(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】睡眠の質を向上させるプラチナナノコロイド及び他のナノ粒子を含有する繊維製衣類、及び寝衣を用いて副交感神経を亢進し睡眠の質を向上し疲労回復させる方法
(51)【国際特許分類】
A41D 10/00 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
A41D10/00 L
(21)【出願番号】P 2021560101
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048937
(87)【国際公開番号】W WO2021245969
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2020095416
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507089643
【氏名又は名称】株式会社ベネクス
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】片野 秀樹
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070492(JP,A)
【文献】国際公開第2009/041302(WO,A1)
【文献】特開2009-051835(JP,A)
【文献】特開2009-097104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
楕円形のダイヤモンドナノ粒子及び円形のプラチナナノ粒子をそれぞれ0.01mg/kg、0.0001mg/kgを含む繊維(ダイヤモンドナノ粒子及びプラチナナノ粒子を付着させた繊維を除く。)を含む、睡眠の質を向上させる衣類であって、
0.002のP値が生じる睡眠効率の向上、0.002のP値が生じる中途覚醒数の低下、及び0.003のP値が生じる中途覚醒時間の短縮の少なくとも1つ、又は0.03のP値が生じるREM睡眠率の低減により、睡眠の質を向上させる、衣類。
【請求項2】
寝衣である、請求項1に記載に記載の衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠の質を向上させるプラチナナノコロイド及び他のナノ粒子を含有する繊維製衣類、及び寝衣を用いて副交感神経を亢進し睡眠の質を向上し疲労回復させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時の快適性、疲労回復は睡眠の質と関係し、良質な睡眠はコンディショニング維持に関わる重要な要因であることは周知されている。そして近年、吸汗発熱繊維や冷却効果を伴う繊維といった機能性繊維が一般に広く普及し、これらの機能性繊維が睡眠時の快適性向上に期待できるものであることが知られている(例えば下記非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】婦人春夏用パジャマの快適性客観評価式の開発,金沢大学教育学部紀要,1999,48,p.97-109
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、睡眠の質を向上させることができる衣類、寝衣を提供すること、及びこのような衣類や寝衣を用いて睡眠の質を向上させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、遠赤外線を発し、且つプラズモン共鳴に基づく電子移動を生じるナノ粒子を少なくとも2種含有する繊維を含む、睡眠の質を向上させる衣類に関する。本発明において、繊維に含まれる粒子はナノ粒子であり、光により電子が集団振動を生じる現象(表面プラズモン共鳴)を生じる。集団振動により、ナノ粒子に分極が生じ表面に局在化する現象(局在表面プラズモン共鳴)も生じ得る。これらの現象は、ナノ粒子がイオンを発していると評価することもでき、発するイオンとしては、ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴による自由電子が挙げられる。
【0006】
繊維に含まれる粒子は、表面プラズモン共鳴のみならず、遠赤外線を発するという性質も有している。本発明では、このような特徴的な2つの性質を兼ね備えたナノ粒子を用いたことで、睡眠の質が向上する。その原理は詳細に特定されてはいないが、遠赤外線のみを発する材料では本発明のような効果が生じない。遠赤外線は加熱効果があり誘眠作用があるようにも思われるが、熱い風呂に入ると交感神経が亢進し却って眠れなくなることがあることから理解されるように、加熱効果だけでは、睡眠の質を向上させることはできない。すなわち、遠赤外線と電子移動という2つの現象を生じるナノ粒子を用いることで、副交感神経の亢進が図られ、深部体温が低下し、睡眠の質が向上する。
