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特許7198685電気掃除機の吸込口体およびそれを備えた電気掃除機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】電気掃除機の吸込口体およびそれを備えた電気掃除機
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/02 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
A47L9/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019035934
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020137836
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】村松 拓哉
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/004695(WO,A1)
【文献】実開昭56-009346(JP,U)
【文献】特開平04-352929(JP,A)
【文献】特開平07-023882(JP,A)
【文献】特開昭60-114226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被清掃面と対面する底面および前記底面に設けられた吸込口を有する吸込口本体と、前記吸込口本体の前進方向側の前端に設けられたバンパーとを備え、
前記吸込口本体は、前記底面の前端側に、前進方向に向かうにつれて被清掃面から離れる傾斜面部を有し、
前記バンパーは、前記吸込口本体の前記前端に固定された固定部と、前記傾斜面部側へ回動可能で前記固定部に垂れ下がり状に連結した可動片部とを有し、
前記可動片部の下端は、前記傾斜面部の傾斜した上部の高さ位置に配置されており、
前記吸込口は、前方に開口する前方開口部を有し、
前記可動片部が回動して前記前方開口部内に退避するように構成されており、
前記可動片部は、前進方向に面する外面を有し、
前記可動片部が回動して前記前方開口部内に退避することにより、前記外面が傾斜した 前記傾斜面部の上部と略同一面内に配置されることを特徴とする電気掃除機の吸込口体 。
【請求項2】
前記可動片部は、前記固定部に軸を介して回動可能に枢着されている請求項1に記載の吸込口体。
【請求項3】
前記軸を中心として前記可動片部を回動可能に付勢する付勢部材をさらに備え、
前記付勢部材によって前記外面が前進方向へ面する方向に前記可動片部が付勢される請求項2に記載の吸込口体。
【請求項4】
前記可動片部が、少なくとも前記固定部との連結部分に可撓性を有する請求項1に記載の吸込口体。
【請求項5】
前記底面における前記吸込口の左右位置から前記傾斜面部に亘る範囲に、被清掃面と摺接する左右一対の緩衝シートが設けられた請求項1~のいずれか1つに記載の吸込口体。
【請求項6】
掃除機本体と、前記掃除機本体と接続される請求項1~のいずれか1つに記載の吸込口体とを備えた電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機の吸込口体およびそれを備えた電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気掃除機の吸込口体は、壁面や家具等の傷付き抑制のために、前端にバンパーが設けられているものが一般的である。
例えば、特許文献1には、吸込具本体の底面に設けられた吸込口が前端側に開口する側方開口部を有すると共に、吸込具本体の前端に設けられた受圧部材(バンパー)が側方開口部を覆う覆壁を有する吸込具が開示されている。
この吸込具では、床面での通常走行時には覆壁によって側方開口部を覆うことにより側方開口部の開口面積を小さくして吸塵力の低下を抑えると共に、受圧部材が壁面に衝突した際は覆壁が前方へ回動して側方開口部が開いて壁際の塵埃を吸引できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-23882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の吸込具にて床面清掃を行う場合、受圧部材の覆壁と床面との隙間が狭いと、床面上に敷かれた敷物(絨毯、マット等)や敷居などの段差に覆壁が引っ掛かる場合があるため、ユーザーが吸込具を持ち上げて段差を乗り越えるようにしなければならず、ユーザーへの負担が大きくなってしまう。