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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/14 20200101AFI20221222BHJP
   B60W 50/02 20120101ALI20221222BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
B60W50/14
B60W50/02
B60H1/00 101Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018188772
(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公開番号】P2020055486
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 進
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/080452(WO,A1)
【文献】特開2017-030518(JP,A)
【文献】特開2009-015787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 50/14
B60W 50/02
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記制御部に記録されているプログラムの異常が検知された場合に、
前記車両の運転者における不快感を増加させる方向への、前記車両内における空調動作として、前記空調動作を制限する制限制御を行うと共に、
前記車両の速度に応じて、前記制限制御の際の制限度合いを動的に調整する際に、
前記車両の速度が相対的に高い場合には、前記制限度合いが相対的に大きくなるように調整し、
前記車両の速度が相対的に低い場合には、前記制限度合いが相対的に小さくなるように調整する
車両制御装置。
【請求項2】
車両の動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記制御部に記録されているプログラムの異常が検知された場合に、
前記車両の運転者における不快感を増加させる方向への、前記車両内における空調動作として、前記空調動作を制限する制限制御を行うと共に、
前記空調動作として含まれる冷房動作については、前記制限制御を実行する一方、
前記空調動作として含まれる暖房動作およびデフロスター動作については、前記制限制御を実行しない
車両制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記車両の速度に応じて、前記制限制御の際の制限度合いを動的に調整する際に、
前記車両の速度が相対的に高い場合には、前記制限度合いが相対的に大きくなるように調整し、
前記車両の速度が相対的に低い場合には、前記制限度合いが相対的に小さくなるように調整する
請求項に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記制限制御を実行する空調制御部と、
前記車両の走行に関する統括的な制御を行う走行制御部と
を有しており、
前記走行制御部が、前記プログラムの異常を検知すると共に、前記制限制御の際の制限度合いを決定する
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記制限制御を実行する空調制御部と、
前記車両の走行に関する統括的な制御を行う走行制御部と
を有しており、
前記空調制御部は、前記プログラムの異常が検知された場合には、前記制限制御の際の制限度合いを、自らで決定する
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記空調動作の制御が開始された後に、前記車両が停止した場合には、
前記空調動作の制御を停止する
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記車両が停止した後に、前記車両の走行が再開された場合には、
前記空調動作の制御を再開する
請求項に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記プログラムが、前記車両の外部から通信を介して取得されたものであり、
前記プログラムの異常が、前記外部からの前記プログラムの不正書き換えである
