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特許7198552水相に脂肪酸スルホアルキルエステルおよび/または脂肪酸スルホアルキルアミドを含むナノエマルジョン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】水相に脂肪酸スルホアルキルエステルおよび/または脂肪酸スルホアルキルアミドを含むナノエマルジョン
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20221222BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20221222BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20221222BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20221222BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20221222BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/37
A61K8/31
A61K8/46
A61K8/36
A61Q19/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019552882
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2018058097
(87)【国際公開番号】W WO2018192761
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】17167394.0
(32)【優先日】2017-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】チュアン,コンリン
(72)【発明者】
【氏名】ラング,デイビッド・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】カスバロ,ブルース・デイビス
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-511248(JP,A)
【文献】特開平10-259114(JP,A)
【文献】特開2007-039416(JP,A)
【文献】特表平08-511013(JP,A)
【文献】特開2007-277275(JP,A)
【文献】特表2006-519263(JP,A)
【文献】特表2010-540735(JP,A)
【文献】特表平06-511486(JP,A)
【文献】特開2013-095712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
B01F 21/00-25/90
C11D 1/00-19/00
B01J 13/02-13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)(i)ナノエマルジョン組成物全体の40~75重量%の、トリグリセリド、ペトロラタムおよびそれらの混合物からなる群から選択され、前記ペトロラタムの融点が30~60℃である油、および
(ii)ナノエマルジョンの0.8~10重量%のC~C18の脂肪酸を含む、内相と、
b)ナノエマルジョン組成物全体の1.6~15重量%(活性成分として)の、アシルイセチオン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、C1~C3アルキルアルキルタウリン酸アルカリ金属塩または前記2つの混合物である、1または複数の界面活性剤を含む外水であって、
アシルイセチオン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、C1~C3アルキルアルキルタウリン酸アルカリ金属塩、または前記2つの混合物である、前記1または複数の界面活性剤は、前記ナノエマルジョンの前記外水相中に存在する界面活性剤全体の70%以上を含む、外水相と
を含み、
前記内相の油滴の体積平均径が100~400ナノメートルである、ナノエマルジョン組成物。
【請求項2】
前記アシルイセチオン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩が、アシルイセチオン酸ナトリウムである、請求項1に記載のナノエマルジョン。
【請求項3】
前記C1~C3アルキルアルキルタウリン酸アルカリ金属塩が、アルキルメチルタウリン酸ナトリウムである、請求項1または2に記載のナノエマルジョン。
【請求項4】
体積平均径が120~300ナノメートルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
ココベタイン、ココアミドプロピルベタイン、ラウロアンホアセテート、ヒドロキシスルタイン、およびそれらの混合物からなる群から選択される界面活性剤を、前記水相中にさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記さらなる界面活性剤は水相の界面活性剤の最大30重量%を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記油がトリグリセリド油であり、前記トリグリセリド油が大豆油、ひまわり種子油、ヤシ油、菜種油、パーム油、パーム核油、グレープシードオイル、魚油、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項8】
前記油がペトロラタムであり、前記ペトロラタムの融点が30~60℃である、請求項1~6のいずれか1項に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項9】
前記油がトリグリセリド油およびペトロラタムを含む油混合物である、請求項1~6のいずれか1項に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項10】
鎖長C~C18を有する前記脂肪酸がラウリン酸、ミリスチン酸、ヤシ脂肪酸およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項11】
前記脂肪酸が前記ナノエマルジョンの1~7重量%のレベルで存在する、請求項10に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項12】
前記ナノエマルジョンがホモジナイザまたはソノレータからの圧力で調製され、前記圧力は5000psi以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載のナノエマルジョン組成物。
【請求項13】
a)(i)ナノエマルジョン組成物全体の40~75重量%の、トリグリセリド、ペトロラタムおよびそれらの混合物からなる群から選択され、前記ペトロラタムの融点が30~60℃である油、および
(ii)ナノエマルジョンの0.8~10重量%の、C~C18の脂肪酸を含む、内相と、
b)ナノエマルジョン組成物全体の1.6~15重量%(活性成分として)の、アシルイセチオン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、C1~C3アルキルアルキルタウリン酸アルカリ金属塩、または前記2つの混合物である、1または複数の界面活性剤を含む外水であって、
