(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】火炎遮断製品
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20221222BHJP
E04C 2/26 20060101ALI20221222BHJP
C09K 21/04 20060101ALI20221222BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
E04B1/94 H
E04B1/94 L
E04B1/94 Q
E04C2/26 R
C09K21/04
C09K21/02
(21)【出願番号】P 2018559989
(86)(22)【出願日】2017-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2017061093
(87)【国際公開番号】W WO2017194558
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-02-14
(31)【優先権主張番号】102016108538.3
(32)【優先日】2016-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518397216
【氏名又は名称】トレンコ シーピージー ユーケー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】518397227
【氏名又は名称】トレンコ イルブルック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】アウトラム,イアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,シモン
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ゲイヤー,ウォルター
(72)【発明者】
【氏名】コマ,マークス
(72)【発明者】
【氏名】プロノルド,マイケル
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-023432(JP,A)
【文献】米国特許第06182407(US,B1)
【文献】特開2001-254454(JP,A)
【文献】特開昭50-054682(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0118764(US,A1)
【文献】実開昭52-063736(JP,U)
【文献】実開平02-067190(JP,U)
【文献】特開平01-271481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
E04C 2/26
C09K 21/00-21/04
A62C 3/16
F16L 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隙間を画定する2枚の平行なボードを含む、建物の内壁用のパネル
と、敷設貫通部と、を備えるパネル構造であって、
前記隙間は、火炎遮断材料を含む断熱材で充填され、
前記火炎遮断材料は、熱膨張剤を含む含浸剤で含浸させた弾性体の多孔質材料を含み、前記弾性体の多孔質材料の孔の内部に前記熱膨張剤が分散されて維持されており、
前記敷設貫通部が前記パネルを貫通して設けられており、前記敷設貫通部は、前記パネルの任意の箇所で、前記ボードを切り取り、前記断熱材を切り開き、管またはケーブルを押し込んで通すことにより形成されており、
前記含浸剤は、少なくとも1つの液状媒体と、前記含浸剤の固形成分を前記弾性体の多孔質材料に結合させるための結合剤とを含む、前記パネル
構造。
【請求項2】
前記火炎遮断材料は、ストリップの形態である、請求項1に記載のパネル
構造。
【請求項3】
前記断熱材は、火炎遮断材料からなる、請求項1又は2に記載のパネル
構造。
【請求項4】
前記弾性体の多孔質材料は、発泡体、不織布、および繊維体から選択される1つまたは複数の材料を含み、前記弾性体の多孔質材料は、前記熱膨張剤を含む前記含浸剤で含浸されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のパネル
