IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイオートポン エッセエッレエッレの特許一覧

特許7198510放射誤差が修正された外的環境の気温を計算するシステムおよび方法、ならびに、このシステムで使用可能なセンサ装置
<>
  • 特許-放射誤差が修正された外的環境の気温を計算するシステムおよび方法、ならびに、このシステムで使用可能なセンサ装置 図1
  • 特許-放射誤差が修正された外的環境の気温を計算するシステムおよび方法、ならびに、このシステムで使用可能なセンサ装置 図2
  • 特許-放射誤差が修正された外的環境の気温を計算するシステムおよび方法、ならびに、このシステムで使用可能なセンサ装置 図3
  • 特許-放射誤差が修正された外的環境の気温を計算するシステムおよび方法、ならびに、このシステムで使用可能なセンサ装置 図4
  • 特許-放射誤差が修正された外的環境の気温を計算するシステムおよび方法、ならびに、このシステムで使用可能なセンサ装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】放射誤差が修正された外的環境の気温を計算するシステムおよび方法、ならびに、このシステムで使用可能なセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 13/024 20210101AFI20221222BHJP
   G01K 7/00 20060101ALI20221222BHJP
   G01W 1/02 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
G01K13/024
G01K7/00 321C
G01W1/02 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019569811
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 IB2018054795
(87)【国際公開番号】W WO2019003169
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】102017000072339
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519442483
【氏名又は名称】アイオートポン エッセエッレエッレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュラト,ジュリ
(72)【発明者】
【氏名】ガリア,ティモテオ
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6112518(JP,B1)
【文献】特公平6-23777(JP,B2)
【文献】実開昭59-64954(JP,U)
【文献】米国特許第7933737(US,B2)
【文献】米国特許第7114847(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K
G01W
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱放射にさらされる外的環境(E)に配置可能であり、空気が通過するように配置されたセンサ装置であって、前記センサ装置は、前記センサ装置による少なくとも一つの第一の温度値(Ts1)、および、少なくとも一つの第二の温度値(Ts2)の検出から開始し、続いて、前記検出で得た値放射誤差の修正により、前記外的環境(E)の修正気温(T)を計算することが可能な、少なくとも一つのデータ処理論理ユニット(50)を備えて使用可能であり、前記センサ装置(10)は、
- 前記外的環境(E)からの前記空気が通過するように指定された少なくとも一つの座部(12)を備えた支持構造(11)であって、前記少なくとも一つの座部(12)が空気入口(13)および空気出口(14)を有することを特徴とする支持構造(11)と、
- 前記座部(12)を通過する前記外的環境(E)の検出された気温である、前記少なくとも一つの第一の温度値(Ts1)と、前記少なくとも一つの第二の温度値(Ts2)とを検出する、前記座部(12)の内部に配置されたセンサ手段(20)と、を含み、
前記座部(12)は、前記外的環境(E)の前記少なくとも一つの第一の温度値(Ts1)を検出する空気を第一の速度(V1)で通過させ、前記少なくとも一つの第二の温度値(Ts2)を検出する空気を第二の速度(V2)で通過させるように構成されており、
前記座部(12)は、前記第一の速度(V1)と前記第二の速度(V2)の間の、式、
第一の速度(V1)/第二の速度(V2)、
で表される第一の比率が予め決定されるように、前記座部(12)を通過する前記外的環境(E)の前記空気の乱流を最小限とし、前記空気の動きを層流状とする形状を有し、
