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  • 特許-複合材料分離層 図1
  • 特許-複合材料分離層 図2A
  • 特許-複合材料分離層 図2B
  • 特許-複合材料分離層 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】複合材料分離層
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/056 20100101AFI20221222BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20221222BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20221222BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20221222BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20221222BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20221222BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20221222BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20221222BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20221222BHJP
【FI】
H01M10/056
H01M50/434
H01M50/449
H01M10/0565
H01M10/0562
H01M10/052
H01M50/451
H01M50/446
H01M50/414
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021052491
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2021170527
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】109112320
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】512306818
【氏名又は名称】輝能科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】PROLOGIUM TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.6-1, Ziqiang 7th Rd., Zhongli Dist., Taoyuan City, Taiwan
(73)【特許権者】
【識別番号】512316932
【氏名又は名称】プロロジウム ホールディング インク
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】楊思▲ダン▼
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-214494(JP,A)
【文献】国際公開第2014/171290(WO,A1)
【文献】特開2013-125750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05- 10/39
H01M 50/40- 50/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料分離層であって、
イオン導電性で、孔不含であり、主にイオン導電材料から構成される分離層本体と、
前記分離層本体の片面上に配置され、前記分離層本体の機械的強度より高い機械的強度を有し、変形しない構造支持材料および結合剤から構成される、構造強化層と、を含み、
前記イオン導電材料は、金属イオンを内部に移動させることが可能なポリマー系材料、金属塩を解離させ、可塑剤として機能させることができる添加物、およびイオン供給材料、を含むイオン導電材料であり、
前記イオン導電材料は、結晶化度を低下させる結晶成長抑制材料をさらに含み、
前記構造強化層の変形しない構造支持材料は、パッシブセラミック材料または酸化物系固体電解質から選択されるセラミック材料であることを特徴とする、複合材料分離層。
【請求項2】
前記分離層本体の厚さは、5~45ミクロンであり、前記構造強化層の厚さは、5~45ミクロンであることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料分離層。
【請求項3】
前記変形しない構造支持材料がパッシブセラミック材料から選択される場合、前記構造強化層は、ソフト-固体電解質、イオン液体、イオン液体電解質、ゲル電解質、液体電解質またはこれらの組み合わせから選択される変形可能な電解質材料をさらに含むことを特徴とする、請求項に記載の複合材料分離層。
【請求項4】
前記結合剤は、金属イオンを伝導し得ない材料から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料分離層。
【請求項5】
前記結合剤は、イオン導電材料から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料分離層。
【請求項6】
