IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャープ株式会社の特許一覧

特許7198688ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置
<>
  • 特許-ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置 図1
  • 特許-ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置 図2
  • 特許-ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置 図3
  • 特許-ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置 図4
  • 特許-ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置 図5
  • 特許-ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置 図6
  • 特許-ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置 図7
  • 特許-ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置 図8
  • 特許-ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置 図9
  • 特許-ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置 図10
  • 特許-ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置 図11
  • 特許-ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置 図12
  • 特許-ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置 図13
  • 特許-ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置 図14
  • 特許-ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置 図15
  • 特許-ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置 図16
  • 特許-ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置 図17
  • 特許-ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20221228BHJP
   H10K 30/60 20230101ALI20221228BHJP
   G03G 5/08 20060101ALI20221228BHJP
   G03G 5/06 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
H01L31/04 112Z
H01L31/04 166
H01L31/04 112C
H01L31/08 T
G03G5/08 104
G03G5/08 A
G03G5/06 371
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019038600
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020145226
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】宮西 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】杉村 博
(72)【発明者】
【氏名】森田 竜廣
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/038909(WO,A1)
【文献】特開2002-129045(JP,A)
【文献】特表2018-503060(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105762283(CN,A)
【文献】Insung Hwang et al.,"Core/Shell Structured TiO2/CdS Electrode to Enhance the Light Stability of Perovskite Solar Cells",ACS APPLIED MATERIALS & INTERFACES,2015年,Vol.7,pp.27863-27870
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42-51/48
G03G 5/04-5/09
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
ACS PUBLICATIONS
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機コア粒子と、前記無機コア粒子の表面を覆う電子輸送層と、前記電子輸送層を覆う光吸収層とを備え、
前記光吸収層は、有機無機ハイブリッドペロブスカイト結晶構造を有する化合物、又は金属錯体を含み、
前記無機コア粒子は、酸化チタン粒子であり、
前記電子輸送層は、窒化チタン層であり、
前記化合物又は前記金属錯体は前記電子輸送層の表面上に結晶成長していることを特徴とするハイブリッド粒子。
【請求項2】
酸化チタンで構成される無機コア粒子と、窒化チタンで構成される電子輸送層と、有機無機ハイブリッドペロブスカイト結晶構造を有する化合物又は金属錯体を含む光吸収層とを備え、
前記電子輸送層は、前記無機コア粒子の表面に形成され、かつ、前記無機コア粒子と前記光吸収層との間に挟まれ、
前記化合物又は前記金属錯体は前記電子輸送層の表面上に結晶成長していることを特徴とするハイブリッド粒子。
【請求項3】
前記有機無機ハイブリッドペロブスカイト結晶構造は、一般式:ABX(この一般式においてAは有機カチオンを表し、Bは金属イオンを表し、Xはハロゲンイオンを表す)で表される結晶構造である請求項1又は2に記載のハイブリッド粒子。
【請求項4】
前記金属錯体は、チタニルフタロシアニンである請求項1又は2に記載のハイブリッド粒子。
【請求項5】
前記有機無機ハイブリッドペロブスカイト結晶構造を有する化合物は、一般式:CHNHPbX(この一般式においてXはハロゲンイオンを表す)で表される化合物である請求項1~3のいずれか1つに記載のハイブリッド粒子。
【請求項6】
第1電極と、第1電極上に設けられた第1電荷分離層と、第1電荷分離層上に設けられた第2電極とを備え、
第1電荷分離層は、第1ホール輸送層と、請求項1~のいずれか1つに記載の複数のハイブリッド粒子とを含み、
複数のハイブリッド粒子は、第1ホール輸送層で覆われている光電変換素子。
【請求項7】
第3電極と、第3電極上に設けられた第2電荷分離層とを備え、
第2電荷分離層は、第2ホール輸送層と、請求項1~のいずれか1つに記載の複数のハイブリッド粒子とを含み、
複数のハイブリッド粒子は、第2ホール輸送層で覆われている感光体。
【請求項8】
