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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】多関節ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/10 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
B25J9/10 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020571978
(86)(22)【出願日】2019-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2019005252
(87)【国際公開番号】W WO2020165989
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】太田 章博
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/042878(WO,A1)
【文献】特開2004-188530(JP,A)
【文献】実開昭61-035775(JP,U)
【文献】特開2006-289588(JP,A)
【文献】特開2007-090493(JP,A)
【文献】特開2018-094654(JP,A)
【文献】特開2018-202608(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0224275(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 5/00-19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の軸と、
前記複数の軸をそれぞれ駆動する複数の駆動装置と、
前記複数の軸の原点を確立する原点確立動作を行う制御装置と、
を備えた多関節ロボットであって、
前記制御装置は、作業者によって前記原点確立動作の開始指示がされた後に、前記原点確立動作を開始する前の前記多関節ロボットの姿勢である開始前姿勢を表示装置に表示し、
その後、前記多関節ロボットの姿勢を前記開始前姿勢に変形するための前記作業者の入力装置への入力に従って前記各駆動装置を駆動制御することにより前記多関節ロボットの姿勢を変形し、
その後、前記原点確立動作を行う、多関節ロボット。
【請求項2】
複数の軸と、
前記複数の軸をそれぞれ駆動する複数の駆動装置と、
を備えた多関節ロボットであって、
前記複数の軸の原点を確立する原点確立動作を開始する前の前記多関節ロボットの姿勢である開始前姿勢を表示装置に表示し、
その後、前記多関節ロボットの姿勢を前記開始前姿勢に変形するための作業者の指示に従って前記各駆動装置を駆動制御することにより前記各軸をそれぞれ駆動させて、前記多関節ロボットの姿勢を変形し、
その後、前記原点確立動作を行う、制御装置を備えた、多関節ロボット。
【請求項3】
前記多関節ロボットは、テーブル駆動装置によって駆動されるテーブル駆動軸により回転駆動されるテーブルと、前記テーブルに設けられて、直列に連結された複数の軸を有するアーム部と、から構成され、
前記開始前姿勢は、前記アーム部の前記複数の軸の原点を確立する原点確立動作を開始する前の前記アーム部の姿勢であるアーム部開始前姿勢を含んでいることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多関節ロボット。
【請求項4】
前記多関節ロボットは、前記アーム部に設けられた把持部及び前記把持部を駆動する把持部駆動軸をさらに備え、
前記制御装置は、前記多関節ロボットの姿勢を変形した後であって、前記把持部駆動軸の原点確立動作を実施する前に、前記多関節ロボットの姿勢を把持部開始前姿勢に変形することを特徴とする請求項3に記載の多関節ロボット。
【請求項5】
前記多関節ロボットは、テーブル駆動装置によって駆動されるテーブル駆動軸により回転駆動されるテーブルと、前記テーブルに設けられて、直列に連結された複数の軸を有するアーム部と、から構成され、
前記制御装置は、前記アーム部の前記複数の軸の原点を確立するアーム部原点確立動作を実施する直前に、前記開始前姿勢を前記表示装置に表示し、
その後、前記作業者の指示に従って前記各駆動装置を駆動制御することにより前記各軸をそれぞれ駆動させて、前記多関節ロボットの姿勢を変形し、
その後、前記アーム部原点確立動作を行う請求項2に記載の多関節ロボット。
【請求項6】
前記制御装置は、前記多関節ロボットの姿勢を変形した後であって前記原点確立動作を行う前に、
前記多関節ロボットの姿勢が、前記開始前姿勢となっているか否かを撮像装置の撮像結果に基づいて判定する請求項1または請求項2に記載の多関節ロボット。
【請求項7】
複数の軸と、
前記複数の軸をそれぞれ駆動する複数の駆動装置と、
前記複数の軸の原点を確立する原点確立動作を行う制御装置と、
を備えた多関節ロボットであって、
前記制御装置は、作業者によって前記原点確立動作の開始指示がされた後に、
前記多関節ロボットの姿勢を撮像装置により撮像し、
その後、前記撮像装置による撮像結果に基づいて前記各駆動装置を駆動制御することにより前記多関節ロボットの姿勢を、前記原点確立動作を開始する前の前記多関節ロボットの姿勢である開始前姿勢に変形し、
その後、前記原点確立動作を行う、多関節ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、多関節ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、多関節ロボットは、軸の原点調整が行われている。原点調整の一形式として、特許文献1には、最初に作業者が調整する軸を選択するものが開示されている。さらに、選択した後も原点調整が完了するまでの間、作業者が表示部に表示された内容に対応して操作部を操作するとともに、多関節ロボットがその操作に応じて動作することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-289588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載されている多関節ロボットにおいては、軸の原点調整をする際に、作業者の操作による動作が多いため、原点調整を再現性よく実施できないという問題があった。
【0005】
