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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】塗布範囲可視化コーティング施工方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/12 20060101AFI20221222BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20221222BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20221222BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
B05D3/12 Z
B05D7/24 302Y
B05D7/24 301V
B05D7/24 303J
C09D7/61
C09D183/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022034298
(22)【出願日】2022-03-07
【審査請求日】2022-11-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510330552
【氏名又は名称】株式会社クリスタルプロセス
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 一介
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-10879(JP,A)
【文献】特開2005-342577(JP,A)
【文献】特開2000-42480(JP,A)
【文献】特開2002-192065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿気硬化型シリコーン20~30重量%、揮発性溶剤75~90重量%、モース硬度1、扁平状及び有色の鉱物粒子5~30重量%、及び、硬化剤0.1~10重量%からなるコーティング組成物を被施工物の表面に塗布する塗布工程、前記揮発性溶剤が揮発することにより前記鉱物粒子を塗布されたコーティング液層の表面から突出させる揮発工程、前記揮発工程後のコーティング液層から少なくとも突出した前記鉱物粒子を拭き取る拭き取り工程、及び、前記湿気硬化型シリコーンが硬化剤と反応して硬化する硬化反応工程と、を含むことを特徴とする塗布範囲可視化コーティング施工方法。
【請求項2】
前記鉱物粒子の平均粒子径が、1~50μmであることを特徴とする請求項1に記載の塗布範囲可視化コーティング施工方法。
【請求項3】
前記鉱物粒子がタルクであることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布範囲可視化コーティング施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、建築物などの塗装面、金属面、ガラス面、樹脂面の被施工物の表面にコーティング被膜を形成する塗布範囲可視化コーティング施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車体表面に吹き付けて拭き取ることによって、車体に付着した汚れを除去し、かつ、車体表面にコーティング被膜を形成する、シリコーンオイル及び/又は変性シリコーンオイルと、疎水性有機溶剤と、界面活性剤とを含む水中油型エマルジョンであって、シリコーンオイル及び/又は変性シリコーンオイルの含有量が0.1~3.5重量%であり、疎水性有機溶剤の含有量が1重量%以上であり、シリコーンオイル及び/又は変性シリコーンオイルの含有量と、疎水性有機溶剤の含有量の合計が2重量%以上であり、不揮発性成分の含有量が4重量%以下である自動車用コーティング剤が開示されている。
【0003】
特許文献2には、脂肪族炭化水素系溶剤、石油系溶剤、芳香族系容剤、アルコール及びフッ素系溶剤から選択された1種あるいは2種以上の有機溶剤をベースとし、前記ベース中に、(a)水分硬化性シリコーン樹脂と、(b)反応促進剤と、(c)分子末端に少なくとも1つ以上のシラノール基を有する反応性シリコーンオイルと、を含有するコーティング組成物が開示されている。そして、微粉末には、施工済部分と未施工部分の区別、若しくは拭取り残しを防ぐために、顔料を添加したものも好適に使用することができるとの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-108477号公報
