(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】行動状況可視化装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0639 20230101AFI20221222BHJP
【FI】
G06Q10/06 332
(21)【出願番号】P 2018189718
(22)【出願日】2018-10-05
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591253593
【氏名又は名称】株式会社ケアコム
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 牧人
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-230535(JP,A)
【文献】特開2018-139087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病院内における複数の看護師がいつ、どの場所にいたのかをそれぞれ
時刻情報および位置情報によって表す行動履歴情報を記憶した履歴情報記憶部から、上記行動履歴情報を取得する履歴情報取得部と、
上記履歴情報取得部により取得された上記行動履歴情報に基づいて、
同じ時刻における一の看護師の所在場所とそれ以外の一の看護師の所在場所と
を直線で結んだ場合の
直線距離を複数の時点ごとに求めて統計することにより、2人の看護師の組み合わせごとに看護師間の距離を分析する距離分析部と、
上記行動履歴情報に記録されている上記複数の看護師の中からチームを組んでいる看護師を指定可能になされた情報に基づいて、上記複数の看護師のうちチームを組んでいる看護師と他の看護師とを識別した上で、上記複数の看護師をノードで表し、上記距離分析部により分析された2人の看護師間の距離を上記ノードの間のエッジの太さ、線種または線色の何れかで表したグラフであって、上記複数の看護師のうち
上記チームを組んでいる看護師のノードを
上記他
の看護師のノードと識別可能な態様で表したグラフを生成するグラフ生成部と、
上記グラフ生成部により生成されたグラフを表示する表示制御部とを備えたことを特徴とする行動状況可視化装置。
【請求項2】
上記グラフ生成部は、上記距離分析部により分析される上記2人の看護師間の距離にかかわらず、所定の大きさの描画領域内に上記複数の看護師のノードが全て収まるように、上記複数の看護師のノードを配置したグラフを生成することを特徴とする請求項1に記載の行動状況可視化装置。
【請求項3】
上記グラフ生成部は、上記距離分析部により分析された上記2人の看護師間の距離が短いほど、当該2人の看護師のノード間を結ぶエッジの太さを太く表したグラフを生成することを特徴とする請求項1または2に記載の行動状況可視化装置。
【請求項4】
上記グラフ生成部は、上記2人の看護師間の距離をm個の閾値によってm+1個に分類し、上記距離分析部により分析された上記2人の看護師間の距離がどの分類に属するかによって、上記エッジの太さをm段階で描画するようにし、上記距離分析部により分析された上記2人の看護師間の距離が最大の閾値より大きい場合はエッジを非表示とすることを特徴とする請求項3に記載の行動状況可視化装置。
【請求項5】
上記距離分析部は、上記履歴情報取得部により取得された上記行動履歴情報に基づいて、一の看護師の所在場所とそれ以外の全ての看護師の所在場所との距離を複数の時点ごとに求めて統計することにより、一人の看護師と他の全ての看護師との組み合わせごとに看護師間の距離を更に分析し、
上記グラフ生成部は、上記距離分析部により分析された上記他の全ての看護師との間の距離を上記ノードの表示態様により表したグラフを生成することを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の行動状況可視化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、行動状況可視化装置に関し、特に、病院内における看護師の行動状況を表す値を集計して、その集計結果をビジュアル的に可視化して表示する装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病院内における看護師の移動の軌跡である動線を検出して表示できるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。看護師の動線を導出することにより、看護業務において看護師が病院内でどのような動きをするのかを正確に把握することができる。そして、例えば看護師の無駄な動きを見出すことにより、業務効率の改善を図ることが可能となる。