アシルイセチオン酸アルカリ金属塩またはアンモニウム塩、C1~C3アルキルアルキルタウリン酸アルカリ金属塩、脂肪酸スルホアルキルエステルまたは脂肪酸スルホアルキルアミド、または前記2つの混合物である、前記1または複数の界面活性剤が、前記ナノエマルジョンの水相中に存在する界面活性剤全体の70%以上を含む外水相と
を含み、
前記内相の油滴の体積平均径が100~400ナノメートルである、エマルジョンを調製する方法であって、
前記方法は、
1)水相を55~75℃に加熱すること、
2)油相を55~75℃に、または溶融するまで加熱すること、
3)油相を水相に加え混合し、ロータ/ステータ高せん断装置を1000~6000回転/分(rpm)で使用し、粗エマルジョンを形成すること、
4)前記粗エマルジョンをポンプ輸送し、5000psi以下の処理圧力でホモジナイザに1回通すこと、および
5)エマルジョンを周囲温度に冷却すること、
を含む、方法。
【請求項14】
工程3)で、あるいは、前記粗エマルジョンが、200~500psiの圧力で作動するホモジナイザを使用して形成される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な水中油型(o/w)ナノエマルジョンに関する。ナノエマルジョンは、(1)トリグリセリド油および/またはペトロラタムならびにC~C18の脂肪酸を有する内油相と、(2)脂肪酸スルホアルキルエステルおよび/または脂肪酸スルホアルキルアミドであるアニオン性界面活性剤を含有する外水相とを含有する。
【背景技術】
【0002】
本発明はトリグリセリド油およびペトロラタム(ナノエマルジョンから送達される有益剤)を含むナノエマルジョンの、小液滴(例えば、400ナノメートル以下)での提供に関係するものであり、これらは、有益剤がより大きい油滴の形状で送達される組成物よりも審美的に満足を与えるものと考えられる。そのナノエマルジョンはさらに、パーソナルクレンジング組成物に組み入れられると、トリグリセリド油および/またはペトロラタムの高い付着性を提供する。さらに驚くべきことに、これらの有益剤が400ナノメートル以下の液滴の形状で存在する場合、パーソナルクレンジング組成物の優れた泡立ち性能が見出される。典型的に、トリグリセリド油およびペトロラタムの有益剤は、数ミクロンの液滴の形状の場合、泡立ちの速度および体積を抑制する傾向がある。
【0003】
出願人は、主乳化剤(水相中)が、モノまたはジカルボキシアミノ酸のN-アシル誘導体である出願を先にしている。これらの両方が、周囲温度で20~35%の範囲の濃度の液体溶液型で供給され得る。ジカルボキシアミノ酸およびモノカルボキシアミノ酸両方のN-アシル誘導体の界面活性剤は、並外れてマイルドであり、かつとても高価である。
【0004】
脂肪酸スルホアルキルエステルおよび/または脂肪酸スルホアルキルアミドは、別の種類のマイルドな界面活性剤であり、一般的に、より高価な界面活性剤(例えば、上記のモノ-またはジ-カルボキシアミノ酸のN-アシル誘導体)よりも経済的に製造される。脂肪酸スルホアルキルエステルの一例である、アシルイセチオン酸ナトリウムは、周知のマイルドなアニオン性界面活性剤であり、化粧品組成物、例えばアシルイセチオン酸ナトリウムが最も豊富な成分であるDove(登録商標)Bath Barsで幅広く適用されている。アシルイセチオン酸ナトリウムは、また、刺激の強い界面活性剤、例えばラウレス硫酸ナトリウムの代わりに、身体洗浄剤などの液体洗浄剤にも配合されている。最も広く使用されている、脂肪酸スルホアルキルアミド、アルキルメチルタウリン酸ナトリウムは、マイルドで優れた泡立ちを提供することが望ましい。
【0005】
脂肪酸スルホアルキルエステルおよび/または脂肪酸スルホアルキルアミドを水相で主乳化剤として使用しナノエマルジョンを製造することは、機能的にも経済的にも魅力的であるが、非常に難しい。唯一の乳化剤としてアシルイセチオン酸ナトリウムで製造したナノエマルジョンの油滴は、高圧ホモジナイザに、5000ポンド/平方インチ(psi)の圧力で1回通した後、より大きく、例えば、400ナノメートル(nm)超となる傾向がある。さらに、アシルイセチオン酸ナトリウムで製造されたナノエマルジョンは、周囲温度で固体化する傾向があり、従ってアシルイセチオン酸ナトリウムの水中での溶解度が不十分であるため、ポンプ輸送することが難しい。ココイルイセチオン酸ナトリウムは、水中25Cでわずか0.01重量%の溶解度しか有さない(J.Cosmet.Sci.,54,559-568,2003年11月/12月)。
【0006】
ココイルメチルタウリン酸ナトリウムの水中での溶解度は、25Cで約1重量%である。それは20~35%が活性成分のペーストとして供給され得る。アシルメチルタウリン酸ナトリウムを唯一の乳化剤として使用し、ワセリンのナノエマルジョンを調整する場合、周囲温度で固体化は生じないが、高圧ホモジナイザに5000psiの圧力で1回通した後、油滴は600nm超となる。
【0007】
出願人は現在、脂肪酸を(ナノエマルジョンの油相中)共乳化剤として使用することにより、いくつかの予想外の利点を提供することを見出している。まず、周囲温度でポンプ輸送可能なナノエマルジョンの調製において、あまり高価でなく難溶性でマイルドなアニオン性界面活性剤(例えば、アシルイセチオン酸ナトリウム)を使用することを可能にする。また、かなり小さい液滴径のナノエマルジョンは、より効率的に調製され得る(例えば、より低い処理圧力、および/または、より少ないホモジナイザへの通過回数)。さらに、脂肪酸共乳化剤の使用は、当発明の小さい体積平均液滴(100~400nm)の形成を可能にする。脂肪酸乳化剤がない場合、(乳化剤としてイセチオネート界面活性剤またはタウレート界面活性剤を使用する)ペトロラタムの液滴の体積平均は、400ナノメートルをかなり上回る。
【0008】
脂肪酸を共乳化剤として使用することのさらなる利点は、より経済的なグレードの脂肪酸スルホアルキルエステルおよび/または脂肪酸スルホアルキルアミドを使用し、ナノエマルジョンのコストをさらに削減することができることである。脂肪酸スルホアルキルエステルおよび脂肪酸スルホアルキルアミドは、脂肪酸(例えば、C10~C18の脂肪酸)と、例えば、イセチオネート酸ナトリウム(HOCHCHSO Na)およびメチルタウリン酸ナトリウム(NHCHCHSO Na)とを、それぞれ反応させることによって商業的に製造される。高収率を得るために、典型的には、脂肪酸を過剰にし収率を高め副反応を減らす(Anionic Surfactants Part 2,Surfactant Science Series,Vol.7,p458-461)。最後に、脂肪酸を真空蒸留により除去するが、それによりサイクル時間およびエネルギー消費が増加し、従って製造コストが上昇する。蒸留しない混合物を非常にうまく使用し、所望の油滴のポンプ輸送可能なナノエマルジョンを効率的に調製することができる。
【0009】
具体的には、共乳化剤(本発明の主題)は、効率的な方法で、特に小さいペトロラタムの液滴(例えば、300nm以下、好ましくは250nm以下、さらに好ましくは200nm以下)の調製を可能にし、さらにポンプ輸送可能なナノエマルジョンの周囲温度での調製において、難溶性でマイルドなアニオン性界面活性剤の使用を可能にする。
【0010】
皮膚保湿オイル(上述のトリグリセリド油およびペトロラタム有益剤を含む)は、パーソナルクレンジング組成物(例えば、皮膚を洗浄し、かつ保湿するように作られたシャワージェル、洗顔料、および手洗い用洗剤)から、大きい油滴の形状(例えば、50~から200ミクロン以上)で送達されることが多い。
【0011】