【0007】
少なくとも2種の上記ナノ粒子は、ダイヤモンドナノ粒子及びプラチナナノ粒子であることが好ましい。ダイヤモンドナノ粒子及びプラチナナノ粒子は、遠赤外線を発する能力を備え、プラズモン共鳴に基づく電子移動も効率的に生じることから、本発明の衣類に適用するのに適している。
【0008】
睡眠の質の向上は、睡眠効率の向上、中途覚醒数の低下及び中途覚醒時間の短縮の少なくとも1つにより実現することができる。以下の実施例に記載の通り、例えば中途覚醒数は、上述したナノ粒子を含まない衣類に比較して、顕著に低下する(p値が0.002)ことが実証されている。睡眠効率及び中途覚醒時間についても、実施例に示されるように顕著な効果がある。
【0009】
睡眠の質の向上は、Non―REM睡眠率の向上及びREM睡眠率の低減の少なくとも1つによっても実現することができる。以下の実施例で示されるように、例えばREM睡眠率は、上述したナノ粒子を含まない衣類に比較して、顕著に低下する(p値が0.03)。REM睡眠率が低下することで、Non―REM睡眠率の向上が図られる。なお、Non―REM睡眠率には、Non―REM(N1)睡眠率、Non―REM(N2)睡眠率及びNon―REM(N3)睡眠率が含まれ、これらのいずれにも改善効果がある。
【0010】
上記衣類は寝衣であってもよい。寝衣は睡眠している間に継続的に着用することから、睡眠の質を向上させるという本発明の効果が、より長期的に且つ十分に奏される。
【0011】
本発明はまた、遠赤外線を発し、且つプラズモン共鳴に基づく電子移動を生じるナノ粒子を少なくとも2種含有する繊維を含む衣類を用いて、睡眠の質を向上させる方法を提供する。ここで、衣類を用いることには、衣類を着用することが含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、睡眠の質を向上させることができる衣類、寝衣を提供することができる。また、このような衣類や寝衣を用いて睡眠の質を向上させる方法を提供することができる。睡眠の質の向上は、深部体温の低下とも表現でき、また睡眠時の副交感神経活動の亢進方法と言い換えることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態に係る衣類は、遠赤外線を発し、且つプラズモン共鳴に基づく電子移動を生じるナノ粒子を少なくとも2種含有する繊維を含む。この繊維は、上述のナノ粒子を2種のみ含有するものであってもよい。
【0014】
このようなナノ粒子としては、例えば、ダイヤモンドナノ粒子、プラチナナノ粒子、アルミナ、ジルコニア、シリカ、酸化チタン、マグネシウム、酸化カルシウム、ジルコニア、酸化クロム、フェライト、スピネル、セリウム、バリウム、炭化ホウ素、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化モリブデン、炭化タングステン、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ジルコニウム、炭素、グラファイト、タングステン、モリブデン、パナジウム、タンタル、マンガン、ニッケル、酸化銅、酸化鉄等の粒子が挙げられる。またナノ粒子は、ダイヤモンドナノ粒子及びプラチナナノ粒子の2種であることが好ましい。
【0015】
少なくとも2種含まれるナノ粒子の平均粒径は、10~200nmが好適である。ダイヤモンドナノ粒子及びプラチナナノ粒子を用いる態様においては、ダイヤモンドナノ粒子の平均粒径は、好ましくは100~200nm、プラチナナノ粒子の平均粒径は、好ましくは20~200nm、より好ましくは100~200nmである。
【0016】
上記繊維がダイヤモンドナノ粒子及びプラチナナノ粒子を含む場合、プラチナナノ粒子の含有量は、ダイヤモンドナノ粒子の含有量の1/1000~1倍が好適である。なお、繊維のナノ粒子を含有させる方法としては、ナノ粒子を含油する繊維材料で紡糸する方法、紡糸された繊維にナノ粒子を接着させる方法等が挙げられる。
【0017】
ダイヤモンドナノ粒子(ナノサイズダイヤモンド)としては、爆射法によって合成された粗ダイヤモンド(以下、ブレンドダイヤモンド又はBDともいう)、及びBDを生成することによって得られるGD(Generated Diamond)を使用することもできる。
【0018】
