(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】変色性組成物
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20221222BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20221222BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20221222BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20221222BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20221222BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20221222BHJP
A61K 8/40 20060101ALI20221222BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20221222BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20221222BHJP
A61K 8/368 20060101ALI20221222BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20221222BHJP
A61K 8/85 20060101ALI20221222BHJP
A61K 8/84 20060101ALI20221222BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20221222BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20221222BHJP
A61K 8/88 20060101ALI20221222BHJP
A61K 8/87 20060101ALI20221222BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20221222BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20221222BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20221222BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12M1/34 B
A23L5/00 Z
A61K8/02
A61K8/20
A61K8/19
A61K8/40
A61K8/49
A61K8/46
A61K8/368
A61K8/73
A61K8/85
A61K8/84
A61K8/81
A61K8/64
A61K8/88
A61K8/87
A61K8/98
A61K8/9789
A61K8/9794
(21)【出願番号】P 2019555114
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(86)【国際出願番号】 GB2018050913
(87)【国際公開番号】W WO2018185486
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-25
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519358597
【氏名又は名称】フレッシュ チェック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ボンド,アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】シンプソン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ピーチ,ロバート
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0056333(US,A1)
【文献】特表2007-514952(JP,A)
【文献】米国特許第05766607(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属、ここで前記金属は、鉄である;
金属凝集抑制剤
、ここで、前記金属凝集抑制剤は、脂肪族トリメチルアンモニウムブロミドである;および
変色剤、ここで前記変色剤は、クロムアズロールである;
を含み、
前記金属が前記変色剤に結合可能であり、前記金属の結合および/または放出時に変色をもたらし、
前記金属および前記変色剤が1:1~20のモル比で存在し、
前記金属および前記凝集抑制剤が1:0.5~30のモル比で存在する、
組成物。
【請求項2】
前記組成物は、噴霧可能組成物であり、界面活性剤および液体ビヒクルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
下記(a)または下記(b)を満たす、請求項1または2に記載の組成物:
(a)前記金属および前記変色剤が1:2~13のモル比で存在する;
(b)前記金属および前記変色剤が1:2.5~17.5のモル比で存在する。
【請求項4】
下記(a)または下記(b)を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物:
(a)前記金属および前記凝集抑制剤が1:0.5~7のモル比で存在する;
(b)前記金属および前記凝集抑制剤が1:0.75~27.5のモル比で存在する。
【請求項5】
前記組成物が噴霧可能であり、液体ビヒクルを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
下記(a)および/または下記(b)を満たす、請求項5に記載の組成物:
(a)前記液体ビヒクルは、水である;
(b)前記液体ビヒクルが、0.1gの前記金属、前記金属凝集抑制剤および前記変色剤の成分に対して50ml~1,000mlのレベルで存在する。
【請求項7】
界面活性剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
下記(a)、下記(b)および下記(c)からなる群より選択される少なくとも1つを満たす、請求項7に記載の組成物:
(a)前記金属および前記界面活性剤が1:500~7,000の重量比で存在する;