例えば、Glenn,Jr.による米国特許第5,584,293号明細書および同第6,066,608号明細書の両方が、200ミクロンを超える直径を有する、少なくとも10%の親油性の皮膚保湿剤液滴を有する保湿液体パーソナル・クレンジング・エマルジョンを開示している。
【0012】
Restrepoらによる米国特許第8,772,212号明細書は、高レベルのペトロラタムを含有するし等方性クレンジング組成物を開示しており、ペトロラタム粒子の50体積%超が、50、100、150または200ミクロン超の径を有する。
【0013】
大きな油滴を含有する組成物は、その大きな油滴を懸濁できように(例えば、安定剤を使用して)うまく構成される必要がある。例えば、米国特許第5,854,293号明細書および同第6,066,608号明細書では、クリスタリン、ヒドロキシル基含有安定剤、高分子増粘剤、C10~C18のジエステル、非晶質シリカ、またはスメクタイトクレーから選択される安定剤を利用している。このような組成物を調製するためには、特別な混合方法が典型的に必要とされる。例えば、油滴径の減少を防ぐために、低せん断力下で組成物を調製しなければならない(米国特許第8,772,212号参照)。これらの組成物は、有益剤の送達の向上をもたらすが、これらの製品は一般的に、大きな油滴の存在のために、消費者にとって審美的に魅力が少ないと考えられる。
【0014】
有益剤(例えばシリコーン)の皮膚への送達を向上させる別の方法は、例えば、JAGUAR(登録商標)C-13-Sの名称で販売されている、グァーガムのヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム誘導体などのカチオン性親水性ポリマーを使用による(Helliwellによる米国特許第5,500,152号明細書参照)。この参照において、シリコーンオイルは、油滴径が0.1~1ミクロン(マイクロメートル:μm)の範囲で、平均粒子径が0.4μmであるプレフォームエマルジョンである(これが油滴の個数平均径か体積平均径かについての言及はない)。この種類の製品は滑らかであり、かつ審美的に魅力的である傾向がある。しかし、栄養分に富む植物油(トリグリセリド油)およびペトロラタムなどの高閉塞性の皮膚保護剤は、典型的に、クレンジング組成物由来の好ましい保湿剤である。
【0015】
保湿油が豊富なクレンジング組成物に直面する問題の1つは、大量の油が泡立ちの速度および体積を減少させる傾向があることである。
【0016】
従って、トリグリセリド油および/またはペトロラタムのナノエマルジョンからなり、審美的に魅力的で、これらの保湿油の付着性が高く、かつ高い泡立ち性能を維持するパーソナルクレンジング組成物を調製することが望ましい。
【0017】
本発明では、出願人はトリグリセリド油およびペトロラタムを送達するために、新規なo/wナノエマルジョンを、小さな(100~400ナノメートル、特に120~300、さらに特には、150~250)体積平均径の液滴として提供する。さらに予想外に高い泡立ち性能が維持される。
【0018】
上述のように、同時係属中の出願において、出願人はモノ-またはジ-カルボキシアミノ酸のN-アシル誘導体の塩を含むo/wナノエマルジョンを主張し、そのo/wナノエマルジョンは、周囲温度で濃度が20~35%の範囲の液体溶液型で供給され得る。本出願で、脂肪酸を共乳化剤として使用することにより、出願人は予想外にも、難溶性でマイルドなアニオン性界面活性剤を使用することで、周囲温度でポンプ輸送可能なナノエマルジョンを作製できることを見出した。脂肪酸スルホアルキルエステルおよび脂肪酸スルホアルキルアミドは、化粧品組成物での広範な適用でよく知られる、マイルドなアニオン性界面活性剤である。それらは、先願のアミノ酸系界面活性剤と比較してそれほど高価ではない。
【0019】
本発明のナノエマルジョンは、(1)トリグリセリド油、ペトロラタム、およびそれらの混合物からなる群から選択される有益剤の液滴、ならびにC~C18の脂肪酸共乳化剤を含有する油相と、(2)脂肪酸スルホアルキルエステルまたは脂肪酸スルホアルキルアミドまたはこのようなものの混合物である1または複数の界面活性剤(主乳化剤)を含む水相とを含む。
【0020】
特定の脂肪酸スルホアルキルエステルまたは脂肪酸スルホアルキルアミドは、典型的に、ナノエマルジョン組成物の水相に存在する界面活性剤全体のうちの70%以上、好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上を含む。脂肪酸スルホアルキルエステルまたは脂肪酸スルホアルキルアミドは、水相に存在する他のどの界面活性剤よりも多い量で存在する。アシルイセチオン酸ナトリウムまたはアシルメチルタウリン酸ナトリウムの溶解度を増加させるのに役立つ、さらなるイオン性界面活性剤が、水相に存在してもよい。このような界面活性剤は安定剤と称され、典型的にアシルイセチオン酸ナトリウムまたはアシルメチルタウリン酸ナトリウムの頭部基と同様の、またはより大きい、かつより複雑である頭部基からなる。アニオン性界面活性剤および両性界面活性剤が、本目的に役立ち得る。アニオン性界面活性剤の種類には、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(またはアンモニウム)、アルキルスルホコハク酸二ナトリウム(または二アンモニウム)、アルキルエーテルスルホコハク酸二ナトリウム(または二アンモニウム)、アシルグルタミン酸二ナトリウム(または二アンモニウム)、アシル乳酸ナトリウム(またはアンモニウム)、およびアシルサルコシン酸ナトリウムがある(がそれらに限定されない)。アシルメチルタウリン酸ナトリウムおよびアシルイセチオン酸ナトリウムは、同様の頭部基を共有しており、従って互いを可溶化するのに役立つ。両性の種類では、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルタイン、アルキルアンホ酢酸ナトリウム(またはアンモニウム)、アルキルアンホ二酢酸二ナトリウム(または二アンモニウム)、アルキルアンホプロピオン酸ナトリウム(またはアンモニウム)、アルキルイミノジプロピオン酸二ナトリウム(または二アンモニウム)、アルキルアミドプロピルベタインおよびアルキルアンホヒドロキシプロピルスルホン酸ナトリウムがある。溶解剤である界面活性剤は、一般的に、ナノエマルジョン組成物の水相に存在する界面活性剤全体の30%以下、好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下を含む。
【0021】
Simonnetらによる米国特許第6,541,018号明細書では、内相の油は主に低分子量(分子量400未満)のエステル油である。低分子量のエステル油は、クレンジング組成物の粘度および泡立ちに影響を与える。本発明のトリグリセリドおよび本発明の(融点が30°~60℃を有する)ペトロラタムは、良好な粘度および泡を維持するのに役立つ。
【0022】
Simonnetらによる米国特許第8,834,903号明細書および米国特許第6,541,018号明細書で開示されたナノエマルジョンは、油の濃度がエマルジョンの40%以下である内相を有することが示されている。本発明の油の濃度は、ナノエマルジョン全体の40重量%から75重量%の範囲でよいが、好ましい範囲は41~70%であり、好ましくは50%~65%である。より高い内相が有益であるのは、より小さい液滴のナノエマルジョンを調製するために消費するエネルギーが小さいからだけではなく、ナノサイズの油滴の収率を向上させるからである。
【0023】