さらに、前記座部(12)は、前記センサ手段(20)が、第一の放射束(PRad1)と第二の放射束(PRad2)によって影響をあたえられるような規定の構造をさらに有し、ここで、前記第一の放射束(PRad1)と前記第二の放射束の間の、式、
第二の放射束(PRad2)/第一の放射束(Prad1)、
で表される第三の比率が、予め決定されており、
前記データ処理論理ユニット(50)は、
- 前記少なくとも一つの検出された第一の温度値(Ts1)と、前記少なくとも一つの検出された第二の温度値(Ts2)から、および、
- 前記第一の放射束(PRad1)と前記第二の放射束(PRad2)の間の予め決定された前記第三の比率から、および、
- 前記第一の速度(V1)と前記第二の速度(V2)の間の予め決定された前記第一の比率から、
開始して、前記座部(12)を通過する前記外的環境(E)の前記修正気温(T)を計算することが可能となることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記センサ手段(20)が少なくとも一つの温度センサを備えており、
前記少なくとも一つの温度センサが前記第一の速度(V1)での前記少なくとも一つの第一の温度値(Ts1)と、前記第二の速度(V2)での前記少なくとも一つの第二の温度値(Ts2)とを検出するように、前記センサ装置(10)が、前記座部(12)内に空気速度変更手段(30)を備えていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記空気の速度の調整を可能とするための、前記空気速度変更手段(30)上で動作する調整手段を備えることを特徴とする請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記空気速度変更手段(30)は、前記座部の前記空気入口(13)および/または前記空気出口(14)に配置された通風機またはファンを備えていることを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つの温度センサが、少なくとも一つの第一の温度センサ(21)と、少なくとも一つの第二の温度センサ(22)とを含んでおり、
前記少なくとも一つの第一の温度センサ(21)と前記少なくとも一つの第二の温度センサ(22)が同一であることを特徴とする請求項から4のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記少なくとも一つの第一の温度センサ(21)は、前記少なくとも一つの第一の温度値(Ts1)を検出するための第一の既定の位置に配置され、さらに、前記少なくとも一つの第二の温度センサ(22)は、前記少なくとも一つの第二の温度値(Ts2)を検出するための第二の既定の位置に配置されることを特徴とする請求項5に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記センサ手段(20)が、第三の速度(V3)で検出された前記気温の少なくとも一つの第三の温度値(Ts3)を検出するための第三の既定の位置の前記座部(12)に配置された、少なくとも一つの第三の温度センサ(23)を備えており、前記座部(12)は、前記第一の速度(V1)と前記第三の速度(V3)の間の比率および/または前記第二の速度(V2)と前記第三の速度(V3)の間の比率が予め決定されるような形状を有していることを特徴とする請求項6に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記座部(12)は、
前記第一の既定の位置で第一の通過流の断面(S1)を有しており、前記第二の既定の位置で第二の通過流の断面(S2)を有しており、
前記第一の通過流の断面(S1)を通過する前記空気が第一の通過流の速度(V1)を有し、前記第二の通過流の断面(S2)を通過する前記空気が第一の通過流の速度(V2)を有するように、前記第一の通過流の断面(S1)と前記第二の通過流の断面(S2)とが互いに異なっていることを特徴とする請求項に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記座部(12)は、
前記第一の既定の位置で第一の通過流の断面(S1)を有しており、前記第二の既定の位置で第二の通過流の断面(S2)を有しており、前記第三の既定の位置で第三の通過流の断面(S3)を有しており、
前記第一の通過流の断面(S1)を通過する前記空気は第一の通過流の速度(V1)を有し、前記第二の通過流の断面(S2)を通過する前記空気は第一の通過流の速度(V2)を有し、前記第三の通過流の断面(S3)を通過する前記空気は第三の通過流の速度(V3)を有するように、前記第一の通過流の断面(S1)と前記第二の通過流の断面(S2)と前記第三の通過流の断面(S3)とが互いに異なっていることを特徴とする請求項7に記載のセンサ装置。
【請求項10】
熱放射にさらされる外的環境(E)の、放射誤差を修正された、修正気温(T)を計算する方法であって、前記方法は、
