(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】免疫調整性IL2R融合タンパク質およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20221222BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221222BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20221222BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20221222BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221222BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20221222BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20221222BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20221222BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221222BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221222BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221222BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221222BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20221222BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221222BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20221222BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20221222BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/13
C12N15/12
C12N5/10
C12N5/0783
C07K19/00
C07K16/46
A61P35/00
A61P35/02
A61K35/76
A61K48/00
A61K38/16
A61K39/395 N
A61K39/395 D
C07K14/705
C07K16/28
(21)【出願番号】P 2018554677
(86)(22)【出願日】2017-04-20
(86)【国際出願番号】 US2017028693
(87)【国際公開番号】W WO2017184901
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-04-20
(32)【優先日】2016-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522176001
【氏名又は名称】フレッド ハッチンソン キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, トーマス エム.
(72)【発明者】
【氏名】グリーンバーグ, フィリップ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ストロムネス, インガン エム.
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-513394(JP,A)
【文献】特表平08-511000(JP,A)
【文献】LAWRENCE S EVANS; ET AL,EXPRESSION OF CHIMERIC GRANULOCYTE-MACROPHAGE COLONY-STIMULATING FACTOR/INTERLEUKIN 2 RECEPTORS IN HUMAN CYTOTOXIC T LYMPHOCYTE CLONES RESULTS IN GRANULOCYTE-MACROPHAGE COLONY-STIMULATING FACTOR-DEPENDENT GROWTH,HUMAN GENE THERAPY,米国,1999年08月10日,VOL:10, NR:12,PAGE(S):1941 - 1951,http://dx.doi.org/10.1089/10430349950017301
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61P
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合タンパク質および抗原結合タンパク質を含む宿主細胞であって、
ここで該融合タンパク質は、
(i)サイトカイン結合ドメインまたはその一部からなる細胞外構成要素であって、前記サイトカイン結合ドメインがIL-2結合ドメインまたはその一部ではな
く、前記細胞外構成要素が、CSF2R、CSF1R、CSF3R、CXCR2、またはCCR8の細胞外部分を含み、かつ前記サイトカイン結合ドメインまたはその一部が、内因性のGM-CSF、M-CSF、G-CSF、CXCL1、CXCL2、またはCCL1に特異的に結合する、細胞外構成要素と、
(ii)IL-2R細胞内部分、細胞内シグナル伝達ドメインまたはその一部を含む細胞内構成要素と
の間に配置された膜貫通ドメインを含み;
ここで該抗原結合タンパク質は、T細胞レセプター(TCR);キメラ抗原レセプター(CAR);または両方であり、
該TCRは、該宿主細胞に対して外因性であり;そして
該抗原結合タンパク質は、がん特異的抗原に特異的である、
宿主細胞。
【請求項2】
前記CSF2R、CSF1R、CSF3R、CXCR2、またはCCR8の前記細胞外部分は、それぞれ、ヒトのCSF2R、CSF1R、CSF3R、CXCR2、またはCCR8の細胞外部分であるか;あるいは
前記GM-CSF、M-CSF、G-CSF、CXCL1、CXCL2、またはCCL1は、それぞれ、ヒトのGM-CSF、M-CSF、G-CSF、CXCL1、CXCL2、またはCCL1である、請求項
1に記載の宿主細胞。
【請求項3】
前記サイトカイン結合ドメインは、CSF2Rの細胞外部分、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%同一性を有するアミノ酸配列を含むCSF2RAの細胞外部分、または配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%同一性を有するアミノ酸配列を含むCSF2RBの細胞外部分から選択されるGM-CSF特異的結合ドメインを含む、請求項1
または2に記載の宿主細胞。
【請求項4】
前記CSF2Rの前記細胞外部分は、ヒトCSF2Rの細胞外部分である、請求項
3に記載の宿主細胞。
【請求項5】
前記融合タンパク質の前記膜貫通ドメインは、配列番号22もしくは配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも90%同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはIL-2RG、IL-2RB、IL-2RA、IL-4R、IL-7R、IL-9R、IL-15R、IL-21R、CSF2RA、CSF2RB、CSF1R、CSF3R、CXCR2、CCR8、CD2、CD3ε、CD3δ、CD3ζ、CD25、CD27、CD28、CD40、CD79A、CD79B、CD80、CD86、CD95(Fas)、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD200R、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、CD279(PD-1)、CD300、CD357(GITR)、A2aR、DAP10、FcRα、FcRβ、FcRγ、Fyn、GAL9、KIR、Lck、LAT、LRP、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、PTCH2、ROR1、ROR2、Ryk、Slp76、SIRPα、pTα、TCRα、TCRβ、TIM3、TRIM、LPA5、またはZap70に由来する膜貫通ドメインを含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項6】
IL-2RG、IL-2RB、IL-2RA、IL-4R、IL-7R、IL-9R、IL-15R、IL-21R、CSF2RA、CSF2RB、CSF1R、CSF3R、CXCR2、CCR8、CD2、CD3ε、CD3δ、CD3ζ、CD25、CD27、CD28、CD40、CD79A、CD79B、CD80、CD86、CD95(Fas)、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD200R、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、CD279(PD-1)、CD300、CD357(GITR)、A2aR、DAP10、FcRα、FcRβ、FcRγ、Fyn、GAL9、KIR、Lck、LAT、LRP、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、PTCH2、ROR1、ROR2、Ryk、Slp76、SIRPα、pTα、TCRα、TCRβ、TIM3、TRIM、LPA5、またはZap70に由来する前記膜貫通ドメインは、それぞれ、ヒトのIL-2RG、IL-2RB、IL-2RA、IL-4R、IL-7R、IL-9R、IL-15R、IL-21R、CSF2RA、CSF2RB、CSF1R、CSF3R、CXCR2、CCR8、CD2、CD3ε、CD3δ、CD3ζ、CD25、CD27、CD28、CD40、CD79A、CD79B、CD80、CD86、CD95(Fas)、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD200R、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、CD279(PD-1)、CD300、CD357(GITR)、A2aR、DAP10、FcRα、FcRβ、FcRγ、Fyn、GAL9、KIR、Lck、LAT、LRP、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、PTCH2、ROR1、ROR2、Ryk、Slp76、SIRPα、pTα、TCRα、TCRβ、TIM3、TRIM、LPA5、またはZap70に由来する、請求項
5に記載の宿主細胞。
【請求項7】
前記宿主細胞は、該宿主細胞表面上でヘテロマルチマーを形成するように会合できる少なくとも2種の融合タンパク質を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項8】
前記少なくとも2種の融合タンパク質は各々、
(a)機能的サイトカイン結合ドメインを形成するように互いと会合できる異なる細胞外構成要素;
(b)機能的細胞内シグナル伝達ドメインを形成するように互いと会合できる異なる細胞内構成要素;または
(c)両方
を含む、請求項
7に記載の宿主細胞。
【請求項9】
前記異なる細胞内構成要素のうちの少なくとも一方は、
(a)IL-2Rγの細胞内シグナル伝達ドメインまたはその一部;
(b)配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%同一性を有するアミノ酸配列;
(c)IL-2Rβ、IL-4RA、IL-7R、IL-15RA、またはIL-21Rの細胞内シグナル伝達ドメインまたはその一部;あるいは
(d)配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%同一性を有するアミノ酸配列
を含む、請求項
8に記載の宿主細胞。
【請求項10】
前記少なくとも2種の融合タンパク質のうちの一方は、サイトカイン結合ドメインもしくはその一部を含む細胞外構成要素と、ヒトIL-2Rγに由来する細胞内シグナル伝達ドメインもしくはその一部、または配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%同一性を有するアミノ酸配列を含む細胞内構成要素との間に配置された膜貫通ドメインを含み、そして
前記少なくとも2種の融合タンパク質のうちの他方は、サイトカイン結合ドメインもしくはその一部を含む細胞外構成要素と、細胞内構成要素との間に配置された膜貫通ドメインを含み、該細胞内構成要素は、
(a)ヒトIL-2Rβに由来する細胞内シグナル伝達ドメインもしくはその一部、または配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%同一性を有するアミノ酸配列、
(b)IL-4R、IL-7R、IL-9R、IL-15RもしくはIL-21Rに由来するシグナル伝達ドメインもしくはその一部、あるいは
(c)両方
を含む、請求項
7~9のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項11】
IL-2Rγに由来する前記細胞内シグナル伝達ドメインもしくはその一部は、ヒトIL-2Rγに由来する細胞内シグナル伝達ドメインもしくはその一部であり;そして
IL-2Rβに由来する前記細胞内シグナル伝達ドメインもしくはその一部は、ヒトIL-2Rβに由来する細胞内シグナル伝達ドメインもしくはその一部である、請求項
10に記載の宿主細胞。
【請求項12】
前記宿主細胞表面上の前記ヘテロマルチマーは、ヘテロダイマーまたはヘテロトリマーである、請求項
7~11のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項13】
前記少なくとも2種の融合タンパク質のうちの一方のアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%同一性を有し、該少なくとも2種の融合タンパク質のうちの他方のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%同一性を有する、請求項
12に記載の宿主細胞。
【請求項14】
前記少なくとも2種の融合タンパク質のうちの一方のアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列に少なくとも95%同一性を有し、そして該少なくとも2種の融合タンパク質のうちの他方のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも95%同一性を有する、請求項
13に記載の宿主細胞。
【請求項15】
前記少なくとも2種の融合タンパク質のうちの一方は、配列番号1のアミノ酸配列を含み、そして該少なくとも2種の融合タンパク質のうちの他方は、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項
13に記載の宿主細胞。
【請求項16】
前記少なくとも2種の融合タンパク質のうちの一方は、配列番号1のアミノ酸配列からなり、そして該少なくとも2種の融合タンパク質のうちの他方は、配列番号2のアミノ酸配列からなる、請求項
13に記載の宿主細胞。
【請求項17】
前記TCRは、10
7 M
-1に等しいかまたはこれより大きなK
aで結合する、請求項1~
16のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項18】
前記がん特異的抗原は、WT-1、メソテリン、ROR1またはサイクリン-A1に由来する抗原を含む、請求項1~
17のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項19】
前記がん特異的抗原に対して特異的なTCRまたはキメラ抗原レセプターを含むT細胞における前記融合タンパク質の発現は、該T細胞と実質的に同じであるが、該融合タンパク質を含まない細胞と比較して、該抗原の結合に応答しておよび/または被験体への投与後に、該T細胞によって、生存、拡大、細胞毒性、サイトカイン分泌、および/または複数回の刺激への応答において、少なくとも約1.5倍、2倍、または3倍の増加を生じる、ならびに/あるいは該細胞が投与される被験体の生存の時間、無病生存期間、または1もしくはこれより多くの疾患症状の改善において少なくとも約1.5倍、2倍、または3倍の増加を生じる、請求項1~
18のいずれかに記載の宿主細胞。
【請求項20】
請求項1~
19のいずれか1項に記載の融合タンパク質および抗原結合タンパク質をコードする核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項21】
請求項1~
20のいずれか1項に記載の宿主細胞および薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤を含む、組成物。
【請求項22】
がんを処置することに使用するための、請求項1~
20のいずれか一項に記載の宿主細胞を含む組成物または請求項
21に記載の組成物。
【請求項23】
前記がんは、血液腫瘍である、請求項
22に記載の組成物。
【請求項24】
前記血液腫瘍は、慢性リンパ性白血病(CLL)またはマントル細胞リンパ腫(MCL)である、請求項
23に記載の組成物。
【請求項25】
前記がんは、固形腫瘍である、請求項
22に記載の組成物。
【請求項26】
前記固形腫瘍は、乳がん、肺がん、卵巣がん、もしくは膵臓がんの腫瘍である、請求項
25に記載の組成物。
【請求項27】
前記固形腫瘍は、肺腺癌、腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌、非定型カルチノイド、またはトリプルネガティブ乳がんである、請求項
25に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列に関する陳述
本出願と関連する配列表は、紙によるコピーの代わりにテキスト形式で提供され、本明細書に参考として援用される。その配列表を含むテキストファイルの名称は、360056_442WO_SEQUENCE_LISTING.txtである。そのテキストファイルは、48.8 KBであり、2017年4月20日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【背景技術】
【0002】
背景
T細胞ベースの免疫療法は、腫瘍反応性T細胞が腫瘍浸潤リンパ球(TILs)の集団の中で見出されたときに開発され始めた(Clarkら, Cancer Res. 29:705, 1969)。養子T細胞移入として公知の1つのストラテジーは、状況によっては、腫瘍反応性に関して予め選択された腫瘍浸潤リンパ球の単離、IL-2の存在下で抗CD3および抗CD28抗体によって誘導される腫瘍反応性T細胞のクローン性拡大、および最終的には、腫瘍を有する患者に拡大した細胞集団を(化学療法およびIL-2の反復投与とともに)注入して戻すことを含む(Dudleyら, Science 298:850, 2002)。腫瘍浸潤リンパ球での養子T細胞治療のこの形態は、技術的に扱いづらい可能性があり、黒色腫を有する患者の僅かな割合においてのみ完全寛解をもたらし、他のがんにおいては希に有効である(Besserら, Clin. Cancer Res. 16:2646, 2010)。
【0003】