Bowen-Leaverによる米国特許出願公開第2003/0012759号明細書は、約10,000~20,000psiで、および複数回の通過で高圧装置を使用することによる、ナノエマルジョンの調製を教示している(3頁、[0021])。アニオン性界面活性剤(ステアロイルグルタミン酸ナトリウム)、非イオン性界面活性剤(ステアリン酸グリセリル/ステアリン酸PEG-100)および実施例1のステアリン酸からなる乳化システムを開示している。脂肪酸は、油相で共乳化剤としてステアリン酸グリセリル/ステアリン酸PEG-100で使用される。アシルイセチオン酸ナトリウムまたはアシルメチルタウリン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤と、乳化剤としての脂肪酸とを組み合わせ、ナノエマルジョンの製造効率および周囲温度でのポンパビリティを改善することの重要性についての言及はない。本出願において、ステアリン酸グリセリルおよびステアリン酸PEG-100などの非イオン性乳化剤は、ナノエマルジョンを調製するための乳化システムに含まれない。アニオン性界面活性剤と脂肪酸との組合せは、その他の非イオン性界面活性剤の存在なしに、1回のみの通過後および5000psi以下で、ペトロラタムのナノエマルジョンの液滴径を400nm未満に予想外にも減少させることが見出された。脂肪酸の使用に基づく、このような処理効率は全く予想できない。
【0024】
国際公開第02/080864号は、主乳化剤として、カチオン性、アニオン性および架橋性の界面活性剤を含む、三成分系界面活性剤を含む水中油ナノエマルジョンを開示している(2頁、16~17行目)。そのナノエマルジョンは、高圧マイクロフルイダイザに、10,000~20,000psiで少なくとも2回通過させて調製される(3頁、14~17行目)。タウレートおよびイセチオネートは、好ましいアニオン性界面活性剤の2種であり(請求項4)、かつ実施例2で、脂肪酸は6種の界面活性剤の界面活性剤混合物に含まれていてもよい(20~21行目)。脂肪酸の添加による特定の利点については言及されていない。ナノエマルジョンの油レベルは30%未満であるが、本出願の油レベルは40%以上である。
【0025】
米国特許出願公開第2003/0077299号明細書は、イオン性界面活性剤、水相およびセラミドまたは脂肪酸のどちらかを含む油相を含むo/wナノエマルジョンを開示している。N-メチル-N-ミリストイルタウリン酸塩およびN―ステアロイル―N―メチルタウリン酸ナトリウムは、アニオン性界面活性剤の多くの例のうちの2つである(1頁[0016]6~8行目)。実施例1のエマルジョン(3)では、シリコーンオイル16.4%およびセラミド5%を含有するナノエマルジョンが、N―ステアロイル―N―メチルタウリン酸ナトリウムを乳化剤として使用して、2,800kg/cm2(約40,000psi)の圧力で、3回通過させ調製される(4頁[0060])。油レベルは40~75%大きく下回る。ナノエマルジョンを調製するとき、特にワセリンが関係するとき、処理エネルギーを減少させるために脂肪酸を使用しない。
【0026】
米国特許出願公開第2009/0062406号明細書は、イセチオネート、タウレートおよびベタイン界面活性剤からなり、流動性で、かつ透明である、水性界面活性剤濃縮液を開示している。しかし、ナノサイズの油滴は存在しない。
【0027】
前述の、Helliwellによる米国特許第5,500,152号明細書は、実施例1で、界面活性剤混合物(ココイルイセチオン酸ナトリウム9%およびココナッツベタイン6%)および平均粒径0.4μm(400nm)のシリコーンオイル5%を含有するシャワージェルを開示している。シリコーンオイルを、シリコーンオイル50%、ラウリルアルコールエトキシレート2EOを2%およびラウリルアルコールエトキシレート21EOを2%含有するプレエマルジョンとして添加した。本出願の場合のように、エトキシレートフリーのクレンジング組成物を作製するためのナノエマルジョンを形成するために、乳化剤として使用される、ココイルイセチオン酸ナトリウムおよび脂肪酸についての言及はなかった。
【0028】
Ikedaら(L’Oreal)による米国特許出願公開第2017/0087064号明細書は、ナノもしくはマイクロエマルジョンの形状のどちらかであってよく、またはラメラ構造でもよい組成物に関する(段落0001)。実施例4(表5、23頁)は、ラメラ構造を形成するために、オレイン酸ポリグリセリル-5およびカプリン酸ポリグリセリル-2(主界面活性剤として使用される非イオン性乳化剤)、ならびに少量(0.2%)のステアロイルメチルタウリン酸ナトリウムを有する配合組成を開示している。300ナノメートル未満の径を有する油滴の形成の言及はなく、例えば実施例1および2で明確に述べられているようなナノエマルジョンの形成について示唆はない。
【0029】
本発明の固有のナノエマルジョンは、パーソナルクレンジング組成物に組み入れられると、審美的に満足を与え、有益剤であるトリグリセリド油またはペトロラタムを効率的に送達し、かつ優れた泡立ちを維持する小油滴(400ナノメートル以下)を含有する。さらに、そのナノエマルジョンがパーソナルクレンジング製品で使用されるとき、使用される特定の界面活性剤は、優れた「マイルドな」洗浄を提供し、泡の維持を保証する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【文献】米国特許第5,584,293号明細書
【文献】米国特許第6,066,608号明細書
【文献】米国特許第8,772,212号明細書
【文献】米国特許第5,854,293号明細書
【文献】米国特許第6,066,608号明細書
【文献】米国特許第5,500,152号明細書
【文献】米国特許第6,541,018号明細書
【文献】米国特許第8,834,903号明細書
【文献】米国特許出願公開第2003/0012759号明細書
【文献】国際公開第02/080864号
【文献】米国特許出願公開第2003/0077299号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0062406号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0087064号明細書
【非特許文献】
【0031】
【文献】J.Cosmet.Sci.,54,559-568,2003年11月/12月)。
【文献】Anionic Surfactants Part 2,Surfactant Science Series,Vol.7,p458-461
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0032】
具体的には、本発明は、
a)(i)ナノエマルジョン全体の40~75重量%の、トリグリセリド油、ペトロラタムおよびそれらの混合物からなる群から選択され、ペトロラタムの融点が30~60℃である油、および(ii)ナノエマルジョンの0.8~10重量%の、C~C18、好ましくはC10~C14の脂肪酸(例えば、C12のラウリン酸)を含む内油相と、
b)ナノエマルジョン全体の1.6~10重量%(活性成分として)の、脂肪酸スルホアルキルエステルまたは脂肪酸スルホアルキルアミドまたは2つの混合物を含む外水相とを含むナノエマルジョン組成物であって、
(b)の界面活性剤が、ナノエマルジョンの水相に存在する界面活性剤全体の70%以上を含み、
(a)の油滴の体積平均径が100~400ナノメートルであり、
ナノエマルジョンが周囲温度でポンプ輸送可能である、ナノエマルジョン組成物に関する。
【0033】