前記イオン供給材料は、リチウム塩であることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料分離層。
【請求項7】
前記ポリマー系材料は、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(PEGDMA)、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル(PEGME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ポリ[エチレンオキシド-co-2-(2-メトキシエトキシ)エチルグリシジルエーテル](PEO/MEEGE)、超分岐ポリマー、またはポリニトリルから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料分離層。
【請求項8】
前記添加物は、可塑剤、プラスチック結晶電解質(PCE)またはイオン液体であることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料分離層。
【請求項9】
前記構造強化層は、ソフト-固体電解質、イオン液体、イオン液体電解質、ゲル電解質、液体電解質またはこれらの組み合わせから選択される変形可能な電解質材料をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の複合材料分離層。
【請求項10】
前記分離層本体は、セラミック材料が添加され、前記イオン導電材料の容積含有率は、前記セラミック材料の容積含有率よりもはるかに高いことを特徴とする、請求項1に記載の複合材料分離層。
【請求項11】
前記セラミック材料は、パッシブセラミック材料または酸化物系固体電解質から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の複合材料分離層。
【請求項12】
前記分離層本体の反対側上に配置された別の構造強化層をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の複合材料分離層。
【請求項13】
前記構造強化層の反対側上に配置された別の分離層本体をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の複合材料分離層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月13日に台湾特許庁に出願された台湾特許出願第109112320号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、電気化学系の分離層、特に、全体の厚さが大きく低減できる複合材料分離層に関する。
【背景技術】
【0003】
エネルギー危機およびエネルギー革新の時代には、二次化学エネルギー、特に、ナトリウムイオン電池、アルミニウムイオン電池、マグネシウムイオン電池またはリチウムイオン電池などの高比エネルギーおよび比出力を有する金属イオン電池は、極めて重要な役割を果たす。これらの電池は、情報および家庭用電化製品に適用され、近年では、輸送エネルギーの分野にまで広がっている。
【0004】
金属イオン電池の場合には、ポリマーにより形成された従来の分離膜は、高温下で容易に波打った状態になる。そのため、分離膜の強化材として、または分離膜の主要部として、様々な種類の耐熱材料が開発されている。
【0005】
例えば、ポリマー材料をベース材料基材とし、セラミック強化材料によるコーティングを使用する分離膜の場合では、分離膜の熱安定性をわずかに改良できるが、それでも、分離膜の収縮または波打ち状態は回避できない。
別の選択肢として、セラミック材料が分離膜の主材料として使用され、同様に接着剤を使用してセラミック材料が結合される。このような構造は、分離膜の熱安定性を大きく改善できる。しかし、分離膜は、セラミック粉末を多層に積層させて、直線状貫通孔の形成を避けるためには、十分な厚さ(約90ミクロン~300ミクロン)にしなければならない。電池への適用の場合、この比較的大きい厚さは、構造を有する分離膜にとってボトルネックとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、上述の問題を軽減または取り除くために、低減された厚さを有する耐衝撃性分離層を提供する。
【0007】
本発明の目的は、全体厚さを大きく低減させた複合材料分離層を提供することである。また、複合材料分離層は、変形による正極と負極の接触に起因する短絡を防止するように、衝撃に耐えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、分離層本体および分離層本体の片面上に配置された構造強化層を含む複合材料分離層を開示する。分離層本体は、1)イオン導電性を有すること、2)孔がないこと(ソフト短絡が起こらない)、3)接着剤を有すること、を特徴とする。分離層本体は、主にイオン導電材料から構成される。
【0009】
構造強化層は、分離層本体の片面上に配置され、1)イオン導電性を有すること、2)分離層本体の機械的強度より高い機械的強度を有し、力により容易に変形しないこと、3)分離層本体と比較してより高い熱安定性を有すること、および4)分離層本体に比べて孔を有すること、を特徴とする。構造強化層は、変形しない構造支持材料および結合剤から構成される。
【0010】
本発明の適用性のさらなる範囲について、以降で示される詳細な説明から明らかにする。