請求項に記載の感光体を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド粒子、光電変換素子、感光体及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は、各種光センサ、太陽電池等に用いられている。特に、高い光電変換効率と製造コストの面で、電荷発生層(光吸収層)と電荷移動層を積層した光電変換素子の開発が盛んになっている。また近年になると、有機無機ペロブスカイト結晶構造を有する化合物を含む電荷発生層を用いた太陽電池が、無機系材料に匹敵する光電変換効率を達成し注目されている(例えば、特許文献1参照)。また、この太陽電池では、電荷発生層をメソポーラスTiO2の表面上に形成することにより光電変換効率を向上させている。メソポーラスTiO2は、電荷発生層の足場となると共に電子輸送層としても機能する。
【0003】
また、画像形成装置の静電潜像を形成する感光体でも、光電変換素子と同様に電荷発生層と電荷移動層を積層した構造を有するものが知られており、電荷発生層に含まれる電荷発生材料としてチタニルフタロシアニンなどの金属錯体が高感度特性を有することが知られている(例えば、特許文献2参照)。
これらの電荷発生層は、真空プロセスを使用せず塗布プロセスによって製造することができるため、製造コストを大幅に削減でき、変換効率、コスト面で有望な光変換素子又は感光体として色々な分野への応用展開が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2017/104792A1
【文献】特開2008-174677公報
【文献】特開2004-261747公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機無機ペロブスカイト結晶構造を有する化合物を含む電荷発生層を用いた太陽電池において、電子輸送層として機能するメソポーラスTiO2は比較的電気抵抗の高い半導体であるため、光励起キャリアが再結合しやすく、本来の光電変換効率を実現できていない。また、電荷発生層とメソポーラスTiO2との界面制御が為されておらず、界面における結合欠陥や空隙等の存在が光励起キャリアの再結合中心となり、有効に光励起キャリアを電荷発生層から取り出せていない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、光吸収層で発生した光励起キャリアが再結合することを抑制することができるハイブリッド粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、無機コア粒子と、前記無機コア粒子の表面を覆う電子輸送層と、前記電子輸送層を覆う光吸収層とを備え、前記光吸収層は、有機無機ハイブリッドペロブスカイト結晶構造を有する化合物、又は金属錯体を含み、前記化合物又は前記金属錯体は前記電子輸送層の表面上に結晶成長していることを特徴とするハイブリッド粒子を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のハイブリッド粒子に含まれる光吸収層は、有機無機ハイブリッドペロブスカイト結晶構造を有する化合物、又は金属錯体を含み、前記化合物又は前記金属錯体は電子輸送層の表面上に結晶成長しているため、電子輸送層と光吸収層との界面において結合欠陥や空隙を少なくすることができる。このため、光吸収層において光励起された電子が速やかに電子輸送層へと移動することができる。また、光励起により光吸収層で生成したホールは、ハイブリッド粒子の表面から外側に引き出される。このため、光励起キャリアを速やかに電子とホールに分離することができ、光励起キャリアが再結合することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態のハイブリッド粒子の概略断面図である。
図2】TiN層(電子輸送層)の表面上へのCH3NH3PbI3(光吸収層)の結晶成長の説明図である。
図3】本発明の一実施形態のハイブリッド粒子のエネルギーバンド図である。
図4】TiN層(電子輸送層)の表面上へのチタニルフタロシアニン(光吸収層)の結晶成長の説明図である。
図5】TiN層(電子輸送層)の表面上へのチタニルフタロシアニン(光吸収層)の結晶成長の説明図である。
図6】TiN層(電子輸送層)の表面上へのチタニルフタロシアニン(光吸収層)の結晶成長の説明図である。
図7】TiN層(電子輸送層)の表面上へのチタニルフタロシアニン(光吸収層)の結晶成長の説明図である。
図8】TiN層(電子輸送層)の表面上へのチタニルフタロシアニン(光吸収層)の結晶成長の説明図である。
図9】本発明の一実施形態の光電変換素子の概略断面図である。
図10】本発明の一実施形態の光電変換素子のエネルギーバンド図である。
図11】本発明の一実施形態の光電変換素子の概略断面図である。
図12】(a)~(c)はそれぞれ本発明の一実施形態の光電変換素子の概略断面図である。
図13図12(a)に示した光電変換素子のエネルギーバンド図である。
図14図12(b)に示した光電変換素子のエネルギーバンド図である。
図15図12(c)に示した光電変換素子のエネルギーバンド図である。
図16】本発明の一実施形態の感光体の概略断面図である。
図17】本発明の一実施形態の感光体の概略断面図である。
図18】本発明の一実施形態の画像形成装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のハイブリッド粒子は、無機コア粒子と、前記無機コア粒子の表面を覆う電子輸送層と、前記電子輸送層を覆う光吸収層とを備え、前記光吸収層は、有機無機ハイブリッドペロブスカイト結晶構造を有する化合物、又は金属錯体を含み、前記化合物又は前記金属錯体は前記電子輸送層の表面上に結晶成長していることを特徴とする。
【0010】
本発明のハイブリッド粒子に含まれる無機コア粒子は酸化チタン粒子であることが好ましく、電子輸送層は窒化チタン層であることが好ましい。このことにより、無機コア粒子と電子輸送層との間の界面を欠陥の少ない良好な界面とすることができ、電子輸送層を流れる電子が界面欠陥でトラップされる確率を減らすことができる。この結果、高効率で電子を取り出すことが可能になる。また、無機コア粒子、電子輸送層及び光吸収層の電子バンド構造から、光励起電子が光吸収層から電子輸送層に移動し易くなっている。さらに、窒化チタン層(電子輸送層)の結晶格子定数と有機無機ハイブリッドペロブスカイト結晶構造を有する化合物、又は金属錯体などの格子定数とのマッチングがよく、良質な結晶成長及び結晶化界面が得られることから、界面での光励起キャリアの再結合抑止の効果が得られる。
【0011】
前記有機無機ハイブリッドペロブスカイト結晶構造は、一般式:ABX3(この一般式においてAは有機カチオンを表し、Bは金属イオンを表し、Xはハロゲンイオンを表す)で表される結晶構造であることが好ましい。また、前記有機無機ハイブリッドペロブスカイト結晶構造を有する化合物は、一般式:CH3NH3PbX3(この一般式においてXはハロゲンイオンを表す)で表される化合物であることが好ましい。また、前記金属錯体は、チタニルフタロシアニンであることが好ましい。
【0012】
本発明は、第1電極と、第1電極上に設けられた第1電荷分離層と、第1電荷分離層上に設けられた第2電極とを備え、第1電荷分離層は、第1ホール輸送層と、本発明の複数のハイブリッド粒子とを含み、複数のハイブリッド粒子は、第1ホール輸送層で覆われている光電変換素子も提供する。