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の動作を制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンと電動モータとを併用することによって車両の燃料消費率(燃費)を効果的に向上させるようにした、ハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)が広く実用化されている。また、電動モータのみを駆動力源として排気ガスを排出しないようにした、電気自動車(EV:Electric Vehicle)も実用化されている。このような車両における各種制御については、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-78324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような車両では一般に、安定的な走行制限を実現することが求められている。安定的な走行制限を実現することが可能な車両制御装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る第1の車両制御装置は、車両の動作を制御する制御部を備えたものである。制御部は、この制御部に記録されているプログラムの異常が検知された場合に、車両の運転者における不快感を増加させる方向への車両内における空調動作として、空調動作を制限する制限制御を行うと共に、車両の速度に応じて、制限制御の際の制限度合いを動的に調整する際に、車両の速度が相対的に高い場合には、制限度合いが相対的に大きくなるように調整し、車両の速度が相対的に低い場合には、制限度合いが相対的に小さくなるように調整する
本開示の一実施の形態に係る第2の車両制御装置は、車両の動作を制御する制御部を備えたものである。制御部は、この制御部に記録されているプログラムの異常が検知された場合に、車両の運転者における不快感を増加させる方向への車両内における空調動作として、空調動作を制限する制限制御を行うと共に、空調動作として含まれる冷房動作については、制限制御を実行する一方、空調動作として含まれる暖房動作およびデフロスター動作については、制限制御を実行しない。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一実施の形態に係る第1および第2の車両制御装置によれば、安定的な走行制限を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施の形態に係る車両制御装置を備えた車両の概略構成例を表すブロック図である。
図2】実施の形態に係る車両の制御処理の一例を表す流れ図である。
図3図2に示した制限度合いを決定する際の処理の一例を模式的に表すブロック図である。
図4図2に示した車速に応じた制限度合いの動的調整の一例を表す図である。
図5】変形例に係る車両の制御処理の一例を表す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(プログラムの異常検知後に空調動作の制限制御を行う手法の例)
2.変形例(プログラムの異常検知後に空調動作の逆方向への切替制御を行う手法の例)
3.その他の変形例
【0009】
<1.実施の形態>
[概略構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る車両制御装置(後述する制御部15)を備えた車両1の概略構成例を、ブロック図で表したものである。
【0010】
この車両1は、図1に示したように、主に、駆動力源10、バッテリ11、車速センサ12、カメラ13、エアコン14および制御部15を備えている。
【0011】
(A.駆動力源10)
駆動力源10としては、この車両1では図1に示したように、エンジン10a(内燃機関)およびモータ10b(電動モータ)が設けられている。すなわち、車両1は、エンジン10aおよびモータ10bを駆動力源10として有する、ハイブリッド車両(HEV)として構成されている。
【0012】
したがって、この車両1には、エンジン10aおよびモータ10bの双方を駆動力源としたハイブリッド走行と、エンジン10aのみを駆動力源としたエンジン走行と、モータのみを駆動力源としたモータ走行と、の3種類の走行モードが設けられている。そして、車両1の走行条件等に応じて、これら3種類の走行モードが、随時切り換えて使用されるようになっている。
【0013】
(B.バッテリ11)
バッテリ11は、車両1において使用される電力を貯蔵するものであり、例えばリチウムイオン電池等の各種の2次電池を用いて構成されている。なお、このバッテリ11には、車両1の外部からの充電により得られる電力(充電電力)の他、例えば、モータ10bから供給される回生電力が貯蔵されるようになっている。
【0014】
(C.車速センサ12,カメラ13)
