(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】メマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠
(51)【国際特許分類】
A61K 31/13 20060101AFI20221222BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221222BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221222BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20221222BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221222BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
A61K31/13
A61K9/20
A61K47/26
A61K47/34
A61K47/38
A61P25/28
(21)【出願番号】P 2017147187
(22)【出願日】2017-07-11
【審査請求日】2020-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】307020615
【氏名又は名称】キョーリンリメディオ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前田 将孝
(72)【発明者】
【氏名】菅原 崇
(72)【発明者】
【氏名】森下 佳典
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-103731(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161823(WO,A1)
【文献】特開2017-052754(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1709229(CN,A)
【文献】特開2018-127446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/13
A61K 9/20
A61K 47/26
A61K 47/34
A61K 47/38
A61P 25/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メマンチン塩酸塩を含有する顆粒、
クロスポビドン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有する、メマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠であって、前記顆粒内に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含まない口腔内崩壊錠。
【請求項2】
メマンチン塩酸塩を含有する顆粒が、糖アルコールで被覆されている、請求項1に記載のメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠。
【請求項3】
糖アルコールで被覆されているメマンチン塩酸塩粉末、
クロスポビドン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有する、メマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠であって、前記糖アルコールで被覆されているメマンチン塩酸塩粉末内に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含まない口腔内崩壊錠。
【請求項4】
錠剤の全重量に対して、メマンチン塩酸塩の含量が2.0重量%以上10.0重量%以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載のメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠。
【請求項5】
錠剤の全重量に対して、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの含量が0.5重量%以上15.0重量%以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載のメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠。
【請求項6】
糖アルコールがマンニトールである、請求項2から5のいずれか1項に記載のメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠。
【請求項7】
25℃、相対湿度75%に3日間保存後の錠剤硬度が2.0Kgf以上である、請求項1から6のいずれか1項に記載のメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少量の水又は水なしで服用しても口腔内で速やかに崩壊するメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠及びその製造方法に関する。特に、加湿条件下に保存しても錠剤の硬度低下が少なく、かつ良好な口腔内崩壊性を維持するメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メマンチン(1‐アミノ‐3,5‐ジメチルアダマンタン)は強い電位依存性及び速い遮断/非遮断動力性を有し、中等度及び高度アルツハイマー型認知症症状の進行を抑制する非競合NMDA受容体遮断薬である。
【0003】
中等度及び高度アルツハイマー型認知症状の進行を抑制する治療薬であるメマンチン塩酸塩は、現在、フィルムコーティング錠及び口腔内崩壊錠として市販されている(非特許文献1)。
【0004】
中等度及び高度アルツハイマー型認知症は高齢者の患者が大半であり、嚥下力が低下している場合があるため、口腔内で速やかに崩壊し、口腔内の唾液や少量の水で服用可能な口腔内崩壊錠を剤型とするメマンチン塩酸塩製剤が提案されている。例えば、特許文献1には、微晶質セルロースが20重量%から95重量%の範囲で存在する即効型経口固形投与形が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、かさ密度が0.23g/cm3以下の結晶セルロース、糖アルコール及びアルファー化デンプンを含有する口腔内崩壊錠が記載されている。
