IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニッシンの特許一覧

特許7198541プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法
<>
  • 特許-プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法 図1
  • 特許-プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法 図2
  • 特許-プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法 図3
  • 特許-プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法 図4
  • 特許-プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法 図5
  • 特許-プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法 図6
  • 特許-プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法 図7
  • 特許-プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法 図8
  • 特許-プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法 図9
  • 特許-プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法 図10
  • 特許-プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法 図11
  • 特許-プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法 図12
  • 特許-プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法 図13
  • 特許-プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法 図14
  • 特許-プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法 図15
  • 特許-プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法 図16
  • 特許-プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】プラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20221222BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
H05H1/46 B
H01L21/302 101D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022094289
(22)【出願日】2022-06-10
【審査請求日】2022-06-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593030923
【氏名又は名称】株式会社ニッシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤立 隆史
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩
(72)【発明者】
【氏名】坂本 旭
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-221087(JP,A)
【文献】特開平08-106994(JP,A)
【文献】特開2002-231637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧可能な処理室と、前記処理室内へマイクロ波を通す伝送媒体と、前記伝送媒体を通ったマイクロ波を前記処理室側へ放射する開口が形成されたアンテナと、前記アンテナに形成された開口を塞ぐ誘電体窓を有する誘電体とを備え、前記アンテナの開口から前記誘電体窓を介して前記処理室内に放射されたマイクロ波により、前記処理室内に供給された気体からプラズマを発生させるプラズマ発生装置であって、
前記アンテナは、ホーンアンテナであり、
前記誘電体は、
前記ホーンアンテナの開口に挿入された頂点部と、
前記頂点部から漸次拡開するように形成された側壁部と、
前記側壁部の先端となる開口部と
を備え、
前記誘電体窓は、前記頂点部及び該頂点部の周辺の部位にて形成されており、
前記側壁部の厚みは略一定である
ことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項2】
減圧可能な処理室と、前記処理室内へマイクロ波を通す伝送媒体と、前記伝送媒体を通ったマイクロ波を前記処理室側へ放射する開口が形成されたアンテナと、前記アンテナに形成された開口を塞ぐ誘電体窓を有する誘電体とを備え、前記アンテナの開口から前記誘電体窓を介して前記処理室内に放射されたマイクロ波により、前記処理室内に供給された気体からプラズマを発生させるプラズマ発生装置であって、
前記アンテナは、ホーンアンテナであり、
前記誘電体は、
前記ホーンアンテナの開口に挿入された頂点部と、