車速センサ12は、車両1の走行の際の速度(車速V)を検出するセンサである。この車速センサ12によって検出された車速Vは、図1に示したように、制御部15(後述する走行制御部153等)へと出力されるようになっている。
【0015】
なお、このような車速Vは、本開示における「車両の速度」の一具体例に対応している。
【0016】
カメラ13は、車両1の周囲状況(走行環境)を撮像して検出するもの(撮像装置)である。このカメラ13は、例えば、単一のカメラ、または、複数のカメラ(右側および左側の2つからなるステレオカメラ等)により構成されている。このようにしてカメラ13によって得られた、撮像画像や車間距離等の周囲状況の情報は、図1に示したように、制御部15(後述する走行制御部153等)へと出力されるようになっている。
【0017】
(D.エアコン14)
エアコン14は、車両1の内部(車両内)における空調動作を行うもの(空調機器)である。このような空調動作としては、例えば、冷房動作、暖房動作およびデフロスター動作(車両1の窓ガラスにおける結露を防止して曇り止めを行う動作)が含まれるようになっている。
【0018】
(E.制御部15)
制御部15は、車両1における各種動作を制御したり、各種の演算処理を行ったりする部分である。具体的には、制御部15は、演算を行うマイクロプロセッサ、このマイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、演算結果などの各種データを記憶するRAM(Random Access Memory)、その記憶内容が保持されるバックアップRAM、および、入出力I/F(Interface)等を含んで構成されている。
【0019】
このような制御部15は、図1に示した例では、情報取得部151、プログラム(ソフトウェア)152、走行制御部153(ハイブリッド制御部)、バッテリ制御部154および空調制御部155(エアコン制御部)を有している。
【0020】
なお、この制御部15は、本開示における「車両制御装置」および「制御部」の一具体例に対応している。
【0021】
(D-1.情報取得部151)
情報取得部151は、例えば図1に示したように、車両1の外部(例えば外部サーバ等)から通信(無線や有線の通信)等を介して、各種の外部情報Ieを取得するものである。このような外部情報Ieとしては、例えば、以下説明するプログラム152等のソフトウェアの情報などが挙げられる(図1参照)。
【0022】
(D-2.プログラム152)
プログラム152は、制御部15(例えば、後述する走行制御部153など)に記録されている。このプログラム152は、制御部15における各種動作(例えば、エンジン10a,モータ10b,バッテリ11,エアコン14の制御動作等)を実行するためのプログラムとして機能するものである。また、プログラム152は、例えば上記したように、車両1の外部から通信を介して(情報取得部151によって)取得されたものとなっている。すなわち、このプログラム152は、例えば、いわゆるOTA(Over The Air)を用いて取得されたプログラムとなっている。
【0023】
ここで、本実施の形態では、制御部15(例えば、後述する走行制御部153または空調制御部155など)は、上記したプログラム152における異常を検知する機能を有している(異常検知部としても機能するようになっている)。具体的には、制御部15は、そのようなプログラム152の異常として、例えば、車両1の外部からの通信を介した、プログラム152の不正書き換えを検知するようになっている。
【0024】
また、制御部15は、そのようなプログラム152の異常が検知された場合には、詳細は後述するが、車両1の運転者における不快感を増加させる(運転時の快適性を低下させる)方向に、エアコン14における空調動作を制御するようになっている。具体的には、制御部15は、後述する空調制御部155における制御動作(エアコン14の制御動作)の際の、エアコン14への供給電力(後述するエアコン使用可能電力Pa1,Pa2)を決定する。なお、このような空調動作の制御処理を含む、制御部15による車両1の制御処理の詳細については、後述する(図2図4)。
【0025】
(D-3.走行制御部153)
走行制御部153は、車両1の走行動作を制御するものであり、車両1の走行に関する統括的な制御を行うようになっている。この走行制御部153は、図1に示した例では、エンジン制御部153aおよびモータ制御部153bを有している。
【0026】
エンジン制御部153aは、エンジン10aにおける各種動作を制御するものである(図1参照)。すなわち、このエンジン制御部153aは、いわゆる「ECU(Engine Control Unit)」として動作する部分となっている。