(b)前記界面活性剤が、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDTMA)、ポリソルベート、脂肪族フェノールエトキシレート、脂肪族スルホベタイン、または脂肪族トリメチルアンモニウムブロミドである;
(c)前記金属および前記変色剤が1:1~15のモル比で存在する。
【請求項9】
前記金属が鉄(III)である、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記変色剤がクロムアズロールBである、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記変色剤がクロムアズロールS(CAS)である、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
内部に組成物を有する基材担体を含む基材であって、前記組成物が、
金属、ここで前記金属は、鉄である;
金属凝集抑制剤
、ここで、前記金属凝集抑制剤は、脂肪族トリメチルアンモニウムブロミドである;および
変色剤、ここで前記変色剤は、クロムアズロールである;
を含み、
前記金属が前記変色剤に結合可能であり、前記金属の結合および/または放出時に変色をもたらし、
前記金属および前記凝集抑制剤が1:0.5~30のモル比で存在し、
前記金属および前記変色剤が1:1~20のモル比で存在する、
基材。
【請求項13】
下記(a)、下記(b)および下記(c)からなる群より選択される少なくとも1つを満たす、請求項
12に記載の基材:
(a)前記基材担体が不織材料である;
(b)前記基材担体が、セルロース、ポリエステル、リグニン、タンパク質、アクリル、ナイロン、アラミド、ポリウレタン、アルギネートおよび/またはそれらの混合物を含む;
(c)前記基材担体が、パルプ、ウール、シルク、ジュート、リネン、ラミー、サイザル、バガス、バナナ繊維、麻、亜麻、ラクダ毛、ケナフおよび/またはそれらの混合物を含む。
【請求項14】
下記(a)、下記(b)および下記(c)からなる群より選択される少なくとも1つを満たす、請求項
12または
13に記載の基材:
(a)前記基材が吸収性である;
(b)前記基材が、拭き取り用品である;
(c)前記基材が湿っている。
【請求項15】
前記組成物が請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物である、請求項
12~
14のいずれか1項に記載の基材。
【請求項16】
組成物および担体を包む膜を含むラベルであって、前記組成物が、
金属、ここで前記金属は、鉄である;
金属凝集抑制剤
、ここで、前記金属凝集抑制剤は、脂肪族トリメチルアンモニウムブロミドである;および
変色剤、ここで前記変色剤は、クロムアズロールである;
を含み、
前記金属が前記変色剤に結合可能で、前記金属の結合および/または放出時に変色をもたらし;
前記膜が前記変色剤に対して不透過性で、通過を防止し、
前記膜がシデロフォアに対して透過性で、通過を可能にして前記変色剤と接触させ、
前記金属および前記凝集抑制剤が1:0.5~30のモル比で存在し、
前記金属および前記変色剤が1:1~20のモル比で存在する、
ラベル。
【請求項17】
下記(a)、下記(b)、下記(c)、下記(d)、下記(e)、下記(f)、下記(g)および下記(h)からなる群より選択される少なくとも1つを満たす、請求項
16に記載のラベル:
(a)前記組成物が請求項1~
11のいずれか1項に記載の組成物である;
(b)前記膜が前記金属および/または前記金属凝集抑制剤に対して不透過性で、通過を防止する;
(c)前記膜がサイズ排除膜である;
(d)前記サイズ排除膜が、分子量が1キロダルトン以上の種の通過を防止するサイズである;
(e)前記膜がセルロースまたはベンゾイル化セルロースを含む;
(f)前記担体が乾燥している;
(g)前記担体が、寒天、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ゼラチン、セルロース、ペクチン、エチレンビニルアルコールポリマー、ポリウレタン、ポリスチレン、メトキシルペクチンゲル、加工デンプン/小麦繊維ゲル(wheat fibre gel)、アシルジェランガム、および直鎖硫酸化多糖類からなる群より選択される;
(h)食品および/または飲料で使用するためのものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、組成物を含む基材、および組成物を含むラベルに関する。本発明は、細菌などの微生物の検出、低減および/または排除における特定の、ただし非排他的な用途を有する。本発明はまた、pHなどの化学変化の検出における特定の、ただし非排他的な用途を有する。
【背景技術】
【0002】
細菌などの微生物は、通常、多くの生物学的プロセスのために金属種(例えば、鉄)を必要とする。細菌は通常、シデロフォアとして知られる鉄キレート化合物(例えば、エンテロバクチン)によって周囲環境から鉄を抽出する。細菌によって分泌されるシデロフォアは、高い鉄(Fe3+)結合親和性を有し、それによって周囲の鉄を封鎖することができる。封鎖後、シデロフォアに結合した鉄は、能動輸送機構を使用して細菌に取り込まれ得る。
【0003】
クロムアズロールS(CAS)は、鉄の結合および/または放出時に変色(結合時に青色、放出時/非結合形態でオレンジ色)をもたらす変色剤である。鉄結合親和性が高いため、鉄が結合したCASがシデロフォアにさらされると、鉄がCASから放出され、代わりにシデロフォアに優先的に結合し、それによって、CASが変色する。
【0004】
サンプルに存在する細菌のレベルは、そのサンプルに存在するシデロフォアの量に関係し、存在するシデロフォアの量は、封鎖できる鉄の量(the amount of iron that can be sequestered)に関係する。同様に、鉄の結合および/または放出に起因する変色は、結合および/または放出される鉄の量に関係する。したがって、CASに結合した鉄の放出に起因する変色を使用して、サンプルに存在する細菌の量を測定できる。
【0005】
他の微生物も鉄の取り込みに同様の手法を採用しており、他の金属も同様に封鎖することができる。
【0006】
多くの環境では、微生物を低減または排除することが望ましく、それによって、生存生物への感染のリスクを低減または排除することが望ましい。
【0007】
CASを特定の化学環境にさらしても、鉄が放出され、CASの変色をもたらす。例として、CASは、酸性環境にあるときと塩基性環境にあるときとで鉄に対する結合親和性が異なる場合がある。