【0006】
口腔内崩壊錠は、水なしで服用しても口腔内で速やかに崩壊する錠剤であり、嚥下機能が低下した高齢者にも服用しやすい製剤である。近年、病院や調剤薬局では患者が複数の薬を服用する場合には、患者が薬を飲み忘れたり、飲み違えたりするのを防ぐために、服用する時間帯ごとに複数の薬を一つの簡易の小袋に納める一包化による服薬コンプライアンス改善の取り組みが盛んとなっている。この一包化の際に、調剤ミスの防止や調剤業務の効率化を目的に自動錠剤分包機が用いられる。このため、薬局での一包化の作業時から患者が薬を服用するまでの間に、防湿等の効果を有する本来のパッケージやPTPシートから薬剤が取り出され、加湿条件下に曝露される。特に、口腔内崩壊錠は、一般的に口腔内で容易に崩壊するように設計されているため、通常の錠剤よりも硬度が低く、加湿条件下に曝露されると、経時的に錠剤の硬度が低下し、服用前に錠剤が破損したり、口腔内崩壊時間が変動したりする恐れがある。また、錠剤硬度が低下すると、錠剤自動分包機による一包化の際の衝撃で、錠剤が破損する危険性もある。このため、医療現場では、加湿条件下で保存しても錠剤の硬度低下が小さく、崩壊性が維持され、更には自動分包による一包化にも破損が生じない口腔内崩壊錠の開発が望まれている。
【0007】
特許文献1は、薬物放出性と生体内吸収性に優れる即効型経口固形投与形態を提供することを目的としているものであり、良好な口腔内崩壊性であること、さらに加湿条件下での保存後でも良好な硬度や良好な口腔内崩壊性を兼ね備えているという課題及び解決手段を示唆しているものではない。
【0008】
特許文献2には、良好な口腔内崩壊性および十分な硬度を有した口腔内崩壊錠が記載されている。しかしながら、加湿条件下での保存後でも良好な硬度や良好な口腔内崩壊性を有しているという課題及び解決手段を示唆しているものではない。
【0009】
非特許文献1には、メマンチン塩酸塩を含む市販の口腔内崩壊錠について、錠剤自動分包機による一包化が可能であるものの、湿気を避けて保存する必要があることや吸湿により錠剤表面がざらつく等の注意が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特表2008-509089号公報
【文献】特開2017-008112号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】医薬品インタビューフォーム メマリーOD錠 2016年8月改定(第11版)
【文献】「錠剤・カプセル剤の無包装状態での安定性情報に関する調査研究」日本病院薬剤師会雑誌、35,176-182(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明は、適度な硬度と口腔内での速やかな崩壊性を兼ね備え、かつ加湿保存による経時的な硬度低下が小さく、加湿保存後も良好な硬度と良好な口腔内崩壊性が維持される、ユーザービリティに優れたメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、メマンチン塩酸塩の粉末またはメマンチン塩酸塩を含有する顆粒に、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを添加し圧縮成型することで、適度な硬度と口腔内での速やかな崩壊性を兼ね備え、従来より知られていた市販の口腔内崩壊錠等に比して、加湿保存による経時的な硬度低下が小さく、加湿保存後も良好な硬度と良好な口腔内崩壊性を維持するメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠を見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち本発明は、メマンチン塩酸塩の粉末またはメマンチン塩酸塩を含有する顆粒に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを混合し圧縮成型することを特徴とする口腔内崩壊錠及びその製造方法を提供するものである。
【0015】
すなわち本発明は、以下の発明を含む。
(1)メマンチン塩酸塩の粉末又はメマンチン塩酸塩を含有する顆粒、及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有する、メマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠。
(2)メマンチン塩酸塩の粉末又はメマンチン塩酸塩を含有する顆粒が、糖アルコールで被覆されている、(1)に記載のメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠。
(3)錠剤の全重量に対して、メマンチン塩酸塩の含量が2.0重量%以上10.0重量%以下である、(1)または(2)に記載のメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠。
(4)錠剤の全重量に対して、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの含量が0.5重量%以上15.0重量%以下である、(1)から(3)のいずれか1つに記載のメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠。
(5)糖アルコールがマンニトールである、(2)から(4)のいずれか1つに記載のメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠。
(6)25℃、相対湿度75%に3日間保存後の錠剤硬度が2.0Kgf以上である、(1)から(5)のいずれか1つに記載のメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠。
(7)流動層造粒法によって製造することを特徴とする、(1)から(6)のいずれか1つに記載のメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、適度な硬度と口腔内での速やかな崩壊性を兼ね備え、かつ加湿条件下保存における経時的な硬度低下が小さく、加湿条件下保存後も良好な硬度と良好な口腔内崩壊性が維持されるメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠が提供される。また、特殊な生産設備を設けることなく、一般的な製造設備にて製造可能な製造方法が提供される。