このような事情に鑑みて、本明細書は、軸の原点調整を高い再現性にて行うことができる多関節ロボットを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、複数の軸と、前記複数の軸をそれぞれ駆動する複数の駆動装置と、前記複数の軸の原点を確立する原点確立動作を行う制御装置と、を備えた多関節ロボットであって、前記制御装置は、作業者によって前記原点確立動作の開始指示がされた後に、前記原点確立動作を開始する前の前記多関節ロボットの姿勢である開始前姿勢を表示装置に表示し、その後、前記多関節ロボットの姿勢を前記開始前姿勢に変形するための前記作業者の入力装置への入力に従って前記各駆動装置を駆動制御することにより前記多関節ロボットの姿勢を変形し、その後、前記原点確立動作を行う、多関節ロボットを開示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、原点調整すべき軸の順番を自動的に設定し、ひいては全ての軸の原点調整を自動的に実施することが可能となる。よって、多関節ロボットは、軸の原点調整を高い再現性にて行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】多関節ロボットが適用された加工システム10を示す正面図である。
図2図1に示す旋盤モジュール30Aを示す側面図である。
図3図1に示すドリミルモジュール30Bを示す側面図である。
図4】多関節ロボット60を示す側面図である。多関節ロボット60の把持部開始前姿勢を示す側面図である。
図5】多関節ロボット60を示す平面図である。
図6】多関節ロボット60の一部を示す下方斜視図である。
図7】多関節ロボット60の走行部61の一部を示す上方斜視図である。
図8】多関節ロボット60の第1アーム71及び第2アーム73を主として示す上方斜視図である。
図9】多関節ロボット60の第2アーム73及び把持部75を主として示す上方斜視図である。
図10】多関節ロボット60を示すブロック図である。
図11図10に示す制御装置80にて実施されるプログラムを表すフローチャートである。
図12】多関節ロボット60の開始前姿勢を示す側面図である。
図13図10に示す制御装置80にて実施されるプログラム(X軸原点確立)を表すフローチャートである。
図14図10に示す制御装置80にて実施されるプログラム(D軸原点確立)を表すフローチャートである。
図15図10に示す制御装置80にて実施されるプログラム(A軸原点確立)を表すフローチャートである。
図16】多関節ロボット60の第2アーム開始前姿勢を示す側面図である。
図17図10に示す制御装置80にて実施されるプログラム(B軸原点確立)を表すフローチャートである。
図18図10に示す制御装置80にて実施されるプログラム(C軸原点確立)を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(加工システム)
以下、多関節ロボットが適用された加工システムの一例について説明する。加工システム10は、図1に示すように、複数のベース20と、そのベース20に設けられた複数(本実施形態では10個)の作業機モジュール30(加工装置)と、多関節ロボット(以下、ロボットと称する場合もある。)60と、を備えている。以下の説明では、加工システム10に関する「前後」,「左右」,「上下」を、加工システム10の正面側から見た場合における前後,左右,上下として扱うこととする。
【0010】
作業機モジュール30は、複数種類あり、旋盤モジュール30A、ドリミルモジュール30B、加工前ストックモジュール30C、加工後ストックモジュール30D、検測モジュール30E、仮置モジュール30Fなどである。
【0011】
(旋盤モジュール)
旋盤モジュール30Aは、旋盤がモジュール化されたものである。旋盤は、加工対象物であるワークWを回転させて、固定した切削工具43aで加工する工作機械である。旋盤モジュール30Aは、図2に示すように、可動ベッド41、主軸台42、工具台43、工具台移動装置44、加工室45、走行室46及びモジュール制御装置47を有している。
【0012】
可動ベッド41は、複数の車輪41aを介してベース20に設けられたレール(不図示)上を前後方向に沿って移動する。主軸台42は、ワークWを回転可能に保持するものである。主軸台42は、前後方向に沿って水平に配置された主軸42aを回転可能に支持する。主軸42aの先端部にはワークWを把持するチャック42bが設けられる。主軸42aは、回転伝達機構42cを介してサーボモータ42dによって回転駆動される。
【0013】
工具台43は、切削工具43aに送り運動を与える装置である。工具台43は、いわゆるタレット型の工具台であり、ワークWを切削する複数の切削工具43aが装着される工具保持部43bと、工具保持部43bを回転可能に支持するとともに所定の切削位置に位置決め固定可能である回転駆動部43cを有している。
【0014】
工具台移動装置44は、工具台43ひいては切削工具43aを上下方向(Y軸方向)及び前後方向(Z軸方向)に沿って移動させる装置である。工具台移動装置44は、工具台43をY軸方向に沿って移動させるY軸駆動装置44aと、工具台43をZ軸方向に沿って移動させるZ軸駆動装置44bとを有している。
【0015】
Y軸駆動装置44aは、可動ベッド41に設けられたコラム48に対して上下方向に沿って摺動可能に取り付けられたY軸スライダ44a1と、Y軸スライダ44a1を移動させるためのサーボモータ44a2とを有している。Z軸駆動装置44bは、Y軸スライダ44a1に対して前後方向に沿って摺動可能に取り付けられたZ軸スライダ44b1と、Z軸スライダ44b1を移動させるためのサーボモータ44b2とを有している。
【0016】
加工室45は、ワークWを加工するための部屋(空間)であり、加工室45内には、チャック42b、工具台43(切削工具43a、工具保持部43b及び回転駆動部43c)が収容されている。加工室45は、前壁45a、天井壁45b、左右壁及び後壁(何れも不図示)によって区画されている。前壁45aには、ワークWが入出される入出口45a1が形成されている。入出口45a1は、図示しないモータによって駆動するシャッタ45cによって開閉される。
【0017】
走行室46は、加工室45の入出口45a1に臨んで設けられた部屋(空間)である。走行室46は、前壁45a及び前面パネル31によって区画されている。走行室46内は、後述するロボット60が走行可能である。モジュール制御装置47は、回転駆動部43c、工具台移動装置44などを駆動させる装置である。
【0018】
(ドリミルモジュール)
ドリミルモジュール30Bは、ドリルによる孔開けやミーリング加工等を行うマシニングセンタがモジュール化されたものである。マシニングセンタは、固定したワークWに対し、回転する工具(回転工具)を押し当てて加工する工作機械である。ドリミルモジュール30Bは、図3に示すように、可動ベッド51、主軸ヘッド52、主軸ヘッド移動装置53、ワークテーブル54、加工室55、走行室56及びモジュール制御装置57を有している。
【0019】
可動ベッド51は、複数の車輪51aを介してベース20に設けられたレール(不図示)上を前後方向に沿って移動する。主軸ヘッド52は、主軸52aを回転可能に支持する。主軸52aの先端(下端)部には、ワークWを切削する切削工具52b(例えば、ドリルやエンドミル等)が装着可能である。主軸52aは、サーボモータ52cによって回転駆動される。