好ましくは、脂肪酸スルホアルキルエステルが、アシルイセチオン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩である。好ましい分子は、アシルイセチオン酸ナトリウムまたはアシルイセチオン酸カリウム、好ましくはアシルイセチオン酸ナトリウムを含む。好ましくは、脂肪酸スルホアルキルアミドが、短鎖(c1~c3)アルキルアルキルタウリン酸アルカリ金属塩(特にナトリウムまたはカリウム)である。好ましい分子は、アルキルメチルタウリン酸アルカリ金属塩であり、特に好ましいのはアルキルメチルタウリン酸ナトリウムである。ココイルイセチオン酸ナトリウムおよびアルキルメチルタウリン酸ナトリウムは、それぞれ、25Cで水中わずか0.01%および1重量%の溶解度しか有さない。
【0034】
好ましくは、本発明の組成物は、油相の脂肪酸に加えて、さらなる界面活性剤の溶解剤を含み(水相中の界面活性剤全体の30%未満レベルで)、好ましくは、さらなる界面活性剤はアニオン性または両性の界面活性剤または両方の混合物である。
【0035】
特許請求の範囲は組成物を対象とすることを理解されたい。つまり特許請求の範囲は、例えば、出願人により形成されたものであっても、(ほとんどの場合で起こり得るように)調製された界面活性剤製品として購入されたものであっても、脂肪酸スルホアルキルエステルおよび脂肪酸スルホアルキルアミドに及ぶことが意図される。
【0036】
脂肪酸を共乳化剤として使用すると、本発明のナノエマルジョンは典型的に、400以下または100~350、または120~300、または150~250の液滴体積平均径を有する。脂肪酸を共乳化剤として使用することにより、難溶性界面活性剤、特にアシルイセチオン酸ナトリウムを基にしたナノエマルジョンは、周囲温度で固体化せずポンプ輸送可能となる。
【0037】
ナノエマルジョンは、典型的に、従来のロータ/ステータまたはその他の種類の高せん断装置を使用して、油相と水相を混合することによって調製され、さらにホモジナイザを介して、5000ポンド/平方インチ(psi)以下、好ましくは4500psi以下の処理圧力で処理される。同じ成分を使用するが、油相中の共乳化剤としてC~C18の脂肪酸を使用しない場合、同じ圧力で液滴径は典型的に、脂肪酸を使用する場合よりもかなり大きくなる。
【0038】
脂肪酸スルホアルキルエステル、例えばアシルイセチオン酸ナトリウム、および脂肪酸スルホアルキルアミド、例えばアルキルメチルタウリン酸ナトリウムは、マイルドな洗浄界面活性剤であり、サルフェートフリーおよびエトキシレートフリーであるため、ナノエマルジョン組成物が一度形成されると、いくつかの利点を提供する。例えば、そのナノエマルジョン組成物は、広範囲のパーソナルクレンジング組成物に容易に組み入れることができる。さらに、アシルイセチオン酸ナトリウムおよびアルキルメチルタウリン酸ナトリウムは、クレンジング組成物の良好な泡立ち形成を可能にする。さらに、カチオン性ポリマーで補助すると、本発明のナノエマルジョンはクレンジング組成物から皮膚への油の付着性を著しく向上させる。より高価なモノまたはジカルボキシアミノ酸系界面活性剤および、これらの界面活性剤で製造されたナノエマルジョンと比較すると、本発明のナノエマルジョンはより手頃な価格でマイルドであり、かつ保湿効果のあるクレンジング組成物への道筋を提供する。
【0039】
従って、新規なナノエマルジョンは、感覚的に満足を与えるものであり(小液滴径により)、効率的な油付着性を提供し、より優れた安定性を提供し(また、より小さな液滴径により)、かつパーソナルクレンジング組成物での使用に理想的に適しているが、一方でコスト効率がより良い。
【0040】
別の態様では、本発明は、
a.(i)ナノエマルジョン全体の40~75重量%の、トリグリセリド油、ペトロラタムおよびそれらの混合物からなる群から選択され、ペトロラタムの融点が30~60℃である油、および(ii)ナノエマルジョンの0.8~10重量%の、C~C18、好ましくはC10~C14の脂肪酸(例えば、C12のラウリン酸)を含む内油相と、
b.ナノエマルジョン全体の1.6~10重量%(活性成分として)の、脂肪酸スルホアルキルエステル、例えばアシルイセチオン酸ナトリウム、脂肪酸スルホアルキルアミド、例えばアルキルメチルタウリン酸ナトリウムまたはその2つの混合物である、1または複数の界面活性剤を含む外水相と、
を含み、
(a)の油滴の体積平均径が100~400ナノメートルであり、
ナノエマルジョンが周囲温度でポンプ輸送可能である
エマルジョンを調製する方法であって、
上記方法は、
1)水相を55~75℃に加熱すること、
2)油相を55~75℃または融解するまで加熱すること、
3)油相を撹拌しながら水相に加え、ロータ/ステータ高せん断装置で1000~6000回転/分(rpm)の速度でさらに混合し、粗エマルジョンを形成すること、
4)粗エマルジョンを5000psi以下、好ましくは4500psi以下の処理圧力で、ホモジナイザに1回通しポンプ輸送すること、および
5)ナノエマルジョンを周囲温度まで冷却すること
を含む、方法に関する。
【0041】
工程3)で、あるいは、粗エマルジョンは200~500psiの圧力で作動するホモジナイザを使用して形成してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0042】
実施例における場合を除いて、または他に明示されている場合を除いて、材料の量または反応の条件、材料および/または使用の物理的特性を示す、本明細書のすべての数字は、用語「約」により修飾されるものと理解されるべきである。すべての量は別段の定めがない限り、最終組成物の重量による。
【0043】
任意の範囲の濃度または量を指定するときには、任意の特定の上限濃度を、任意の特定の下限濃度または量と関連づけることができることに留意するべきである。
【0044】
誤解を避けるために、用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」を意味することを意図するが、必ずしも「からなる(consisting of)」または、「からなる(composed of)」を意味することは意図していない。つまり、列挙された工程または選択肢は、網羅的である必要はない。
【0045】
本明細書にみられる本発明の開示は、請求項に複合的な従属または重複がないとみなされ得るという事実に関わりなく、互いに複合的に従属している請求項にみられる、すべての実施形態を包含するものと考えられるべきである。
【0046】
本発明は油および界面活性剤の特定の選択を含有する、新規なナノエマルジョンを提供する。ナノエマルジョンは5000psi以下の処理圧力を使用して調製され得る。新規なナノエマルジョンは、クレンジング組成物、例えば液体クレンジング組成物または固形石鹸での使用に理想的に適している。
【0047】
具体的には、脂肪酸スルホアルキルエステル、例えばアシルイセチオン酸ナトリウム、または脂肪酸スルホアルキルアミド、例えばアルキルメチルタウリン酸ナトリウムは、C14以下のアシル鎖またはアルキル鎖を65%超,好ましくは75%超、好ましくは80%超有する(好ましくは、C12、C14およびそれらの混合物である、アシル鎖またはアルキル鎖を75%超有する)。最終のナノエマルジョンを混ぜ合わせて、完全に配合された液体パーソナルクレンジング組成物にすると、選択された乳化剤は複数の利点を提供する。まず、イセチオネートおよびタウレート界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウムおよびラウリルエーテル硫酸ナトリウム(sodium lauryl ether sulphate:SLES)などの、典型的に使用される刺激が強い界面活性剤よりも刺激が少ないことで知られている。また、述べたように、界面活性剤がパーソナルクレンジング組成物での使用に適し、こうした製品構造化に最小の干渉を提供するように、鎖長は選択されている。さらに主に選択される短鎖長により、界面活性剤が良好な泡を提供することが保証される。