このため、医療現場や流通過程において加湿条件下に錠剤が曝露された場合でも、良好な硬度と良好な口腔内崩壊性を具備するメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠について説明する。ただし、本発明のメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0018】
本発明において、加湿条件下で保存した後の「良好な口腔内崩壊性」とは、温度25℃、湿度75%に3日間、開封状態で保存した口腔内崩壊錠が口腔内の唾液のみ又は少量の水で約20秒前後、もしくはそれ以下の時間で速やかに崩壊することをいう。
【0019】
本発明において、加湿条件下で保存した後の「良好な硬度」とは、温度25℃、湿度75%に3日間、開封状態で保存した口腔内崩壊錠の硬度が2.0kgf以上となることを意味する(非特許文献2)。
【0020】
本発明者らは、良好な口腔内崩壊性を有し、さらに加湿条件下で保存した後でも良好な硬度と良好な口腔内崩壊性を兼ね備えるメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠について検討を行ったところ、メマンチン塩酸塩の粉末又はメマンチン塩酸塩を含む顆粒に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを混合し圧縮成型することで、上記の目的を満たす錠剤が得られることを新たに見出した。
【0021】
本発明に係るメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠は、メマンチン塩酸塩と低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有する。本発明において、メマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠中のメマンチン塩酸塩の含有量は、例えば、5mg/錠、10mg/錠又は20mg/錠である。
【0022】
メマンチン塩酸塩は粉末状のメマンチン塩酸塩として含有されてもよく、また、任意に他の添加剤を含む、顆粒状のメマンチン塩酸塩として含有されてもよい。
【0023】
メマンチン塩酸塩は、所望により、粉末状のメマンチン塩酸塩の表面(例えば、メマンチン塩酸塩結晶の表面)または造粒されたメマンチン塩酸塩の顆粒表面をコーティングして用いてもよい。コーティングは薬物由来の不快な味、においや刺激をマスクし服用しやすくなる、光・水・酸素などから薬物を保護し、また、配合変化を起こしやすい成分同士を分離して安定性を向上させる、腸溶化や徐放化により薬物の有効性・安全性を向上させる、などの目的で施され、目的に応じてコーティング方法やコーティング剤が選択される。コーティングは、製剤技術分野において慣用の方法を用いることができ、例えば、流動層造粒・コーティング機、転動流動層造粒・コーティング機、遠心流動型造粒・コーティング機、ワースター型流動層造粒・コーティング機などを用いて行われる。本発明に係るメマンチン塩酸塩の粉末またはメマンチン塩酸塩を含有する顆粒にコーティングする場合、流動層造粒・コーティング機が好ましい。
【0024】
本発明に係る低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、水不溶性添加剤であるため、服用感を考慮して、その配合量はメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠に対して0.5重量%以上15.0重量%以下が好ましく、1.0重量%以上5.0重量%以下が特に好ましい。
【0025】
本発明に係る低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの90%積算粒子径は、200μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは70μm以上130μm以下である。90%積算粒子径が200μmを超えると服用感が悪化するため好ましくない。
【0026】
本発明に係るメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース以外にも、種々の添加剤を含有しても良い。添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、マスキング剤、被覆剤、着色剤、甘味剤、滑沢剤などが挙げられる。
【0027】
(賦形剤)
本発明に係るメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠において、賦形剤は口当たりなどを考慮すると水溶性もしくは水親和性のものが好ましい。例えば、マンニトール、エリスリトール、ソルビトールおよびキシリトールなどの糖アルコール、トレハロース、シクロデキストリン、トウモロコシデンプン、ショ糖、結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウムなどを単体又は適宜組み合わせて使用することができる。本発明においては糖アルコールが好ましく、マンニトールが特に好ましい。
【0028】
(崩壊剤)
本発明に係るメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠において、崩壊剤は、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、各種デンプン類等から選択することができる。これらの崩壊剤は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。本発明においては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドンおよびカルメロースカルシウムが好ましい。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、良好な口腔内崩壊性、さらに高湿度環境下での保存後も良好な硬度を付与する崩壊剤として最も好適である。
【0029】
(結合剤)