本発明の光電変換素子に光照射すると、ハイブリッド粒子の光吸収層が光を吸収し電子が光励起されホールが生成する。光励起された電子はハイブリッド粒子の電子輸送層を伝導し第1電極へと流れる。光吸収層で生成したホールはホール輸送層を介して第2電極へと流れる。このため、光励起キャリアを空間的に分離することができ、光励起キャリアの再結合を抑制することができる。また、本発明の光電変換素子に含まれるハイブリッド粒子では界面の結合欠陥や空隙が少ないため、光励起キャリアが再結合することを抑制することができる。さらに本発明の光電変換素子では、ハイブリッド粒子の表面に光吸収層を設けているため、光吸収層が凹凸形状を有する。このため、光電変換素子に入射した光が反射することを抑制することができる。これらの再結合抑制効果及び反射抑制効果により光電変換素子の光電変換効率を向上させることができる。
【0013】
本発明は、第3電極と、第3電極上に設けられた第2電荷分離層とを備え、第2電荷分離層は、第2ホール輸送層と、本発明の複数のハイブリッド粒子とを含み、複数のハイブリッド粒子は、第2ホール輸送層で覆われている感光体も提供する。本発明の感光体は、電子とホールの再結合を抑制することができる本発明のハイブリッド粒子を含むため、画像形成装置の画質を改善することが可能である。
本発明は、本発明の感光体を備える画像形成装置も提供する。
【0014】
以下、複数の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0015】
第1実施形態
図1は本実施形態のハイブリッド粒子の概略断面図である。
本実施形態のハイブリッド粒子5は、無機コア粒子2と、無機コア粒子2の表面を覆う電子輸送層3と、電子輸送層3を覆う光吸収層4とを備え、光吸収層4は、有機無機ハイブリッドペロブスカイト結晶構造を有する化合物、又は金属錯体を含み、前記化合物又は前記金属錯体は電子輸送層3の表面上に結晶成長していることを特徴とする。
【0016】
ハイブリッド粒子5は、異なる材料が組み合わされた粒子である。ハイブリッド粒子5の粒径は、例えば、10nm以上100μm以下であり、好ましくは50nm以上10μm以下である。
無機コア粒子2は、無機材料からなる粒子であり、ハイブリッド粒子5の基材となる粒子である。無機コア粒子2の粒径は、例えば、10nm以上100μm以下であり、好ましくは50nm以上10μm以下である。無機コア粒子2は、例えば、酸化チタン粒子(TiO2粒子)である。酸化チタン粒子はルチル型であってもよく、アナターゼ型であってもよい。酸化チタン粒子の粒径は、例えば、100nm~200nmとすることができる。
【0017】
電子輸送層3は、無機コア粒子5の表面を覆う層であり、光吸収層4において光励起された電子を輸送する層である。電子輸送層3は、導体層であることが好ましい。また、電子輸送層3の材料の電気抵抗率は、10-3Ωcm以下であることが好ましい。また、電子輸送層3の材料は、金属であってもよく、TiN(NaCl構造)、TiB2、TiCなどの金属結合性物質であってもよい。このことにより、光吸収層4において光励起された電子を速やかに輸送することができ、光励起された電子とホールとが再結合することを抑制することができる。電子輸送層3の膜厚は、例えば5nm以上1μm以下とすることができる。また、電子輸送層3の材料は、NaCl型結晶構造を有することが好ましい。
【0018】
無機コア粒子2が酸化チタン粒子であることが好ましく、電子輸送層3は窒化チタン層(TiN層又はTiNx層、0.8<x<1.16)であることが好ましい。例えば、酸化チタン粉末(無機コア粒子2)を窒素プラズマによる表面改質処理することで、酸化チタン粒子の表面に窒化チタン層(膜厚:5~30nm)を形成することができる。窒化チタン層の形成方法として、特許文献3(特開2004-261747号公報)が挙げられる。TiO2(ルチル構造)とTiN(NaCl構造、格子定数a:約0.424nm)の格子定数の整合性が比較的よく、TiO2で構成される無機コア粒子2とTiNで構成される電子輸送層3で欠陥の少ない良好な界面が得られる。前記界面付近で、混晶物質TiO2-xxが形成されることで、格子定数が連続的に変化し、界面欠陥の発生を抑止することができる。また、無機コア粒子2の表面と電子輸送層3との接合性を向上させることができ、ハイブリッド粒子5の構造安定性を向上させることができる。
【0019】
光吸収層4は、光を吸収して光励起キャリア(電子とホール)が発生する層である。また、光吸収層4は、電子輸送層3を覆い、電子輸送層3と接触するように設けられる。このため、光吸収層4で発生した電子は、電子輸送層3へと移動することができ、光吸収層4で発生した電子とホールとを分離することができる。光吸収層4の厚さは、例えば、20nm以上1μm以下とすることができる。
【0020】
光吸収層4は、有機無機ハイブリッドペロブスカイト結晶構造を有する化合物(以下、ペロブスカイト構造化合物ともいう)を含む。光吸収層4は、1.1eV以上1.7eV以下のバンドギャップを有するペロブスカイト構造化合物を含んでもよい。
前記有機無機ハイブリッドペロブスカイト結晶構造は、一般式:ABX3(この一般式においてAは有機カチオンを表し、Bは金属イオンを表し、Xはハロゲンイオンを表す)で表される結晶構造である。ペロブスカイト構造化合物は、立方晶系又は正方晶系のペロブスカイト結晶構造を有することが好ましい。
光吸収層4に使用可能なペロブスカイト構造化合物は、正方晶系の基本単位格子を有している。この単位格子は、各頂点に配置された有機カチオン(有機分子)Aと、体心に配置された金属イオンBと、各面心に配置されたハロゲンイオンXとを備えており、一般式ABX3によって表される。
【0021】
一般式ABX3において、有機カチオンA(有機分子アルキルアミン)の具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、ヘキシルメチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、イミダゾール、アゾール、ピロール、アジリジン、アジリン、アゼチジン、アゼト、アゾール、イミダゾリン、カルバゾールおよびこれらのイオン(例えば、メチルアンモニウム(CH3NH3)等)やフェネチルアンモニウム等が挙げられる。これらの有機カチオンは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
これらのうち、有機カチオンAとして、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミンおよびこれらのイオンやフェネチルアンモニウムが好ましく、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンおよびこれらのイオン(例えば、メチルアンモニウム(CH3NH3)等)が特に好ましい。
【0022】
一般式ABX3において、金属イオンBの具体例としては、鉛、スズ、亜鉛、チタン、アンチモン、ビスマス、ニッケル、鉄、コバルト、銀、銅、ガリウム、ゲルマニウム、マグネシウム、カルシウム、インジウム、アルミニウム、マンガン、クロム、モリブデン、ユーロピウム等が挙げられる。これらの元素は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中でも、金属イオンBは鉛であることにより、光吸収層4の特性がより良好になる。
【0023】
一般式ABX3において、ハロゲンイオンXの具体例としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。これらの元素は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中でも、エネルギーバンドギャップが狭くなることから、ハロゲンイオンXの少なくとも1つがヨウ素であることが好ましい。