【0003】
特許文献1には、病院内の複数の場所(例えば、病室、診察室等)に設置された装置(例えば、タグリーダ装置)により、看護師が携帯する装置(例えば、無線IDタグ)を検出し、看護師が訪れた複数の位置を記録することにより、看護師の動線を導出することが記載されている。また、特許文献2には、看護師がある病室の各患者を検温した際の移動経路を動線で表すとともに、各病床位置での滞留時間を点の大きさで表した病室マップを表示することが記載されている。
【0004】
ところで、看護師が業務を行う際に、特定の2人または3人以上がチームを組んで看護業務を行うことがある。例えば、熟練看護師が新人看護師に対して看護業務をOJTとして指導する場合や、特定の患者に対して複数の看護師が共同で看護する場合などである。このような場合、基本的には、チームを組んだ複数の看護師どうしは多くの時間を共に行動することが望まれる。
【0005】
しかしながら、看護師が行う業務には、ナースコールへの対応業務、担当患者に対する看護業務、医師に対するサポート業務、看護記録業務など様々なものがある。ナースコールへの対応業務については、担当患者からのナースコールに対応する場合はもちろん、担当外の患者からのナースコールに対してヘルプ対応する場合もある。
【0006】
このように、看護師は、予定されている業務を予定された通りに行えば済むということは殆どなく、不定のタイミングで発生する不定の業務に対応しなければならなくなることが非常に多い。そのため、チーム組んだ複数の看護師どうしが常に伴って行動できるとは限らず、それぞれが別々の場所で別々の業務を行うこともある。よって、チームを組んだ看護師どうしがどの程度行動を共にしているかの実績を確認し、その確認結果に応じて必要な改善を図ることも望まれる。
【0007】
チームを組んだ複数の看護師どうしがどの程度行動を共にできているかを確認するために、上記特許文献1,2に記載の技術を用いることにより、看護師の動線を可視化して表示することが考えられる。しかしながら、上記特許文献1,2に記載の技術では、個々の看護師の動線を表示して個別に確認することはできるが、複数の看護師がどの程度行動を共にしているかは一見して分からず、これを把握するのは困難であるという問題があった。
【0008】
また、病院内で複数のチームが組まれている場合は、チーム毎に看護師の行動を確認する必要がある。しかしながら、上記特許文献1,2に記載の技術でチーム毎の看護師の行動を把握することはさらに難しいという問題があった。また、チームを組んでいる看護師が不定に発生した業務を行うに当たり、チーム外の看護師と共に看護業務に当たることもある。そのため、チーム内の看護師がチーム外の看護師とどの程度行動を共にしているのかも同時に確認することが望まれるが、上記特許文献1,2に記載の技術ではこれも難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-210701号公報
【文献】特開2012-113648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、チームを組んでいる看護師がチーム内またはチーム外の看護師とどの程度行動を共にしているのかを容易に把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明では、病院内における複数の看護師がいつ、どの場所にいたのかをそれぞれ表す行動履歴情報に基づいて、一の看護師の所在場所とそれ以外の一の看護師の所在場所との距離を複数の時点ごとに求めて統計することにより、2人の看護師の組み合わせごとに看護師間の距離を分析する。そして、複数の看護師をノードで表し、2人の看護師間の距離をノードの間のエッジの太さ、線種または線色の何れかで表したグラフであって、複数の看護師のうちチームを組んでいる看護師のノードを他と識別可能な態様で表したグラフを生成して表示するようにしている。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した本発明によれば、チームの内外を識別可能な態様で複数の看護師がノードで表され、かつ、2人の看護師の組み合わせごとに看護師間の距離がエッジの態様の違いで表されたグラフが表示されるので、チームを組んでいる看護師が同じチーム内またはチーム外の看護師と統計的にどの程度の距離の近さで行動していたのかを、グラフを一見して把握することができるようになる。