構造。
【請求項5】
前記含浸剤は、前記熱膨張剤として膨張性黒鉛を含む、請求項4に記載のパネル
構造。
【請求項6】
前記含浸剤は、水を40~60重量%、結合剤を25~35重量%、および膨張性黒鉛を15~25重量%含有する、請求項4又は5に記載のパネル
構造。
【請求項7】
前記結合剤はアクリル系結合剤である、請求項5又は6に記載のパネル
構造。
【請求項8】
前記含浸剤はリン酸含有化合物を含有する、請求項4~7のいずれか1項に記載のパネル
構造。
【請求項9】
前記リン酸含有化合物はリン酸塩である、請求項8に記載のパネル
構造。
【請求項10】
前記リン酸含有化合物はポリリン酸塩である、請求項8に記載のパネル
構造。
【請求項11】
前記リン酸含有化合物はポリリン酸アンモニウムである、請求項8に記載のパネル
構造。
【請求項12】
前記弾性体の多孔質材料は、10~100ppi(1インチあたりの孔数)の間隙率を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載のパネル
構造。
【請求項13】
前記弾性体の多孔質材料は、網状の軟質ポリウレタン(PU)発泡体である、請求項1~12のいずれか1項に記載のパネル
構造。
【請求項14】
前記弾性体の多孔質材料は発泡体を含み、前記発泡体は、2000μm~7000μmのセルサイズを有する、請求項1~13のいずれか1項に記載のパネル
構造。
【請求項15】
前記火炎遮断材料の表面が、煙を透過させないコーティングで覆われている、請求項1~14のいずれか1項に記載のパネル
構造。
【請求項16】
隙間を画定する2枚の平行なボードを含む建物の内壁であって、
前記隙間は火炎遮断材料を含む断熱材で充填され、
前記火炎遮断材料が、熱膨張剤を含む含浸剤で含浸させた弾性体の多孔質材料を含み、前記弾性体の多孔質材料の孔の内部に前記熱膨張剤が分散されて維持されており、
敷設貫通部が前記内壁を貫通して設けられており、前記敷設貫通部は、前記内壁の任意の箇所で、前記ボードを切り取り、前記断熱材を切り開き、管またはケーブルを押し込んで通すことにより形成されており、
前記含浸剤は、少なくとも1つの液状媒体と、前記含浸剤の固形成分を前記弾性体の多孔質材料に結合させるための結合剤とを含む、前記建物の内壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁を貫通するケーブル、導管、またはパイプなどで作られた貫通部が設けられたときに、屋内の隔壁の防火性を良好にすることに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明との関連における火炎遮断は、火災のときに、建造物内の分離した区画を維持することに関する。火の影響を受けない領域にいる人が、火が広がる前に建物から脱出するための時間をより長く与えるために、各区画は、煙、熱、および炎に対して互いから封止されているべきである。
【0003】
火炎遮断製品は、各区画間の隙間、建物要素(床、壁、屋根)間の隙間と、導管、管、またはケーブルのための貫通部など、建物要素内の隙間との両方、およびドアとその枠との間の空間を封止するために提供される。
【0004】
従来、2通りの技術が存在する。封止材、マスチック、および防火バット(fire batt)などの受動的技術は、恒久的に火に抵抗し、変わることなく火災条件に抵抗するよう設計される。膨張テープまたは管用カラーなどの事後対応型技術は、膨張コーティングと同じように、加熱されると膨張して、通常、非火災条件では開いている隙間を充填するよう設計される。
【0005】
本発明は、内壁を隔てるときに実施される事後対応型技術に関する。
【0006】
防火区画間を隔てる内壁は、防火断熱材のスラブを挟んだ2枚の石膏ボードから作られることが多い。
【0007】
これらのタイプの壁に、(ケーブルおよび管用の)敷設貫通部(service penetration)が設けられるとき、設置者は、石膏ボードおよび断熱材にドリルで穴を開けて断熱材を取り除き、例えば管用カラー、バンド、バット、および/またはマスチックなど、ある種の複雑な防火手段を適合させなければならない。適合させる特定のタイプの火炎遮断は、貫通部の正確な性質に依拠し、単一の作業に2つ以上のタイプを必要とすることがある。穴は、防火防煙としなければならず、貫通部が可燃性であるかまたは火に溶ける場合、選択される解決手段は、貫通部が火災中に燃えるかまたは溶けるときに残された穴も閉じなければならない。