前記頂点部から漸次拡開するように形成された側壁部と、
前記側壁部の先端となる開口部と
を備え、
前記誘電体窓は、前記頂点部及び該頂点部の周辺の部位にて形成されており、
前記ホーンアンテナの内側は、前記側壁部に面接触しており、
前記側壁部は、プラズマが発生している間、マイクロ波を通す導波路として機能し、
拡開する前記側壁部の内側の面に沿って、表面波プラズマが広がる
ことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のプラズマ発生装置であって、
前記誘電体の外形は、
中空の三角柱状をなし、
両底面を渡す一の辺が前記頂点部となり、
前記頂点部に接する二の側面が前記側壁部となり、
前記頂点部に相対する一の側面に相当する部位が開口した前記開口部となる
ことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のプラズマ発生装置であって、
前記誘電体の外形は、
中空の角錐状をなし、
頂点が前記頂点部となり、
側面が前記側壁部となり、
底面に相当する部位が開口した前記開口部となる
ことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のプラズマ発生装置であって、
前記側壁部により形成される前記頂点部の角度は、90°以下である
ことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のプラズマ発生装置であって、
前記ホーンアンテナは、
前記誘電体の前記側壁部に接する面を有し、
前記誘電体を冷却する冷却部を備える
ことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載のプラズマ発生装置であって、
前記誘電体の前記側壁部は、処理室内へ供給する気体を通す一又は複数の供給口が開設されている
ことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載のプラズマ発生装置であって、
前記誘電体は、セラミック製である
ことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載のプラズマ発生装置であって、
前記伝送媒体は、導波管、同軸管又は同軸ケーブルである
ことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項10】
減圧可能な処理室内へマイクロ波を通す伝送媒体と、前記伝送媒体を通ったマイクロ波を放射する開口が形成されたアンテナと、前記アンテナに形成された開口を塞ぐ誘電体窓を有する誘電体とを備え、前記アンテナの開口から前記誘電体窓を介して放射されたマイクロ波により、プラズマを発生させるプラズマリアクターであって、
前記アンテナは、ホーンアンテナであり、
前記誘電体は、
前記ホーンアンテナの開口に挿入された頂点部と、
前記頂点部から漸次拡開するように形成された側壁部と、
前記側壁部の先端となる開口部と
を備え、
前記誘電体窓は、前記頂点部及び該頂点部の周辺の部位にて形成されており、
前記側壁部の厚みは略一定である
ことを特徴とするプラズマリアクター。
【請求項11】
減圧可能な処理室内へマイクロ波を通す伝送媒体と、前記伝送媒体を通ったマイクロ波を放射する開口が形成されたアンテナと、前記アンテナに形成された開口を塞ぐ誘電体窓を有する誘電体とを備え、前記アンテナの開口から前記誘電体窓を介して放射されたマイクロ波により、プラズマを発生させるプラズマリアクターであって、
前記アンテナは、ホーンアンテナであり、
前記誘電体は、
前記ホーンアンテナの開口に挿入された頂点部と、
前記頂点部から漸次拡開するように形成された側壁部と、
前記側壁部の先端となる開口部と
を備え、
前記誘電体窓は、前記頂点部及び該頂点部の周辺の部位にて形成されており、
前記ホーンアンテナの内側は、前記側壁部に面接触しており、
前記側壁部は、プラズマが発生している間、マイクロ波を通す導波路として機能し、
拡開する前記側壁部の内側の面に沿って、表面波プラズマが広がる
ことを特徴とするプラズマリアクター。
【請求項12】
請求項1又は請求項2に記載のプラズマ発生装置を用い、
処理室内の真空度を30~200Paとした環境下で、
表面波プラズマを発生させる
ことを特徴とするプラズマ発生方法。
【請求項13】
減圧可能な処理室と、前記処理室内へマイクロ波を通す伝送媒体と、前記伝送媒体を通ったマイクロ波を前記処理室側へ放射する開口が形成されたアンテナと、前記アンテナに形成された開口を塞ぐ誘電体窓を有する誘電体とを備え、前記アンテナの開口から前記誘電体窓を介して前記処理室内に放射されたマイクロ波により、前記処理室内に供給された気体からプラズマを発生させるプラズマ発生装置を用いたプラズマ発生方法であって、
前記アンテナは、ホーンアンテナであり、
前記誘電体は、
前記ホーンアンテナの開口に挿入された頂点部と、
前記頂点部から漸次拡開するように形成された側壁部と、
前記側壁部の先端となる開口部と
を備え、
前記誘電体窓は、前記頂点部及び該頂点部の周辺の部位にて形成されており、
前記誘電体の前記側壁部は、前記処理室内へ供給する気体を通す第1の供給口及び前記第1の供給口より前記頂点部から遠い位置の第2の供給口が開設されており、
第1の気体を前記第1の供給口から処理室内へ供給し、
前記第1の気体を供給後、第2の気体を前記第2の供給口から前記処理室内へ供給する
ことを特徴とするプラズマ発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを発生させるプラズマ発生装置、そのようなプラズマ発生装置に適用可能なプラズマリアクター及びそのようなプラズマ発生装置を用いたプラズマ発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