【0020】
主軸ヘッド移動装置53は、主軸ヘッド52ひいては切削工具52bを上下方向(Y軸方向)及び前後・左右方向(X-Z軸方向)に沿って移動させる装置である。主軸ヘッド移動装置53は、主軸ヘッド52をY軸方向に沿って移動させるY軸駆動装置53aと、主軸ヘッド52をX-Z軸方向に沿って移動させるX-Z軸駆動装置53bとを有している。X-Z軸駆動装置53bは、可動ベッド51に設けられた本体58に対して前後・左右方向に沿って摺動可能に取り付けられている。Y軸駆動装置53aは、X-Z軸駆動装置53bに対して上下方向に沿って摺動可能に取り付けられている。
【0021】
ワークテーブル54は、ワークWを固定保持する。ワークテーブル54は、本体58の前面に設けられたワークテーブル回転装置54aに固定されている。ワークテーブル回転装置54aは、前後方向に沿って延びる軸線回りに回転駆動される。これにより、ワークWを傾斜させた状態で切削工具52bにより加工することができる。なお、ワークテーブル54は、本体58の前面に直接固定してもよい。
【0022】
加工室55は、ワークWを加工するための部屋(空間)であり、加工室55内には、主軸52a、切削工具52b、ワークテーブル54、ワークテーブル回転装置54aが収容されている。加工室55は、前壁55a、天井壁55b、左右壁及び後壁(何れも不図示)によって区画されている。前壁55aには、ワークWが入出される入出口55a1が形成されている。入出口55a1は、図示しないモータによって駆動するシャッタ55cによって開閉される。
【0023】
走行室56は、加工室55の入出口55a1に臨んで設けられた部屋(空間)である。走行室56は、前壁55a及び前面パネル31によって区画されている。走行室56内は、後述するロボット60が走行可能である。なお、隣り合う走行室46(または56)は、加工システム10の並設方向全長に亘って連続する空間を形成する。また、モジュール制御装置57は、主軸52a(サーボモータ52c)、主軸ヘッド移動装置53などを駆動させる装置である。
【0024】
加工前ストックモジュール30Cは、加工システム10にワークを投入するモジュール(ワーク投入モジュール)である。加工後ストックモジュール30Dは、加工システム10によって実施されるワークに対する一連の加工が完了した完成品を収納するモジュールである。
【0025】
検測モジュール30Eは、ワーク(例えば加工後のワーク)を検測するものである。仮置モジュール30Fは、加工システム10による一連の加工工程中において、ワークを仮置きするためのものである。検測モジュール30E及び仮置モジュール30Fは、旋盤モジュール30A及びドリミルモジュール30Bと同様に、走行室(不図示)を有している。
【0026】
(ロボット)
ロボット60は、走行可能であり、走行部61、本体部62及び移動規制部65を有している。
【0027】
(走行部)
走行部61は、走行室46,56内を左右方向(作業機モジュール30の並設方向:X軸方向)に沿って走行可能である。走行部61は、主として図4に示すように、走行駆動装置61bによって走行部本体61aを左右方向に沿って直動するための走行駆動軸(以下、X軸と称する場合もある。)61cを有している。走行部本体61aの背部には、走行駆動軸61cのスライダ61c2が取り付けられている。走行駆動軸61cは、ベース20の前側面に設けられて水平方向(左右方向)に沿って延在するレール61c1と、レール61c1に摺動可能に係合する複数のスライダ61c2とから構成されている。
【0028】
走行部本体61aは走行駆動装置61bが設けられている。走行駆動装置61bは、サーボモータ61b1、駆動力伝達機構(不図示)、ピニオン61b2、ラック61b3などから構成される。サーボモータ61b1の回転出力によってピニオン61b2が回転する。ピニオン61b2はラック61b3に歯合する。ラック61b3は、ベース20の前側面に設けられて水平方向(左右方向)に沿って延在する。
【0029】
サーボモータ61b1は、ロボット制御装置80(図10参照。以下、制御装置80と称する場合もある。)に接続されている。サーボモータ61b1は、制御装置80からの指示に従って回転駆動され、ピニオン61b2がラック61b3を転動する。これにより、走行部本体61aは、走行室46,56内を左右方向に沿って走行可能である。また、サーボモータ61b1は、サーボモータ61b1に流れる電流を検知する電流センサ61b4(図10参照)が内蔵されている。サーボモータ61b1は、サーボモータ61b1の位置(例えば、回転角度)を検知する位置センサ(例えば、レゾルバ、エンコーダ)61b5(図10参照)が内蔵されている。電流センサ61b4及び位置センサ61b5の検出結果は、制御装置80に送信されている。
【0030】
(本体部)
本体部62は、主として図4,5に示すように、旋回テーブル(テーブル)63と、旋回テーブル63に設けられたアーム部64から構成されている。
【0031】
(旋回テーブル)
旋回テーブル63は、図5に示すように、旋回テーブル63に設けられたテーブル駆動軸(以下、D軸と称する場合もある。)63aと、テーブル駆動軸63aを回転駆動するテーブル駆動装置63bとを有している。テーブル駆動装置63bは、走行部本体61aに設けられている。テーブル駆動装置63bは、テーブル駆動軸63aに設けられた歯車(不図示)、この歯車に歯合するピニオン(不図示)、サーボモータ63b1、サーボモータ63b1の出力をピニオンに伝達する駆動力伝達機構(不図示)などから構成されている。
【0032】
サーボモータ63b1は、制御装置80(図10参照)に接続されている。サーボモータ63b1は、制御装置80からの指示に従って回転駆動され、ピニオンがテーブル駆動軸63aを回転する。これにより、旋回テーブル63は、テーブル駆動軸63aの回転軸回りに回転可能である。また、サーボモータ63b1は、サーボモータ63b1に流れる電流を検知する電流センサ63b2(図10参照)が内蔵されている。サーボモータ63b1は、サーボモータ61b1と同様に、サーボモータ63b1の位置を検知する位置センサ63b3(図10参照)が内蔵されている。電流センサ63b2及び位置センサ63b3の検出結果は、制御装置80に送信されている。
【0033】
旋回テーブル63は、ワークWを反転する反転装置66が設けられている。反転装置66は、把持部75から受け取ったワークWを反転し、反転したワークWを把持部75に受け渡すことができる。
【0034】
(アーム部)
アーム部64は、駆動軸(またはアーム)が直列に並んでいる、いわゆるシリアルリンク型のアームである。アーム部64は、主として図4,5に示すように、第1アーム71、第1アーム駆動軸(以下、A軸と称する場合もある。)72、第2アーム73、第2アーム駆動軸(以下、B軸と称する場合もある。)74、把持部75、及び把持部駆動軸(以下、C軸と称する場合もある。)76から構成されている。
