測定結果(NMRチャート)を図27図28に示す。Rf = 0.57(トルエン/酢酸エチル = 4/1)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ 8.13-6.52 (m, 48H; aromatic H), 5.60 (s, 1H; -CHPh), 5.47 (s, 1H; -CHPh), 5.43 (q, J = 1.7 Hz, 1H), 5.38-5.27 (m, 5H; H-1c, H-1d, H-3e), 4.99 (d, J = 1.0 Hz, 1H), 4.95-4.80 (m, 8H; H-1b, H-1f), 4.71 (dd, J = 30.9,
12.0 Hz, 2H), 4.63-4.52 (m, 3H), 4.47 (s, 1H; H-1d), 4.37-4.25 (m, 4H; H-2a), 4.19-3.85 (m, 12H; H-2c H-2b, H-3b,H-4e), 3.82-3.52 (m, 10H; H-4b), 3.49 (d, J = 10.0 Hz, 1H; H-3), c3.29-3.22 (m, 4H), 3.00 (td, J = 6.6, 3.0 Hz, 2H), 2.92-2.88
(m, 1H; ), 2.20 (s, 3H; -COCH3), 2.00 (s, 3H; -COCH3), 1.71 (s, 3H; -COCH3), 1.58-1.48 (m, 2H), 1.20-1.12 (m, 9H), 1.12-1.05 (m, 9H), 1.02-0.94 (m, 3H)
13C-NMR (151 MHz, CDCl3) δ 176.92, 176.86, 170.19, 169.85, 169.46, 168.19, 167.95, 139.37, 139.27, 139.09, 138.99, 138.72, 138.08, 137.68, 137.55, 134.11, 133.99, 132.06, 131.76, 129.11, 129.00, 128.95, 128.80, 128.77, 128.70, 128.55, 128.52, 128.45, 128.42, 128.36, 128.28, 128.23, 128.14, 127.99, 127.80, 127.70, 127.53, 127.20, 126.46, 126.23, 123.68, 123.51, 101.85 (-CHPh), 101.61 (-CHPh), 100.68 (C-1e), 99.36 (C-1d), 99.31 (C-1f), 98.16 (C-1a), 97.25 (C-1c), 97.17, 79.78 (C-3b), 79.51 (C-2a), 79.34, 78.01 (C-4b), 77.57, 77.36, 77.15, 76.83, 76.65, 76.49, 76.35, 75.92, 75.06, 74.90, 74.82, 74.63 (-CH2Ph), 74.18, 74.04, 73.68 (-CH2Ph), 73.49, 73.10, 70.45, 69.96, 69.72, 69.00, 68.92, 68.22, 68.08, 67.79, 66.48, 66.25, 65.78, 65.10, 64.45, 64.08, 59.01, 56.84, 56.01, 48.27, 39.13, 39.01, 29.02, 27.30 (-CO(CH3)3), 27.22 (-CO(CH3)3), 21.18 (-COCH3), 20.83 (-COCH3), 20.62 (-COCH3), 16.75 (C-6b), 0.33
【0045】
(Aminopropyl α-D-mannopyranosyl-(1-3)-[α-D-mannopyranosyl-(1-6)]-4-amino-4deoxy-β-D-mannopyranosyl-(1-4)-2-acetamido-2deoxy-β-D-glucopyranosyl-(1-4)-[α-L-fucopyranosyl-(1-6)]-2-acetamido-2deoxy-β-D-glucopyranoside (17)の合成)
【化39】
化合物(36 mg, 0.019 mmol)を酢酸(2 mL)に溶かした後、メタノールを(3 mL)、
水を(1 mL)加え80 ℃で1時間撹拌した。TLCにより反応の終了を確認した後、溶液を減
圧留去した。トルエン共沸後、残渣をn-ブタノール(1 mL)に溶かした後、エチレンジアミン(1 mL)を加え90 ℃で一晩撹拌させた。TLCにより反応の終了を確認した後、反応液を濃縮、トルエン共沸し真空乾燥させた。その後残渣をピリジン(1 mL)に溶かし、無水酢酸(500 μL)を加え、40 ℃で一晩撹拌させた。反応はメタノールを用いて終了させ、反応溶液をクロロホルムで希釈した後、1 M塩酸、飽和食塩水、飽和重曹水、飽和食塩水
の順に洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶液を減圧留去した。残渣をTHF(500 μL)に溶かし、メタノール(500 μL)、1 Mナトリウムメトキシドを加えた後、室温で一晩撹拌させた。反応はアンバーリスト50により終了させた。反応溶液を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルムonly → クロロホルム/メタノール = 1/1 gradient)、ゲル濾過クロマトグラフィー(SX-1 メタノールonly