但し、詳細な説明および具体的実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、これは実例にすぎず、当業者はこの詳細な説明から本発明の趣旨および範囲内で様々な変更および修正が可能であることを理解されたい。
本発明は、例示の目的でのみ開示され、本発明を限定するものではない発明を実施するための形態から、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の複合材料分離層の一実施形態の概略図である。
図2A】本発明の複合材料分離層の別の実施形態の概略図である。
図2B】本発明の複合材料分離層の別の実施形態の概略図である。
図3】電気化学系に適用された本発明の複合材料分離層の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、特定の実施形態に関して、特定の図面を参照して記載されるが、これに限定されるものではなく、請求項によってのみ定められる。請求項中のどの参照符号も、本発明の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。また、記載された図面は、単に概略であり限定するものではない。図面では、いくつかの要素のサイズは、誇張され、例示の目的のため縮尺通りに描かれていない場合がある。
【0013】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のものにすぎず、一般的な発明概念を制限することを意図していない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈により別義が明示されない限り、複数形も同様に包含することが意図されている。別段に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術的用語および科学的用語を含む)は、例示的実施形態が属する分野の当業者に通常理解されているものと同じ意味を有する。よく使われる辞書で定義されるものなどの用語は、当該技術との関連で、それらの意味に一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書中で明示的にそのように定義されない限り、理想化されたまたは過度に格式ばった意味に解釈されるべきではないこともさらに理解されよう。
【0014】
本明細書を通して「一実施形態(one embodiment)」または「ある実施形態(an embodiment)」への参照は、その実施形態に関して記載された特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書における種々の箇所におけるフレーズ「一実施形態では」または「ある実施形態では」は、必ずしも同じ実施形態を参照することではないが、そうである場合もある。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において、この開示内容から当業者に明らかであるような適切な方法で組み合わせることができる。
【0015】
本発明の説明では、「設置(installation)」、「接続される(connected)」、および「配置される(disposed)」は、広く理解されるべきであり、固定でも脱着式でもよく、例えば、機械的または電気的であってよく、直接的に接続されても、または中間媒体を介して間接的に接続されてもよく、これは、2つの要素間の内部接続でもあり得る。本発明における上記用語の特定の意味は、当業者により特定の環境で理解できる。
【0016】
第一に、本発明の複合材料分離層は、リチウム電池などの電気化学系(electrochemical system)において正極と負極を分離してそれらの間の物理的接触を防止するために適合される。
図1を参照する。本発明の複合材料分離層50は、分離層本体10および分離層本体10の片面上に配置された構造強化層20を含む。図1は、複合材料分離層50の分離層本体10の側面図を示す。分離層本体10は、実際には、矩形平行六面体(限定されないが)などの、基本的に板形状またはシート形状である。分離層本体10の形状は、適用される電気化学系に応じて変更してよい。従って、分離層本体10は、示すように、上面および反対側の下面を有する。
構造強化層20は、分離層本体10の片面(表面の1つ)上に配置されるが、位置関係は、図に示すものに限定されない。複合材料分離層50は、任意の配向で利用されるように適合させ得る。分離層本体の厚さは、5~45ミクロンであり、構造強化層の厚さは、5~45ミクロンである。
【0017】
さらに、図2Aおよび2Bを参照する。別の構造強化層21は、分離層本体10の反対側に配置され、または別の分離層本体11は、構造強化層20の反対側に配置されてよい。
【0018】
本発明の分離層本体10は、1)イオン導電性を有すること、2)孔のないこと、および3)接着剤を有すること、を特徴とする。従って、分離層本体10は、主にイオン導電材料から構成される。分離層本体10に孔がないため、ソフト短絡が起こらないであろう。ここで、用語「孔がない」とは、分離層本体10がめくら穴または貫通孔をなんら有さないことを意味する。また、分離層本体10は、主にイオン導電材料から構成される。従って、分離層本体10は、100%のイオン導電材料で形成されてもよく、または一定量のセラミック材料を添加されてもよい。イオン導電材料の容積含有率は、セラミック材料の容積含有率よりもはるかに高くなければならない。セラミック材料は、酸化物系固体電解質またはパッシブセラミック材料から選択される。
【0019】
