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特許7198529生分解性高分子を含む化学塞栓用水和ゲル粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】生分解性高分子を含む化学塞栓用水和ゲル粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/42 20170101AFI20221222BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20221222BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20221222BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221222BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221222BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20221222BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20221222BHJP
   A61K 31/136 20060101ALI20221222BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20221222BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
A61K47/42
A61K47/36
A61K9/50
A61P35/00
A61K45/00
A61K31/704
A61K31/7068
A61K31/136
A61K31/7048
A61K31/4745
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021531489
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 KR2019016792
(87)【国際公開番号】W WO2020111895
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】10-2018-0153064
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521236313
【氏名又は名称】ネクストバイオメディカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】リ,イ シェン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,チュン ヨル
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-039869(JP,A)
【文献】特開2005-112858(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0031463(KR,A)
【文献】特表2013-540723(JP,A)
【文献】特開2010-162063(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103990185(CN,A)
【文献】DRUG DELIVERY,1995年,Vol. 2,pp. 166-174
【文献】Materials Science and Engineering C,2017年,Vol. 72,pp. 150-159
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 31/00-31/80
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ゼラチン、コラーゲン、又はこれらの混合物;及び(b)酸化コンドロイチンサルフェート、酸化デキストランサルフェート、又はこれらの混合物からなる群から選ばれる、酸化した生分解性陰イオン性高分子を含むマイクロ粒子。
【請求項2】
前記マイクロ粒子は、化学塞栓用である、請求項1に記載のマイクロ粒子。
【請求項3】
前記マイクロ粒子は、TACE(transcatheter arterial chemoembolization)用である、請求項1に記載のマイクロ粒子。
【請求項4】
前記マイクロ粒子は、薬物吸着力がある、請求項1に記載のマイクロ粒子。
【請求項5】
前記薬物は、抗癌剤である、請求項に記載のマイクロ粒子。
【請求項6】
前記抗癌剤は、アントラサイクリン系抗癌剤である、請求項に記載のマイクロ粒子。
【請求項7】
前記アントラサイクリン系抗癌剤は、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ゲムシタビン、ミトキサントロン、ピラルビシン及びバルルビシンからなる群から選ばれる、請求項に記載のマイクロ粒子。
【請求項8】
前記抗癌剤は、イリノデカンである、請求項に記載のマイクロ粒子。
【請求項9】
前記マイクロ粒子は、マイクロスフェア(microsphere)である、請求項1に記載のマイクロ粒子。
【請求項10】
次の段階を含むマイクロ粒子の製造方法:
(a)ゼラチン、コラーゲン、又はこれらの混合物を水溶性溶媒に溶解させる段階;
(b)酸化コンドロイチンサルフェート、酸化デキストランサルフェート、又はこれらの混合物からなる群から選ばれる、酸化した生分解性陰イオン性高分子を水溶性溶媒に溶解させる段階;及び
(c)ゼラチン、コラーゲン、又はこれらの混合物の溶液及び酸化した生分解性陰イオン高分子溶液を混合する段階。
【請求項11】