【0027】
モータ制御部153bは、モータ10bにおける各種動作を制御するものである(図1参照)。具体的には、モータ制御部153bは、例えば、モータ10bによる車両1の車輪の駆動動作や、モータ10bにおける回生動作等を、制御するようになっている。
【0028】
(D-4.バッテリ制御部154)
バッテリ制御部154は、バッテリ11に対する各種制御(充電制御等)を行うものである(図1参照)。
【0029】
(D-5.空調制御部155)
空調制御部155は、エアコン14における空調動作を制御するものである(図1参照)。具体的には、空調制御部155は、エアコン14に対して電力(後述するエアコン使用可能電力Pa1,Pa2)を供給しつつ、エアコン14の空調動作を制御するようになっている。また、この空調制御部155は、後述する空調動作の制限制御を実行する部分に対応している。
【0030】
[動作および作用・効果]
続いて、本実施の形態の車両1における動作および作用・効果について説明する。
【0031】
(A.プログラムの異常検知後の走行制限について)
最初に、一般的な車両の走行中に、車両の制御部(ECU等)において前述したようなプログラムの異常が検知された場合の、その後の車両の走行制限(走行距離の制限)について、説明する。
【0032】
まず、ECU等においてそのようなプログラムの異常が検知された場合に、車両における電源や駆動力(エンジン,モータ等)の供給を、即時に停止させるという制御手法が考えられる(比較例)。
【0033】
ところが、この比較例のように、走行中におけるプログラムの異常検知後に、車両における電源や駆動力の供給を即座に停止させると、安定的な走行制限が困難となってしまうおそれがある。
【0034】
(B.本実施の形態の車両制御処理)
そこで本実施の形態では、車両1の走行中において、制御部15内のプログラム152に異常が検知された場合には、以下詳述する手法を用いて、車両1の制御処理を行うようにしている。
【0035】
以下、図1に加えて図2図4を参照して、本実施の形態に係る車両1の制御処理(走行中における制御処理)の一例について、詳細に説明する。
【0036】
図2は、そのような本実施の形態の車両1の制御処理の一例を、流れ図で表したものである。
【0037】
この図2に示した一連の各処理では、まず、制御部15が、プログラム152の異常(例えば、前述したプログラム152の不正書き換えなど)が有るのか否かを、判定する(図2のステップS11)。ここで、プログラム152の異常が無いと判定された場合には(ステップS11:N)、再び、このステップS11の判定を行うことになる。
【0038】
一方、プログラム152の異常が有ると判定された場合には(ステップS11:Y)、次に制御部15は、エアコン14における現在の空調動作が、暖房動作またはデフロスター動作であるのか否かについて、判定を行う(ステップS12)。
【0039】
ここで、現在の空調動作が、暖房動作またはデフロスター動作であると判定された場合には(ステップS12:Y)、以下のようになる。すなわち、その場合には、制御部15は、以下詳述する空調動作の制御(制限制御)を、実行しない(ステップS13)。なお、この場合には、以上で、図2に示した一連の各処理(車両1の制御処理)が終了となる。
【0040】
一方、現在の空調動作が、暖房動作またはデフロスター動作ではない(この例では冷房動作である)と判定された場合には(ステップS12:N)、以下のようになる。すなわち、その場合には制御部15は、前述したように、車両1の運転者における不快感を増加させる(運転時の快適性を低下させる)方向に、エアコン14における空調動作を制御する。具体的には、本実施の形態では制御部15は、そのような空調動作の制御として、空調動作を制限する制限制御を行う(ステップS14)。つまり、この例では、制御部15は、現在の空調動作としての冷房動作が制限されるように、制限制御を行う。
【0041】
ここで、図3は、このような制限度合いを決定する際の処理の一例を、ブロック図で模式的に表したものである。具体的には、図3(A)は、走行制御部153において制限度合いを決定する場合の例を、図3(B)は、(空調動作の制限制御を実行する)空調制御部155自身において制限度合いを決定する場合の例を、それぞれ示している。
【0042】
なお、これら図3(A),図3(B)中に示した各種の電力は、以下のようになっている。
・P0…バッテリ使用可能電力(高電圧のバッテリ11におけるバッテリ電力)
・Pd…走行用電力(車両1の走行用に確保する電力:可変)
・Pa1,Pa2…エアコン使用可能電力(エアコン14への供給電力:バッテリ使用可能電力P0から走行用電力Pdを確保した上で、エアコン14に使用できる電力上限値に対応)