【0008】
微生物を低減または排除するための改善された技術を提供する、かつ/または改善された微生物検出技術、および/または特定の化学環境を検出するための改善された技術を提供する、かつ/またはそうでなければ、ここで特定されているかどうかにかかわらず、既知の技術の1つ以上の欠点を、除去および/または軽減することが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、
金属と、
金属凝集抑制剤と、
変色剤と、
界面活性剤と、
液体ビヒクルと
を含み、
金属が変色剤に結合可能であり、金属の結合および/または放出時に変色をもたらす、噴霧可能組成物が提供される。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、
金属と、
金属凝集抑制剤と、
変色剤と、
を含み、
金属が変色剤に結合可能であり、金属の結合および/または放出時に変色をもたらし、
金属および変色剤が約1:1~15のモル比で存在する、組成物が提供される。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、内部に組成物を有する基材担体を含む基材であって、組成物が、
金属と、
金属凝集抑制剤と、
変色剤と、
を含み、
金属が変色剤に結合可能であり、金属の結合および/または放出時に変色をもたらす、基材が提供される。
【0012】
本発明の第4の態様によれば、組成物および担体を包む膜を含むラベルであって、組成物が、
金属と、
金属凝集抑制剤と、
変色剤と、
を含み、
金属が変色剤に結合可能で、金属の結合および/または放出時に変色をもたらし、
膜が変色剤に対して不透過性で、通過を防止し、膜がシデロフォアに対して透過性で、通過を可能にして変色剤と接触させる、ラベルが提供される。
【0013】
本発明の第5の態様によれば、第4の態様によるラベルを含む食品および/または飲料容器が提供される。
【0014】
定義
本明細書で使用される「脂肪族」という用語は、完全に飽和しているか、または1つ以上の不飽和単位を含むが芳香族ではない、置換または非置換の直鎖、分岐鎖もしくは環状炭化水素を意味する。
【0015】
本明細書で使用される「アルキル基」という用語は、分岐鎖および直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素ラジカル/基を指す。
【0016】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、所与の特徴がその品質に従って「正確」である必要がないように品質を変更することを意図する。適切には、この修飾語句は、与えられた品質からの偏差が約20%以下、例えば約15%以下、例えば約10%以下、例えば約5%以下、例えば約1%以下、例えば約0%であることを示してもよい。一般的に言えば、偏差が小さい方が望ましい。例として、膜が可視スペクトルで実質的に透明であると説明される場合、膜は可視スペクトルで約80%のみ透明であり得る。
【0017】
本明細書で使用される「金属」という用語は、金属の元素形態または化合物を含むことを意図する。
【0018】
本明細書で使用される特定の構成要素に適用される「通過を防止する」という用語は、通過によってその特定の構成要素の本質的な特性に実質的に影響を与えない限り、完全に通過を防止することと、部分的に通過を防止すること(例えば、通過を抑制/妨害すること)との両方を包含することを意図する。
【0019】
例として、変色剤の通過を防止するために変色剤に対して不透過性の膜は、十分な量の変色剤が持続して金属の結合時/または放出に変色をもたらす程度まで、変色剤の通過を実質的に防止する膜を包含してもよい(By way of example, the membrane being impermeable to the colour changing agent to prevent passage thereof may encompass the membrane substantially preventing passage of the colour changing agent to the extent that a sufficient quantity of colour changing agent persists to effect a colour change upon binding and/or release of the metal.)。
【0020】
適切には、「防止」とは、(例えば、約1ヶ月の期間にわたって測定された)重量ベースで、関連する成分の約20%以下、例えば、約15%以下、例えば約10%以下、例えば約5%以下、例えば約1%以下が膜を通過し得ることを意味すると理解され得る。一般的に言えば、偏差が小さい方が好ましく、通過が約0%であることが最も好ましい。反対の定義が、「通過を可能にする」(すなわち、完全に可能にすることと部分的に可能にすることとの両方を包含する)という用語に当てはまる。
【0021】
本明細書で使用される場合、比は、成分A対成分Bが約1:1~5の比であるような比の範囲として定義され得る。これは、成分Bが、成分Aの等量から成分Bのその量の5倍の範囲で存在し得ることを意味すると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】さまざまなpHでのCASの発光スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の態様によれば、
金属と、
金属凝集抑制剤と、
変色剤と、
界面活性剤と、
液体ビヒクルと
を含み、
金属が変色剤に結合可能であり、金属の結合および/または放出時に変色をもたらす、噴霧可能組成物が提供される。
【0024】
本発明の組成物は、微生物の検出および低減および/または排除が望ましい用途に有用である。本発明の組成物は、物品(例えば、表面)に噴霧して、変色剤、金属、および微生物(例えば、細菌)により放出されるシデロフォア間の相互作用から生じる変色により微生物の存在を検出するために使用することができる。併せて、界面活性剤成分を使用して、リン脂質二重層で構成された細菌細胞膜の破壊(例えば、破裂)によって殺菌することができる。
【0025】
変色の強さは、存在するシデロフォアの量に関係し、したがって細菌のレベルに関係する。その結果、本発明の組成物の使用者は、必要な消毒のレベル、例えば、検出された微生物を低減および/または排除するために、さらなる組成物を適用する必要があるかどうか、および/またはさらなる洗浄(例えば、スクラビングなどの機械的洗浄)が必要かどうかを決定することができる。