【0008】
バットは、防煙壁としてマスチックをコーティングした鉱物綿繊維から作られた、不燃性ボードである。それらは通常、標準サイズで供給された後、現場で適切なサイズおよび形状に切断される。マスチックおよび封止材は、膨張性であっても、または膨張性のない単なる耐火性であってもよい。
【0009】
膨張して閉鎖することが必要となる、より複雑な適用には、機械的解決手段が使用され得る。例えばケーブル鞘管は、膨張性材料のライニングを施された鋼殻である。これは壁の中に開けられた穴の中に配置され、ケーブルおよび/または管が貫通して供給される。第2の封止方法が共に使用されることが多く、それによってアセンブリ全体が防火防煙となる。
【0010】
予め成形された枕体(pillow)には、繊維および膨張性材料の柔軟な混合物が充填されており、その枕体が貫通部の周りに単純に詰め込まれる。予め成形された発泡体のブロックを使用してもよい。
【0011】
したがって敷設貫通部を設ける場合、内壁の良好な防火性を実現するために、様々な敷設貫通部に容易に使用されて、いくつもの別の防火手段を必要としない、内壁のための簡易な火炎遮断製品が望まれている。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、内壁用のサンドイッチパネルに使用する火炎遮断材料を提供する。この火炎遮断材料は、少なくとも部分的に膨張剤を含浸させた弾性体の多孔質材料を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、火炎遮断材料は、細長い支持材を伴うストリップの形態であってよい。
【0014】
好ましくは、弾性体の多孔質材料は、発泡体、不織布、および/または繊維体を含み、膨張剤を含む含浸剤を備えている。
【0015】
好ましくは、含浸剤は少なくとも1つの液状媒体と、含浸剤の固形成分を発泡体材料に結合させるための結合剤とを含み、膨張剤は膨張性黒鉛を含む。好ましくはこの結合剤は、弾性体の多孔質材料の中に含浸させた後に、弾性体の多孔質材料の孔の内部において均一な分散を維持させるよう、黒鉛などの膨張剤を補助する。
【0016】
好ましくは、結合剤はアクリル系結合剤である。アクリル系結合剤は、良好な接着性、耐水性、および耐劣化性を呈するので、好ましいことがある。
【0017】
好ましくは、含浸剤はリン酸含有化合物を含む。
【0018】
好ましくは、リン酸含有化合物はリン酸塩、好ましくはポリリン酸塩である。
【0019】
好ましくは、ポリリン酸塩はポリリン酸アンモニウムである。
【0020】
好ましくは、含浸剤はリン酸含有化合物と黒鉛との両方を含む。リン酸塩は、膨張性黒鉛を伴って相乗効果を有し、浸食されにくく、かつ火災条件にある基材から剥離しにくいチャー(char:焦げたもの)を生成することで知られている。ポリリン酸塩、特にポリリン酸アンモニウムが好ましい。
【0021】
好ましくは、弾性体の多孔質材料は、10~100ppi(1インチあたりの孔数)、好ましくは20~80ppiの間隙率を有する。
【0022】
弾性体の多孔質材料は、好ましくは発泡体材料から生成される。さらに、弾性体の多孔質材料は、例えば発泡体材料、不織布、および/または繊維材料などの複数の材料から構成することもできる。
【0023】
好ましくは、液状媒体は水であるか、または水を含有する。しかしさらに、液状媒体は液体溶媒であるか、または水と液体溶媒との混合物であってもよい。溶媒は、好ましくは有機溶媒であってもよい。
【0024】
好ましくは、繊維材料は本体、詳細には、限定ではないが、特にマットおよび/またはプレート、および/またはストリップなどの平坦な本体である。この場合、これらの本体は、鉱物繊維、ガラス繊維、プラスチック繊維、天然繊維、それらの合成物などを含有する材料のグループから選択された材料から作ることができる。フリースが材料として使用される場合、このフリースは、規定の弾力性を有するように、十分大きい材料厚を備える。
【0025】
この場合、これらの本体がこれらの繊維材料のみから作られることが考えられるが、繊維材料に加えて、限定ではないが、特に結合剤、骨材材料など他の材料が存在することも考えられる。
【0026】
