(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】風力発電システム
(51)【国際特許分類】
F03D 9/34 20160101AFI20221222BHJP
F03D 9/17 20160101ALI20221222BHJP
【FI】
F03D9/34
F03D9/17
(21)【出願番号】P 2018205518
(22)【出願日】2018-10-31
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000207780
【氏名又は名称】大豊建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】東 克明
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-034211(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0037446(KR,A)
【文献】特開2000-257544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 9/34
F03D 9/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車と、
前記風車の回転力を用いて圧縮した圧縮空気を貯留する空気貯槽と、
前記空気貯槽に貯留された前記圧縮空気で駆動する空気タービンと、
前記空気タービンの回転駆動によって発電する発電機と、を備え、
前記空気貯槽の上部に風車塔体が立設され、この風車塔体に前記風車が設置され、前記空気貯槽が前記風車の基礎として構成され、
前記空気貯槽は、地下又は水中に設置されると共に、開閉弁が設けられた導入管を通して水源と接続され、前記開閉弁を開けて前記水源から水を導入可能とし、
前記風車の回転力を動力として空気を圧縮する空気圧縮機と、前記風車の回転力で発電した電力を用いて空気を圧縮する空気圧縮機のいずれか一方を備えた風力発電システムであって、
前記風車が回転する状態において、前記空気圧縮機にて圧縮された空気が前記空気貯槽へ供給され、この供給された空気が前記空気貯槽内の空気圧を高め、この空気圧を用いて前記空気タービンを回転させることで発電することを可能とし、
前記風車が回転しない状態において、前記導入管に設けられた前記開閉弁を開けることで、前記水源に接続された前記導入管を通して前記空気貯槽へ水が導入され、この導入された水により前記空気貯槽に貯留された空気を圧縮することで、前記空気貯槽内の空気圧を高め、この空気圧を用いて前記空気タービンを回転させることで発電させるように構成されたことを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記空気貯槽は、ケーソン工法により築造されていることを特徴とする請求項1に記載の風力発電システム。
【請求項3】
前記空気圧縮機と前記空気貯槽を接続する貯槽配管と、
前記空気貯槽と前記空気タービンを接続するタービン配管と、
前記貯槽配管及び前記タービン配管のそれぞれが経由し、前記空気圧縮機によって空気が圧縮されるときの熱を、前記空気タービンに送られる膨張する空気に伝達して熱交換する熱交換器と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の風力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電システムに係り、特に風車の回転力を用いて空気を圧縮し、この圧縮空気を空気貯槽に貯留する風力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、風力発電システムは、再生可能な自然エネルギーを利用するものである。しかし、自然風の風量が常時変動することから、発電の不安定性が課題として残っている。この課題は、圧縮空気エネルギーを貯蔵するシステムを用いて安定化させることができる。このようなシステムを用いた風力発電装置には、例えば特許文献1に記載された装置がある。
【0003】
