(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】油性化粧料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/894 20060101AFI20221222BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20221222BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20221222BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
A61K8/894
A61K8/891
A61K8/31
A61Q1/02
(21)【出願番号】P 2018018191
(22)【出願日】2018-02-05
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】久保田 俊
(72)【発明者】
【氏名】大澤 友
(72)【発明者】
【氏名】田島 祥二
(72)【発明者】
【氏名】木村 元春
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0260698(US,A1)
【文献】特許第6030257(JP,B1)
【文献】特開2015-168635(JP,A)
【文献】特開2017-137249(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107648056(CN,A)
【文献】Careline, Israel,Inkliner Gel,Mintel GNPD [online],2018年01月,Intenet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#5392935, [検索日:2022.06.24], 製品詳細, 製品情報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/90
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4質量%~22質量のポリエーテル変性シリコーンワックスと、
40質量%~80質量%の油性成分と、
を含有し、
前記油性成分は、前記油性成分の質量に対して46質量%以上の揮発性油性成分を含み、
前記ポリエーテル変性シリコーンワックスは、下記化1で表される化合物を含み、
前記揮発性油性成分の含有率は、非乳化油性化粧料の質量に対して25質量%以上である、非乳化油性化粧料。
【化1】
(m及びnは、独立して10~24の整数である。)
【請求項2】
前記揮発性油性成分はシリコーン油を含む、請求項1に記載の非乳化油性化粧料。
【請求項3】
前記非乳化油性化粧料の質量に対して10質量%~40質量%の粉末をさらに含有する、請求項1又は2に記載の非乳化油性化粧料。
【請求項4】
前記粉末は吸油性粉末を含む、請求項3に記載の非乳化油性化粧料。
【請求項5】
水の含有率が5質量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の油性化粧料。
【請求項6】
前記ポリエーテル変性シリコーンワックスは、ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシランを含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の非乳化油性化粧料。
【請求項7】
前記油性成分は、エステル油及び不揮発性シリコーン油のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の非乳化油性化粧料。
【請求項8】
前記油性成分は紫外線吸収剤を含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の非乳化油性化粧料。
【請求項9】
前記油性成分中の前記揮発性油性成分の割合は、前記油性成分の質量に対して48質量%~74質量%であり、
前記揮発性油性成分の含有率は、前記非乳化油性化粧料の質量に対して28質量%~46質量%である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の非乳化油性化粧料。
【請求項10】
親水性のポリエーテル変性シリコーンワックスを第1の油性成分に溶解させて溶液を作製する工程と、
前記溶液と第2の油性成分とを混合する工程と、を含み、
前記ポリエーテル変性シリコーンワックスは非乳化油性化粧料の質量に対して4質量%~22質量であり、
前記ポリエーテル変性シリコーンワックスは、下記化2で表される化合物を含み、
水の添加量は非乳化油性化粧料の質量に対して5質量%以下である、
非乳化油性化粧料の製造方法。
【化2】
(m及びnは、独立して10~24の整数である。)
【請求項11】
前記第1の油性成分は紫外線吸収剤を含む、請求項