【0035】
主として図4,5に示すように、第1アーム71は、棒状に形成されており、旋回テーブル63に第1アーム駆動軸72を介して回転可能に連結されている。具体的には、第1アーム駆動軸72は、旋回テーブル63上に設けられた支持部材63cに回転可能に支持されている。第1アーム駆動軸72は、第1アーム71の基端部が固定されている。第1アーム駆動軸72は、第1アーム駆動装置71bにより回転駆動される。第1アーム駆動装置71bは、支持部材63cに設けられたサーボモータ71b1、サーボモータ71b1の出力を第1アーム駆動軸72に伝達する駆動力伝達機構(不図示)などから構成されている。
【0036】
サーボモータ71b1は、制御装置80に接続されている。サーボモータ71b1は、制御装置80からの指示に従って回転駆動され、第1アーム駆動軸72を回転する。これにより、第1アーム71は、第1アーム駆動軸72の回転軸回りに回転可能である。また、サーボモータ71b1は、サーボモータ71b1に流れる電流を検知する電流センサ71b2(図10参照)が内蔵されている。サーボモータ71b1は、サーボモータ61b1と同様に、サーボモータ71b1の位置を検知する位置センサ71b3(図10参照)が内蔵されている。電流センサ71b2及び位置センサ71b3の検出結果は、制御装置80に送信されている。
【0037】
主として図4,5に示すように、第2アーム73は、棒状に形成されており、第1アーム71に第2アーム駆動軸74を介して回転可能に連結されている。具体的には、第2アーム駆動軸74は、第1アーム71の先端部に回転可能に支持されている。第2アーム駆動軸74は、第2アーム73の基端部が固定されている。第2アーム駆動軸74は、第2アーム駆動装置73bにより回転駆動される。第2アーム駆動装置73bは、第1アーム71に設けられたサーボモータ73b1、サーボモータ73b1の出力を第2アーム駆動軸74に伝達する駆動力伝達機構(不図示)などから構成されている。
【0038】
サーボモータ73b1は、制御装置80に接続されている。サーボモータ73b1は、制御装置80からの指示に従って回転駆動され、第2アーム駆動軸74を回転する。これにより、第2アーム73は、第2アーム駆動軸74の回転軸回りに回転可能である。また、サーボモータ73b1は、サーボモータ73b1に流れる電流を検知する電流センサ73b2(図10参照)が内蔵されている。サーボモータ73b1は、サーボモータ61b1と同様に、サーボモータ73b1の位置を検知する位置センサ73b3(図10参照)が内蔵されている。電流センサ73b2及び位置センサ73b3の検出結果は、制御装置80に送信されている。
【0039】
主として図4,5に示すように、把持部75は、第2アーム73に把持部駆動軸76を介して回転可能に連結されている。具体的には、把持部駆動軸76は、第2アーム73の先端部に回転可能に支持されている。把持部駆動軸76は、把持部75の把持部本体75aが固定されている。把持部駆動軸76は、把持部駆動装置75bにより回転駆動される。把持部駆動装置75bは、第2アーム73に設けられたサーボモータ75b1、サーボモータ75b1の出力を把持部駆動軸76に伝達する駆動力伝達機構75b2などから構成されている。なお、把持部本体75aは、ワークWを把持するチャック75cが着脱可能である。
【0040】
サーボモータ75b1は、制御装置80に接続されている。サーボモータ75b1は、制御装置80からの指示に従って回転駆動され、把持部駆動軸76を回転する。これにより、把持部本体75aひいては把持部75は、把持部駆動軸76の回転軸回りに回転可能である。また、サーボモータ75b1は、サーボモータ75b1に流れる電流を検知する電流センサ75b3(図10参照)が内蔵されている。サーボモータ75b1は、サーボモータ61b1と同様に、サーボモータ75b1の位置を検知する位置センサ75b4(図10参照)が内蔵されている。電流センサ75b3及び位置センサ75b4の検出結果は、制御装置80に送信されている。
【0041】
(移動規制部)
移動規制部65は、走行移動規制部(以下、第1移動規制部とも称する。)65a(図5,7参照)、テーブル移動規制部(以下、第2移動規制部とも称する。)65b(図6,7参照)、第1アーム移動規制部(以下、第3移動規制部とも称する。)65c(図6参照)、第2アーム移動規制部(以下、第4移動規制部とも称する。)65d(図8参照)、及び把持部移動規制部(以下、第5移動規制部とも称する。)65e(図9参照)から構成されている。移動規制部は、対応する軸の移動をそれぞれ規制するものである。
【0042】
第1移動規制部65aは、走行駆動軸61cの移動を規制する。また第1移動規制部65aは、走行駆動装置61b(すなわちサーボモータ61b1)を原点位置に位置決めするためのものである。第1移動規制部65aは、図5に示すように、互いに当接する係合部65a1と被係合部65a2とから構成されている。係合部65a1は、図7に示すように、走行部本体61aの後側面部の右端に設けられている。被係合部65a2は、図5に示すように、複数のベース20が並べられている場合、最右端に位置するベース20の前面に設けられている。係合部65a1と被係合部65a2とが当接した位置が、走行部61ひいては走行駆動装置61bの物理的な原点位置である。走行部61が原点位置に位置するときに、そのときのサーボモータ61b1(走行駆動装置61b)の現在位置(例えば現在回転角度)をサーボモータ61b1の原点位置に設定することができる。
【0043】
第2移動規制部65bは、テーブル駆動軸63aの移動を規制する。また第2移動規制部65bは、テーブル駆動装置63b(すなわちサーボモータ63b1)を原点位置に位置決めするためのものである。第2移動規制部65bは、互いに当接する係合部65b1(図6参照)と被係合部65b2(図7参照)とから構成されている。係合部65b1は、旋回テーブル63の下部に設けられている。被係合部65b2は、走行部本体61aの上部に1対設けられている。係合部65b1と被係合部65b2(一対のうちどちらか一方)とが当接した位置が、旋回テーブル63ひいてはテーブル駆動装置63bの物理的な原点位置である。旋回テーブル63が原点位置に位置するときに、そのときのサーボモータ63b1(テーブル駆動装置63b)の現在位置(例えば現在回転角度)をサーボモータ63b1の原点位置に設定することができる。
【0044】
第3移動規制部65cは、第1アーム駆動軸72の移動を規制する。第3移動規制部65cは、第1アーム駆動装置71b(すなわちサーボモータ71b1)を原点位置に位置決めするためのものである。第3移動規制部65cは、図6に示すように、互いに当接する係合部65c1と被係合部65c2とから構成されている。係合部65c1は第1アーム71の基部に設けられている。被係合部65c2は、支持部材63cの上部に設けられている。係合部65c1と被係合部65c2とが当接した位置が、第1アーム71ひいては第1アーム駆動装置71bの物理的な原点位置である。第1アーム71が原点位置に位置するときに、そのときのサーボモータ71b1(第1アーム駆動装置71b)の現在位置(例えば現在回転角度)をサーボモータ71b1の原点位置に設定することができる。