本発明に係るメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠において、結合剤は、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、マクロゴール及び上記に賦形剤として示した化合物等から選択することができる。これらの結合剤は、単体または適宜組み合わせて使用することができる。本発明においてはヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
【0030】
(マスキング剤)
本発明に係るメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠において、メマンチン塩酸塩の粉末またはメマンチン塩酸塩を含有する顆粒に、苦味を軽減するマスキング剤として、例えば、pH非依存型水不溶性ポリマー及び/またはpH依存型水不溶性ポリマーを用いて造粒又は被覆することができる。pH非依存型水不溶性ポリマーの例としては、エチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRSが挙げられ、pH依存型水不溶性ポリマーの例としては、メタクリル酸コポリマー(L、LD、S)、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートが挙げられる。これらのマスキング剤は、単体または適宜組み合わせて使用することができるが、これらに限定されるものではない。本発明においてはメタクリル酸コポリマーLDが好ましい。また、マスキング剤に可塑剤を配合して用いることが好ましい。
【0031】
(可塑剤)
本発明に係るメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠において、メマンチン塩酸塩の粉末またはメマンチン塩酸塩を含有する顆粒に、苦味を軽減するマスキング剤に配合する可塑剤は、例えば、クエン酸トリエチル、マクロゴール、ポリソルベート80、トリアセチン、モノステアリン酸グリセリン等から選択することができる。これらの可塑剤は単体または適宜組み合わせて使用することができる。本発明においてはクエン酸トリエチルが好ましい。
【0032】
(被覆剤)
本発明に係るメマンチン塩酸塩の粉末又はメマンチン塩酸塩を含有する顆粒は、成型性と崩壊性を高めるため、糖アルコールで被覆することもできる。糖アルコールとしては、例えばマンニトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトールなどを単体又は適宜組み合わせて使用することができるが、特にマンニトールが好ましい。
【0033】
(着色剤)
本発明に係るメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠において、着色剤は、例えば、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、食用黄色5号、食用黄色5号アルミニウムレーキ、リボフラビン等から選択することができる。これらの着色剤は、単体または適宜組み合わせて使用することができる。
【0034】
(甘味剤)
本発明に係るメマンチン酸塩酸含有口腔内崩壊錠において、甘味剤を用いることも可能であり、例えば、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオシド、還元麦芽糖水飴などを挙げることができる。本発明においてはアスパルテームが好ましい。
【0035】
(滑沢剤)
本発明に係るメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠において、滑沢剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、水素添加植物油、マイクロクリスタリンワックス、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール等から選択することができる。これらの滑沢剤は、単体または適宜組み合わせて使用することができる。本発明においてはステアリン酸マグネシウムおよびタルクが好ましい。
【0036】
本発明において、さらに、その他の添加剤として、例えば、甘味剤以外の矯味剤、香料、流動化剤、帯電防止剤、界面活性剤、湿潤剤、充填剤、増量剤、吸着剤、防湿剤、抗酸化剤、保存剤(例えば防腐剤)、緩衝剤などを用いることもできる。
【0037】
以上説明したように、本発明に係るメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠は、メマンチン塩酸塩の粉末又はメマンチン塩酸塩を含む顆粒に、任意で糖アルコールを被覆した後に、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを添加し圧縮成型することにより得られる。このようにして得られたメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠は、適度な硬度と口腔内での良好な崩壊性、さらに加湿条件下での保存後も良好な硬度と良好な口腔内崩壊性を兼ね備える。また、本発明によると、特殊な生産設備を設けることなく、一般的な製造設備にて製造可能な製造方法を提供することができる。
【0038】
次に実施例を挙げて、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【実施例】
【0039】
実施例1
(メマンチン塩酸塩10mg含有口腔内崩壊錠)
メマンチン塩酸塩800.0g、D-マンニトール(ロケット製)1840.0g、カルメロースカルシウム(五徳薬品製)176.0gを流動層造粒機(フロイント製、FLO‐5M)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製)88.0gを精製水2845.3gに溶解した液を噴霧後、乾燥することで造粒物を得た。得られた造粒物2904.0gを流動層造粒機(フロイント製、FLO‐5M)に投入しコーティング液10562.7g(メタクリル酸コポリマーLD(エボニック製、オイドラギットL30D-55)3866.7g、クエン酸トリエチル(森村商事製)120.0g、タルク(勝光山鉱業所製)576.0g、精製水6000.0g)を噴霧し、乾燥することで薬物含有コーティング顆粒を得た。薬物含有コーティング顆粒4760.0gを流動層造粒機に投入し、D-マンニトール720.0gを精製水6480.0gに溶解した液を噴霧後、乾燥することで薬物含有粒子被覆顆粒を得た。薬物含有粒子被覆顆粒137.0g、D-マンニトール(フロイント製、グラニュトールS)113.8g、クロスポビドン(BASF製、コリドンCL-F)8.4g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業製、NBD-022)8.4g、アスパルテーム(味の素製)9.6g、香料(高砂香料工業製)0.2gを3分間混合した。得られた混合物にステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製)2.8gを加え1分間混合後、ロータリー打錠機にて口腔内崩壊錠(打錠条件:錠剤径7.5φ、錠厚3.5mm、1錠あたりの質量140mg)を作製した。