(d)前記(c)段階の結果物である混合溶液を有機溶媒に添加し撹拌してエマルジョン化させる段階をさらに含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記有機溶媒は、n-ブチルアセテート(n-butylacetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、MCTオイル(medium chain triglyceride oil)、又はこれらの混合溶媒である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
(e)前記エマルジョン化によって生成されたマイクロ粒子を洗浄及び乾燥させる段階をさらに含む、請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
前記洗浄は、n-ブチルアセテート(n-butylacetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、MCTオイル(medium chain triglyceride oil)、又はこれらの混合溶媒から選ばれる有機溶媒で行われる、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
(f)前記エマルジョン化によって生成されたマイクロ粒子を90℃~200℃の温度で0.5~5時間熱処理する段階をさらに含む、請求項11に記載の製造方法。
【請求項16】
(g)前記熱処理の完了したマイクロ粒子を洗浄する段階をさらに含む、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
(h)前記マイクロ粒子を脱水及び乾燥させる段階をさらに含む、請求項16に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、2018年11月30日付に大韓民国特許庁に提出された大韓民国特許第10-2018-0153064号に対して優先権を主張する。
【0002】
本発明は、生分解性高分子を含む球(sphere)の形態を有する化学塞栓用水和ゲル粒子に関する。
【0003】
〔背景技術〕
映像診断技術の飛躍的な発展により、癌の正確な位置、及び癌に血液を供給する血管を正確に見つけ、放射線照射、手術による除去、及び血管塞栓を用いた腫瘍壊死などの様々な方法で抗癌治療を行うことが可能になった。特に、塞栓術(Embolotherapy)は、カテーテルを経動脈的に接近して、腫瘍に血液を供給する特定血管を硬塞させることによって、腫瘍への血液供給を遮断して腫瘍の壊死を誘発する治療法である。近来、肝細胞癌の治療方法としては肝動脈化学塞栓術(Transcatheter arterial chemoembolization,TACE)が最も多く施行されている。TACEは、腫瘍に血流を供給する動脈の塞栓効果と経動脈抗癌剤注入による抗癌効果を同時に追求する治療法である。正常の肝は、70~80%の血流と50%の必要酸素量が門脈から供給されるのに対し、肝癌細胞は、殆どが肝動脈から供給される。したがって、肝動脈を塞栓させると、正常の肝細胞に比べて肝癌細胞に対する損傷がより多く発生するので、TACEを用いれば比較的選択的に腫瘍を治療することができる。
【0004】
初期TACE手術では、ゼラチンスポンジ粒子に抗癌剤を含浸させて投与した。その後、リピオドールが正常肝組織よりも肝癌組織に遥かに高い比率で流入し、宿主で数カ月までもその場に留まり得るという事実が発見され、リピオドールと抗癌剤を混合して投与し始めた。リピオドールTACEは、まず、リピオドールと抗癌剤を混合して懸濁液を製造し、懸濁液を腫瘍の動脈に注入した後、ゼラチンスポンジ粒子をさらに注入して動脈を塞栓させることによって抗癌剤の流失を最小化する方法である。リピオドールTACEの長所は、一定の時間にかけて高濃度の抗癌剤が露出されることにより、腫瘍壊死をはじめとする治療効果が増加するということである。しかし、リピオドールTACEは、腫瘍組織の損傷の他に正常肝組織の損傷も比例して増加し、肝癌組織を含めて全身に抗癌剤が広まるため、予期せぬ副作用も誘発し得るという短所がある。そこで、正常肝組織を保存しながらも抗癌効果を極大化するための方案が注目され始め、高濃度の薬物が一時に放出されず、一定の濃度の薬物が持続的に放出され得る薬物搭載型塞栓剤が開発された。薬物搭載型塞栓剤は玉状の塞栓剤であり、均一の粒子サイズを有し、使用する直前に薬物と混合して1時間放置すれば薬物を完全に吸着し、薬物を吸着した塞栓剤で肝動脈を塞栓したとき、約14日にわたって徐々に抗癌剤が放出される。既存の化学塞栓術(TACE)は、平均で8.5日も入院しなければならないが、薬物搭載型塞栓剤を用いた化学塞栓術は副作用が顕著に減り、1日の入院だけで済むものと報告されている。薬物搭載型塞栓剤を用いた化学塞栓術は、現在、肝癌治療方法として最も多用されている方法であり、最近では、子宮筋腫、前立腺癌、肺癌、腎臓癌など、より様々な適応症の治療に用いられている。薬物搭載型塞栓剤の代表製品には、カリゲル(Cali-gelTM)、ヘパスフィア(HepaSphereTM)、ディーシービード(DC BeadTM)などが知られている。
【0005】
現在肝動脈化学塞栓術に使用される塞栓剤は、一般塞栓剤と薬物搭載型塞栓剤の2種類に分類される。一般塞栓剤は、分解性と非分解性塞栓剤に分けることができ、薬物搭載型は、非分解性塞栓剤だけが販売されている。研究によれば、腫瘍の血管を永久的に塞栓すれば、原血管は再施術できず、しかも腫瘍に新生血管が生成されるため、治療が難しいと知られている。したがって、市販されているカリゲル(Cali-gelTM)は、生分解性の一般塞栓剤であるが、1週経過すると体内で分解され、血管が再開通されると知られており、このため、腫瘍の確実な壊死が誘導できない。一方、ヘパスフィア(HepaSphereTM)やディーシービード(DC BeadTM)などは、薬物を搭載する長所があるが、非分解性であるがため再施術ができず、しかも手術の完了した腫瘍には新生血管が生成されることが報告されている。
【0006】
そこで、本発明では、治療に必要な適切な分解時間を有しながらも薬物搭載が可能な塞栓剤を開発するために努力した。