10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記第1の油性成分は、4-メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、オクトクリレン、ジエチルアミノヒドロキシ安息香酸ヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、及びビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項
10又は
11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記第2の油性成分は揮発性油性成分を含む、請求項
10~
12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記揮発性油分はシリコーン油を含む、請求項
13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ポリエーテル変性シリコーンワックスは、ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシランを含む、請求項
10~
14のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油性化粧料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用感を高めるためにシリコーン化合物と増粘剤とを組み合わせた化粧料が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の水性皮膚化粧料は、特定の構造式で表されるシリコーン化合物と、特定の製法で作製されたミクロゲルからなる増粘剤と、を含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油性化粧料で化粧した肌は水に対する濡れ性が低くなるため、化粧上の汗は玉状になりやすい。玉状の汗は、表面積が小さく蒸発しにくい。蒸発せずに顔上に形成された玉状の汗は流れ落ちやすく、流れ落ちる汗は化粧崩れの原因となる。汗が流れ落ちないようにタオル等で汗を拭き取ることも化粧崩れの原因となる。さらに、特に女性は、美的観点から顔に玉状の汗が浮き出ている状態を好まない。そこで、汗対策が可能な油性化粧料が望まれている。
【0005】
特許文献1に記載のような水性化粧料は、油性化粧料よりも汗に対して親和性が高く化粧崩れしやすい。
【0006】
また、特許文献1に記載の水性皮膚化粧料に配合されたシリコーン化合物は、油性化粧料に配合させようとしても、親水性であるため油性化粧料に均一に分散させて配合することは困難であった。そこで、親水性のシリコーンワックスを油性化粧料に均一に配合する製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1視点によれば、4質量%~22質量のポリエーテル変性シリコーンワックスと、40質量%~80質量%の油性成分と、を含有する非乳化油性化粧料が提供される。油性成分は、油性成分の質量に対して46質量%以上の揮発性油性成分を含む。ポリエーテル変性シリコーンワックスは、下記化1で表される化合物を含む。揮発性油性成分の含有率は、非乳化油性化粧料の質量に対して25質量%以上である。
【0008】
本開示の第2視点によれば、親水性のポリエーテル変性シリコーンワックスを第1の油性成分に溶解させて溶液を作製する工程と、溶液と第2の油性成分とを混合する工程と、を含む、非乳化油性化粧料の製造方法が提供される。ポリエーテル変性シリコーンワックスは非乳化油性化粧料の質量に対して4質量%~22質量である。ポリエーテル変性シリコーンワックスは、下記化2で表される化合物を含む。水の添加量は非乳化油性化粧料の質量に対して5質量%以下である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の油性化粧料によれば、化粧料を塗布した領域に玉状の汗の形成が形成されることを抑制することができる。これにより、汗の乾燥を促進することができる。また、汗の垂れ落ちや汗の拭き取りによる化粧崩れを抑制することができる。さらに、外見上汗を目立たなくさせることができる。
【0010】
本開示の油性化粧料の製造方法によれば、親水性シリコーンワックスを均一に配合させた油性化粧料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第2実施形態に係る油性化粧料の製造方法の概略工程図。
【
図2】試験例1及び2に係る化粧料を塗布して汗をかいた時の顔上部の写真。
【
図3】試験例1及び2に係る化粧料を塗布して汗をかいた時の顔下部の写真。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記第1視点の好ましい形態によれば、揮発性油性成分はシリコーン油を含む。
【0013】
上記第1視点の好ましい形態によれば、油性化粧料は、油性化粧料の質量に対して10質量%~40質量%の粉末をさらに含有する。
【0014】
上記第1視点の好ましい形態によれば、粉末は吸油性粉末を含む。
【0015】
上記第1視点の好ましい形態によれば、水の含有率が5質量%以下である。
【0016】
上記第1視点の好ましい形態によれば、ポリエーテル変性シリコーンワックスは、下記化1で表される化合物を含む。