【0026】
したがって、本発明の組成物は洗浄を容易にすることが理解されるであろう。特に、少量の組成物を(例えば、少量の噴霧によって)洗浄が必要な物品(例えば、表面)に塗布し、表面が汚染されているかどうかについてフィードバックすることができる。変色が起こる場合、さらなる組成物および/または他の洗浄剤を物品に塗布することができ、および/またはさらなる洗浄を行うことができる。これは、変色が観察されなくなるまで継続することができる。
【0027】
あるいは、またはさらに、本発明の組成物は、特定の化学物質(例えば、酸性または塩基性化学物質)の検出が望ましい用途に有用であり得る。上述のように、本発明の組成物は物品(例えば表面)に噴霧して、変色剤、金属および存在する化学物質間の相互作用から生じる変色によって化学物質の存在を検出するために使用することができる。
【0028】
一般的に言えば、本発明の組成物は、金属に対する変色剤の結合親和性を変える化学物質の検出に適しており、該化学物質にさらされると変色剤に変色が生じる。
【0029】
CAS(例えば、CAS S)などの変色剤は、4つのイオン化可能な水素部分を有する四塩基性であってもよい。1つ以上の上記部分をイオン化することによって、変色がもたらされ得る。したがって、上記のイオン化を達成することができる化学物質は、そのような変色剤への曝露時に検出可能となり得る。当業者は、本発明の組成物が検出に適している化学物質の性質を理解するであろう。
【0030】
変色剤は、可視スペクトル(例えば、約390nm~700nm)内の変色をもたらし得る。
【0031】
金属および金属凝集抑制剤は、約1:0.5~7、場合によって約1:0.5~7、場合によって約1:0.75~6、場合によって約1:0.75~5、場合によって約1:0.75~3、場合によって約1:1~2、場合によって約1:1~1.5、場合によって約1:1.3のモル比で存在してもよい。
【0032】
金属凝集抑制剤の量は、金属の凝集を適切に妨害、抑制または防止する前述の機能を提供するのに十分でなければならない。
【0033】
特定の金属凝集抑制剤は金属(例えば、鉄)に強く結合するため、過剰なレベル(すなわち、凝集抑制剤としての機能を果たすのに必要なレベルを超える)で存在することは望ましくない場合がある。特に、そのような金属凝集抑制剤が過剰な場合、シデロフォアおよび/または変色剤による金属の取り込みを阻害し、それにより変色を阻害または防止する可能性がある。
【0034】
金属と変色剤は、約1:1~15、場合によって約1:2~13、場合によって約1:2~11.5、場合によって約1:2~約8、場合によって約1:2~5、場合によって約1:2~4、場合によって約1:3.3のモル比で存在してもよい。
【0035】
変色剤の量は、金属の結合および/または放出時に変色をもたらす前述の機能を提供するのに十分でなければならない。
【0036】
特定の変色剤は、それらが塗布される物品(例えば、表面)を染色する可能性があるため、過剰なレベル(すなわち、その機能を果たすのに必要なレベルを超える)で存在することは望ましくない場合がある。
【0037】
金属および界面活性剤は約1:500~7,000、場合によって約1:750~4,500、場合によって約1:750~3,000、場合によって約1:1,000~1,500、場合によって約1:1,200の重量比で存在してもよい。本明細書で使用される場合、鉄の重量とは、鉄元素(すなわち、Fe)の当量重量を指し、鉄含有化合物(例えば、FeCl3)の総重量ではない。
【0038】
金属および界面活性剤は、約1:25~240、場合によって約1:25~200、場合によって約1:25~150、場合によって約1:25~約100、場合によって約1:30~約70、場合によって約1:40~約60、場合によって約1:51のモル比で存在してもよい。
【0039】
界面活性剤成分は、変色剤による物品(例えば、汚染除去を必要とする物品)の染色を低減させることができる。
【0040】
鉄、金属凝集抑制剤、変色剤および界面活性剤の相対比は、用途に応じて調整することができる。
【0041】
一部の界面活性剤は、上記の凝集抑制剤と同様の方法で金属(例えば、鉄)に強く結合するため、過剰なレベル(すなわち、洗浄用の界面活性剤としての機能を果たすために必要なレベルを超える)で存在することは同様に望ましくない場合がある。
【0042】
界面活性剤は、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDTMA)、ポリソルベート(場合によってポリソルベート80またはポリソルベート20、場合によってTween(登録商標))、脂肪族フェノールエトキシレート(例えば、Triton X-100、場合によって脂肪族基はアルキル基であり、場合によって脂肪族フェノールエトキシレートはオクチルフェノールエトキシレートである)、脂肪族スルホベタイン(場合によって脂肪族基はアルキル基であり、場合によって脂肪族基は8~16個の炭素原子の直鎖長を有し、場合によって脂肪族スルホベタインはラウリルスルホベタインである)、脂肪族トリメチルアンモニウムブロミド(場合によって脂肪族基はアルキル基であり、場合によって脂肪族基は10~22個の炭素原子の直鎖長を有し、場合によって脂肪族トリメチルアンモニウムブロミドはミリスチルトリメチルアンモニウムブロミドまたはトリメチルオクタデシルアンモニウムブロミドである)であり、場合によって界面活性剤がヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDTMA)であってもよい。
【0043】
界面活性剤は、ポリソルベート(場合によってポリソルベート80(すなわち、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)またはポリソルベート20、場合によってTween(登録商標))、脂肪族フェノールエトキシレート(例えば、Triton X-100、場合によって脂肪族基はアルキル基であり、場合によって脂肪族フェノールエトキシレートはオクチルフェノールエトキシレートである)、脂肪族スルホベタイン(場合によって脂肪族基はアルキル基であり、場合によって脂肪族基は8~16個の炭素原子の直鎖長を有し、場合によって脂肪族スルホベタインはラウリルスルホベタインである)、脂肪族トリメチルアンモニウムブロミド(場合によって脂肪族基はアルキル基であり、場合によって脂肪族基は10~22個の炭素原子の直鎖長を有し、場合によって脂肪族トリメチルアンモニウムブロミドはミリスチルトリメチルアンモニウムブロミドまたはトリメチルオクタデシルアンモニウムブロミドである)であってもよい。