【0007】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明者らは、治療に必要な適切な分解時間を有しながらも薬物搭載が可能な塞栓剤を開発するために努力した。その結果、ゼラチン及び/又はコラーゲンと酸化した陰イオン性高分子を用いてマイクロ粒子を製造する場合、生体内分解時間の調節が可能ながらも薬物吸着及び放出能力に非常に優れた塞栓用水和ゲル粒子として使用できることを究明し、本発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、本発明の目的は、(a)ゼラチン、コラーゲン、又はこれらの混合物;及び(b)生分解性陰イオン性高分子を含むマイクロ粒子と、その製造方法を提供することである。
【0009】
〔課題を解決するための手段〕
本発明の一態様によれば、本発明は、(a)ゼラチン、コラーゲン、又はこれらの混合物;及び(b)生分解性陰イオン性高分子を含むマイクロ粒子を提供する。
【0010】
本発明の一具現例において、前記生分解性陰イオン性高分子は、酸化した陰イオン性高分子である。
【0011】
本明細書において、用語“生分解性”とは、生理的溶液(physiological solution)に露出された時に分解され得る性質を意味し、例えば、PBS、生理食塩水、蒸留水、ヒトを含む哺乳動物の生体内で体液又は微生物などによって分解され得る性質を意味する。
【0012】
本発明の具体的な具現例において、前記生分解性陰イオン性高分子は、コンドロイチンサルフェート、デキストランサルフェート、デルマタンサルフェート、ソジウムアルギン酸サルフェート、ヘパリン、ケラタンサルフェート、ヒアルロン酸、又はこれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0013】
本発明のより具体的な具現例によれば、前記生分解性陰イオン性高分子は、酸化コンドロイチンサルフェート、酸化デキストランサルフェート、酸化デルマタンサルフェート、酸化ソジウムアルギン酸サルフェート、酸化ヘパリン、酸化ケラタンサルフェート、酸化ヒアルロン酸、又はこれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0014】
本発明の一具現例において、前記酸化コンドロイチンサルフェート、酸化デキストランサルフェート、酸化デルマタンサルフェート、酸化ソジウムアルギン酸サルフェート、酸化ヘパリン、酸化ケラタンサルフェート、及び酸化ヒアルロン酸は、コンドロイチンサルフェート、デキストランサルフェート、デルマタンサルフェート、ソジウムアルギン酸サルフェート、ヘパリン、ケラタンサルフェート、及びヒアルロン酸を過ヨウ素酸ナトリウム(sodium periodate)と6~24時間、8~24時間、10~24時間、12~24時間、18~24時間、より具体的には12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、又は24時間反応させて製造できるが、これに限定されるものではない。
【0015】
本発明の具体的な具現例において、本発明の生分解性陰イオン性高分子がコンドロイチンサルフェートである場合には、コンドロイチンサルフェートと反応させる過ヨウ素酸ナトリウムの重量比率によって酸化度を調節することができる。例えば、コンドロイチンサルフェート50gと過ヨウ素酸ナトリウム15gを常温で18時間反応させる場合、コンドロイチンサルフェートの酸化度を75~85%に、過ヨウ素酸ナトリウム12gを常温で18時間反応させる場合、コンドロイチンサルフェートの酸化度を55~60%に、過ヨウ素酸ナトリウム6gを常温で18時間反応させる場合、コンドロイチンサルフェートの酸化度を30~55%に、過ヨウ素酸ナトリウム5.5gを常温で18時間反応させる場合、コンドロイチンサルフェートの酸化度を25~30%に、過ヨウ素酸ナトリウム5gを常温で18時間反応させる場合、コンドロイチンサルフェートの酸化度を20~25%に、過ヨウ素酸ナトリウム4.5gを常温で18時間反応させる場合、コンドロイチンサルフェートの酸化度を16~20%に調節できる。
【0016】
本発明の一具現例において、本発明のマイクロ粒子を構成する(a)ゼラチン、コラーゲン又はこれらの混合物と(b)生分解性陰イオン性高分子の重量比は、5:1~1:5、3:1~1:3、2:1~1:2でよく、具体的には、1:1~1:5、1:1~1:4、1:1~1:3、1:1~1:2、5:1~1:1、4:1~1:1、3:1~1:1、2:1~1:1、1:1、1:1.5、1:2、1:3、1:4、1:5、1.5:1、2:1、3:1、4:1、5:1、1.5:2、3:2、5:2、2:3、4:3、5:3、3:4、5:4、2:5、3:5、4:5、5:1、4:1、3:1、2:1、又は1.5:1でよいが、これに限定されない。
【0017】
本発明の一具現例において、本発明のマイクロ粒子は、マイクロ粒子を構成するゼラチンの含有量が高いほど分解にかかる時間が長くなる。
【0018】
本発明の一具現例において、本発明のゼラチン及び酸化コンドロイチンサルフェートを含むマイクロ粒子は、1x PBSにスウェリングさせて振盪水槽(shaking water bath)に入れ、100rpmで振盪しながら完全に分解されるまでかかる時間を測定すれば、コンドロイチンサルフェートの重量比を7.5とするとき、ゼラチンの重量比が3の場合に分解時間が5~15日又は5~10日であり、ゼラチンの重量比が5の場合に分解時間が15~25日であり、ゼラチンの重量比が5の場合に分解時間が25~35日である。
【0019】
本発明の一具現例において、本発明のマイクロ粒子は、マイクロ粒子を構成するコンドロイチンサルフェートの含有量が高いほど分解にかかる時間が長くなる。
【0020】
本発明の一具現例において、本発明のゼラチン及び酸化コンドロイチンサルフェートを含むマイクロ粒子は、1x PBSにスウェリングさせて振盪水槽に入れ、100rpmで振盪しながら完全に分解されるまでかかる時間を測定すれば、ゼラチンの重量比を3とするとき、コンドロイチンサルフェートの重量比が3~6の場合に分解時間が3~5日であり、コンドロイチンサルフェートの重量比が6~8の場合に分解時間が5~10日であり、コンドロイチンサルフェートの重量比が8~12の場合に分解時間が10~15日である。