処理対象に対し、マイクロ波を使ってプラズマ処理を行うプラズマ処理装置が使用されている。例えば、特許文献1では、水素含有成分ガスと酸素成分ガスの混合ガスプラズマを用いて防食処理する試料の後処理方法を開示している。特許文献1には、後処理を行う後処理装置が記載されており、後処理装置は、マイクロ波導波管、石英製の窓、プラズマ発生室等のリアクターを備えている。このようなリアクターを備える後処理方法では、周波数2.45GHzのマイクロ波が、マイクロ波導波管を進行し、石英製の窓を介してプラズマ発生室に導かれる。プラズマ発生室に導入された処理用ガスにマイクロ波が印加され、プラズマ発生室にプラズマが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-254589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラズマ処理の用途は多岐に渡るため、電子密度が高いプラズマによる処理が求められる場合がある。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、マイクロ波を処理室側へ放射するホーンアンテナの開口に、誘電体窓が形成された頂点部及び頂点部から漸次拡開するように形成された側壁部を有する誘電体の頂点部を挿入する。これにより、高電子密度のプラズマを効率的に発生させることが可能なプラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ発生方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願開示のプラズマ発生装置は、減圧可能な処理室と、前記処理室内へマイクロ波を通す伝送媒体と、前記伝送媒体を通ったマイクロ波を前記処理室側へ放射する開口が形成されたアンテナと、前記アンテナに形成された開口を塞ぐ誘電体窓を有する誘電体とを備え、前記アンテナの開口から前記誘電体窓を介して前記処理室内に放射されたマイクロ波により、前記処理室内に供給された気体からプラズマを発生させるプラズマ発生装置であって、前記アンテナは、ホーンアンテナであり、前記誘電体は、前記ホーンアンテナの開口に挿入された頂点部と、前記頂点部から漸次拡開するように形成された側壁部と、前記側壁部の先端となる開口部とを備え、前記誘電体窓は、前記頂点部及び該頂点部の周辺の部位にて形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、本願開示のプラズマ発生装置において、前記誘電体の外形は、中空の三角柱状をなし、両底面を渡す一の辺が前記頂点部となり、前記頂点部に接する二の側面が前記側壁部となり、前記頂点部に相対する一の側面に相当する部位が開口した前記開口部となることを特徴とする。
【0008】
また、本願開示のプラズマ発生装置において、前記誘電体の外形は、中空の角錐状をなし、頂点が前記頂点部となり、側面が前記側壁部となり、底面に相当する部位が開口した前記開口部となることを特徴とする。
【0009】
また、本願開示のプラズマ発生装置において、前記側壁部により形成される前記頂点部の角度は、90°以下であることを特徴とする。
【0010】
また、本願開示のプラズマ発生装置において、前記ホーンアンテナは、前記誘電体の前記側壁部に接する面を有し、前記誘電体を冷却する冷却部を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本願開示のプラズマ発生装置において、前記誘電体の前記側壁部は、処理室内へ供給する気体を通す一又は複数の供給口が開設されていることを特徴とする。
【0012】
また、本願開示のプラズマ発生装置において、前記誘電体は、セラミック製であることを特徴とする。
【0013】
また、本願開示のプラズマ発生装置において、前記伝送媒体は、導波管、同軸管又は同軸ケーブルであることを特徴とする。
【0014】
更に、本願開示のプラズマリアクターは、前記処理室内へマイクロ波を通す伝送媒体と、前記伝送媒体を通ったマイクロ波を放射する開口が形成されたアンテナと、前記アンテナに形成された開口を塞ぐ誘電体窓を有する誘電体とを備え、前記アンテナの開口から前記誘電体窓を介して放射されたマイクロ波により、プラズマを発生させるプラズマリアクターであって、前記アンテナは、ホーンアンテナであり、前記誘電体は、前記ホーンアンテナの開口に挿入された頂点部と、前記頂点部から漸次拡開するように形成された側壁部と、前記側壁部の先端となる開口部とを備え、前記誘電体窓は、前記頂点部及び該頂点部の周辺の部位にて形成されていることを特徴とする。
【0015】
更に、本願開示のプラズマ発生方法は、前記プラズマ発生装置を用い、処理室内の真空度を30~200Paとした環境下で、表面波プラズマを発生させることを特徴とする。
【0016】
更に、本願開示のプラズマ発生方法は、第1の供給口及び前記第1の供給口より前記頂点部から遠い位置の第2の供給口が開設された前記プラズマ発生装置を用い、第1の気体を前記第1の供給口から処理室内へ供給し、前記第1の気体を供給後、第2の気体を前記第2の供給口から前記処理室内へ供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本願開示のプラズマ発生装置等は、頂点部、頂点部から漸次拡開するように形成された側壁部及び側壁部の先端となる開口部を備える誘電体が、ホーンアンテナの開口に頂点部が挿入されている。これにより、本願開示のプラズマ発生装置は、高電子密度のプラズマを効率的に発生させることが可能である