腫瘍反応性T細胞クローンの単離は、別の免疫療法アプローチ(特定の抗原に対して特異的な組換えT細胞レセプター(TCR)の生成)の開発をもたらし、これは、例えば、ベクター送達系を使用して、腫瘍細胞上に発現される主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子(ヒトにおいてヒト白血球抗原(HLA)分子として公知)によって提示される腫瘍関連ペプチドのような所望の標的に対する特異性を付与するために、T細胞へと導入され得る。別のアプローチは、一次シグナル伝達ドメイン(例えば、TCRシグナル伝達ドメインまたは状況によっては、共刺激シグナル伝達ドメイン)のようなエフェクタードメインを含む1種またはこれより多くの種の細胞内構成要素に連結された合成レセプター(キメラ抗原レセプター(CAR)といわれ、一般に抗原結合ドメインを含み、該レセプターは、例えば、抗腫瘍治療の状況において、腫瘍特異的抗原または腫瘍関連抗原に結合し得る)を導入する。TILの投与とは異なり、操作されたTCRまたはCAR T細胞免疫療法の基本的手順は一般に、腫瘍標的化部分をコードする導入遺伝子でヒトT細胞を遺伝的に改変すること、その組換えT細胞のエキソビボ拡大、およびその拡大した組換えT細胞を患者へと輸注して戻すことである。
【0004】
組換えTCRを発現するT細胞を使用する養子T細胞療法は、特に、ある種のB細胞がんで有望な臨床上の利益を有することが示されてきた。しかし、有効なT細胞活性化はしばしば、同時の共刺激シグナルを要求するかまたはそれによって増強される(Chen and Flies, Nat. Rev. Immunol. 13: 227-242, 2013)。腫瘍微小環境において、共刺激分子は、概してダウンレギュレートされる。結果として、IL-2を介する外因性刺激は、代表的には、がん抗原に対して特異的な組換えTCRを発現するT細胞にとって必要である。
【0005】
T細胞の活性化は、TCRが抗原提示細胞(APC)上のMHCにおいて提示される特異的ペプチドを結合する場合に開始される(Rossyら, Frontiers in Immunol. 3:1, 2012)。複数のサイトカイン(IL-2を含む)が、T細胞増殖および生存に影響を及ぼし得る。T細胞応答の大きさは、サイトカインレセプターを通じてT細胞へと送達されるシグナルによって一部調節される。そのIL-2レセプター(IL-2R)複合体は、特有のα鎖(CD25)、IL-15レセプターと共有されるβ鎖、ならびにIL-4、IL-7、IL-9、およびIL-15レセプター(これらは全て、増殖シグナルをも送達し得る)と共有されるγ鎖から構成されるヘテロトリマーである(Nelson and Willerford, Adv. Immunol. 70:1 , 1998)。
【0006】
CD8+ T細胞は、エフェクターT細胞(CTL)への分化後にIL-2を生成する能力を概して失う(Arugaら, J. Leukocyte Biol. 61:507, 1997)。分化したエフェクターCD8+ T細胞はまた、多くのサイトカイン(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が挙げられる)を分泌する能力を保持する(Arugaら, 1997)が、GM-CSFレセプターを発現しない。外因性IL-2を全身的に投与することは、CTL寿命をインビボで延ばすために使用され得る(Cheever and Chen, Immuno. Rev. 157:177, 1997)が、IL-2処置は、重篤な毒性と関連してきた(Dalgleish, Gene Ther. 1:83, 1994)。
【0007】
インビボでの応答性CD8+ T細胞における、IL-2Rによる増強されたシグナル伝達および有効性が、免疫療法分野において未だに必要である。本開示の実施形態は、これらの必要性に対処し、他の関連する利点を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Clarkら, Cancer Res. 29:705, 1969
【文献】Dudleyら, Science 298:850, 2002
【文献】Besserら, Clin. Cancer Res. 16:2646, 2010
【文献】Chen and Flies, Nat. Rev. Immunol. 13: 227-242, 2013
【文献】Rossyら, Frontiers in Immunol. 3:1, 2012
【文献】Nelson and Willerford, Adv. Immunol. 70:1 , 1998
【文献】Arugaら, J. Leukocyte Biol. 61:507, 1997
【文献】Cheever and Chen, Immuno. Rev. 157:177, 1997
【文献】Dalgleish, Gene Ther. 1:83, 1994
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、定量的PCR(データは、3回の、独立して導かれた、原発性浸潤腫瘍(膵管腺癌(pancreatic ductal adenocarcinoma)、PDA)および対をなす転移性細胞調製物の平均±SEMを表す)によって決定される場合の選択したサイトカインおよびケモカインの相対的遺伝子発現を示し、浸潤前細胞(preinvasive cell)における発現に対して正規化する。
【
図2】
図2は、本開示の例示的融合タンパク質の図示である。第1の融合タンパク質は、CSF2Rαに由来する細胞外構成要素およびIL-2Rγに由来する細胞内構成要素を含み、第2の融合タンパク質は、CSF2Rβに由来する細胞外構成要素およびIL-2Rβに由来する細胞内構成要素を含む。その図解は、細胞膜(例えば、T細胞膜)に配置され、複合体(これはヘテロダイマーである)を形成する融合タンパク質を示す。
【
図3】
図3Aおよび3Bは、(A)野生型およびMsln
-/-マウスから単離された最高のアビディティーのMSLN
406-414特異的T細胞クローンからクローニングしたVα4およびVβ9鎖のCDR3配列;ならびに(B)養子移入後に、GM-CSFR細胞外モチーフを発現した動物の血液中のドナー(Thy1.1+/Vβ9+に対してゲーティング(メソテリン特異的TCR
1045
+を示す))CD8+ T細胞のパーセンテージのフローサイトメトリー評価の結果(左パネル)を示す。T細胞上のモチーフの検出は、GM-CSF::IL-2R融合タンパク質の発現を示した。単球の染色(右パネル)は、GM-CSFRを発現し、陽性コントロールとして供した。
【
図4A】
図4A~4Cは、(A)養子移入後経時的に(0日目、5日目、10日目、15日目、20日目、25日目に)血液中で検出されるドナー(Thy1.1+、CD8+に対してゲーティング)T細胞の全体的パーセンテージ;(B)0日目および14日目での血液中のドナー(Thy1.1+/Vβ9+に対してゲーティング)CD8+ T細胞のパーセンテージ(それぞれ、左パネルおよび右パネル)(ここでGM-CSFR細胞外モチーフが検出され、これはGM-CSF::IL-2R融合タンパク質の発現を示した)を示し;(C)融合タンパク質が検出されなかったもの(「TCR
1045」)と比較して、GM-CSF::IL-2R融合タンパク質(「GM/IL2R TCR
1045」)を発現する細胞によって表される血液中のドナー細胞の相対的パーセンテージを示し、これは、融合タンパク質が、この研究においてメソテリン標的化TCR
1045発現T細胞に生存および/または拡大の利点を提供したことを示す。
【
図4B】
図4A~4Cは、(A)養子移入後経時的に(0日目、5日目、10日目、15日目、20日目、25日目に)血液中で検出されるドナー(Thy1.1+、CD8+に対してゲーティング)T細胞の全体的パーセンテージ;(B)0日目および14日目での血液中のドナー(Thy1.1+/Vβ9+に対してゲーティング)CD8+ T細胞のパーセンテージ(それぞれ、左パネルおよび右パネル)(ここでGM-CSFR細胞外モチーフが検出され、これはGM-CSF::IL-2R融合タンパク質の発現を示した)を示し;(C)融合タンパク質が検出されなかったもの(「TCR
1045」)と比較して、GM-CSF::IL-2R融合タンパク質(「GM/IL2R TCR
1045」)を発現する細胞によって表される血液中のドナー細胞の相対的パーセンテージを示し、これは、融合タンパク質が、この研究においてメソテリン標的化TCR
1045発現T細胞に生存および/または拡大の利点を提供したことを示す。
【
図4C】
図4A~4Cは、(A)養子移入後経時的に(0日目、5日目、10日目、15日目、20日目、25日目に)血液中で検出されるドナー(Thy1.1+、CD8+に対してゲーティング)T細胞の全体的パーセンテージ;(B)0日目および14日目での血液中のドナー(Thy1.1+/Vβ9+に対してゲーティング)CD8+ T細胞のパーセンテージ(それぞれ、左パネルおよび右パネル)(ここでGM-CSFR細胞外モチーフが検出され、これはGM-CSF::IL-2R融合タンパク質の発現を示した)を示し;(C)融合タンパク質が検出されなかったもの(「TCR
1045」)と比較して、GM-CSF::IL-2R融合タンパク質(「GM/IL2R TCR
1045」)を発現する細胞によって表される血液中のドナー細胞の相対的パーセンテージを示し、これは、融合タンパク質が、この研究においてメソテリン標的化TCR
1045発現T細胞に生存および/または拡大の利点を提供したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本開示は、宿主細胞(例えば、免疫細胞)におけるシグナル伝達を調整する融合タンパク質を提供する。例えば、本開示の融合タンパク質は、ヒトT細胞への活性化または増殖シグナルを提供し得、ここで上記T細胞は、必要に応じて、好ましい抗原特異的T細胞レセプター(TCR)もしくはキメラ抗原レセプター(CAR)、または両方を有するように操作され得る。例えば、これらの融合タンパク質は、目的のサイトカインまたはケモカインと相互作用して、抗原特異的TCRまたはCARを含むT細胞などのT細胞に、生存および/または拡大の利点を提供することができ、これは、腫瘍微小環境における効力の改善を含む、持続性および移入した細胞への曝露を改善するための構築物の有用性と一致する。
【0011】
ある種の局面において、本開示は、融合タンパク質を含む宿主細胞(例えば、免疫細胞、例えば、T細胞)、融合タンパク質をコードするベクター、および種々の治療適用(被験体における疾患(例えば、がん、感染性疾患)の処置を含む)のための融合タンパク質を含むT細胞を活性化するための方法を提供する。
【0012】
本明細書本文において、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比の範囲、または整数範囲は、別段示されなければ、その記載される範囲内の任意の整数および適切な場合には、その分数(例えば、整数の1/10および1/100)の値を含むことが理解されるべきである。また、任意の物理的特徴(例えば、ポリマーサブユニット、サイズまたは厚み)に関連する本明細書で記載される任意の数値範囲は、別段示されなければ、その記載される範囲内の任意の整数を含むことが理解されるべきである。本明細書で使用される場合、用語「約(about)」とは、別段示されなければ、その示される範囲、値、または構造の±20%を意味する。用語「1つの、ある(a)」および「1つの、ある(an)」とは、本明細書で使用される場合、列挙された構成要素の「1またはこれより多く(one or more)」に言及することが理解されるべきである。選択肢(例えば、「もしくは、または(or)」)の使用は、その選択肢のうちの一方、両方、またはその任意の組み合わせのいずれかを意味することが理解されるべきである。本明細書で使用される場合、用語「含む、包含する(include)」、「有する(have)」、および「含む、包含する(comprise)」は、類義語として使用され、これらの用語およびその変形は、非限定的であると解釈されることが意図される。
【0013】
用語「から本質的になる(consisting essentially of)」とは、請求項の範囲を、特定された材料もしくはステップに、または特許請求される発明の基本的特徴に実質的に影響を及ぼさない範囲に限定する。例えば、タンパク質ドメイン、領域、もしくはモジュール(例えば、結合ドメイン、ヒンジ領域、リンカーモジュール)またはタンパク質(1またはこれより多くのドメイン、領域、またはモジュールを有し得る)は、ドメイン(複数可)、領域(複数可)もしくはモジュール(複数可)またはタンパク質のアミノ酸配列が、組み合わせにおいて、ドメイン、領域、もしくはモジュールまたはタンパク質の長さのうちの多くても20%(例えば、多くても15%、10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%)に寄与し、そのドメイン、領域、モジュールまたはタンパク質の活性(例えば、結合タンパク質の標的結合親和性)に実質的に影響を及ぼさない(すなわち、40%以下、30%、25%、20%、15%、10%、5%、または1%など、50%を超えてその活性を低下させない、)伸長、欠失、変異、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせ(例えば、アミノ末端もしくはカルボキシ末端における、またはドメイン間の、アミノ酸)を含む場合、特定のアミノ酸配列「から本質的になる」。
【0014】
本明細書で使用される場合、「異種の」または「非内因性の」または「外因性の」とは、宿主細胞もしくは被験体に対して天然でない任意の遺伝子、タンパク質、化合物、分子、もしくは活性に言及するか、または構造、活性もしくは両方が天然の分子と変異した分子との間でのように異なるように変化もしくは変異した、宿主もしくは宿主細胞に対して天然の任意の遺伝子、タンパク質、化合物、分子もしくは活性である。ある種の実施形態において、異種の、非内因性の、または外因性の分子(例えば、レセプター、リガンド)は、宿主細胞または被験体に対して内因性でなくてもよいが、代わりに、このような分子をコードする核酸は、結合体化、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーションなどによって宿主細胞に付加されていてもよく、ここでその付加された核酸分子は、宿主細胞ゲノムへと組みこまれ得るか、または染色体外遺伝物質として(例えば、プラスミドもしくは他の自己複製性のベクターとして)存在し得る。用語「相同な」または「ホモログ」とは、宿主細胞、種、もしくは株の中で見出されるか、またはこれらに由来する分子または活性に言及する。例えば、異種のもしくは外因性の分子またはその分子をコードする遺伝子は、それぞれ、天然の宿主もしくは宿主細胞分子またはその分子をコードする遺伝子に相同であり得るが、変化した構造、配列、発現レベルまたはこれらの組み合わせを有し得る。非内因性の分子は、同じ種、異なる種、またはこれらの組み合わせに由来し得る。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「内因性の」または「天然の(native)」とは、宿主または宿主細胞に通常、存在し、操作された変化を有しない遺伝子、タンパク質、化合物、分子、または活性に言及する。
【0016】
「結合ドメイン」(「結合領域」または「結合部分」ともいわれる)は、本明細書で使用される場合、標的分子を特異的におよび非共有結合的に会合するか、合体するか、または結びつける能力を有するペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質のような分子に言及する。結合ドメインは、生物学的分子または目的の他の標的またその結合タンパク質の任意の天然に存在する、合成の、半合成の、または組換え生成された結合パートナーを含む。いくつかの実施形態において、結合ドメインは、例えば、抗体もしくはT細胞レセプター(TCR)に由来する抗原結合ドメインであるか、または機能的結合ドメインもしくはその抗原結合フラグメントを含む(例えば、ドメイン抗体、sFv、scFv、Fab、一本鎖TCR(scTCR)など)。他の実施形態において、結合ドメインまたはその結合部分は、サイトカインまたはケモカイン(例えば、GM-CSF)に結合する。
【0017】
いくつかの実施形態において、「特異的に結合する」とは、結合ドメインまたはその融合タンパク質の、105 M-1に等しいかもしくはこれより大きな親和性もしくはKa(すなわち、1/Mの単位を有する特定の結合相互作用の平衡結合定数)で標的分子への会合または合体(union)に言及するか、あるいはこのような標的分子に結合する一方で、サンプル中の任意の他の分子または構成要素と有意に会合または合体しない。結合ドメイン(またはその融合タンパク質)は、「高親和性」結合ドメイン(またはその融合タンパク質)または「低親和性」結合ドメイン(またはその融合タンパク質)として分類され得る。「高親和性」結合ドメインとは、少なくとも107 M-1、少なくとも108 M-1、少なくとも109M-1、少なくとも1010M-1、少なくとも1011M-1、少なくとも1012M-1、または少なくとも1013M-1というKaを有するそれら結合ドメインに言及する。「低親和性」結合ドメインとは、107M-1まで、まで106M-1まで、105M-1までというKaを有するそれら結合ドメインに言及する。あるいは、親和性は、Mの単位(例えば、10-5M~10-13M)を有する特定の結合相互作用の平衡解離定数(Kd)として定義され得る。ある種の実施形態において、結合ドメインは、「増強された親和性(enhanced affinity)」を有し得、これは、野生型(または親の)結合ドメインより強い標的抗原への結合を有する選択されたまたは操作された結合ドメインに言及する。例えば、増強された親和性は、野生型結合ドメインより高い標的抗原に対するKa(平衡結合定数)に起因し得るか、または野生型結合ドメインのものより低い標的抗原に対するKd(解離定数)に起因し得るか、または野生型結合ドメインのものより低い標的抗原に対する解離速度(off-rate)(Koff)に起因し得る。種々のアッセイが、特定の標的を特異的に結合する本開示の結合ドメインを同定する、および結合ドメインまたは融合タンパク質の親和性を決定することについて公知である(例えば、ウェスタンブロット、ELISA、およびBiacore(登録商標)分析(例えば、Scatchardら, Ann. N.Y. Acad. Sci. 51:660, 1949;および米国特許第5,283,173号、同第5,468,614号、またはその同等物もまた参照のこと)。
【0018】
本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」とは、一本鎖において、少なくとも2個の別個のドメインを有するポリペプチドであって、ここでそのドメインがタンパク質の中で天然には一緒に見出されないものをいう。融合タンパク質をコードする核酸分子は、PCRを使用して構築され得るか、組換え操作されるなどであり得るか、またはこのような融合タンパク質は、タンパク質合成の方法を使用して作製され得る。融合タンパク質は、タグまたは生体活性分子のような、他の構成要素をさらに含み得る(例えば、共有結合される)。ある種の実施形態において、宿主細胞(例えば、T細胞)によって発現または産生される融合タンパク質は、細胞表面に位置し、その細胞表面では、融合タンパク質が細胞外に配置された融合タンパク質の一部(例えば、結合ドメインを含む)および細胞内に配置された融合タンパク質の一部(例えば、シグナル伝達ドメインを含む)で細胞膜に繋がれる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「細胞外構成要素」とは、細胞の外側に配置されかつ別の分子または化合物と特異的に相互作用または会合して、融合タンパク質の細胞内構成要素にシグナル伝達することによって、生物学的効果を誘導し得る融合タンパク質の一部またはドメインをいう。例えば、サイトカイン結合ドメインは、特定のサイトカインと会合し、融合タンパク質の細胞内構成要素を介して細胞へのシグナル伝達を誘導することができる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「細胞内構成要素」とは、宿主細胞の細胞質中に配置されかつシグナル伝達分子とまたは他の細胞内構成要素と相互作用することによって、「細胞内シグナル伝達ドメイン」を介して細胞へとシグナル伝達し得る融合タンパク質の一部またはドメインをいう。
【0021】