- 請求項1からのいずれか一項に記載の少なくとも一つのセンサ装置(10)を提供するステップと、
- 前記外的環境(E)の、第一の速度(V1)における少なくとも一つの第一の温度値(Ts1)と、第二の速度(V2)における少なくとも一つの第二の温度値(Ts2)を、前記少なくとも一つのセンサ装置(10)の一部で検出するステップと、
前記少なくとも一つの検出された第一の温度値(Ts1)と前記少なくとも一つの検出された第二の温度値(Ts2)とから、前記第一の放射束(PRad1)と前記第二の放射束(PRad2)の間の前記第三の比率とから、及び前記第一の速度(V1)と前記第二の速度(V2)の間の前記第一の比率から、開始して前記座部(12)を通過する前記外的環境(E)の前記修正気温(T)を計算するステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に気象学分野に適用され、特に、放射誤差が修正された(corrected from the radiative error)外的環境の気温を計算するシステムおよび方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、このようなシステムで使用可能なセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、少なくとも一つの温度測定センサを備えた、屋外環境に配置されるように指定された気温検出装置が知られている。
【0004】
知られているように、熱放射はこのような測定に影響を及ぼし、当該測定は結果としてセンサが示す値と実際の気温との間での差を必然的に伴う顕著な誤差によって影響される。かかる誤差は「放射誤差(radiative error、輻射誤差)」として知られている。
【0005】
これらを受けて、先行技術の装置は、少なくとも部分的にセンサの遮蔽を行うための箱型本体を提供している。
【0006】
放射誤差の低減に顕著な効果を有する遮蔽を行うために、当該箱型本体は、空気の通過流が形成され、相当な寸法を有する特殊な構造を有する必要がある。
【0007】
したがって、このような装置は、時に大きな放射誤差の影響を受けた値を算出することに加えて、多額の経費と相当に大型な全体寸法を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、きわめて機能的かつ安価な、放射誤差が修正された気温を計算するためのセンサ装置、方法および/またはシステムを提供することにより、上記の欠点を少なくとも部分的に克服することである。
【0009】
本発明の別の目的は、きわめて短い応答時間で気温を計算するセンサ装置、方法および/またはシステムを提供することである。
【0010】
本発明の更なる目的は、小型(small dimensions)で、気温を計算するセンサ装置を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、正確かつ安価な方法で、気温を計算するシステムおよび/または方法を提供することである。
【0012】
これ以降に、より明確にされるであろう他の目的と同様に、この目的は本明細書で説明、図示および/または請求される、かかるセンサ装置および方法を備えたセンサ装置、システムによって実現される。
【0013】
従属請求項は、本発明の有利な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の更なる特性および有利な点は、添付図面を参照して非限定的例として図示された、本発明の好適な、しかし非排他的な実施形態の詳細な説明に照らして、より明確となろう。
図1図1は、システム1の概略図である。
図2図2は、センサ装置10の異なる実施形態の、図式化された不等角投影図である。
図3図3は、センサ装置10の異なる実施形態の、図式化された不等角投影図である。
図4図4は、センサ装置10の異なる実施形態の、図式化された不等角投影図である。
図5図5は、センサ装置10の異なる実施形態の、図式化された不等角投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
前述の図面を参照すると、特に、例えば太陽放射などの熱放射(熱輻射)にさらされる外的環境Eの気温Tを計算するシステム1が説明されている。
【0016】
システム1は、外的環境Eに置かれた少なくとも一つのセンサ装置10、および、センサ装置10によって検出されたデータを処理し、気温Tを計算するように、センサ装置10に動作可能に接続された、少なくとも一つのデータ処理論理ユニット50を備えてもよい。
【0017】
装置10は、例えば庭、テラスなどの外的環境に固定して置かれてもよく、または、例えばモバイル機器や自動車などに置かれてもよい。
【0018】
データ処理論理ユニット50はセンサ装置10付近に配置されてもよく、または、当該センサ装置10から遠隔に配置され、例えば無線接続などの方法で遠隔接続されてもよい。
【0019】