【0017】
【化1】
(m及びnは、独立して10~24の整数である。)
【0018】
上記第1視点の好ましい形態によれば、ポリエーテル変性シリコーンワックスは、ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシランを含む。
【0019】
上記第1視点の好ましい形態によれば、油性成分は、エステル油及び不揮発性シリコーン油のうちの少なくとも1つを含む。
【0020】
上記第1視点の好ましい形態によれば、油性成分は紫外線吸収剤を含む。
【0021】
上記第1視点の好ましい形態によれば、油性成分中の揮発性油性成分の割合は、油性成分の質量に対して48質量%~74質量%である。揮発性油性成分の含有率は、油性化粧料の質量に対して28質量%~46質量%である。
【0022】
上記第2視点の好ましい形態によれば、第1の油性成分は紫外線吸収剤を含む。
【0023】
上記第2視点の好ましい形態によれば、第1の油性成分は、4-メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、オクトクリレン、ジエチルアミノヒドロキシ安息香酸ヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、及びビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0024】
上記第2視点の好ましい形態によれば、第2の油性成分は揮発性油性成分を含む。
【0025】
上記第2視点の好ましい形態によれば、揮発性油分はシリコーン油を含む。
【0026】
上記第2視点の好ましい形態によれば、ポリエーテル変性シリコーンワックスは、下記化2で表される化合物を含む。
【0027】
【化2】
(m及びnは、独立して10~24の整数である。)
【0028】
上記第2視点の好ましい形態によれば、ポリエーテル変性シリコーンワックスは、ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシランを含む。
【0029】
本開示の第1実施形態に係る油性化粧料について説明する。油性化粧料は、ポリエーテル変性シリコーンワックスと、油性成分と、を含有する。
【0030】
[ポリエーテル変性シリコーンワックス]
ポリエーテル変性シリコーンワックスとしては、例えば、ポリオキシエチレン変性シリコーンワックスを使用することができる。ポリオキシエチレン変性シリコーンワックスとしては、例えば、下記化3で表される化合物を使用することができる。
【0031】
ポリオキシエチレン変性シリコーンワックス、特に下記化3で表される化合物、を使用すると、水に対する濡れ性を高めることができる。これによって、肌に塗布した化粧上に玉状の汗が形成されることを抑制することができる。すなわち、表面積が大きくなるように化粧面(肌面)に沿って汗を薄く拡げることができる。
【0032】
【0033】
上記化3におけるm及びnは、独立して10~24の整数とすることができる。mとnは、異なる数であってもよいし、同じ数であってもよい。シリコーンワックスとしては、例えば、m及びnがそれぞれ平均18であるビスPEG-18メチルエーテルジメチルシランを使用することができる。ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシランの市販品としては、例えば、Dow Corning(登録商標)2501 Cosmetic Wax(東レ・ダウコーニング社)が挙げられる。
【0034】
シリコーンワックスの含有率は、油性化粧料の質量に対して、4質量%以上であると好ましく、5質量%以上であるとより好ましい。シリコーンワックスの含有率が4質量%未満であると、汗に対して濡れ性を高める効果を十分に発揮することができない。汗の速乾性をより高めたい場合には、シリコーンワックスの含有率は、油性化粧料の質量に対して、7質量%以上であると好ましく、10質量%以上であるとより好ましく、13質量%以上であるとより好ましく、15質量%以上であるとより好ましく、17質量%以上であるとさらに好ましい。シリコーンワックスの含有率は、油性化粧料の質量に対して、22質量%以下であると好ましく、20質量%以下であるとより好ましい。シリコーンワックスの含有率が22質量%を超えると、化粧崩れしやすくなってしまう。化粧崩れをより抑制した場合には、シリコーンワックスの含有率は、油性化粧料の質量に対して、18質量%以下であると好ましく、15質量%以下であるとより好ましく、13質量%以下であるとより好ましく、10質量%以下であるとより好ましく、8質量%以下であるとさらに好ましい。
【0035】
[油性成分]
本開示の油性化粧料に用いられる油性成分としては、皮膚外用剤や化粧品に一般に用いられ得るものを用いることができる。具体的には、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン油等が挙げられる。なお、本書では、油分及び油分に可溶な成分も含めて「油性成分」と称している。
【0036】