爆射法で製造された粗ダイヤモンドは、数10~数100nmの径を有するダイヤモンド及びグラファイトからなり、1.7~7nm径のごく小さなナノクラスターサイズのダイヤモンド単位(ナノダイヤモンド)が強固に凝集した凝集体である。つまり最低4個、通常数十個~数百個の、場合によっては数千個のナノダイヤモンドの強固な凝集体である。BDの粒子は、ダイヤモンドの表面をグラファイト系炭素が覆ったコア/シェル構造を有していると考えられ、グラファイト系炭素の表面には-COOH、-OH等の親水性官能基が多数存在し、水、アルコール、エチレングリコール等の-OH基を有する溶媒との親和性が極めて良好であり、これらの溶媒に速やかに分散する。中でも水に対する分散性が最もよい。BDはごく少量の微小(1.5nm以下)アモルファスダイヤモンド、グラファイト及び非グラファイト炭素超微粒子を含有する。
【0019】
ナノサイズダイヤモンド粒子の比重は2.50~3.45g/cm3であるのが好ましく、2.63~3.38g/cm3であるのがさらに好ましく、2.75~3.25g/cm3であるのが最も好ましい。ナノサイズダイヤモンドの比重は、グラファイトとダイヤモンドとの比率によって決まり、ダイヤモンドの比重を3.50g/cm3、グラファイトの比重を2.25g/cm3として、ダイヤモンドとグラファイトの割合を計算すると、比重2.63g/cm3はダイヤモンド30容積%及びグラファイト70容積%の組成に相当し、比重3.38g/cm3はダイヤモンド90容積%及びグラファイト10容積%の組成に相当する。同様に比重が2.75g/cm3はダイヤモンド40容積%及びグラファイト60容積%の、比重3.25g/cm3はダイヤモンド80容積%及びグラファイト20容積%の組成に相当する。なお比重2.87g/cm3はダイヤモンド50容積%及びグラファイト50容積%の組成に相当する。比重が2.63g/cm3未満であると、グラファイトに起因する着色が問題となることがあり、比重が3.38g/cm3を越えると、遠赤外線放射効果は飽和するためコスト的に不利である。
【0020】
BDの不純物は、(i)水溶性電解質(ionized)、(ii)ダイヤモンド表面に水素結合した加水分解性の基及びイオン性の物質(官能性表面基の塩等)、(iii)水不溶性の物質(表面に付着した不純物、不溶性塩、不溶性酸化物)、(iv)揮発性物質、(v)ダイヤモンド結晶格子中に包含されるか又はカプセル化された物質に分けることができる。
【0021】
(i)及び(ii)は、GDの精製過程で形成されるものである。(i)の水溶性電解質は水洗により除去できるが、より効果的に除去するにはイオン交換樹脂で処理するのが好ましい。(iii)の水不溶性の不純物は、金属、金属酸化物、金属カーバイド、金属塩(硫酸塩、シリケート、カーボネート)のような分離したミクロ粒子、分離できない表面塩、表面金属酸化物等からなる。これらを除去するには、酸によって可溶性の形に変換するのが好ましい。(iv)の揮発性不純物は、通常0.01Pa程度の真空中で、250~400℃で熱処理することにより除去することができる。
【0022】
ナノサイズダイヤモンドは、必ずしも不純物を完全に除去する必要はないが、(i)~(iii)の不純物を40~95%除去するのが好ましい。グラファイトとダイヤモンドとの比率は、前記爆射法の条件を変更すること、及び/又はBDの精製条件を変更することによって調節することができる。
【0023】
ナノサイズダイヤモンドの分散物は、爆薬の爆射によって得られたダイヤモンド-非ダイヤモンド混合物(初期BD)を酸化処理した後、揮発性又はその分解反応生成物が揮発性となる塩基性材料を加えて中和し、ダイヤモンドを含有する層を分離することによって製造する。
【0024】
酸化処理工程は、硝酸による酸化性分解処理と、その後に行う硝酸による酸化性エッチング処理とからなる。酸化性エッチング処理は1次酸化性エッチング処理と2次酸化性エッチング処理とからなり、1次酸化性エッチング処理は酸化性分解処理の圧力及び温度よりも高い圧力及び温度で行われるのが好ましく、2次酸化性エッチング処理は1次酸化性エッチング処理の圧力及び温度よりも高い圧力及び温度で行われるのが好ましい。酸化処理工程は、150℃~250℃及び14~25気圧で、少なくとも10~30分間ずつ複数回行うのが好ましい。
【0025】
酸化性エッチング処理の後に、硝酸を分解・除去させるための中和処理を行う。塩基性材料により中和した分散液は、水を加えて傾斜することによりダイヤモンドを含有する相と含有しない相とに分離する。
【0026】
ダイヤモンドを含有する相を分離した後、さらに分散液に硝酸を加え洗浄処理し、生成ダイヤモンド微粒子を含む下相分散液を上相排液から分離する処理を行う。この分離する処理は、硝酸洗浄処理後の分散液を静置することによって行う。
【0027】