【0045】
第4移動規制部65dは、第2アーム駆動軸74の移動を規制する。第4移動規制部65dは、第2アーム駆動装置73b(すなわちサーボモータ73b1)を原点位置に位置決めするためのものである。第4移動規制部65dは、図8に示すように、互いに当接する係合部65d1と被係合部65d2とから構成されている。係合部65d1は、第2アーム73の基部に設けられている。被係合部65d2は、第1アーム71の先端部に設けられている。係合部65d1と被係合部65d2とが当接した位置が、第2アーム73ひいては第2アーム駆動装置73b(図5参照)の物理的な原点位置である。第2アーム73が原点位置に位置するときに、そのときのサーボモータ73b1(第2アーム駆動装置73b)の現在位置(例えば現在回転角度)をサーボモータ73b1の原点位置に設定することができる。
【0046】
第5移動規制部65eは、把持部駆動軸76の移動を規制する。第5移動規制部65eは、把持部駆動装置75b(すなわちサーボモータ75b1)を原点位置に位置決めするためのものである。第5移動規制部65eは、図9に示すように、互いに当接する係合部65e1と被係合部65e2とから構成されている。係合部65e1は、把持部本体75aの一側面部に設けられている。被係合部65e2は、第2アーム73の先端部に着脱可能に取り付けられた冶具65e3(原点調整用冶具)に設けられている。なお、冶具65e3は、原点位置を設定する際に第2アーム73に取り付けられ、通常運転時には装着されていない。係合部65e1と被係合部65e2とが当接した位置が、把持部本体75aひいては把持部駆動装置75bの物理的な原点位置である。把持部本体75aが原点位置に位置するときに、そのときのサーボモータ75b1(把持部駆動装置75b)の現在位置(例えば現在回転角度)をサーボモータ75b1の原点位置に設定することができる。
【0047】
(入力装置、表示装置など)
また、加工システム10は、入力装置11、表示装置12、及び記憶装置13をさらに有している。入力装置11は、図1に示すように、作業機モジュール30の前面に設けられており、作業者が各種設定、各種指示などを加工システム10に入力するためのものである。表示装置12は、図1に示すように、作業機モジュール30の前面に設けられており、作業者に対して運転状況など加工システム10の情報を表示するためのものである。記憶装置13は、更新されたA軸72、B軸74、C軸76、D軸63a及びX軸61cの各原点位置などを記憶するものである。
【0048】
(ロボット制御装置)
制御装置80は、各駆動装置61b,63b,71b,73b,75bのそれぞれにおいて、各駆動装置61b,63b,71b,73b,75bを駆動させて各移動規制部65a-65eを当接させることにより、各駆動装置61b,63b,71b,73b,75bの原点位置を設定する処理である原点設定処理(原点確立動作)を実施する。制御装置80は、専用の装置を設けてもよいが、作業機モジュール30のモジュール制御装置47、57にて兼用(代用)するようにしてもよい。
【0049】
制御装置80は、図10に示すように、入力装置11、表示装置12、記憶装置13、各サーボモータ61b1,63b1,71b1,73b1,75b1、各電流センサ61b4,63b2,71b2,73b2,75b3、及び各位置センサ61b5,63b3,71b3,73b3,75b4に接続されている。
【0050】
制御装置80は、マイクロコンピュータ(不図示)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAMおよびROM(いずれも不図示)を備えている。CPUは、各種プログラムを実施して、各電流センサ61b4,63b2,71b2,73b2,75b3及び各位置センサ61b5,63b3,71b3,73b3,75b4の検出結果や入力装置11の入力結果を取得したり、表示装置12や各サーボモータ61b1,63b1,71b1,73b1,75b1を制御したりする。RAMは同プログラムの実施に必要な変数を一時的に記憶するものであり、ROMは前記プログラムを記憶するものである。
【0051】
(原点確立動作)
さらに、上述した制御装置80による各駆動装置の原点確立動作について図11に示すフローチャートに沿って説明する。
【0052】
制御装置80は、図11に示すフローチャートを実施する。制御装置80は、ステップS102において、原点確立動作が開始されるか否かを判定する。具体的には、制御装置80は、例えば作業者によって原点確立動作を開始する開始スイッチ(不図示)が押された場合、すなわち原点確立動作開始の指示がある場合に、原点確立動作が開始されると判定する。制御装置80は、上述したロボット60が例えば停電などの異常状態により停止した場合、加工システム10を新たに設置した場合などに、ロボット60の原点を設定する必要がある。
【0053】
制御装置80は、作業者によって原点確立動作開始の指示がされない場合には(ステップS102にて「NO」)、ステップS102の処理を繰り返し実施する。制御装置80は、作業者によって原点確立動作開始の指示がされた場合(ステップS102にて「YES」)、ロボット60の開始前姿勢を表示装置12に表示する(ステップS104)。
【0054】
開始前姿勢は、原点確立動作を開始する前のロボット60の姿勢である。この開始前姿勢は、予め定められた姿勢である。例えば、開始前姿勢は、図12に示すように、アーム部64が旋回テーブル63の輪郭の範囲内に収まるアーム部64の姿勢であることが好ましい。すなわち、側方から視て、アーム部64が旋回テーブル63の幅範囲内に収まる姿勢である。具体的には、A軸が-10度から10度までの範囲(所定範囲)であり、B軸が10度から0度までの範囲(所定範囲)であることが好ましい。特にA軸が-10度(所定角度)でありB軸が10度(所定角度)であることが好ましい。
【0055】
作業者は、表示装置12に表示された開始前姿勢を参照しながら、ロボット60の姿勢が開始前姿勢となるように入力装置11を操作する。例えば、作業者は、第1アーム71が開始前姿勢(すなわちA軸が直交座標系による-10度相当である姿勢)となるように、第2アーム73が開始前姿勢(すなわちB軸が直交座標系による10度相当である姿勢)となるように、入力装置11を操作する。このとき、把持部75すなわち把持部駆動軸76の位置(角度;C軸の角度)は、特に定める必要はない。また、走行部61すなわち走行駆動軸61cの位置(距離;X軸の値)、及び旋回テーブル63すなわちテーブル駆動軸63aの位置(角度;D軸の角度)も、特に定める必要はない。
【0056】