本明細書で使用される場合、「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、応答(例えば、適切なシグナルを受容したときに細胞において共刺激、正の、または活性化する生物学的または生理学的応答)を直接的にまたは間接的に促進し得る分子の細胞内部分(例えば、本開示の融合タンパク質において使用されるもの)である。ある種の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、結合したときにシグナルを受容するタンパク質またはタンパク質複合体の一部であるか、またはそれ自体が、標的分子に直接結合して、細胞中の他の構成要素にシグナル伝達し得る。細胞内シグナル伝達ドメインは、これが1またはこれより多くのシグナル伝達ドメインまたはモチーフ(例えば、Box 1モチーフ(例えば、共通のγ鎖上で見出されるJAK相互作用ドメイン)、キナーゼドメイン、免疫レセプターチロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、共刺激ドメインなど)を含む場合に、細胞応答を直接的に促進し得る。他の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、1またはこれより多くの他のタンパク質と会合することによって、細胞応答を間接的に促進し、これは、次には、細胞応答を直接的に促進する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「その部分(portion thereof)」とは、タンパク質の特定の領域(例えば、細胞外部分、膜貫通部分、または細胞内部分)に言及するか、またはタンパク質またはタンパク質領域のドメイン、モチーフ、またはフラグメントであって、そのタンパク質またはタンパク質領域のドメイン、モチーフ、またはフラグメントと関連した機能を保持するものをいう。例えば、サイトカイン結合ドメインのその部分は、サイトカインをなお結合し得るこのドメインのフラグメントを意味する。
【0023】
ある種の実施形態において、融合タンパク質は、「リンカー」を含み得、上記リンカーは、2つの1本鎖融合タンパク質の相互作用、または1種もしくはこれより多くの種の結合ドメインの位置付けを促進するようにスペーサー機能を提供し得、その結果、その得られたポリペプチド構造が標的分子への特異的結合親和性を維持するか、もしくはシグナル伝達活性(例えば、エフェクタードメイン活性)を維持するか、または両方を維持する。例示的なリンカーとしては、GlyxSeryの1~約10回反復(ここでxおよびyは、独立して、1~5の整数である)が挙げられる。
【0024】
「ジャンクションアミノ酸(Junction amino acid)」または「ジャンクションアミノ酸残基」とは、融合タンパク質の2個の隣接するモチーフ、領域、もしくはドメインの間の(例えば、結合ドメインと隣接する疎水性構成要素との間の)、または疎水性構成要素の一方の末端もしくは両方の末端上の、1個もしくはこれより多くの(例えば、約2~20)個のアミノ酸残基に言及する。ジャンクションアミノ酸は、融合タンパク質の構築デザインから生じ得る(例えば、融合タンパク質をコードする核酸分子の構築の間の制限酵素部位の使用から生じるアミノ酸残基)。ある種の実施形態において、ジャンクションアミノ酸は、リンカー(例えば、GlyxSeryの1~約10回反復(ここでxおよびyは、独立して、1~5の整数である)を有するもの)を形成する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「免疫系細胞」とは、骨髄中の造血幹細胞に由来する免疫系のうちのいずれかの細胞を意味し、造血幹細胞は、2種の主要な系統、骨髄系前駆細胞(これは、単球、マクロファージ、樹状細胞、巨核球および顆粒球のような骨髄系細胞を生じる)およびリンパ系前駆細胞(これは、T細胞、B細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞のようなリンパ系細胞を生じる)を生じる。例示的な免疫系細胞としては、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、CD4- CD8-ダブルネガティブT細胞、γδ T細胞、調節性T細胞、ナチュラルキラー細胞、および樹状細胞が挙げられる。マクロファージおよび樹状細胞は、「抗原提示細胞」または「APC」といわれ得、これら細胞は、ペプチドと複合体化したAPCの表面上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)レセプターがT細胞の表面上のTCRと相互作用したときにT細胞を活性化し得る専門化した細胞である。
【0026】
「T細胞」は、胸腺において成熟し、T細胞レセプター(TCR)を生成する免疫系細胞である。T細胞は、ナイーブ(抗原に曝されていない;TCMと比較して、CD62L、CCR7、CD28、CD3、CD127、およびCD45RAの増加した発現、ならびにCD45ROの低下した発現)、メモリーT細胞(TM)(抗原を経験し、長期生存性)、およびエフェクター細胞(抗原を経験し、細胞傷害性)であり得る。TMは、セントラルメモリーT細胞(TCM, ナイーブT細胞と比較して、CD62L、CCR7、CD28、CD127、CD45RO、およびCD95の増加した発現、ならびにCD54RAの低下した発現)およびエフェクターメモリーT細胞(TEM, ナイーブT細胞もしくはTCMと比較して、CD62L、CCR7、CD28、CD45RAの低下した発現、およびCD127の増加した発現)のサブセットへとさらに分けられ得る。エフェクターT細胞(TE)とは、TCMと比較して、CD62L、CCR7、CD28の低下した発現を有しかつグランザイムおよびパーフォリンに関して陽性である、抗原を経験したCD8+細胞傷害性Tリンパ球をいう。他の例示的T細胞としては、調節性T細胞(例えば、CD4+ CD25+(Foxp3+)調節性T細胞およびTreg17細胞)、ならびにTr1、Th3、CD8+CD28-、およびQa-1拘束性T細胞が挙げられる。
【0027】
「T細胞レセプター」(TCR)とは、CD3と会合して、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合した抗原の認識を概して担う、T細胞(またはTリンパ球)の表面に見出される分子をいう。このTCRは、大部分のT細胞において高度に可変性のα鎖およびβ鎖(それぞれ、TCRαおよびTCRβとしても公知)のジスルフィド連結したヘテロダイマーを有する。T細胞の小さなサブセットにおいて、そのTCRは、可変性のγ鎖およびδ鎖(それぞれ、TCRγおよびTCRδとしても公知)のヘテロダイマーから作られる。TCRの各鎖は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、およびC末端にある短い細胞質テールを有する(Janewayら, Immunobiology: The Immune System in Health and Disease, 第3版, Current Biology Publications, p. 4:33, 1997を参照のこと)。TCRは、本開示で使用される場合、種々の動物種(ヒト、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ヤギ、ウマ、または他の哺乳動物が挙げられる)に由来し得る。TCRは、細胞に結合していてもよいし(すなわち、膜貫通領域またはドメインを有する)または可溶性形態にあってもよい。
【0028】
「主要組織適合遺伝子複合体分子」(MHC分子)は、交換可能に使用され、ヒト対応ヒト白血球抗原(HLA分子)ともいわれることが理解され、細胞表面にペプチド抗原を送達する糖タンパク質を指す。MHCクラスI分子は、膜スパニングα鎖(3個のαドメインを有する)および非共有結合的に会合したβ2ミクログロブリンからなるヘテロダイマーである。MHCクラスII分子は、2種の膜貫通糖タンパク質、αおよびβ(これらはともに、膜跨いでいる)から構成される。各鎖は、2個のドメインを有する。MHC(HLA)クラスI分子は、サイトゾルに由来する(originating)ペプチドを細胞表面へと送達し、この場合、ペプチド:MHC(またはペプチド:ヒトにおけるHLA)複合体は、CD8+ T細胞によって認識される。MHC(HLA)クラスII分子は、小胞系に由来するペプチドを細胞表面へと送達し、この場合、それらは、CD4+ T細胞によって認識される。MHC分子は、種々の動物種(ヒト、マウス、ラット、または他の哺乳動物が挙げられる)に由来し得る。
【0029】
「核酸分子」、またはポリヌクレオチドは、RNAまたはDNAの形態にあり得、そのDNAとしては、cDNA、ゲノムDNA、および合成DNAが挙げられる。核酸分子は、二本鎖であっても一本鎖であってもよく、一本鎖である場合、コード鎖または非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。コード分子は、当該分野で公知のコード鎖と同一のコード配列を有してもよいし、遺伝コードの重複性もしくは縮重性の結果として、またはスプライシングによって、同じポリペプチドをコードし得る異なるコード鎖を有してもよい。
【0030】
本開示の核酸分子またはポリヌクレオチドの改変体はまた、企図される。改変体ポリヌクレオチドは、本明細書で記載されるとおりの定義された配列のポリヌクレオチドのうちの1つと、または約65~68℃において0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウムの、もしくは約42℃において0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および50% ホルムアミドのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で定義された配列の、それらポリヌクレオチドのうちの1つとハイブリダイズするものと、少なくとも90%、および好ましくは95%、99%または99.9%同一である。上記ポリヌクレオチド改変体は、本明細書で記載される機能性を有する結合ドメインまたはその融合タンパク質をコードする能力を保持する。
【0031】
用語「ストリンジェントな」とは、当該分野でストリンジェントとして一般に理解される条件に言及するために使用される。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、温度、イオン強度、および変性剤(例えば、ホルムアミド)の濃度によって主に決定される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄のストリンジェントな条件の例は、約65~68℃において0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、または約42℃において0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および50% ホルムアミドである(Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989を参照のこと)。
【0032】
よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤)もまた、使用され得る;しかし、ハイブリダイゼーションの速度は、影響を受ける。デオキシオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに関する場合、さらなる例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、37℃(14塩基のオリゴヌクレオチドについて)、48℃(17塩基のオリゴヌクレオチドについて)、55℃(20塩基のオリゴヌクレオチドについて)、および60℃(23塩基のオリゴヌクレオチドについて)において6×SSC、0.05% ピロリン酸ナトリウム中での洗浄を含む。
【0033】
「ベクター」とは、別の核酸を輸送し得る核酸分子である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、またはファージであり得る。「発現ベクター」とは、適切な環境において存在する場合、そのベクターによって運ばれる1またはこれより多くの遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を指向し得るベクターである。
【0034】
「レトロウイルス」とは、RNAゲノムを有するウイルスである。「ガンマレトロウイルス(gammaretrovirus)」とは、レトロウイルス科の中のある属をいう。例示的なガンマレトロウイルスとしては、マウス幹細胞ウイルス、マウス白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、およびトリ細網内皮症ウイルスが挙げられる。
【0035】
「レンチウイルス」とは、分裂細胞および非分裂細胞に感染し得るレトロウイルスのある属に言及する。レンチウイルスのいくつかの例としては、HIV(ヒト免疫不全ウイルス;HIVタイプ1、およびHIVタイプ2を含む);ウマ伝染性貧血ウイルス;ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ウシ免疫不全ウイルス(BIV);およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。
【0036】
用語「同一の」または「%同一性(percent identity)」とは、2種もしくはこれより多くのポリペプチドまたは核酸分子の配列の状況において、当該分野で公知の方法を使用して(例えば、配列比較アルゴリズム、手動でのアラインメントによって、もしくは目視によって)測定される場合、比較ウインドウまたは指定された領域にわたって最大の一致のために比較および整列された場合、特定の領域にわたって同じであるか、またはその領域にわたって同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチドの特定のパーセンテージ(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性)を有する2種もしくはこれより多くの配列もしくは部分配列を意味する。例えば、%配列同一性および配列類似性を決定するために適した好ましいアルゴリズムは、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、以下に記載される:それぞれ、Altschulら(Nucleic Acids Res. 25:3389, 1977)およびAltschulら(J. Mol. Biol. 215:403, 1990)。
【0037】
「処置する、処理する(treat)」または「処置、処理(treatment)」または「改善する(ameliorate)」とは、被験体(例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えば、霊長類、ウマ、イヌ、マウス、もしくはラット))の疾患、障害、または状態の医学的管理をいう。一般に、本開示の融合タンパク質を発現する宿主細胞を含む適切な用量または処置レジメン、および必要に応じてアジュバント療法または補助的療法(adjunctive therapy)は、治療上の利益または予防上の利益を引き出すために十分な量で投与される。治療上のまたは予防上の/防止上の利益としては、改善された臨床転帰;疾患と関連する症状の低減または緩和;症状の出現の減少;クオリティー・オブ・ライフの改善;より長い無病状態;疾患の程度の減少、疾患状態の安定化;疾患進行の遅延;寛解;生存;生存の長期化;またはこれらのうちのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0038】
融合タンパク質または本開示の融合タンパク質を発現する細胞の「治療上有効な量」または「有効量」とは、処置されている疾患または状態の状況において、満足のいく有意な様式での処置されている疾患の1またはこれより多くの症状の改善(例えば、感染の低減、腫瘍サイズの縮小、がん成長の阻害など)を生じるために十分な融合タンパク質の量または細胞の数に言及する。
【0039】
核酸、融合タンパク質、および宿主細胞
ある種の局面において、本開示は、本明細書で記載される融合タンパク質のうちのいずれか1種またはこれより多くの種をコードする核酸分子を提供し、その本明細書で記載される融合タンパク質は、サイトカイン結合ドメインの全てまたは一部を含む細胞外構成要素、膜貫通ドメインおよび1種またはこれより多くの種のIL-2R鎖のシグナル伝達ドメインまたはそのシグナル伝達部分(複数可)を含む細胞内構成要素を含む融合タンパク質であり得、ここで上記サイトカイン結合ドメインは、IL-2結合ドメインではない。このような核酸分子は、目的の宿主細胞(例えば、T細胞)の中に導入するための適切なベクター(例えば、ウイルスベクターまたは非ウイルスプラスミドベクター)へと挿入され得る。
【0040】
ある種の実施形態において、本開示は、サイトカイン結合ドメインまたはその一部を含む細胞外構成要素と、IL-2R細胞内部分、細胞内シグナル伝達ドメインまたはその一部を含む細胞内構成要素との間に配置された膜貫通ドメインを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、そのコードされる細胞内構成要素は、IL-2Rγ、IL-2Rβ、IL-4R、IL-7R、IL-9R、IL-15R、IL-21R、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせに由来する細胞内部分、細胞内シグナル伝達ドメインまたはその一部から構成される。関連実施形態において、そのコードされる細胞内構成要素は、ヒトIL-2Rγ、ヒトIL-2Rβ、ヒトIL-4R、ヒトIL-7R、ヒトIL-9R、ヒトIL-15R、ヒトIL-21R、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせに由来する細胞内部分、細胞内シグナル伝達ドメインまたはその一部から構成される。
【0041】
他の実施形態において、本開示は、サイトカイン結合ドメインの全てまたは一部を含む細胞外構成要素、膜貫通ドメインおよび1種またはこれより多くの種のIL-2R鎖のシグナル伝達ドメインまたはそのシグナル伝達部分を含む細胞内構成要素を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供し、ここで上記サイトカイン結合ドメインは、IL-2結合ドメインではない。ある種の実施形態において、ポリヌクレオチドは、(a)第1の融合タンパク質であって、サイトカイン結合ドメインの全てまたは一部は、サイトカイン結合ドメインの第1の部分であるもの、ならびに(b)サイトカイン結合ドメインの第2の部分、第2の膜貫通ドメインおよび第2のIL-2R鎖シグナル伝達ドメインまたはそのシグナル伝達部分を含む第2の細胞内構成要素を含む第2の融合タンパク質をコードし、必要に応じて、抗原レセプターもしくはその一部または抗原結合タンパク質(例えば、抗原特異的TCRまたはCAR)をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0042】
さらなる実施形態において、本開示は、サイトカイン結合ドメインまたはその一部を含む細胞外構成要素と、IL-2Rγ細胞内部分、細胞内シグナル伝達ドメインまたはその一部(必要に応じてヒトIL-2Rγ)を含む細胞内構成要素との間に配置された膜貫通ドメインを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、サイトカイン結合ドメインまたはその一部を含む細胞外構成要素と、細胞内構成要素との間に配置された膜貫通ドメインを含む融合タンパク質をコードし、ここで上記コードされる融合タンパク質の細胞外構成要素の非サイトカイン結合部分、膜貫通ドメイン、および細胞内構成要素は、配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する。なおさらなる実施形態において、そのコードされる融合タンパク質のそのコードされる非サイトカイン結合細胞外部分、膜貫通ドメイン、および細胞内部分は、配列番号10に示されるアミノ酸配列から構成されるかまたはそのアミノ酸配列からなる。
