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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 157/12 20060101AFI20221222BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20221222BHJP
   C09J 133/26 20060101ALI20221222BHJP
   C09J 139/04 20060101ALI20221222BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221222BHJP
【FI】
C09J157/12
C09J133/14
C09J133/26
C09J139/04
C09J7/38
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017166257
(22)【出願日】2017-08-30
(65)【公開番号】P2019044026
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宇野 栄二
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-510564(JP,A)
【文献】特開2007-131838(JP,A)
【文献】特開2010-241921(JP,A)
【文献】特開2013-177577(JP,A)
【文献】特開2015-160936(JP,A)
【文献】特開2014-101460(JP,A)
【文献】特開2013-237732(JP,A)
【文献】特開2008-050459(JP,A)
【文献】特開2005-187674(JP,A)
【文献】特開2010-95610(JP,A)
【文献】特開昭63-57684(JP,A)
【文献】特開2012-117016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に窒素原子及びビニル基を有し、ホモポリマーを形成した際のガラス転移温度が30℃以下である第1のモノマーと、分子内に窒素原子及びビニル基を有し、ホモポリマーを形成した際のガラス転移温度が60℃以上である第2のモノマーとを含んだモノマー混合物を共重合させて得られるポリマーと、
粘着付与樹脂と
を含み、全原料モノマーの総質量に対して、前記第1のモノマーの使用量は0.5~10質量%であり、前記第2のモノマーの使用量は2~20質量%であり、ヘッドスペース法で算出される揮発性有機化合物中の総炭素量が250μgC/g以下であり、前記モノマー混合物は、(メタ)アクリル酸の使用量が1質量%以下である、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記第1のモノマーは、アミノ基を含んでいる、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記第1のモノマーは、アミノアルキル(メタ)アクリル酸エステルである、請求項に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記第1のモノマーは、tert-ブチルアミノエチルメタクリル酸エステル、ジメチルアミノエチルメタクリル酸エステル、ジエチルアミノエチルメタクリル酸エステル、及びジメチルアミノエチルアクリル酸エステルからなる群より選択される、請求項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記第2のモノマーは、アミド結合を含んでいる、請求項1乃至の何れか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記第2のモノマーは、(メタ)アクリルアミド誘導体、又は、ビニル基を備えたラクタムである、請求項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリルアミド誘導体は、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、又は、ジアセトンアクリルアミドである、請求項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記第2のモノマーは、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、及びN-ビニル-カプロラクタムからなる群より選択される、請求項に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
基材と、
請求項1乃至の何れか1項に記載された粘着剤組成物により前記基材の少なくとも一方の面上に形成された粘着層と
を備えた粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粘着剤組成物及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりから、先進国のみならず新興国においても、工業材料から生じる揮発性有機化合物(VOC)量の低減が要求されている。このような要求は、自動車産業において特に顕著であり、アジアに拠点を有する先進国のメーカを中心に、厳しいVOC量管理が課されている。そのため、自動車製造に用いられる粘着剤についても、VOC量を抑制することが必要である。他方、自動車製造に用いられる粘着剤には、厳しい性能要求が課されており、充分な粘着性能を維持することも必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-177577号公報