【文献】特開2008-138074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明は、コーティング剤が透明又は半透明であるので、例えば自動車の外板の色が光沢のある白色等の淡色の場合に、又は、金属光沢のある場合に、コーティング剤を塗布した範囲が光って肉眼で塗布した広い範囲の中から塗布していない小さい範囲を見つけるのは、塗布済み範囲の未塗布範囲も光沢があって困難であるという問題があった。
【0006】
特許文献2の発明は、透明又は半透明のコーティング組成物の中に0.1~50μmの微粉末を0.1~20重量%含む形態の場合に、施工部分と未施工部分の区別をわかりやすくするための顔料を添加することができると記載され、その顔料としてタフチックビーズAR650シリーズ(架橋アクリル樹脂粉末)及びアートパールCシリーズ(架橋ウレタン樹脂粉末)が挙げられているが、これらはともに真球状の形状をした有機樹脂である。真球状の場合、被施工物の表面形状が凸状で円弧状の部位に、例えばスポンジにつけたコーティング組成物を塗布するときに押圧をかけるが、その押圧をかけたときに顔料が真球状であるので押されると周囲に移動しやすく押さえた範囲には顔料が存在しない状態になり、被施工物の表面に顔料が存在しない範囲が発生するという問題があった。
【0007】
また、ともに有機樹脂がベースになっているため極めて溶解力の高い有機溶剤中で製造時から流通過程を経て使用者により使用開始されるまでの長期間に亘って保存することにより前記顔料が溶解し始めて前記顔料の径が徐々に小さくなり、小さくなると施工部分と未施工部分の区別をわかりやすくすることが難しくなるという問題があった。
【0008】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、製造時から流通過程を経て使用者により使用開始されるまで期間が長くなっても有機溶剤に溶解されることがなく、コーティング組成物を塗布するときの押圧で粒子が移動しにくく、塗布した範囲と未塗布範囲を肉眼で見つけやすく、拭き取り時に塗装表面にキズをつけないコーティング組成物を使用した塗布範囲可視化コーティング施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の塗布範囲可視化コーティング施工方法は、湿気硬化型シリコーン20~30重量%、揮発性溶剤75~90重量%、モース硬度1、扁平状及び有色の鉱物粒子5~30重量%、及び、硬化剤0.1~10重量%からなるコーティング組成物を被施工物の表面に塗布する塗布工程、前記揮発性溶剤が揮発することにより前記鉱物粒子を塗布されたコーティング液層の表面から突出させる揮発工程、前記揮発工程後のコーティング液層から少なくとも突出した前記鉱物粒子を拭き取る拭き取り工程、及び、前記湿気硬化型シリコーンが硬化剤と反応して硬化する硬化反応工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の塗布範囲可視化コーティング施工方法は、請求項1において、前記鉱物粒子の平均粒子径が、1~50μmであることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の塗布範囲可視化コーティング施工方法は、請求項1又は2において、前記鉱物粒子がタルクであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1~3に記載の塗布範囲可視化コーティング施工方法は、製造時から流通過程を経て使用者により使用開始されるまで期間が長くなっても有機溶剤に溶解されることがなく、コーティング組成物を塗布するときの押圧で粒子が移動しにくく、塗布した範囲と未塗布範囲を肉眼で見つけやすく、拭き取り時に塗装表面にキズをつけないという効果を奏する。
【0013】