【0043】
ある種の実施形態において、前述のポリヌクレオチドのうちのいずれかは、サイトカイン結合ドメインおよび非サイトカイン結合細胞外部分を含むIL-2R鎖の一部を含む細胞外構成要素、IL-2R鎖の膜貫通ドメイン、ならびにIL-2R鎖(例えば、IL-2RγもしくはヒトIL-2Rγ)の細胞内部分を含む融合タンパク質をコードする。さらなる実施形態において、IL-2R鎖の非サイトカイン結合細胞外部分、膜貫通ドメイン、および細胞内部分は、配列番号6のヌクレオチド961~1,308と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる。なおさらなる実施形態において、IL-2R鎖の非サイトカイン結合細胞外部分、膜貫通ドメイン、および細胞内部分は、配列番号6のヌクレオチド961~1,308を含むかまたはこれからなるポリヌクレオチドによってコードされる。
【0044】
未ださらなる実施形態において、本開示は、サイトカイン結合ドメインまたはその一部を含む細胞外構成要素と、IL-2Rβ細胞内部分、細胞内シグナル伝達ドメインまたはその一部(必要に応じてヒトIL-2Rβ)を含む細胞内構成要素との間に配置される膜貫通ドメインを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、サイトカイン結合ドメインまたはその一部を含む細胞外構成要素と、細胞内構成要素との間に配置される膜貫通ドメインを含む融合タンパク質をコードし、ここで上記コードされる融合タンパク質の膜貫通ドメインおよび細胞内構成要素は、配列番号12に示される配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する。なおさらなる実施形態において、そのコードされる融合タンパク質のそのコードされる膜貫通ドメインおよび細胞内部分は、配列番号12に示されるアミノ酸配列から構成されるかまたはそのアミノ酸配列からなる。
【0045】
ある種の実施形態において、前述のポリヌクレオチドのうちのいずれかは、サイトカイン結合ドメインを含む細胞外構成要素、IL-2R鎖の膜貫通ドメイン、およびIL-2R鎖の細胞内部分(例えば、IL-2RβまたはヒトIL-2Rβ)を含む融合タンパク質をコードする。さらなる実施形態において、上記IL-2R鎖の膜貫通ドメインおよび細胞内部分は、配列番号7のヌクレオチド1,315~2,250と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる。なおさらなる実施形態において、上記IL-2R鎖の非サイトカイン結合細胞外部分、膜貫通ドメイン、および細胞内部分は、配列番号7のヌクレオチド1,315~2,250を含むかまたはこれからなるポリヌクレオチドによってコードされる。
【0046】
前述の実施形態のうちのいずれかにおいて、そのコードされる細胞外構成要素は、CSF2RA(GM-CSFRまたはCSF2Rともいわれる)、CSF2RB(IL3RB、IL5RB、CD131ともいわれる)、CSF1R(M-CSFRまたはCSFRともいわれる)、CSF3R(G-CSFRまたはCD114ともいわれる)、CXCR2(IL8RA、IL8RB、IL8R2またはCD182ともいわれる)、またはCCR8(CY6またはTER1ともいわれる)の細胞外ドメインまたはその一部を含む。さらなる実施形態において、そのコードされる細胞外構成要素は、ヒトCSF2RA、ヒトCSF2RB、ヒトCSF1R、ヒトCSF3R、ヒトCXCR2、またはヒトCCR8の細胞外ドメインまたはその一部を含む。
【0047】
前述の実施形態のうちのいずれかにおいて、そのコードされるサイトカイン結合ドメインまたはその結合部分は、GM-CSF(CSF2ともいわれる)、M-CSF(CSF1ともいわれる)、G-CSF(CSF3ともいわれる)、CXCL1、CXCL2、またはCCL1に特異的に結合する。さらなる実施形態において、そのコードされるサイトカイン結合ドメインまたはその結合部分は、ヒトGM-CSF、ヒトM-CSF、ヒトG-CSF、ヒトCXCL1、ヒトCXCL2、ヒトCCL1に特異的に結合する。
【0048】
ある種の実施形態において、前述のポリヌクレオチドのうちのいずれかは、CSF2に対して特異的なサイトカイン結合ドメイン(例えば、CSF2RAまたはCSF2RBの細胞外部分)を含む融合タンパク質をコードする。さらなる実施形態において、CSF2RAの細胞外部分は、配列番号6のヌクレオチド1~960と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる。なおさらなる実施形態において、CSF2RAの細胞外部分は、配列番号6のヌクレオチド1~960を含むかまたはこれからなるポリヌクレオチドによってコードされる。関連実施形態において、CSF2RAのそのコードされる細胞外部分は、配列番号9に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。なおさらなる実施形態において、CSF2RAのそのコードされる細胞外部分は、配列番号9に示されるアミノ酸配列から構成されるかまたはこれからなる。他の実施形態において、CSF2RBの細胞外部分は、配列番号7のヌクレオチド1~1,314と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる。なおさらなる実施形態において、CSF2RBの細胞外部分は、配列番号6のヌクレオチド1~1,314を含むかまたはこれからなるポリヌクレオチドによってコードされる。関連実施形態において、CSF2RBのそのコードされる細胞外部分は、配列番号11に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。さらに他の実施形態において、CSF2RBのそのコードされる細胞外部分は、配列番号11に示されるアミノ酸配列から構成されるかまたはこれからなる。
【0049】
ある種の実施形態において、前述のポリヌクレオチドのうちのいずれかは、膜貫通ドメイン(例えば、IL-2RG、IL-2RB、CSF2RA、CSF2RB、CSF1R、CSF3R、CXCR2、CCR8、IL-2RA、IL-4R、IL-7R、IL-9R、IL-15R、IL-21R、CD2、CD3ε、CD3δ、CD3ζ、CD25、CD27、CD28、CD40、CD79A、CD79B、CD80、CD86、CD95(Fas)、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD200R、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、CD279(PD-1)、CD300、CD357(GITR)、A2aR、DAP10、FcRα、FcRβ、FcRγ、Fyn、GAL9、KIR、Lck、LAT、LRP、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、PTCH2、ROR2、Ryk、Slp76、SIRPα、pTα、TCRα、TCRβ、TIM3、TRIM、LPA5、またはZap70の膜貫通ドメイン)を含む融合タンパク質をコードする。いくつかの実施形態において、そのコードされる膜貫通ドメインは、ヒトIL-2RG、ヒトIL-2RB、ヒトCSF2RA、ヒトCSF2RB、ヒトCSF1R、ヒトCSF3R、ヒトCXCR2、ヒトCCR8、ヒトIL-2RA、ヒトIL-4R、ヒトIL-7R、ヒトIL-9R、ヒトIL-15R、ヒトIL-21R、ヒトCD2、ヒトCD3ε、ヒトCD3δ、ヒトCD3ζ、ヒトCD25、ヒトCD27、ヒトCD28、ヒトCD40、ヒトCD79A、ヒトCD79B、ヒトCD80、ヒトCD86、ヒトCD95(Fas)、ヒトCD134(OX40)、ヒトCD137(4-1BB)、ヒトCD150(SLAMF1)、ヒトCD152(CTLA4)、ヒトCD200R、ヒトCD223(LAG3)、ヒトCD270(HVEM)、ヒトCD272(BTLA)、ヒトCD273(PD-L2)、ヒトCD274(PD-L1)、ヒトCD278(ICOS)、ヒトCD279(PD-1)、ヒトCD300、ヒトCD357(GITR)、ヒトA2aR、ヒトDAP10、ヒトFcRα、ヒトFcRβ、ヒトFcRγ、ヒトFyn、ヒトGAL9、ヒトKIR、ヒトLck、ヒトLAT、ヒトLRP、ヒトNKG2D、ヒトNOTCH1、ヒトNOTCH2、ヒトNOTCH3、ヒトNOTCH4、ヒトPTCH2、ヒトROR1、ヒトROR2、ヒトRyk、ヒトSlp76、ヒトSIRPα、ヒトpTα、ヒトTCRα、ヒトTCRβ、ヒトTIM3、ヒトTRIM、ヒトLPA5、またはヒトZap70のものである。特定の実施形態において、前述のポリヌクレオチドのうちのいずれかは、配列番号22または23に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である膜貫通ドメインを含む融合タンパク質をコードする。他の実施形態において、そのコードされる膜貫通ドメインは、配列番号22または23に示されるアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる。
【0050】
抗原結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの場合、このようなコードされる抗原結合タンパク質は、前述の膜貫通ドメイン実施形態のうちのいずれかに従う膜貫通ドメインを含み得る。
【0051】
ある種の実施形態において、本開示は、サイトカイン結合ドメインまたはその一部を含む細胞外構成要素と、細胞内構成要素との間に配置された膜貫通ドメインを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供し;ここでそのコードされる細胞外構成要素は、CSF2RAの細胞外部分およびIL-2Rγの非サイトカイン結合細胞外部分を含み、そしてそのコードされる膜貫通ドメインおよびコードされる細胞内構成要素は、IL-2Rγの一部を含む。さらなる実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号1に示されるとおりのアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する融合タンパク質をコードする。なおさらなる実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号1に示されるとおりのアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる融合タンパク質をコードする。
【0052】
ある種の実施形態において、本開示は、サイトカイン結合ドメインまたはその一部を含む細胞外構成要素と、細胞内構成要素との間に配置された膜貫通ドメインを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供し;ここでそのコードされる細胞外構成要素は、CSF2RBの細胞外部分を含み、そのコードされる膜貫通ドメインおよびコードされる細胞内構成要素は、IL-2Rβの一部を含む。さらなる実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号2に示されるとおりのアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する融合タンパク質をコードする。さらなる実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号2に示されるとおりのアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる融合タンパク質をコードする。
【0053】
配列番号1および配列番号9の最初の22個のアミノ酸、ならびに配列番号2および配列番号11の最初の16個のアミノ酸は、それぞれ、ヒトCSF2RAおよびCSF2RBのシグナル配列に相当する。ある種の実施形態において、配列番号1、配列番号2、配列番号9および配列番号11の融合タンパク質は、宿主細胞の表面で発現され、成熟タンパク質であり、すなわち、その成熟タンパク質は、シグナル配列を欠いている。例えば、配列番号9に従うCSF2RAの成熟タンパク質は、配列番号9のアミノ酸23~320に相当し、配列番号11に従うCSF2RBの成熟タンパク質は、配列番号11のアミノ酸17~438に相当する。
【0054】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、IL-2R(例えば、IL-2RγまたはIL-2Rβ)に由来する細胞内シグナル伝達ドメインまたは機能的フラグメントまたはその一部を含む融合タンパク質をコードする。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、CD3ε、CD3δ、CD3ζ、CD25、CD27、CD28、CD40、CD47、CD79A、CD79B、CD134(OX40)、CD137(4 1BB)、CD150(SLAMF1)、CD278(ICOS)、CD357(GITR)、CARD11、DAP10、DAP12、FcRα、FcRβ、FcRγ、Fyn、Lck、LAT、LRP、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、ROR2、Ryk、Slp76、pTα、TCRα、TCRβ、TRIM、Zap70、PTCH2、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせに由来する細胞内シグナル伝達ドメインまたは機能的フラグメントまたはその一部を含む抗原結合タンパク質をコードする。いくつかの実施形態において、融合タンパク質または抗原結合タンパク質のコードされる細胞内シグナル伝達ドメインまたは機能的フラグメントまたはその一部は、CD3ζを含まない。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「組換え(recombinant)」または「非天然の(non-natural)」とは、少なくとも1つの遺伝的変化を含むかまたは外因性核酸分子の導入によって改変された生物、微生物、細胞、核酸分子、またはベクターに言及し、ここでこのような変化または改変は、遺伝子操作によって導入される。遺伝的変化としては、例えば、タンパク質、融合タンパク質もしくは酵素をコードする発現可能な核酸分子を導入する改変、または他の核酸分子の付加、欠失、置換、もしくは細胞の遺伝物質の他の機能的破壊が挙げられる。さらなる改変は、例えば、その改変が遺伝子またはオペロンの発現を変化させる非コード調節領域を含む。ある種の実施形態において、被験体から得られる細胞(例えば、T細胞)は、本明細書で記載されるとおりの融合タンパク質をコードする核酸を導入することによって非天然のまたは組換え細胞(例えば、非天然または組換えT細胞)へと変換され得、それによって、その細胞は、融合タンパク質を発現する。
【0056】
ある種の実施形態において、ポリヌクレオチドは、複数の融合タンパク質、複数の抗原結合タンパク質、またはこれらの組み合わせをコードし、ここでその複数の融合タンパク質、抗原結合タンパク質、またはこれらの組み合わせのうちの2またはこれより多くは、切断部位によって分離される。いくつかの実施形態において、切断部位は、融合タンパク質または抗原結合タンパク質に対してアミノ末端側にある2~約20アミノ酸のプロテアーゼ切断部位、融合タンパク質または抗原結合タンパク質のカルボキシ末端側にある2~約20アミノ酸のプロテアーゼ切断部位、自己切断アミノ酸配列、またはコレラの組み合わせを含む。
【0057】
ある種の実施形態において、コードされる切断部位は、ブタテッショウウイルス-1(P2A)(配列番号13)、Thosea asignaウイルス(T2A)(配列番号14)、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A)(配列番号15)、口蹄疫ウイルス(F2A)(配列番号16)に由来する2Aペプチド、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせを含む自己切断アミノ酸配列である(例えば、Kimら, PLOS One 6:e18556, 2011を参照のこと)。さらなる実施形態において、複数の融合タンパク質、複数の抗原結合タンパク質、またはこれらの組み合わせをコードするポリヌクレオチドは、上記タンパク質のうちの2個またはこれより多くの間に位置した自己切断ペプチドをコードする配列を含み、それは、以下であり得る:(a)配列番号17に示されるとおりのポリヌクレオチドによってコードされるP2Aペプチド;(b)配列番号18に示されるとおりのコドン最適化ポリヌクレオチドによってコードされるP2Aペプチド;(c)T2Aペプチドは配列番号19に示されるとおりのポリヌクレオチドによってコードされる;(d)E2Aペプチドは配列番号20に示されるとおりのポリヌクレオチドによってコードされる;(e)F2Aペプチドは配列番号21に示されるとおりのポリヌクレオチドによってコードされる;または(f)これらのうちのいずれかの組み合わせ。
【0058】
ある種の実施形態において、本開示のポリヌクレオチド、第1の融合タンパク質、第2の融合タンパク質および必要に応じて抗原結合タンパク質、ここでその第1の融合タンパク質は、サイトカイン結合ドメインまたはその一部を含む細胞外構成要素と、IL-2Rγ(必要に応じてヒトIL-2Rγ)、細胞内部分または細胞内シグナル伝達ドメインもしくはその一部を含むか、これからなるか、またはこれと少なくとも90%同一性を有するか、あるいは必要に応じて配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する細胞内構成要素との間に配置された膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号1に示されるとおりのアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する第1の融合タンパク質をコードする。なおさらなる実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号1に示されるとおりのアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる第1の融合タンパク質をコードする。
【0059】
さらなる実施形態において、本開示のポリヌクレオチドは、第1の融合タンパク質、第2の融合タンパク質および必要に応じて抗原結合タンパク質をコードし、ここでそのコードされる第1の融合タンパク質は、サイトカイン結合ドメインまたはその一部を含む細胞外構成要素と、IL-2Rβ(必要に応じてヒトIL-2Rβ)、細胞内部分または細胞内シグナル伝達ドメインもしくはその一部を含むか、これからなるか、またはこれと少なくとも90%同一性を有するか、あるいは必要に応じて配列番号12に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する細胞内構成要素との間に配置された膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号2に示されるとおりのアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する第1の融合タンパク質をコードする。さらなる実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号2に示されるとおりのアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる第1の融合タンパク質をコードする。
【0060】
なおさらなる実施形態において、本開示のポリヌクレオチドは、第1の融合タンパク質、第2の融合タンパク質、および必要に応じて抗原結合タンパク質をコードし、ここでそのコードされる第1の融合タンパク質は、配列番号1に示されるかまたは配列番号1のアミノ酸23~435(成熟融合タンパク質)に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し;そのコードされる第2の融合タンパク質は、配列番号2に示されるかまたは配列番号2のアミノ酸17~749(成熟融合タンパク質)に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し;そしてここで必要に応じた抗原結合タンパク質は、抗原特異的TCRまたは抗原特異的CARを含み、ここで抗原は、必要に応じてがん特異的抗原(例えば、WT-1、メソテリン、ROR1またはサイクリン-A1抗原)である。