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本願開示のプラズマ発生装置の一例を示す概略ブロック図である。
図2】本願開示のプラズマ発生装置が備えるプラズマリアクターの一部を拡大して模式的に示す概略斜視図である。
図3】本願開示のプラズマ発生装置が備えるプラズマリアクターの一部を拡大して示す概略断面図である。
図4】本願開示のプラズマリアクターが備える誘電体の一例を模式的に示す概略外観図である。
図5】本願開示のプラズマリアクターが備える誘電体の一例を模式的に示す概略外観図である。
図6】本願開示のプラズマ発生装置が備えるプラズマリアクター内の電界の方向の一例を模式的に示す概略断面図である。
図7】本願開示のプラズマ発生装置が備えるプラズマリアクター内の電界の方向の一例を模式的に示す概略断面図である。
図8】プラズマ発生装置が備えるプラズマリアクターの電界強度のシミュレーションの前提としたモデルの概要を示す説明図である。
図9】プラズマ発生装置が備えるプラズマリアクターの電界強度のシミュレーション結果の一例を示す画像である。
図10】プラズマ発生装置が備えるプラズマリアクターの電界強度のシミュレーション結果の一例を示す画像である。
図11】プラズマリアクターの電界強度のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図12】各種気体に対する高周波放電の放電開始電界と圧力との関係を示すグラフである。
図13】従来技術のプラズマリアクターの一部を模式的に示す概略図である。
図14】従来技術のプラズマリアクターの一部を模式的に示す概略図である。
図15】本願開示のプラズマ発生装置が備えるプラズマリアクターの一部を拡大して示す概略断面図である。
図16】本願開示のプラズマ発生装置が備えるプラズマリアクターの一部を拡大して示す概略断面図である。
図17】本願開示のプラズマ発生装置が備えるプラズマリアクターの一部を拡大して示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。本願開示のプラズマ発生装置は、マイクロ波によりプラズマを発生させる装置である。プラズマ発生装置は、発生させたプラズマを処理対象に対して照射することにより、処理対象の表面改質等の処理を行う。以下では、図面を用い、図面に示したプラズマ発生装置Eを例示して説明する。
【0020】
図1は、本願開示のプラズマ発生装置Eの一例を示す概略ブロック図である。プラズマ発生装置Eは、プラズマを発生させ、発生させたプラズマを処理対象に照射し、表面改質等の処理を行う装置である。プラズマ発生装置Eは、処理対象に対して、還元処理、水酸基の付加、灰化(アッシング)等の処理、更には、プラズマCVD、エッチング、撥水基の付加等の様々な表面処理を行うことができる。
【0021】
プラズマ発生装置Eは、処理室1及び発振器2、並びに伝送媒体3、ホーンアンテナ4及び誘電体5を備えるプラズマリアクターPR等の各種部材を備えている。処理室1は、内部に収容した処理対象に対してプラズマを照射するチャンバーである。発振器2は、電源20を備え、電源20にて印加した電力により、マイクロ波等の電磁波を発振する装置である。発振器2が発生させたマイクロ波は、伝送媒体3を通って処理室1側へ導入される。図1に例示した伝送媒体3は、導波管を使用した例を示している。導波管の処理室1側の先端には、マイクロ波を処理室1側へ放射する開口40が形成されたホーンアンテナ4が取り付けられており、ホーンアンテナ4の開口40には、開口40を塞ぐ誘電体5が挿入されている。処理室1内には、処理対象を載置する載置台6が配置されている。また、処理室1内には、処理室1内の気体を吸引する真空ポンプ等の減圧装置7、処理室1内へ気体を供給するガス供給装置8等の各種装置が接続されている。減圧装置7は、処理室1に接続された排気管70を介して処理室1内の気体を吸引する。ガス供給装置8は、処理室1に接続された給気管80を介して処理室1内へ気体を供給する。
【0022】
図2は、本願開示のプラズマ発生装置Eが備えるプラズマリアクターPRの一部を拡大して模式的に示す概略斜視図である。図3は、本願開示のプラズマ発生装置Eが備えるプラズマリアクターPRの一部を拡大して示す概略断面図である。図4及び図5は、本願開示のプラズマリアクターPRが備える誘電体5の一例を模式的に示す概略外観図である。図2は、プラズマリアクターPRが伝送媒体3として備える導波管の先端に取り付けられたホーンアンテナ4の周辺を拡大して示しており、ホーンアンテナ4内に内接する誘電体5を一点鎖線で示している。図3は、図2の概略斜視図におけるA-B線分を通る面で切断し、矢印方向の視線で示す断面図である。図4は、誘電体5の概略斜視図であり、図5は、誘電体5の概略正面図である。図4及び図5では、内部形状を破線で示している。導波管は、方形導波管であり、マイクロ波の進行方向に対して直交する断面が、例えば、内寸が、109×55mm、96×27mm等の長方形状となる四角筒状をなしている。導波管の先端には、ホーンアンテナ4が取り付けられている。
【0023】
図2及び図3に例示するホーンアンテナ4は、H面がテーパーのホーンであり、導波管に取り付けられた根元部分から先端にかけて、H面に相当する面が漸次拡開している。ホーンアンテナ4の根元部分の開口40には、略三角形状をなす誘電体5の頂点部50が挿入されている。ホーンアンテナ4の根元から先端部分の内側は、誘電体5の側壁部51に接している。ホーンアンテナ4には、誘電体5を冷却する冷媒を通す冷却管となる冷却部41が形成されており、冷却部41により、接している誘電体5の側壁部51を冷却する。