【0040】
実施例2
(メマンチン塩酸塩20mg含有口腔内崩壊錠)
メマンチン塩酸塩100.0g、D-マンニトール(ロケット製)230.0g、カルメロースカルシウム(五徳薬品製)22.0gを流動層造粒機(パウレック製、MP-01)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製)11.0gを精製水356.0gに溶解した液を噴霧後、乾燥することで造粒物を得た。得られた造粒物363.0gを流動層造粒機(パウレック製、MP-01)に投入しコーティング液1320.3g(メタクリル酸コポリマーLD(エボニック製、オイドラギットL30D-55)483.3g、クエン酸トリエチル(森村商事製)15.0g、タルク(勝光山鉱業所製)72.0g、精製水750.0g)を噴霧し、乾燥することで薬物含有コーティング顆粒を得た。薬物含有コーティング顆粒595.0gを流動層造粒機に投入し、D-マンニトール119.0gを精製水1071.0gに溶解した液を噴霧後、乾燥することで薬物含有粒子被覆顆粒を得た。薬物含有粒子被覆顆粒142.8g、D-マンニトール(フロイント製、グラニュトールS)111.2g、クロスポビドン(BASF製、コリドンCL-F)8.2g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業製、NBD-022)5.4g、アスパルテーム(味の素製)9.6g、香料(高砂香料工業製)0.2gを3分間混合した。得られた混合物にステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製)2.8gを加え1分間混合後、ロータリー打錠機にて口腔内崩壊錠(打錠条件:錠剤径9.0φ、錠厚4.8mm、1錠あたりの質量280mg)を作製した。
【0041】
実施例3
(メマンチン塩酸塩10mg含有口腔内崩壊錠)
実施例1に記載の薬物含有粒子被覆顆粒137.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有する乾式直打用賦形剤(信越化学工業製、SmartEx(登録商標) QD-50)122.2g、クロスポビドン(BASF製、コリドンCL-F)8.4g、アスパルテーム(味の素製)9.6g、香料(高砂香料工業製)0.2gを3分間混合した。得られた混合物にステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製)2.8gを加え1分間混合後、得られた打錠用顆粒からロータリー打錠機にて口腔内崩壊錠(打錠条件:錠剤径7.5φ、錠厚3.5mm、1錠あたりの質量140mg)を作製した。
【0042】
実施例4
(メマンチン塩酸塩20mg含有口腔内崩壊錠)
実施例3で作製した打錠用顆粒を用いて、ロータリー打錠機にて口腔内崩壊錠(打錠条件:錠剤径9.0φ、錠厚4.8mm、1錠あたりの質量280mg)を作製した。
【0043】
比較例1
(メマンチン塩酸塩10mg含有口腔内崩壊錠)
実施例1に記載の薬物含有粒子被覆顆粒137.0g、D-マンニトール(フロイント製、グラニュトールS)121.4g、クロスポビドン(BASF製、コリドンCL-F)8.4g、アスパルテーム(味の素製)9.6g、香料(高砂香料工業製)0.2gを3分間混合した。得られた混合物にステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製)3.6gを加え1分間混合後、ロータリー打錠機にて口腔内崩壊錠(打錠条件:錠剤径7.5φ、錠厚3.5mm、1錠あたりの質量140mg)を作製した。
【0044】
比較例2
(メマンチン塩酸塩10mg含有口腔内崩壊錠)
実施例1に記載の薬物含有粒子被覆顆粒137.0g、D-マンニトール(フロイント製、グラニュトールS)117.8g、結晶セルロース(旭化成製、セオラスPH-302)8.4g、クロスポビドン(BASF製、コリドンCL-F)8.4g、アスパルテーム(味の素製)4.8g、香料(高砂香料工業製)0.2gを3分間混合した。得られた混合物にステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製)3.6gを加え1分間混合後、ロータリー打錠機にて口腔内崩壊錠(打錠条件:錠剤径7.5φ、錠厚3.5mm、1錠あたりの質量140mg)を作製した。
【0045】
実施例1から実施例4、比較例1と比較例2及び市販製剤(比較例3、メマリー(登録商標)OD錠10mg)の錠剤について、加湿前、及び25℃相対湿度75%の条件下で3日間加湿後に、錠剤硬度(平均硬度)及び崩壊時間を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0046】
【0047】
メマンチン塩酸塩を含有する顆粒に、低置換ヒドロキシプロピルセルロースを添加し圧縮成型した実施例1から4の錠剤は、良好な硬度(加湿前硬度;4.4~8.7Kgf)ならびに良好な口腔内崩壊性(加湿前崩壊時間;12~20秒)を示した。さらに、加湿保存後にも良好な硬度(加湿後硬度;2.3~5.6Kgf)及び良好な口腔内崩壊性(加湿後崩壊時間;9~18秒)を保持していた。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有しない比較例1~3の口腔内崩壊錠では加湿保存後の硬度が大きく低下したことと比較して、本発明が奏する効果は顕著に優れたものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により、加湿前のみならず加湿保存後であっても良好な硬度と良好な口腔内崩壊性を併せ持った、ユーザービリティに優れるメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠が提供される。また、本発明によれば、特殊な生産設備を設けることなく、一般的な製造設備にて製造可能であり、容易に大量生産しうるメマンチン塩酸塩含有口腔内崩壊錠が提供される。