ここで、エッジの態様によって2人の看護師間の距離が近いことが表されているほど、その看護師どうしは行動を共にしている時間が長いことを示唆していると言える。従って、本実施形態によれば、チームを組んでいる看護師がチーム内またはチーム外の看護師とどの程度行動を共にしているのかを容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態による行動状況可視化装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態の行動状況可視化装置を適用した位置検出システムのハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】病院内のレイアウトにおいて複数のAPの配置例を示す図である。
【
図4】行動履歴データベースに記録される情報の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態のグラフ生成部により生成されて表示装置に表示されるグラフの一例を示す図である。
【
図6】本実施形態のグラフ生成部により生成されて表示装置に表示されるグラフの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態による行動状況可視化装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2は、本実施形態の行動状況可視化装置を適用した位置検出システムのハードウェア構成例を示す図である。
【0015】
図2に示す位置検出システムは、病院内の複数の場所に設置された受信装置(例えば、タグリーダ装置または無線受信機など)により、看護師が携帯する送信装置(例えば、無線ICタグまたは無線送信機など)から送信される信号を受信し、信号を受信した受信装置の位置を逐次記録することにより、看護師が移動した位置を行動履歴情報として蓄積することができるようにしたものである。
【0016】
図2に示すように、本実施形態の位置検出システムは、看護師が携帯する可搬型の無線送信機10と、病院内の複数の場所(例えば、病室、ナースステーション、診察室、廊下等)に設置された無線LANのアクセスポイント(AP)20と、無線送信機10(これを所持する看護師)の存在位置を逐次記録して管理する管理装置30とを備えて構成されている。
【0017】
無線送信機10は、看護師の識別情報である看護師IDを含んだ信号を一定間隔で定期的に送信する。無線送信機10は、例えばWi-Fi(登録商標)による無線送信機能を有しており、内部メモリにあらかじめ記憶されている看護師IDを一定間隔で送信する。無線送信機10により送信された信号は、看護師が存在している位置の周囲にあるAP20(無線通信圏内にあるAP20)にて受信される。なお、
図2では簡略的に無線送信機10を1つのみ図示しているが、実際には看護師の数だけ存在する。
【0018】
AP20は、無線送信機10から送信された信号を受信する無線受信機の一例である。AP20は、無線送信機10から受信した信号に含まれている看護師IDに加え、自身の識別情報として用いるAPアドレスを管理装置30に送信する。なお、
図2では簡略的にAP20を1つのみ図示しているが、実際には病院内の複数箇所に設置されている。このうち、無線LANの通信圏内にあるAP20が無線送信機10から信号を受信し、その信号に含まれる看護師IDおよび自身のAPアドレスを含む情報を管理装置30に送信する。
【0019】
図3は、病院内のレイアウトにおいて複数のAP20の配置例を示した図である。
図3に示す病院レイアウトでは、複数の病室301~310、ナースステーション311、診察室312および廊下313が存在する。AP20は、複数の病室301~310、ナースステーション311、診察室312および廊下313のそれぞれに設置されている。すなわち、病室301~310、ナースステーション311、診察室312の各部屋内に1つずつAP20が設置されるとともに、廊下313の複数箇所にAP20が設置されている。
【0020】
なお、AP20と管理装置30との間は、例えば有線のLANケーブル等で接続されている。または、複数のAP20どうしを無線で接続するとともに、図示しない中継装置を更に備えて当該中継装置と管理装置30との間を有線のLANケーブル等で接続するようにしてもよい。この場合、複数のAP20からリレー形式で情報を中継装置に伝達し、複数のAP20から伝達された情報を一括して中継装置から管理装置30に送信する。
【0021】