ところで、軟弱地盤地域では、風力発電システムを設置する場合、その設置場所に例えば杭等を打ち込んで、軟弱地盤を補強している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来では、軟弱地盤地域に風力発電システムを設置する場合、その設置場所に杭等を打ち込んで、地盤を補強しているため、施工工数及び施工コストが多くかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、軟弱地盤等のあらゆる地盤に設置することができ、施工工数及び施工コストを大幅に削減可能な風力発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明は、風車と、前記風車の回転力を用いて圧縮した圧縮空気を貯留する空気貯槽と、前記空気貯槽に貯留された前記圧縮空気で駆動する空気タービンと、前記空気タービンの回転駆動によって発電する発電機と、を備え、前記空気貯槽の上部に風車塔体が立設され、この風車塔体に前記風車が設置され、前記空気貯槽が前記風車の基礎として構成され、前記空気貯槽は、地下又は水中に設置されると共に、開閉弁が設けられた導入管を通して水源と接続され、前記開閉弁を開けて前記水源から水を導入可能とし、前記風車の回転力を動力として空気を圧縮する空気圧縮機と、前記風車の回転力で発電した電力を用いて空気を圧縮する空気圧縮機のいずれか一方を備えた風力発電システムであって、前記風車が回転する状態において、前記空気圧縮機にて圧縮された空気が前記空気貯槽へ供給され、この供給された空気が前記空気貯槽内の空気圧を高め、この空気圧を用いて前記空気タービンを回転させることで発電することを可能とし、前記風車が回転しない状態において、前記導入管に設けられた前記開閉弁を開けることで、前記水源に接続された前記導入管を通して前記空気貯槽へ水が導入され、この導入された水により前記空気貯槽に貯留された空気を圧縮することで、前記空気貯槽内の空気圧を高め、この空気圧を用いて前記空気タービンを回転させることで発電させるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記空気貯槽は、ケーソン工法により築造されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記空気圧縮機と前記空気貯槽を接続する貯槽配管と、前記空気貯槽と前記空気タービンを接続するタービン配管と、前記貯槽配管及び前記タービン配管のそれぞれが経由し、前記空気圧縮機によって空気が圧縮されるときの熱を、前記空気タービンに送られる膨張する空気に伝達して熱交換する熱交換器と、をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、空気貯槽の上部に風車塔体が立設され、この風車塔体に風車が設置され、空気貯槽が風車の基礎として構成されているため、軟弱地盤等のあらゆる地盤に設置することができ、汎用性を高めるとともに、施工工数及び施工コストを大幅に削減することが可能となる。
【0014】
また、本発明の請求項1に記載の発明によれば、空気貯槽は、地下又は水中に設置されているので、設置するための用地を効率的に活用することができる。
【0015】
また、本発明の請求項1に記載の発明によれば、空気貯槽は、開閉弁が設けられた導入配管を通して水源と接続され、開閉弁を開けて前記水源から水を導入可能としたことにより、圧縮空気を空気貯槽に貯め始める前に、開閉弁を開けて空気貯槽に水源からの水を貯め、空気貯槽の空気圧が水源の水頭圧の差に達したときに開閉弁を閉じることで、空気貯槽からさらに高い圧縮空気を空気タービンに送ることができる。
【0016】
また、本発明の請求項1に記載の発明によれば、風車の回転力を用いて空気を圧縮するか、あるいは風車の回転力で発電した電力を用いて空気を圧縮する空気圧縮機をさらに備え、風車の回転力を用いて空気を圧縮する場合には、エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加え、空気貯槽は、ケーソン工法により築造されているため、空気貯槽が風車及び風車塔体を支持することにより、軟弱な地盤でも確実に設置することができる。
【0018】
また、本発明の請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、貯槽配管及びタービン配管のそれぞれが熱交換器を経由し、空気圧縮機によって空気が圧縮されるときの熱を、空気タービンに送られる膨張する空気に伝達して熱交換することにより、エネルギー貯蔵効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施の形態に係る風力発電システムの構成を示す系統図である。
【
図2】本発明の第2実施の形態に係る風力発電システムの構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
[第1実施の形態]
図1は、本発明の第1実施の形態に係る風力発電システムの構成を示す系統図である。