また、受圧部材の覆壁と床面との隙間が狭い場合は、大きいゴミが隙間に入り込めないため吸引除去しにくい。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、走行性に優れた電気掃除機の吸込口体およびそれを備えた電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、被清掃面と対面する底面および前記底面に設けられた吸込口を有する吸込口本体と、前記吸込口本体の前進方向側の前端に設けられたバンパーとを備え、
前記吸込口本体は、前記底面の前端側に、前進方向に向かうにつれて被清掃面から離れる傾斜面部を有し、
前記バンパーは、前記吸込口本体の前記前端に固定された固定部と、前記傾斜面部側へ回動可能で前記固定部に垂れ下がり状に連結した可動片部とを有する電気掃除機の吸込口体が提供される。
また、本発明によれば、掃除機本体と、前記掃除機本体と接続される前記吸込口体とを備えた電気掃除機が提供される。
【発明の効果】
【0007】
走行性に優れた電気掃除機の吸込口体、または、走行性に優れた電気掃除機の吸込口体を備えた電気掃除機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態の吸込口体を備えた電気掃除機を示す斜視図である。
図2】第1実施形態の吸込口体の正面図である。
図3】第1実施形態の吸込口体の一部を省略した底面図である。
図4】第1実施形態の吸込口体を下方から視た斜視図である。
図5】第1実施形態の吸込口体の(A)は左側面図、(B)は左右中間付近の左側断面図、(C)は左端部側の左側断面図である。
図6】(A)~(F)は第1実施形態の吸込口体における傾斜面部の各種側面視形状を説明する図である。
図7】第1実施形態の吸込口体のバンパー部分を拡大した左側断面図である。
図8】第1実施形態の吸込口体のバンパーが閉じた状態を示す一部を省略した左側断面図である。
図9】第1実施形態の吸込口体のバンパーが閉じた状態を示す下方から視た斜視図である。
図10】第1実施形態の吸込口体の(A)は段差接触前、(B)は段差接触時、(C)は段差乗り越え時を説明する図である。
図11】第2実施形態の吸込口体のバンパー部分を拡大した左側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
<電気掃除機の全体構成>
図1は本発明の第1実施形態の吸込口体を備えた電気掃除機を示す斜視図である。
図1に示すように、第1実施形態の電気掃除機1は、電動送風機を内蔵する駆動装置10Aおよびこれに着脱可能に装着されるダストカップユニット10Bを有する掃除機本体10と、駆動装置10Aに離脱可能に装着されるバッテリー20と、モータ47にて回転駆動する回転ブラシ45(図5(B)および(C)参照)を有する吸込口体40と、吸込口体40と掃除機本体10とを気密的に接続する延長管30とを備えた、スティック型の電気掃除機である。
また、この電気掃除機1は、バッテリー20の電力を吸込口体40内に設けられた前記モータ47へ供給する図示しない電気配線部を備えている。
【0010】
掃除機本体10において、駆動装置10Aは、使用者が手で握るハンドル10Aaと、ハンドル10Aaに設けられ起動・停止スイッチを有する操作部10Abと、延長管30の基端部を受け入れて離脱可能に接続する接続部10Acとを備える。
【0011】
延長管30の先端部には、吸込口体40の接続パイプ部42を受け入れて離脱可能に接続する接続部30aが設けられている。
吸込口体40は、吸込口本体41と、延長管30の接続部30aに離脱可能に差し込まれる接続パイプ部42と、吸込口本体41に対して接続パイプ部42を約90度の角度範囲で前後に揺動させ、かつ、約180度の角度範囲で左右に捩じることが可能な関節部43とを備える。
【0012】
このような構成された電気掃除機1では、操作部10Abの起動スイッチが投入される(オン操作される)と、電動送風機(図示省略)および回転ブラシ用モータ47が駆動する(図5(C)参照)。そして、ダストを含む空気が、吸込口体40の回転する回転ブラシ45(図5(B)参照)を有する吸込口41aaから延長管30を通ってダストカップユニット10B内に流入し、ダストがダストカップユニット10Bにて捕捉されると共に、浄化された空気は駆動装置10Aの側面の図示しない排気口から排気される。
【0013】
<吸込口体の構成>