センサ装置10は、1またはそれ以上の温度値Ts1、Ts2、Ts3、好適には少なくとも2つの温度値Ts1、Ts2を検出することができ、一方で、データ処理論理ユニット50は、例えば値Ts1、Ts2、および場合によってはTs3から開始して、もしくは他の値から始開始して、気温Tを計算することができる。以下にさらに詳述する。
【0020】
仮に、これ以降に3つの温度の検出について説明されたとしても、検出される温度の数は、添付の請求項の保護範囲から逸脱することなく、最低2つの範囲を順守しながら変化する可能性があることは明らかである。
【0021】
センサ装置10は、外的環境Eの空気が通過するように指定された座部12(seat 12、取付機構12)を含む支持構造11を備えることができる。
【0022】
具体的には、座部12は、空気入口13および空気出口14を有する。例えば、支持構造11は、実質的に円筒状または平行6面体形状であってもよく、一方で座部12は実質的に長手方向に延伸した形状であってもよい。
【0023】
座部12の形状が、通過する外的環境Eの乱流を最小限に抑えるものであることは重要である。換言すると、外的環境Eの動作はできる限り層流であるべきである。
【0024】
センサ装置10は、座部12内部に配置されたセンサ手段20を適切に備え、座部12を通過する空気の温度値Ts1、Ts2、および、場合によりTs3を検出することができる。
【0025】
本発明の具体的な態様に従うと、空気の各温度値Ts1、Ts2、および、場合によりTs3は、対応する空気速度V1、V2、および、場合によりV3で検出されることができる。かかる速度V1、V2、および、場合によりV3は、それぞれが互いに異なってもよい。
【0026】
センサ手段20は、少なくとも一つの既定の位置に置かれた、少なくとも一つの温度センサ21を備えることができる。
【0027】
特に、図2に図示された第一の実施形態に従って、センサ手段20はただ1つの温度センサ21を備えることができる。
【0028】
さらに、センサ装置10は、座部12の空気速度変更手段30を、具体的にはセンサ21の既定の位置に備えてもよい。例えば、手段30は、座部12の入口13および/または出口14に配置することのできる通風機やファンなどを含んでもよい。
【0029】
空気速度を調整することができるように、空気速度変更手段30上で動作する調整手段40が適切に備えられることができる。
【0030】
かかる特徴のおかげで、センサ21は速度V1における温度値Ts1、速度V2における温度値Ts2を検出することができる。さらに、センサ21は、速度V3における温度値Ts3を検出してもよい。
【0031】
一方で、例えば図3および図4で示された異なる実施形態に従って、センサ手段20は座部12のそれぞれの既定位置に配置された複数のセンサ21、22、23を備えることができ、それぞれの速度V1、V2、V3を有する空気におけるそれぞれの温度値Ts1、Ts2、Ts3を検出することができる。
【0032】
この場合、支持構造11は、センサ21、22、23がすべて、同一の熱放射に実質的に暴露されるように構成されてもよい。
【0033】
言い換えると、放射束Prad(Radiant power、輻射出力)はすべてのセンサ21、22、23に関して実質的に等しくてもよい。例えば、支持構造11は全体が同一材料で作成されてもよく、一方で座部12は実質的に連続した外側面(lateral surface)を有していてもよい。
【0034】
一方で、センサに影響を与える(impact、衝突する)放射束Pradは、あらゆる場合において異なってもよいが、予め定められていてもよい。上記は後により分かりやすく概説される。
【0035】
センサ21、22、23は例えば熱電対または抵抗温度計(RTD:抵抗温度検出器)といった任意のタイプのものであってもよく、きわめて小型にすることができる。
【0036】
センサ21、22、23は、好適には、互いにすべて同一であってもよい。
【0037】
仮に、これ以降に互いに同一のセンサが説明されたとしても、センサは、添付の請求項の保護範囲から逸脱することなく、互いに異なってもよいことは明らかである。
【0038】
センサ21、22、23は、プリント基板(PCB)または他の同様の装置上に搭載されてもよい。
【0039】
座部12は、温度Ts1、Ts2、Ts3を検出したとき、各センサ21、22、23での空気速度V1、V2、V3が互いに異なるように、適切に構成されることができる。
【0040】
例えば、図3に示されているように、座部12は実質的に筒状(cylindrical-shaped、円筒状)であってもよく、センサ21、22、23の位置での断面形状の変化を有していてもよい。言い換えると、座部12は、空気が各センサ21、22、23において各速度V1、V2、V3を有するように、互いに異なる断面S1、S2、S3を有することができる。
【0041】
座部12は、場合によっては、既知の「ベンチュリ効果」を可能にする形状の構成を有することができ、また、センサ21、22は、互いに異なる速度V1、V2により、場合によっては、速度V1、V2の間の、予め決定された、かつ一定の比率により、空気がセンサに影響を与えるように配置されることができる。