本実施形態に係るハイブリッド粒子5においては、ペロブスカイト構造化合物がCH3NH3PbX3(ただし、Xはハロゲンイオンである)で表される化合物であることが好ましく、該式CH3NH3PbX3において、Xはヨウ素原子である化合物(すなわち、CH3NH3PbI3(格子定数a:0.424nm)で示される化合物)であることがより好ましい。これにより、光吸収層4において、電子とホールとをより高効率で発生させることが可能となる。その結果、より高い光電変換効率を有する光電変換素子や感光体を得ることが可能となる。
【0024】
光吸収層4は、ペロブスカイト構造化合物が電子輸送層3の表面上に結晶成長するように設けられる。また、光吸収層4は、電子輸送層3の表面上にペロブスカイト構造化合物をエピタキシャル成長させることにより形成される(ヘテロエピタキシー)。つまり、電子輸送層3と光吸収層4は、電子輸送層3の表面上にペロブスカイト構造化合物がエピタキシャル成長するような結晶格子関係を有する必要がある。
【0025】
ペロブスカイト構造化合物が電子輸送層3の表面上に結晶成長することにより、電子輸送層3と光吸収層4との界面において結合欠陥や空隙を少なくすることができ、光吸収層4において光励起された電子が速やかに電子輸送層3へと移動することができる。この結果、光励起キャリアを速やかに電子とホールに分離することができ、光励起キャリアが再結合することを抑制することができる。
【0026】
図2は、TiN層11(電子輸送層3)の表面上へのCH3NH3PbI3(光吸収層4)の結晶成長の説明図である。また、表1に各種材料の格子定数などを示す。
TiNはNaCl型結晶構造を有し、CH3NH3PbI3が正方晶系のペロブスカイト結晶構造を有するため、TiNとCH3NH3PbI3は同じ4回対称の結晶構造である。また、CH3NH3PbI3の正方晶の格子定数aが0.88nmであり、TiNの格子定数aが0.424nmであるため、CH3NH3PbI3の正方晶の格子定数aがTiNの格子定数aの約2倍に対応し、結晶格子不整合を約7%に抑えることができる。このため、TiNとCH3NH3PbI3は、TiN層11(電子輸送層3)の表面上にCH3NH3PbI3(ペロブスカイト構造化合物、光吸収層4)がエピタキシャル成長するような結晶格子関係を有する。従って、電子輸送層3と光吸収層4との間に欠陥の少ない良好な界面を形成できる。例えば、図2に示したような配向性で、CH3NH3PbI3はTiN層11の表面上に結晶成長する。
【0027】
【表1】
【0028】
図3に、本実施形態のハイブリッド粒子5のエネルギーバンド図を示す。また、表2に各種材料の仕事関数、バンドギャップEg、伝導帯のエネルギー準位Ec、価電子帯のエネルギー準位Evなどを示す。
TiO2粒子(無機コア粒子2)とTiN層11(電子輸送層3)との間の界面及びTiN層11(電子輸送層3)とCH3NH3PbI3(光吸収層4)との間の界面の各界面は欠陥が少ないため、光吸収層4に光が入射したときに生成される電子とホールが、界面欠陥でトラップされる確率が減り、高効率で電子とホールを取り出すことが可能になる。また、図3で示すように、無機コア粒子2と光吸収層4の間に挟まれた電子輸送層3は電子の量子井戸構造になっており、光吸収層4で生成された電子は、電子輸送層3に蓄積される構造になっている。
【0029】
【表2】
【0030】
光吸収層4として使用できるペロブスカイト構造化合物は、AXで示される化合物(Aは有機カチオンを表しXはハロゲンイオンを表す)とBX2で示される化合物(Bは金属イオンを表しXはハロゲンイオンを表す)を原料として用いることによって合成できる。
具体的には、ペロブスカイト構造化合物は、AX溶液とBX2溶液を混合して加熱撹拌することによって合成することができる(1段階法)。また、ペロブスカイト構造化合物は、BX2溶液を例えばTiN層11(電子輸送層3)で被覆されたTiO2粒子(無機コア粒子2)に塗布して電子輸送層3上に塗布膜を形成し、該塗布膜上にAX溶液を塗布し、BX2とAXを反応させることで合成することができる(2段階法)。1段階法及び2段階法のいずれの方法も光吸収層4の形成に利用できる。塗布方法としては、特に限定されないが、スクリーン印刷法、浸漬塗布法等が挙げられる。このような方法により、電子輸送層3上に膜厚100nm~200nmの光吸収層4を形成することができる。
無機コア粒子2が粒径100nm~200nmのTiO2粒子であり、電子輸送層3が膜厚5nm~30nmのTiN層11であり、光吸収層4が膜厚100nm~200nmのペロブスカイト構造化合物層である場合、ハイブリッド粒子5の粒径は300nm~600nmとなる。
【0031】
第2実施形態
第1実施形態のハイブリッド粒子5では、光吸収層4がペロブスカイト構造化合物を含んでいたが、第2実施形態のハイブリッド粒子5では、光吸収層4はペロブスカイト構造化合物の代わりに色素である金属錯体を含む。その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0032】
金属錯体は、分子の中心に配置された金属又は金属イオンと、金属又は金属イオンを取り囲む配位子とを含む。金属錯体は、HOMO(最高被占軌道)、LUMO(最低空軌道)を有する。金属錯体では、HOMOとLUMOとの間のエネルギーギャップ(HOMOのエネルギー準位とLUMOのエネルギー準位との差)よりも大きいエネルギーの光を吸収することにより、電子の入っている軌道から空の軌道へと電子が移動(遷移)し光励起キャリア(電子とホール)が発生する。光励起された電子は電子輸送層3へと移動する。このことにより、金属錯体が光を吸収することにより発生した電子とホールとを分離することができ、電子とホールとが再結合することを抑制することができる。
光吸収層4は、HOMOとLUMOとの間のエネルギーギャップが1.1eV以上2.0eV以下である金属錯体を含むことができる。また、光吸収層4に含まれる金属錯体は、例えば、チタニルフタロシアニン(TiOPc)である。
【0033】
光吸収層4は、金属錯体が電子輸送層3の表面上に結晶成長するように設けられる。また、光吸収層4は、電子輸送層3の表面上に金属錯体をエピタキシャル成長させることにより形成される(ヘテロエピタキシー)。つまり、電子輸送層3と光吸収層4は、電子輸送層3の表面上に金属錯体がエピタキシャル成長するような結晶格子関係を有する。
【0034】
金属錯体が電子輸送層3の表面上に結晶成長することにより、電子輸送層3と光吸収層4との界面において結合欠陥や空隙を少なくすることができ、光吸収層4において光励起された電子が速やかに電子輸送層3へと移動することができる。この結果、光励起キャリアを速やかに電子とホールに分離することができ、光励起キャリアが再結合することを抑制することができる。
【0035】
光吸収層4に含まれる金属錯体がチタニルフタロシアニンである場合、電子輸送層3の表面に光吸収層4として、チタニルフタロシアニン結晶を形成する。電子輸送層3上にチタニルフタロシアニン結晶を膜厚100~200nmで形成することができ、この場合、ハイブリッド粒子5の粒径は、300~600nmのサイズとなる(表1参照)。
【0036】
図4図6に、電子輸送層3であるTiN層11の表面上でのY型チタニルフタロシアニン結晶の結晶成長の配向性の模式図を示す。図4に示したTiN層11上でのY型チタニルフタロシアニン結晶の基本単位格子のように、光吸収層4であるY型チタニルフタロシアニン結晶は、約正方晶系の基本単位格子(表1参照)を有している。約正方晶の底面の一辺(a=1.35nm、b=1.39nm)が、電子輸送層3であるTiNの格子定数の√5倍に対応しており、1~4%の格子不整合より、格子整合が取れているところから、TiN表面上にチタニルフタロシアニンが結晶成長することができ、TiN層11とY型チタニルフタロシアニン結晶との間の界面に欠陥が形成されることを抑制できる。