【0021】
本発明の一実施例において、本発明のマイクロ粒子を構成するゼラチンと酸化コンドロイチンサルフェートは1:1.5、すなわち、2:3である場合に、最も優れた薬物吸着能力を示す。
【0022】
本発明の一具現例において、本発明のマイクロ粒子は、マイクロ粒子を構成するコンドロイチンサルフェートの酸化度が高いほど分解にかかる時間が長くなる。
【0023】
本発明の一具現例において、本発明のゼラチン及び酸化コンドロイチンサルフェートを含むマイクロ粒子は、1x PBSにスウェリングさせて振盪水槽に入れ、100rpmで振盪しながら完全に分解されるまでかかる時間を測定すれば、コンドロイチンサルフェートの酸化度が50~70%の場合に分解時間が約25日~35日、コンドロイチンサルフェートの酸化度が30~50%の場合に分解時間が約10日~20日、コンドロイチンサルフェートの酸化度が10~30%の場合に分解時間が約4日~10日かかる。
【0024】
本発明の他の具現例において、前記本発明のマイクロ粒子は、化学的塞栓の用途に用いることができる。より具体的には、前記本発明のマイクロ粒子は、TACE(transcatheter arterial chemoembolization)用途に用いることができる。したがって、前記マイクロ粒子は薬物吸着力があることを特徴とする。
【0025】
本発明の一具現例において、本発明のマイクロ粒子に吸着される薬物は、抗癌剤である。前記抗癌剤は、アントラサイクリン系抗癌剤又はイリノデカンであってよい。
【0026】
本発明の具体的な具現例において、前記アントラサイクリン系抗癌剤は、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ゲムシタビン、ミトキサントロン、ピラルビシン及びバルルビシンからなる群から選ばれるが、これに限定されない。
【0027】
本発明の前記マイクロ粒子は球の形態であり、直径がマイクロ単位であるマイクロスフェア(microsphere)であることを特徴とする。
【0028】
本明細書において、用語“マイクロ粒子”は、マイクロスフェア、水和ゲル粒子、微粒球、又は微粒子と表現される。
【0029】
本発明の一実施例に係る薬物搭載型塞栓用水和ゲル粒子の抗癌剤吸着能力は、水和ゲル2ml当たり50mgの吸着時間が5~20分である。これは、現在市販されている製品ヘパスフィア(HepaSphereTM)やディーシービード(DC BeadTM)などに比べて3~12倍向上したものである。
【0030】
本発明の他の態様によれば、本発明は、次の段階を含むマイクロ粒子の製造方法を提供する:
(a)ゼラチン、コラーゲン、又はこれらの混合物を水溶性溶媒に溶解させる段階;
(b)生分解性陰イオン性高分子を水溶性溶媒に溶解させる段階;及び
(c)ゼラチン、コラーゲン、又はこれらの混合物の溶液及び生分解性陰イオン高分子溶液を混合する段階。
【0031】
本発明の一具現例において、前記生分解性陰イオン性高分子は、酸化した陰イオン性高分子である。
【0032】
本発明の具体的な具現例において、前記生分解性陰イオン性高分子は、コンドロイチンサルフェート、デキストランサルフェート、デルマタンサルフェート、ソジウムアルギン酸サルフェート、ヘパリン、ケラタンサルフェート、ヒアルロン酸、又はこれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0033】
本発明のより具体的な具現例によれば、前記生分解性陰イオン性高分子は、酸化コンドロイチンサルフェート、酸化デキストランサルフェート、酸化デルマタンサルフェート、酸化ソジウムアルギン酸サルフェート、酸化ヘパリン、酸化ケラタンサルフェート、酸化ヒアルロン酸、又はこれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0034】
本発明の一具現例において、前記ゼラチン、コラーゲン、又はこれらの混合物と、前記生分解性陰イオン性高分子を溶解させるための水溶性溶媒は、蒸留水、生理食塩水、PBSなど、生体内投与しても安定性及び毒性の問題を起こさない無毒性溶媒のいずれをも含み、有機溶媒と区別するための消極的な意味に過ぎず、上記に例示した水溶性溶媒に限定されるものではない。
【0035】
本発明の一具現例において、本発明の前記製造方法は、(d)前記(c)段階の結果物である混合溶液を有機溶媒に添加し、エマルジョン化させる段階をさらに含む。前記有機溶媒は、n-ブチルアセテート(n-butylacetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、MCTオイル(medium chain triglyceride oil)、又はこれらの混合溶媒である。前記有機溶媒としてn-ブチルアセテート(n-butylacetate)又はセルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)を使用する場合と比較して、MCTオイルを使用する場合には、製造されるマイクロ粒子の直径が均一でなく、互いに凝着する現象がある。したがって、前記有機溶媒は、好ましくは、n-ブチルアセテート(n-butylacetate)又はセルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)である。
【0036】
本発明の更なる具現例において、本発明の前記製造方法は、(e)前記(c)段階で行われたエマルジョン化によって生成されたマイクロ粒子を洗浄及び乾燥させる段階をさらに含む。
【0037】
前記洗浄は、n-ブチルアセテート(n-butylacetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、MCTオイル(medium chain triglyceride oil)、又はこれらの混合溶媒から選ばれる有機溶媒で行われるが、前記(c)段階のエマルジョン化に用いられた有機溶媒と同じ有機溶媒を使用することが好ましい。