【0024】
図2乃至図5に例示する誘電体5は、熱伝導率が25W/m・k以上の耐プラズマ性能を有するアルミナ、シリカ、ジルコニア、窒化アルミ等のセラミック材料、例えばニシムラ陶業株式会社製の高純度アルミナ「N-999S」を用いて形成される。また、誘電損失が小さいアルミナ、例えば、ニシムラ陶業株式会社製の高純度アルミナ「N-99DLT」等のセラミック材料も誘電体5の材料として好ましい。誘電体5は、所謂テント型の形状となる中空の横倒し三角柱状をなし、両底面を渡す一の辺が頂点部50となり、頂点部50に接する二の側面がH面に沿った側壁部51となっている。誘電体5の側壁部51の厚さは15mm程度が好ましい。誘電体5の頂点部50に相対する一の側面に相当する部位が開放された開口部52となっている。ホーンアンテナ4の根元部分の開口40に挿入された誘電体5の頂点部50及び頂点部50の周辺の部位は、誘電体窓53となっている。導波管を通ったマイクロ波は、ホーンアンテナ4の開口40から誘電体窓53を介して処理室1内に放射される。誘電体5には、ガス供給装置8の給気管80から送られる気体を内部へ供給するための第1供給口54及び第2供給口55が開設されている。第1供給口54及び第2供給口55は、供給した気体がプラズマ化しやすいように頂点部50の内側近傍に開設されている。第1供給口54は、第2供給口55より、頂点部50及び側壁部51に近い位置に開設されている。
【0025】
以上のように形成されたプラズマ発生装置Eによるプラズマ発生方法について説明する。先ず、プラズマ発生装置Eの処理室1内の載置台6に処理対象が載置される。次に、減圧装置7により、排気管70から処理室1内の気体が吸引され、処理室1内が減圧状態となる。
【0026】
例えば、プラズマ発生装置Eが表面波プラズマを発生させる場合、処理室1内は、20~300Pa、好ましくは、30~200Pa程度にまで減圧される。
【0027】
処理室1内を減圧状態とした後、ガス供給装置8により、給気管80から処理室1内に気体が供給される。先ず、第1供給口54から第1の気体を供給し、その後、第2供給口55から第2の気体を供給する。例えば、CF4等の腐食性のガスをプラズマ化する場合、腐食性のガスは、第2の気体として第2供給口55から供給される。腐食性のガスとしては、例示したCF4等のフッ素系ガス以外にも、塩素系ガス等の様々なガスを用いることが可能である。頂点部50及び側壁部51に近い第1供給口54から第1の気体を供給した後で、第2供給口55から第2の気体として供給した腐食性のガスは、誘電体5から遠い位置に充填される。このようにすることで、例えば、石英ガラスのように腐食し易い誘電体5を用いた場合であっても、腐食を抑止することが可能となる。また、プラズマ化し易い気体を第1の気体として第1供給口54から供給することにより、第1の気体をプラズマ化し、プラズマ化した第1の気体のプラズマエネルギーにより、第2の気体をプラズマ化することが可能となる。
【0028】
処理室1の誘電体5内に気体を充填後、発振器2が、電源20にて1kw等の出力でマイクロ波等の電磁波を発生させる。発振器2が発生させたマイクロ波は、導波管を通ってホーンアンテナ4へ伝搬する。
【0029】
図6は、本願開示のプラズマ発生装置Eが備えるプラズマリアクターPR内の電界の方向の一例を模式的に示す概略断面図である。図6は、図3に例示した概略断面図に、電界方向を両矢印にて示す電界を重畳して示している。図6は、マイクロ波が誘電体5まで伝搬しているが、プラズマが点灯する前の状態を示している。断面が長方形状の導波管を伝搬し、方形の導波管にて伝搬したマイクロ波は、根元から先端にかけて漸次拡開するホーンアンテナ4の内面に直交する円弧状に広がっていく。
【0030】
図7は、本願開示のプラズマ発生装置Eが備えるプラズマリアクターPR内の電界の方向の一例を模式的に示す概略断面図である。図7は、図6に例示した状態からマイクロ波の電界強度が強くなり、プラズマが点灯した状態を示している。図7において、実線の両矢印は電界方向を示し、破線は電流を示し、縦線のハッチングで示す領域は、プラズマを示している。図6に例示した状態から電界強度を強くすると、誘電体5の頂点部50近傍の内側にプラズマが点灯する。プラズマが点灯後、更に、電界強度を強くすると、それ以上マイクロ波を吸収できない臨界密度に達する。臨界密度に達した高密度プラズマでは、金属導体のようにプラズマ中をマイクロ波の電流が流れるようになる。プラズマ中をマイクロ波の電流が流れることにより、誘電体5の表面に沿って新たにプラズマが励起していくため、表面波プラズマが形成される。図7では、真空に近い減圧状態となっている誘電体5の頂点部50近傍の内面に沿って、表面波プラズマが広がる状態を示している。図7に示す状態から、更に、電界強度が強くなることにより、プラズマの先端部分に新たに放電が起こり、更にプラズマが広がる状態となる。図7に例示する状態において、マイクロ波は誘電体5内部を通路として伝搬する。
【0031】
プラズマ発生装置Eでは、以上のようにして発生したプラズマが、載置台6に載置した処理対象に照射されるので、処理対象の表面処理が行われる。
【0032】