分離層本体10の接着は、イオン導電性材料の選択により達成され得る。従って、接着は、分離層本体10および構造強化層20、または適用される電気化学系の電極との間で改善される。非接着性イオン導電性材料が選択される場合には、追加の接着剤が分離層本体10中に添加して、分離層本体10を接着性があってもよい。
【0020】
構造強化層20は、1)イオン導電性を有すること、2)より高い機械的強度を有し、力により容易に変形しないこと、3)分離層本体10に比べてより高い熱安定性を有すること、および4)分離層本体10に比べて孔を有すること、を特徴とする。
【0021】
構造強化層20は、分離層本体10の機械的強度より高い機械的強度を有し、力により変形しない。従って、分離層本体10の機械的強度が改善され、分離層本体10が衝撃を受ける場合であっても、構造強化層20の存在のために正極と負極の接触を回避できる。構造強化層20は、変形しない構造支持材料および結合剤から構成される。
【0022】
変形しない構造支持材料は、パッシブセラミック材料または酸化物系固体電解質から選択されるセラミック材料である。TiO、Al、SiOなどのパッシブセラミック材料は、イオン導電性を持たずに機械的強度を改善するはずである。酸化物系固体電解質は、リチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)電解質またはリン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)電解質およびそれらの誘導体である。分離層本体10に添加されるセラミック材料は、同一材料であってもよい。
【0023】
結合剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリイミド(PI)またはポリアクリル酸(PAA)などの金属イオンを伝導しない材料から選択されてよい。また、結合剤は、金属イオンを伝導し得るイオン導電性材料から選択されてよい。
【0024】
他方では、構造強化層20は、変形可能な電解質材料をさらに含み、これは、変形しない構造支持材料に依存して決定される。構造強化層20は、結合剤と混合された変形しない構造支持材料の積層から基本的に形成される。その形成された孔は、変形可能な電解質材料で充填される。
変形しない構造支持材料がパッシブセラミック材料から選択される場合、変形可能な電解質材料は、孔に充填するために、ソフト-固体電解質、イオン液体、イオン液体電解質、ゲル電解質、液体電解質またはこれらの組み合わせから選択される。これによって、イオン導電性が増大するであろう。変形しない構造支持材料は、酸化物系固体電解質から選択される場合、変形可能な電解質材料を添加してもしなくてもよい。
【0025】
イオン導電材料は主に、ポリマー系材料、添加物、およびイオン供給材料から構成される。ポリマー系材料は、リチウムイオンなどの金属イオンをその材料の内部に移動させることができる。添加物は、リチウム塩など金属塩を解離可能であり、可塑剤として機能する。また、イオン導電材料は、結晶成長抑制材料をさらに含み、イオン導電材料の結晶格子状態を非晶質にし、イオン伝導を容易にする。
【0026】
リチウムイオンなどの金属イオンを、その材料の内部への移動を可能にする上述のポリマー系材料は、それ自体リチウムイオンなどの金属イオンを持たないが(原材料の状態では、または電気化学反応の初めに)、リチウムイオンなどの金属イオンを伝導できる材料を意味する。例えば、ポリマー系材料は、ポリエチレンオキシド(PEO)などの塩を含まない直鎖構造材料、またはPEO-LiCFSO、PEO-LiTFSI-Al複合材料固体ポリマー、PEO-LiTFSI-10%TiO複合材料固体ポリマー、PEO-LiTFSI-10%HNT複合材料固体ポリマー、PEO-LiTFSI-10%MMT複合材料固体ポリマー、PEO-LiTFSI-1%LGPS複合材料固体ポリマーまたはPEO-LiClO-LAGPなどの既に塩としてイオン供給材料を含んでいるPEOなどの直鎖構造材料であってよい。
または、リチウムイオンなどの金属イオンが伝導可能であることに加えて、ポリマー系材料はまた、架橋構造により膜形成の機械的強度を増大できる下記などの材料である。ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(PEGDMA)、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル(PEGME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ポリ[エチレンオキシド-co-2-(2-メトキシエトキシ)エチルグリシジルエーテル](PEO/MEEGE)、ポリ[ビス(トリエチレングリコール)ベンゾエート]などの超分岐ポリマー、またはポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(メタクリロニトリル)(PMAN)またはポリ(N-2-シアノエチル)エチレンアミン)(PCEEI)などのポリニトリル。
【0027】
リチウム塩類などの金属塩を解離させることができ、可塑剤として機能する添加物は、可塑剤、プラスチック結晶電解質(PCE)またはイオン液体から選択してよく、プラスチック結晶電解質(PCE)は、コハク酸ニトリル(SN)[ETPTA//SN;PEO/SN;PAN/PVA-CN/SN]、N-エチル-N-メチルピロリジニウム[Cmpyr]+アニオン、N,N-ジエチルピロリジニウム[CEpyr]、四級アルキルアンモニウム、n-アルキルトリメチルホスホニウム[P1,1,1,n]、デカメチルフェロセニウム[Fe(CMe]、1-(N,N-ジメチルアンモニウム)-2-(アンモニウム)エタントリフレート[(DMEDAH][Tf])であってよい(アニオン=[FSI]、[FSA]、[CFSA]、[BETA]、LiSi(CH(SO)またはトリメチル(リチウムトリメチルシリルスルフェート)。