【0048】
同時係属出願において、出願人らは、ジカルボキシアミノ酸のN-アシル誘導体を含み、より高価で、20~35%が活性成分の液体溶液型で供給され得る、同様のナノエマルジョンを特許請求している。共乳化剤として使用される脂肪酸により、小さい径の油滴が得られる。
【0049】
本出願で、難溶性のアニオン性界面活性剤、例えばアシルイセチオン酸ナトリウムを、乳化剤として使用する場合、高圧ホモジナイザに、5000ポンド/平方インチ(psi)の圧力で、1回通した後、より大きい、例えば400ナノメートル(nm)超である油滴を得る傾向がある。さらに、アシルイセチオン酸ナトリウムで製造されたナノエマルジョンは、周囲温度で固体化する傾向があり、従ってポンプ輸送が難しい。予想外に、脂肪酸を共乳化剤として使用することで、著しく小さい液滴を得ること、かつこれらの小液滴のナノエマルジョンがより効率的に得られることを見出した。驚くべきことに、アシルイセチオン酸ナトリウムの溶解剤を使用しなくても、本発明のナノエマルジョンは周囲温度でポンプ輸送可能である。しかし、溶解剤を使用すれば、さらにナノエマルジョンのポンプ輸送性を向上させる。小液滴径および効率的な処理は、特定の界面活性剤(例えばアニオン性)と特定に脂肪酸との特定の組合せの作用である。つまり、述べたように、本発明の界面活性剤と脂肪酸との固有の相乗作用が、本発明の油(例えば、ワセリン)と特にうまく働く。
【0050】
要するに、同じ材料を使用したとき、(脂肪酸を使用し)著しく小さい液滴が得られ、これらの小液滴のナノエマルジョンはより効率的に得られ、周囲温度でポンプ輸送可能である。一般に小さな体積平均径の液体は、より効率的な付着を提供することに役立つ。例えば、完全に配合された液体洗剤で典型的に使用されるカチオン性ポリマーは、大きな液滴よりも小さな液滴により容易に付着する。大きな油滴は、大きな油滴を懸濁させるために安定剤も必要とする。ナノエマルジョン由来の小さな径の油滴は、クレンジング液体に組み入れられるとき、より高い安定性も提供する。小液滴はまた、より審美的に満足を与えるとも考えられている。
【0051】
本発明のナノエマルジョンは、下記により詳細に定義される。
【0052】
油相
ナノエマルジョンの油相の油は、1または複数のトリグリセリド油(動物性および/または植物性油)、ペトロラタム、または1または複数のトリグリセリド油とペトロラタムとの混合物であってよい。ペトロラタムが特に好ましい。
【0053】
使用してよいトリグリセリド油の例には、大豆油、ひまわり種子油、ヤシ油、菜種油、パーム油、パーム核油、グレープシードオイル、シアバター、ココアバター、および魚油が含まれる。大豆油およびひまわり種子油は、好ましいトリグリセリドである。
【0054】
油相中の油は、またペトロラタムであってよい。ペトロラタムは30°~約60℃の範囲の融点を有することが好ましい。このようなペトロラタム油の例には、ユニリーバ社製ヴァセリン(登録商標)ペトロリュームジェリー、カルメットペンレコ社製白色ワセリンUSP、ソネボーン社製ワセリンG2212およびWhite Protopet(登録商標)1Sが含まれる。
【0055】
ミツロウまたは植物ワックスでゲル状にした植物油もまた好適である。このようなゲル状植物油の例には、コスターキューネン社製NaturalAtumおよびCamden-Grey Essential Oils,Inc.製Unpetroleum Jellyが含まれる。
【0056】
油はナノエマルジョン組成物全体の40重量%~75重量%、好ましくは41重量%~65重量%の範囲である。トリグリセリド油またはペトロラタムの液滴の好ましい体積平均径は、100~400nm、好ましくは120~350nm、さらに好ましくは150~300nmである。
【0057】
トリグリセリド油およびペトロラタムを選択することが、皮膚にエモリエント性および閉塞性を与えるのに役立つのは、本発明のナノエマルジョンが組み入れられた、完全に配合されたクレンジング組成物で皮膚を洗浄した後、トリグリセリド油および/またはペトロラタムが皮膚に付着するときである。
【0058】
油相は、(1または複数の)トリグリセリド油および/またはペトロラタムに加えて、例えば、ビタミンA、ビタミンE、日焼け止め剤、芳香剤、パルミチン酸レチノール、12-ヒドロキシステアリン酸、共役リノール酸などの油溶性皮膚有益活性成分、抗菌剤、防蚊剤などを、0.01~5%のレベルで含んでもよい。
【0059】
油相中にみられ得る別の成分は、油相安定剤である。例えば、少量(ナノエマルジョンの0.01~2重量%、好ましくは0.1~1重量%)の酸化防止剤を使用してもよい。使用される油がトリグリセリドである場合、使用され得る、好ましい酸化防止剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene:BHT)である。これは食品用酸化防止剤によく使用される。
【0060】
油に加えて、油相はC~C20、好ましくはC10~C14の脂肪酸を、ナノエマルジョン全体の0.8~10重量%、好ましくは1~7重量%の範囲の量で含有する。使用され得る脂肪酸の例として、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヤシ脂肪酸およびそれらの混合物が含まれる。好ましくは、ラウリン酸は共乳化剤として使用される。例えば、油相は、ナノエマルジョンの40~70重量%、好ましくは41~65重量%の範囲のペトロラタムおよびナノエマルジョンの0.9~8重量%の範囲のラウリン酸を含有することができる。
【0061】
水相
水相は難水溶性アニオン性界面活性剤であるアシルイセチオン酸ナトリウム、またはアルキルメチルタウリン酸ナトリウムまたは両方を含有する。これらの界面活性剤の溶解度は周囲温度で0.01~1%の範囲である。これらの界面活性剤は、C14以下のアシル鎖またはアルキル鎖を、65%超、好ましくは75%超、好ましくは80%超有する(好ましくは、C12、C14およびそれらの混合物であるアシル鎖またはアルキル鎖を75%超有する)。好ましいアシルイセチオネートは、ココイルイセチオネートまたはラウリルイセチオネートであり、かつ好ましいタウレートはココイルタウレートまたはラウリルタウレートである。これらの主に短鎖のアシル基により(例えば、C16およびC18の長鎖と比較して)、本発明のナノエマルジョンが組み入れられ、完全に配合されたクレンジング組成物(例えば、液体クレンジング組成物)になると、泡立ち能力の維持または向上に役立つことが保証される。
【0062】
アシルイセチオネート界面活性剤成分は典型的に、イセチオン酸塩と、8~20個の炭素原子および20未満のヨウ素価(不飽和度を測定する)を有する脂肪酸との反応によって調製し、例えば、
HORSOM+RCOOH→RCOORSO
ここでRは、2~4個の炭素原子を含有する脂肪族炭化水素基であり、
Mはアルカリ金属カチオン(例えば、ナトリウム、カリウム)、アンモニウムカチオンまたは置換したアンモニウムカチオンまたはその他の対イオンであり、かつ
Rは7~21個、好ましくは9~17個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基である。
【0063】