【0061】
これらの実施形態の各々において、第1の融合タンパク質、第2の融合タンパク質、および必要に応じて抗原結合タンパク質は、単一のポリヌクレオチドによって全てコードされ得るか、またはそれらは全て、2種のポリヌクレオチドによってコードされ得る(例えば、第1のポリヌクレオチドは、その第1の融合タンパク質をコードし、第2のポリヌクレオチドは、その第2の融合タンパク質および必要に応じた抗原結合タンパク質をコードするか;あるいは第1のポリヌクレオチドは、その第2の融合タンパク質をコードし、第2のポリヌクレオチドは、その第1の融合タンパク質および必要に応じた抗原結合タンパク質をコードするか;あるいは第1のポリヌクレオチドは、その第1の融合タンパク質および第2の融合タンパク質をコードし、第2のポリヌクレオチドは、その必要に応じた抗原結合タンパク質をコードするか、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせである)。
【0062】
ある種の実施形態において、単一のポリヌクレオチドは、本開示の第1の融合タンパク質および本開示の第2の融合タンパク質をコードし、ここで配列番号17~21のうちのいずれか1つに示されるとおりの自己切断ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、その第1の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドとその第2の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドとの間に配置され、これらを連結する。特定の実施形態において、その第1の融合タンパク質は、配列番号6に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、or 少なくとも98%の同一性を有するポリペプチドによってコードされ、その第2の融合タンパク質は、配列番号7に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる。さらなる実施形態において、その第1の融合タンパク質は、配列番号6に示されるヌクレオチド配列を含むかまたはこれからなるポリヌクレオチドによってコードされ、その第2の融合タンパク質は、配列番号7に示されるヌクレオチド配列を含むかまたはこれからなるポリヌクレオチドによってコードされる。
【0063】
前述の実施形態のうちのいずれかにおいて、本開示の、融合タンパク質、抗原結合タンパク質または両方をコードするポリヌクレオチドは、ある種のタイプの細胞(例えば、T細胞)における発現を増強または最大化するようにコドン最適化され得る(Scholtenら, Clin. Immunol. 119: 135-145, 2006)。
【0064】
本開示のポリヌクレオチドのうちのいずれかは、ベクターの中に含まれ得るか、または宿主細胞(例えば、T細胞)へとベクターを介して送達され得る。コアウイルスをコードするベクターは、「ウイルスベクター」と本明細書でいわれる。ヒト遺伝子治療適用のために同定されたものを含め、本開示の組成物とともに使用するために適した多くの利用可能なウイルスベクターが存在する(Pfeifer and Verma, Ann. Rev. Genomics Hum. Genet. 2:177, 2001を参照のこと)。適切なウイルスベクターは、RNAウイルスに基づくベクター(例えば、レトロウイルス由来のベクター、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)由来のベクター)を含み、より複雑なレトロウイルス由来のベクター(例えば、レンチウイルス由来のベクター)を含む。HIV-1由来のベクターは、このカテゴリーに属する。他の例としては、HIV-2、FIV、ウマ伝染性貧血ウイルス、SIV、およびマエディ・ヴィスナウイルス(ヒツジレンチウイルス)に由来するレンチウイルスベクターが挙げられる。レトロウイルスおよびレンチウイルスのウイルスベクターならびにキメラ抗原レセプター導入遺伝子を含むウイルス粒子で哺乳動物宿主細胞を形質導入するためのパッケージング細胞を使用するための方法は、当該分野で公知であり、例えば、米国特許第8,119,772号;Walchliら, PLoS One 6:327930, 2011; Zhaoら, J. Immunol. 174:4415, 2005; Engelsら, Hum. Gene Ther. 14:1155, 2003; Frechaら, Mol. Ther. 18:1748, 2010; Verhoeyenら, Methods Mol. Biol. 506:97, 2009において以前に記載されている。レトロウイルスベクター構築物およびレンチウイルスベクター構築物ならびに発現系はまた、市販されている。
【0065】
ある種の実施形態において、ウイルスベクターは、本明細書で開示されるとおりの融合タンパク質をコードする非内因性のポリヌクレオチドもしくは本明細書で開示されるとおりの標的に対して特異的な抗原結合タンパク質をコードする非内因性のポリヌクレオチド、または両方を導入するために使用される。ウイルスベクターは、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターであり得る。ウイルスベクターはまた、形質導入に関するマーカーをコードする核酸配列を含み得る。ウイルスベクターのための形質導入マーカーは、当該分野で公知であり、選択マーカー(これは、薬物耐性を付与し得る)または検出マーカー(例えば、蛍光マーカーまたはフローサイトメトリーのような方法によって検出され得る細胞表面タンパク質)を含む。特定の実施形態において、ウイルスベクターはさらに、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ヒトCD2の細胞外ドメイン、または短縮型ヒトEGFR(huEGFRt;Wangら, Blood 118:1255, 2011を参照のこと)を含む形質導入に関する遺伝子マーカーを含む。ウイルスベクターゲノムが、別個の転写物として宿主細胞において発現されるべき複数の核酸配列を含む場合、そのウイルスベクターはまた、バイシストロン性またはマルチシストロン性の発現を可能にするその2つの(またはこれより多くの)転写物の間にさらなる配列を含み得る。ウイルスベクターにおいて使用されるこのような配列の例としては、内部リボソーム進入部位(IRES)、フリン切断部位、ウイルス2Aペプチド、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0066】
他のベクターはまた、DNAウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベースのベクターおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベースのベクター;単純ヘルペスウイルス(HSV)由来のベクター(アンプリコンベクター、複製欠損HSVおよび弱毒化HSV(Kriskyら, Gene Ther. 5: 1517, 1998)が挙げられる)を含む)を含むポリヌクレオチド送達のために使用され得る。
【0067】
遺伝子治療用途のために最近開発された他のベクターはまた、本開示の組成物および方法とともに使用され得る。このようなベクターとしては、バキュロウイルスおよびα-ウイルスに由来するもの(Friedmann T.編. The Development of Human Gene Therapy. New York: Cold Spring Harbor Labの中のJolly, D J. 1999. Emerging Viral Vectors. pp 209-40)、またはプラスミドベクター(例えば、sleeping beautyベクターまたは他のトランスポゾンベクター)が挙げられる。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターまたはプラスミドベクターはさらに、形質導入に関する遺伝子マーカー(例えば、緑色蛍光タンパク質、huEGFRt)を含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、ベクターは、1より多くの融合タンパク質をコードする本明細書で開示されるとおりのポリヌクレオチドを含み、必要に応じて本開示の抗原結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。例えば、ベクターは、2種の異なる融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み得、および必要に応じて本開示の抗原結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるとおりの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターは、抗原特異的TCRもしくはCARをさらにコードし得るか、または抗原特異的TCRもしくはCARをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、その抗原特異的TCRは、外因性である。いくつかの実施形態において、その抗原特異的TCRは、HLA(MHC)クラスI拘束性抗原に対して特異的である。いくつかの実施形態において、その抗原は、がん特異的抗原である。がん特異的抗原がWT-1、メソテリン、ROR1またはサイクリン-A1を含む実施形態はまた、本開示の範囲内にある。
【0070】
本明細書で開示されるポリヌクレオチドのうちのいずれかが、宿主細胞の中に含まれ得、ここでその宿主細胞は、融合タンパク質、抗原結合タンパク質、または両方を発現および産生する。ある種の局面において、本開示は、融合タンパク質および抗原結合タンパク質を含む宿主細胞を提供し、ここでその融合タンパク質は、サイトカイン結合ドメインまたはその一部を含む細胞外構成要素と、IL-2R細胞内部分、細胞内シグナル伝達ドメインまたはその一部を含む細胞内構成要素との間に配置された膜貫通ドメインを含み;そしてここでその抗原結合タンパク質は、T細胞レセプター(TCR);キメラ抗原レセプター(CAR);または必要に応じて複数の抗原結合タンパク質である。いくつかの実施形態において、本開示の宿主細胞は、複数の抗原結合タンパク質(例えば、TCRおよびCARの両方)を含む。
【0071】
さらなる局面において、本開示は、第1の融合タンパク質、第2の融合タンパク質および必要に応じて抗原結合タンパク質を含む宿主細胞を提供し、ここでその第1の融合タンパク質は、サイトカイン結合ドメインまたはその一部を含む細胞外構成要素と、IL-2Rγ(必要に応じてヒトIL-2Rγ)、細胞内部分もしくは細胞内シグナル伝達ドメインもしくはその一部から構成されるか、またはこれと少なくとも90%同一性を有するか、あるいは必要に応じて配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する細胞内構成要素との間に配置された膜貫通ドメインを含み;ここでその第2の融合タンパク質は、サイトカイン結合ドメインまたはその一部を含む細胞外構成要素と、IL-2Rβ(必要に応じてヒトIL-2Rβ)、細胞内シグナル伝達ドメインもしくはその一部および/またはIL-4R、IL-7R、IL-9R、IL-15RもしくはIL-21R鎖のシグナル伝達ドメインもしくはその一部から構成されるか、またはこれと少なくとも90%同一性を有するか、あるいは必要に応じて配列番号12に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する細胞内構成要素との間に配置された膜貫通ドメインを含み;そしてここでその必要に応じた抗原結合タンパク質は、T細胞レセプター(TCR);キメラ抗原レセプター(CAR)を含み;そして必要に応じて複数の抗原結合タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、本開示の宿主細胞は、複数の抗原結合タンパク質(例えば、TCRおよびCARの両方)を含む。
【0072】
さらなる局面において、本開示は、第1の融合タンパク質、第2の融合タンパク質、および必要に応じて抗原結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供し、ここでそのコードされる第1の融合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸23~435(成熟融合タンパク質)に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し;そのコードされる第2の融合タンパク質は、配列番号2のアミノ酸17~749(成熟融合タンパク質)に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し;そしてその必要に応じた抗原結合タンパク質は、抗原特異的TCRまたは抗原特異的CARを含み、ここでその抗原は、必要に応じてがん特異的抗原(例えば、WT-1、メソテリン、ROR1またはサイクリン-A1抗原)である。
【0073】
ある種の実施形態において、本開示のポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、宿主細胞表面上でヘテロマルチマーを形成するように会合できる少なくとも2種のコードされた融合タンパク質を含み、必要に応じて、ここでその宿主細胞表面上のヘテロマルチマーは、ヘテロダイマーまたはヘテロトリマーである。
【0074】
さらなる実施形態において、融合タンパク質は各々、異なる細胞外構成要素を含み、ここで異なる細胞外構成要素は、機能的サイトカイン結合ドメインを形成するように互いと会合できる。特定の実施形態において、異なるコードされる細胞外構成要素のうちの一方は、CSF2Rα、必要に応じてヒトCSF2Rα、細胞外部分、細胞外サイトカイン結合ドメインもしくはその一部のアミノ酸配列から構成されるか、またはこれと少なくとも90%のアミノ酸同一性を有するか、あるいは必要に応じて配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%のアミノ酸同一性を有し、他方の異なる細胞外構成要素は、CSF2Rβ、必要に応じてヒトCSF2Rβ、細胞外部分、細胞外サイトカイン結合ドメインもしくはその一部のアミノ酸配列から構成されるか、またはこれと少なくとも90%のアミノ酸同一性を有するか、あるいは必要に応じて配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%のアミノ酸同一性を有する。これらの実施形態のうちのいずれかにおいて、融合タンパク質は各々、異なる細胞内構成要素を含み、ここで異なる細胞内構成要素は、機能的細胞内シグナル伝達ドメインを形成するように互いと会合できる。さらなる実施形態において、異なる細胞内構成要素のうちの少なくとも一方は、IL-2Rγ細胞内部分、細胞内シグナル伝達ドメインもしくはその一部から構成されるか、またはこれと少なくとも90%同一性を有するか、あるいは必要に応じて配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する。なおさらなる実施形態において、異なる細胞内構成要素のうちの少なくとも一方は、IL-2Rβ、IL-4RA、IL-7R、IL-15RA、またはIL-21R細胞内部分、細胞内シグナル伝達ドメインもしくはその一部から構成されるか、またはこれと少なくとも90%同一性を有し、いずれの場合にも、個々に、必要に応じてヒト由来であるか、あるいは必要に応じて配列番号12と少なくとも90%同一性を有する。
【0075】
他の実施形態において、本開示の融合タンパク質または複数の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、抗原結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、そのコードされる抗原結合タンパク質は、T細胞レセプター(TCR)であるか、または必要に応じて抗原特異的TCRであり、必要に応じてそのTCRは、抗原::HLA複合体に高親和性で(例えば、107 M-1に等しいかまたはこれより大きなKaで)結合する。さらなる実施形態において、そのコードされる抗原特異的TCRは、その宿主細胞に対して、またはその宿主細胞が投与される被験体に対して異種である。特定の実施形態において、そのコードされるTCRは、HLAクラスI拘束性抗原に対して特異的である。前述の実施形態のうちのいずれかにおいて、その抗原結合タンパク質は、がん特異的抗原(例えば、WT-1、メソテリン、ROR1またはサイクリン-A1)に対して特異的である。いくつかの実施形態において、そのTCRは、C4と称されるWT-1特異的TCRである。
【0076】
なおさらなる実施形態において、本開示の融合タンパク質または複数の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、抗原結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドをさらに含み得、ここでその抗原結合タンパク質は、CARである。その宿主細胞において発現される例示的なCARは、細胞外抗原結合ドメインおよびT細胞に一次シグナルを送達し得る細胞内シグナル伝達ドメインおよび必要に応じて共刺激ドメインを含み得るか;またはその細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子(例えば、CD28、CD137(4-1BB)、またはICOSに由来する)の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態において、コードされる細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ε、CD3δ、CD3ζ、CD25、CD27、CD28、CD40、CD47、CD79A、CD79B、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD278(ICOS)、CD357(GITR)、CARD11、DAP10、DAP12、FcRα、FcRβ、FcRγ、Fyn、Lck、LAT、LRP、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、ROR2、Ryk、Slp76、pTα、TCRα、TCRβ、TRIM、Zap70、PTCH2の細胞内シグナル伝達ドメイン、もしくはこれらのうちのいずれかの組み合わせを含み、そして/またはキメラ抗原レセプターの細胞内シグナル伝達部分は、必要に応じてCD3 ζに由来する一次活性化シグナル伝達ドメインを含み、共刺激ドメインを含まず、そして/またはCD28シグナル伝達ドメイン、4-1BBシグナル伝達ドメインおよび/もしくはICOSシグナル伝達ドメインを含まない。
【0077】
ある種の実施形態において、そのコードされる細胞内シグナル伝達ドメインは、以下の共刺激ドメインを含む:(a)CD137(4-1BB)、CD27、CD28、ICOS、OX40(CD134)、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせ;(b)CD137(4-1BB)もしくはCD28、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせ;(c)CD28;あるいは(d)CD137(4-1BB)。特定の実施形態において、そのコードされる細胞内シグナル伝達ドメインは、第2の細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、CD137(4-1BB)の細胞内シグナル伝達ドメイン)を含む。
【0078】