【0043】
まず、図3(A)に示した例では、走行制御部153において、前述したプログラム152の異常を検知すると共に、上記した制限制御の際の制限度合いを決定する。そして、空調制御部155では、そのようにして決定された制限度合いに基づき、エアコン14における空調動作の制限制御を実行する。
【0044】
具体的には、走行制御部153は、まず、バッテリ11から供給されるバッテリ使用可能電力P0から走行用電力Pdを差し引くことで、通常時におけるエアコン使用可能電力Pa1(=P0-Pd)を求める。一方、制限制御の実行時(プログラム152の異常が検知された場合)には、走行制御部153は、このエアコン使用可能電力Pa1よりも電力値の小さいエアコン使用可能電力Pa2(<Pa1)を、制限制御の際の制限度合いとして決定する。ただし、上記したように、プログラム152の異常が検知された場合でも、現在の空調動作が暖房動作やデフロスター動作である場合には、通常時におけるエアコン使用可能電力Pa1が、使用されることになる。
【0045】
一方、図3(B)に示した例では、プログラム152の異常が検知された場合には、空調制御部155自らが、制限制御の際の制限度合いを決定する。そして、空調制御部155では、そのようにして自身で決定した制限度合いに基づき、エアコン14における空調動作の制限制御を実行する。なお、この図3(B)の例では、空調制御部155においてプログラム152の異常を検知するようにしてもよいし、あるいは、そのようなプログラム152の異常についての検知結果の情報を、空調制御部155が外部(走行制御部153等)から取得するようにしてもよい。
【0046】
このような図3(B)の例では、まず、上記した図3(A)の例と同様に、走行制御部153が、通常時におけるエアコン使用可能電力Pa1(=P0-Pd)を求める。そして空調制御部155は、通常時には、そのエアコン使用可能電力Pa1をそのまま使用して、エアコン14における空調動作を制御する。一方、制限制御の実行時(プログラム152の異常が検知された場合)には、空調制御部155において、上記した制限制御時のエアコン使用可能電力Pa2(<Pa1)を、制限制御の際の制限度合いとして決定する。ただし、この図3(B)の例においても、現在の空調動作が暖房動作やデフロスター動作である場合には、通常時におけるエアコン使用可能電力Pa1が、使用されることになる。
【0047】
なお、図3(A),図3(B)の各例において、通常時および制限制御の実行時におけるエアコン使用可能電力Pa1,Pa2としては、それぞれ、例えば以下のような数値例が挙げられる。
・通常時 ………………… Pa1=P0(20kW)-Pd(17kW)=3kW
・制限制御の実行時 …… Pa2=0.5kW(<3kW)
【0048】
また、このような空調動作の制限制御を実行する際には、例えば図2のステップS14中の括弧書きで示したように、車速Vや車両1の周囲状況(車速Vおよび車両1の周囲状況のうちの少なくとも一方)に応じて、制御部15が制限度合いを動的に調整するようにしてもよい。なお、車両1の周囲状況としては、例えば前述したように、カメラ13によって得られた、撮像画像や車間距離等の情報が挙げられる。
【0049】
ここで、具体的には例えば図4に示したように、車速Vに応じて制限度合いを動的に調整する際には、制御部15は以下のようにして、動的な調整を行う。すなわち、制御部15は、車速Vが相対的に高い場合(高速走行の場合)には、制限度合いが相対的に大きくなるように調整する一方、車速Vが相対的に低い場合(低速走行の場合)には、制限度合いが相対的に小さくなるように調整する。
【0050】
続いて、このようなステップS14の後には、制御部15は、車両1が停止している(車速V=0である)のか否かについて、判定を行う(ステップS15)。ここで、車両1が停止していない(車速V>0である)と判定された場合には(ステップS15:N)、再びこのステップS15の判定を行うことになる。
【0051】
一方、車両1が停止している(車速V=0である)と判定された場合には(ステップS15:Y)、以下のようになる。すなわち、このようにして、空調動作の制限制御が開始された後に車両1が停止した場合には、制御部15は、その空調動作の制限制御を停止させる(ステップS16)。なお、この際に、例えば、車両1の走行機能についても、併せて停止させる(以下説明するような、車両1の走行の再開が実行できない)ようにしてもよい。
【0052】
このようなステップS16の後には、制御部15は、車両1の走行が再開した(車速V>0に変化した)のか否かについて、判定を行う(ステップS17)。ここで、車両1の走行が再開していない(依然として車速V=0である)と判定された場合には(ステップS17:N)、再びこのステップS17の判定を行うことになる。