【0042】
各センサ21、22、23における速度V1、V2、V3は、座部12の形状に起因して、および/または、速度および/または空気速度を変更するための手段30の存在に起因して異なってもよいことは明らかである。
【0043】
座部12の形状および/または速度変更手段30の存在が、異なる速度V1、V2、V3の取得を可能にすることが説明されているが、空気速度は、本願請求項の保護範囲から逸脱することなく、任意の方法で変更可能であろうことは明らかである。
【0044】
さらに、座部12の空気の運動は、前述の手段30によって促進されることができる。または、センサ装置10は、風によって影響を受けてもよく、センサ装置10は例えば自動車などの移動可能な機器に搭載されてもよい。
【0045】
いかなる場合にも、座部12の形状は、通過する空気が最小限の乱流となる方法で選択されるという事実によって、座部12の形状は、センサ21、22、23に影響を与える速度の中から、比率V1/V2、V1/V3、V2/V3の値を予め決定することができる。
【0046】
言い換えると、速度V1、V2、V3の単独の真の値を知ることは、必ずしも要求されない。当該値の間の比率を知ることで十分であり、この比率は座部12の形状を一旦知れば、予め決定することが可能である。
【0047】
例えば、比率値V1/V2は、センサ付近の空気の通過流の断面(through-flow section、貫通流の断面積)の比率の逆数(inverse、反比例)と等しく、すなわち、V1/V2=S2/S1である。
【0048】
一方で、最小限の乱流となる気流を保証するために、座部12の形状は、速度比率の既定値から始まるセンサ21、22、23の熱伝導係数の間の比率値H1/H2、H1/H3、H2/H3を予め決定することを可能とする。上記は後により分かりやすく概説される。
【0049】
さらに、座部12の構造は、センサ21、22、23に影響を与える放射束の間の比率値PRad2/PRad1、PRad3/Prad1、PRad3/Prad2を予め決定することを可能とする。
【0050】
これらを受けて、例えば、センサ21、22、23において、座部12は異なる厚さ(differentiated thickness)を有してもよく、または図5の構造を有してもよい。上記は後により分かりやすく概説される。
【0051】
2つの検出温度値Ts1およびTs2のみを検出するという単純化された仮説の中で、データ処理論理ユニット50は、センサ装置10の座部12を通過する外的環境Eの空気の温度(気温)Tを計算することができる。放射誤差が修正されるデータ処理論理ユニット50は、検出された温度値Ts1とTs2から、比率PRad2/PRad1から、比率V1/V2から、および比率H1/H2から開始して、計算をすることができる。
【0052】
センサ21、22、23による3つの温度値Ts1、Ts2、Ts3を検出する場合、前述の計算は、前述の3つの速度、熱伝導係数、および比率値の中の、比率値(the ratio values)から開始するように実行されることは明らかである。
【0053】
システム1は、データ処理論理ユニット50に動作可能に接続されたストレージユニット60(記憶手段60)を備えることができる。具体的には、ストレージユニット60は、支持構造11の付近に配置されるか、または遠隔に配置され、例えば無線接続などの方法でデータ処理論理ユニット50と遠隔接続されてもよい。
【0054】
速度V1、V2は、比率V1/V2などを迅速に計算できるように、場合によりストレージユニット60に保存されてもよい。一方で、比率V1/V2、および、単独の速度ではない速度V1、V2は好適にはストレージユニット60に保存することができる。
【0055】
上記のように、温度値Ts1、Ts2、および、場合によりTs3は、同一のセンサ21、または異なるセンサ21、22によって検出されることができる。
【0056】
以下に、2つのセンサを使用する場合の、データ処理論理ユニット50によって実施可能な相関関係(correlations)のいくつかの例が示されている。
【0057】
かかる相関関係において、
Pradはセンサに入ってくる放射束(radiant power)を表しており、
Prad=ε×σ×(Tir+G×S
IRoutは、センサから出ていく放射を表しており;
IRout1=ε×σ×(Ts1);IRout2=ε×σ×(Ts2)
H1、H2=対流熱伝導係数;
ε=センサ表面の放射率;
σ=ステファンボルツマン定数;
ir=センサから示される温度;
G=太陽放射に関するセンサ表面の吸収係数;
S=太陽放射の出力密度;
Ts1、Ts2=センサによって検出される温度値;
m=変数;
H0=変数、
である。
【0058】
知られているように、センサから示される温度Tirは、センサ上で照射される外部本体(irradiate on external body)の温度である。