管理装置30は、AP20から送信される情報に含まれている看護師IDおよびAPアドレスに基づいて、どの看護師(無線送信機10)がどの場所にいるかを検出する。すなわち、管理装置30は、AP20から受信した情報の中に含まれているAPアドレスで示されるAP20が存在する場所に、看護師IDで示される看護師が存在することを検出する。
【0022】
管理装置30は、看護師IDと看護師名との対応関係、およびAPアドレスとAP20の設置場所を示す位置情報との対応関係を示したデータベースをあらかじめ記憶している。管理装置30は、AP20から受信した看護師IDおよびそれに対応する看護師名と、APアドレスに対応するAP20の位置情報(看護師の所在場所)とを受信時刻と共に行動履歴データベースに逐次記録することにより、看護師が移動した位置を行動履歴情報として蓄積する。
図4は、行動履歴データベースに記録される情報の一例を示したものである。
【0023】
なお、無線送信機10の無線通信圏内に複数のAP20が存在する場合は、当該複数のAP20が1つの無線送信機10から信号を受信する。この場合、管理装置30が複数のAP20から受信する情報の中には、同じ看護師IDを含むものが複数存在することになる。この場合、管理装置30は、それらの看護師IDと共に送信されたAPアドレスで示される複数のAP20の中から何れか1つを特定し、特定したAP20の位置情報を行動履歴データベースに記憶する。
【0024】
具体的には、管理装置30は、それぞれのAP20から看護師IDおよびAPアドレスと共に送られてくる受信電界強度(各AP20で検出される)に基づいて、何れか1つのAP20を特定する。例えば、受信電界強度が最も大きいAP20を特定する。そして、管理装置30は、その特定したAP20が存在する場所に無線送信機10が存在すると判定し、当該特定したAP20の位置情報を行動履歴データベースに記憶する。
【0025】
管理装置30は、以上のように行動履歴データベースとして蓄積した行動履歴情報に基づいて、看護師の行動状況を分析し、その結果を可視化して表示する機能を備えている。この機能を提供するのが本実施形態の行動状況可視化装置100であり、その機能構成を
図1に示している。なお、ここでは看護師の行動履歴情報を蓄積する機能と、その行動履歴情報から分析した行動状況を可視化して表示する機能との両方を同じ管理装置30が備える構成としたが、別の端末に備える構成としてもよい。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の行動状況可視化装置100は、その機能構成として、履歴情報取得部11、距離分析部12、グラフ生成部13および表示制御部14を備えている。また、本実施形態の行動状況可視化装置100には、行動履歴データベースを記憶する履歴情報記憶部101と、グラフ生成部13により生成されたグラフを表示するための表示装置102とが接続されている。なお、表示装置102は、管理装置30に対して通信ネットワークを介して接続された端末(図示せず)が備えるものであってもよい。
【0027】
上記各機能ブロック11~14は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック11~14は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現される。なお、当該プログラムは、ハードディスクや半導体メモリ等の他の記録媒体に記憶されていてもよい。
【0028】
履歴情報記憶部101は、病院内における看護師の行動履歴情報(上述した行動履歴データベース)を記憶する。この履歴情報記憶部101は、病院内における複数の看護師がいつ、どの場所にいたのかをそれぞれ表す行動履歴情報を記憶したものである。履歴情報取得部11は、履歴情報記憶部101から行動履歴情報を取得する。例えば、ユーザが管理装置30の操作部を操作することにより、看護師の行動状況を可視化して表示することを指示したときに、履歴情報取得部11が履歴情報記憶部101から行動履歴情報を取得する。なお、管理装置30に対して通信ネットワークを介して接続された端末が表示装置102を備える構成の場合は、当該端末の操作部をユーザが操作することによって看護師の行動状況を可視化して表示することを管理装置30に対して指示したときに、履歴情報取得部11が履歴情報記憶部101から行動履歴情報を取得する。
【0029】