)により精製し、化合物(18.2 mg, 0.008 mmol, 43 %)を得た。化合物に水(20 mL)、水酸化パラジウム(20 mg)を加え二晩撹拌させた。セライト濾過にて水酸化パラジウム
を除去し溶液を凍結乾燥した。残渣を水に溶かしISOLUTE 18C(水only → 水/アセトニトリル95/5)により精製後、化合物(5 mg, 0.004 mmol, 50 %)を得た。得られた化合物のHNMRの測定結果(NMRチャート)を図29図30に示す。
1H-NMR (600 MHz, D2O) δ 5.05 (s, 1H), 4.92 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 4.89 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 4.74 (s, 1H), 4.66 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 4.48 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 4.34 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 3.58-4.12 (m, 37H), 3.03-3.08 (m, 3H), 2.01-2.12 (m, 6H),
1.91-1.99 (m, 3H), 1.23 (d, J = 6.5 Hz, 3H)
【0046】
(3-N-2,4-di-nitrophenyl-3-aminopropyl α-D-mannopyranosyl-(1-3)-[α-D-mannopyranosyl-(1-6)]-β-D-mannopyranosyl-(1-4)-2-acetamido-2-deoxy-β-D-glcopyranosyl-(1-4)-[α-L-fucosyl-(1-6)]-2-acetamido-2-deoxy-β-D-glcopyranoside (18)の合成)
【化40】
化合物17(5.0 mg, 4.5 μmol)を水175 μLに溶かし、NaHCO3(1.8 mg)を加えた後、メタノール120 μL、2,4-ジニトロフルオロベンゼン(1.4 mg, 7.5 μmol)を加えた。6
時間後、水で希釈させた後Et2Oにより洗浄した。凍結乾燥をした後、逆相フラッシュカラム(H2O/CH3CN = 77/23) により精製し化合物18(2.7 mg, 2.1 μmol)を収率47 %で得た
。得られた化合物のHNMRの測定結果(NMRチャート)を図31図32に示す。
1H-NMR (600 MHz, D2O) δ 9.12 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 8.45 (s, 0H), 8.31 (dd, J = 9.6, 2.7 Hz, 1H), 7.13 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 5.01-5.10 (m, 1H), 4.92 (d, J = 1.4 Hz, 1H), 4.86 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 4.72 (s, 1H), 4.68 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 4.53 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 4.30 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 4.11-3.55 (m, 39H), 2.95 (t, J = 10.1 Hz, 1H), 2.09 (s, 3H), 1.94 (s, 3H), 1.14 (d, J = 6.5 Hz, 3H)
【0047】
(3-N-2,4-di-nitrophenyl-3-aminopropyl α-D-mannopyranosyl-(1-3)-[α-D-mannopyranosyl-(1-6)]-4-deoxy-4-N-methylanthranilamido-β-D-mannopyranosyl-(1-4)-2-acetamido-2-deoxy-β-D-glcopyranosyl-(1-4)-[α-L-fucosyl-(1-6)]-2-acetamido-2-deoxy-β-D-glcopyranoside (1)の合成)
【化41】
化合物18(2.9 mg, 2.3 μmol)をDMSO(250 μL)に溶かし、DMAP(1.1 mg, 9.0 μmol)を加えた後、N-メチルアントラニル酸(0.78 mg, 6.8 μmol)、HATU(3.1 mg, 8.1
μmol)を加え室温で撹拌させた。6時間後、水で希釈させた後Et2Oにより洗浄した。凍結乾燥をした後、逆相フラッシュカラム(H2O/CH3CN = 77/23)により精製し化合物1を収率32 %で得た。得られた化合物のHNMRの測定結果(NMRチャート)を図33図34に示す。