【0022】
まず、
図1を用いて風力発電システムの構成を簡単に説明する。
【0023】
本実施の形態の風力発電システムは、構成を簡単に説明すると、風車1の回転力を直接動力とする空気圧縮機4によって空気を圧縮し、この圧縮空気を空気貯槽6に貯留し、この空気貯槽6と海、河川又は湖沼等の水源10と接続することで、エネルギー貯蔵容量を大きくしている。
【0024】
図1に示すように、風車1は、風車塔体2の上端に回転可能に設置されている。この風車塔体2内には、動力伝達部3が設けられている。この動力伝達部3は、空気圧縮機4aに接続されている。したがって、風車1が風力により回転すると、この回転力が動力伝達部3を経て空気圧縮機4aに伝達されて、空気圧縮機4が駆動する。すなわち、空気圧縮機4aは、風車1の回転力を動力として空気を圧縮することで高圧の圧縮空気としている。
【0025】
空気圧縮機4aは、貯槽配管5を介して空気貯槽6に接続されている。この貯槽配管5には、開閉可能な開閉弁14が設けられている。開閉弁14を開けた場合には、空気圧縮機4aによって圧縮された高圧の圧縮空気は、貯槽配管5を通して空気貯槽6に貯留される。空気圧縮機4aは、空気貯槽6の上面に設置されている。
【0026】
本実施の形態の空気貯槽6は、ニューマチックケーソン工法、オープンケーソン工法、アーバンリング工法、又は設置ケーソン工法を含むケーソン工法により築造されている。空気貯槽6は、その上面が地面と略同一高さになるように地下Gに埋設されている。空気貯槽6の上面には、風車塔体2が立設されている。空気貯槽6は、風車1及び風車塔体2を含む上部構造を支持する基礎として構成されている。空気貯槽6は、導入配管11を介して海、河川又は湖沼等の水源10に接続されている。
【0027】
この導入配管11には、開閉可能な開閉弁12が設けられている。この開閉弁12を開けた場合には、水源10からの水が空気貯槽6に導入される。開閉弁12は、風車1から比較的離れた場所に設置される場合には、例えば遠隔操作可能な制御弁が用いられる。
【0028】
導入配管11の空気貯槽6側の端部は、空気貯槽6の底面近傍まで延びている。一方、導入配管11の水源10側の端部は、水源10において水深の浅い位置に配置されている。そのため、水源10の水面の高さと、空気貯槽6の底面との間には、水頭差hが発生する。
【0029】
空気貯槽6は、タービン配管7を介して空気タービン8と接続されている。このタービン配管7にも開閉可能な開閉弁13が設けられている。空気タービン8は、空気貯槽6に貯留された圧縮空気がタービン配管7を通して供給されることで回転駆動する。すなわち、空気タービン8のロータは、発電機9と連結され、空気タービン8のロータが回転駆動することによって発電機9が発電を行うように構成されている。
【0030】
貯槽配管5及びタービン配管7は、それぞれ熱交換器15を経由するように配置されている。これにより、熱交換器15は、空気圧縮機4aによって空気が圧縮されるときの熱を、空気タービン8に送られる膨張する空気に伝達して熱交換するようにしている。熱交換器15は、空気貯槽6の上面に設置されている。
【0031】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0032】
風車1が風力により回転すると、この回転力が動力伝達部3を経て空気圧縮機4aに伝達されて、空気圧縮機4aを駆動させる。この空気圧縮機4aが駆動することにより発生する高圧の圧縮空気は、貯槽配管5を通して空気貯槽6に貯留される。
【0033】
空気貯槽6に貯留された高圧の圧縮空気は、タービン配管7を通して空気タービン8を回転駆動させる。そして、空気タービン8が回転駆動することによって発電機9が発電を行う。
【0034】
ここで、空気貯槽6は、ケーソン工法により築造され、風車1及び風車塔体2を含む上部構造を支持する基礎としての機能を有する。このため、風車1及び風車塔体2を含む上部構造は、地盤が軟弱であっても確実に設置することが可能になる。
【0035】
空気貯槽6は、導入配管11を介して水源10に接続されている。したがって、開閉弁12を開けることにより、水源10の水を空気貯槽6に導入することができる。ここで、本実施の形態では、空気貯槽6に圧縮空気を貯留し始める前に、開閉弁12を開けることで、水源10の水を空気貯槽6に導入して空気貯槽6に貯留する。そして、空気貯槽6の空気圧が水頭差hに達したときに開閉弁12を閉じる。
【0036】
また、風車1が回転せず、空気貯槽6内の空気圧が大気圧になったときに開閉弁12を開けることで、空気貯槽6内の空気が圧縮されることで、この圧縮空気をさらに空気タービン8に供給することができる。