【文献】特開2015-183015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の粘着剤では、基本的な粘着性能を維持しつつVOC量を低減させることは困難であった。そこで、本発明は、優れた粘着性能とVOC量の低減とが両立可能な粘着剤組成物及び粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、後述する第1及び第2のモノマーを併用することにより、優れた粘着性能とVOC量の低減とが両立可能であることを見出した。
【0006】
本発明の態様は、例えば、以下の通りである。
[1]分子内に窒素原子及びビニル基を有し、ホモポリマーを形成した際のガラス転移温度が30℃以下である第1のモノマーと、分子内に窒素原子及びビニル基を有し、ホモポリマーを形成した際のガラス転移温度が60℃以上である第2のモノマーとを含んだモノマー混合物を共重合させて得られるポリマーと、粘着付与樹脂とを含み、ヘッドスペース法で算出される揮発性有機化合物中の総炭素量が250μgC/g以下である、粘着剤組成物。
[2]前記第1のモノマーは、アミノ基を含んでいる、[1]に記載の粘着剤組成物。
[3]前記第1のモノマーは、アミノアルキル(メタ)アクリル酸エステルである、[2]に記載の粘着剤組成物。
[4]前記第1のモノマーは、tert-ブチルアミノエチルメタクリル酸エステル、ジメチルアミノエチルメタクリル酸エステル、ジエチルアミノエチルメタクリル酸エステル、及びジメチルアミノエチルアクリル酸エステルからなる群より選択される、[3]に記載の粘着剤組成物。
[5]前記第2のモノマーは、アミド結合を含んでいる、[1]~[4]の何れかに記載の粘着剤組成物。
[6]前記第2のモノマーは、(メタ)アクリルアミド誘導体、又は、ビニル基を備えたラクタムである、[5]に記載の粘着剤組成物。
[7]前記(メタ)アクリルアミド誘導体は、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、又は、ジアセトンアクリルアミドである、[6]に記載の粘着剤組成物。
[8]前記第2のモノマーは、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、及びN-ビニル-カプロラクタムからなる群より選択される、[7]に記載の粘着剤組成物。
[9]前記モノマー混合物は、(メタ)アクリル酸を実質的に含まない、[1]~[8]の何れかに記載の粘着剤組成物。
[10]試験片をSUS板に貼り付け、測定温度を80℃とし、荷重を200gとしたときの定荷重剥離性が、150mm/h以下である、[1]~[9]の何れかに記載の粘着剤組成物。
[11]基材と、[1]~[10]の何れかに記載された粘着剤組成物により前記基材の少なくとも一方の面上に形成された粘着層とを備えた粘着シート。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、充分な粘着性能とVOC量の低減とが両立可能な粘着剤組成物及び粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一態様に係る粘着剤組成物、粘着剤、及び粘着シートについて説明する。
【0009】
なお、本明細書において、「重合体」とは単独重合体および共重合体を包含する意味で用い、「重合」とは単独重合および共重合を包含する意味で用いる。また、式(i)で表される化合物(iは式番号である)を単に「化合物(i)」ともいう。更に、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロはアクリロ又はメタクリロを意味する。
【0010】
[粘着剤組成物]
本発明の一態様に係る粘着剤組成物は、ポリマーと、粘着付与樹脂とを含んでいる。
【0011】
[ポリマー]
上記ポリマーは、分子内に窒素原子及びビニル基を有し、ホモポリマーを形成した際のガラス転移温度が30℃以下である第1のモノマーと、分子内に窒素原子及びビニル基を有し、ホモポリマーを形成した際のガラス転移温度が60℃以上である第2のモノマーとを含んだモノマー混合物を共重合させて得られる。このように、第1及び第2のモノマーを併用することにより、充分な粘着性能とVOC量の低減とを両立させることができる。なお、このモノマー混合物は、第1及び第2のモノマー以外に、1種類又は2種類以上の他のモノマーを更に含んでいてもよい。
【0012】
このポリマーは、通常のラジカル重合法で合成したものであってもよいし、リビングラジカル重合法で合成したものであってもよい。このポリマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される重量平均分子量(Mw)は、例えば50,000~3,000,000であり、好ましくは50,000~2,500,000であり、より好ましくは50,000~2,000,000である。このポリマーのGPC法により測定される分子量分布(Mw/Mn)は、例えば30.0以下であり、好ましくは25.0以下であり、より好ましくは20.0以下である。
【0013】
このポリマーは、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーである。このポリマーは、ランダムポリマーであってもよく、ブロックポリマーであってもよい。このポリマーは、例えば、(メタ)アクリル系ランダムポリマーであってもよく、(メタ)アクリル系ブロックポリマーであってもよい。