制御装置80は、ステップS106において、作業者により入力装置11への入力操作があったか否かを判定する。制御装置80は、作業者により入力装置11への入力操作がない場合(ステップS106にて「NO」)、ステップS106の処理を繰り返し実施する。制御装置80は、作業者により入力装置11への入力操作があった場合(ステップS106にて「YES」)、入力操作に従ってロボット60の姿勢を変更する(ステップS108)。その結果、ロボット60は、開始前姿勢に移行する。
【0057】
制御装置80は、以降の処理において、複数の軸のうち各駆動装置の動作時における原点を確立する原点確立動作が完了している軸から順次、原点確立動作を実施すべき軸を設定することにより、複数の軸全ての原点を設定する。具体的には、制御装置80は、X軸61c、D軸63a、A軸72、B軸74及びC軸76の順に原点確立動作を実施する。
【0058】
(X軸原点確立)
制御装置80は、ステップS110において、X軸の原点確立を実施する。すなわち、制御装置80は、図13に示すサブルーチン(X軸原点確立ルーチン)に沿った処理を実施する。具体的には、制御装置80は、ステップS202において、走行駆動装置61b(X軸駆動装置;サーボモータ61b1)を駆動させて走行駆動軸61c(走行部本体61a)を開始位置に移動させる。開始位置は、直交座標系に係るX軸の原点から所定距離以上離れた位置であればいずれの位置でもよい。これは以下の理由による。開始位置がX軸の原点に近すぎると、開始位置が所定距離以上離れた位置である場合と比較して、走行駆動装置61b(サーボモータ61b1)のトルクの変化が異なるおそれがあり、原点調整の再現性が低下するおそれがあるからである。
【0059】
実際には、制御装置80は、走行部本体61aをX軸の原点方向に所定距離だけ往復させる。この間に、係合部65a1と被係合部65a2とが当接することによるサーボモータ61b1のトルク(電流センサ63b2による検出電流値)の増大を測定した場合には、制御装置80は、走行部本体61aの移動を停止し、その位置から所定距離だけ原点方向と反対方向に移動させる。
【0060】
制御装置80は、ステップS204において、走行駆動装置61bを駆動させて、開始位置に位置する走行部本体61aをX軸の原点に向けて移動させる。そして、制御装置80は、ステップS206において、走行駆動装置61b(サーボモータ61b1)のトルクが判定値より大きいか否かを判定する。具体的には、制御装置80は、電流センサ63b2から検出電流値を取得し、検出電流値から走行駆動装置61b(サーボモータ61b1)のトルクを算出する。判定値は、係合部65a1と被係合部65a2とが当接した際に発生するトルクに基づいて設定されている。
【0061】
制御装置80は、算出したトルクが判定値以下である場合(ステップS206にて「NO」)、ステップS206の判定を繰り返す。制御装置80は、算出したトルクが判定値より大きくなった場合(ステップS206にて「YES」)、その時点のX軸の位置(現在位置)をX軸の原点として記憶装置13に記憶(更新)する(ステップS208)。すなわち、制御装置80は、ステップS208において、走行部本体61a(走行部61)が物理的な原点位置に位置するときに、そのときのサーボモータ61b1(走行駆動装置61b)の現在位置(位置センサ61b5により検出した位置(現在回転角度))をサーボモータ61b1の原点位置に設定することができる。その後、制御装置80は、プログラムを図11に示すフローチャートに戻す。
【0062】
(D軸原点確立)
制御装置80は、ステップS112において、D軸の原点確立を実施する。すなわち、制御装置80は、図14に示すサブルーチン(D軸原点確立ルーチン)に沿った処理を実施する。具体的には、制御装置80は、ステップS302において、走行駆動装置61b(X軸駆動装置;サーボモータ61b1)を駆動させて走行駆動軸61c(走行部本体61a)を開始位置に移動させる。開始位置は、直交座標系に係るX軸の原点から所定距離(例えば30cm)だけ離れた位置である。所定距離は、以下に実施するアーム部64に係る原点確立の際に、アーム部64が作業機モジュール30(例えば走行室46,56の内壁面)に干渉しない値に設定するのが好ましい。
なお、このとき、D軸の開始位置は、特に特定の値に設定する必要はない。なお、D軸の開始位置は、X軸原点確立の開始位置と同様に、D軸の原点から所定量以上離れているのが好ましい。
【0063】
制御装置80は、ステップS304において、テーブル駆動装置63b(D軸駆動装置)を駆動させて、X軸の開始位置に位置する走行部本体61aの旋回テーブル63をD軸の原点に向けて移動(回動)させる。そして、制御装置80は、ステップS306において、ステップS206と同様に、電流センサ63b2から取得した検出電流値に基づいてテーブル駆動装置63b(サーボモータ63b1)のトルクが判定値より大きいか否かを判定する。
【0064】
制御装置80は、算出したトルクが判定値以下である場合(ステップS306にて「NO」)、ステップS306の判定を繰り返す。制御装置80は、算出したトルクが判定値より大きくなった場合(ステップS306にて「YES」)、その時点のD軸の位置(現在位置)をD軸の原点として記憶装置13に記憶(更新)する(ステップS308)。すなわち、制御装置80は、ステップS308において、旋回テーブル63が物理的な原点位置に位置するときに、そのときのサーボモータ63b1(テーブル駆動装置63b)の現在位置(位置センサ63b3により検出した位置(現在回転角度))をサーボモータ63b1の原点位置に設定することができる。その後、制御装置80は、プログラムを図11に示すフローチャートに戻す。
【0065】
(A軸原点確立)
制御装置80は、ステップS114において、A軸の原点確立を実施する。すなわち、制御装置80は、図15に示すサブルーチン(A軸原点確立ルーチン)に沿った処理を実施する。具体的には、制御装置80は、ステップS402において、テーブル駆動装置63b(D軸駆動装置;サーボモータ63b1)を駆動させてテーブル駆動軸63a(旋回テーブル63)を開始位置に移動(回動)させる。開始位置は、D軸の軸座標系に係る原点から所定角度(例えば90度)だけ離れた位置である。所定角度が90度である場合、アーム部64が走行部本体61aの走行方向と平行な方向に向くこととなる。所定角度は、以下に実施するアーム部64に係る原点確立の際に、アーム部64が作業機モジュール30(例えば走行室46,56の内壁面)に干渉しない値に設定するのが好ましい。
なお、このとき、A軸の開始位置は、先にステップS108にて設定された開始前姿勢である第1アーム71の位置(直交座標系で-10度)に設定されている。
【0066】