【0038】
本発明の更なる具現例において、本発明の前記製造方法は、(f)前記エマルジョン化によって生成されたマイクロ粒子を、90℃~200℃の温度で0.5~5時間熱処理する段階をさらに含む。前記熱処理温度は、具体的には、100℃~150℃、120℃~150℃、130℃~150℃、140℃~150℃、100℃~200℃、120℃~200℃、130℃~200℃、140℃~200℃、150℃~200℃、150℃~180℃、150℃~160℃、又は150℃であり、前記熱処理時間は、具体的に、1~10時間、2~10時間、3~10時間、5~10時間、1~7時間、2~7時間、3~7時間、5~7時間、1~5時間、2~5時間、3~5時間、1~4時間、2~4時間、3~4時間、1~3時間、2~3時間、1時間、2時間、3時間、4時間、又は5時間であるが、これに限定されない。
【0039】
本発明の具体的な具現例において、本発明の前記熱処理時間が長いほどマイクロ粒子の分解にかかる時間が長くなる。
【0040】
本発明の一実施例において、本発明のマイクロ粒子を2時間以下に熱処理した場合には、1x PBSで7日以内にマイクロ粒子が分解されるが、2時間超過、例えば5時間熱処理すると、1x PBSでの分解時間を約30日まで伸ばすことができる。
【0041】
本発明において、前記熱処理の方法は、電気オーブン、ガスオーブン、電子レンジ、水性溶媒、又は有機溶媒内の加熱など、前記好ましい温度の熱を加えることができる手段であればいずれも使用可能である。
【0042】
本発明の一具現例において、本発明の熱処理段階を含む製造方法によって製造されたマイクロ粒子は、熱処理していないマイクロ粒子に比べて、薬物の吸着能力が著しく優れる。
【0043】
本発明の更なる具現例において、本発明の前記製造方法は、(g)前記熱処理の完了したマイクロ粒子を洗浄(又は水和)する段階をさらに含む。
【0044】
また、本発明の上記の製造方法は、(h)前記マイクロ粒子を脱水及び乾燥させる段階をさらに含む。上記の洗浄(又は水和)、脱水の段階は、熱処理工程で生成される副産物を除去することによって、薬物吸着時に浮遊物などが生じることを防止し、薬物の吸着能力を増加させる。
【0045】
本発明の上記の製造方法は、製造されたマイクロ粒子を篩分け(sieving)によってサイズ(直径)別に分類する段階をさらに含むことができる。前記マイクロ粒子のサイズ(直径)は、例えば、75~150μm、100~300μm、300~500μm、500~700μm、700~900μmのサイズに分類できるが、これに限定されないことは業者に明らかである。
【0046】
本発明の一態様に係る前記製造方法は、上述した本発明の一態様によるマイクロ粒子を製造する方法であるので、上述したマイクロ粒子と共通する範疇では本発明の製造方法にも同一に適用される。
【0047】
〔発明の効果〕
本発明は、薬物搭載型塞栓用水和ゲル粒子として使用可能なマイクロ粒子及びその製造方法を提供する。
【0048】
(1)本発明で提供されるマイクロ粒子は、生分解時間を1週~12週及びそれ以上に調節することができる。
【0049】
(2)本発明で提供されるマイクロ粒子は、薬物の搭載にかかる時間が5分~20分であり、抗癌剤吸着速度が格段に向上した。
【0050】
(3)本発明で提供される塞栓剤は、短期間で分解されることによって非分解性塞栓剤が誘発する新生血管の生成を低下させる。
【0051】
(4)本発明で提供される塞栓剤は、生体適合性高分子だけで構成されており、いかなる化学的架橋剤及び添加剤も使用しないので、非常に安全である。
【0052】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本発明の熱処理過程によって製造された粉末状微粒球及び水和ゲル粒子の写真である。
【0053】
図2Aは、ドキソルビシンが吸着された本発明の水和ゲル粒子を拡大して観察した図であり、図2Bは、本発明の水和ゲル粒子の時間によるドキソルビシン吸着力を示す図である。
【0054】
図3は、本発明の水和ゲル粒子の陰イオン性高分子の酸化度による分解性を比較したグラフである。
【0055】
図4は、本発明の水和ゲル粒子の熱硬化の有無による薬物搭載性能を示す図である。
【0056】
図5は、本発明の水和ゲル粒子に含まれる陰イオン性高分子の酸化の有無による薬物吸着性能を確認するために、非酸化陰イオン性高分子を用いて製造された水和ゲル粒子の薬物吸着性能を示す図である。
【0057】
図6は、本発明の水和ゲル粒子の薬物放出性能を確認するために、市販されている製品であるDC BeadTM及びHepaSphereTMとの薬物放出性能を示す図である。
【0058】
図7は、本発明のコラーゲン及び酸化コンドロイチンサルフェートで製造した水和ゲル粒子の写真、及びドキソルビシンを搭載した後の水和ゲル粒子の写真である。
【0059】
図8は、本発明のゼラチン及び酸化デキストランサルフェートで製造した水和ゲル粒子の写真、及びドキソルビシンを搭載した後の水和ゲル粒子の写真である。
【0060】
〔発明を実施するための形態〕
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0061】
<実施例>
本明細書全体を通じて、特定物質の濃度を示すために使われる“%”は、別に断りのない限り、固体/固体は(重量/重量)%、固体/液体は(重量/体積)%、そして液体/液体は(体積/体積)%である。
【0062】
<実施例1:コンドロイチンサルフェートの酸化反応>
まず、コンドロイチンサルフェート(Chondroitin Sulfate)50gを450mlの蒸留水に完全に溶解させた。次に、5gの過ヨウ素酸ナトリウム(Sodium Periodate)を50mlの蒸留水に完全に溶解させた後、これを前記450mlのコンドロイチンサルフェート(Chondroitin Sulfate)溶液に添加して18時間常温で撹拌した。反応が終わると、限外濾過によって残留の過ヨウ素酸ナトリウム(Sodium Periodate)を除去した後に真空乾燥させ、酸化度(degree of substitution,DS)約25%の酸化コンドロイチンサルフェートを得た。コンドロイチンサルフェート(Chondroitin Sulfate)と過ヨウ素酸ナトリウム(Sodium Periodate)の添加比率による酸化度結果を、下記表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