油性成分は、揮発性油性成分を含有する。本開示において「揮発性」とは、肌に塗布したときに、室温、外気温又は体温で容易に揮発可能であることをいう。揮発性油性成分としては、シリコーン油、炭化水素油等を使用することができる。揮発性シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン構造を有するシリコーン油を使用することができる。揮発性炭化水素油としては、例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン、イソデカン等を挙げることができる。
【0037】
油性化粧料が肌に塗布されると、油性化粧料中の揮発性油性成分の大部分は揮発する。揮発性油性成分が揮発すると揮発性油性成分が存在していた部分は空隙となり、汗の通り道になると考えられる。そこで、汗が油性化粧料上に拡散しやすくするために、揮発性油性成分の含有率は、油性化粧料の質量に対して、25質量%以上であると好ましく、28質量%以上であるとより好ましく、30質量%以上であるとさらに好ましい。揮発性油性成分が25質量%未満であると、速乾性及び化粧もちが低下してしまうと共に、使用性も低下してしまう。揮発性油性成分の含有率は、油性化粧料の質量に対して、35質量%以上、40質量%以上、又は45質量%以上とすることもできる。揮発性油性成分の含有率は、油性化粧料の質量に対して、少なくとも50質量%以下であれば十分な速乾性及び化粧もちを維持することができる。速乾性及び化粧もちに加えて、使用性を確保するためには、揮発性油性成分の含有率は、油性化粧料の質量に対して、48質量%以下であると好ましく、46質量%以下であるとより好ましく、44質量%以下であるとより好ましく、42質量%以下であるとさらに好ましい。揮発性油性成分が48質量%を超えると、肌への塗布時に乾燥が遅くなって使用性が低下してしまう。揮発性油性成分の含有率は、油性化粧料の質量に対して、40質量%以下、35質量%以下、又は30質量%以下とすることもできる。
【0038】
速乾性及び化粧もちを確保するためには、油性成分中の揮発性油性成分は、全油性成分の質量に対して、46質量%以上であると好ましく、48質量%以上であるとより好ましく、50質量%以上であるとより好ましく、52質量%以上であるとより好ましく、54質量%以上であるとさらに好ましい。油性成分中の揮発性油性成分は、所望の配合に応じて、油性成分の質量に対して、80質量%以下、75質量%以下、又は70質量%以下とすることができる。
【0039】
速乾性及び化粧もちに加えて使用性を高めるためには、油性成分中の揮発性油性成分は、全油性成分の質量に対して、46質量%以上であると好ましく、48質量%以上であるとより好ましく、50質量%以上であるとより好ましく、52質量%以上であるとより好ましく、54質量%以上であるとさらに好ましい。油性成分中の揮発性油性成分は、全油性成分の質量に対して、74質量%以下であると好ましく、72質量%以下であるとより好ましく、70質量%以下であるとより好ましく、68質量%以下であるとより好ましく、66質量%以下であるとさらに好ましい。
【0040】
油性化粧料は不揮発性油性成分を含有することができる。
【0041】
本開示の油性化粧料は紫外線吸収剤を含有すると好ましい。紫外線吸収剤は、以下で例に挙げた化合物のうち、ベンゼン骨格を有する紫外線吸収剤であると好ましい。このような紫外線吸収剤を用いることによって、親水性のシリコーンワックスを油性化粧料中に均一に分散させることができる。紫外線吸収剤、例えば、4-メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、オクトクリレン、ジエチルアミノヒドロキシ安息香酸ヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、及びビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンからなる群から選択される少なくとも1つであると好ましい。
【0042】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
【0043】
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0044】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0045】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0046】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
【0047】
高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等);分枝鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等が挙げられる。
【0048】
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0049】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ステアロキシメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、未末端変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、シリコーンゲル、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーンRTVゴム等のシリコーン化合物等が挙げられる。