生成ダイヤモンド微粒子を含む下相分散液は、好ましくはpHを4~10、さらに好ましくは5~8、最も好ましくは6~7.5に調節し、ダイヤモンド微粒子濃度を好ましくは0.05~16質量%、更に好ましくは0.1~12質量%、最も好ましくは1~10質量%に調整する。
【0028】
このようにして得られるGDは、72~89.5%の炭素、0.8~1.5%の水素、1.5~2.5%の窒素、10.5~25%の酸素の元素組成を有する。全炭素のうち90~97%がダイヤモンド結晶であり、10~3%が非ダイヤモンド炭素である。平均粒径(一次粒子)は2~50nmである。Cu、Kα線を線源とするX線回折スペクトル(XD)において、ブラッグ角(2Φ±0.2°)が43.9°に最も強いピークを有し、73.5°及び95°に特徴的な強いピークを有し、17°に強く偏在したハローがあり、26.5°にピークが実質的にない。また比表面積が1.5×105m2/kg以上で、実質的に全ての表面炭素原子がヘテロ原子と結合しており、分散液は0.5m3/kg以上の全吸収空間を有するダイヤモンド粒子を、0.05~16質量部含有する。GD粒子の粒径は、電気泳動光散乱光度計モデルELS-8000を用いた動的光散乱測定により得られる。
【0029】
プラチナナノ粒子は、例えば、以下に記載の方法によりプラチナナノコロイドとして得ることができる。
【0030】
すなわち、プラチナを含有する貴金属含有化合物を溶解した溶液中に、還元剤としての式(1)又は式(2)で表される化合物Aとしてペプチド又はグルコサミン化合物を添加する工程と、前記化合物Aの還元性を補助するアルカリを添加する工程と、貴金属含有化合物中の貴金属イオンの還元反応により貴金属微粒子(プラチナ微粒子)を形成する工程とを有する。
NR4R5-CR2R3-CO-R1 (1)
NR4R5-CR6R7-CR2R3-CO-R1 (2)
【0031】
ここで、R1は、水素、水酸基、アルコキシ基、アミノ基或いはペプチド結合で結合する原子団を示し、R2とR3はそれぞれ水素、アルキル基或いは置換されたアルキル基を示し、R4とR5はそれぞれ水素、アルキル基、置換されたアルキル基或いはアセチル基を示し、R6とR7はそれぞれ水素、アルキル基或いは置換されたアルキル基を示す。
【0032】
上記製造方法は、好適には、溶液が水溶液である。さらに好適には、アルカリを添加する工程において、水溶液のpHが10以上となるように添加する。さらに好適には、貴金属微粒子を形成する工程において、貴金属微粒子が水溶液中に分散された貴金属コロイドとする。またさらに好適には、貴金属微粒子を形成し、貴金属コロイドとする工程の後、水溶液を遠心分離して沈降物と上澄みに分離する工程と、前記上澄みを除去して前記沈降物を取り出す工程とをさらに有する。
【0033】
上記製造方法の、他の好適な態様においては、溶液が有機溶媒の溶液である。さらに好適には、貴金属微粒子を形成する工程の後、溶液を静置して沈降物と上澄みに分離する工程と、上澄みを除去して沈降物を取り出す工程とをさらに有する。またさらに好適には、上澄みを除去して沈降物を取り出す工程の後、沈降物に対して水を加えて水系貴金属コロイドとする工程をさらに有する。またさらに好適には、貴金属コロイドとする工程の後、限外濾過あるいは超遠心分離などにより、貴金属コロイドを濃縮する工程をさらに有する。またさらに好適には、溶液中に有機溶媒用保護剤を添加する工程をさらに有し、上澄みを除去して前記沈降物を取り出す工程の後、沈降物に対して有機溶媒を加えて有機溶媒系貴金属コロイドとする工程とをさらに有する。
【0034】
ペプチドである化合物Aとしては、式(1)あるいは(2)において、R1が水酸基であるαあるいはβ-アミノ酸やR1がアルコキシ基であるαあるいはβ-アミノ酸エステルなどのαあるいはβ-アミノ酸化合物、アミノ基がアセチル化されたαまたはβ-アミノ酸化合物、R1がペプチド結合で結合する原子団であるN末端がα-アミノ酸であるペプチドが挙げられる。
【0035】
グルコサミン化合物である化合物Aとしては、式(1)において、R1が水素であり、R2が〔-CH(OH)-CH(OH)-CH(OH)-CH2(OH)〕であり、R3、R4、R5が水素であるグルコサミン、あるいはその誘導体であるN-アセチルグルコサミンなどのグルコサミン化合物が挙げられる。
【0036】
遠赤外線を発し、且つプラズモン共鳴に基づく電子移動を生じるナノ粒子を少なくとも2種含有する繊維を製造する方法としては、上記性質を有したナノ粒子を少なくとも2種含有する組成物(紡糸原液)を調製し、当該組成物を湿式或いは乾式紡糸法にて繊維を製造する方法が挙げられる。
【0037】