図5は、TiN層11の面直上からのY型チタニルフタロシアニン結晶の結晶成長配向性を示しており、TiN層11及びY型チタニルフタロシアニン結晶の横側からの視点における結晶配向性を示したものが図6となっている。
【0037】
電子輸送層3表面に光吸収層4であるチタニルフタロシアニン結晶を形成する方法としては、特許文献2(特開2008-174677号公報)が挙げられる。
形成方法として、o-フタロジニトリルをトリエチレングリコールモノメチルエーテルに分散し、チタニウムテトラブトキシドとO-メチルイソ尿素1/2硫酸塩を加えて145~155℃で5時間加熱する。放冷後、析出した結晶を濾過、乾燥の後、粗チタニルフタロシアニンを得る。この粗チタニルフタロシアニンを濃硫酸中で、電子輸送層3を有する無機コア粒子2を混入し1時間攪拌し、5℃以下の冷水中へ、5℃以下を保ちながら30分かけて滴下(アシッドペースト処理)し、析出した結晶を濾過し、水で十分に洗ってウェットケーキを得る。上記で得たウェットケーキにテトラヒドロフランを加え、10℃以下で2時間攪拌する。そこへ、水を加え、室温で30分間攪拌し、一晩放置する。上澄み液を除き、水を加え、室温で30分間攪拌し、濾過する。得られたウェットケーキを冷凍庫で凍結し、その後、室温に戻してから濾過する。得られた結晶を100℃で8時間乾燥し、電子輸送層3上にY型チタニルフタロシアニン結晶を成長する。
尚、電子輸送層3に用いられているTiNは、耐硫酸性が強く、濃硫酸中でのチタニルフタロシアニン結晶成長に適している。
【0038】
図7図8に、電子輸送層3であるTiN層11の表面上でのPhase II型チタニルフタロシアニン結晶の結晶成長の配向性の模式図を示す。上述のY型チタニルフタロシアニン結晶での作成方法で、水の添加量を変えるとPhase II型チタニルフタロシアニン結晶が得られ、水分量の違いよりチタニルフタロシアニン結晶は斜方晶結晶となる(表1参照)。斜方晶の底面の一辺(b=1.26nm)が、TiN層11のTiNの格子定数の3倍に対応しており、1%の格子不整合より、格子整合が取れているところからTiN表面上にPhase II型チタニルフタロシアニンが結晶成長することができ、TiN層11とPhase II型チタニルフタロシアニン結晶との間の界面に欠陥が形成されることを抑制できる。
図8は、TiN層11の面直上からのPhase II型チタニルフタロシアニン結晶の結晶成長配向性を示している。
【0039】
光吸収層4が上述のY型、Phase II型チタニルフタロシアニン結晶であるハイブリッド粒子5は、電子構造的にも、図3に示した第1実施形態のハイブリッド粒子5のエネルギーバンド構造と類似のエネルギーバンド構造を取る。すなわち、図3で示すように、無機コア粒子2と光吸収層4の間に挟まれた電子輸送層3は電子の量子井戸構造になっており、光吸収層4で生成された電子は、電子輸送層3に蓄積される構造になっている。
その他の構成は第1実施形態と同様である。また、第1実施形態についての記載は矛盾がない限り第2実施形態についても当てはまる。
【0040】
第3実施形態
第1及び第2実施形態ではハイブリッド粒子5について説明したが、第3実施形態では、第1又は第2実施形態のハイブリッド粒子5を含む光電変換素子について説明する。図9図11図12(a)~(c)はそれぞれ本実施形態の光電変換素子の断面図であり、図10図13図14図15は、それぞれ本実施形態の光電変換素子のエネルギーバンド図である。
本実施形態の光電変換素子15は、第1電極8と、第1電極8上に設けられた電荷分離層6と、電荷分離層6上に設けられた第2電極9とを備え、電荷分離層6は、ホール輸送層7と、第1又は第2実施形態の複数のハイブリッド粒子5とを含み、複数のハイブリッド粒子5は、ホール輸送層7で覆われていることを特徴とする。
【0041】
光電変換素子15は、光を電気エネルギーに変換する素子であり、光吸収層4が光を吸収することにより発生させた電子が第1電極8に移動し、光吸収層4が光を吸収することにより発生させたホールが第2電極9に移動することにより第1電極8と第2電極9との間に起電力が生じる素子である。
【0042】
第1電極8は、電荷分離層6から電子が流入する電極(陰極)である。第1電極8は、受光面側の電極であってもよく、裏面側の電極であってもよい。第1電極8が受光面側の電極である場合、第1電極8はくし型電極、透明電極などとすることができる。図9図11などに示した光電変換素子15では、第1電極8は、裏面側の電極となっている。
第1電極8が裏面側の電極である場合、第1電極8は光電変換素子15の基体となる電極とすることができる。この場合、第1電極8は、平板状もしくは略円筒形状であり、例えば、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、鉄、錫、チタン、金、銀、銅、タングステン、あるいはこれらの合金、ステンレスなどの金属等の材料からなることが望ましい。
【0043】
第1電極8は、基体となる金属板と、金属板上に積層された導電層とが積層された積層電極であってもよい。導電層は、例えば、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)等の導電性透明材料、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、マグネシウム-銀混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-リチウム合金、アルミニウム-酸化アルミニウム(Al/Al23)混合物、アルミニウム-フッ化リチウム(Al/LiF)混合物等の陰極材料により形成される。これらの材料は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。導電層の膜厚は特に限定されず、200nm以下であることが好ましい。導電層は基体の表面膜(電荷分離層側)であってもよい。
また、第1電極8の表面(電荷分離層側)の仕事関数が、真空準位を0eVにしたときに、-4.6eVよりも大きい(準位が浅い)ことが望ましい。
【0044】
光電変換素子15は、第1電極8上に設けられた電荷分離層6を備える。電荷分離層6は、第1又は第2実施形態のハイブリッド粒子5とホール輸送層7とを含む。ハイブリッド粒子5については、第1又は第2実施形態において説明したため、第1又は第2実施形態と同様の説明についてはここでは省略する。
電荷分離層6は、ハイブリッド粒子5の光吸収層4が光を吸収することにより発生した光励起キャリアを電子とホールとに分離する層である。光吸収層4で光励起された電子はハイブリッド粒子5の電子輸送層3を介して第1電極8へと流れ、光吸収層4で発生したホールはホール輸送層7を介して第2電極9へと流れる。
【0045】
電荷分離層6は、多数のハイブリッド粒子5を含む多孔質層を含むことができる。また、この多孔質層は、第1電極8に接触するように設けることができる。このことにより、光吸収層4で光励起された電子が第1電極8へ移動することができる。
【0046】
ホール輸送層7は、光吸収層4が光を吸収することにより生じたホールを捉えて、このホールを陽極である第2電極9に輸送する層である。ホール輸送層7は、ハイブリッド粒子5の光吸収層4と接触するように設けることができる。また、ホール輸送層7は、ハイブリッド粒子5を含む多孔質層の細孔内に設けることができる。このことにより、光吸収層4で生じたホールがホール輸送層7へと移動することができる。また、ホール輸送層7は、第2電極9と接触するように設けることができる。このことにより、ホール輸送層7のホールが第2電極9へ移動することができる。