【0014】
<第1のモノマー>
第1のモノマーは、分子内に窒素原子及びビニル基を有し、ホモポリマーを形成した際のガラス転移温度が30℃以下である。このガラス転移温度は、好ましくは25℃以下であり、より好ましくは22℃以下であり、更に好ましくは20℃以下である。
【0015】
第1のモノマーは、窒素原子の含有形態として、アミノ基を含んでいることが好ましい。この場合、ホモポリマーを形成した際のガラス転移温度を比較的低く抑えることが可能となる。なお、ここで「アミノ基」とは、1級アミノ基のみならず、2級及び3級アミノ基を含む概念として用いている。上記アミノ基は、3級アミノ基であることが好ましく、3級アミノ基は、環状アミノ基であってもよい。
【0016】
第1のモノマーが2級又は3級アミノ基を含んでいる場合、アミノ基の窒素原子は、アルキル基によって修飾されていることが好ましい。このアルキル基としては、例えば、炭素数1~6のものが挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられる。
【0017】
第1のモノマーは、より好ましくは、アミノアルキル(メタ)アクリル酸エステルである。アミノアルキル(メタ)アクリル酸エステル中のアミノ基の好ましい態様については、上記と同様である。また、アミノアルキル基中のアルキル基としては、例えば、炭素数1~6のものが挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられる。アミノアルキル基としては、例えば、tert-ブチルアミノエチル基、ジメチルアミノエチル基、及びジエチルアミノエチル基が挙げられる。
【0018】
第1のモノマーの具体例としては、tert-ブチルアミノエチルメタクリル酸エステル(TBAEMA)、ジメチルアミノエチルメタクリル酸エステル(DMAEMA)、ジエチルアミノエチルメタクリル酸エステル(DEAEMA)、及びジメチルアミノエチルアクリル酸エステル(DMAEA)が挙げられる。これらの構造及びホモポリマーを形成した際のガラス転移温度を以下の表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
第1のモノマーは、2種類以上用いてもよい。第1のモノマーの合計含有量には特に制限はないが、例えば、全原料モノマーの総質量に対して、0.5~10質量%とし、好ましくは0.6~8質量%とし、より好ましくは0.7~7質量%とし、更に好ましくは0.8~6質量%とする。第1のモノマーの含有量が過度に多いと、他のモノマー成分の含有量が相対的に低下し、粘着性能がやや低下することがある。第1のモノマーの含有量が過度に少ないと、第1のモノマーを添加する効果がやや弱くなる。
【0021】
<第2のモノマー>
第2のモノマーは、分子内に窒素原子及びビニル基を有し、ホモポリマーを形成した際のガラス転移温度が60℃以上である。このガラス転移温度は、好ましくは65℃以上であり、より好ましくは70℃以上であり、更に好ましくは75℃以上である。
【0022】
第2のモノマーは、窒素原子の含有形態として、アミド結合を含んでいることが好ましい。この場合、ホモポリマーを形成した際のガラス転移温度を比較的高くすることが可能となる。なお、このアミド結合は、ラクタム構造の一部であってもよい。
【0023】
第2のモノマーは、好ましくは、(メタ)アクリルアミド誘導体、又は、ビニル基を備えたラクタムである。
【0024】
上記(メタ)アクリルアミド誘導体は、例えば、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、又は、ジアセトンアクリルアミドである。このアルキル基としては、例えば、炭素数1~6のものが挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられる。
【0025】
第2のモノマーの具体例としては、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)、N,N-ジエチルアクリルアミド(DEAA)、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)、N-アクリロイルモルホリン(ACMO)、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)、及びN-ビニル-カプロラクタム(NVC)が挙げられる。これらの構造及びホモポリマーを形成した際のガラス転移温度を以下の表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
第2のモノマーは、2種類以上用いてもよい。第2のモノマーの合計含有量には特に制限はないが、例えば、全原料モノマーの総質量に対して、1~20質量%とし、好ましくは2~16質量%とし、より好ましくは2.5~14質量%とし、更に好ましくは3~12質量%とする。第2のモノマーの含有量が過度に多いと、他のモノマー成分の含有量が相対的に低下し、粘着性能がやや低下することがある。第2のモノマーの含有量が過度に少ないと、第2のモノマーを添加する効果がやや弱くなる。
【0028】
<その他のモノマー>
その他のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルが主に用いられるが、それ以外の官能基含有モノマー及び共重合性モノマーなどを更に用いることもできる。
【0029】
《(メタ)アクリル酸エステル》