ここで、履歴情報取得部11は、病院に所属する看護師全員に関する行動履歴情報を履歴情報記憶部101から取得する。この看護師の中には、チームを組んでいる看護師と、チームを組んでいない看護師との両方が含まれる。なお、履歴情報取得部11は、ユーザによる操作部の操作を通じて指定された所望の看護師に関する行動履歴情報のみを履歴情報記憶部101から選択的に取得するようにしてもよい。例えば、複数の病棟を有する病院において、病棟毎に所属する看護師が分かれている場合などに、何れかの病棟に所属する看護師のみを指定して行動履歴情報を取得するようにしてもよい。あるいは、特にチームを組んでいる看護師の行動履歴に絞って分析を行いたい場合などに、チームを組んでいる看護師のみを指定して行動履歴情報を取得するようにしてもよい。
【0030】
また、履歴情報取得部11は、ユーザによる操作部の操作によって指定された所望の期間(例えば、特定の数時間あるいは数日など)の行動履歴情報を履歴情報記憶部101から取得する。なお、履歴情報取得部11は、ユーザからの指定とは関係なく、現在から直近の所定期間(履歴情報記憶部101に記憶されている全期間でもよい)における行動履歴情報を履歴情報記憶部101から取得するようにしてもよい。
【0031】
距離分析部12は、履歴情報取得部11により取得された行動履歴情報に基づいて、一の看護師の所在場所とそれ以外の一の看護師の所在場所との距離を複数の時点ごとに求めて統計することにより、2人の看護師の組み合わせごとに看護師間の距離を分析する。ここで、各看護師の各時点における所在場所は、
図4に示す行動履歴データベースに含まれる各時刻の位置情報により示されている。一の看護師の所在場所とそれ以外の一の看護師の所在場所との距離は、同じ時刻における2人の看護師の位置情報から求めることが可能である。例えば、距離分析部12は、2つの位置情報で示される所在場所を直線で結んだ場合の直線距離を算出する。
【0032】
なお、ここでは説明を簡単にするために、複数の看護師が携帯している全ての無線送信機10から信号が同じ時刻に送信されることを前提としている。しかし、実際には多少の送信時刻のズレが生じる可能性がある。そこで、所定のマージン以内の誤差の時刻は同時刻とみなすようにしてもよい。
【0033】
ある2人の看護師間の距離は、時刻毎に変動し得る。よって、距離分析部12は、
図4の行動履歴データベースに記憶されている複数の時刻毎に看護師間の距離を算出し、それら複数の時点での距離を統計することにより、その統計値をある2人の看護師間の距離(以下、これを二者間距離という)とする。統計値は、例えば合計値でもよいし、平均値でもよい。距離分析部12は、このような二者間距離の計算を、2人の看護師の組み合わせを変えてそれぞれの組み合わせ毎に実行する。
【0034】
例えば、説明を簡単にするために、3人の看護師A,B,Cの二者間距離を分析する場合について説明すると、以下の通りである。距離分析部12は、ある時刻における看護師Aの所在場所と、同じ時刻における看護師Bの所在場所とに基づいて、当該ある時刻における看護師A,Bの距離を算出する。また、距離分析部12は、別の時刻における看護師A,Bの距離も算出する。そして、各時刻について算出した距離の統計値(合計値または平均値)を算出することにより、その統計値を看護師A,Bの二者間距離とする。距離分析部12は、これと同様にして、看護師A,Cの二者間距離、看護師B,Cの二者間距離も算出する。
【0035】
また、距離分析部12は、履歴情報取得部11により取得された行動履歴情報に基づいて、一の看護師の所在場所とそれ以外の全ての看護師の所在場所との距離を複数の時点ごとに求めて統計する(例えば、合計値または平均値を算出する)ことにより、一人の看護師と他の全ての看護師との組み合わせごとに看護師間の距離を分析する。すなわち、距離分析部12は、例えば看護師Aについて、看護師A以外の全ての看護師との間の距離の統計値を算出する。他の看護師B,Cについても同様に、本人以外の全ての看護師との間の距離の統計値をそれぞれ算出する。そして、こうして看護師ごとに算出した距離の統計値を、各看護師が関わりのあった他の全ての看護師との距離とする(以下、これを全者間距離という)。
【0036】
グラフ生成部13は、複数の看護師をノードで表し、距離分析部12により分析された2人の看護師間の二者間距離をノードの間のエッジの太さ、線種または線色の何れかで表したグラフであって、複数の看護師のうちチームを組んでいる看護師のノードを他と識別可能な態様で表したグラフを生成する。また、グラフ生成部13は、距離分析部12により分析された、ある看護師とそれ以外の全ての看護師との間の全者間距離をノードの表示態様により表したグラフを生成する。
【0037】