使用される処理条件によって、得られる脂肪アシルイセチオネート製品は40~85重量%の(反応により形成された)脂肪アシルイセチオネートと、50~約12重量%、典型的に40~20重量%の遊離脂肪酸との混合物であり得る。さらに、製品は、典型的に5重量%未満のレベルで存在するイセチオン酸塩、および少量(2重量%未満)のその他の不純物を含有し得る。脂肪アシルイセチオネートのアシル鎖長分布は、脂肪酸の鎖長分布に制御される。好ましくは、脂肪酸の混合物を、市販のアシルイセチオネート界面活性剤の調製に使用する。典型的に、ラウリン酸が豊富なヤシ脂肪酸を使用し、ココイルイセチオネートを得る。鎖長分布は、最終反応製品で特定の鎖長、例えばC12を増やすために、蒸留脂肪酸の異なるカットを混ぜ合わせることによりさらに調整され得る。得られるアシルイセチオネート界面活性剤(例えばイセチオン酸アルカリ金属塩と脂肪族脂肪酸との反応から得られる)は、得られるアシルイセチオネート製品の泡立ちおよびマイルドさの両方を提供するために、炭素原子数14個未満のアシル基を、(アシルイセチオネート反応製品基準の)65重量%超、好ましくは75重量%超有するべきである。得られるアシルイセチオネート界面活性剤および未反応脂肪酸は、周囲温度で典型的に水中に難溶性界面活性剤/脂肪酸結晶を形成する。
【0064】
本発明で特に有用である市販のアシルイセチオネート製品の例として、DEFIフレークがあり、ユニリーバ社製Dove(登録商標)固形石鹸の主成分である。DEFI(直接エステル化された脂肪イセチオネート)フレークは典型的に、約68~85重量%の脂肪アシルイセチオン酸ナトリウムおよび12~30重量%の遊離脂肪酸を含有する。65重量%超および好ましくは75%超の、得られるアシルイセチオネートのアシル基は、14個未満の炭素原子を有する。アシルイセチオネート界面活性剤製品は、皮膚に極めてマイルドであり、かつ非常に良好な泡立ちを有する。
【0065】
アシルイセチオネートのその他の供給先には、Huanggang Yongan(例えば、YA-SCI-65およびYA-SCI-85)、Innospec(例えば、Pureact SLI)、Clariant(例えば、Hostapon(登録商標)SCI-85P)が含まれる。
【0066】
アルキルメチルタウリン酸ナトリウムは、アシルイセチオネートに構造的および合成的に密接に関係している。アルキルメチルタウリン酸ナトリウムの前駆体、N-メチルタウリンは、イセチオン酸ナトリウムから経済的に調製することができ、
NCH+HOCHCHSOM→HN(CH)CHCHSONa+H
ここで、Mはアルカリ金属カチオン(例えば、ナトリウム、カリウム)、アンモニウムまたは置換したアンモニウムまたはその他の国である。
【0067】
例えば、N-メチルタウリンは脂肪酸とさらに反応し、アルキルメチルタウリン酸ナトリウムを得、
HN(CH)CHCHSONa+RCOOH→RCON(CH)CHCHSONa
Rは7~21個、好ましくは9~17個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基である。
【0068】
アシルイセチオネートと同様に、得られるアルキルタウレート製品、例えばアルキルメチルタウリン酸ナトリウムは、アルキルメチルタウリン酸ナトリウム、遊離脂肪酸およびその他の残基の混合物であり得る。使用される脂肪酸の鎖長分布が、アルキルタウレートの鎖長分布を決定づける。典型的に、ラウリン酸が豊富なヤシ脂肪酸を使用し、ココイルタウレートを得る。鎖長分布は、最終反応製品で、特定の鎖長、例えば12個の炭素原子を増やすために、蒸留脂肪酸の異なるカットを混ぜ合わせることによりさらに調整され得る。得られる脂肪アルキルタウレート界面活性剤は、得られる脂肪アルキルタウレート製品の泡立ちおよびマイルドさの両方を提供するために、14以下の炭素原子を有する脂肪アシル基を(アルキルタウレート反応製品基準の)65重量%超、好ましくは75%超有するべきである。ココイルメチルタウリン酸ナトリウムの水中での溶解度は、25Cで約1重量%である。それは20~35%の活性成分を有するペースト、例えばInnospec.社製Pureact WS Conc,30%活性物質として供給され得る。その他の供給先には、Galaxy(例えば、Galsoft SLT)、ソルベイノブケア(Geropon(登録商標)TC-42 LQ)、クローダ(Adinol CT95)およびクラリアント(Hostapon CT Paste)が含まれる。
【0069】
ココイルイセチオン酸ナトリウムおよびココイルメチルタウリン酸ナトリウムを使用し、ホモジナイザを5000psiで使用し、ペトロラタムのナノエマルジョンを唯一の乳化剤として調製すると、両方が400nmをかなり上回る油滴を得るが、さらにココイルイセチオン酸ナトリウム系エマルジョンは、貯蔵時に周囲温度で固体化し、ポンプ輸送不可能となる。これは、アシルイセチオン酸ナトリウムは、水中で溶解度に限りがあり、エマルジョンの水相中で結晶化し、エマルジョンをポンプ輸送不可能にするためである。ポンパビリティの問題を解決するための従来の方法は、ココイルイセチオン酸ナトリウムの溶解剤を水相で使用し、溶解を補助することである。このような溶解剤は、アシルイセチオン酸ナトリウムの頭部基と同様の、またはより大きい、およびより複雑である頭部基からなるイオン性界面活性剤である。アニオン性および両性の界面活性剤はどちらもこの目的に役立ち得る。本発明の主要な予想外の発見は、溶解剤を使用する代わりに、脂肪酸を共乳化剤として使用することで、アシルイセチオン酸ナトリウム系エマルジョンが固体化することを防止し、それによりポンプ輸送可能にするだけでなく、その油滴径を、脂肪酸を使用しない場合の油滴径の2分の1または3分の1まで著しく減少させる。脂肪酸、特にラウリン酸を共乳化剤として添加すると、ポンプ輸送可能なナノエマルジョンを形成し、より小さな油滴を効率的に形成することで大いに優れたナノエマルジョンを形成する。例えば、ホモジナイザに5000psiで1回通過させるだけで、約200nmのペトロラタム油液滴径を製造することが可能であった。(実施例1参照)
さらに、その他のマイルドなイオン性クレンジング界面活性剤もまた溶解剤として役立ち、水相で使用することができる。使用され得るアニオン性界面活性剤には、アミノ酸系界面活性剤、例えばアシルグルタメート、アシルアスパルテート、アシルグリシネート、アシルアラニナト、およびアシルサルコシネートが含まれる。ココベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン、およびコカミドプロピルヒドロキシスルタインなどの両性もまた使用することができ調製される。これらの共界面活性剤は典型的に、水相中の界面活性剤全体の30%未満のレベルで存在する。
【0070】
非イオン性界面活性剤は、典型的に不十分な泡立ちしかもたらさないので、好ましくは水相中で避けられるべきである。
【0071】
水相中の総界面活性剤は、ナノエマルジョン全体の1.6~10%、好ましくは4~8重量%を含む。述べたように、難溶性のアシルイセチオン酸ナトリウムまたはアシルメチルタウリン酸ナトリウムまたはそれらの混合物は、ナノエマルジョンの主な界面活性剤である。それらは、水相中の界面活性剤全体の70%超、好ましくは80%超を構成する。それらは当然、水相中に存在する唯一の界面活性剤であってよい。
【0072】
好ましくは、水相は1または複数の保存剤を含有してよい。典型的に、それらは0.01~1.0%、好ましくは、0.1~0.5重量%のレベルで存在する。
【0073】