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、脂環式基または芳香環含有(メタ)アクリレートが挙げられる。ただし、(メタ)アクリル酸エステルからは、水酸基含有(メタ)アクリレート及びカルボキシル基含有(メタ)アクリレート等の官能基含有(メタ)アクリレートを除く。
【0030】
アルキル(メタ)アクリレートでのアルキル基の炭素数は、1~20であることが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、iso-ステアリル(メタ)アクリレート、ジデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0031】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-エトキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0032】
アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
脂環式基または芳香環含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートイソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステルは1種単独で、または2種以上を使用することができる。(メタ)アクリル酸エステルの全使用量は、全原料モノマーの総質量に対して、例えば70~99.9質量%、好ましくは80~99.5質量%、より好ましくは85~98.95質量%である。
【0035】
《官能基含有モノマー》
上記第1及び第2のモノマーを除く官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー及び酸基含有モノマーが挙げられる。酸基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、リン酸基、硫酸基が挙げられる。
【0036】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロシキブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートでのアルキル基の炭素数は、通常2~8、好ましくは2~6である。
【0037】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸5-カルボキシペンチル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸が挙げられる。酸無水物基含有モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸が挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、側鎖にリン酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーが挙げられ、硫酸基含有モノマーとしては、側鎖に硫酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。
【0038】
官能基含有モノマーは1種単独で、または2種以上を使用することができる。上記第1及び第2のモノマーを除く官能基含有モノマーの全使用量は、全原料モノマーの総質量に対して、0~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05~5質量%である。
【0039】
《共重合性モノマー》
共重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、へキシルスチレン、ヘプチルスチレンおよびオクチルスチレン等のアルキルスチレン、フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨウ化スチレン、ニトロスチレン、アセチルスチレンおよびメトキシスチレン等のスチレン系単量体、酢酸ビニルが挙げられる。
共重合性モノマーは1種単独で、または2種以上を使用することができる。
【0040】
なお、上記ポリマーを製造するためのモノマー混合物は、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有モノマーを実質的に含んでいないことが好ましい。カルボキシル基含有モノマーの使用量は、全原料モノマーの総質量に対して、例えば3質量%以下とし、好ましくは2質量%以下とし、より好ましくは1質量%以下とする。このような構成を採用すると、VOC量を更に低減することが可能となる。
【0041】
[粘着付与樹脂]
本発明の一態様に係る粘着剤組成物は、粘着付与樹脂を含んでいる。粘着剤組成物を構成する成分として上記ポリマー以外に粘着付与樹脂を併用することで、例えば、一般にアクリル系粘着剤にとっての難接着被着体である、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系被着体に対しても良好な接着性(粘着性)を発揮することができる。また、得られる粘着剤層の定荷重剥離耐性を向上させることができる。
【0042】
粘着付与樹脂としては、ロジンエステル樹脂を用いることが好ましく、特に重合ロジンエステル樹脂を併用してもよい。粘着付与樹脂としては、例えば、テルペン系粘着付与樹脂又は炭化水素系石油樹脂を用いてもよい。
【0043】