【0050】
紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等);桂皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルメトキシシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等);3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル) ベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン、ジモルホリノピリダジノ;2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート;2,4-ビス-{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-(1,3,5)-トリアジン等が挙げられる。
【0051】
全油性成分の含有率は、油性化粧料の質量に対して、40質量%以上であると好ましい。全油性成分が40質量%以上であれば、油性化粧料の速乾性及び化粧持ちを維持することができる。全油性成分の含有率は、油性化粧料の質量に対して、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、又は65質量%以上とすることもできる。全油性成分の含有率は、油性化粧料の質量に対して、80質量%以下であると好ましく、75質量%以下であるとより好ましく、70質量%以下であるとさらに好ましい。油性成分の含有率が少なくとも80質量%以下であれば、油性化粧料の速乾性及び化粧持ちを維持することができる。全油性成分の含有率は、油性化粧料の質量に対して、65質量%以下、60質量%以下、又は55質量%以下とすることもできる。
【0052】
[粉末]
本開示の油性化粧料は、粉末をさらに含有することができる。本明細書において使用する用語「粉末」は「粉体」と同義である。粉体は、化粧料用途等、一般に用い得るものであれば特に限定されるものではない。粉体としては、例えば、タルク、カオリン、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、合成フッ素金雲母、合成フッ素金雲母鉄、紅雲母、黒雲母、焼成タルク、焼成セリサイト、焼成白雲母、焼成金雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、窒化ホウ素、フォトクロミック性酸化チタン(酸化鉄を焼結した二酸化チタン、)、還元亜鉛華;有機粉末(例えば、シリコーンエラストマー粉末、シリコーン粉末、シリコーンレジン被覆シリコーンエラストマー粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末等);無機白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等);無機褐色系顔料(例えば、γ-酸化鉄等);無機黄色系顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等);無機黒色系顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);パール顔料(例えば、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、低次酸化チタン被覆雲母チタン、フォトクロミック性を有する雲母チタン、基板として雲母の代わりタルク、ガラス、合成フッ素金雲母、シリカ、オキシ塩化ビスマスなどを使用したもの、被覆物として酸化チタン以外に、低次性酸化チタン、着色酸化チタン、酸化鉄、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化コバルト、アルミなどを被覆したもの、機能性パール顔料(パール顔料表面に樹脂粒子、水酸化アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、硫酸バリウム粒子等を被覆したもの)等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β-カロチン等)等が挙げられる。
【0053】
粉末の平均粒径、比表面積、比重、粒子形状、多孔質又は非多孔質、親水性又は疎水性、表面処理の有無等は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、粉末の親油性や吸油性を高めるために、粒子表面を疎水化処理した粉末(吸油性粉末)を使用することができる。粉体は、異なる種類の混合物であってもよい。
【0054】