被施工物の表面が、光沢のある白色を含む淡色の場合や金属光沢のある場合においても、コーティング組成物を塗布した範囲が例えば白色などの有色の鉱物粒子の色が浮かび上がり、被施工物の表面の光沢が消えることによりコーティング組成物の塗布範囲を容易に肉眼で確認できるという際立つ効果を奏する。これによりコーティングをし忘れた部位が残らないという効果を奏する。また、拭き取る前においてはコーティング被膜の表面は光沢が消されており、この光沢が消された部位は肉眼で容易に確認できるので、拭き取り忘れ箇所もなくなるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の塗布範囲可視化コーティング施工方法のフローを示すフロー図である。
図2】光沢のある被施工物の表面に、本発明の塗布範囲可視化コーティング施工方法の塗布工程及び揮発工程を実施後の被施工物の表面状況を平面視で見た説明図である。なお、本発明において光沢があることを示す図形として略レ点に矢印を付した図形とし、図2図4に記載した。
図3】光沢のある被施工物の表面に、従来からのコーティング施工方法の塗布工程及び揮発工程を実施後の被施工物の表面状況を平面視で見た説明図である。
図4】光沢のある表面を有する被施工物の表面状況を平面視で見た説明図である。
図5】被施工物の表面にコーティング組成物を例えばスポンジで塗布する工程の断面の説明図である。
図6】被施工物の表面にコーティング組成物を塗布後の状態の断面の説明図で、(a)は本発明の塗布範囲可視化コーティング施工方法の説明図で、(b)は従来のコーティング方法の説明図である。
図7】揮発工程の断面の説明図で、(a)は本発明の塗布範囲可視化コーティング施工方法の説明図で、(b)は鉱物粒子がコーティング液層の表面から突出した状態の断面拡大説明図で、(c)は小さい粒径の鉱物粒子がコーティング層の内部に隠れてしまった状態の説明図である。
図8】拭き取り工程のマイクロファイバークロスで拭き取る方法の説明図である。
図9】硬化反応工程の説明図で、(a)は本発明の塗布範囲可視化コーティング施工方法の説明図で、(b)は拡大説明図である。
図10】円弧状の断面の表面に扁平状の鉱物粒子を含有させたコーティング組成物をスポンジで塗布する塗布工程の説明図で、(a)は塗布直前の説明図で、(b)はスポンジを被施工物にむけて押えた状態の説明図である。
図11】比較例として真球状の顔料を含有させたコーティング組成物をスポンジで塗布する塗布工程の説明図で、(a)は塗布直前の説明図で、(b)はスポンジを被施工物にむけて押えた状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一般的に、図4に示すように、表面が光沢13のある白色などの淡色の被施工物6や、表面が金属光沢13のある被施工物6に対して、前記被施工物6の表面に光沢13などの艶出しのためのコーティングをすると、図3に示すように、コーティング組成物を塗布した範囲である塗布範囲10と塗布していない範囲である未塗布範囲12との見分けが光沢13のために邪魔されて肉眼ではわかりにくい。そのため、コーティングしない範囲である未塗布範囲12が発生するという問題があった。
【0016】
現状の対応としては、コーティング組成物20を塗布した後に、前記被施工物6の表面全体にわたって蛍光灯等の光源を当てて、施工者が様々な角度から前記被施工物6に光源を反射させる、または施工者自体が様々な角度から被施工物6に反射する光源を目視し、そのごくわずかな光の反射の違いから塗布がされていない箇所である未塗布範囲12を探すことを時間をかけてしているが、見つけるスキルを要するために光の反射の相違を見逃しやすくコーティング組成物20の塗布未実施箇所が発生している。なお、太陽光がふりそそぐ明るい屋外では、被施工物6の表面の光沢13がまぶしくコーティング未実施部位の発見が難しい。なお、光沢13の矢印の意味は光の反射を示している。
【0017】
本発明の塗布範囲可視化コーティング施工方法1は、図2に示すように、塗布した範囲である塗布範囲10の光沢13を消す効果があるので、太陽光がふりそそぐ明るい屋外であってもコーティング塗布範囲10と塗布していない範囲の未塗布範囲12の見分けが容易に肉眼ででき、屋内であっても一目で光の反射の相違を確認することができ、コーティング塗布範囲10と未塗布範囲12との見分けが容易に肉眼で確認できる塗布範囲可視化コーティング施工方法である。
【0018】