さらに好ましい一実施形態において、繊維材料は少なくとも部分的に弾性体である。好ましくは、材料の弾性は、規定の圧縮、特に当初の厚さの50%までの圧縮を想定するとき、少なくとも部分的に、好ましくは当初厚さの少なくとも60%まで、好ましくは当初厚さの少なくとも70%まで、好ましくは当初厚さの少なくとも75%まで、および非常に好ましくは当初厚さの少なくとも80%までがリセットされる。これらのデータは、特にまだ含浸させていない材料を指す。
【0027】
一般的に、好ましくはキャリアには弾性および/または伸縮性がある。
【0028】
好ましくは、弾性体の多孔質材料は、網状の発泡体材料、好ましくは網状の軟質ポリウレタン(PU)発泡体である。弾性体の多孔質材料が発泡体である場合、好ましくは、10~100ppi(1インチあたりの孔数)、好ましくは20~80ppiの間隙率である。
【0029】
好ましくは、多孔性で柔軟な材料は、発泡体を含む。この発泡体は、2000μm~7000μm、好ましくは3000μm~6000μm、特に好ましくは3400μm~5600μmのセルサイズを有する。
【0030】
好ましくは、含浸剤は、水40~60%、および/または結合剤25~35%、および/または膨張性黒鉛15~25%の比率を有する。
【0031】
好ましくは、液状媒体は水であるか、もしくは水を含有し、および/または液状媒体は溶媒、特に有機溶媒を含有する。
【0032】
好ましくは含浸剤は、一旦多孔質で柔軟な材料に含浸すると乾燥し、それによって最終的な製品には多くの液体内容物は残余せず、僅かな量のみが残り得る。
【0033】
本発明はまた、隙間を画定する2枚の平行なボードを含む、建物の内壁のパネルを提供する。この隙間には、火炎遮断材料を含む断熱材が充填され、この火炎遮断材料は、膨張剤によって少なくとも部分的に含浸させた、弾性体の多孔質材料を含む。
【0034】
本発明はまた、隙間を画定する2枚の平行なボードを含む、建物の内壁を提供する。火炎遮断材料は隙間を充填する。火炎遮断材料は、膨張剤によって含浸させた弾性体の多孔質材料を含む。
【0035】
好ましくは、パネルまたは壁内の断熱材は、火炎遮断材料から構成される。本発明の火炎遮断材料は、防火断熱材の追加層の必要性を不要にし得る。しかし、本発明の火炎遮断材料は、2枚のボードの間の断熱スラブと共に使用してもよい。
【0036】
好ましくは膨張剤は、黒鉛、ポリリン酸塩、メラミン、ペンタエリトリトール、二酸化チタン、およびバーミキュライト断熱材、のうちの少なくとも1つを含む。任意の好適な膨張剤を使用してもよい。火災の際に、膨張剤は膨らみ、化学的および/または物理的変換を経て、建物にいる人が安全に避難するのに十分長い一定の時間の間、熱い気体および炎を遮断する障壁を形成する。
【0037】
好ましくは、膨張剤は黒鉛を含む。熱いガスに露出されると、黒鉛は膨張して、熱い気体および炎の広がりを一定の時間の間遮断するチャーを形成する。急速かつ比較的低温度で膨張するため、黒鉛は特に好ましい。
【0038】
好ましくは、膨張剤は黒鉛およびポリリン酸アンモニウムを含む。ポリリン酸アンモニウム(APP)を追加することによって、炎による浸食、および火災条件下における基材からの剥離に対する、チャーの抵抗性を改善することができる。
【0039】
好ましくは、弾性体の多孔質材料は、連続気泡発泡体または不織布材料を含む。いずれの場合も、弾性体の多孔質材料は、火災からの熱い気体が膨張剤と接触することを可能にして、火災の際に膨張剤が遅延なく膨張し得る。
【0040】
好ましくは、弾性体の多孔質材料は、ポリウレタン(PU)連続気泡発泡体を含む。弾性体の多孔質材料がPU連続気泡発泡体である場合、好ましくは、10~100ppi(1インチあたりの孔数)、好ましくは20~80ppiの間隙率である。
【0041】
好ましくは、弾性体の多孔質材料の、膨張剤に対する重量比は、1:0.2~1:6、好ましくは1:1~1:3である。
【0042】
好ましくは、火炎遮断材料の少なくとも1つの主面は、煙を透過させないコーティングを含む。火炎遮断材料が、一定の時間の間、火災の広がりを妨げるのに役立つ一方で、煙を透過させないコーティングは、建物の内壁を通して煙が広がることを妨げるか、または低減させる。煙を透過させないコーティングは、マスチック、金属箔、または別の不透過性材料、好ましくはアクリル系マスチックなど、任意の好適な防煙壁であってもよい。
【0043】