図2は第1実施形態の吸込口体の正面図であり、図3は第1実施形態の吸込口体の一部を省略した底面図であり、図4は第1実施形態の吸込口体を下方から視た斜視図である。また、図5は第1実施形態の吸込口体の(A)は左側面図、(B)は左右中間付近の左側断面図、(C)は左端部側の左側断面図である。なお、図2図3図5(A)において、吸込口体の前後左右上下の方向を矢印にて示している。
【0014】
図2図5(C)に示すように、吸込口体40において、吸込口本体41は、底面を構成する下ケース41aと、下ケース41aに対面する上ケース41bとを備え、下ケース41aと上ケース41bとの結合した前端にバンパー44が設けられている。なお、バンパー44について、詳しくは後述する。
【0015】
吸込口本体41は、下ケース41a(底面)に設けられた左右方向に伸びる吸込口41aaと、吸込口41aaの後方に前記関節部43を介して接続された前記接続パイプ部42と、吸込口41aaに左右方向に伸びる軸心周りに回転可能に設けられた前記回転ブラシ45と、吸込口41aaと関節部43とを接続する吸引流路46と、回転ブラシ45を駆動する前記回転ブラシ用モータ47と、下ケース41aに設けられた持上げ検知スイッチ48および車輪49とを備える。
【0016】
吸込口本体41において、底面(下ケース41a)の前端側に、前進方向に向かうにつれて上昇する方向に傾斜する、つまり、吸込み口体41を被清掃面Fに置いた状態において前進方向に向かうにつれて被清掃面Fから離れる方向に傾斜する傾斜面部41abが設けられている(図10(A)参照)。また、吸込口41aaは前方に開口する前方開口部41acを有している。なお、本実施形態の場合、傾斜面部41abは吸込口41aaの前方開口部41acの左右両側に設けられているが、例えば、前方開口部41acの前後方向の幅を狭くする、あるいは前方開口部41acの前端縁を櫛歯状に形成することにより、前方開口部41acの前方位置および左右位置に連続的な傾斜面部41abを設けてもよい。
【0017】
図6(A)~(F)は吸込口体における傾斜面部の各種側面視形状例を説明する図である。なお、図6(A)~(F)中の符号BSは吸込口体の底面を示している。
本実施形態の吸込口体40において、傾斜面部41abは、図6(A)に示した凸曲面CSのみからなるもの、図6(B)に示した平坦面FSのみからなるもの、図6(C)に示した上部の凸曲面CSと下部の平坦面FSとからなるもの、図6(D)に示した上部の平坦面FSと下部の凸曲面CSとからなるもの、図6(E)に示した上部の平坦面FSと下部の平坦面FSとの間に凸曲面CSが配置されてなるもの、および、図6(F)に示した上部の凸曲面CSと下部の凸曲面CSとの間に平坦面FSが配置されてなるもの(図6(F))などが含まれる。この他にも傾斜面部にはさまざまな形状が考えられるが、図6(A)~(F)も含め、開発時に適する形状を選択すればよい。
【0018】
また、本実施形態の場合、下ケース41aの底面における吸込口41aaの左右位置、具体的には、底面の平坦部分から左右の傾斜面部41abに亘る範囲に、被清掃面F(図10(A)参照)と摺接する左右一対の緩衝シート41adが設けられている。この緩衝シート41adは、例えば、不織布、織布等の布材からなる。
上ケース41bの前端には、後述するバンパー44の軸44bdを支持する複数(本実施形態では4つ)の支持リブ41baが設けられている(図7参照)。
【0019】
また、回転ブラシ用モータ47の出力軸にはタイミングプーリー50aが付設され、回転ブラシ44の左端部にはタイミングプーリー50bが付設され、これらのタイミングプーリー50a、50bがタイミングベルト51によって結合されている。
したがって、前述のように、操作部10Abの起動スイッチが投入され、床面の清掃作業が開始されると、回転ブラシ用モータ47により駆動される回転ブラシ45によって床面のダストが掃き寄せられ、ダストは吸込口41aaから吸引流路46と関節部43と接続パイプ部42を通ってダストカップユニット10B(図1参照)の方へ搬送される。
【0020】
持上げ検知スイッチ48は、車輪48bを有する揺動レバー部48aと、揺動レバー部48aを揺動可能に支持するスイッチ本体(不図示)と、揺動レバー部48aを下方へ付勢するねじりコイルばね(不図示)とを有する。スイッチ本体は、下ケース41aに収納された回転ブラシ用モータの駆動回路基板に接続され、揺動レバー部48aの車輪48bが下ケース41aから外部下方へ露出している。
この構成によれば、吸込口体40が持ち上げられて床面から離れると、持上げ検知スイッチ48が働いて回転ブラシ用モータ47の駆動を強制的に停止させることができる。