粘着付与樹脂は、1種類で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。粘着剤組成物中の粘着付与樹脂の合計含有量は、ポリマー100質量部に対して、例えば1~40質量部、好ましくは5~35質量部、より好ましくは10~30質量部とする。
【0044】
[その他の成分]
粘着剤組成物は、その他の成分として、架橋剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、有機溶媒、酸化防止剤、光安定剤、金属腐蝕防止剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋促進剤、ナノ粒子などを更に含有していてもよい。
【0045】
〈架橋剤〉
架橋剤としては、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、金属キレート系化合物などが挙げられる。
【0046】
イソシアネート系化合物としては、1分子中のイソシアネート基数が2以上のイソシアネート化合物が通常用いられる。イソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の炭素数4~30の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチルジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の炭素数7~30の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート等の炭素数8~30の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0047】
1分子中のイソシアネート基数が3以上のイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。具体的には、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、4,4´,4″-トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。さらに、イソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの3量体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはトリレンジイソシアネートのビウレット体またはイソシアヌレート体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートの3分子付加物)、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばヘキサメチレンジイソシアネートの3分子付加物)、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートが挙げられる。
【0048】
エポキシ系化合物としては、例えば、1分子中のエポキシ基数が2以上のエポキシ化合物が通常用いられる。例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N´,N´-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、N,N,N´ ,N´-テトラグリシジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、m-N,N-ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルトルイジン、N,N-ジグリシジルアニリンが挙げられる。
【0049】
金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属に、アルコキシド、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等が配位した化合物が挙げられる。具体的には、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネートが挙げられる。
【0050】
架橋剤は、上記ポリマーとの合計100質量部に対して0.01~10質量部、好ましくは、0.01~8質量部、さらに好ましくは0.01~5質量部の範囲にある。この範囲で架橋剤を含むと、要求される種々の粘着物性間のバランスを取ることができる。
【0051】
〈シランカップリング剤〉
シランカップリング剤は、粘着剤層を特にガラス基板等の被着体に対して強固に接着させ、高湿熱環境下における粘着層の剥がれを防止することができる。
【0052】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有シランカップリング剤;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン,N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シランカップリング剤が挙げられる。
【0053】
このうち、応力緩和性などの点でエポキシ基含有シランカップリング剤が好ましい。本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は、上記ポリマー100質量部に対して、通常1質量部以下、好ましくは0.01~1質量部、より好ましくは0.05~0.5質量部である。含有量が前記範囲にあると、高湿熱環境下における粘着層の剥がれや、高温環境下におけるシランカップリング剤のブリードが防止される傾向にある。
【0054】