さらに、ポリオールが水相に含まれてもよい。ポリオールの例には、グリセロール、ソルビトール、ヒドロキシプロピルソルビトール、ヘキシレングリコール1,3-ブチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、エトキシ化グリセリン、プロポキシ化グリセリンまたはそれらの混合物がある。水溶性の、アシルイセチオン酸のアルカリ金属塩(例えば、カリウム)またはアンモニウム塩および/またはアルキルタウリン酸のアルカリ金属塩(例えば、カリウム)またはアンモニウム塩を、主なアニオン性乳化剤として使用すると、水相中のポリオールのレベルは著しく高くなり、結果としてポリオール:水の重量比が、1:3~3:1になる。この比は、エマルジョンの製造効率を向上させ、高圧均質化の必要性をなくすことができる。アシルイセチオン酸ナトリウム塩および/またはアルキルタウリン酸ナトリウム塩は、水中で難溶性のため、主なアニオン性乳化剤として使用されると、水相中にポリオールは最小限含まれるか、または全く含まれないはずである(例えば、0~5%、好ましくは3%以下または2重量%以下)。
【0074】
本発明のナノエマルジョンは、400nm以下、好ましくは100nm~350nm、さらに好ましくは120~300nmの体積平均径(volume average diameter)(また、「体積平均径(volume mean diameter)」または「体積平均径(volume average size)」という用語に、および、それらの用語と互換的に使用される)を有する。
【0075】
これらの範囲の液滴径を有するナノエマルジョンは、本発明で高圧ホモジナイザまたは高圧ソノレータ(sonolator)を使用して得られる。使用される圧力は5000psi以下、好ましくは4500psi以下である。
【0076】
ナノエマルジョンの調製
ナノエマルジョンは典型的に2段階の工程で形成される。
【0077】
第一段階は粗エマルジョンを形成するために使用される。油相および水相を、各相が透明および均一になるように、それぞれ75℃まで(55°~75℃)加熱し(油相は55~75℃まで、または溶融するまで加熱)、次に油相を水相と混錬して混合した。混錬は、材料を撹拌タンクで混合し、その混合物をSilverson(登録商標)高せん断インラインミキサなどのロータ/ステータミキサに通すこと、またはScott(登録商標)Turbonミキサなどの高せん断ミキサにより容器で混合することを含む、従来の方法により達成できる。あるいは、粗エマルジョンは、コネチカット州のSonic Corporation製の標準的なソノレータ装置などの連続高せん断混合装置を使用して作製してもよい。粗エマルジョンを形成するために、普通はこれらの標準的なソノレータを、200~500psiの圧力で作動させる。
【0078】
工程の第2段階は、粗エマルジョンを高圧ホモジナイザに通し、ナノエマルジョンを形成することである。本発明で使用される高圧ホモジナイザは、BEE International社(米国、マサチューセッツ州) 製のNano DeBeeホモジナイザおよび、また米国コネチカット州のSonic Corporation製の高圧ソノレータ装置である。これらの装置は、400nm未満のナノエマルジョンを製造するために、1000~5000psiまでで作動できる。その他の供給元製のホモジナイザは、1000~5000psiまでで作動できる限り使用できる。疎水性油のペトロラタムまたはトリグリセリドはどちらの場合も、脂肪酸が共乳化剤として含まれる場合、所望のナノエマルジョン粒子径に達するためには、Nano DeBEEまたは高圧ソノレータに一回だけ通すことが求められる。
【0079】
実施例において、以下の用語を下記のように定義する。
【0080】
D[4,3]:体積平均径(volume average diameter)または体積平均径(volume mean diameter)または体積平均径(volume average size)
体積平均径は、Malvern Mastersizerで測定される。
【0081】
実施例1~4および比較例A
粗エマルジョンをロータ/ステータ高せん断装置(ESCO-LABOR AG,スイス)を備えた1リットルのESCOミキサで調製した。水相をESCOミキサに加え、75℃または透明になるまで加熱した。油相を個別の容器で混ぜ合わせ、75℃または溶融するまで加熱した。油相をESCOミキサで撹拌しながら徐々に水相に加え、かつ/またはロータ/ステータ装置により混錬した。油相すべての添加が完了し、粗エマルジョンがESCOミキサで形成されると、その粗エマルジョンを移動させ、高圧ホモジナイザNano DeBEEに1回通し、5000psiの処理圧力で、所望の液滴径に達した。
【表1】
【0082】
比較例Aでは、ココイルイセチオン酸ナトリウムは、ペトロラタムのナノエマルジョンの調製のための唯一の乳化剤である。油滴径は425nm、400nm超である。最も望ましくないことに、製造されるエマルジョンは、ココイルイセチオン酸ナトリウムの溶解度に限りがあるため、周囲温度で貯蔵するときに容器の形に固体化する。比較例Aで製造されるエマルジョンは、その固体の性質により周囲温度でポンプ輸送できない。実施例1で、3.5%の脂肪酸(ココイルイセチオン酸ナトリウムの溶解剤ではない)が共乳化剤として使用されると、油滴径は215nmに半減し、最も予想外に、製造されるナノエマルジョンがスキンクリームの稠度を有し、周囲温度で貯蔵時に容易にポンプ輸送できる。実施例2~4では、脂肪酸ならびに、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、およびココイルメチルタウリン酸ナトリウムなどのココイルイセチオン酸ナトリウムの溶解剤を、エマルジョン配合に組み入れると、191~234nmの範囲の液滴径のエマルジョン、および貯蔵時に周囲温度で容易にポンプ輸送可能であるエマルジョン状ローションを得る。
【0083】
実施例5~6および比較例B~C
実施例5~6および比較例B~Cを、実施例1~4および比較例Aと同様に調製した。
【表2】
【0084】
比較例Bでは、ココイルメチルタウリン酸ナトリウムが20%の分散液として供給される。その分散液は低い溶解度のため、白いペーストである。唯一の乳化剤として使用するとき、5000psiで均質化により処理した後、製造され得られるエマルジョンは、ココイルイセチオン酸ナトリウムが使用される比較例Aのものよりもかなり大きい600nmの油滴を得るが、前者はポンプ輸送可能で後者はポンプ輸送不可能であるのは、おそらく周囲温度での水中での溶解度に差があるためである。実施例5では、脂肪酸を共乳化剤として用い、得られるナノエマルジョンでは、油滴径が半分以上減少し262nmとなる。
【0085】
実施例7~10:ペトロラタムを60%使用し、水相でココイルイセチオン酸ナトリウム(YA-SCI-85)を主乳化剤とし、かつ油相でラウリン酸を共乳化剤とし、ナノエマルジョンを形成した。粗エマルジョンを、オフセンタータービン、スクレーパ、ならびにポンプおよびSilversonのインライン・ロータ/ステータ・ダブル・スクリーン・ミキサ(Model 150/250 MS)を取り付けられた再循環ループを備える、450lbsの撹拌ジャケット付きタンクで調製した。水相をタンクに加え75Cまで加熱し、一方、油相を個別のタンクで75Cまで加熱した。次に、ポンプで水相を再循環ループを通してポンプ輸送しながら、油相を、6000rpmで作動するインライン・ロータ/ステータ・ダブル・スクリーン・ミキサを有する再循環ループを介して、水相に投入した。油相の添加の完了後、撹拌タンクの混合物を、6000rpmで作動するインライン・ロータ/ステータ・ダブル・スクリーン・ミキサを有する再循環ループを通して、3理論通過回数(タンク中の混合物の容積/再循環ループ内の流速)ポンプ輸送した。次に粗エマルジョンを、最大2500psiの圧力で1回のみ高圧ソノレータを通してポンプ輸送し、ナノエマルジョンを形成した。
【表3】