【0021】
<バンパーの構成>
図7は第1実施形態の吸込口体のバンパー部分を拡大した左側断面図であり、図8は第1実施形態の吸込口体のバンパーが閉じた状態を示す一部を省略した左側断面図であり、図9は第1実施形態の吸込口体のバンパーが閉じた状態を示す下方から視た斜視図である。なお、図7において、吸込口体の前後方向を矢印にて示している。
【0022】
図2図7に示すように、バンパー44は、吸込口本体41の前端に固定された固定部44aと、傾斜面部41ab側へ回動可能として固定部44aに垂れ下がり状に連結した可動片部44bとを有し、可動片部44bが回動して吸込口41aaの前方開口部41ac内に退避するように構成されている。本実施形態の場合、固定部44aと可動片部44bとは、別部材にて構成されている。
【0023】
固定部44aaは、左右方向に延びるカバー部材であり、その外面とは反対側の内面には、後述する可動片部44bの軸44bdを押さえる複数(本実施形態では4つ)の押さえリブ44aaが設けられている。
また、固定部44aの外面の左右両端側には、前方へ突出する突起部44abが設けられている。なお、吸込口体40による清掃時にバンパー44が平坦な壁面に当接する際は、これらの突起部44abが壁面に当接しやすくなっている。
【0024】
可動片部44bは、吸込口41aaの前方開口部41acの左右方向の長さよりも少し短い長さを有し、その下端縁44bcの左右両端には、下端縁44bcの厚みよりも大きい寸法で後方へ突出する補強リブ44bfが設けられている。この補強リブ44bfによって可動片部44bが補強されると共に、左右方向からの空気の吸引を抑えて吸引力を維持するようにしている。
【0025】
図2図7に示すように、可動片部44bは、左右方向に延びる上端縁に設けられた複数(本実施形態では3つ)の突片44baと、上端縁における各突片44baの両側に設けられた複数(本実施形態では4つ)の孔部44bbと、左右方向に延びる下端縁44bcとを有する。可動片部44bの各孔部44bbに上ケース41bの各支持リブ41baが差し込まれることにより、可動片部44bは各支持リブ41baにて各軸44bdを中心として回動可能に支持されている。また、可動片部44bは、固定部44aの各押さえリブ44aaによって各軸44bdが回動可能に押さえられている。すなわち、上端縁における各孔部44bb付近が前記軸44bdとなっている。なお、各軸44bdは左右方向の同一軸心上に配置されている。
【0026】
このバンパー44は、各軸44bdを中心として可動片部44bを回動可能に付勢する付勢部材44cをさらに備えている。本実施形態の場合、付勢部材44cとしての圧縮コイルバネが、可動片部44bの各突片44baと固定部44aとの間に位置決めされている。
【0027】
これにより、付勢部材44cによって可動片部44bはその下端縁44bcが前方へ回動する方向、つまり、下端縁44bcの外面44beが前進方向へ面する方向に付勢される。また、各突片44baが上ケース41bに当接することにより、可動片部44bの下端縁44bcの前方への回動が規制されている。このとき、可動片部44bの下端縁44bcの外面44beは、固定部44aの外面の左右の突起44abよりも前方へ突出しないことが好ましい。
【0028】
なお、付勢部材44cとしては、圧縮コイルバネの代わりに、多孔性の弾性発泡体を用いてもよい。あるいは、突片44baを後方へ付勢することにより下端縁44bcを前方へ回動させる引っ張りコイルバネを用いてもよい。あるいは、可動片部44bの長手方向の両端に軸を設け、少なくとも一方の軸にトーションバネを取り付け、トーションバネにて下端縁44bcが前方へ回動する方向に付勢するようにしてもよい。
【0029】
また、図7図9に示すように、可動片部44bの下端縁44bcの外面44beが後方へ押されると、付勢部材44cの付勢力に抗して可動片部44bの各突片44baが軸44bdを中心に前方へ回動し、下端縁44bcが軸44bdを中心に後方へ回動する。これにより、下端縁44bcが吸込口41aaの前方開口部41ac内に退避する。このとき、下端縁44bcの外面44beが左右の傾斜面部41abの緩衝シート41adと略同一面内に配置される。またこの場合、左右の緩衝シート41adは、左右の傾斜面部41abの一部として構成されている。つまり、図6(A)~(F)で示した各種側面視形状の左右の傾斜面部41abに沿って緩衝シート41adがそれぞれ設けられているため、各緩衝シート41adの外面も各傾斜面部41abと同様の各種側面視形状となっており、このような各種側面視形状の各緩衝シート41adの外面と略同一面内に可動片部44bの下端縁44bcの外面44beが配置される。