【0037】
したがって、本実施の形態では、開閉弁12を開閉することで、空気貯槽6内に圧縮空気エネルギーが貯められている限り、空気タービン8を回転駆動させて発電機9で発電させることができる。
【0038】
このように本実施の形態では、空気貯槽6の上部に風車塔体2が立設され、この風車塔体2に風車1が設置され、空気貯槽6が風車1の基礎として構成されているため、軟弱地盤等のあらゆる地盤に設置することができ、汎用性を高めるとともに、施工工数及び施工コストを大幅に削減することが可能となる。
【0039】
また、本実施の形態では、空気貯槽6は、地下Gに設置されているので、設置するための用地を効率的に活用することができる。
【0040】
また、本実施の形態では、空気貯槽6は、ケーソン工法により築造されているため、空気貯槽6が風車1及び風車塔体2を支持することにより、軟弱な地盤でも確実に設置することができ、汎用性を一段と高めることができる。
【0041】
また、本実施の形態では、空気貯槽6は、開閉弁12が設けられた導入配管11を通して水源10と接続され、開閉弁12を開けて水源10から水を導入可能としたことにより、圧縮空気を空気貯槽6に貯め始める前に、開閉弁12を開けて空気貯槽6に水源10からの水を貯め、空気貯槽6の空気圧が水源10の水頭圧の差に達したときに開閉弁12を閉じることで、さらに高い圧縮空気を空気タービン8に送ることができる。
【0042】
また、本実施の形態では、空気圧縮機4aが風車1の回転力を直接動力として空気を圧縮することにより、エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0043】
また、本実施の形態では、貯槽配管5及びタービン配管7のそれぞれが熱交換器15を経由し、空気圧縮機4aによって空気が圧縮されるときの熱を、空気タービン8に送られる膨張する空気に伝達して熱交換することにより、エネルギー貯蔵効率を向上させることができる。
【0044】
[第2実施の形態]
図2は、本発明の第2実施の形態に係る風力発電システムの構成を示す系統図である。なお、前記第1実施の形態と同一の部分には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0045】
図2に示すように、本実施の形態の風力発電システムは、空気貯槽6が海、河川又は湖沼等の水源10の水中に設置されている。空気貯槽6は、上部が水源10の水面から露出している。空気貯槽6は、導入配管11を介して水源10と接続され、この導入配管11には、開閉弁12が設けられている。本実施の形態の開閉弁12は、水中に設置されている。
【0046】
本実施の形態の風力発電システムは、風車1の回転力で発電した電力を用いて空気圧縮機4bを駆動して空気を圧縮している。
【0047】
また、本実施の形態でも、前記第1実施の形態と同様に、空気貯槽6の上面に風車塔体2が立設されている。すなわち、空気貯槽6は、風車1及び風車塔体2を含む上部構造を支持する基礎として構成されている。さらに、空気圧縮機4b及び熱交換器15も、前記第1実施の形態と同様に空気貯槽6の上面に設置されている。
【0048】
したがって、本実施の形態では、風車1の回転力で発電した電力を用いて空気圧縮機4bを駆動しているので、発電機が必要になるものの、前記第1実施の形態のように風車塔体2内の上下方向にわたって動力伝達部3を設けることがなくなり、風車塔体2内の構造を簡素化することができる。
【0049】
なお、その他の構成及び作用効果は、前記第1実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0050】
なお、以上説明した実施の形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。
【0051】
例えば、各実施の形態の風力発電システムは、空気貯槽6の上部に1つの風車塔体2を立設し、この風車塔体2に風車1が設置された例について説明したが、これに限らず空気貯槽6を大型化することで、その上部に複数の風車塔体2を立設し、これらの風車塔体2に風車1を設置した場合についても適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 風車
2 風車塔体
3 動力伝達部
4a 空気圧縮機
4b 空気圧縮機
5 貯槽配管
6 空気貯槽
7 タービン配管
8 空気タービン
9 発電機
10 水源
11 導入配管
12 開閉弁
13 開閉弁
14 開閉弁
15 熱交換器
G 地下
h 水頭差