【0059】
さらに、それ自体が既に知られた方法において、数式がH1/H2を使用するという事実により、必ずしも既知でなくてもよい変数H0は、センサの形状特性および熱力学的特徴に依存し、一方で変数mはセンサの形状特性および熱力学的特徴に依存するとともに、以下に説明される簡単な較正手順によって予め決定することが可能である。
【0060】
例えば、変数mを決定するための較正手順は、特徴づけられるべきセンサを、比率について既知の2つの異なる速度で、2つの温度検出Ts1、Ts2を実行することにより、(既知かつ一定の)制御された温度による環境で一定の熱放射にさらすことである。
【0061】
伝導係数H1、H2という表現は温度Ts1、Ts2のそれぞれの検出条件で、対流熱伝導係数を示すために使用される。
【0062】
センサ21、22は、同一の流入する放射流(PRad1=PRad2=PRad および Kr=PRad2/PRad1=1)に実質的に暴露されてもよく、座部12は、気体の座部12への流入速度に関係なく、比率V1/V2および比率H1/H2が常に一定であるように構成されてもよく、一方でデータ処理論理ユニット50は、以下の相関関係を使用して気体温度Tを計算することができる。すなわち、

H1×(Ts1-T)=PRad-IRout1 (1)、
H2×(Ts2-T)=PRad-IRout2 (2)、
H1/H2=(V1/V2) (3)、

ここで、
H1=H0×V1
H2=H0×V2
である。
【0063】
最初の2つの数式(1)および(2)は、センサ21、22の熱平衡の方程式を示し、一方で数式(3)は伝導係数比率H1/H2と比率V1/V2の間の関係を示している。変数mはストレージユニット60に保存されてもよい。
【0064】
比率H1/H2は、場合により、先に概説した相関関係によって気温Tを計算するように、ストレージユニット60に保存されてもよい。
【0065】
上記の数式(1)、(2)および(3)を使用して、データ処理論理ユニット50は既知のV1、V2、m、Ts1およびTs2から温度Tを計算することができる。
【0066】
一方で、速度V1、V2が既定の閾値よりも高い、例えばV1>0.5m/s 及び V2>0.5m/sの場合、各出力放射IRout1、IRout2は、相関関係の他の条件と比較すると、実質的にごく小さな量となる。よって、温度Tは以下の単純な相関関係を用いて正確に計算することができる。すなわち、
H1×(Ts1-T)=PRad (1a)、
H2×(Ts2-T)=PRad (2a)、
H1/H2=(V1/V2) (3)、
および、
H1/H2×(Ts1-T)=(Ts2-T) (4)
である。
【0067】
相関関係(3)、(4)は、温度Tの対流熱伝導係数H1/H2への依存、および、対流熱伝導係数H1/H2の速度Vおよび変数mへの依存を示している。当該変数は、上記と同様の方法で一度決定されれば、ストレージユニット60に保存されてもよい。
【0068】
データ処理論理ユニット50は、数式(4)を使用して既知のV1、V2、m、Ts1およびTs2から温度Tを計算することができる。
【0069】
温度値Ts1、Ts2、Ts3が各速度V1、V2、V3で検出された場合、上記相関関係(1)、(2)、(3)および(4)に以下の相関関係を加えて、前述と同様の方法で、IRout1、IRout2、IRout3を無視することなく、温度Tが決定されてもよい。
H3×(Ts3-T)=PRad-IRout3 (5)、
H1/H3=(V1/V3) (6)、
/H2=(V1/V3) (7)
【0070】
前述された内容によって、この場合においても、気温Tは限られた数の検出された変数(Ts1、Ts2、Ts3)と、保存されたおよび/または予め決定された変数(mおよび速度V1、V2、V3の間の比率)とを用いて計算することができる。さらに、上記の通り、これらの変数は、容易に、予め定めることができる。
【0071】
具体的には、上記変数mを予め計算するために、センサ装置10は既知の気温による制御された環境に置かれ、その結果、センサ21、22、場合により23は、既知の各試験速度(または速度V1、V2、場合によりV3の間での比率)で、各温度Ts1、Ts2、場合によりTs3を検出する。
【0072】
場合により、座部12は、対流熱伝導係数の間の比率H1/H2が一定となるよう、実質的には1に等しく、すなわち、対流熱伝導係数H1、H2が、座部12への気体の流入速度に関係なく、互いに実質的に等しいように構成されてもよい。例えば、図2に示されているように、座部は一定の断面を有する実質的に円筒状の形状であってもよい。
【0073】
より詳細には、比率H1/H2が1と等しい場合、センサの座部は、1ではない比率Kr=PRad2/PRad1を予め決定するように構成され、、且つ、速度V1、V2が0.5m/sよりも速くなるように構成され、気温Tは相関関係(4)に類似する以下の相関関係を用いて計算されてもよい。すなわち、
(Ts2-T)/(Ts1-T)=Kr (8)