制御装置80は、ステップS404において、第1アーム駆動装置71b(A軸駆動装置)を駆動させて、D軸の開始位置に位置する旋回テーブル63の第1アーム71をA軸の原点に向けて移動(回動)させる。そして、制御装置80は、ステップS406において、ステップS206と同様に、電流センサ71b2から取得した検出電流値に基づいて第1アーム駆動装置71b(サーボモータ71b1)のトルクが判定値より大きいか否かを判定する。
【0067】
制御装置80は、算出したトルクが判定値以下である場合(ステップS406にて「NO」)、ステップS406の判定を繰り返す。制御装置80は、算出したトルクが判定値より大きくなった場合(ステップS406にて「YES」)、その時点のA軸の位置(現在位置)をA軸の原点として記憶装置13に記憶(更新)する(ステップS408)。すなわち、制御装置80は、ステップS408において、第1アーム71が物理的な原点位置に位置するときに、そのときのサーボモータ71b1(第1アーム駆動装置71b)の現在位置(位置センサ71b3により検出した位置(現在回転角度))をサーボモータ71b1の原点位置に設定することができる。その後、制御装置80は、プログラムを図11に示すフローチャートに戻す。
【0068】
(B軸原点確立前動作)
制御装置80は、ステップS116において、B軸の原点確立(第2アーム原点確立動作)を実施する前に、既に原点確立が完了した第1アーム駆動装置71bを駆動させて、第1アーム71を第2アーム開始前姿勢(B軸開始前姿勢)に移行させる。
【0069】
第2アーム開始前姿勢は、図16に示すように、図12に示す開始前姿勢に対して、A軸が前方に30度傾き、B軸が第1アーム71に対して同じ角度を維持する姿勢である。すなわち、A軸が直交座標系による20度相当となる姿勢である。第2アーム開始前姿勢は、第2アーム原点確立動作を実施する際に、第4移動規制部65d(図8参照)による第2アーム駆動軸74の移動規制(係合部65d1と被係合部65d2との当接)の前に第2アーム73が旋回テーブル63に設置されている設置部材である反転装置66に当接しない第1アーム71の姿勢である。
なお、第2アーム開始前姿勢は、制御装置80により自動的に移行することができる。また、第2アーム開始前姿勢は、制御装置80により作業者の入力装置11への操作入力に従って移行することも可能である。
【0070】
(B軸原点確立)
制御装置80は、ステップS118において、B軸の原点確立を実施する。すなわち、制御装置80は、図17に示すサブルーチン(B軸原点確立ルーチン)に沿った処理を実施する。制御装置80は、ステップS502において、第2アーム駆動装置73b(B軸駆動装置)を駆動させて、第2アーム開始前姿勢に位置する第2アーム73をB軸の原点に向けて移動(回動(図16にて時計回り))させる。そして、制御装置80は、ステップS504において、ステップS206と同様に、電流センサ73b2から取得した検出電流値に基づいて第2アーム駆動装置73b(サーボモータ73b1)のトルクが判定値より大きいか否かを判定する。
【0071】
制御装置80は、算出したトルクが判定値以下である場合(ステップS504にて「NO」)、ステップS504の判定を繰り返す。制御装置80は、算出したトルクが判定値より大きくなった場合(ステップS504にて「YES」)、その時点のB軸の位置(現在位置)をB軸の原点として記憶装置13に記憶(更新)する(ステップS506)。すなわち、制御装置80は、ステップS506において、第2アーム73が物理的な原点位置に位置するときに、そのときのサーボモータ73b1(第2アーム駆動装置73b)の現在位置(位置センサ73b3により検出した位置(現在回転角度))をサーボモータ73b1の原点位置に設定することができる。その後、制御装置80は、プログラムを図11に示すフローチャートに戻す。
【0072】
(C軸原点確立前動作)
制御装置80は、ステップS120において、C軸の原点確立(把持部原点確立動作)を実施する前に、既に原点確立が完了した第1アーム駆動装置71b及び第2アーム駆動装置73bを駆動させて、アーム部64を把持部開始前姿勢(C軸開始前姿勢)に移行させる。
【0073】
把持部開始前姿勢は、図4に示すように、開始前姿勢(図16参照)に対して、A軸が後方(反時計回り)に30度回転し、B軸が第1アーム71に対して前方(反時計回り)に100度となった姿勢である。すなわち、A軸が直交座標系による-10度相当となる姿勢である。把持部開始前姿勢は、把持部原点確立動作を実施する際に、第5移動規制部65e(図9参照)による把持部駆動軸76の移動規制(係合部65e1と被係合部65e2との当接)の前に把持部75及び把持部75により把持されているワークWが作業機モジュール30(例えば第1アーム71及び走行室46,56の内壁面)に干渉しないアーム部64の姿勢である。
【0074】
なお、把持部開始前姿勢は、制御装置80により自動的に移行することができる。また、把持部開始前姿勢は、制御装置80により作業者の入力装置11への操作入力に従って移行することも可能である。
【0075】
さらに、制御装置80は、ステップS122において、冶具65e3の第2アーム73への取り付けが完了したか否かを判定する。例えば、制御装置80は、冶具65e3の取り付け後に作業者による冶具取付完了の操作入力があった場合に、冶具取付完了を判定する。また、制御装置80は、第2アーム73に設けられて、冶具65e3が第2アーム73に取り付けられたか否かを検知するセンサからの出力信号に基づいて、冶具取付完了を自動的に判定することができる。
【0076】
制御装置80は、第2アーム73に冶具65e3の取付が完了していない場合(ステップS122にて「NO」)、ステップS122の判定を繰り返す。制御装置80は、第2アーム73に冶具65e3の取付が完了した場合(ステップS122にて「YES」)、C軸の原点確立を実施する(ステップS124)。
【0077】
(C軸原点確立)
すなわち、制御装置80は、図18に示すサブルーチン(C軸原点確立ルーチン)に沿った処理を実施する。制御装置80は、ステップS602において、アーム部64が図4に示す把持部開始前姿勢に位置する状態にて、把持部駆動装置75b(C軸駆動装置)を駆動させて、把持部75をC軸の原点に向けて移動(回動)させる。そして、制御装置80は、ステップS604において、ステップS206と同様に、電流センサ75b3から取得した検出電流値に基づいて把持部駆動装置75b(サーボモータ75b1)のトルクが判定値より大きいか否かを判定する。
【0078】
制御装置80は、算出したトルクが判定値以下である場合(ステップS604にて「NO」)、ステップS604の判定を繰り返す。制御装置80は、算出したトルクが判定値より大きくなった場合(ステップS604にて「YES」)、その時点のC軸の位置(現在位置)をC軸の原点として記憶装置13に記憶(更新)する(ステップS606)。すなわち、制御装置80は、ステップS606において、把持部75が物理的な原点位置に位置するときに、そのときのサーボモータ75b1(把持部駆動装置75b)の現在位置(位置センサ75b4により検出した位置(現在回転角度))をサーボモータ75b1の原点位置に設定することができる。その後、制御装置80は、プログラムを図11に示すフローチャートに戻す。そして、制御装置80は、図11に示すフローチャートの処理を終了する。