好ましくは、ボードの一方または両方は石膏ボードである。石膏ボードは、サンドイッチタイプの内壁および壁パネルに好適である。
【0044】
貫通部は、このようなパネルの任意の箇所で単に石膏ボードを切り取り、火炎遮断材料を切り開き、管またはケーブルを押し込んで通すことにより作ることができる。次に煙の封止は、マスチックを適用して石膏ボードの縁部まで充填し直すことによって、復元することができる。煙の封止を復元させるための複雑な従来技術からの解決手段は、本発明の実施には不要である。
【0045】
したがって、本発明は建物の内壁を貫通する敷設貫通部を設ける方法も提供する。この方法は以下のステップを含む。
- 建物の内壁を提供するステップであって、壁の少なくとも一部が、2枚のボードと、それらのボードの間に配設された火炎遮断材料とを含み、火炎遮断材料は膨張剤を含浸させた弾性体の多孔質材料を含む、ステップ、
- 敷設貫通部の位置でそれらのボードを切り取って、火炎遮断材料を露出させるステップ、
- 露出した火炎遮断材料を切り開くステップ、
- 火炎遮断材料を貫通させて敷設要素を押込み、壁の一方の側から他方の側へ横断させるステップ、
- マスチックまたは他の充填材を適用して、ボードの縁部まで再充填するステップ。
【0046】
これは、容易で広い用途にかなう解決手段である。設置者は、複雑な機械的な火炎遮断製品を選択するのではなく、ただ道具およびマスチックを運ぶだけでよい。
【0047】
次に本発明の実施形態を、図を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】火災に対応した通常の内部隔壁を示す図である。
【
図2】バットおよびマスチックを使用して敷設貫通部を防火防煙にした、従来技術の解決手段を示す図である。
【
図3】バットおよびマスチックを使用して敷設貫通部を防火防煙にした、従来技術の解決手段を示す図である。
【
図4】鞘管およびラップを使用して敷設貫通部を防火防煙にした、従来技術の解決手段を示す図である。
【
図5】枕体を使用して敷設貫通部を防火防煙にした、従来技術の解決手段を示す図である。
【
図7】本発明により防火性にした貫通部を伴う、火災に対応した壁を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、サンドイッチパネルタイプの内壁1の通常の構成を示しており、この図では、具体的には鋼製スタッド壁である。2枚の実質的に平行なボード2a、2bが空洞3を画定し、その内部には断熱材4のスラブが配設されている。断熱材4は、好ましくは防火性である。ボード2a、2bは、例えば石膏、繊維セメント、石膏ボード、または任意の他の好適なボードタイプであってもよく、それら自体で火災に対応し得る。さらに
図1では、鋼製チューブ5が示され、これらは断熱材および石膏ボード用の骨組みとして機能し、構造的支持をもたらす。U断面、H断面、またはL断面など、チューブ以外の形状も可能であり、それらには穴が開いていてもよい。本発明によると、火炎遮断製品は、空洞3の内部の断熱材スラブ4に加えて、または断熱材スラブ4の代わりに提供され得る。
【0050】
しばしば、例えば管、ケーブル、または他の所望の敷設物を貫通させるために、貫通部を内壁に作る必要がある。従来技術は、敷設貫通部が火災の急速な広がりを助長しないよう、内壁の防火性を良好にするために、様々な、複雑であることが多い解決手段を提供する。
図2~
図5は、従来技術の解決手段が、敷設貫通部を設置した後に防火障壁を復元させる例を示す。
【0051】
図2および
図3は、バットおよびマスチックを使用する解決手段を示す。敷設貫通部5を囲むボード2a、2bの領域は、バット6で囲まれ、システムはマスチック7を使用して封止されている。
図3において、敷設貫通部5は、可燃性断熱材8の層で巻かれている。バットは、防煙壁としてマスチックをコーティングした鉱物綿繊維から作られた不燃性ボードである。それらは通常、標準サイズで供給された後、現場で適切なサイズおよび形状に切断される。マスチックおよび封止材は、膨張性材料であっても、または膨張しない単なる耐火性材料であってもよい。
【0052】