イオン液体は、アニオン/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、アニオン/ビス(フルオロスルホニル)イミド、もしくはアニオン/トリフルオロメタンスルホネートなどのイミダゾリウム、またはアニオン/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどのアンモニウム、またはアニオン/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、アニオン/ビス(フルオロスルホニル)イミドなどのピロリジニウム、またはアニオン/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、アニオン/ビス(フルオロスルホニル)イミドなどのピペリジニウムから選択してよい。
【0028】
イオン供給材料は、LiTFSI、LiFSI、LIBF、またはLiPFなどのリチウム塩であってよい。
【0029】
結晶成長抑制材料は、ポリ(エチルメタクリレート)(PEMA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(オキシエチレン)、ポリ(シアノアクリレート)(PCA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリ塩化ビニル(PVC)、PVC-PEMA、PEO-PMMA、ポリ(アクリロニトリル-co-メチルメタクリレート)P(AN-co-MMA)、PVA-PVdF、PAN-PVA、PVC-PEMA、ポリ(エチレンオキシド-co-エチレンカーボネート)(PEOEC)、ポリヘドラールオリゴメリックシルスセスキオキサン(POSS)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリ(プロピレンカーボネート)(PPC)、ポリ(エチルグリシジルエーテルカーボネート)(P(Et-GEC)、またはポリ(t-ブチルグリシジルエーテルカーボネート)P(tBu-GEC)などのポリカーボネート、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)などの環状カーボネート、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリ(ジメチルシロキサン-co-エチレンオキシド)P(DMS-co-EO)、またはポリ(シロキサン-g-エチレンオキシド)などのポリシロキサン系、エチレンアジペート、エチレンスクシネート、またはエチレンマロネートなどのポリエステル、などのさらに結晶性を低下させる材料から選択される。さらに、結晶成長抑制材料は、ポリ(ビニリデンジフルオリドヘキサフルオロプロピレン)(PvdF-HFP)、ポリ(ビニリデンジフルオリド)(PvdF)またはポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)であってよい。
【0030】
図3を参照する。電気化学系に適用する場合には、第一の電極30、第二の電極40および第一の電極30と第二の電極40との間に配置された複合材料分離層50を含む。これは例示として相対的な位置を図中で示したに過ぎず、この相対的厚さに限定されないことに留意されたい。本発明の全体の複合材料分離層50の厚さは、従来の分離層に比べて大きく低減されている。また、第一の電極30は、正極または負極であってよく、従って、第二の電極40は、負極または正極であってよい。換言すれば、複合材料分離層50の分離層本体10は、正極または負極に接触してもよい。
分離層本体10が接着性があるため、分離層本体10および電極は極めて良好に結合される。さらに、本発明の複合材料分離層50は、金属イオンを供給できるある程度の材料を含む(上述のように)が、これは、電気化学系に金属イオンを主に供給する構成要素ではない。第一の電極30および第二の電極40は、主に金属イオンを供給するリチウム金属層などの活物質を含む必要がある。複合材料分離層50は、第一の電極30と第二の電極40を分離する役割を果たし、直接接触および短絡を防ぐ。
【0031】
同様に、図2A~2Bの本発明の実施形態も電気化学系に適用できるが、分かりやすくするために、説明を反復することは省略する。さらに、前出の図中の第一の電極30および第二の電極40は、例示にすぎず、それらが単層状構造であることに限定するものではない。よく知られた電気化学系では、電極は少なくとも集電体および活物質層を含む。
【0032】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの電気化学系に適合させた複合材料分離層を提供する。分離層本体は、イオン導電性で、孔不含であり、分離層全体の機械的強度は、構造強化層により高められる。本発明では、セラミック粒子を積層することによる蟻穴を形成する必要はない。従って、本発明の複合材料分離層の厚さは、従来の分離層に比べて大きく低減されている。
【0033】
以上に記載した本発明は、様々な方法で変更し得ることは明らかであろう。このような変更は、本発明の趣旨および範囲からの乖離であると見なされるべきものではなく、また、当業者には明らかである全てのこのような修正は、次の請求項の範囲内に含まれることが意図されている。
図1
図2A
図2B
図3