本発明の塗布範囲可視化コーティング施工方法1は、湿気硬化型シリコーン20~30重量%、揮発性溶剤75~90重量%、モース硬度1、扁平状及び有色の鉱物粒子5~30重量%、及び、硬化剤0.1~10重量%からなるコーティング組成物を被施工物の表面に塗布する塗布工程2、前記揮発性溶剤が揮発することにより前記鉱物粒子7を塗布されたコーティング液層8の表面から突出させる揮発工程3、前記揮発工程3後のコーティング液層8から少なくとも突出した前記鉱物粒子7を拭き取る拭き取り工程4、及び、前記湿気硬化型シリコーンが硬化剤と反応して硬化する硬化反応工程5と、を含む。
【0019】
まず、コーティング組成物について説明する。前記コーティング組成物20は、湿気硬化型シリコーン20~30重量%、揮発性溶剤75~90重量%、モース硬度1、扁平状及び有色の鉱物粒子5~30重量%、及び、硬化剤0.1~10重量%からなる。
【0020】
前記湿気硬化型シリコーンとしては、炭素数1~4のアルコキシ基を有する4官能性シリコーンオリゴマー、炭素数1~4のアルコキシ基、有機官能基としてメチル基又はフェニル基を有する3官能性シリコーンオリゴマー、加水分解性シリル基を有するポリオルガノシロキサン、シラン系カップリング剤、ポリシラザン、これらを単独で用いても良いし組み合わせても良いが、これらに限定されるものではない。
【0021】
前記湿気硬化型シリコーンは前記コーティング組成物100重量%に対して20~30重量%含有させる。20重量%未満になればコーティング被膜9として光沢13のある被膜ができない。また、30重量%超になると、前記鉱物粒子7が塗布されたコーティング液層8の表面から揮発成分が揮発しても突出してこないので被施工物6の表面が光沢13で光った状態が変わらないので、コーティング組成物を塗布しなかった部位がわかりにくい。
【0022】
前記揮発性溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、ノルマルパラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、ジブチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ミネラルスピリット、ハロゲン系溶剤等を挙げることができ、1種類でも良いし組み合わせても良い。
【0023】
前記揮発性溶剤は前記コーティング組成物100重量%に対して75~90重量%含有される。75重量%未満になるとコーティング液層8の液面が下がらないため時間が長くなり効率よく被施工物6の光沢13を消すことができない。また、90重量%超になると前記コーティング組成物100重量%に占める前記湿気硬化型シリコーンと前記硬化剤の含有割合が少になりコーティング被膜9の成形に要する有効成分が不足するので被施工物6の表面の保護効果が大きく低下する。
【0024】
前記硬化剤としては、例えばチタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、ビスマスを含む有機金属化合物があり、前記湿気硬化型シリコーンを硬化させる硬化剤であればいずれでもよい。
【0025】
前記硬化剤は前記コーティング組成物100重量%に対して0.1~10重量%含有する。0.1重量%未満になると塗布したコーティング液相が硬化する時間がかかりすぎコーティング被膜ができるまで時間がかかり過ぎ効率よく被施工物の光沢を消すことができない。また、10重量%超になると、拭き取りの前に硬化してしまい、前記鉱物粒子がコーティング被膜の表面から突出した状態で固まっているので、被施工物の表面を光沢のあるなめらかな面に仕上げるというコーティングの目的を達成できない。
【0026】
前記鉱物粒子7は、平均粒子径が1~50μmである、モース硬度1、扁平状及びの有色の鉱物であればよく、例えばタルクがある。前記鉱物粒子7は有機樹脂でなく鉱物であるので前記揮発性溶剤には溶解しないので、未使用の保管状態を長期間続けても粒径は維持できる。
【0027】
前記鉱物粒子7の形状は、押圧をかけられても移動しがたいように扁平状であることも要件である。例えば、図10又は図11に示すように、被施工物6の表面形状が凸状で円弧状の部位に、コーティング組成物20をスポンジにつけて前記被施工物6の表面に対してコーティング組成物20を塗り付けるように押圧Pをかけたときに、コーティング液層8の中にある粒子が、前記円弧状の表面に近づく方向につまり半径方向に移動するか、又は、前記円弧状の表面上を円周方向に移動するかについて、真球状と扁平状との比較をする。なお、押圧Pが弱すぎると前記鉱物粒子7が前記スポンジに残ってしまい被施工物6の表面に付着し難いので強く押圧Pをかける必要がある。