【0047】
ホール輸送層7はホール輸送材料を主材料として構成される。具体的には、ホール輸送層7は、ホール輸送材料を70wt%以上含有することが好ましく、85~100wt%含有することがより好ましい。ホール輸送層7は、有機バインダ樹脂や可塑剤等を含むことなく、このホール輸送材料単独で構成されてもよい。
【0048】
ホール輸送層7に含まれるホール輸送材料は、融点が120℃以上170℃以下である材料であってもよい。ホール輸送材料の融点が120℃未満の場合には、光電変換素子15の使用中にホール輸送材料が溶融し光電変換素子15が使用不能になる可能性がある。また、ホール輸送材料の融点が170℃を超える場合には、溶融したホール輸送材料を多数のハイブリッド粒子5を含む多孔質層の細孔内に充填する際に光吸収層4の結晶が壊れてしまい光電変換素子15の光電変換特性が悪化するおそれがある。
【0049】
ホール輸送材料としては、融点170℃以下の材料が用いられ、具体的にはピラゾリン化合物、アリールアミン化合物、スチルベン化合物、エナミン化合物、ポリピロール化合物、ポリビニルカルバゾール化合物、ポリシラン化合物、ブタジエン化合物、側鎖または主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン化合物、ポリアニリン化合物、ポリフェニレンビニレン化合物、ポリチエニネンビニレン化合物、ポリチオフェン化合物などを用いることができるが、特にブタジエン化合物、ビスブタジエン化合物が好ましい。このようなホール輸送材料を用いることで、高い光電変換効率を有する光電変換素子15を得ることができる。
【0050】
ホール輸送材料は、結晶化を起こし難い化合物であることが好ましいが、ホール輸送材料の結晶化を確実に防止するためにホール輸送層7に有機バインダ樹脂又は可塑剤等を含ませた構成としてもよい。ただし、有機バインダ樹脂や可塑剤等の添加量は、ホール輸送層7のホール輸送能が極端に低下しないように少量に設定される。
【0051】
電荷分離層6の膜厚(ホール輸送層7の膜厚)(第1電極8の表面からの膜厚)は、1~2μm程度であることが好ましく、より好ましくは1μm程度である。このような膜厚のホール輸送層7であれば、光吸収層4で発生したホールを円滑かつ高効率で陽極である第2電極9に移動させることができる。このホール輸送層7は透明性が必要であり非晶質層であることが好ましい。ホール輸送層7は、高い電荷輸送能を得るために、リチウム(トリフルオロメタンスルホン)イミド(LiTFSI)などのイオン導電剤を含んでもよい。
【0052】
光電変換素子15は、電荷分離層6上に設けられた第2電極9を備える。第2電極9は、電荷分離層6からホールが流入する電極(陽極)である。第2電極9は、受光面側の電極であってもよく、裏面側の電極であってもよい。図9図11などに示した光電変換素子15では、第2電極9は受光面側の電極となっている。
第2電極9が受光面側の電極である場合、第2電極9はくし型電極、透明電極などとすることができる。第2電極9は、電荷分離層6のホール輸送層7と接触するように設けることができる。このことにより、ハイブリッド粒子5の光吸収層4で生じたホールをホール輸送層7を介して陽極である第2電極9に移動させることができる。
【0053】
第2電極9に使用可能な陽極材料は特に限定されず、例えば、金、銀、白金等の金属、ヨウ化銅(CuI)、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(SnO2)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)等の導電性透明材料、銀ナノワイヤー、カーボンナノファイバーなど導電性微粒子、PEDOT/PSSなどの導電性ポリマー等を好適に用いることができる。これらの材料は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。特に第2電極9の仕事関数が、真空準位を0eVにしたときに、-4.6eVよりも小さい(準位が深い)ことが望ましい。これにより、ハイブリッド粒子5の光吸収層4で生じたホールを効率よく第2電極9に移動させることができる。また、第2電極9が受光面側の電極である場合、第2電極9は透明電極あるいは半透明電極であることが好ましい。
【0054】
光電変換素子15は、第2電極9上に設けられた保護層10を有することができる。保護層10は、第2電極9を形成した樹脂板、ラップフィルム等のガスバリア性の高い材料、又はガラスとすることができ、空気中の水分や酸素などによる光電変換素子15内部の劣化を防止することができる。光電変換素子15が保護層10を有することにより、光電変換素子15を設置等する際には、光電変換素子15の外面を衝撃や傷から保護することができる。また、保護層10は光透過性を有することができる。
保護層10の材料が樹脂の場合には、保護層10はホール輸送材料の融点より高い耐熱性が必要であり170℃程度までの耐熱性は必要である。保護層10は、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミドイミド(PAI)、シリコーンなどが挙げられるが、要件を満たす限りこれ以外の樹脂も使用できる。
【0055】
光電変換素子15は、次のように形成することができる。スクリーン印刷法、浸漬塗布法等の塗布方法を用いて第1電極8(基体)上にハイブリッド粒子5を塗布することにより塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥させる。このことにより、第1電極8上にハイブリッド粒子5を主成分とする多孔質層を形成することができ、ハイブリッド粒子5の光吸収層4で光励起された電子を電子輸送層3を介して効率よく陰極である第1電極8に取り出すことができる。
【0056】
次に、多孔質層上及び多孔質層の細孔内(ハイブリッド粒子5の光吸収層4上)にホール輸送層7を形成する。ホール輸送層7以降の形成方法については、材料や製造方法に特に制限はなく、以下に複数の形成方法について説明する。
第1の方法:保護層10上に第2電極9を形成した後、ホール輸送材料の粉末を第2電極9上に散布し、このホール輸送材料を融点まで加熱しキャスト用の溶融膜とする。第1電極8(基体)及びその上に形成したハイブリッド粒子5の多孔質層を予め加熱しておき、ホール輸送材料の溶融膜がハイブリッド粒子5の多孔質層に押し付けられるように第1電極8と保護層10とを重ね合わせて圧着する。そしてこの積層体を徐々に冷却する。このことにより、ホール輸送層7をハイブリッド粒子5の多孔質層の細孔内に設けることができ、ハイブリッド粒子5の表面の光吸収層4とホール輸送層7とが接触する面積を広くすることができる。なお、多孔質層を構成するハイブリッド粒子5は、ホール輸送材料の溶融膜を多孔質層に押し付けた際にホール輸送層7中に分散する場合がある。
【0057】
第2の方法:保護層10上に第2電極9を形成した後、ホール輸送材料を溶媒に溶解させた溶液を第2電極9上に塗布し乾燥させてホール輸送材料の膜を形成し、この膜をホール輸送材料の融点まで加熱しキャスト用の溶融膜とする。第1電極8(基体)及びその上に形成したハイブリッド粒子5の多孔質層を予め加熱しておき、ホール輸送材料の溶融膜がハイブリッド粒子5の多孔質層に押し付けられるように第1電極8と保護層10とを重ね合わせて圧着する。そしてこの積層体を徐々に冷却する。
【0058】