【0044】
特定の界面活性剤は、金属と結合し、それにより変色剤および/またはシデロフォアによる金属の取り込みを妨害または防止する場合がある。したがって、界面活性剤は、変色剤および/またはシデロフォアよりも低い金属結合親和性を有するように選択され得る。シデロフォアは、鉄に対する結合親和性、Kdが約1030M-1より大きい。
【0045】
適切には、界面活性剤は、シデロフォアの結合親和性が界面活性剤よりも少なくとも約10倍高く、場合によって少なくとも約50倍高く、場合によって少なくとも約100倍高く、場合によって少なくとも約1,000倍高く、場合によって少なくとも約10,000倍高く、場合によって少なくとも約100,000倍高くなるように選択され得る。一般的に言えば、(界面活性剤に対して)変色剤および/またはシデロフォアの相対的結合親和性がより高いことが好ましい。
【0046】
ポリソルベート界面活性剤は、変色剤(CASなど、例えばCAS S)と相互作用するとは考えられていない。
【0047】
液体ビヒクルは水であってもよい。水は、リン脂質二重層に由来する脂質を含むエマルジョンの形成による細菌細胞膜の破壊に有用であり得る。
【0048】
液体ビヒクルは、組成物中の他の成分約1g(すなわち、1gは、金属、金属凝集抑制剤、変色剤および界面活性剤の総重量を指す)に対して約50ml~1,000ml、場合によって約1gに対して約100ml~800ml、場合によって約1gに対して約200ml~550ml、場合によって約1gに対して約375mlのレベルで存在してもよい。
【0049】
あるいは、液体ビヒクルは、組成物中の他の成分約0.1g(すなわち、0.1gは、金属、金属凝集抑制剤、変色剤および界面活性剤の総重量を指す)に対して約50ml~2,000ml、場合によって約0.1gに対して約200ml~1,600ml、場合によって約0.1gに対して約250ml~1,100ml、場合によって約0.1gに対して約300ml~500mlの範囲で存在してもよい。
【0050】
液体ビヒクルを使用した組成物の希釈は、組成物による染色の低減に有用であり得る。希釈は、可視可能な変色の生成にも役立ち得る。
【0051】
本発明の第2の態様によれば、
金属と、
金属凝集抑制剤と、
変色剤と、
を含み、
金属が変色剤に結合可能であり、金属の結合および/または放出時に変色をもたらし、
金属および変色剤が約1:1~15のモル比で存在する、組成物が提供される。
【0052】
本発明の第2の態様の組成物は、シデロフォア、さらには微生物の存在および/またはレベルの検出のための変色ラベルに有用であり得る。
【0053】
金属および変色剤は、約1:2~13、場合によって約1:2~11.5、場合によって約1:2~約8、場合によって約1:2~5、場合によって約1:2~4、場合によって約1:3.3のモル比で存在してもよい。そのような組成物は、ラベルへの組み込みに有用であり得、および/または本明細書で説明されるように、微生物および/または化学物質の検出のための組成物それ自体として有用であり得る。
【0054】
金属および変色剤は、約1:1~20、場合によって約1:2.5~17.5、場合によって約1:5~約15、場合によって約1:7.5~12.5、場合によって約1:10のモル比で存在してもよい。そのような組成物は、拭き取り用品への組み込みに有用であり得、および/または本明細書で説明されるように、微生物および/または化学物質の検出のための組成物それ自体として有用であり得る。
【0055】
金属および凝集抑制剤は、約1:0.5~7、場合によって約1:0.5~7、場合によって約1:0.75~6、場合によって約1:0.75~5、場合によって約1:0.75~3、場合によって約1:1~2、場合によって約1:1~1.5、場合によって約1:1.3のモル比で存在してもよい。そのような組成物は、ラベルへの組み込みに有用であり得、および/または本明細書で説明されるように、微生物および/または化学物質の検出のための組成物それ自体として有用であり得る。
【0056】
金属および凝集抑制剤は、約1:0.5~30、場合によって約1:0.75~27.5、場合によって約1:0.75~25、場合によって約1:5~25、場合によって約1:10~25、場合によって約1:15~25、場合によって約1:17.5~22.5、場合によって約1:20のモル比で存在してもよい。そのような組成物は、拭き取り用品への組み込みに有用であり得、および/または本明細書で説明されるように、微生物および/または化学物質の検出のための組成物それ自体として有用であり得る。
【0057】
鉄、金属凝集抑制剤および変色剤の相対比は、用途に応じて調整することができる。
【0058】
組成物は、液体ビヒクル(場合によって水)をさらに含んでもよい。液体ビヒクルを含むことによって、組成物のラベルへの塗布を容易にすることができる。
【0059】
液体ビヒクルは、組成物中の他の成分約1g(すなわち、1gは、金属、金属凝集抑制剤および変色剤の総重量を指す)に対して約50ml~200ml、場合によって約1gに対して約75ml~150ml、場合によって約1gに対して約85ml~130ml、場合によって約1gに対して約100mlのレベルで存在してもよい。
【0060】
本発明の第2の態様の組成物は、液体ビヒクルを含む噴霧可能組成物であってもよい。噴霧可能組成物は、微生物および/または特定の化学物質(例えば、酸性または塩基性化学物質)の検出が望ましい場合に有用であり得る。上述のように、本発明の組成物は物品(例えば表面)に噴霧して、変色剤、金属および存在する化学物質間の相互作用から生じる変色によって微生物および/または化学物質の存在を検出するために使用することができる。
【0061】
本発明の第2の態様の組成物が噴霧可能組成物である場合、液体ビヒクルは、金属、金属凝集抑制剤および変色剤の成分の約0.1gに対して約50ml~2000ml、場合によって約0.1gに対して約200ml~1,600ml、場合によって約0.1gに対して約250ml~1,100ml、場合によって約0.1gに対して約300ml~500mlのレベルで存在してもよい。
【0062】
組成物は、界面活性剤をさらに含んでもよい。金属および界面活性剤は約1:500~7,000、場合によって約1:750~4,500、場合によって約1:750~3,000、場合によって約1:1,000~1,500、場合によって約1:1,200の重量比で存在してもよい。