粉体の含有率は、油性化粧料の目的に応じて適宜設定することができる。粉体の含有率は、例えば、油性化粧料の質量に対して、5質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上とすることができる。粉体の含有率は、例えば、油性化粧料の質量に対して、45質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下とすることができる。
【0055】
[水相]
本開示の油性化粧料は、水をさらに含有することができる。汗による化粧崩れを抑制するため、水の含有率は低いと好ましく、油性化粧料の質量に対して、10質量%以下であると好ましく、5質量%以下であるとより好ましく、3質量%以下であるとさらに好ましい。油性化粧料は、水を実質的に含有しないと好ましい。
【0056】
[その他の成分]
本開示の組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、他の成分、例えば、アルコール、糖類、エステル、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、増粘剤、保湿剤、水溶性高分子、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等を必要に応じて適宜含有することができる。
【0057】
本開示の油性化粧料は、塗布した領域に汗をかいても汗が玉状になることを抑制することができる。油性化粧料を塗布した領域の濡れ性が高まるため、汗が拡散し、汗の乾燥を促進させることができる。これにより、汗の拭き取りを要しないので、拭き取りによる化粧崩れを抑制することができる。さらに、汗の垂れ落ちも抑制することができるので、汗の垂れ落ちによる化粧崩れも抑制することができる。玉状の汗を浮き上がらせないことによって美的外観を高めることができる。
【0058】
さらに、本開示の化粧料によれば、油性化粧料を肌に塗布しているときのぬるつきを抑制することもできる。
【0059】
油性化粧料にメーキャップ成分も配合することにより、メーキャップ自体が汗拡散機能を有することができる。
【0060】
本開示の油性化粧料は、肌への塗布時にとまりが速い。したがって、使用者は、塗布時間を短縮することができると共に、心地よい使用感を得ることができる。
【0061】
本開示の油性化粧料について、油性化粧料の組成又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でない場合が生じる可能性があり得る。この場合には、後述の製造方法や使用方法によって本開示の油性化粧料を特定することが有用である。
【0062】
第2実施形態として、本開示の第1実施形態に係る油性化粧料の製造方法について説明する。
図1に、油性化粧料の製造方法の概略工程図を示す。
【0063】
まず、親水性シリコーンワックスを第1の油性成分に溶解させる(S1;溶解工程)。親水性シリコーンワックスは上述のシリコーンワックスである。第1の油性成分としては、液状紫外線吸収剤を用いることができる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゼン骨格を含む紫外線吸収剤を用いることができる。具体的には、例えば、4-メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、オクトクリレン、ジエチルアミノヒドロキシ安息香酸ヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン等を挙げることができる。シリコーンワックスは、加熱した溶媒に添加して溶解させると好ましい。
【0064】
溶解工程におけるシリコーンワックスの添加率は、シリコーンワックスと第1の油性成分との合計質量に対して、5質量%以上、好ましくは10質量%以上とすることができる。溶解工程におけるシリコーンワックスの添加率は、シリコーンワックスと第1の油性成分との合計質量に対して、80質量%以下であると好ましく、75質量%以下であるとより好ましく、70質量%以下であるとさらに好ましい。シリコーンワックスが80質量%を超えると、不溶解のシリコーンワックスが多くなってしまう。
【0065】
次に、シリコーンワックスを溶解させた溶液を他の油性成分を含む第2の油性成分と混合する(S2;混合工程)。油性化粧料に粉末を含有させる場合には、油性成分に粉末を添加する。各成分の配合割合は、上述の第1実施形態と同様にすることができる。これにより、油性化粧料を製造することができる。
【0066】
本開示の油性化粧料の製造方法によれば、油性化粧料に水性溶媒が含まれない場合であっても、親水性のシリコーンワックスを含有する油性化粧料を作製することができる。また、油性化粧料中に親水性シリコーンワックスを均一に分散させることができる。
【実施例】
【0067】
本開示の油性化粧料及びその製造方法について、以下に例を挙げて説明する。しかしながら、本開示の油性化粧料及びその製造方法は以下の例に限定されるものではない。各表に示す含有率の単位は質量%である。
【0068】
[試験例1~4]
試験例1及び2においては油性化粧料を作製した。試験例3及び4においては水性化粧料を作製した。試験例1及び3の化粧料にはシリコーンワックスを配合した。作製した各化粧料について、速乾性及び化粧持ち(化粧の持続性)について試験した。表1に、化粧料の組成及び結果を示す。以下の表において、「揮発性油性成分割合」とは、油性成分全体における揮発性油性成分の割合を示す。