1H-NMR (600 MHz, D2O) δ 9.13 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 8.44 (s, 0H), 8.32 (dd, J = 9.6, 2.7 Hz, 1H), 7.49-7.42 (m, 2H), 7.13 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 6.89-6.77 (m, 2H),
4.96 (s, 1H), 4.87 (d, J = 2.4 Hz, 2H), 4.79-4.74 (m, 8H), 4.69 (d, J = 7.9 Hz,
1H), 4.53 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 4.40 (t, J = 10.0 Hz, 1H), 4.31 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 4.07-3.50 (m, 45H), 2.83 (s, 4H), 2.09-1.90 (m, 9H), 1.15 (d, J = 6.5 Hz, 4H)
【0048】
<実施例2:エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)の活性検出>
(方法1:HPLCを用いた天然型6糖-DNPの加水分解反応の活性検出)
5μMの天然型6糖DNP体(ManGN(Fuc)-DNP)、酵素Endo-M-W251N 2.4μgのリン酸ナトリウムバッファー(40mM,pH6)溶液100μLを30℃で2時間インキュベートした。反応は、15、30、60、120分ごとに反応液を2μLずつ分注し、8μLのアセトニトリルに加え、反応を停止した。反応混合液を30μLの水で希釈し、HPLC(TOSOH TSK-gel ODS-100V,5μm,4.6mm×15cm,水/アセトニトリル=97/3~60/40,0.1%TFA溶液,流速1mL/min,15分間、島津超高速液体クロマトグラフ Nexera)にて、UV360nmで検出し、分析した。反応混合液のHPLCクロマトグラムの結果を図35に示す。
尚、この加水分解反応は、下記に示される反応である。
【化42】
【0049】
(方法2:HPLCを用いたFRET型6糖-DNPの加水分解反応の活性検出)
5μMの化合物1(MANT-ManGN(Fuc)-DNP:MM3FD)、酵素Endo-M-W251N 2.4μgのリン酸ナトリウムバッファー(40mM,pH6)溶液100μLを30℃で2時間インキュベートした。反応は、15、30、60、120分ごとに反応液を2μLずつ分注し、8μLのアセトニトリルに加え、反応を停止した。反応混合液を30μLの水で希釈し、HPLC(TOSOH TSK-gel ODS-100V,5μm,4.6mm×15cm,水/アセトニトリル=97/3~60/40,0.1%TFA溶液,流速1mL/min,15分間、島津超高速液体クロマトグラフ Nexera)にて、UV360nmで検出し、分析した。反応混合液のHPLCクロマトグラムの結果を図36に示す。
尚、この加水分解反応は、下記に示される反応である。
【化43】
また、上記方法1と方法2で得られた結果について、reaction time (min)と加水分解
率(%)の関係を図37に示した。
【0050】
(方法3:マイクロプレートリーダーを用いたFRET型6糖-DNPの加水分解反応の活性検出)
5μMの化合物1(MANT-ManGN(Fuc)-DNP:MM3FD)、酵素(Endo-M-W251N 2.4μg(×1)、0.5μg(×1/5)、0.24μg(×1/10))をそれぞれ加えたリン酸ナトリウムバッファー(40mM,pH6)溶液20μLを30℃で2時間インキュベートした。反応は、マイクロプレートリーダー(モレキュラープローブ社 SpectraMaxi3X(登録商標))を使用し、励起波長340nm、蛍光波長440nmにて追跡した。マイクロプレートリーダーにより反応混合液の蛍光強度変化を追跡した結果を図38に示す。酵素反応の進行に伴い、蛍光強度が上昇していることから、基質の切断を確認することができる。
【0051】
(方法4:マイクロプレートリーダーを用いたEndo-F3によるFRET型6糖-DNPの加水分解反応の活性検出)
5μM化合物1(MANT-ManGN(Fuc)-DNP:MM3FDプローブ)、酵素(Endo-F:8U、4U、2U)の40mM リン酸ナトリウムバッファー50μLを37 Cで2時間インキュベートした。反応はマイクロプレートリーダー(モレキュラープローブ社 SpectraMaxi3X)を使用し、励起波長340nm、蛍光波長440nmにて追跡した。マイクロプレートリーダーにより反応混合液の蛍光強度変化を追跡した結果を図39に示す。酵素反応に伴い、蛍光強度が上昇していることから、基質の切断を確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の糖化合物は、新規のENGaseの探索やENGase活性阻害剤等の効率的
なスクリーニングに利用することができる。
図1
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