【0063】
界面活性剤は、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDTMA)、ポリソルベート(場合によってポリソルベート80またはポリソルベート20、場合によってTween(登録商標))、脂肪族フェノールエトキシレート(例えば、Triton X-100、場合によって脂肪族基はアルキル基であり、場合によって脂肪族フェノールエトキシレートはオクチルフェノールエトキシレートである)、脂肪族スルホベタイン(場合によって脂肪族基はアルキル基であり、場合によって脂肪族基は8~16個の炭素原子の直鎖長を有し、場合によって脂肪族スルホベタインはラウリルスルホベタインである)、脂肪族トリメチルアンモニウムブロミド(場合によって脂肪族基はアルキル基であり、場合によって脂肪族基は10~22個の炭素原子の直鎖長を有し、場合によって脂肪族トリメチルアンモニウムブロミドはミリスチルトリメチルアンモニウムブロミドまたはトリメチルオクタデシルアンモニウムブロミドである)であり、場合によって界面活性剤がヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDTMA)であってもよい。
【0064】
金属および界面活性剤は、約1:25~240、場合によって約1:25~200、場合によって約1:25~150、場合によって約1:25~約100、場合によって約1:30~約70、場合によって約1:40~約60、場合によって約1:51のモル比で存在してもよい。
【0065】
本発明の第1および第2の態様の共通の特徴を以下に述べる。
【0066】
金属は鉄、場合によって鉄(III)、場合によってFeCl3、例えば水和FeCl3(FeCl3・6H2O)であってもよい。
【0067】
変色剤は、クロムアズロール(例えば、クロムアズロールSまたはクロムアズロールB)またはタンニンであってもよい。変色剤は、クロムアズロールS(CAS)であってもよい。クロムアズロール化合物は、鉄と結合すると青色を形成し、鉄が存在しないとオレンジ色になる。
【0068】
【0069】
タンニンは、ベスカラギン、カスタラギン[(33ベータ)-ベスカラギンの異性体](castalagin [(33beta)-isomer of vescalagin])、ペンタ-O-ガロイル-ベータ-D-グルコースなどのポリフェノール化合物のクラスである。
【0070】
クロムアズロール化合物は、特に化合物の結合の結果として、異なる異性体および/または塩の形で存在する可能性があることが理解されよう。本明細書では、そのようなすべての形態が想定される。
【0071】
凝集抑制剤は脂肪族トリメチルアンモニウムブロミドであってもよく、場合によって脂肪族基はアルキル基であってもよく、場合によって脂肪族基は12から22個の炭素原子、例えば約14~18個の炭素原子の直鎖長を有してもよい。
【0072】
凝集抑制剤は、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDTMA)であってもよい。HDTMAは抗菌効果ももたらすため、HDTMAは洗浄用途(例えば、噴霧可能組成物)の文脈で特に有用である。
【0073】
HDTMAは、界面活性剤としても機能し得る。本発明の文脈において、界面活性剤金属凝集抑制剤(例えばHDTMA)と界面活性剤との両方が存在する場合、金属凝集抑制剤は界面活性剤成分とは異なる成分を定義すると理解されるべきである。言い換えれば、界面活性剤と金属凝集抑制剤とは異なる化学物質である。
【0074】
HDTMAは金属(例えば、鉄)に強く結合するため、十分な界面活性剤(洗浄)効果をもたらすために必要なレベルなど、過剰なレベル(すなわち、凝集抑制剤としての機能を果たすために必要なレベルを超える)で存在することは望ましくない場合がある。特に、過剰なHDTMAは、シデロフォアによる金属の取り込みを阻害し、それにより変色を阻害または防止する可能性がある。同じ懸念が他の金属凝集抑制剤にも当てはまる場合がある。
【0075】
本発明の第3の態様によれば、内部に組成物を有する基材担体を含む基材であって、組成物が、
金属と、
金属凝集抑制剤と、
変色剤と、
を含み、
金属が変色剤に結合可能であり、金属の結合および/または放出時に変色をもたらす、基材が提供される。
【0076】
本発明の基材は、微生物の検出が望ましい用途に有用である。物品(例えば、表面)上の基材を拭いて、変色剤、金属、および微生物(例えば、細菌)により放出されるシデロフォア間の相互作用から生じる変色により微生物の存在を検出するために使用することができる。
【0077】
あるいは、またはさらに、本発明の基材は、特定の化学物質(例えば、酸性または塩基性化学物質)の検出が望ましい用途に有用であり得る。
【0078】
変色の強さは、シデロフォアの量に関係し、したがって細菌のレベルに関係する。あるいは、またはさらに、変色の強さは、存在する化学物質の量に関係する。結果として、本発明の基材の使用者は、本発明の基材に存在する微生物および/または化学物質のレベルを決定することができる。
【0079】
基材担体は、繊維状材料(場合によって紙または布地)などの不織材料であってもよい。
【0080】
基材担体は、セルロース、ポリエステル、リグニン、タンパク質、アクリル、ナイロン、アラミド、ポリウレタン、アルギネートおよび/またはそれらの混合物(例えば、リグノセルロース繊維)を含んでもよい。基材担体は、セルロース、ポリエステル、リグニンおよび/またはそれらの混合物(例えば、リグノセルロース繊維)を含んでもよく、場合によって基材担体はセルロースを含む。
【0081】
基材担体は、パルプ、ウール、シルク、ジュート、リネン、ラミー、サイザル、バガス、バナナ繊維、麻、亜麻、ラクダ毛、ケナフおよび/またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0082】
基材は、吸収性であってもよい。基材は、(基材の総重量に基づいて)少なくとも約1倍重量の液体、例えば少なくとも約2倍重量の液体、例えば少なくとも約3倍重量の液体、例えば少なくとも約5倍重量の液体を吸収することができる。基材は、(基材の総重量に基づいて)約1~10倍重量の液体、例えば約2~8倍重量の液体、例えば約3~7倍重量の液体を吸収することができる。
【0083】
基材は、拭き取り用品、例えば表面拭き取り用品または個人用(例えば、乳児用)拭き取り用品、ペーパータオル、またはティッシュ(例えばトイレ用または顔用ティッシュ)であってもよい。基材は、表面拭き取り用品であってもよい。