さらなる実施形態において、CARのそのコードされる抗原結合ドメインは、抗原に対して特異的な抗体結合フラグメントまたはscFvを含む。いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるとおりの宿主細胞は、少なくとも2種の抗原結合タンパク質を含み、ここでその少なくとも2種の抗原結合タンパク質は、TCRおよびCARを含む。ある特定の実施形態において、抗原に対して特異的なTCRまたはキメラ抗原レセプターを含むT細胞における融合タンパク質の発現は、T細胞と実質的に同じであるが、融合タンパク質を含まない細胞と比較して、抗原の結合に応答しておよび/または被験体への投与後に、T細胞によって、生存、拡大、細胞毒性、サイトカイン分泌、および/または複数回の刺激への応答において、少なくとも約1.5倍、2倍、または3倍の増加を生じる、ならびに/あるいは細胞が投与される被験体の生存の時間、無病生存期間、または1もしくはこれより多くの疾患症状の改善において少なくとも約1.5倍、2倍、または3倍の増加を生じる。
【0079】
本開示の融合タンパク質、抗原結合タンパク質、およびこれらをコードするポリヌクレオチドとともに使用するための例示的な宿主細胞としては、免疫系細胞(例えば、T細胞)が挙げられる。T細胞は、CD4+ T細胞またはCD8+ T細胞であり得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、本開示の融合タンパク質を細胞表面上に発現し得る宿主細胞は、免疫細胞である。いくつかの実施形態において、本開示の融合タンパク質を細胞表面上に発現し得る宿主細胞は、ヒト、マウス、ラット、または他の哺乳動物に由来する初代細胞または細胞株を含むT細胞である。哺乳動物から得られる場合、T細胞は、多くの供給源(血液、骨髄、リンパ節、胸腺、または他の組織もしくは体液が挙げられる)から得られ得る。T細胞は、富化または精製され得る。T細胞株は、当該分野で周知であり、そのうちのいくつかは、Sandbergら, Leukemia 21:230, 2000に記載される。ある種の実施形態において、TCRα鎖およびβ鎖の内因性発現を欠くT細胞が使用される。このようなT細胞は、TCRα鎖およびβ鎖の内因性発現を天然に欠いていてもよいし、発現をブロックする(例えば、TCRα鎖およびβ鎖を発現しないトランスジェニックマウスに由来するT細胞またはTCRα鎖およびβ鎖の発現を阻害するように操作された細胞)ようにか、またはTCRα鎖、TCRβ鎖、もしくは両方の遺伝子をノックアウトするように改変されていてもよい。いくつかの実施形態において、T細胞は、特定の抗原に対して特異的なTCRを発現するように操作され得る。
【0081】
ある種の実施形態において、本開示の融合タンパク質を発現するようにトランスフェクトされる宿主細胞は、機能的T細胞(例えば、ウイルス特異的T細胞、腫瘍抗原特異的細胞傷害性T細胞、ナイーブT細胞、メモリーステムT細胞、セントラルもしくはエフェクターメモリーT細胞、γδ T細胞、またはCD4+ CD25+調節性T細胞)である。さらなる実施形態において、本開示の融合タンパク質をコードする核酸分子は、バルクCD8+ T細胞、ナイーブ CD8+ T細胞、CD8+ TCM細胞、CD8+ TEM細胞、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせへと導入される。なおさらなる実施形態において、本開示の融合タンパク質をコードする核酸分子は、バルクCD4+ T細胞、ナイーブ CD4+ T細胞、CD4+ TCM細胞、CD4+ TEM細胞、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせへと導入される。他の実施形態において、本開示の融合タンパク質をコードする核酸分子は、ナイーブCD8+ T細胞およびCD8+ TCM細胞に関して富化されたT細胞の集団へと導入される。さらに他の実施形態において、本開示の融合タンパク質をコードする核酸分子は、ナイーブCD4+ T細胞およびCD4+ TCM細胞に関して富化されたT細胞の集団へと導入される。前述の実施形態のうちのいずれかにおいて、そのT細胞はさらに、操作された抗原特異的T細胞レセプター(TCR)、操作された抗原特異的高親和性TCR、外因性共刺激分子、キメラ抗原レセプター(CAR)、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせをコードする核酸分子を含む。
【0082】
ある種の実施形態において、本開示の融合タンパク質を発現するようにトランスフェクトされる宿主細胞は、機能的ナチュラルキラー細胞である。
【0083】
本開示の融合タンパク質を発現するT細胞の増殖を促進する1種またはこれより多くの種の成長因子サイトカインは、T細胞を拡大するために使用される培養物へと添加され得る。サイトカインは、ヒトまたは非ヒトであり得る。T細胞増殖を促進するために使用され得る例示的な成長因子サイトカインとしては、GM-CSF、IL-2、IL-15などが挙げられる。
【0084】
ある種の実施形態において、本開示の融合タンパク質を発現するようにトランスフェクトされる宿主T細胞は、HLA(MHC)クラスI拘束性抗原に対して特異的な抗原特異的高親和性TCRをも発現するCD4+ T細胞である(Sotoら, Cancer Immunol Immunother. 62: 359-369, 2013を参照のこと)。
【0085】
ある種の実施形態において、本開示の融合タンパク質を発現するようにトランスフェクトされる宿主T細胞はまた、がん抗原に対して特異的な組換えTCRを発現する。いくつかの実施形態において、そのがん抗原は、WT1である。「WT1」とは、、C末端に4個のジンクフィンガーモチーフおよびN末端にプロリン/グルタミンリッチDNA結合ドメインを含む転写因子であるウィルムス腫瘍1をいう。WT1は、泌尿生殖系の正常の発生において必須の役割を有し、ウィルムス腫瘍を有する患者の小さな部分セットにおいて変異している。WT1の高発現は、種々のがん(乳がん、卵巣がん、急性白血病、血管新生物、黒色腫、結腸がん、肺がん、甲状腺がん、骨肉腫および軟部組織肉腫、ならびに食道がんが挙げられる)において観察されている。選択的スプライシングは、WT1に関して特に言及されている。
【0086】
ある種の実施形態において、本開示の融合タンパク質を発現するようにトランスフェクトされる宿主T細胞はまた、メソテリンに対して特異的な組換えTCRを発現する。「メソテリン」(MSLN)とは、2つの生成物、巨核球増強因子(megakaryocyte potentiating factor)およびメソテリンへと切断される前駆タンパク質をコードする遺伝子に言及する。巨核球増強因子は、骨髄巨核球におけるコロニー形成を刺激し得るサイトカインとして機能する。メソテリンは、細胞接着タンパク質として機能し得るグリコシルホスファチジルイノシトールアンカー細胞表面タンパク質である。このタンパク質は、上皮型中皮腫、卵巣がんにおいて、および特定の扁平上皮癌において過剰発現される。選択的スプライシングは、複数の転写物改変体を生じる。
【0087】
ある種の実施形態において、本開示の融合タンパク質を発現するようにトランスフェクトされる宿主T細胞はまた、サイクリン-A1に対して特異的な組換えTCRを発現する。
【0088】
ある種の実施形態において、本開示の融合タンパク質を発現するようにトランスフェクトされる宿主T細胞はまた、CARを発現する。
【0089】
使用
本開示で記載されるとおりの融合タンパク質を発現する細胞で処置され得る疾患としては、がん、感染性疾患(ウイルス感染症、細菌感染症、原生動物感染症)、および免疫疾患(例えば、自己免疫)が挙げられる。養子免疫治療および遺伝子治療は、種々のタイプのがん(Morganら, Science 314:126, 2006; Schmittら, Hum. Gene Ther. 20:1240, 2009; June, J. Clin. Invest. 117:1466, 2007)および感染性疾患(Kitchenら, PLoS One 4:38208, 2009; Rossiら, Nat. Biotechnol. 25:1444, 2007; Zhangら, PLoS Pathog. 6:e1001018, 2010; Luoら, J. Mol. Med. 89:903, 2011)に有望な処置である。
【0090】
ある種の実施形態において、本明細書で提供される方法は、血液悪性腫瘍または固形がんである過剰増殖性疾患を処置するためのものである。例えば、処置されるべき血液悪性腫瘍は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性好酸球性白血病(CEL)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、または多発性骨髄腫(MM)であり得る。処置されるべき例示的な固形がんは、胆嚢がん、膀胱がん、骨および軟部組織癌、脳腫瘍、乳がん、子宮頚がん、結腸がん、結腸直腸腺癌、結腸直腸がん、類腱腫、胚性がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、胃腺癌、多形膠芽腫、婦人科腫瘍、頭頚部扁平上皮癌、肝がん、肺がん、悪性黒色腫、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、膵管腺癌、原発性星細胞腫瘍、原発性甲状腺がん、前立腺がん、腎臓がん、腎細胞癌、横紋筋肉腫、皮膚がん、軟部組織肉腫、精巣胚細胞腫瘍、尿路上皮がん、子宮肉腫、または子宮がんであり得る。
【0091】
処置され得るがんの他の例示的なタイプとしては、以下が挙げられる:胸部、前立腺、および結腸の腺癌;肺の気管支原性癌の全ての形態;骨髄性白血病;黒色腫;ヘパトーマ;神経芽腫;乳頭腫;アプドーマ;分離腫;鰓腫(branchioma);悪性カルチノイド症候群;カルチノイド心疾患;および癌(例えば、ウォーカー、基底細胞、基底有棘細胞、ブラウン・ピアース、腺管(ductal)、エールリッヒ腫瘍、クレブス2、メルケル細胞、粘液、非小細胞肺、燕麦細胞、乳頭、硬性、細気管支、気管支原性、扁平上皮、および移行上皮)。処置され得るがんのさらなるタイプとしては、以下が挙げられる:組織球性障害;悪性組織球症;白血病;ホジキン病;免疫増殖性小腸疾患(immunoproliferative small);非ホジキンリンパ腫;形質細胞腫;細網内皮症;黒色腫;軟骨芽細胞腫;軟骨腫;軟骨肉腫;線維腫;線維肉腫;巨細胞腫瘍;組織球腫;脂肪腫;脂肪肉腫;中皮腫;粘液腫;粘液肉腫;骨腫;骨肉腫;脊索腫;頭蓋咽頭腫;未分化胚細胞腫;過誤腫;間葉腫;中腎腫;筋肉腫;エナメル上皮腫;セメント質腫;歯牙腫;奇形腫;胸腺腫;栄養膜腫瘍。さらに、以下のタイプのがんがまた、処置の影響を受けやすいとして企図される:腺腫;胆管腫;真珠腫;円柱腫(cyclindroma);嚢胞腺癌;嚢胞腺腫;顆粒膜細胞腫;卵巣男性胚腫(gynandroblastoma);ヘパトーマ;汗腺腫;膵島細胞腫瘍;ライディッヒ細胞腫瘍;乳頭腫;セルトリ細胞腫;莢膜細胞腫;平滑筋腫(leimyoma);平滑筋肉腫;筋芽細胞腫;筋腫(myomma);筋肉腫;横紋筋腫;横紋筋肉腫;上衣腫;神経節細胞腫;神経膠腫;髄芽腫;髄膜腫;神経鞘腫;神経芽腫;神経上皮腫;神経線維腫;神経腫;傍神経節腫;非クローム親和性傍神経節腫。処置され得るがんのタイプはまた、以下が挙げられる:被角血管腫;好酸球性血管リンパ球性増殖症(angiolymphoid hyperplasia with eosinophilia);硬化性血管腫;血管腫症;グロムス血管腫;血管内皮腫;血管腫;血管周皮腫;血管肉腫;リンパ管腫;リンパ管筋腫;リンパ管肉腫;松果体腫;癌肉腫;軟骨肉腫;葉状嚢胞肉腫;線維肉腫;血管肉腫;平滑筋肉腫;白血肉腫;脂肪肉腫;リンパ管肉腫;筋肉腫;粘液肉腫;卵巣がん;横紋筋肉腫;肉腫;新生物;神経線維腫症(nerofibromatosis);および子宮頚部異形成。
【0092】
融合タンパク質T細胞療法に影響を受けやすい例示の種々の過剰増殖性障害としては、B細胞がん(B細胞リンパ腫(例えば、ホジキン病の種々の形態、非ホジキンリンパ腫(NHL)または中枢神経系リンパ腫が挙げられる)、白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリーセル白血病、慢性骨髄性白血病のB細胞芽球形質転換(cell blast transformation of chronic myeloid leukemia))および骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)である。さらなるB細胞がんとしては、以下が挙げられる:小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、形質細胞骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、骨外性形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫(extra-nodal marginal zone B-cell lymphoma of mucosa-associated(MALT) lymphoid tissue)、節性辺縁帯B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞性リンパ腫、血管内大細胞型B細胞性リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病、悪性の可能性のあるB細胞増殖(B-cell proliferations of uncertain malignant potential)、リンパ腫様肉芽腫症、および移植後リンパ増殖性障害。
【0093】
炎症性疾患および自己免疫疾患としては、以下が挙げられる:関節炎、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、多発軟骨炎、乾癬性関節炎、乾癬、皮膚炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、封入体筋炎、炎症性筋炎、中毒性表皮壊死症、全身性強皮症および硬化症、クレスト症候群、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、呼吸窮迫症候群、成人性呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、脳炎、ぶどう膜炎、大腸炎、糸球体腎炎、アレルギー状態、湿疹、喘息、T細胞の浸潤および慢性炎症応答が関わる状態、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性心筋炎、白血球接着不全症、全身性エリテマトーデス(SLE)、亜急性皮膚エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、ループス脊髄炎、ループス脳炎、若年発症糖尿病、多発性硬化症、アレルギー性脳脊髄炎、視神経脊髄炎、リウマチ熱、シデナム舞踏病、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症と関連する免疫応答、結核、類肉腫症、ウェゲナー肉芽腫症およびチャーグ・ストラウス病を含む肉芽腫症、無顆粒球症、血管炎(過敏性血管炎/脈管炎、ANCAおよびリウマトイド血管炎を含む)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を含む免疫性溶血性貧血、悪性貧血、赤芽球癆(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球遊出が関わる疾患、中枢神経系(CNS)炎症性障害、多臓器障害症候群(multiple organ injury syndrome)、重症筋無力症、抗原-抗体複合体媒介性の疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、ランバート・イートン筋無力症症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、固形臓器移植片拒絶、移植片対宿主病(GVHD)、水疱性類天疱瘡、天疱瘡、自己免疫性多内分泌腺症候群、血清反応陰性脊椎関節症、ライター病、スティフ・マン症候群、巨細胞性動脈炎、免疫複合体腎炎、IgA腎症、IgM多発ニューロパチーまたはIgM媒介性ニューロパチー、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、自己免疫性血小板減少症、自己免疫精巣炎および自己免疫卵巣炎を含む精巣および卵巣の自己免疫疾患、原発性甲状腺機能低下症;自己免疫甲状腺炎、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、亜急性甲状腺炎、特発性甲状腺機能低下症、アジソン病、グレーブス病、多腺性自己免疫症候群(または多腺性内分泌障害症候群)、インスリン依存性糖尿病(IDDM)ともいわれるI型糖尿病およびシーハン症候群を含む自己免疫性内分泌疾患;自己免疫性肝炎、リンパ球性間質性肺炎(HIV)、閉塞性細気管支炎(非移植)、非特異性間質性肺炎(NSIP)、ギラン・バレー症候群、大型血管炎(リウマチ性多発筋痛症および巨細胞性(高安)動脈炎を含む)、中型血管炎(川崎病および結節性多発動脈炎を含む)、結節性多発動脈炎(PAN)、強直性脊椎炎、バージャー病(IgA腎症)、急速進行性糸球体腎炎、原発性胆汁性肝硬変、セリアックスプルー(グルテン性腸症)、クリオグロブリン血症、肝炎と関連するクリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、冠動脈疾患、家族性地中海熱、顕微鏡的多発血管炎、コーガン症候群、ウィスコット・オルドリッチ症候群および閉塞性血栓血管炎。
【0094】
特定の実施形態において、本明細書で開示されるとおりの融合タンパク質で被験体を処置するための方法は、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、および慢性骨髄性白血病を含む。
【0095】
感染性疾患としては、感染性因子と関連するものが挙げられ、以下のうちのいずれかが挙げられる:種々の細菌(例えば、病原性E.coli、S.typhimurium、P.aeruginosa、B.anthracis、C.botulinum、C.difficile、C.perfringens、H.pylori、V.cholerae、Listeria spp.、Rickettsia spp.、Chlamydia spp.など)、マイコバクテリア、および寄生生物(原生動物の中の任意の公知の寄生生物メンバーを含む)。感染性ウイルスとしては、真核生物ウイルス(例えば、アデノウイルス、ブンヤウイルス、ヘルペスウイルス、パポバウイルス、パピローマウイルス(例えば、HPV)、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、ラブドウイルス(例えば、狂犬病)、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザ)、ポックスウイルス(例えば、ワクシニア)、レオウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス(例えば、HIV)、フラビウイルス(例えば、HCV、HBV)などが挙げられる。ある種の実施形態において、抗原がプロセシングされ、HLA(MHC)クラスI分子とともに示されるサイトゾル病原体での感染は、本開示の融合タンパク質で処置される。
【0096】
本開示の融合タンパク質は、細胞結合形態(例えば、標的細胞集団(成熟T細胞(例えば、CD8+またはCD4+ T細胞)またはT細胞系統の他の細胞)の遺伝子治療)において被験体へと投与され得る。特定の実施形態において、被験体に投与される融合タンパク質を発現するT細胞系統の細胞は、同系細胞、同種異系細胞、または自己由来細胞である。
【0097】