【0028】
まず、図10に示すように、前記鉱物粒子7の形状が扁平状の場合について説明する。図10(a)に示すように、スポンジである塗布用資材21に扁平状の前記鉱物粒子7を含有したコーティング組成物20を付着させて、図10(b)に示すように、前記スポンジである塗布用資材21で被施工物6の円弧上の表面に向けて強く押圧Pをかけると、塗られたコーティング液層8中で扁平状の鉱物粒子7は前記円弧状の表面に近づく方向につまり半径方向に移動する。これにより、扁平状の前記鉱物粒子7は前記被施工物6の円弧状の表面を覆うように定着させることができ、塗布範囲と未塗布範囲の区別が見分けられないという問題が解消する。
【0029】
次に、比較例として、図11に示すように、前記粒子35の形状が真球状の場合について説明する。図11(a)に示すように、スポンジである塗布用資材21に真球状の前記粒子35を含有したコーティング組成物30を付着させて、図11(b)に示すように、前記スポンジである塗布用資材21で被施工物6の円弧上の表面に向けて強く押圧Pをかけると、塗られたコーティング液層32中で真球状の前記粒子35は球体であるので押圧Pをかけられると転がりやすいので前記円弧状の表面上を円周方向に転がる。これにより、真球状の前記粒子35は前記被施工物6の押圧Pをかけられた範囲には存在しなくなり、塗布範囲と未塗布範囲の区別が見分けられないという問題が解消しない。
【0030】
したがって、前記鉱物粒子7の形状は、押圧Pをかけられたときにコーティング液層32中で被施工物6の表面を転がりやすい真球状よりも、扁平状の方が押圧Pをかけられたときにコーティング液層8中で被施工物6の表面に定着しやすいことが明らかであり、言い換えると前記鉱物粒子7の形状は扁平状の方が被施工物6の表面を隠す力が高いことが明白である。
【0031】
被施工物6の表面を隠す力が高いことにより、図4に示すような全面に光沢13のある被施工物6の表面にコーティング組成物20を塗布すると、図2に示すように、コーティング組成物20を塗布した塗布範囲10は前記鉱物粒子7で覆われて光沢13が消され、塗布もれの未塗布範囲12は光沢13が残る状態になるので、施工者は小さい範囲の光沢13に容易に気付きやすく未塗布範囲12を容易に見つけることができる。
【0032】
前記鉱物粒子7の硬度は被施工物6の表面にキズをつけないためにはモース硬度は1であることが要件である。被施工物6に付着する鉱物粒子7としてシリカやアルミナがあるが、被施工物6にモース硬度が高い鉱物粒子7が付着すると被施工物6が傷つきやすいという問題が発生する。
【0033】
前記鉱物粒子7の平均粒子径が1μm未満になるとコーティング組成物を光沢13のある被施工物6の表面に塗布しても被施工物6の光沢が効率よく消えないのでコーティング組成物を塗布しなかった部位がなかなか見つけにくい。また、50μm超になると拭き取り作業のときに被施工物6にキズがつきやすく、拭き取り作業が困難にある。
【0034】
また、前記鉱物粒子7は、白色などの有色、つまり不透明の有色から透けて見えない半透明の有色であることも要件である。もし透明又は透けて見える薄い色の半透明であれば、被施工物6の表面の光沢を覆って光の反射を遮断させることができないから、光沢のある被施工物6の表面にコーティング組成物20を塗布した塗布範囲10と塗布しない未塗布範囲12を見分けにくいという問題が解消されない。
【0035】
前記塗布範囲可視化コーティング施工方法1は、図1に示すように、前記塗布工程2、前記揮発工程3、拭き取り工程4、及び、硬化反応工程5を含む。
【0036】
まず、前記塗布工程2について説明する。前記塗布工程2は、図4に示すように、例えば自動車等の被施工物6の光沢13のある外板等の表面に、湿気硬化型シリコーン20~30重量%、揮発性溶剤75~90重量%、モース硬度1の有色の鉱物粒子5~30重量%、及び、硬化剤0.1~10重量%からなるコーティング組成物20を塗布する。
【0037】
塗布作業は、図5に示すように、前記コーティング組成物20をスポンジなどの塗布用資材21に付着させて押圧Pをかけてこすりつけたりして、前記被施工物6の表面に塗布する。
【0038】
次に、前記揮発工程3を説明する。前記揮発工程3は前記揮発性溶剤が揮発する工程であり、図6(a)又は(b)に示すように前記塗布工程2完了後のコーティング液層8の状態から、揮発することにより塗布されたコーティング液層8の液面の厚みが徐々に薄くなり、図7(a)又は(b)に示すように、前記鉱物粒子7が前記コーティング液層8の液面から突出する。