である。
【0074】
以下の相関関係、すなわち、
(Ts2-T)/(Ts1-T)=Krh (8a)
によると、好適には、比率H1/H2が1ではない場合、相関関係(9)は、変数Krが同一の比率H1/H2の逆数で乗算される限りは有効のままであってもよく、ここで、
Krh=(PRad2/PRad1)×(H1/H2)
である。
【0075】
変数KrまたはKrhは、ストレージユニット60に保存されてもよく、および/または、変数KrまたはKrhは、本質的に既知の種類の手順を用いて予め決定してもよい。
【0076】
変数Krは、各センサ21、22での放射束PRadの比率によって定義することができる。すなわち、

Kr=(ε×σ×(Tir1+G×S1)/(ε×σ×(Tir2+G×S2)
=PRad2/PRad1 (9)

である。
【0077】
かかる比率PRad2/PRad1は、センサ装置10に影響を与える放射束PRadに関係なく、適切に一定となる。
【0078】
放射束PRadの間の比率は既知であってもよく、および/または特別なユニット60に保存されていてもよく、および、上記のように予め決定してもよい。
【0079】
図5に概略的に示されているように、座部12は、センサ21に影響を与える放射束PRad1と、センサ22に影響を与える放射束PRad2との間の比率、すなわちPRad2/PRad1を予め決定するように構成されることができる。
【0080】
例えば、座部12は、複数の孔15’を含むゾーン15、および、複数の孔16’を含むゾーン16を有する穿孔シールド構造(drilled shielding structure)を有することができる。各ゾーン15、16の孔15’、16’の数は、互いに異なる既定の数とすることができる。
【0081】
センサ21および22は、座部12のゾーン15および16にそれぞれ適切に配置されてもよい。
【0082】
したがって、ゾーン15、16は、それぞれの孔15’、16’の合計面積によって定義される通過流面積(through-flow area、貫流領域)を有する。より具体的には、各ゾーン15、16は、それぞれが面密度Dを有することができ、これはすなわち、孔部分の表面、つまり前述の通過流面積と固体面積の間の比率である。具体的には、ゾーン15の表面密度Dとゾーン16の表面密度Dは予め決定されていてもよく、かつ、各放射束PRadの間の比率と実質的に等しくてもよい。
【0083】
換言すると、以下の相関関係が有効であってもよい:
PRad2/PRad1=D2/D1 (10)
【0084】
場合により、すべての孔15’、16’が同一の表面を有しているとき、かかる比率は、各ゾーン15、16における孔15’、16の数の間の比率と実質的に等しくなってもよい。
【0085】
比率PRad2/PRad1、ひいてはKrは、単独のセンサ21、22に影響を与える放射束PRadの値を必ずしも知る必然性なく、かかる特徴のおかげで計算が可能となる。
【0086】
かかる特徴のおかげで、面密度Dの間の比率D1/D2が最初に計算され、次いで比率PRad2/PRad1が相関関係(10)を用いて計算され、さらに温度Tが相関関係(8)を用いて計算されてもよい。
【0087】
放射束の間の比率PRad2/PRad1は、別の方法で計算されてもよいことは明らかである。換言すると、センサ装置10は、放射束PRadの一定の比率を予め決定するために適した本質的に既知の構造を含んでもよく、例えば、同一の穿孔密度だが、異なる直径、および/または異なる伝導程度、および/または反射率、および/または吸収度の孔を備えることによって特徴づけられたゾーン15、16を含んでもよい。
【0088】
上記のとおり、温度値Ts1、Ts2、Ts3が各速度V1、V2、V3、および各放射束PRad1、PRad2、PRad3で検出された場合、温度Tは上記の相関関係のうち1または複数を使用した上記方法と同様の方法で、同様に決定される。
【0089】
実際のところ、1または複数の変数を決定するための相関関係に適用するような、簡略化された仮説、および、2つの温度検出値Ts1、Ts2に関して説明された相関関係の確保は、温度値Ts1、Ts2、Ts3が検出された場合、適切な修正をして同様に適用されてもよいことは明らかである。
【0090】
本明細書は、速度比率をV1/V2、熱伝導係数比率をH1/H2、および、放射束比率をPRad2/PRad1として説明しているが、速度、熱伝導係数および放射出力が逆数である場合、すなわちV2/V1、H2/H1、およびPRad1/PRad2である場合にも、温度Tが同様に計算されてもよいことは明らかである。
【0091】
本発明は多くの修正および変更が可能だが、すべて添付の請求項の保護範囲に収まる。すべての詳細は、添付の請求項によって規定された保護範囲から逸脱することなく、他の技術的に同等な要素に差し替えることが可能であり、また、材料は技術的需要に応じて別のものとすることも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5