【0084】
組成物は、本発明の第2の態様において上記で定義された通りであってもよい。
【0085】
基材は、(すなわち、液体で)湿らせてもよい。基材は、水で湿らせてもよい。基材は、(基材の総重量に基づいて)約0.1~10倍重量の液体、例えば約0.25~7.5倍重量の液体、例えば約0.5~5倍重量の液体、例えば約1~5倍重量の液体で湿らせてもよい。
【0086】
本発明の第4の態様によれば、組成物および担体を包む膜を含むラベルであって、組成物が、
金属と、
金属凝集抑制剤と、
変色剤と、
を含み、
金属が変色剤に結合可能で、金属の結合および/または放出時に変色をもたらし、
膜が変色剤に対して不透過性で、通過を防止し、膜がシデロフォアに対して透過性で、通過を可能にして変色剤と接触させる、ラベルが提供される。
【0087】
本発明のラベルは、微生物(例えば、細菌)が存在するか、および/または特定のレベルを超えるかどうかを示すために使用することができる。ラベルは、食品および/または飲料が安全に摂取できるかどうかを判断するために、食品および/または飲料の用途に使用してもよい。
【0088】
例として、ラベルは、肉を保持する密封容器の内側に設けてもよい。時間が経つにつれて、肉に存在する細菌が増殖し、最終的に肉は有毒になる。細菌が増殖すると、存在するシデラフォアの量は増加する。シデラフォアは膜を通過して移動し、変色剤と接触し、金属を封鎖して変色剤から金属を放出させる。シデラフォアの量が特定のレベルに達すると、これにより可視可能な変色剤の変色を引き起こし、肉がもはや安全に食せないことを示す。
【0089】
膜の透過性によって、(例えば、ラベルの近くにある可能性のある、例えばラベルがつけられた容器内の、食品および/または飲料の)汚染および/または変色を引き起こす可能性のある変色剤のラベルからの浸出を防止する。特定の変色剤は有毒である可能性があるため、このように通過を防止することが、ラベルから浸出する(その結果ラベルの近くの食品および/または飲料に接触する可能性がある)有毒物質を避けるために望ましい場合がある。あるいは、またはさらに、特定の変色剤は、他の望ましくない効果、例えば染色、味の変化などを引き起こす可能性があるため、このような膜の透過性は、この点で利点をもたらす可能性がある。
【0090】
膜の透過性によって、(例えば、ラベルの近くにある食品および/または飲料に存在する細菌によって放出された場合に)シデロフォアが膜を通過して変色剤と接触し得ることが保証される。
【0091】
膜は、金属および/または金属凝集抑制剤に対して不透過性として、それらの通過を防止してもよい。変色剤と同じく、金属および/または金属凝集抑制剤は、同様に汚染および/または変色を引き起こす可能性がある。
【0092】
ラベルは、食品および/または飲料容器に(例えば、粘着力、場合によってステッカーの形態で接着、またはそうでなければそれに固定することにより)つけるように構成されてもよい。
【0093】
ラベルは、例えばラベルが食品および/または飲料容器、ならびに/あるいは担体の上にある(それにより担体への通過を可能にする)膜の一部につけられる場合、膜の一部のみ、例えば食物および/または飲料に面する膜の部分のみでシデロフォアの通過を可能にするように膜が透過性であるように構成することができる。膜の残りの部分は実質的に密封され、組成物の成分および/または周囲材料の膜の通過を実質的に防止することができる。
【0094】
ラベル中の組成物は、本発明の第1または第2の態様において上記で定義された通りであってもよい。
【0095】
膜は、可視スペクトルで実質的に透明であってもよい。
【0096】
膜は、サイズ排除膜であってもよく、場合によってシデロフォアの通過を可能にしながら、種(例えば、変色剤などの組成物の1つ以上の成分)の通過を防止するサイズであってもよい。
【0097】
サイズ排除膜は、さまざまなサイズの分子量を有する種の通過を可能にするかまたは制限するサイズの細孔を含んでもよい。
【0098】
サイズ排除膜は、分子量が約1キロダルトン以上、場合によって約2キロダルトン以上、場合によって約4キロダルトン以上、場合によって約6キロダルトン以上、場合によって約8キロダルトン以上、場合によって約10キロダルトン以上、場合によって約12キロダルトン以上、場合によって約15キロダルトン以上の種の通過を防止するサイズである、細孔を含んでもよい。予期しなかったが、引用した範囲を超える重量を有する成分の通過を防止し、その結果としてより低い重量の成分の通過を可能にするサイズの細孔を有する、サイズ排除膜は、それにもかかわらず、そのようなより低い重量の成分(例えば、CASなどの変色剤)の膜の通過を阻止し得ることがわかった。高分子量の種の通過を可能にするように構成されたサイズ排除膜を使用することは、それらの膜の孔径が比較的大きいことを意味することが理解されよう。大きな孔径を有するサイズ排除膜を選択することは、シデロフォアの膜の通過を促進するのに有用であり得ることがさらに理解されるであろう。
【0099】
理論に束縛されることを望まないが、サイズ排除膜は、その孔径にあまり関係なく、特定の荷電種(例えば、CASなどの変色剤)の通過を防止し得ることが理解される。帯電した膜は、電気的反発力により、膜と同じ符号の電荷を有する共イオンをはじくことができる。帯電した膜は、膜の細孔半径よりはるかに小さいイオンを排除することができるが、同様のサイズの電荷を運ばない溶質分子は排除することができない。通常、膜は、負に帯電している。これにより、一般に電荷を保持しないと考えられているシデロフォアの輸送は可能になるが、負の電荷を保持するCASの輸送は阻止される。
【0100】
膜は、セルロースおよび/またはベンゾイル化セルロースを含んでもよい。
【0101】
担体は、組成物の成分を保持する支持構造を提供してもよい。
【0102】
担体は、乾燥していてもよい。乾燥した担体は、濃度勾配をもたらし、それにより膜を通過するシデロフォアの移動を促進するのに有用であり得る。乾燥した担体は、水、したがって細菌のシデロフォアの吸収を促進する可能性がある。これにより、ラベルの集水域が拡大し得る。
【0103】
適切には、乾燥した担体は、重量ベースで約20%未満、場合によって約15%未満、場合によって約10%未満、場合によって約5%未満、場合によって約2.5%未満、場合によって約0%の液体(例えば、水)含有量を有し得る。
【0104】
乾燥した担体を含む用途では、組成物を液体として担体に便利に塗布し、その後担体を乾燥させることができる。
【0105】