第3の方法:第1電極8(基体)上に形成したハイブリッド粒子5の多孔質層上にホール輸送材料の粉末を散布し、このホール輸送材料を融点まで加熱しキャスト用の溶融膜とする。保護層10及びその上に形成した第2電極9を予め加熱しておき、第2電極9がホール輸送材料の溶融膜に押し付けられるように第1電極8と保護層10とを重ね合わせて圧着する。そしてこの積層体を徐々に冷却する。
【0059】
第4の方法:第1電極8(基体)上に形成したハイブリッド粒子5の多孔質層上にホール輸送材料を溶媒に溶解させた溶液を塗布し乾燥させてホール輸送材料の膜を形成し、この膜をホール輸送材料の融点まで加熱しキャスト用の溶融膜とする。保護層10及びその上に形成した第2電極9を予め加熱しておき、第2電極9がホール輸送材料の溶融膜に押し付けられるように第1電極8と保護層10とを重ね合わせて圧着する。そしてこの積層体を徐々に冷却する。
【0060】
ハイブリッド粒子5の多孔質層上にホール輸送材料の溶液を塗布する場合の有機溶媒は、光吸収層4(ペロブスカイト構造化合物又は金属錯体)の結晶構造を乱さない溶剤であることが好ましい。具体的には、クロロベンゼンやトルエン等が好適である。また、塗布方法は特に限定されないが、例えば、浸漬塗布法、スプレー塗布法、スライドホッパー塗布法等が好ましい。
以上の製造方法により光電変換素子15が完成する。
【0061】
以下に、光電変換素子15の動作原理について説明する。
図9に示したように、保護層10より光が入射し、ハイブリッド粒子5に光が照射されると、ハイブリッド粒子5中の光吸収層4で電子とホールが生成される。光吸収層4で生成された電子は、無機コア粒子2と光吸収層4の間に挟まれた電子輸送層3に沿って輸送され、第1電極8側の光吸収層4を伝導し又はトンネル効果で通り抜けて、第1電極8に電子が輸送される。光吸収層4で生成されたホールは、ホール輸送層7を介して、第2電極9に取り出され、電荷分離が行われている。図10は、前述の一連の光励起キャリアの輸送機構を、ハイブリッド粒子5を用いた光電変換素子15のエネルギーバンド中の光励起キャリアの流れとして示したものである。
【0062】
図11は、ハイブリッド粒子5の多孔質層を形成した後、この多孔質層にホール輸送材料の溶融膜を押し付ける方法により形成した光電変換素子15の概略断面図である。電荷分離層6に含まれるハイブリッド粒子5は、凝集している粒子もあれば、ホール輸送層7中に分散している粒子もある。
図12(a)~(b)は、このような光電変換素子15の特徴的な光励起キャリアの流れを分類して代表的なケースを例示している。図12(a)は複数のハイブリッド粒子5が連結しており、ハイブリッド粒子5が第1電極8に接しているケースであり、図12(b)は複数のハイブリッド粒子5が連結しており、ハイブリッド粒子5が第1電極8に接していないケースであり、図12(c)はハイブリッド粒子5が連結しておらず且つハイブリッド粒子5が第1電極8に接していないケースである。
【0063】
図13は、図12(a)に例示したケースにおける、光電変換素子15のエネルギーバンド中のキャリア発生と各キャリアの流れを示している。このケースでは、ハイブリッド粒子5aの光吸収層4aで発生した電子は、ハイブリッド粒子5aの電子輸送層3aを流れ、光吸収層4a、4bを伝導し又はトンネル効果で通り抜けてハイブリッド粒子5bの電子輸送層3bへ流れる。電子輸送層3bの電子は、光吸収層4b、4cを伝導し又はトンネル効果で通り抜けてハイブリッド粒子5cの電子輸送層3cへと流れ、電子輸送層3cの電子は、光吸収層4cを伝導し又はトンネル効果で通り抜けて第1電極8へと流れる。一方、ハイブリッド粒子5aの光吸収層4aで発生したホールは、ホール輸送層7へと移動し、第2電極9へと流れる。このように、電子とホールとを分離することができ、第1電極8と第2電極9との間に光起電力を生じさせることができる。
【0064】
図14は、図12(b)に例示したケースにおける、光電変換素子15のエネルギーバンド中のキャリア発生と各キャリアの流れを示している。このケースでは、ハイブリッド粒子5dの光吸収層4dで発生した電子は、ハイブリッド粒子5dの電子輸送層3dを流れ、光吸収層4d、4eを伝導し又はトンネル効果で通り抜けてハイブリッド粒子5eの電子輸送層3eへ流れる。電子輸送層3eの電子は、光吸収層4e及びホール輸送層7を伝導し又はトンネル効果で通り抜けて第1電極8へと流れる。一方、ハイブリッド粒子5dの光吸収層4dで発生したホールは、ホール輸送層7へと移動し、第2電極9へと流れる。このように、電子とホールとを分離することができ、第1電極8と第2電極9との間に光起電力を生じさせることができる。
【0065】
図15は、図12(c)に例示したケースにおける、光電変換素子15のエネルギーバンド中のキャリア発生と各キャリアの流れを示している。このケースでは、ハイブリッド粒子5fの光吸収層4fで発生した電子は、ハイブリッド粒子5fの電子輸送層3fを流れ、光吸収層4f、ホール輸送層7及び光吸収層4gを伝導し又はトンネル効果で通り抜けてハイブリッド粒子5gの電子輸送層3gへ流れる。電子輸送層3gの電子は、光吸収層4g及びホール輸送層7を伝導し又はトンネル効果で通り抜けて第1電極8へと流れる。一方、ハイブリッド粒子5fの光吸収層4fで発生したホールは、ホール輸送層7へと移動し、第2電極9へと流れる。このように、電子とホールとを分離することができ、第1電極8と第2電極9との間に光起電力を生じさせることができる。
第1及び第2実施形態におけるハイブリッド粒子5についての記載は、第3実施形態の光電変換素子15に含まれるハイブリッド粒子5についても当てはまる。
【0066】
第4実施形態
第1及び第2実施形態ではハイブリッド粒子5について説明したが、第4実施形態では、第1又は第2実施形態のハイブリッド粒子5を含む感光体について説明する。
図16図17はそれぞれ本実施形態の感光体の概略断面図である。
本実施形態の感光体20は、第1電極8と、第1電極8上に設けられた電荷分離層6とを備え、電荷分離層6は、ホール輸送層7と、第1又は第2実施形態の複数のハイブリッド粒子5とを含み、複数のハイブリッド粒子5は、ホール輸送層7で覆われている。この高効率感光体を複写機の感光体ドラムに用いることで、複写機の画質を改善することができる。
感光体20は、図16に示したように円筒形状を有することができ、第1電極8が内側に配置され、電荷分離層6が外側に配置される。感光体20の外周面はホール輸送層7となる。図17は、感光体20の拡大断面図である。
【0067】
感光体20は、画像形成装置の主要部品の1つであり、画像情報を有する光を受光して静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させることによりトナー像を形成する部品である。本実施形態の感光体20は、第3実施形態の光電変換素子15と類似の構造を有するが、図16又は図17に示したように、第2電極9及び保護層10は備えていない。
本実施形態の感光体20では、感光体20に光を照射する前にホール輸送層7の表面をマイナスに帯電させておき、ハイブリッド粒子5の光吸収層4が光を吸収することにより生じたホールがホール輸送層7に移動してホール輸送層7の表面の電子と結合する。したがって、ホール輸送層7の表面のうち、光を照射した部分の電子がホールとの結合により消滅し、光を照射していない部分の電子だけが残りホール輸送層7の表面に静電潜像が形成される。
【0068】
第1及び第2実施形態におけるハイブリッド粒子5についての説明は、本実施形態の感光体20に含まれるハイブリッド粒子5について当てはまる。また、第3実施形態における第1電極8、電荷分離層6及びホール輸送層7についての説明は、矛盾がない限り本実施形態の感光体20に含まれる第1電極8、電荷分離層6及びホール輸送層7について当てはまる。