なお、左右の緩衝シート41adは省略されてもよい。この場合、可動片部44bの下端縁44bcが吸込口41aaの前方開口部41ac内に退避した際、下端縁44bcの外面44beが各種側面視形状の左右の傾斜面部41abと略同一面内に配置することが好ましい。
【0030】
図10は第1実施形態の吸込口体の(A)は段差接触前、(B)は段差接触時、(C)は段差乗り越え時を説明する図である。
例えば、吸込口体40にて絨毯Cが敷かれた床面(被清掃面F)を清掃する際、図10(A)および(B)に示すように、絨毯Cの段差Sの高さが、床面上の吸込口体40のバンパー44の固定部44aより低いとき、吸込口体40は段差Sを乗り越えることができる。
【0031】
このとき、図7図9および図10(B)に示すように、可動片部44bの下端縁44bcの外面44beが段差Sに当たって前方開口部41ac内に押し込まれると共に、下端縁44bcの外面44beと左右の傾斜面部41abの緩衝シート41adとが互いに略同一面内に配置された状態となる。そのため、段差Sに突き当たった吸込口体40を前進させると、図10(C)に示すようにバンパー44が段差Sに引っ掛かることなく、吸込口体40が段差Sをスムーズに乗り越えることができる。
【0032】
なお、図10(B)に示すように、可動片部44bの下端縁44bcの外面44beが段差Sに当たって前方開口部41ac内に押し込まれた状態では、段差Sと被清掃面Fとの間の隅部Nに向かって吸込口体40の前方開口部41acが接近するため、隅部Nに溜まった塵埃を効率よく吸引除去することができる。
【0033】
(第2実施形態)
図11は第2実施形態の吸込口体のバンパー部分を拡大した左側断面図である。なお、図11において、図7中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
第2実施形態の吸込口体は、バンパー144の構成が第1実施形態と異なる以外は、概ね第1実施形態と同様である。
以下、第2実施形態における第1実施形態とは異なる点を主に説明する。
【0034】
図11に示すように、第2実施形態の吸込口体140において、バンパー144は、可動片部144bが、少なくとも固定部144aとの連結部分に可撓性を有している。本実施形態の場合、可動片部144b全体が可撓性を有している。
【0035】
このバンパー144は、例えば、固定部144aを形成する部分に樹脂を用い、可動片部144bを形成する部分にゴムを用い、これらをインサート成形することにより1部品として得ることができる。なお、固定部144aと可動片部144bとの連結部分にのみゴムを用い、それ以外の部分に樹脂を用いてインサート成形して1部品としてバンパーを形成してもよい。また、可動片部144b全体を可撓性有する材料にて一体成型してもよい。
【0036】
また、第2実施形態の場合、固定部144aはその内面に係合リブ144aaを有すると共に、上ケース141bはその前端に係合支持リブ141baを有する。係合リブ144aaが係合支持リブ141baと係合することにより、固定部144aが上ケース141bの前端に取り付けられている。
【0037】
このようにバンパー144を構成することによって、可動片部144bの下端縁144bcが後方へ押されると、可動片部144bの固定部144aとの連結部分が弾性変形し、二点鎖線で示すように下端縁44bcが後方へ回動する。これにより、下端縁144bcが吸込口41aaの前方開口部内に退避すると共に、下端縁144bcの外面144beが左右の傾斜面部41abの緩衝シート41adと略同一面内に配置される。したがって、第2実施形態の吸込口体140は、第1実施形態と同様に、被清掃面F上の段差Sをスムーズに乗り越えることができる(図9(A)~(C)参照)。
【0038】
(第3実施形態)
第1および第2実施形態ではモータ駆動の回転ブラシを有する吸込口体を例示したが、タービン駆動の吸込口体であってもよく、あるいは回転ブラシを有さない吸込口体であってもよい。
【0039】
(第4実施形態)
第1実施形態ではスティック型電気掃除機(図1参照)に用いられる吸込口体を例示したが、第1~第3実施形態の吸込口体はキャニスター型電気掃除機に用いられてもよい。
【0040】
(他の実施形態)