本開示の融合タンパク質を含む薬学的組成物は、医療分野の当業者によって決定される場合、処置される(または防止される)べき疾患または状態に適した様式で投与され得る。組成物の適切な用量、適切な継続時間、および投与頻度は、その患者の状態、サイズ、疾患のタイプおよび重篤度、活性成分の特定の形態、ならびに投与法のような因子によって決定される。本開示は、本明細書で開示されるとおりの融合タンパク質を発現する細胞および薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。適切な賦形剤としては、水、食塩水、デキストロース、グリセロールなどおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0098】
いくつかの実施形態において、本開示は、免疫細胞の活性を増加させる、免疫応答を増強または長期化する、抗原特異的T細胞応答を刺激する、免疫抑制シグナル伝達経路を阻害する、がんもしくは腫瘍を処置する、がん細胞の免疫抵抗性を阻害する、または感染症を処置するための方法に関し、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効量の本明細書で記載されるとおりの融合タンパク質を発現する宿主細胞を投与するステップを包含する。さらなる実施形態において、前述の方法のうちのいずれかにおける使用のための宿主細胞は、操作された抗原特異的TCR、操作された抗原特異的高親和性TCR、CAR、共刺激分子、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせをさらに発現する。特定の実施形態において、白血病を処置するための方法が提供され、上記方法は、本明細書で開示されるとおりの融合タンパク質および組換え抗原特異的TCRを共発現するステップを包含する。
【0099】
いくつかの実施形態において、CD4+ T細胞によるクラスI HLA応答を誘導または増強するための方法が提供され、上記方法は、その必要性のある被験体に、有効量の本明細書で記載されるとおりの融合タンパク質を発現する CD4+ T細胞を投与するステップを包含する。さらなる実施形態において、CD4+ T細胞によるクラスI HLA応答を誘導または増強することにおいて使用するための宿主細胞は、操作された抗原特異的TCR、操作された抗原特異的高親和性TCR、CAR、共刺激分子、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせをさらに発現する。
【0100】
前述の実施形態のうちのいずれかにおいて、上記方法は、外因性IL-2を投与するステップの非存在下で有効である。
【0101】
さらに他の実施形態において、前述の方法のうちのいずれかの被験体は、補助的療法(例えば、化学療法)でさらに処置される。例示的な化学療法剤としては、以下が挙げられる:例えば、アルキル化剤(例えば、チオテパおよびシクロホスファミド);アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン);アジリジン(例えば、ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、およびウレドパ);エチレンイミンおよびメチラメラミン(methylamelamine)(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)を含む);ナイトロジェンマスタード(例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード);ニトロソウレア(nitrosurea)(例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン);抗生物質(例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン(olivomycin)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン);代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU));葉酸アナログ(例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート);プリンアナログ(例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン);ピリミジンアナログ(例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU);アンドロゲン(例えば、カルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン);抗副腎皮質物質(anti-adrenal)(例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン);葉酸補充剤(例えば、フロリン酸);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジコン;エルホルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSKTM;ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2′,2″-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン(例えば、パクリタキセル(タキソールTM、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)およびドセタキセル(タキソテールTM、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金アナログ(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン);ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン、カペシタビン;ならびに上記のうちのいずれかの薬学的に受容可能な塩、酸または誘導体。
【0102】
いくつかの実施形態において、補助的療法は、ワクチン、免疫抑制シグナルのインヒビター、B-Rafインヒビター、MEKインヒビター、チロシンキナーゼインヒビター、細胞傷害性薬剤、化学療法剤、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせである。いくつかの実施形態において、免疫抑制シグナルのインヒビターは、抗体またはsiRNAである。いくつかの実施形態において、その抗体またはsiRNAは、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA4、LAG3、KIR、CD244、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、GAL9、TIM3、A2aR、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせに対して特異的である。
【実施例】
【0103】
実施例1
癌細胞におけるサイトカインおよびケモカインプロフィール
培養物中の精製膵臓癌細胞によって発現される可溶性因子を、定量的PCRによってプロファイリングした。簡潔には、全RNAを、KPC腫瘍上皮細胞および同じ動物の肝臓への対の転移性細胞(各々n=3)の初代培養物から抽出し(RNeasy Miniprep Kit, Qiagen)、浸潤前膵管上皮細胞からも抽出した。RNAを、High Capacity Reverse Transcriptase Kit(Applied Biosystems)を使用してcDNAへと変換した。定量的PCRを、SYBR Greenマスターミックスを使用して行い、三連のサンプルをC1000 Thermal Cycler(BioRad)で実行した。プライマーは、刊行された文献に基づいたか、またはPrimer-BLASTソフトウェアを使用して設計した。定量を内因性cycAに対して正規化し、浸潤前細胞と比較した浸潤細胞および転移性細胞における遺伝子発現の倍数変化を、ΔΔCT法を使用して計算した。PDAの遺伝子操作したKrasLSL-G12D/+;Trp53LSL-R172H/+;Cre(KPC)マウスモデルは、Hingoraniら(Cancer Cell 7:469, 2005)によって以前に記載された。
【0104】
浸潤細胞および転移性細胞の分泌プロフィールは、両方の顆粒球(例えば、CXCL1、CXCL2)および単球(例えば、CCL2)の輸送に関与する成長因子およびケモカインの合成に対する実質的関与を明らかにした(データは示さず)。顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、および単球コロニー刺激因子(M-CSF)はまた、浸潤前管細胞と比較して、腫瘍上皮細胞においてアップレギュレートされた。定量的PCRによる相対的遺伝子発現から、浸潤前細胞に対して浸潤細胞においてこれらの因子の増加が確認された(
図1, Stromnesら, Gut 63:1769, 2014を参照のこと)。これらの3種の骨髄造血サイトカインのうち、GM-CSFは、顆粒球性骨髄由来抑制細胞(MDSC)生存をインビトロで促進することに対して最も顕著な効果を有した(データは示さず)。
【0105】
本明細書で記載されるように、本明細書で提供される実施形態(例えば、融合タンパク質および複合体)は、いくつかの局面において、腫瘍微小環境(例えば、転移性腫瘍または浸潤腫瘍の環境)のこれらおよび/または関連する特徴に基づく。いくつかの実施形態において、免疫療法の抗腫瘍活性を増強するための組成物および方法が提供される(例えば、CSF2R(GM-CSFR)に由来する細胞外構成要素およびIL-2Rに由来する細胞内構成要素から構成される例示的な融合タンパク質が、
図2に図示される)。
【0106】
実施例2
高親和性メソテリン特異的TCRの生成
B6 Msln
-/-マウスおよび野生型(WT)マウスを、マウスMsln(Ad-Msln)を発現する組換えアデノウイルスで免疫して、反応性T細胞を誘発した。エピトープMsln343-351、Msln484-492、Msln544-552、およびMsln583-591に対して特異的なT細胞を、WTマウスからではなくMsln
-/-マウスから単離し、。これは、中枢性トレランスと一致した(Stromnesら, Cancer Cell 28:638, 2015)。しかし、Msln
-/-マウスおよびWTマウスはともに、B6卵巣がん細胞株によってプロセシングされかつ提示されることが以前に示された(Hungら, Gene Ther. 14:921, 2007)Msln
406-414への応答を生じた。WTマウスから単離されたMsln
406-414特異的T細胞はVβ9 TCR鎖を、Msln
-/-マウスに由来するMsln
406-414特異的T細胞の大部分が発現した(Stromnesら, 2015)のと同様に、一様に発現した。Vβ9の類似のレベルを発現するにも拘わらず、Msln
-/-マウスに由来するMsln
406-414特異的T細胞系統は、テトラマーでより明るく染色され、これは、より高い親和性と一致した(Stromnesら, 2015)。Msln
-/- Msln
406-414特異的T細胞クローンはまた、その相当するWTクローンより低い抗原濃度に応答した(Stromnesら, 2015)。WTマウスおよびMsln
-/-マウスから単離した大部分のT細胞クローンは、同じ生殖細胞系列Vα4およびVβ9 TCR鎖を使用し、それぞれの系統からの最も高親和性のクローンの間でのいかなる配列差異をもCDR3に制限した(
図3A)。
【0107】
実施例3
マウスモデルにおける例示的CSF2R::IL-2R構築物の評価
例示的CSF2R::IL-2Rキメラ構築物、および抗原特異的操作T細胞の機能に対するそれらの影響を、マウスC57BL/6フレンドウイルス誘導性赤白血病(FBL)およびTCRgagトランスジェニックマウスに基づいて、播種性の白血病の前臨床マウスモデルにおいて評価した。
【0108】
マウス遺伝子(
図2に図示されるものに類似)に基づくCSF2R::IL-2Rキメラ構築物および/またはメソテリン標的化T細胞レセプター(TCR
1045(MSLN
406-414特異的))コード構築物(Stromnesら, Cancer Cell 28:638, 2015、ここでTCR
1045(配列を含む)は、本明細書に参考として援用される)を、pMP71レトロウイルスベクターへと挿入し、抗CD3および抗CD28抗体で刺激した初代P14 Thy1.1
+マウス脾細胞を形質導入するために使用した。融合タンパク質構築物を、PCRによって生成した。次いで、その構築物を、pENTR
TM/D-TOPO
(登録商標)ベクター(Invitrogen)へと方向性を保ってTOPOクローニングし、レトロウイルスベクターpMP71-attRへとGateway
(登録商標)技術(Invitrogen)を使用して移入した。レトロウイルスパッケージング細胞株Plat-E(Moritaら, 2000, Gene Therapy 7:1063-1066, 2000; Cell Biolabs, Inc.)を、effectene形質導入試薬(Qiagen)を使用してレトロウイルスベクターで形質導入した。ウイルス上清をトランスフェクション後2日目および3日目に集め、次いで、TCR
1045を含むいくつかの場合に、T細胞を形質導入するために使用した。トランスフェクションの1日前に、P14 Thy1.1
+ T細胞を、抗CD3/CD28および100 U/mL rhIL-2で刺激した。P14 Thy1.1
+ T細胞の形質導入を、90分間、1000gでのスピンフェクションによってIL-2およびポリブレンの存在下で12ウェルプレートの中で行った。TCR
1045を形質導入したT細胞を、抗CD3/CD28でのT細胞活性化後にMsln406-414ペプチド(GQKMNAQAI, 1μg/ml)および組換えヒトIL-2(r-IL2, 50 IU/ml)で7日間パルスした照射Thy1.2
+脾細胞で再刺激した。抗原再刺激後5日目に、>90% T細胞が、導入されたTCRを発現した。TCR
1045を発現する5×10
6細胞を、Thy1.2
+ C57BL/6(B6)マウス(Jackson Laboratory)へと、組換えマウスメソテリンを発現するように操作された5×10
8 pfuの組換え弱毒化アデノウイルス(Ad-Msln)ワクチンと一緒に(i.m.)注入した。その注入したTCR
1045+ドナー細胞は、GM/IL2R融合タンパク質を発現する集団(「GM/IL2R」)およびその構築物を発現しない集団(「WT」)を含んだ。ドナー細胞を、注入後0日目、8日目、14日目、および21日目に追跡した。
【0109】
より詳細には、TCR
1045
+ドナー(Thy1.1
+/Vβ9
+ゲーティングした)T細胞を、GM-CSFRの細胞外部分を含む分子の表面発現に関してフローサイトメトリーによって分析した(単球上での発現を陽性コントロールとして使用した)。0日目に、TCR
1045
+ドナーT細胞のうちのおよそ50%が、キメラ分子を発現することをこのアッセイによって観察した(
図3B)。
【0110】
動物の血液中のドナーT細胞の存在を、経時的にモニターし続けた。ドナーT細胞は持続し、移入後少なくとも21日間血液中で検出可能であった(
図4A)。
【0111】
図4Bおよび
図4Cに示されるように、CSF2R::IL-2R融合タンパク質を発現するドナーT細胞(抗GM-CSF染色によって決定される場合)(「GM/IL2R」)は、融合タンパク質を発現しないドナーT細胞(「WT」)と比較して、生存および/または増殖の優位を示した。例えば、移入後14日目まで、21日目まで続けて、GM/IL2R発現細胞は、血液中で検出されたドナーT細胞のうちのほぼ全てが該当した(
図4Bおよび
図4C)。これらの結果は、融合タンパク質がTCR
1045を発現する養子移入したT細胞に持続性の優位を提供したことを示す。
【0112】
これらのデータは、本開示の融合タンパク質がいくつかの実施形態においてT細胞(例えば、抗原特異的TCRを含むT細胞)に、生存および/または拡大の利点を提供することを示し、これは、腫瘍微小環境における有効性を改善することを含め、持続性および移入した細胞への曝露を改善する構築物の有用性と一致する。
【0113】
本明細書において言及されるかまたは出願データシートにおいて列挙される米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物の全て(米国仮特許出願第62/325,428号(2016年4月20日出願)が挙げられるが、これに限定されない)は、それらの全体において本明細書に参考として援用される。実施形態の局面は、必要であれば、種々の特許、出願および刊行物の概念を使用して、なおさらなる実施形態を提供するために、改変され得る。
【0114】
これらおよび他の変更は、上記の詳細な記載を考慮して実施形態に対して行われ得る。一般に、以下の請求項において、使用される用語は、請求項を本明細書および請求項の中で開示される具体的実施形態に限定すると解釈されるべきではないが、このような請求項が権利化される均等物の全範囲とともに、全ての考えられる実施形態を含むと解釈されるべきである。よって、請求項は、本開示によって限定されない。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
融合タンパク質および抗原結合タンパク質を含む宿主細胞であって、
ここで該融合タンパク質は、サイトカイン結合ドメインまたはその一部を含む細胞外構成要素と、IL-2R細胞内部分、細胞内シグナル伝達ドメインまたはその一部を含む細胞内構成要素との間に配置された膜貫通ドメインを含み;そして
ここで該抗原結合タンパク質は、T細胞レセプター(TCR);キメラ抗原レセプター(CAR);または必要に応じて複数の抗原結合タンパク質、例えば、TCRおよびCARである、
宿主細胞。
(項目2)
第1の融合タンパク質、第2の融合タンパク質および必要に応じて抗原結合タンパク質を含む宿主細胞であって、
ここで該第1の融合タンパク質は、サイトカイン結合ドメインまたはその一部を含む細胞外構成要素と、IL-2Rγ、必要に応じてヒトIL-2Rγ、細胞内部分または細胞内シグナル伝達ドメインもしくはその一部から構成されるか、これと少なくとも90%同一性を有するか、あるいは必要に応じて配列番号10と少なくとも90%同一性を有する細胞内構成要素との間に配置された膜貫通ドメインを含み;
ここで該第2の融合タンパク質は、サイトカイン結合ドメインまたはその一部を含む細胞外構成要素と、IL-2Rβ、必要に応じてヒトIL-2Rβ、細胞内シグナル伝達ドメインもしくはその一部および/またはIL-4R、IL-7R、IL-9R、IL-15RもしくはIL-21R鎖のシグナルドメインもしくはその一部から構成されるか、またはこれと少なくとも90%同一性を有するか、あるいは必要に応じて、配列番号12と少なくとも90%同一性を有する細胞内構成要素との間に配置された膜貫通ドメインを含み;そして
ここで必要に応じた該抗原結合タンパク質は、T細胞レセプター(TCR);キメラ抗原レセプター(CAR)を含み;そして必要に応じて複数の抗原結合タンパク質、例えば、TCRおよびCARを含む、
宿主細胞。
(項目3)
前記第1および/または第2の融合タンパク質の前記細胞外構成要素および/または前記細胞外構成要素は、CSF2R、CSF1R、CSF3R、CXCR2、またはCCR8の、必要に応じてヒトCSF2R、CSF1R、CSF3R、CXCR2、またはCCR8の細胞外部分を含む、項目1または2に記載の宿主細胞。
(項目4)
前記融合タンパク質の前記サイトカイン結合ドメインは、GM-CSF、M-CSF、G-CSF、CXCL1、CXCL2、もしくはCCL1の結合部位の少なくとも一部に特異的に結合するか、またはこれを含み、そして必要に応じてヒト配列を含むかまたはこれからなる、先行する項目のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目5)
前記サイトカイン結合ドメインは、GM-CSF結合ドメインであり、そして/または、必要に応じてヒトCSF2RであるCSF2Rの細胞外部分に由来するか、または該細胞外部分と少なくとも90%同一性を有するか、あるいは必要に応じて配列番号9または配列番号11に示される配列の細胞外部分と少なくとも90%同一性を有する、先行する項目のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目6)