〈帯電防止剤〉
帯電防止剤としては、例えば、界面活性剤、イオン性化合物、導電性ポリマーが挙げられる。
【0055】
界面活性剤としては、例えば、4級アンモニウム塩類、アミド4級アンモニウム塩類、ピリジウム塩類、第1級~第3級アミノ基等のカチオン性基を有するカチオン性界面活性剤;スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基等のアニオン性基を有するアニオン性界面活性剤;アルキルベタイン類、アルキルイミダゾリニウムベタイン類、アルキルアミンオキサイド類、アミノ酸硫酸エステル類等の両性界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル類、N-ヒドロキシエチル-N-2-ヒドロキシアルキルアミン類、アルキルジエタノールアミド類等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0056】
また、界面活性剤として重合性基を有する反応型乳化剤も挙げられ、上記の界面活性剤または反応性乳化剤を含むモノマー成分を高分子量化したポリマー系界面活性剤を用いることもできる。
【0057】
導電性ポリマーとしては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールおよびこれらの誘導体が挙げられる。
【0058】
本発明の組成物において、帯電防止剤の含有量は、上記ポリマー100質量部に対して、通常3質量部以下、好ましくは0.01~3質量部、より好ましくは0.05~2.5質量部である。
【0059】
〈有機溶媒〉
本発明に係る粘着剤組成物は、必ずしも溶媒を含まなくともよいが、その塗工性を調整するため、有機溶媒を含有していてもよい。本発明の一態様に係る粘着剤組成物において、有機溶媒の含有量は、通常30~90質量%、好ましくは30~85質量%である。なお、本明細書において「固形分」とは、粘着剤組成物中の含有成分のうち上記有機溶媒を除いた全成分をいい、「固形分濃度」とは、粘着剤組成物100質量%に対する前記固形分の割合をいう。
【0060】
本発明に係る粘着剤組成物は、ヘッドスペース法で算出されるVOC中の総炭素量が250μgC/g以下である。このような低いVOC量は、上述した第1及び第2のモノマーを併用することによって達成できる。
【0061】
本発明の一態様に係る粘着剤組成物は、試験片をSUS板に貼り付け、測定温度を80℃とし、荷重を200gとしたときの定荷重剥離性が、好ましくは150mm/h以下であり、より好ましくは100mm/h以下であり、更に好ましくは50mm/h以下である。第1及び第2のモノマーを併用することにより、VOC量を低減しつつ、高い粘着性能を達成することが可能となる。
【0062】
本発明に係る粘着剤組成物の用途に制限はない。本発明の一態様に係る粘着剤組成物は、例えば、自動車製造用途に使用される。上述した通り、自動車の製造においては、厳しい環境基準が要求される。本発明の一態様に係る粘着剤組成物は、低VOC量を実現可能であるため、自動車製造用途に特に有用である。
【0063】
[粘着剤]
本発明に係る粘着剤は、上述した粘着剤組成物により形成される。この粘着剤のゲル分率は特に限定されないが、通常、80質量%以下である。
【0064】
[粘着シート]
本発明に係る粘着シートは、剥離処理されたカバーフィルム(以下で、セパレータ、とも称する)上に形成された粘着剤層のみを有する両面粘着シート、基材と、基材の両面に形成された上記粘着剤層とを有する両面粘着シート(この場合、基材を芯材とも称する)、基材と、基材の一方の面に形成された上記粘着剤層を有する片面粘着シート、及びそれら粘着シートの粘着剤層の基材と接していない面に剥離処理されたカバーフィルムが貼付された粘着シートを含む。
【0065】
基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルム、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルム、織布及び不織布が挙げられる。また、プラスチックフィルム、織布及び不織布は、各種添加剤を配合したものや複数の層が積層されたものなどを用いることができる。
【0066】
カバーフィルムとしては、例えば、任意で表面に剥離処理がされたポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルム、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムが挙げられる。また、プラスチックフィルムは、各種添加剤を配合したものや複数の層が積層されたものなどを用いることができる。
【0067】
粘着剤組成物の塗布方法としては、公知の方法、例えばスピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法により、所定の厚さになるように塗布・乾燥する方法を用いることができる。
【実施例
【0068】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を意味する。
【0069】
[Mw、Mn]
上記ポリマーについて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により、下記条件で、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を求めた。
・測定装置:HLC-8320GPC(東ソー株式会社製)
・GPCカラム構成:以下の4連カラム(すべて東ソー株式会社製)