<実施例2:薬物搭載型塞栓用水和ゲル粒子の組成比>
本発明の薬物搭載型塞栓用水和ゲル粒子を製造するために、ゼラチン及び陰イオン性高分子である酸化コンドロイチンサルフェート及びその酸化度の組成を、下記表2に示した。水和ゲルの原液は、ゼラチン水溶液と酸化コンドロイチンサルフェート水溶液を混合して製造し、下記表2のゼラチンと酸化コンドロイチンサルフェートの含有量は、両水溶液を混合して製造した水和ゲル原液中の両物質の含有量を意味する。
【0065】
【表2】
【0066】
<実施例3:薬物搭載型塞栓用水和ゲル粒子の製造1(熱処理)>
まず、前記表2に示した組成で60mlのゼラチン溶液と60mlの酸化コンドロイチンサルフェート溶液をチューブ内で混合し、50℃の水浴(water bath)にチューブを浸漬させて10分間撹拌した。次に、前記ゼラチン溶液と酸化コンドロイチンサルフェート溶液の混合溶液120mlを、4℃に維持された収集溶液(MCTオイル(medium chain triglyceride oil);又はn-ブチルアセテート(10%セルロースアセテートブチレート含有))600mlにエンカプスレータ(encapsulator)を用いて噴射しながら収集溶液を撹拌してエマルジョン(マイクロ粒子)を製造した。混合溶液の噴射が終わると撹拌を止め、長時間の安定を経て収集溶液中の粒子を沈め、上層の収集溶液は捨てた。n-ブチルアセテート(n-butylacetate)とアセトン(Acetone)を用いて順次に洗浄した後に真空乾燥させ、微粒球(マイクロ粒子)を得た。得られた微粒球に150℃で2時間熱を処理し、完全に水和(swelling,hydration)されるまで蒸留水に浸漬させた後、篩分け(sieving)によって100~300μm直径の水和ゲル粒子を収集した。収集された水和ゲル粒子はアセトンで脱水後に真空乾燥させ、最終粉末状微粒球を得た。製造された最終粉末状微粒球とスウェリング(swelling)時の水和ゲル粒子の写真を、図1に示した。
【0067】
<実施例4:薬物搭載型塞栓用水和ゲル粒子の薬物吸着実験>
実施例2の組成によって実施例3の方法で製造された微粒球に対してドキソルビシン吸着試験を行った。まず、50mgのドキソルビシンを10mlの蒸留水に溶解させて5mg/mlのドキソルビシン溶液を製造した。次に、製造された微粒球約270~300mgを10mlのガラス瓶に取り、ここに、用意しておいた5mg/mlのドキソルビシン溶液10mlを徐々に加えた。ドキソルビシンと微粒球がよく混ざり合うように、約2分に1回ずつ3回~5回程度振り動かした。また、5分、10分及び20分後に、上澄液に入っているドキソルビシンの含有量を測定することによって、微粒球に吸着された薬物の量を確認した。薬物吸着の完了した水和ゲル粒子の総体積は、約2mlとなった。薬物吸着の完了した水和ゲル粒子のイメージは図2Aに示し、実験結果は表3及び図2Bに示した。表3の微粒球重量から分かるように、コンドロイチンサルフェートの酸化度によって微粒球の薬物吸着後のスウェリング程度が異なる。具体的には、コンドロイチンサルフェートの酸化度が低いほど水和後の体積が大きくなる。
【0068】
【表3】
【0069】
<実施例5:薬物搭載型塞栓用水和ゲルの分解性実験1(酸化度による分解性)>
酸化コンドロイチンサルフェートの酸化度(DS)が水和ゲルの分解性に与える影響を確認するために、表2における組成3(DS約59%)、5(DS約41%)、9(DS約20%)でそれぞれ実施例3の方法によって微粒球を製造し、150℃で2時間熱処理した。製造された微粒球を100mgずつ称量して15mlの1x PBSにスウェリングさせた後に振盪水槽に入れ、100rpmで振盪しながら完全に分解されるまでにかかる時間を観察した。結果は、表4に示した。表4に示すように、コンドロイチンサルフェートの酸化度が高いほど微粒球の分解時間が長くなることが確認できた。
【0070】
【表4】
【0071】
<実施例6:薬物搭載型塞栓用水和ゲルの分解性実験2(熱処理時間による分解性)>
熱処理時間が水和ゲルの分解性に与える影響を確認するために、表2の組成7の比率で実施例3の方法によって微粒球を製造し、150℃でそれぞれ1時間、2時間、5時間熱処理した。製造された微粒球を100mgずつ称量して15mlの1x PBSにスウェリングさせた後に振盪水槽に入れ、100rpmで振盪しながら完全に分解されるまでにかかる時間を観察した。結果は、図3及び図4に示した。図3及び図4に示すように、熱硬化時間が長いほど分解時間が相対的に長くなることが確認できた。
【0072】
<実施例7:薬物搭載型塞栓用水和ゲルの分解性実験3(ゼラチン含有量による分解性)>
ゼラチンの含有量が水和ゲルの分解性に与える影響を確認するために、表2における組成1、2、3の比率(ゼラチンそれぞれ3、4、5%、及び酸化コンドロイチンサルフェート7.5%)で実施例3の方法によって微粒球を製造し、150℃で5時間熱処理した。製造された微粒球を100mgずつ称量して15mlの1x PBSにスウェリングさせた後に振盪水槽に入れ、100rpmで振盪した。1ヶ月後の残余微粒球の重さを称量して分解度を計算した。結果は、表5に示した。表5に示すように、ゼラチン含有量が低いほど分解速度が速かった。
【0073】
【表5】
【0074】
<実施例8:薬物搭載型塞栓用水和ゲルの分解性実験4(酸化コンドロイチンサルフェート含有量による分解性)>