【0053】
一方、車両1の走行が再開した(車速V>0に変化した)と判定された場合には(ステップS17:Y)、前述したステップS14へと再び戻ることになる。すなわち、このようにして、車両1が停止した後に走行が再開された場合には、制御部15は、一旦停止させた空調動作の制限制御を、再開させる(再度実行させる)。
【0054】
以上で、図2に示した一連の各処理(車両1の制御処理)の説明が、終了となる。
【0055】
(C.作用・効果)
このようにして、本実施の形態の車両1では、制御部15に記録されているプログラム152の異常が検知された場合に、制御部15が、車両1の運転者における不快感を増加させる方向に、車両1内における空調動作の制御を行う。
【0056】
これにより本実施の形態では、車両1の運転者における不快感が増加する(運転時の快適性が低下する)ことから、例えば前述した比較例の場合とは異なり、以下のようになる。すなわち、車両1における電源や駆動力の供給を即座に停止しなくても、車両1の走行制限(走行停止等)を運転者に促すことができる。その結果、本実施の形態では比較例の場合と比べ、安定的な走行制限を実現することが可能となる。
【0057】
また、本実施の形態では特に、そのようなプログラム152の異常が検知された場合に、上記した空調動作の制御として、空調動作を制限する制限制御を行うようにしたので、電力の消費量を抑えつつ、上記した安定的な走行制限を実現することが可能となる。
【0058】
更に、車速Vおよび車両1の周囲状況のうちの少なくとも一方に応じて、そのような制限制御の際の制限度合いを、動的に調整するようにした場合には、以下のようになる。すなわち、それらのパラメータに応じて制限度合いが動的に調整されることから、車両1におけるその時々の状況に応じて、より適切な制限制御を行うことができるようになる結果、更に安定的な走行制限を実現することが可能となる。
【0059】
加えて、このようにして車速Vに応じて制限度合いを動的に調整する際に、車速Vが相対的に高い場合には制限度合いが相対的に大きくなるように調整し、車速Vが相対的に低い場合には制限度合いが相対的に小さくなるように調整した場合には、以下のようになる。すなわち、車速Vが高くなる(高速走行となる)のに従って制限度合いが増加することから、車速Vの大きさに応じて、より適切な制限制御を行うことができるようになる結果、更に安定的な走行制限を実現することが可能となる。
【0060】
また、本実施の形態では、プログラム152の異常が検知された場合に、冷房動作については制限制御を実行する一方、暖房動作およびデフロスター動作については、制限制御を実行しないようにしたので、以下のようになる。すなわち、例えば寒冷地での暖房動作の制限や、デフロスター動作(窓ガラスの曇り止め動作)の制限を行うと、車両1の運転者における安全性が損なわれるおそれがあることから、制限制御を実行しないことで、そのようなおそれを回避することが可能となる。
【0061】
更に、本実施の形態では、空調動作の制御(制限制御)が開始された後に車両1が停止した場合には、そのような空調動作の制御を停止するようにしたので、以下のようになる。すなわち、本来の目的であった車両1の走行制限(走行停止等)を、運転者が実施してくれたことになることから、運転者に対して不快感を継続して付与することが不要となるため、不必要な不快感の付与を回避することが可能となる。
【0062】
加えて、本実施の形態では、そのようにして車両1が停止した後に、車両1の走行が再開された場合には、上記した空調動作の制御(制限制御)を再開するようにしたので、以下のようになる。すなわち、その場合には、運転者に対する不快感の付与を再開させることで、車両1の走行制限(走行停止等)を、運転者に再度促すことが可能となる。
【0063】
また、制御部15内の走行制御部153において、プログラム152の異常を検知すると共に、上記した制限制御の際の制限度合いを決定するようにした場合(図3(A)参照)には、以下のようになる。すなわち、その場合、車両1の走行に関する統括的な制御を行う走行制御部153において、そのような検知および決定を行うことから、より適切な制限処理を実行し易くなる結果、更に安定的な走行制限を実現することが可能となる。
【0064】
一方、制御部15内の空調制御部155(上記した制限制御を実行する部分)において、プログラム152の異常が検知された場合には制限制御の際の制限度合いを、自らで決定するようにした場合(図3(B)参照)には、以下のようになる。すなわち、その場合、例えばプログラム152の異常に起因して、走行制御部153が正常に動作できなくなってしまったような場合であっても、空調制御部155自身で制限度合いを決定したうえで、制限制御を実行することが可能となる。