次に、プラズマ発生装置Eによる電界強度をシミュレーションした結果について説明する。図8は、プラズマ発生装置Eが備えるプラズマリアクターPRの電界強度のシミュレーションの前提としたモデルの概要を示す説明図である。図8(a)は、本願開示のプラズマリアクターPRの仮想モデルをXYZ座標系に示し、特に、誘電体5については、形状を視認し易いように座標系外に取り出して示している。図8(a)に示す本願開示のプラズマリアクターPRは、Y軸方向から視た誘電体5の正面形状が、直角二等辺三角形状となっており、頂点部50及びその近傍がホーンアンテナ4の開口40に挿入された状態の誘電体窓53となっている。図8(b)は、比較用のプラズマリアクターの仮想モデルをXYZ座標系に示し、誘電体については、形状を座標系外に取り出して示している。図8(b)に示す比較用のプラズマリアクターは、誘電体の正面の形状が等脚台形状となっており、ホーンアンテナ内に挿入された部位はなく、平坦な誘電体窓となっている。図8(a)及び図8(b)に示した仮想モデルを用いて発生する電界強度のシミュレーションを実施する。
【0033】
図9及び図10は、プラズマ発生装置Eが備えるプラズマリアクターPRの電界強度のシミュレーション結果の一例を示す画像である。図9は、XZ平面に平行な断面についての電界強度のシミュレーション結果を示している。図9(a)は、図8(a)に示した本願開示のプラズマリアクターPRに対応し、図9(b)は、図8(b)に示した比較用のプラズマリアクターに対応する。図10は、YZ平面に平行な断面についての電界強度のシミュレーション結果を示している。図10(a)は、図8(a)に示した本願開示のプラズマリアクターPRに対応し、図10(b)は、図8(b)に示した比較用のプラズマリアクターに対応する。
【0034】
図9及び図10は、電界強度が強い部位ほど、濃い色となるように表現している。図9及び図10に示すように、本願開示のプラズマリアクターPRは、直角二等辺三角形状の誘電体5の頂点部50及びその近傍による反射は抑制されており、真空程度まで減圧した誘電体5の内部側の電界強度は大きくなっている。従って、プラズマ点灯が容易となる。他方、比較用のプラズマリアクターは、誘電体がホーンアンテナに密着するように取り付けられているが、当脚台形状の誘電体の頂点部は、マイクロ波の伝搬方向に直交する平面となっている。そのため、比較用のプラズマリアクターは、平面部分での反射が大きく、ホーンアンテナの開口の部分へのマイクロ波の伝搬が阻害される。また、比較用のプラズマリアクターは、誘電体の内部の電界強度が、本願開示のプラズマリアクターPRほど強くなっていない。
【0035】
図11は、プラズマリアクターPRの電界強度のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。図11(a)は、図8(a)に示した本願開示のプラズマリアクターPRに対応し、図11(b)は、図8(b)に示した比較用のプラズマリアクターに対応する。図11(a)及び図11(b)は、横軸にプラズマリアクターのZ軸方向の位置[mm]をとり、縦軸に電界強度[V/m]をとって、電界強度のZ軸方向の分布を示すグラフである。横軸は、ホーンアンテナ4の上端部を原点とし、Z軸方向の下方側(誘電体側)への距離にてZ軸方向の位置を示している。なお、実線は、図8中にAとして示す線分を含むXZ平面に平行な断面、即ち内部空間を通る中央の断面に沿った分布を示している。破線は、図8中にBとして示す線分を含むXZ平面に平行な断面、即ち、内部空間を通らずに側壁部51を通る断面に沿った分布を示している。図11(a)及び図11(b)では、1Wのマイクロ波電力が導波管からホーンアンテナに入力されたという条件下でのシミュレーション結果を示している。図11(a)に示すように、本願開示のプラズマリアクターPRにおいて、電界強度は、ホーンアンテナ4の上端部から下方へかけて低下しているが、誘電体5の頂点部50の内側近傍で鋭く大きなピークが観察される。この傾向は、内部空間を通る線分Aに沿った面で顕著である。図11(b)に示すように、ホーンアンテナに挿入された部位のない平坦な誘電体窓が形成された比較用のプラズマリアクターでは、ホーンアンテナの上端部から下方へかけて電界強度が低下し、誘電体窓近傍で上昇する傾向は同様であるが、図11(a)に示すような鋭く大きなピークにはなっていない。
【0036】
図11(a)に示すシミュレーション結果において、誘電体5内における電界強度の極大値は、1W入力で約1000V/m(=10V/cm)を示している。仮に、500Wのマイクロ波電力が入力されたとすると、極大値は√500倍の223V/cmになると推測される。図12は、各種気体に対する高周波放電の放電開始電界と圧力との関係を示すグラフである(岡田 修,“放電・プラズマ技術”,[online],東京理科大学,[令和4年5月13日検索],インターネット<URL:https://www.rs.tus.ac.jp/a26259/files2/3.%20discharge_and_plasma_technology.pdf >)。図12では、横軸に単位面積当たりの圧力[Torr]をとり、縦軸に電界強度[V/cm]をとって、各種気体の放電開始電界を示している。図12に示す高周波放電開始電圧の曲線から、133Pa(=1Torr)では、約80V/cm以上の電界で放電、即ち、プラズマが点灯すると推測される。従って、図11(a)のシミュレーション結果から、本願開示のプラズマ装置Eが備えるプラズマリアクターPRでは、500Wのマイクロ波電力でプラズマを発生させることが可能である。また、本願開示のプラズマ発生装置Eが備えるプラズマリアクターPRを用いた試験機による実験では、真空度を30Pa~200Paに設定し、300W~1.5kWのマイクロ波電力を印加することにより、誘電体5に接するようにして表面波プラズマが形成された。
【0037】