ここで、チームを組んでいる看護師のノードを他と識別可能にするためのノードの表示態様と、関わりのあった全ての看護師との間の全者間距離の長さを表すためのノードの表示態様とが異なっていれば、それぞれの表示態様は任意に設計することが可能である。例えば、チームを組んでいる看護師のノードを他と識別可能とするために、ノードの表示色を変えるようにするとともに、関わりのあった全ての看護師との全者間距離の長さを表すために、距離に応じてノードの大きさを変えるようにすることが一例として挙げられる。
【0038】
表示制御部14は、グラフ生成部13により生成されたグラフを表示装置102に表示させる。
図5は、表示装置102に表示されるグラフの一例を示す図である。ここでは、6人の看護師の行動履歴情報を分析して生成したグラフの表示例を示している。
【0039】
図5において、6個の円がそれぞれ6人の看護師を表すノードN1~N6である。これらのノードN1~N6は、関わりのあった全ての看護師との全者間距離に応じて決定された大きさで描画されている。ここでは、全者間距離が短いほど、ノードN1~N6の大きさが大きくなるようなグラフを生成している。例えば、グラフ生成部13は、関わりのあった全ての看護師との全者間距離をn-1個の閾値によってn個に分類し、その全者間距離がどの分類に属するかによって、ノードN1~N6の大きさをn段階で描画する。なお、
図5はn=3とした場合の例を示している。
【0040】
また、
図5の例において、グラフ生成部13は、チームを組んでいる看護師のノードの表示色を、チームを組んでいない看護師のノードの表示色と異ならせて描画している。また、複数のチームが存在する場合は、チーム毎に異なる表示色でノードを表示させている。
図5において、2つのノードN2,N3に対応する2人の看護師がチームを組んでおり、2つのノードN5,N6に対応する2人の看護師が別のチームを組んでいることが示されている。
【0041】
また、
図5において、2つのノード間を結ぶ直線が、距離分析部12により分析された2人の看護師の二者間距離を表すエッジである。
図5の例では、グラフ生成部13は、距離分析部12により分析された2人の看護師の二者間距離が短いほど、当該2人の看護師のノード間を結ぶエッジの太さを太く表したグラフを生成している。例えば、グラフ生成部13は、2人の看護師の二者間距離をm-1個の閾値によってm個に分類し、距離分析部12により分析された二者間距離がどの分類に属するかによって、エッジの太さをm段階で描画する。ここで、
図5はm=3とした場合の例を示している。
【0042】
なお、グラフ生成部13は、二者間距離をm個の閾値によってm+1個に分類し、距離分析部12により分析された二者間距離がどの分類に属するかによって、エッジの太さをm段階で描画するようにしても良い。ここで、二者間距離が最も大きいm+1個目の分類に関しては、エッジを非表示とする。
【0043】
このように、最大の閾値よりも大きい二者間距離についてはエッジを非表示とすることにより、複数のノード間に引かれるエッジの数が多数になることを抑制し、グラフを比較的簡素なものとして見やすくすることができる。ある2つのノード間にエッジが引かれていなければ、その2つのノードに相当する看護師間の二者間距離は最大の閾値よりも大きいということを把握することができるので、エッジが引かれていないということを自体も、ユーザにとって有益な情報の一部として機能している。
【0044】
グラフ生成部13は、距離分析部12により分析された二者間距離にかかわらず、所定の大きさの描画領域内に複数の看護師のノードが全て収まるように、複数の看護師のノードを配置したグラフを生成する。所定の大きさの描画領域は、例えば、
図5に示したように表示装置102の表示画面500に収まる範囲の描画領域である。上述したように、本実施形態では、ノード間を結ぶエッジを、二者間距離に応じた長さで描画する形態ではなく、二者間距離に応じた太さで描画する形態を採用している。そのため、2人の看護師間の距離が長くなっても、対応する2つのノードを長く離間して配置する必要がない。
【0045】
仮に、2つのノードを長く離間して配置した場合、全てのノードが表示装置102の表示画面500に収まるようにグラフを表示すると、グラフ全体の縮尺を小さくして表示することになるため、個々のノードや個々のエッジも小さく表示され、ノードの大きさやエッジの太さを識別しにくくなる。一方、ノードの大きさやエッジの太さの識別性を高めるためにグラフ全体の縮尺を大きくして表示すると、表示装置102の表示画面500に収まらなくなり、スクロールが必要となる。これに対し、本実施形態によれば、スクロールすることなくグラフ全体を表示画面500に収まるように表示させつつ、ノードの大きさやエッジの太さの識別性を高めることもできる。