【0065】
更に、プログラム152が、車両1の外部から通信を介して取得されたものである場合において、上記したプログラム152の異常として、車両1の外部からのプログラム152の不正書き換えを検知するようにした場合には、以下のようになる。すなわち、例えば前述したOTAを用いてプログラム152が取得されたような場合において、プログラム152の不正書き換えがなされたような場合であっても、車両1において、安定的な走行制限を実現することが可能となる。
【0066】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例について説明する。なお、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0067】
(A.変形例の車両制御処理)
図5は、変形例に係る車両1の制御処理(走行中における制御処理)の一例を、流れ図で表したものである。なお、この図5において、前述した実施の形態に係る車両1の制御処理(図2)と同一内容のステップについては、同一の符号を付して、適宜説明を省略する。
【0068】
この図5に示した一連の各処理では、まず、実施の形態と同様に、制御部15が、プログラム152の異常が有るのか否かを、判定する(図5のステップS11)。ここで、プログラム152の異常が無いと判定された場合には(ステップS11:N)、再び、このステップS11の判定を行うことになる。
【0069】
一方、プログラム152の異常が有ると判定された場合には(ステップS11:Y)、次に制御部15は、エアコン14における現在の空調動作が、暖房動作であるのか否かについて、判定を行う(ステップS22)。
【0070】
ここで、現在の空調動作が暖房動作であると判定された場合には(ステップS22:Y)、以下のようになる。すなわち、その場合には制御部15は、実施の形態で説明したように、車両1の運転者における不快感を増加させる(運転時の快適性を低下させる)方向に、エアコン14における空調動作を制御する。ただし、本変形例では実施の形態とは異なり、制御部15は、そのような空調動作の制御として、現在の空調動作を逆方向に切り替える切替制御を行う(ステップS23)。つまり、この例では制御部15は、現在の空調動作としての暖房動作から、逆方向の空調動作としての冷房動作へと、空調動作の切替制御を行う。なお、その後は、後述するステップS15へと進むことになる。
【0071】
一方、現在の空調動作が暖房動作ではない(この例では冷房動作である)と判定された場合には(ステップS22:N)、以下のようになる。すなわち、その場合にも制御部15は、上記した空調動作の制御として、現在の空調動作を逆方向に切り替える切替制御を行う(ステップS24)。つまり、この例では制御部15は、現在の空調動作としての冷房動作から、逆方向の空調動作としての暖房動作へと、空調動作の切替制御を行う。なお、この場合もその後は、後述するステップS15へと進むことになる。
【0072】
ちなみに、このような空調動作の切替制御の際には、実施の形態で説明した空調動作の制限制御の場合とは異なり、空調動作を逆方向に切り替えた際にも、エアコン14への供給電力は、基本的には変更しないようになっている。
【0073】
このような空調動作の切替制御を開始した後には、次に制御部15は、実施の形態で説明したように、車両1が停止している(車速V=0である)のか否かについて、判定を行う(ステップS15)。ここで、車両1が停止していない(車速V>0である)と判定された場合には(ステップS15:N)、再びこのステップS15の判定を行うことになる。
【0074】
一方、車両1が停止している(車速V=0である)と判定された場合には(ステップS15:Y)、以下のようになる。すなわち、このようにして、空調動作の切替制御が開始された後に車両1が停止した場合には、制御部15は、そのような切替制御後の空調動作を、停止させる(ステップS26)。なお、この際に実施の形態と同様に、例えば、車両1の走行機能についても、併せて停止させる(車両1の走行の再開が実行できない)ようにしてもよい。
【0075】
このようなステップS26の後には、制御部15は、実施の形態で説明したように、車両1の走行が再開した(車速V>0に変化した)のか否かについて、判定を行う(ステップS17)。ここで、車両1の走行が再開していない(依然として車速V=0である)と判定された場合には(ステップS17:N)、再びこのステップS17の判定を行うことになる。
【0076】