次に、比較のために従来の技術について説明する。図13は、従来技術のプラズマリアクターの一部を模式的に示す概略図である。図13は、特開平7-254589号公報に開示されているタイプのプラズマリアクターを示している。図13中で、白抜き矢印は、導波管A1によるマイクロ波の伝搬方向を示しており、実線の両矢印は、マイクロ波の電界方向を示している。図13に示すプラズマリアクターは、マイクロ波の伝搬方向に対し、石英ガラス製で板状に成型された誘電体B1の面が直交するように配置されている。図13に示す従来型のプラズマリアクターでは、1Pa~20Paの真空度で、300W~1kWのマイクロ波電力を印加することにより、破線で示す体積波プラズマC1が形成されている。ただし、形成された体積波プラズマC1は、電子密度が低いため高速処理への使用は困難である。なお、図13に示す従来型のプラズマリアクターで、真空度を30Pa~200Paに設定することにより、誘電体B1に接するようにして表面波プラズマが形成される。しかしながら、従来型のプラズマリアクターでは、表面波プラズマの広がり方向とマイクロ波の電界の方向とが平行になるため、臨界密度に達した表面波プラズマにより、導波管A1を経由してきたマイクロ波が反射されるため、表面波プラズマの広がりは抑制される。従って、大きな処理対象への適用は困難である。本願開示のプラズマリアクターPRは、表面波プラズマの広がり方向とマイクロ波の電界の方向とが直交するよう構成した場合に、これらの問題を解決することが可能である。
【0038】
図14は、従来技術のプラズマリアクターの一部を模式的に示す概略図である。図14は、特開2000-348898号公報に開示されているタイプのプラズマリアクターを示している。図14中で、白抜き矢印は、導波管A1によるマイクロ波の伝搬方向を示しており、実線の両矢印は、マイクロ波の電界方向を示している。図14に示すプラズマリアクターは、マイクロ波の伝搬方向に対し、石英ガラス製で板状に成型された誘電体B2の面が平行になるように配置されている。図14に示す従来型のプラズマリアクターでは、30Pa~200Paの真空度で、1kW~6kWのマイクロ波電力を印加することにより、破線で示す表面波プラズマC2が形成されている。図14に例示する従来型のプラズマリアクターでは、高密度の表面波プラズマC2を形成することが可能であるが、高密度の表面波プラズマC2を形成することにより、誘電体B2が高温に加熱されるにも関わらず、誘電体B2を冷却する機能が備わっていない。表面波プラズマC2が形成される環境下では、高温の中央部と端部との温度差は大きくなるため、誘電体B2の熱膨張率が大きい場合、誘電体B2の破損に繋がる虞がある。従って、従来型のプラズマリアクターは、誘電体B2を冷却する機能がないことから、誘電体B2には、熱膨張率の大きいセラミックスを使用することができないため、熱膨張率の小さい石英ガラスを使用することになる。また、フッ素系ガス等の腐食性ガスを用いて高密度の表面波プラズマC2を形成する場合、石英ガラス製の誘電体B2は、短時間で表面が削られるという耐腐食性に課題があるため、メンテナンス及びそれに伴うコストアップが問題となる。本願開示のプラズマリアクターPRは、誘電体5を冷却する冷媒を通す冷却部41を形成した場合に、これらの問題を解決することが可能である。
【0039】
次に、本願開示のプラズマ発生装置Eの様々な実施形態について説明する。図15は、本願開示のプラズマ発生装置Eが備えるプラズマリアクターPRの一部を拡大して示す概略断面図である。図14に例示したプラズマリアクターPRは、伝送媒体3として、同軸管を用いる形態である。同軸管は、外部導体30及び外部導体30に収容された内部導体31を備えており、マイクロ波を伝送する。図15に例示するように、本願開示のプラズマ発生装置Eは、伝送媒体3として同軸管を用いて形態に展開することが可能であり、更には、同軸管に替えて同軸ケーブルを伝送媒体3として用いた形態に展開することも可能である。同軸管を用いた場合、プラズマリアクターPRでは、内部導体31から誘電体5へ直接マイクロ波が伝搬し、誘電体窓53となる三角形頂点近傍の電界が高くなり、導波管による伝達の場合と同じくプラズマを発生させる。
【0040】
本願開示のプラズマ発生装置Eは、伝送媒体3として導波管を用いてマイクロ波伝搬を行う場合、誘電体5の頂点部50にて、反射を低減し、誘電体5内へマイクロ波を伝搬し、また、頂点部50の内側で電界強度が上がるので、プラズマ放電し易くなる。他方、伝送媒体3として同軸管、同軸ケーブル等の同軸形状でマイクロ波を伝達するように構成したプラズマ発生装置Eは、直接接触により誘電体5内へプラズマ波を伝搬するので、反射を少なくし、また、頂点部50の内側で同じように電界強度を上げることが可能である。
【0041】
図16は、本願開示のプラズマ発生装置Eが備えるプラズマリアクターPRの一部を拡大して模式的に示す概略斜視図である。図16は、伝送媒体3である導波管の先端に取り付けられたホーンアンテナ4の周辺を拡大して示しており、ホーンアンテナ4内に内接する誘電体5を破線で示している。図16に例示するホーンアンテナ4は、E面がテーパーとなったホーンであり、導波管に取り付けられた根元部分から先端にかけて、E面に相当する面が漸次拡開している。
【0042】
図17は、本願開示のプラズマ発生装置Eが備えるプラズマリアクターPRの一部を拡大して模式的に示す概略斜視図である。図17は、伝送媒体3である導波管の先端に取り付けられたホーンアンテナ4の周辺を拡大して示しており、ホーンアンテナ4内に内接する誘電体5を破線で示している。図17に例示するホーンアンテナ4は、四角錐状をなすE面及びH面の全ての面がテーパーとなったホーンであり、導波管に取り付けられた根元部分から先端にかけて、H面に相当する面及びE面に相当する面が漸次拡開している。
【0043】