【0079】
上述した実施形態によるロボット60(多関節ロボット)は、複数の軸61c,63a,72,74,76と、複数の軸61c,63a,72,74,76をそれぞれ駆動する複数の駆動装置61b,63b,71b,73b,75bと、複数の軸61c,63a,72,74,76のうち各駆動装置61b,63b,71b,73b,75bの動作時における原点を確立する原点確立動作が完了している軸から順次、原点確立動作を実施すべき軸を設定することにより、複数の軸61c,63a,72,74,76全ての原点を設定する制御装置80と、を備えている。すなわち、上記実施形態においては、原点確率動作が終了したX軸61cから順次、原点確立動作を実施すべき軸をD軸63a、A軸72、B軸74、C軸76の順番に設定し、複数の軸61c,63a,72,74,76全ての原点を調整することができる。
これによれば、原点調整(原点確立)すべき軸の順番を自動的に設定し、ひいては全ての軸61c,63a,72,74,76の原点調整を自動的に実施することができる。よって、ロボット60は、軸の原点調整を高い再現性にて行うことができる。
【0080】
また、制御装置80は、作業者の指示に従って各駆動装置61b,63b,71b,73b,75bを駆動制御することにより各軸61c,63a,72,74,76をそれぞれ駆動させて、ロボット60の姿勢を、原点確立動作を開始する前の開始前姿勢となるように変形し(ステップS108,116,120)、その後、原点確立動作を行う(ステップS110,112,114,118,124)。
これによれば、ロボット60の姿勢を開始前姿勢とすることにより、その後の原点確立動作の実施中においてロボット60の干渉の発生を確実に防止することができる。よって、ロボット60は、軸の原点調整をより高い再現性にて行うことができる。
【0081】
また、制御装置80は、原点確立動作が実施されるべき軸に連結されるとともに原点確立動作が既に完了している軸を所定の準備位置に駆動させた後に(ステップS202,302,402,116,120)、原点確立動作が実施されるべき軸の原点確立動作を実施する(ステップS208,308,408,120,124)。所定の準備位置は、ステップS302のX軸開始位置、ステップS402のD軸開始位置、開始前姿勢、第2アーム開始前姿勢、把持部開始前姿勢である。例えば、D軸原点確立動作では、原点確立動作が実施されるべき軸(実施軸)はD軸63aであり、原点確立動作が既に完了している軸(完了軸)はX軸61cである。また、A軸原点確立動作では、実施軸はA軸72であり、完了軸はD軸63aである。
これによれば、上述した実施形態のように全ての軸61c,63a,72,74,76が直列に配置されている場合、ロボット60の端の軸から順番に原点確立動作を実施することが可能となり、作業者の一つの操作(例えば開始操作スイッチのオン操作)により全ての軸の原点確立動作を終了することができる。このように、作業者の操作をできるだけ抑制しすなわち作業者の手間を低減することにより、ロボット60の軸の原点調整を簡便に実施することができる。
【0082】
また、ロボット60は、各軸61c,63a,72,74,76の移動をそれぞれ規制する複数の移動規制部65a-65eを備え、制御装置80は、移動規制部65a-65eによる軸61c,63a,72,74,76の移動の規制に伴って変化する駆動装置61b,63b,71b,73b,75bのトルクを用いることにより、原点の確立を行う(ステップS206,306,406,504,604)。
これによれば、各軸の原点調整を自動的に実施することができる。よって、ロボット60は、軸の原点調整をより高い再現性にて行うことができる。
【0083】
また、上述した実施形態において、ロボット60は、テーブル駆動装置63bによって駆動されるテーブル駆動軸63aにより回転駆動される旋回テーブル63(テーブル)と、旋回テーブル63に設けられて複数の軸72,74,76を有するアーム部64と、から構成されている。さらに、開始前姿勢は、アーム部64が旋回テーブル63の輪郭の範囲内に収まるアーム部64の姿勢である。
これによれば、アーム部64を旋回テーブル63の輪郭内の空間に収容した状態で旋回テーブル63に関する軸(例えばテーブル駆動軸63a)の原点調整をすることができる。よって、旋回テーブル63に関する軸の原点調整をする際に、ロボット60の干渉の発生をより確実に防止することができる。
【0084】
また、上述した実施形態において、ロボット60は、テーブル駆動装置63bによって駆動されるテーブル駆動軸63aにより回転駆動される旋回テーブル63と、旋回テーブル63に設けられて、直列に連結された複数の軸72,74,76を有するアーム部64と、から構成されている。さらに、制御装置80は、複数の軸72,74,76のうち旋回テーブル63側の軸から順次、原点確立動作を実施する(ステップS114,118,124)。
これによれば、旋回テーブル63側の軸から順番に原点確立動作を実施することにより、アーム部64の軸の原点調整をする際に、ロボット60の干渉の発生を確実に防止することができる。
【0085】
なお、上述した実施形態においては、原点確立動作を実施する軸の順番をX軸、D軸、A軸、B軸及びC軸の順に設定したが、A軸、B軸及びC軸を先に実施した後にX軸及びD軸を実施するようにしてもよい。この場合、A軸の原点確立動作を実施する前にステップS104の開始前姿勢に移動するようにすればよい。
【0086】
また、上述した実施形態においては、制御装置80は、開始前姿勢(ステップS104)となっているか否かを撮像装置の撮像結果に基づいて判定するようにしてもよい。撮像装置は、例えば、旋回テーブル63の上方に配置されたCCDカメラであり、アーム部64が旋回テーブル63の範囲内にあれば開始前姿勢となっていると判定することができる。この判定は、上述したステップS108とステップS110との間にて実施すればよい。作業者の操作を支援することができる。撮像装置の代わりに3次元レーザースキャナーを使用してもよい。
【0087】
また、前記撮像装置を使用すれば、上述したステップS104-ステップS108の処理に代えて、制御装置80は、ロボット60を自動で駆動させて、開始前姿勢とすることが可能となる。これによれば、さらに、作業性を向上させながら、軸の原点調整を高い再現性にて行うことができる。
【符号の説明】
【0088】
60…ロボット(多関節ロボット)、61c,63a,72,74,76…軸、61b,63b,71b,73b,75b…駆動装置、80…制御装置、63…旋回テーブル(テーブル)、64…アーム部、65a-65e…移動規制部。

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