一方、車両1の走行が再開した(車速V>0に変化した)と判定された場合には(ステップS17:Y)、制御部15は、上記した切替制御後の空調動作を、再開させる(ステップS28)。すなわち、このようにして、車両1が停止した後に走行が再開された場合には、制御部15は、一旦停止させた切替制御後の空調動作を、再開させる(再度実行させる)。なお、その後は、前述したステップS15へと再び戻ることになる。
【0077】
以上で、図5に示した一連の各処理(車両1の制御処理)の説明が、終了となる。
【0078】
(B.作用・効果)
このようにして、本変形例でも上記実施の形態と同様に、プログラム152の異常が検知された場合には、車両1の運転者における不快感を増加させる方向に空調動作の制御を行うようにしたので、基本的には実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。すなわち、本変形例においても前述した比較例の場合と比べ、安定的な走行制限を実現することが可能となる。
【0079】
また、特に本変形例では、そのようなプログラム152の異常が検知された場合に、上記した空調動作の制御として、空調動作を逆方向に切り替える切替制御を行うようにしたので、以下のようになる。すなわち、例えば、冷房動作から暖房動作へと切り替える制御や、暖房動作から冷房動作へと切り替える制御を行うことから、車両1の運転者がそのような空調動作の切り替わりを気が付き易くなるため、車両1の走行制限(走行停止等)を運転者に促し易くなる。その結果、更に安定的な走行制限を実現することが可能となる。
【0080】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0081】
例えば、車両1における各部材の構成(形式、形状、配置、個数等)については、上記実施の形態等で説明したものには限られない。すなわち、これらの各部材における構成については、他の形式や形状、配置、個数等であってもよい。また、上記実施の形態等で説明した各種パラメータの値や範囲、大小関係等についても、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の値や範囲、大小関係等であってもよい。
【0082】
具体的には、例えば、上記実施の形態等では、車両1内に1つのモータ(モータ10b)が設けられている場合を例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、車両1内に、例えば複数(2つ以上)のモータが設けられているようにしてもよい。また、上記実施の形態等では、HEVにより構成された車両1を例に挙げて説明したが、この例には限られず、例えば、EVやガソリン車により構成された車両についても、本開示を適用することが可能である。
【0083】
また、上記実施の形態等では、車両1の制御処理について、具体例を挙げて説明したが、これらの具体例には限られない。すなわち、他の手法を用いて車両1の制御処理等を行うようにしてもよい。具体的には、例えば上記実施の形態等では、車両の運転者における不快感を増加させる方向に空調動作の制御を行う手法として、空調動作の制限処理(実施の形態)および逆方向への切替処理(変形例)をそれぞれ例に挙げて説明したが、これらの例には限られない。すなわち、他の手法を用いて、車両の運転者における不快感を増加させる方向に空調動作の制御を行うようにしてもよい。また、上記実施の形態等では、暖房動作およびデフロスター動作については空調動作の制限制御を実行しない場合を例に挙げて説明したが、この例には限られず、例えば、暖房動作についても空調動作の制限処理を実行するようにしてもよい。更に、上記実施の形態等では、異常検知部がプログラムの異常として、車両1の外部からのプログラムの不正書き換えを検知する場合を例に挙げて説明したが、プログラムの異常の例としては、この例には限られない。
【0084】
更に、上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0085】
加えて、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0086】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…車両(HEV)、10…駆動力源、10a…エンジン、10b…モータ、11…バッテリ、12…車速センサ、13…カメラ、14…エアコン、15…制御部、151…情報取得部、152…プログラム(ソフトウェア)、153…走行制御部、153a…エンジン制御部、153b…モータ制御部、154…バッテリ制御部、155…空調制御部、Ie…外部情報、V…車速、P0…バッテリ使用可能電力、Pa1,Pa2…エアコン使用可能電力、Pd…走行用電力。
図1
図2
図3
図4
図5