担体は、寒天、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ゼラチン、セルロース、ペクチン、エチレンビニルアルコールポリマー、ポリウレタン、ポリスチレン、メトキシルペクチンゲル、加工デンプン/小麦繊維ゲル(wheat fibre gel)、アシルジェランガム(場合によって高アシルKelcogel(登録商標)などの高アシルジェランガム)、直鎖硫酸化多糖類(例えば、カラギーナン)から選択されてもよい。
【0106】
ラベルは、食品および/または飲料に使用するためのものであってもよい。食品または飲料品は、特に毒性に関して、健康と安全の観点から特定の要件を有する。したがって、この点での使用に関する適合性は、ラベルがそのような要件を満たしていることを意味すると理解されるべきである。
【0107】
本発明の第5の態様によれば、第4の態様によるラベルを含む食品および/または飲料容器が提供される。
【0108】
本発明の第1、第2、第3、第4および/または第5の態様に関連する上述の特徴は、そのような特徴の組み合わせを妨げる技術的不適合を前提として、本発明の他の各態様の特徴も表す(逆もまた然りである)。さらに、本発明の第1、第2、第3、第4および/または第5の態様に関連する上記に述べた利点が、本発明の他の各態様によってももたらされる(同様に逆もまた然りである)ことは当業者には明らかであろう。
【0109】
ここで、添付の実施例および図を参照して、単なる例として、本発明をさらに説明する。
【0110】
図1は、さまざまなpHでのCASの発光スペクトルを示す。
【実施例】
【0111】
[実施例1]
本発明による組成物の原液を、以下の溶液を混合することにより調製した。
【0112】
原液A:
・H2O 50mlにCAS 0.06gを含む溶液50ml、
・10mM HCl 10mlに水和FeCl3(FeCl3・6H2O)0.0027gを含む溶液9ml、
・H2O 8mlにHDTMA 0.0146gを含む溶液8ml、および
・H2O 33mlにTween(登録商標)80 2gを含む溶液33ml
原液B:
・H2O 50mlにCAS 0.06gを含む溶液50ml、
・10mM HCl 10mlに水和FeCl3(FeCl3・6H2O)0.0081gを含む溶液9ml、
・H2O 8mlにHDTMA 0.0146gを含む溶液8ml、および
・H2O 33mlにTween(登録商標)80 2gを含む溶液33ml
各原液10mlを水90mlで希釈して、洗浄スプレーとして使用する組成物を得た。
【0113】
各原液10mlを水10mlで希釈して、ラベルに使用する組成物を得た。組成物は、約40℃の温度で担体(例えば、寒天)と混合することでラベルに追加することができる。
[実施例2]
CAS Sに対する鉄(CAS Sに対する水和FeCl3(FeCl3・6H2O))のモル比の増加による着色効果を調べるために、一連の試験を行った。結果は以下の通りである。
【0114】
・1:0.0099[1000x]-青
・1:0.099[100x]-青
・1:0.485[50x]-青
・1:0.99[10x]-青
・1:9.9[1x]-薄い青
・1:19.8[0.5x]-赤
・1:99[0.1x]-赤
・1:198[0.05x]-赤
1:3.3の比率で濃い青色が得られた。
[実施例3]
原液Bを2倍に希釈して、可視性試験用の溶液を作製した。次に、以下の希釈で溶液を作製し、結果として定性的な可視性を得た。
【0115】
・1x-濃い青、細菌によって見られるオレンジ色への変化はほとんどない
・2x-濃い青、細菌によるオレンジ色への変化は依然として見えにくい
・5x-濃い青から中程度の青、細菌を加えると、可視可能な灰色およびオレンジ色を示す
・10x-中程度の青、細菌と混合すると透明なオレンジ色を示す
・20x-透明に近い青、透明度が高いためオレンジ色は見えにくい
・50x-ほぼ完全に透明で、僅かに青色を示す
試験は、各希釈液が10ml体積の50mlファルコンチューブで行った。水中、OD 1の細菌(E-coli BL21(DE3)細胞およびUV-VISを使用して測定されるように光学密度1まで成長させたもの)1mlを、各希釈液に加えて最終体積11mlにした。希釈液を白の秤量ボートに1mlの体積で入れた。
[実施例4]
膜試験は、10kDaのMWCO透析チューブを使用して行った。透析チューブを長さ10cmに切断して、両端が開いた筒状チューブを形成した。透析チューブの一方の端を結んだ後、製剤を加えて総量5mlにし、次にチューブの端から製剤が漏れないようにもう一方の端を結んだ。
【0116】
製剤を含む膜を室温で24時間牛乳に入れた。結果を、総量5mlを牛乳に直接添加した場合と、さらに水5mlで満たした膜で構成された対照と比較した。膜を使用した場合、牛乳には観察可能な変色は発生しなかった。膜内の製剤の色は青からオレンジ色に変わり、シデロフォアの検出が依然として可能であることが示された。
[実施例5]
表面拭き取り用品などの基材に含めるのに適した例示的な組成物を以下に示す。
【0117】
【0118】
組成物0.0008475gを水12.25mLと混合し、10×10cmのセルロース製拭き取り用品にドープした。
[実施例6]
本発明による組成物の色に対するpHの効果を実証するために実験を行った。0.8~12.8のpHを有する一連の組成物を、以下の手順に従って調製した。
【0119】
蒸留水(50mL)中に塩酸(1mL、37%)を含む原液からpH0.8~6.8の調製溶液を調製し、次いでさらに十分な蒸留水で希釈して、試験用の最終組成物が目的とするpHよりもpHレベルが0.3単位低い溶液を生成した(例えば、試験用の最終組成物がpH1.8を有することを目的とする場合、原液をさらに蒸留水でpH1.5に希釈して調製溶液を調製した)。
【0120】
蒸留水(50mL)中に水酸化ナトリウム(0.4g)を含む原液からpH7.8~12.8の調製溶液を調製し、次いでさらに蒸留水で希釈して、試験用の最終組成物が目的とするpHよりもpHレベルが0.3単位高い溶液を生成した。
【0121】
次いで、調製溶液を、実施例5に従って調製された水混合組成物で1:1(体積)に希釈して、所望のpHを有する試験用の最終組成物を生成した。
【0122】
試験用の(緩衝化されていない)最終組成物は、以下の表に示す着色を有することが観察された。
【0123】
【0124】
試験用の最終組成物の吸光度研究(Nanodrop 2000分光光度計、光路長0.1mm)を行って、1~13の可変pHで458nmでのCASの吸光度(CAS Sのλ
max吸収)を測定した。結果を
図1に示す。