図4は従来技術の複雑な解決手段を示しており、膨張による閉鎖を必要とする。ケーブル鞘管11、例えば膨張材料でライニングが施された鋼殻が、両ボード2a、2bを貫通して壁1に切込んだ穴の中に配置される。ケーブルおよび/または管5は、鞘管11を貫通して供給されている。ケーブル鞘管11の鋼殻により、(マスチックで内側を充填したPVCチューブ9、およびバットから切り取った片10などの追加封止手段によって)内部の膨張材料が、乾式壁の空洞3内ではなく、内向きのみに拡張して敷設貫通部5の周りの隙間を充填できる。この例から明白であるように、様々な構成要素が必要となり、不便でコストが高い。
【0053】
図5は、防火性を復元させることがどのように床および壁に関連しているかの例を示す。可燃性敷設貫通部5が設けられた床12が示されている。枕体13が、敷設貫通部5の周りに詰められている。予め成形された枕体13には繊維および膨張性材料の柔らかい混合物が充填されており、その枕体13が貫通部5の周りに単純に詰め込まれる。予め成形された発泡体のブロックも使用され得るが、これらは通常膨張性ではない。
【0054】
図6は、本発明による壁パネルを示す図である。壁1は、空洞3を画定する、互いに平行に離隔して位置付けられた2枚の石膏ボード2a、2bを含み、空洞3内には、膨張剤を含浸させた網状発泡体を含む火炎遮断材料14が提供される。
図6は、ボード2aの下に横たわる防煙壁15を示している。
【0055】
敷設貫通部が、本発明の壁を貫通して作られる場合、従来技術の解決手段と比較して防火性を復元させることがはるかに容易になる。
図7は、本発明による壁1を示し、その中で敷設貫通部5が両ボード2a、2bを貫通して壁1の一方の側から他方の側へ到達する。ボード2aと2bとの間の隙間3に位置付けられた火炎遮断材料14は、弾性体であるので、切り開いて敷設貫通部5を貫通させたときでも、縮んで可能な限り元の形状に戻り、したがって大きい穴にはならない。
図7において、火炎遮断材料14は敷設貫通部5と密着していることが確認できる。防火性の復元、および必要な場合は煙の封止の応急処置(図示せず)には、マスチック(図示せず)のみが必要となる。
【実施例】
【0056】
この試験は、EN1366-4の一般的原則に従って実行された。1.5m×1.5m×1.5mの高炉を、ISO834セルロシック加熱曲線(cellulosic fire curve)まで加熱して使用した。
【0057】
この試験では、高炉の1つの垂直壁を試験用供試体に取り替える。次に高炉を加熱し、外面に取り付けられた熱電対で断熱特性を監視する。
【0058】
断熱不良時間とは、封止領域の外側が(周囲温度+140℃)、本事例では160℃に達するまでにかかる時間である。
【0059】
封止の完全性を視覚的に監視し、封止領域の全体でクラックおよび煙のもれを探す。
【0060】
貫通部のための2つの穴がある単一の試験片を準備した。試験片は、中央に200mm×200mmの2つの穴を有する、100mm厚のサーマライトシールド(Thermalite shield)(登録商標)(発泡コンクリート)ブロックの1500mm×1500mmの壁であった。
【0061】
本発明を代表する第1の事例において、1つの穴を、本発明の火炎遮断材料である100mmの垂直厚のスラブで封止して、完全に200mm×200mm×100mmの空間に充填した。次にこれに10mm径の銅管を押し込んで貫通させた。
【0062】
詳細には、この試験に使用した本発明の火炎遮断材料は、膨張性黒鉛およびアクリル系結合剤を含浸させたPU発泡体であった。
【0063】
第2の事例において(System-ZZ)、10mm径の銅管と第2の穴の縁部との間の空間は、市販の2成分ポリウレタン耐火発泡体(2-component Polyurethane fire protection foam)である、Zapp Zimmermann GmbH社から入手可能な、System ZZ-Fire protection foam 2K NEで封止した。これをカートリッジから供給して、空間内で硬化させ、封止部を形成した。
【0064】
【0065】
これは、本発明の火炎遮断材料が、60分の格付けをもつ市販の製品として使用でき、本試験における2成分PU発泡体よりも僅かに優れていたことを示している。
【符号の説明】
【0066】
1 壁
2a ボード
2b ボード
3 空洞
4 断熱材、断熱スラブ
5 鋼製チューブ、敷設貫通部
6 バット
7 マスチック
8 可燃性断熱材
9 PVCチューブ
10 片
11 ケーブル鞘管
12 床
13 枕体
14 火炎遮断材料
15 防煙壁