【0046】
なお、ユーザからの表示指示に応じて、表示装置102の表示画面500に収まる範囲の描画領域内にグラフ全体を表示した後、ユーザからのズーム指示に応じてグラフを拡大表示または縮小表示できるようにしてもよい。
【0047】
ユーザは、
図5のように表示されたグラフを確認することにより、チームを組んでいる看護師が同じチーム内またはチーム外の看護師と統計的にどの程度の距離の近さで行動していたのかを、グラフを一見して把握することができる。ここで、エッジの太さによって2人の看護師間の距離が近いことが表されているほど、その看護師どうしは行動を共にしている時間が長いことを示唆していると言える。従って、本実施形態によれば、チームを組んでいる看護師がチーム内またはチーム外の看護師とどの程度行動を共にしているのかを容易に把握することができる。
【0048】
好ましくは、チームを組んでいる看護師どうしが行動を共にしている時間が、チーム外の看護師と行動を共にしている時間よりも長くなっていることが求められる。
図5のグラフを表示させれば、このような状態が実現できているか否かを一見して確認することができる。例えば、チームを組んでいるノードN2,N3の2人の看護師に関して、ノードN2,N3間のエッジが最も太くなっており、ノードN2,N3とそれ以外のノードN1,N4~N6との間のエッジがそれよりも細くなっているかどうかを確認すれば、好ましい状態で2人の看護師が行動しているかどうかを容易に把握することが可能である。
【0049】
また、本実施形態によれば、
図5のように表示されたグラフにおいてノードの大きさを確認することにより、個々の看護師について、他の看護師との関わりの多さを容易に把握することもできる。これにより、他の看護師と多くの関わりを持っている看護師や、他の看護師との関わりが少ない看護師を一見して把握することができる。
【0050】
以上のように把握した各種の状況をもとに、チームの編成を再考したり、各看護師に対する看護業務の割り当てを見直したりするなどして、業務効率の改善を図ることが可能となる。
【0051】
なお、上記実施形態では、グラフ生成部13は、各ノード間のエッジの太さ、および、各ノードの大きさを異ならせて表示するようにしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、表示される各ノードの大きさを同じ大きさとしても良い。つまり、全者間距離の分析は行わず、二者間距離の分析結果のみに基づいてグラフを生成するようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、チームを組んでいる看護師と他の看護師とを識別可能とするために、ノード自体の表示態様を変える例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図6に示すように、チームを組んでいる看護師に対応する複数のノードを矩形枠等に囲むようにしてもよい。この場合、矩形枠が大きくなってグラフが見にくくならないようにするために、チームを組んでいる看護師のノードどうしを近くに配置するのが好ましい。なお、ノード自体の表示態様でチームを組んでいる看護師と他の看護師とを識別可能とする場合は、チームを組んでいる看護師のノードどうしを近くに配置することは必須ではなく、グラフを生成する際の自由度が増すというメリットがある。
【0053】
また、上記実施形態では、単にノードとエッジの組み合わせから成るグラフを表示する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図5のように表示されたグラフにおいて、何れかのノードを指定する操作に応じて、指定されたノードに接続されているエッジをハイライト表示するようにしてもよい。
図5の例ではノードが6つのみであるが、ノードの数が増えるに従ってエッジの数も増え、複数のエッジが多重に重なり合うため、どのエッジがどのノードに接続されているのかが分かりにくくなる。この場合でも、指定したノードに接続されているエッジをハイライト表示すれば、関連するエッジのみを強調して、他のエッジと区別して見やすくすることができる。
【0054】
逆に、何れかのエッジを指定する操作に応じて、指定されたエッジの両端に接続されているノードをハイライト表示するようにしてもよい。
【0055】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
11 履歴情報取得部
12 距離分析部
13 グラフ生成部
14 表示制御部