第1および第2実施形態の吸込口体では、吸込口体が被清掃面に載置された状態において、前方へ向かうにつれて被清掃面から離れる方向に傾斜する傾斜面部が底面と一体となっている構成を例示したが、傾斜面部は底面と別部材で構成されてもよい。
【0041】
(まとめ)
本発明の電気掃除機の吸込口体は、被清掃面と対面する底面および前記底面に設けられた吸込口を有する吸込口本体と、前記吸込口本体の前進方向側の前端に設けられたバンパーとを備え、
前記吸込口本体は、前記底面の前端側に、前進方向に向かうにつれて被清掃面から離れる傾斜面部を有し、
前記バンパーは、前記吸込口本体の前記前端に固定された固定部と、前記傾斜面部側へ回動可能で前記固定部に垂れ下がり状に連結した可動片部とを有するものである。
この構成によれば、吸込口体にて床面上を清掃する際、床面上に敷かれた敷物(絨毯、マット等)や敷居などの段差に可動片部が当たって押されると、可動片部が傾斜面部側へ回動する(退避する)。また、吸込口体の底面における吸込口よりも前方位置には傾斜面部が設けられている。これにより、バンパーの可動片部および吸込口体の前端に段差が引っ掛かることなく吸込口体が段差を乗り越えることができるため、吸込口体を持ち上げて段差を乗り越えさせるというユーザーへの負担を軽減することができる。
【0042】
本発明の電気掃除機の吸込口体は、次のように構成されてもよく、それらが適宜組み合わされてもよい。
【0043】
・前記吸込口は、前方に開口する前方開口部を有し、
前記可動片部が回動して前記前方開口部内に退避するように構成されてもよい。
この構成によれば、バンパーの可動片部が固定部から垂れ下がっているときは吸込口の前方開口部の開口面積(可動片部と床面との間の隙間)が狭くなっているため、吸引性能が維持される。また、可動片部と床面との間の隙間よりも大きなゴミ(大ゴミ)を吸い込む際は、大ゴミに向かって吸込口体を前進させることにより、大ゴミに押されてバンパーの可動片部が前方開口部内へ退避するため、大ゴミを吸込口に吸い込むことができる。
【0044】
・前記可動片部は、前進方向に面する外面を有し、
前記可動片部が回動して前記前方開口部内に退避することにより、前記外面が前記傾斜面部と略同一面内に配置されてもよい。
この構成によれば、段差乗り越え時に受ける吸込口体の段差側への圧力を、吸込口本体の傾斜面部とバンパーの可動片部の外面の両方に分散させることができるため、走行抵抗が比較的大きい敷物(段差)であっても吸込口体がスムーズに乗り越えることができる。
【0045】
・前記可動片部は、前記固定部に軸を介して回動可能に枢着されているものであってもよい。
この構成によれば、固定部と可動片部とを別部品として作製し、これらを組み立ててバンパーを得ることができる。
【0046】
・前記軸を中心として前記可動片部を回動可能に付勢する付勢部材をさらに備え、
前記付勢部材によって前記外面が前進方向へ面する方向に前記可動片部が付勢されるものであってもよい。
この構成によれば、吸込口体の段差を乗り越時には段差に押されたバンパーの可動片部が付勢部材の付勢力に抗して後方へ回動し、段差を乗り越えると付勢部材によって可動片部が前方の初期位置へ自動的に戻る。
【0047】
・前記可動片部が、少なくとも前記固定部との連結部分に可撓性を有するものであってもよい。
この構成によれば、固定部と可動片部とを一体的に形成したバンパーを得ることができる。
【0048】
・前記底面における前記吸込口の左右位置から前記傾斜面部に亘る範囲に、被清掃面と摺接する左右一対の緩衝シートが設けられたものであってもよい。
この構成によれば、吸込口体にて被清掃面であるフローリング上を清掃する際、緩衝シートによって、フローリングなどの被清掃面に対する傷付き抑制および吸込口体がフローリングに当たったときの衝突音を抑えることができる。また、左右一対の緩衝シートは、面における吸込口の左右位置から前記傾斜面部に亘る範囲に設けられているため、吸込口体の段差乗り越え時に緩衝シートが段差に引っ掛かりにくくなる。
【0049】
なお、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
1 電気掃除機
10 掃除機本体
40、140 吸込口体
41、140 吸込口本体
41aa 吸込口
41ab 傾斜面部
41ac 前方開口部
41ad 緩衝シート
44、144 バンパー
44a、144a 固定部
44b、144b 可動片部
44bd 軸
44be、144be 外面
44c 付勢部材
F 被清掃面
図1
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