前記融合タンパク質のならびに/または前記第1および/もしくは第2の融合タンパク質の前記膜貫通ドメインは、IL-2RG、IL-2RB、IL-2RA、IL-4R、IL-7R、IL-9R、IL-15RまたはIL-21Rの、必要に応じてヒト起源のものの膜貫通ドメインを含む、先行する項目のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目7)
前記融合タンパク質の前記膜貫通ドメインは、CSF2RA、CSF2RB、CSF1R、CSF3R、CXCR2、もしくはCCR8の、必要に応じてヒト起源のものの膜貫通ドメインを含むか、または必要に応じて、配列番号22または23と少なくとも90%アミノ酸配列同一性を有する、先行する項目のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目8)
前記膜貫通ドメインは、CD2、CD3ε、CD3δ、CD3ζ、CD25、CD27、CD28、CD40、CD79A、CD79B、CD80、CD86、CD95(Fas)、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD200R、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、CD279(PD-1)、CD300、CD357(GITR)、A2aR、DAP10、FcRα、FcRβ、FcRγ、Fyn、GAL9、KIR、Lck、LAT、LRP、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、PTCH2、ROR1、ROR2、Ryk、Slp76、SIRPα、pTα、TCRα、TCRβ、TIM3、TRIM、LPA5、またはZap70の、必要に応じてヒト起源のものの膜貫通ドメインを含む、先行する項目のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目9)
前記宿主細胞は、該宿主細胞表面上でヘテロマルチマーを形成するように会合できる少なくとも2種の融合タンパク質を含む、先行する項目のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目10)
前記融合タンパク質は各々、異なる細胞外構成要素を含み、ここで該異なる細胞外構成要素は、機能的サイトカイン結合ドメインを形成するように互いと会合できる、項目9に記載の宿主細胞。
(項目11)
前記異なる細胞外構成要素のうちの一方は、CSF2Rα、必要に応じてヒトCSF2Rα、細胞外部分、細胞外サイトカイン結合ドメインもしくはその一部から構成されるか、またはこれと少なくとも90%同一性を有するか、あるいは必要に応じて配列番号9と少なくとも90%同一性を有し、他方の異なる細胞外構成要素は、CSF2Rβ、必要に応じてヒトCSF2Rβ、細胞外部分、細胞外サイトカイン結合ドメインもしくはその一部から構成されるか、またはこれと少なくとも90%同一性を有するか、あるいは必要に応じて配列番号11と少なくとも90%同一性を有する、項目10に記載の宿主細胞。
(項目12)
前記融合タンパク質は各々、異なる細胞内構成要素を含み、ここで該異なる細胞内構成要素は、機能的細胞内シグナル伝達ドメインを形成するように互いと会合できる、項目9~11のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目13)
前記異なる細胞内構成要素のうちの少なくとも一方は、IL-2Rγ細胞内部分、細胞内シグナル伝達ドメインもしくはその一部から構成されるか、またはこれと少なくとも90%同一性を有するか、あるいは必要に応じて配列番号10と少なくとも90%同一性を有する、項目12に記載の宿主細胞。
(項目14)
前記異なる細胞内構成要素のうちの少なくとも一方は、IL-2Rβ、IL-4RA、IL-7R、IL-15RA、またはIL-21R細胞内部分、細胞内シグナル伝達ドメインもしくはその一部から構成されるか、またはこれと少なくとも90%同一性を有し、いずれの場合にも、個々に、必要に応じてヒト由来であるか、あるいは必要に応じて配列番号12と少なくとも90%同一性を有する、項目12または13に記載の宿主細胞。
(項目15)
前記宿主細胞表面上の前記ヘテロマルチマーは、ヘテロダイマーまたはヘテロトリマーである、項目9~14のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目16)
前記一方の融合タンパク質は、配列番号1からなるか、配列番号1を含むか、または配列番号1と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有し、前記他方の融合タンパク質は、配列番号2からなるか、配列番号2を含むか、または配列番号2と少なくとも90%%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する、項目15に記載の宿主細胞。
(項目17)
前記抗原結合タンパク質は、T細胞レセプター(TCR)であるか、または必要に応じて抗原特異的TCRである、先行する項目のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目18)
前記抗原特異的TCRは、前記宿主細胞および/または該宿主細胞が投与される宿主に対して外因性である、先行する項目のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目19)
前記TCRは、抗原::HLA複合体に高親和性で結合する、項目17または18に記載の宿主細胞。
(項目20)
前記高親和性結合は、10
7
M
-1
に等しいかまたはこれより大きなK
a
を有する、項目19に記載の宿主細胞。
(項目21)
前記TCRは、HLAクラスI拘束性抗原に対して特異的である、項目17~20のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目22)
前記抗原は、がん特異的抗原である、先行する項目のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目23)
前記がん特異的抗原は、WT-1、メソテリン、ROR1またはサイクリン-A1を含む、項目22に記載の宿主細胞。
(項目24)
前記TCRは、C4と称されるWT-1特異的TCRである、先行する項目のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目25)
前記抗原結合タンパク質は、CARである、先行する項目のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目26)
前記キメラ抗原レセプターは、細胞外抗原結合ドメインおよびT細胞に一次シグナルを送達できる細胞内シグナル伝達ドメイン、ならびに必要に応じて共刺激ドメインを含む、項目25に記載の宿主細胞。
(項目27)
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインを含む、項目26に記載の宿主細胞。
(項目28)
前記共刺激分子は、CD28、CD137(4-1BB)、またはICOSを含む、項目27に記載の宿主細胞。
(項目29)
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ε、CD3δ、CD3ζ、CD25、CD27、CD28、CD40、CD47、CD79A、CD79B、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD278(ICOS)、CD357(GITR)、CARD11、DAP10、DAP12、FcRα、FcRβ、FcRγ、Fyn、Lck、LAT、LRP、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、ROR2、Ryk、Slp76、pTα、TCRα、TCRβ、TRIM、Zap70、PTCH2の細胞内シグナル伝達ドメイン、もしくはこれらのうちのいずれかの組み合わせを含み、そして/または前記キメラ抗原レセプターの該細胞内シグナル伝達部分は、必要に応じてCD3 ζに由来する一次活性化シグナル伝達ドメインを含み、共刺激ドメインを含まず、そして/またはCD28シグナル伝達ドメイン、4-1BBシグナル伝達ドメインおよび/もしくはICOSシグナル伝達ドメインを含まない、項目26~28のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目30)
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD137(4-1BB)、CD27、CD28、ICOS、OX40(CD134)の共刺激ドメイン、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせを含む、項目26~29のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目31)
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD137(4-1BB)もしくはCD28の共刺激ドメイン、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせを含む、項目26~30のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目32)
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD28の共刺激ドメインを含む、項目26~31のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目33)
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD137(4-1BB)の共刺激ドメインを含む、項目26~32のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目34)
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、第2の細胞内シグナル伝達ドメインを含む、項目26~33のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目35)
前記第2の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD137(4-1BB)の細胞内シグナル伝達ドメインを含む、項目34に記載の宿主細胞。
(項目36)
前記CAR抗原結合ドメインは、前記抗原に対して特異的な抗体結合フラグメントまたはscFvである、項目26~33のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目37)
前記宿主細胞は、少なくとも2種の抗原結合タンパク質を含み、ここで該少なくとも2種の抗原結合タンパク質は、TCRおよびCARを含む、先行する項目のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目38)
抗原に対して特異的なTCRまたはキメラ抗原レセプターを含むT細胞における前記融合タンパク質の発現は、該T細胞と実質的に同じであるが、該融合タンパク質を含まない細胞と比較して、該抗原の結合に応答しておよび/または被験体への投与後に、該T細胞によって、生存、拡大、細胞毒性、サイトカイン分泌、および/または複数回の刺激への応答において、少なくとも約1.5倍、2倍、または3倍の増加を生じる、ならびに/あるいは該細胞が投与される被験体の生存の時間、無病生存期間、または1もしくはこれより多くの疾患症状の改善において少なくとも約1.5倍、2倍、または3倍の増加を生じる、項目1~37のいずれかに記載の宿主細胞。
(項目39)
前記宿主細胞は、免疫系細胞である、先行する項目のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目40)
前記免疫系細胞は、T細胞である、項目39に記載の宿主細胞。
(項目41)
前記T細胞は、CD4+ T細胞である、項目40に記載の宿主細胞。
(項目42)
前記T細胞は、CD8+ T細胞である、項目40に記載の宿主細胞。
(項目43)
項目1~42のいずれか1項に記載の融合タンパク質および抗原結合タンパク質をコードする核酸分子を含む、宿主細胞。
(項目44)
ベクターを含む宿主細胞であって、ここで該ベクターは、項目1~42のいずれか1項に記載の融合タンパク質および抗原結合タンパク質をコードする核酸分子を含む、宿主細胞。
(項目45)
前記ベクターは、ウイルスベクターである、項目44に記載の宿主細胞。
(項目46)
前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターである、項目45に記載の宿主細胞。
(項目47)
前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである、項目46に記載の宿主細胞。
(項目48)
前記TCRは、抗原特異的TCRである、先行する項目のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目49)
被験体において疾患を処置するための方法であって、該方法は、項目1~48のいずれか1項に記載の宿主細胞、および/または項目62~66のいずれかに記載の融合タンパク質、核酸、ベクター、組成物、または複合体を、該被験体に投与するステップを包含する方法。
(項目50)
前記疾患は、ウイルス感染症、細菌感染症、がん、および自己免疫疾患からなる群より選択される、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記疾患は、がんである、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記がんは、腫瘍である、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記腫瘍は、血液腫瘍であり、該血液腫瘍は、必要に応じてCLLもしくはMCLであり、そして/または固形腫瘍であり、該固形腫瘍は、必要に応じて乳がん、肺がん、卵巣がん、もしくは膵臓がんの腫瘍であり、該固形腫瘍は、必要に応じて肺腺癌、腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌、非定型カルチノイド、またはトリプルネガティブ乳がんである、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記腫瘍は、原発性腫瘍、転移性腫瘍、または両方を含む、項目52または53に記載の方法。
(項目55)
前記腫瘍細胞は、WT-1、メソテリン、ROR1またはサイクリン-A1を過剰発現する、項目52~54のいずれか1項に記載の方法。
(項目56)
前記被験体は、ヒトである、項目49~55のいずれか1項に記載の方法。
(項目57)
ウイルス感染症、細菌感染症、がん、または自己免疫疾患を処置することにおける使用のための項目1~48のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目58)
サイトカイン結合ドメインの全てまたは一部を含む細胞外構成要素、膜貫通ドメインおよび1種もしくはこれより多くの種のIL-2R鎖のシグナル伝達ドメインまたはそのシグナル伝達部分(複数可)を含む細胞内構成要素を含む融合タンパク質であって、ここで該サイトカイン結合ドメインは、IL-2結合ドメインではない、融合タンパク質。
(項目59)
項目58に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸であって、必要に応じて、ここで融合タンパク質は、配列番号6もしくは7のポリヌクレオチド配列を含むか、または該ポリヌクレオチドからなるか、または該ポリヌクレオチドと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも98%の同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる、核酸。
(項目60)
(a)前記融合タンパク質は、第1の融合タンパク質であり、前記サイトカイン結合ドメインの前記全てまたは一部は、該サイトカイン結合ドメインの第1の部分であり、(b)前記核酸は、第2の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列をさらに含み、該第2の融合タンパク質は、該サイトカイン結合ドメインの第2の部分、第2の膜貫通ドメインおよび第2のIL-2R鎖シグナル伝達ドメインもしくはそのシグナル伝達部分を含む第2の細胞内構成要素を含み、そして必要に応じて抗原レセプターもしくはその一部をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、項目59に記載の核酸。
(項目61)
項目59または60に記載の核酸を含む、ベクター。
(項目62)
項目59に記載の核酸およびさらなる核酸を含む組成物であって、ここで(a)前記融合タンパク質は、第1の融合タンパク質であり、前記サイトカイン結合ドメインの前記全てもしくは一部は、該サイトカイン結合ドメインの第1の部分であり、そして(b)該さらなる核酸は、第2の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、該第2の融合タンパク質は、該サイトカイン結合ドメインの第2の部分、第2の膜貫通ドメイン、および第2のIL-2R鎖シグナル伝達ドメインもしくはそのシグナル伝達部分を含む第2の細胞内構成要素を含み、ここで該核酸およびさらなる核酸は、必要に応じて同じまたは異なるベクターから発現され、そして必要に応じて抗原レセプターもしくはその一部をコードする核酸をさらに含む、組成物。
(項目63)
第1の融合タンパク質である項目58に記載の融合タンパク質を含み、そして第2の融合タンパク質をさらに含む分子複合体であって、該第2の融合タンパク質は、前記サイトカイン結合ドメインの第2の部分、第2の膜貫通ドメインおよび第2のIL-2R鎖シグナル伝達ドメインもしくはそのシグナル伝達部分を含む第2の細胞内構成要素を含み、ここで該第1のおよび第2の融合タンパク質は、共有結合的相互作用または非共有結合的相互作用を介して、複合体で存在する、分子複合体。
(項目64)
項目58~63のいずれかに記載の融合タンパク質、核酸、ベクター、組成物、または複合体であって、ここで前記第1および/または第2の融合タンパク質は、必要に応じて配列番号9もしくは配列番号11と少なくとも90%同一性を有する、ヒトGM-CSFRの細胞外構成要素、および必要に応じて配列番号10もしくは配列番号12と少なくとも90%同一性を有する、ヒトIL-2R複合鎖の細胞内シグナル伝達部分を含む、融合タンパク質、核酸、ベクター、組成物、または複合体。
(項目65)
前記第1のおよび/もしくは第2の融合タンパク質のうちの一方は、ヒトCSF2Rβ鎖の細胞外構成要素およびヒトIL-2Rβ鎖の細胞内シグナル伝達部分を含み、ここで該CSF2Rβ鎖およびヒトIL-2Rβ鎖の細胞内シグナル伝達部分は、必要に応じてそれぞれ、配列番号11および配列番号12と少なくとも90%同一性を有し、そして/または該第1のおよび/もしくは第2の融合タンパク質のうちの一方は、ヒトCSF2Rα鎖の細胞外構成要素およびヒトIL-2Rγ鎖の細胞内シグナル伝達部分を含み、ここで該CSF2Rβ鎖およびヒトIL-2Rβ鎖の細胞内シグナル伝達部分は、必要に応じてそれぞれ、配列番号9および配列番号10と少なくとも90%同一性を有する、項目64に記載の融合タンパク質、核酸、ベクター、組成物、または複合体。
(項目66)
項目1~48のいずれかに記載の宿主細胞の1種または複数種の融合タンパク質をコードする、項目58~63のいずれかに記載の融合タンパク質、核酸、ベクターまたは組成物。
【配列表】