上記組成物には、遠赤外線を発し、且つプラズモン共鳴に基づく電子移動を生じるナノ粒子を少なくとも2種含有するほか、ポリエステル等のポリマーを含有していてもよく、媒体として、水、アルコール、有機溶媒等を含有していてもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で分散安定剤等を含有していてもよい。媒体としては水が好ましい。
【0038】
本実施形態に係る繊維は、ポリエステル繊維等の合成繊維であることが好ましい。
【0039】
本実施形態に係る衣類は、遠赤外線を発し、且つプラズモン共鳴に基づく電子移動を生じるナノ粒子を少なくとも2種含有する繊維を含んでいればよく、それ以外の繊維を更に含んでいてもよい。それ以外の繊維としては、例えば、上記ナノ粒子を含有しないポリエステル繊維、ナイロン、アクリル等の合成繊維、綿、麻、シルク等の天然繊維、レーヨン、テンセル、リヨセル等再生繊維などが挙げられる。
【0040】
本実施形態に係る衣類に含まれる上述のナノ粒子を少なくとも2種含有する繊維の含有量は、例えば10質量%以上であってよく、20質量%以上であってよく、また100質量%以下であってよく、80質量%以下であってよく、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってよい。
【0041】
このような本実施形態に係る衣類は、例えば部屋着、室内着等、寝衣は、例えばパジャマ、浴衣、シーツ状寝巻として用いることができ、睡眠の質を向上させることができる。
【0042】
上述した衣類を着用することにより、睡眠の質を向上させる方法が提供可能となる。
この方法は、遠赤外線を発し、且つプラズモン共鳴に基づく電子移動を生じるナノ粒子を少なくとも2種含有する繊維を含む衣類を着用することを含む、(1)睡眠効率値の増加、(2)中途覚醒数の低下、(3)中途覚醒時間の低下、(4)浅睡眠率(例えば、REM睡眠率)の低下、及び(5)深睡眠率(例えば、Non―REM睡眠率)の増加、の少なくとも一つを含む、睡眠の質の向上方法と表現することも可能である。またこの方法は、睡眠時の副交感神経活動の亢進方法と言い換えることもできる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[衣類の製造]
(実施例1)
ダイヤモンドナノ粒子(ND)及びプラチナナノ粒子(NP)をそれぞれ0.01mg/kg以上、0.0001mg/kg以上を含むポリエステル繊維を製造した。このポリエステル繊維におけるナノ粒子は、平均粒径が20nmで、形状がRound(円形)のプラチナナノ粒子と、平均粒径が120nmで、形状がOval(楕円形)のダイヤモンドナノ粒子が含まれていた。得られたポリエステル繊維を20質量%、及び上記粒子を含有しない一般ポリエステル繊維を80質量%の割合で混合し、寝衣(半そでシャツ、長ズボン)を製造した(被験衣)。
【0044】
(比較例1)
上記粒子を含有しない一般ポリエステル繊維を用いて、寝衣(半そでシャツ、長ズボン)を製造した(対象衣)。
【0045】
[睡眠の質の評価]
本研究の内容を説明し、同意を得られた一般健常男性14名を対象とした。被験者に、上記実施例1及び比較例1の寝衣をそれぞれ着てもらい、ウェアラブル心拍変動測定器(商品名:Silmee、TDK株式会社製)をゲルパットで胸部に貼り付け、心拍間隔の変動データを取得後、PCを使用して取得データを元に専用ソフトウェアにて睡眠の質(睡眠効率、中途覚醒数、及び中途覚醒時間)について自動で解析を行った。結果を表1に示す。表1において、睡眠効率は、数値が高い方が睡眠の質が高いことを示し、中途覚醒数及び中途覚醒時間は、数値が低い方が、副交感神経活動が活発であり、良質な睡眠が得られていることを示す。
【0046】
【0047】
本研究の内容を説明し、同意を得られた一般健常者12名を対象とした。被験者に、上記実施例1及び比較例1の寝衣をそれぞれ着てもらい、終夜睡眠ポリグラフ検査として、脳波、眼球運動、呼気流量、いびきの各センサー、筋電図電極、心電図電極を取り付け一晩かけて睡眠状態のデータを取得後、取得データを元に浅睡眠から深睡眠の4つに分類した(REM、Non-REM(N1)、Non-REM(N2)、Non-REM(N3))。結果を下記表2に示す。表2において、実施例1の寝衣を着た場合は、REM睡眠率(%)は、低比率を示した。このことから、実施例1の寝衣を着た場合には、睡眠中の浅睡眠時間が短く、他方、深睡眠(N1、N2及びN3)時間が長いことが示され、これは、副交感神経活動が活発であり、良質な睡眠が得られていることを示す。
【0048】
【0049】
以上のことから、睡眠時に実施例1の寝衣を着た場合、睡眠時の副交感神経活動を亢進し、中途覚醒を低下させ、睡眠効率を高めることで、睡眠の質が上昇し、疲労回復、パフォーマンス向上に影響を及ぼすことが示された。