【0069】
試験例1及び3においては、まず、シリコーンワックスをオクチルメトキシシンナメート(4-メトキシ-ケイ皮酸2-エチルヘキシル)に加熱しながら溶解させた。次に、このシリコーンワックスの溶液を他の油性成分に添加して撹拌した。次に、粉末を混合物に添加した。これにより、油性成分中にシリコーンワックスが均一に分散した油性化粧料を作製することができた。試験例3及び4においては、水相は油相中に乳化させた。
【0070】
[速乾性]
5センチメートル角のポリメタクリル酸メチル樹脂板に化粧料を2μL/cm2の塗布量で塗布した。化粧料を塗布した樹脂板は、37℃で5分間静置して乾燥させた。次に、化粧料を塗布した面の中央付近に、イオン交換水を1滴(40μL)滴下した。滴下後、室温で30分間放置し、滴下した水の乾燥状態を以下の基準で評価した(C以上で合格)。なお、イオン交換水には水溶性の青色染料を微量添加しており、水が乾燥した後においても化粧面での水の拡散状態(濡れ状態)を確認することができるように設計した。
A:水は最も広く拡散し、完全に乾燥していた。
B:水は広く拡散し、完全に乾燥していた。
C:水はやや拡散し、若干の水が残存していた。
D:水は若干拡散していたが、滴下した水は残存していた。
E:水は拡散せず、滴下したほとんどの水が残存していた。
【0071】
[化粧もち(化粧の持続性)]
10名の化粧品専門パネルに化粧料を肌に塗布してもらい、専門パネルにランニングをさせて汗をかかせた後に、専門評価者3名が、「ヨレ評価」及び「テカリ評価」の評価項目について下記の評価基準に基づき10段階評価した。(化粧持ちが非常に悪い:0点、化粧持ちが非常に良い:10点)。評価平均値を算出して下記の通りに評価付けを行った。
A:評価の平均点が8点以上
B:評価の平均点が6~7点
C:評価の平均点が4~5点
D:評価の平均点が3点未満
【0072】
シリコーンワックスを配合した試験例1及び3の化粧料を塗布した樹脂板においては、水は乾燥していた。一方、シリコーンワックスを配合していない試験例2及び4の化粧料を塗布した樹脂板においては、水は残存していた。試験例1及び3においては、シリコーンワックスによって濡れ性が高められ、水の表面積が大きくなって乾燥が促進したものと考えられる。
【0073】
そこで、試験例1及び2の化粧料を実際に被験者の顔に塗布した状態で被験者にランニングをさせて汗をかかせて、化粧料上の汗の状態を観察し、下記の評価基準に基づき汗の外観を評価した。
図2及び
図3に、汗をかいた状態の被験者の顔の写真を示す。写真の左側(被験者の顔の右側)に試験例1に係る化粧料を塗布し、写真の右側(被験者の顔の左側)に試験例2に係る化粧料を塗布した。
[汗の外観(形状)]
A:水滴が玉状に見えない
B:水滴が玉状に見える
【0074】
シリコーンワックスを含有する試験例1の化粧料を塗布した肌においては、
図2及び
図3の左側部分に示すように、玉状の汗は観察されなかった。一方、シリコーンワックスを含有しない試験例2の化粧料を塗布した肌においては、
図2及び
図3の右側部分の丸印に示すように、通常汗をかいたときのように玉状の汗が観察された。これより、シリコーンワックスを化粧料に配合することによって、皮膚上であっても塗布面の濡れ性を高めて、汗の乾燥を促進させることができることが分かった。また、汗をかいているとしても、汗を目立たなくさせて、まるで汗をかいていないような外観を保持することができた。
【0075】
水相を配合した試験例3及び4の化粧料を塗布した肌においては、化粧もちの評価が低く、汗による化粧崩れが確認された。一方、水相を配合していない試験例1及び2の化粧料を塗布した肌においては、化粧もちの評価が高く、汗による化粧崩れが少なかったと考えられる。これより、化粧崩れを抑制するためには、油性化粧料にシリコーンワックスを配合することがよいことが分かった。
【0076】
【0077】
[試験例5~11]
シリコーンワックスの含有率を変えた油性化粧料を作製して、試験例1~4と同様にして各組成物について速乾性及び化粧持ちを試験した。速乾性及び化粧もちの評価基準は試験例1~4と同じである。表2に、組成及び結果を示す。
【0078】
シリコーンワックスの含有率を高めると、速乾性を高めることができたが、化粧もちが低下する傾向がみられた。これより、シリコーンワックスの含有率は、油性化粧料の質量に対して、4質量%以上であると好ましく、5質量%以上であるとより好ましいと考えられる。シリコーンワックスの含有率は、油性化粧料の質量に対して、22質量%以下であると好ましく、20質量%以下であるとより好ましいと考えられる。例えば、より速乾性の高い化粧料を望む場合には、シリコーンワックスの含有率は、13質量%~22質量%、好ましくは10質量%~20質量%であると好ましいと考えられる。化粧崩れをより抑制したい場合には、シリコーンワックスの含有率は、4質量%~12質量%、好ましくは5質量%~10質量%であると好ましいと考えられる。
【0079】
【0080】
[試験例12~18]
揮発性油性成分の含有率を変えた油性化粧料を作製して、試験例1~4と同様にして各組成物について速乾性及び化粧持ちを試験した。また、試験例1~4の評価項目に加えて、使用性として「とまりのよさ」も評価項目とした。使用性の評価基準を以下に示す。速乾性及び化粧もちの評価基準は試験例1~4と同じである。表3に、組成及び結果を示す。