以上のように本願開示のプラズマ発生装置Eは、ホーンアンテナ4の開口40に挿入される頂点部50を有する誘電体5を備え、誘電体5は、頂点部50から漸次拡開するように形成された側壁部51を備えている。そして、本願開示のプラズマ発生装置Eでは、プラズマ励起に用いる電磁波として、高い電力をプラズマに供給できるマイクロ波が用いられる。一般的にプラズマは、高密度になると所定の周波数以下の電磁波が進入できなくなる遮断周波数が存在する。遮断周波数は下記の式1で計算される。式1に示すように、遮断周波数が大きいほど、プラズマ密度を大きくすることができるので、本願開示のプラズマ発生装置Eでは、13.56MHzのRF波より、2.45GHzのマイクロ波を用いることが好ましい。
【0044】
f≒9×√ne ・・・式1
f :遮断周波数(Hz)
ne:プラズマ密度
【0045】
また、本願開示のプラズマ発生装置Eは、高密度なプラズマを広い面積で励起するため、表面波プラズマを用いることが好ましい。表面波プラズマの使用に際し、例えば、プラズマの広がり方向と、マイクロ波の電界の方向とが平行に形成されている場合、臨界密度に達した表面波プラズマにより、伝送媒体3を通ったマイクロ波が反射されるため、表面波プラズマの広がりが抑制される。本願開示のプラズマ発生装置Eは、誘電体5の頂点部50が、ホーンアンテナ4の開口40に挿入されるため、プラズマの広がり方向が、マイクロ波の電界の方向と平行ではなく、マイクロ波の反射を抑制し、表面波プラズマが広がり易くなる。従って、本願開示のプラズマ発生装置Eにおいて、側壁部51により形成される頂点部50の角度は、90°以下とすることが好ましい。また、誘電体5の頂点部50の形状を、90°以下等の開口40に挿入可能な形状にすることにより、プラズマの点灯前は、内部の頂点部50近傍の電界を高めやすく、放電によるプラズマの励起が容易となる。
【0046】
本願開示のプラズマ発生装置Eは、誘電体5として石英ガラス、セラミック等の材料が用いられる。例えば、石英ガラスを用いた誘電体5は、誘電損が小さい、誘電率が低い、熱膨張率が小さく温度差に強いといった長所がある。ただし、石英ガラスには、フッ素系ガスにより表面が削られるというような耐腐食性に関する問題がある。本願開示のプラズマ発生装置Eは、第1供給口54及び第2供給口55が開設されている。頂点部50及び側壁部51に近い第1供給口54から第1の気体を供給した後で、第2供給口55から第2の気体として腐食性のガスを供給することにより、腐食性のガスは、誘電体5から遠い位置に充填されるので、耐腐食性を向上させることが可能となる。なお、第1供給口54及び第2供給口55が開設された本願開示のプラズマ発生装置Eは、プラズマ化し易い気体を第1の気体として第1供給口54から供給することにより、第1の気体をプラズマ化し、プラズマ化した第1の気体のプラズマエネルギーにより、第2の気体をプラズマ化することが可能となる。
【0047】
また、例えば、セラミックを用いた誘電体5は、耐腐食性に優れているという長所があるが、熱膨張率が大きいため温度差が大きくなると割れやすくなるという問題がある。本願開示のプラズマ発生装置Eが備えるホーンアンテナ4は、誘電体5を冷却する冷媒を通す冷却部41が形成されているため、誘電体5を冷却し、誘電体5の膨張を抑制して、耐久性を向上させることが可能である。
【0048】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他の様々な形態で実施することが可能である。そのため、上述した実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の技術範囲は、請求の範囲によって説明するものであって、明細書本文には何ら拘束されない。更に、請求の範囲の均等範囲に属する変形及び変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0049】
例えば、誘電体5の形状は、ホーンアンテナ4の開口40に挿入された頂点部50を備える形状であれば、様々な形状に展開することが可能であり、例示した横倒し三角柱状及び四角錐状以外にも、六角錐状等の角錐状等の様々な形態に展開することが可能である。誘電体5の形状を角錐状とする場合、頂点が頂点部50となり、側面が側壁部51となり、底面に相当する部位が開口した開口部52となる。また、頂点部50は、若干の丸みを持った形状であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
E プラズマ発生装置
1 処理室
2 発信器
20 電源
3 伝送媒体(導波管、同軸ケーブル)
4 ホーンアンテナ
40 開口
41 冷却部
5 誘電体
50 頂点部
51 側壁部
52 開口部
53 誘電体窓
54 第1供給口
55 第2供給口
7 減圧装置
8 ガス供給装置
【要約】
【課題】高電子密度のプラズマを効率的に発生させることが可能なプラズマ発生装置、プラズマリアクター及びプラズマ処理方法を提供する。
【解決手段】プラズマ発生装置Eは、減圧可能な処理室1と、処理室1内へマイクロ波を通す伝送媒体3と、マイクロ波を放射する開口40が形成されたホーンアンテナ4と、ホーンアンテナ4に形成された開口40を塞ぐ誘電体窓53を有する誘電体5とを備え、ホーンアンテナ4の開口40から誘電体窓53を介して処理室1内に放射されたマイクロ波により、処理室1内に供給された気体からプラズマを発生させる。誘電体5は、ホーンアンテナ4の開口40に挿入された頂点部50と、頂点部50から漸次拡開するように形成された側壁部51と、側壁部51の先端となる開口40部とを備える。誘電体窓53は、頂点部50及び頂点部50の周辺の部位にて形成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17