酸化コンドロイチンサルフェートの含有量が水和ゲルの分解性に与える影響を確認するために、表2の組成6、7、8(ゼラチン5%、及び酸化コンドロイチンサルフェートをそれぞれ5、7.5、10%)の比率で実施例3の方法によって微粒球を製造し、150℃で5時間熱処理した。製造された微粒球を100mgずつ称量して15mlの1x PBSにスウェリングさせた後に振盪水槽に入れ、100rpmで振盪した。1ヶ月後の残余微粒球の重さを称量して分解度を計算した。結果は、表6に示した。表6に示すように、酸化コンドロイチンサルフェートの含有量が低いほど分解速度が速かった。
【0075】
【表6】
【0076】
<実施例9:薬物搭載型塞栓用水和ゲルの熱処理有無による薬物搭載性能差>
表2における組成3の比率で実施例3の方法によって微粒球を製造した。2時間熱処理した微粒球と熱処理していない微粒球をそれぞれ280mgずつ取り、実施例4の方法で5mg/mlのドキソルビシン溶液10mlを徐々に加えてドキソルビシン吸着程度を観察した。観察30分後の肉眼結果を図5に示した(左:熱処理×、右:熱処理O)。図5の左図に示すように、熱処理しなければ、薬物が殆ど吸着されず、微粒球の硬度が非常に低いため、形態が保持できない。
【0077】
<実施例10:薬物搭載型塞栓用水和ゲル粒子の製造2(シアノ水素化ホウ素ナトリウム処理)>
表2における組成3の比率で5%ゼラチン溶液20mlと7.5%酸化コンドロイチンサルフェート溶液20mlをチューブ内で混合し、チューブを50℃の水浴に浸漬させて10分間撹拌した。次に、前記混合溶液40mlを、4℃に用意しておいた収集溶液n-ブチルアセテート(10%セルロースアセテートブチレート)200mlにエンカプスレータ(encapsulator)を用いて噴射しながら収集溶液を撹拌してエマルジョン(マイクロ粒子)を製造した。次に、1gのシアノ水素化ホウ素ナトリウム(sodium cyanoborohydride,SCBH)を蒸留水10mlに溶解させ、前記マイクロ粒子が入っている収集溶液に徐々に添加し、24時間反応を行った。反応が終わると撹拌を止め、長時間の安定を経て収集溶液中の粒子を沈め、上層の収集溶液は捨てた。n-ブチルアセテートとアセトンを用いて順次に洗浄した。マイクロ粒子を蒸留水に完全にスウェリング(swelling)させ、30分ずつ撹拌後に蒸留水を交替する方法で3回行って、マイクロ粒子内に残留するシアノ水素化ホウ素ナトリウムを除去した後、篩分け(sieving)によって直径100~300μmの水和ゲル粒子を収集した。収集された水和ゲル粒子はアセトンで脱水後に真空乾燥させ、最終微粒球を得た。
【0078】
<実施例11:薬物搭載型塞栓用水和ゲル粒子の製造3(グルタルアルデヒド処理)>
表2の組成3の比率で5%ゼラチン溶液20mlと7.5%酸化コンドロイチンサルフェート溶液20mlをチューブ内で混合し、チューブを50℃の水浴に浸漬させて10分間撹拌した。次に、前記混合溶液40mlを、4℃に用意しておいた収集溶液n-ブチルアセテート(10%セルロースアセテートブチレート)200mlにエンカプスレータ(encapsulator)を用いて噴射しながら収集溶液を撹拌してエマルジョン(マイクロ粒子)を製造した。次に、25%のグルタルアルデヒド(glutaraldehyde,GA)10mlを、マイクロ粒子が入っている収集溶液に徐々に添加して24時間反応させた。反応が終わると撹拌を止め、長時間の安定を経て粒子を沈め、上層の収集溶液は捨てた。n-ブチルアセテートとアセトンを用いて順次に洗浄した。マイクロ粒子を蒸留水に完全にスウェリング(swelling)させ、30分ずつ撹拌後に蒸留水を交替する方法で3回行って、マイクロ粒子内に残留するグルタルアルデヒドを除去した後、篩分け(sieving)によって直径100~300μmの水和ゲル粒子を収集した。収集された水和ゲル粒子はアセトンで脱水後に真空乾燥させ、最終微粒球を得た。
【0079】
<実施例12:薬物搭載型塞栓用水和ゲル粒子の製造4(EDC/NHS処理)>
表2の組成3の比率で5%ゼラチン溶液20mlと7.5%コンドロイチンサルフェート溶液20mlをチューブ内で混合し、チューブを50℃の水浴に浸漬させて10分間撹拌した。次に、前記混合溶液40mlを、4℃に用意しておいた収集溶液n-ブチルアセテート(10%セルロースアセテートブチレート)400mlにエンカプスレータ(encapsulator)を用いて噴射しながら収集溶液を撹拌してエマルジョン(マイクロ粒子)を製造した。次に、EDC(N-(3-Dimethylaminopropyl)-N’-ethylcarbodiimide hydrochloride)1gとNHS(N-Hydroxysuccinimide)1gを10mlの蒸留水に溶解させ、マイクロ粒子が入っている収集溶液に徐々に添加して24時間反応させた。反応が終わると撹拌を止め、長時間の安定を経て粒子を沈め、上層の収集溶液は捨てた。n-ブチルアセテートとアセトンを用いて順次に洗浄した。マイクロ粒子を蒸留水に完全にスウェリング(swelling)させ、30分ずつ撹拌後に蒸留水を交替する方法で3回行って、マイクロ粒子内に残留するEDC/NHSを除去した後、篩分け(sieving)によって直径100~300μmの水和ゲル粒子を収集した。収集された水和ゲル粒子はアセトンで脱水後に真空乾燥させ、最終微粒球を得た。
【0080】
<実施例13:製造方法による薬物搭載型塞栓用水和ゲル粒子の性能差(薬物吸着時間及び分解性)>
製造方法による薬物搭載性能に差異があるかを確認するために、実施例3による熱処理によって製造された水和ゲル粒子、実施例10によるシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加して製造された水和ゲル粒子、実施例11によるグルタルアルデヒドを添加して製造された水和ゲル粒子、及び実施例12によるEDC/NHSを添加して製造された水和ゲル粒子、の合計4種の微粒球を使用して、実施例4の方法でドキソルビシン吸着実験を行った。また、ドキソルビシンが吸着していない水和ゲルを100mgずつ称量して15mlの1x PBSに入れ、振盪水槽で100rpmで振盪しながら分解性を3ヶ月観察した。結果は、表7に示した。表7に示すように、SCBH、GA、又はEDC/NHSを使用して製造された水和ゲル粒子の薬物吸着能力は、熱硬化法で製造された水和ゲル粒子に比べて顕著に低かった。熱硬化法で製造された水和ゲル粒子は、コンドロイチンサルフェート(CS)の酸化度(DS)で分解時間を調節できるが、薬物吸着能力には大差がなかった。しかし、SCBH、GA、又はEDC/NHSを使用して製造された微粒球は、SCBH、GA、又はEDC/NHSの使用量によって分解時間を調節することはできるが、薬物吸着能力にも大差があることが確認できた。