(1)TSKgel HxL-H(ガードカラム)
(2)TSKgel GMHxL
(3)TSKgel GMHxL
(4)TSKgel G2500HxL
・流速:1.0mL/min
・カラム温度:40℃
・サンプル濃度:1.5%(w/v)(テトラヒドロフランで希釈)
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・標準ポリスチレン換算
【0070】
[ポリマーの合成]
[合成例1~15]
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた反応装置に、n-ブチルアクリレート(BA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)、N-アクリロイルモルホリン(ACMO)、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)、ジメチルアミノエチルメタクリル酸エステル(DMAEMA)、アクリル酸(AA)を表3の割合とし、酢酸エチルを100部仕込み、窒素ガスを導入しながら80℃に昇温した。次いで、tert-ブチルパーオキシピバレート0.1部を加え、窒素ガス雰囲気下、80℃で6時間重合反応を行った。反応終了後、酢酸エチルにて希釈し固形分濃度50質量%のポリマー溶液を調製した。得られたポリマーの特性を表3に合わせて示す。
【0071】
【表3】
【0072】
なお、合成例1~8では、第1及び第2のモノマーを併用している。合成例10~15では、第2のモノマーを用いているものの、第1のモノマーが含まれていない。合成例9では、第1及び第2のモノマーの代わりに、アクリル酸(AA)を使用している。
【0073】
[実施例1~8及び比較例1~7]
合成例1~15で得られたポリマーと、粘着付与樹脂と、イソシアネート系架橋剤とを以下の表4及び表5に記載した組み合わせ及び比率で混合し、粘着剤組成物を得た。ここで、粘着付与樹脂としては、PCJ(重合ロジンエステル樹脂、ハリマ化成製)を用いた。また、イソシアネート系架橋剤としては、L-45(綜研化学株式会社製;組成:トリレンジイソシアネート)を用いた。
【0074】
得られた各粘着剤組成物を、テープ厚が表4及び表5に示す値になるように調整して軽剥離フィルムに塗工し、それを乾燥した後、厚みが25μmのPETフィルム(ルミラー:東レ社製)に転写した。このようにして、基材上に粘着層を形成し、粘着シートを製造した。
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
[保持力]
保持力の測定は、JIS Z 1541に準拠して行い、粘着シートを20mm幅に裁断し、SUS板に20×20mmの面積が接するように貼付け、温度40℃の条件で1Kgの荷重をかけ、1時間放置したときの落下の有無を観察した。その結果を上記表4及び表5に併せて示す。
【0078】
[粘着力]
上記手順で作成した粘着シートを用い、25℃/50%RH条件下で、露出させた粘着層面をSUS板又はPP板に2kgのローラーを用いて圧着(貼付)した。貼付から20分静置した後、SUS板又はPP板から粘着シートを23℃/50%RH、剥離角度180°の条件で、剥離速度300mm/minで剥離し、粘着シートの粘着剤層の剥離力(粘着力)を測定した。その結果を上記表4及び表5に併せて示す。なお、表4及び5において、記号afは界面剥離を意味し、記号cfは粘着剤の凝集破壊を意味し、記号zはジッピングが生じたことを意味している。
【0079】
[定荷重剥離性]
露出させた粘着層面を、表裏面が水平方向と平行を成すように配置されたSUS板又はPP板の下面側に貼り合わせた。次に、SUS板又はPP板に貼り付けられた試験片の長手方向の一端側の端部に、鉛直方向下方側に荷重を加えた状態で、60分間放置したときの試験片の長手方向における剥がれ距離(mm)又は落下までの時間(min)を測定した。なお、試験片の長手方向の長さは50mmとした。また、荷重は測定温度が40℃のとき100g、80℃のとき200gとした。その結果を下記の基準で評価し、上記表4及び表5に併せて示す。
【0080】
AAA…50mm/h以下
AA…100mm/h以下
A…150mm/h以下
B…150mm/hより大きい
【0081】
[総炭素量]
ヘッドスペース法を用いて、揮発性有機化合物(VOC)中の総炭素量を算出した。具体的には、得られた粘着シートから1cm2を採取して、両面の紙セパレータを剥がして不織布に貼付け、直ちに試料の秤量をおこなった後、バイアル瓶に入れて密栓した。その後、120℃で5時間加熱して、加熱状態のガス1mLをガスクロマトグラフ装置に注入して測定を行なった。ガスクロマトグラフによる測定に検出される総ピーク面積値を算出し、これを一定量のアセトンを用いて同条件で測定した際の総ピーク面積値を元に、試料中からピークとして観測された全ての化学種をアセトンとみなして質量換算し、これを総炭素量(μgC/g)とした。なお、ヘッドスペースオートサンプラーとしてAgilent G1888(アジレントテクノロジー株式会社製)、ガスクロマトグラフとしてAgilent Technologies 6850(アジレントテクノロジー株式会社製)を用いた。
【0082】
[結果の分析]
表4及び表5に示す通り、比較例1の構成では、揮発性有機化合物(VOC)中の総炭素量が250μgC/gを超えていた。また、比較例2乃至7の構成では、定荷重剥離性が150mm/hを超えていた。これに対し、実施例1乃至8の構成では、揮発性有機化合物(VOC)中の総炭素量を250μgC/g以下に抑えつつ、優れた粘着性能を達成することができた。