【0039】
図7(a)又は(b)に示すように、前記コーティング液層8の液面から前記鉱物粒子7が突出すると、前記被施工物6の表面上で光が乱反射することで、光沢13がなくなり、前記鉱物粒子7の色により前記コーティング被膜8が白く見える。これにより、前記鉱物粒子7の色が白色の場合は、前記鉱物粒子7の先端部が前記コーティング被膜9の表面から突出して前記鉱物粒子7の白色がはっきりと肉眼でみえるようになるまで、コーティング液層8を可視化できる。この状態になることにより、コーティング組成物20の塗布部位が、蛍光灯などの光の反射で時間をかけて探さなくても容易に見つけることができ、コーティング組成物20の塗り忘れの防止が確実にできる。
【0040】
前記鉱物粒子7の大きさが1μm未満になると、図7(c)に示すように、前記コーティング液層8の中に隠れて前記コーティング液層8の表面から突出しないので、被施工物6の光沢13を消すことが困難になる。また、前記鉱物粒子7の大きさが50μm超になると、拭き取り工程4で前記被施工物6の表面にキズをつけるという問題が発生する。
【0041】
また、前記鉱物粒子7は、前記揮発性溶剤を吸い込む機能を有するので、前記コーティング液層8内の前記揮発性溶剤は揮発したり前記鉱物粒子7に吸い込まれたりする。
【0042】
次に、拭き取り工程4を説明する。前記拭き取り工程4は、図8に示すように、前記揮発工程3後のコーティング液層8を拭き取る拭き取り工程4である。拭き取り作業は、ウエス、タオル、マイクロファイバークロスなどの柔らかいクロス22を使用して拭き取る。好ましくはマイクロファイバークロスであり、拭き取り作業により固形物である前記鉱物粒子7をすべて拭き取ることができる。
【0043】
拭き取り作業をすると、拭き取りに使用している前記クロス22に液体も吸い取るので拭き取り効果を低下させないために新しい前記マイクロファイバークロスなどのクロス22に変えて拭き取り作業を再開するというように、クロス22が液体を吸い取るたびに前記クロス22を新しい前記クロス22に取り換えて拭き取り作業をしていたが、前記鉱物粒子7が液体を吸い込んでいるので従来より長く前記クロス22を使用することができ拭き取り作業性が高まる。
【0044】
前記拭き取り作業において、前記鉱物粒子7がモース硬度2以上であると被施工物6の表面にキズがつき、前記鉱物粒子7の大きさが50μm超になると被施工物6の表面にキズがつく。
【0045】
次に、硬化反応工程5を説明する。前記硬化反応工程5は、前記湿気硬化型シリコーンが硬化剤と反応して硬化する工程である。前記コーティング液膜8から揮発成分が揮発しかつ吸い取られた後に、硬化剤による硬化反応により湿気硬化型シリコーンが硬化して、図9(a)又は(b)に示すように薄くなったコーティング被膜9ができる。
【符号の説明】
【0046】
1 塗布範囲可視化コーティング施工方法
2 塗布工程
3 揮発工程
4 拭き取り工程
5 硬化反応工程
6 被施工物
7 鉱物粒子
8 コーティング液層
9 コーティング被膜
10 塗布範囲
12 未塗布範囲
13 光沢
20 コーティング組成物
21 塗布用資材
22 クロス
30 コーティング組成物
32 コーティング液層
35 粒子
P 押圧
【要約】
【課題】コーティング組成物を塗布した範囲と未塗布範囲を肉眼で見つけやすくし、拭き取り時に塗装表面にキズをつけないコーティング組成物を使用した塗布範囲可視化コーティング施工方法を提供することを課題とする。
【解決手段】湿気硬化型シリコーン20~30重量%、揮発性溶剤75~90重量%、モース硬度1、扁平状及び有色の鉱物粒子5~30重量%、及び、硬化剤0.1~10重量%からなるコーティング組成物を被施工物の表面に塗布する塗布工程、前記揮発性溶剤が揮発することにより前記鉱物粒子を塗布されたコーティング液層の表面から突出させる揮発工程、前記揮発工程後のコーティング液層から少なくとも突出した前記鉱物粒子を拭き取る拭き取り工程、及び、前記湿気硬化型シリコーンが硬化剤と反応して硬化する硬化反応工程と、を含む塗布範囲可視化コーティング施工方法により課題解決できた。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11