【0081】
[使用性(とまりのよさ)]
A:化粧料を肌に擦り込んだときに、均一に塗布することができた。
B:化粧料を肌に擦り込んだときに、サンプルの乾燥が少し遅く、均一に塗布することがややできなかった。
C:化粧料を肌に擦り込んだときに、サンプルの乾燥が遅く、均一に塗布することができなかった。
【0082】
油性化粧料中の揮発性油性成分の含有率を低下させると、化粧崩れしやすくなると共に、速乾性の低下が認められた。各試験例の油性化粧料を肌に塗布すると、揮発性油性成分は揮発する。そうすると、揮発性油性成分が存在していた領域は空隙になりやすい。そして、空隙となった箇所に汗が浸透すると共に、油性化粧料中に分散したシリコーンワックスによって濡れ性が高められ、汗は玉状にならずに、肌上に拡がったと考えられる。揮発性油性成分の含有率が低い試験例18においては、皮膚から化粧表面への汗の通り道が減少し、速乾性及び化粧もちの低下につながったと考えられる。また、揮発性油性成分の含有率が低いと、不揮発性成分の相対的増加により使用性の低下も認められた。これより、揮発性油性成分の含有率は、油性化粧料の質量に対して、25質量%以上であると好ましく、28質量%以上であるとより好ましいと考えられる。
【0083】
試験例12~17においては、いずれも速乾性及び化粧もちは満足できる結果が得られた。これより、少なくとも、揮発性油性成分の含有率は、油性化粧料の質量に対して、50質量%以下にすることができる。しかしながら、揮発性油性成分を多くすると、使用性が低下する傾向が見受けられた。これより、速乾性及び化粧持ちに加えて、使用性を高めるためには、揮発性油性成分の含有率は、油性化粧料の質量に対して、48質量%以下であると好ましく、46質量%以下であるとより好ましく、44質量%以下であるとより好ましく、42質量%以下であるとさらに好ましいと考えられる。
【0084】
全油性成分の含有率は、油性化粧料の質量に対して、40質量%以上であると好ましいと考えられる。全油性成分の含有率は、油性化粧料の質量に対して、80質量%以下であると好ましく、75質量%以下であるとより好ましく、70質量%以下であるとさらに好ましいと考えられる。
【0085】
【0086】
[試験例19~24]
油性成分中の揮発性油分の割合による効果への影響を試験した。各評価試験及び評価基準は上記試験例と同様である。表4に、組成及び結果を示す。
【0087】
試験例19~24のいずれにおいても十分な速乾性が得られた。しかしながら、揮発性油性成分の割合が低くなるにしたがい、いずれの評価項目も低くなる傾向がみられた。上述のように、汗の通り道が減少したことが原因と考えられる。また、試験例24においては、不揮発性油性成分の相対的増加によって使用時のとまりが悪くなってしまったと考えられる。これより、油性成分中の揮発性油性成分の割合は、46質量%以上であると好ましく、48質量%以上であるとより好ましく、50質量%以上であるとより好ましく、52質量%以上であるとより好ましく、54質量%以上であるとさらに好ましいと考えられる。また、油性成分中の揮発性油性成分の割合は、少なくとも、80質量%以下、好ましくは75質量%以下であれば、高い速乾性及び化粧持ちを実現できることが分かった。
【0088】
一方、使用性については、油性成分中の揮発性油性成分の割合が高くなりすぎると、乾燥が遅くなって低下してしまった。これより、使用性を高めるためには、油性成分中の揮発性油性成分の割合は、74質量%以下であると好ましく、70質量%以下であるとより好ましく、65質量%以下であるとさらに好ましいと考えられる。
【0089】
【0090】
本開示に油性化粧料及びその製造方法は、上記実施形態及び実施例に基づいて説明されているが、上記実施形態及び実施例に限定されることなく、本発明の範囲内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、各開示要素(請求の範囲、明細書及び図面に記載の要素を含む)に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができる。また、本発明の請求の範囲の範囲内において、各開示要素の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
【0091】
本発明のさらなる課題、目的及び形態(変更形態含む)は、請求の範囲を含む本発明の全開示事項からも明らかにされる。
【0092】
本書に記載した数値範囲については、別段の記載のない場合であっても、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし範囲が本書に具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本開示の油性化粧料は、汗をかく領域に塗布する化粧料として適用することができる。特に、顔などメーキャップを施す領域に好適に適用することができる。また、本開示の油性化粧料は、夏場、高温多湿の地域に行くとき、スポーツや運動をするとき等、汗をかきやすい時期・場所において好適に使用することができる。