【0081】
【表7】
【0082】
<実施例14:薬物搭載型塞栓用水和ゲル粒子の製造5(非酸化コンドロイチンサルフェート対酸化コンドロイチンサルフェート)>
コンドロイチンサルフェートの酸化の有無が水和ゲルの薬物吸着に与える影響を確認するために、酸化コンドロイチンサルフェートの代わりに、酸化していないコンドロイチンサルフェートを使用した以外は、実施例3と同じ方法で水和ゲル粒子を製造した。次に、実施例4の方法で製造された水和ゲル粒子の薬物吸着能力を確認した。結果は、図6に示した。図6に示すように、非酸化コンドロイチンサルフェートで製造した水和ゲル粒子にはドキソルビシン薬物がよく吸着されなかった。これは、コンドロイチンサルフェートが酸化しないとゼラチンと結合できず、微粒球を製造する過程で全て洗浄されて除去されたためと考えられる。したがって、非酸化コンドロイチンサルフェートで製造した水和ゲル粒子には薬物の吸着力がわずかであることが分かった。
【0083】
<実施例15:本発明の薬物搭載型塞栓用水和ゲルと市販の薬物搭載型塞栓剤との薬物放出比較実験>
実施例5の微粒球2(100~300μm)と市販中の塞栓剤HepaSphereTM(200~400μm)及びDC BeadTM(100~300μm)に、同様にドキソルビシン50mgを吸着させた後、1x PBS溶液で50rpmの条件で溶出実験を行った。その結果、図7に示すように、HepaSphereTMとDC BeadTMは、2時間以降では殆ど薬物が放出されないが、本発明で提示した水和ゲル(微粒球2、Bead)は持続的に薬物を放出した。また、微粒球2(Bead)は、1ヶ月にかけて完全に分解されながら薬物を全て放出するので、最終薬物放出率が100%であるが、非分解性であるHepaSphereTM及びDC BeadTMは最終薬物放出が30%未満であり、薬物放出率の差異が非常に大きかった。
【0084】
<実施例16:薬物搭載型塞栓用水和ゲル粒子の製造6(コラーゲン及び酸化コンドロイチンサルフェート粒子)>
10%コラーゲン水溶液20mlと7.5%酸化コンドロイチンサルフェート溶液20mlを混合して10分間撹拌した。次に、前記混合溶液を、4℃の収集溶液n-ブチルアセテート(10%セルロースアセテートブチレート)200mlにエンカプスレータ(encapsulator)を用いて噴射しながら収集溶液を撹拌してエマルジョン(マイクロ粒子)を製造した。噴射が終わると撹拌を止め、長時間の安定を経て粒子を沈め、上層の収集溶液は捨てた。n-ブチルアセテートとアセトンで洗浄後に真空乾燥させてマイクロ粒子を得た。得られたマイクロ粒子は、150℃で2時間熱処理し、蒸留水に完全にスウェリング(swelling)させた後、篩分け(sieving)によって100~300μmの水和ゲル粒子を収集した。収集された水和ゲル粒子は、アセトンで脱水後に真空乾燥させ、最終粉末状微粒球を得た。製造された粉末状微粒球を蒸留水にスウェリング(swelling)させた時の水和ゲル粒子写真とドキソルビシンを搭載した後の写真を図8に示した。
【0085】
<実施例17:薬物搭載型塞栓用水和ゲル粒子の製造8(ゼラチン及び酸化デキストランサルフェート粒子)>
表2における組成3の比率で5%ゼラチン水溶液20mlと7.5%酸化デキストランサルフェート(DS20%)溶液20mlを混合して10分間撹拌した。次に、前記混合溶液を4℃の収集溶液n-ブチルアセテート(10%セルロースアセテートブチレート)200mlにエンカプスレータ(encapsulator)を用いて噴射しながら収集溶液を撹拌してエマルジョン(マイクロ粒子)を製造した。噴射が終わると撹拌を止め、長時間の安定を経て粒子を沈め、上層の収集溶液は捨てた。n-ブチルアセテートとアセトンで洗浄後に真空乾燥させてマイクロ粒子を得た。得られたマイクロ粒子は150℃で2時間熱処理後に蒸留水に完全にスウェリング(swelling)させ、篩分け(sieving)によって100~300μmの水和ゲル粒子を収集した。収集された水和ゲル粒子はアセトンで脱水後に真空乾燥させ、最終粉末状微粒球を得た。製造された粉末状微粒球を蒸留水にスウェリング(swelling)させた時の水和ゲル粒子写真とドキソルビシンを搭載した後の写真を図9に示した。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1】本発明の熱処理過程によって製造された粉末状微粒球及び水和ゲル粒子の写真である。
図2A】ドキソルビシンが吸着された本発明の水和ゲル粒子を拡大して観察した図である。
図2B】本発明の水和ゲル粒子の時間によるドキソルビシン吸着力を示す図である。
図3】本発明の水和ゲル粒子の陰イオン性高分子の酸化度による分解性を比較したグラフである。
図4】本発明の水和ゲル粒子の熱硬化の有無による薬物搭載性能を示す図である。
図5】本発明の水和ゲル粒子に含まれる陰イオン性高分子の酸化の有無による薬物吸着性能を確認するために、非酸化陰イオン性高分子を用いて製造された水和ゲル粒子の薬物吸着性能を示す図である。
図6】本発明の水和ゲル粒子の薬物放出性能を確認するために、市販されている製品であるDC BeadTM及びHepaSphereTMとの薬物放出性能を示す図である。
図7】本発明のコラーゲン及び酸化コンドロイチンサルフェートで製造した水和ゲル粒子の写真、及びドキソルビシンを搭載した後の水和ゲル粒子の写真である。
図8】本発明のゼラチン及び酸化デキストランサルフェートで製造した水和ゲル粒子の写真、及びドキソルビシンを搭載した後の水和ゲル粒子の写真である。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9