【0069】
本実施形態の感光体20では、電荷分離層6の膜厚(ホール輸送層7の膜厚)は、10~50μmが望ましい。また、感光体20では、ホール輸送層7の耐刷性を改善するため、ホール輸送層7は、第3実施形態で説明したホール輸送材料に加え、これら電荷輸送材料の成膜性のある樹脂および、フィラー材料、有機溶剤を含むことができる。
【0070】
ホール輸送層7に含まれるホール輸送材料としては、当該分野で用いられる化合物も使用できる。具体的には、カルバゾール誘電体、イミダゾール誘電体、オキサゾール誘電体、チアジアゾール誘電体、多環芳香族系化合物、アニリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、芳香族アミン系化合物、トリフェニルアミン系化合物及びその2量体、トリフェニルメタン系化合物、テトラフェニルブタジエン系化合物、エナミン系化合物およびスチルベンゼン系化合物、ならびにこれらの化合物から生じる基を主鎖または側鎖に有するポリ―N-ビニルカルバゾール等の重合体等のホール輸送材料、及び、フルオレン誘電体、ジベンゾチオフェン誘電体、インデノ地オフェン誘電体、フェナンスレンキノン誘電体、インデノピリジン誘電体、チオキサントン誘電体、ベンゾ[c]シンノリン誘電体、フェナジンオキサイド誘電体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどのホール輸送材料が挙げられる。これらのホール輸送材料は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0071】
成膜性のある樹脂としては、ホール輸送層7の機械的強度や耐久性、層間の結着性などを向上させることが出来、当該分野で用いられている結着性を有する樹脂を使用できる。 具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリアミド、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル、ポリアクリルアミド、ポリフェニレンオキサイドなどの熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールなどの熱硬化樹脂、これらの樹脂の部分架橋物、これらの樹脂に含まれる構成単位のうちの2つ以上を含む共重合樹脂(塩化ビニル―酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル―酢酸ビニル―無水マレイン酸共重合体樹脂、アクリロニトリル―スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂)などが挙げられる。これらの成膜性のある樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0072】
フィラー材料としては、無機、有機、いずれのものであってもよく、平均1次粒径は、10~300nm程度、20~200nm程度が望ましい。無機フィラーを構成する材料としては、無機酸化物及びコロイダルシリカおよび窒化ケイ素などが挙げられる。有機フィラーを構成する材料としては、フッ素系樹脂、ポリシロキサン系樹脂および高分子電荷輸送物質が挙げられる。
【0073】
有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン、ジメトキシベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロプロパンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジベンジルエーテル、ジメトキシメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、イソホロンなどのケトン類;安息香酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジフェニルスルフィドなどの含イオウ溶剤;ヘキサフロオロイソプロパノールなどのフッ素系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;エチレングルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのグライム系溶剤;などが挙げられ、これらは単独または混合溶剤として使用できる。これらの溶剤に、水が混入していてもよい。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
また、これとは別に、ホール輸送層7は、酸化防止剤、粘弾性調整剤、防腐剤、硬化触媒などの添加剤を含んでもよい。
【0074】
感光体20は、例えば、次のような方法で製造することができる。まず、スクリーン印刷法、浸漬塗布法等の塗布方法を用いて第1電極8(基体)上にハイブリッド粒子5を塗布することにより塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥させる。このことにより、第1電極8上にハイブリッド粒子5を主成分とする多孔質層を形成することができる。次に、スクリーン印刷法、浸漬塗布法等の塗布方法を用いてホール輸送材料の塗布液を多孔質層上に塗布し、この塗布液を乾燥させることによりハイブリッド粒子5の周りにホール輸送層7を形成することができる。このようにして感光体20を製造することができる。
【0075】
第5実施形態
第4実施形態では感光体20について説明したが、第5実施形態では、第4実施形態の感光体20を含む画像形成装置について説明する。
図18は、本実施形態の画像形成装置30の概略断面図である。画像形成装置30は、第4実施形態の感光体20、帯電器21、露光ユニット22、現像器23、転写部24、クリーニングユニット25、定着器26などを備えている。
【0076】
画像形成装置30では、次のようにして画像を形成する。まず、円筒状の感光体20を回転させながら帯電器21を用いて感光体20の表面(ホール輸送層7の表面)を帯電させる。露光ユニット22を用いて画像情報を有する光を帯電した感光体20に照射する。この照射光をハイブリッド粒子5の光吸収層4が吸収することにより電子及びホールが生じ、電子は第1電極8へと流れ、ホールはホール輸送層7の帯電した表面へと流れ電子と結合して電子及びホールが消滅する。このため、ホール輸送層7の表面には光を照射していない部分の電子だけが残りホール輸送層7の表面に静電潜像が形成される。現像器23を用いてこの静電潜像にトナーを付着させることにより感光体20の表面にトナー像が形成される。転写部24においてこのトナー像を紙に転写し、定着器26によりトナー像が転写された紙を加熱することによりトナー像を紙に定着させる。このことにより、紙に画像を印刷することができる。また、転写後に感光体20の表面に残った残留トナーは、クリーニングユニット25により除去される。
第1及び第2実施形態におけるハイブリッド粒子5についての記載は、第5実施形態の画像形成装置30に含まれる感光体20のハイブリッド粒子5についても当てはまる。また、第4実施形態における感光体20についての記載は、第5実施形態の画像形成装置30に含まれる感光体20についても当てはまる。
【符号の説明】
【0077】
2:無機コア粒子 3:電子輸送層 4:光吸収層 5:ハイブリッド粒子 6:電荷分離層 7:ホール輸送層 8:第1電極 9:第2電極 10:保護層 11:TiN層 12:CH3NH3PbI3 13:チタニルフタロシアニン 15:光電変換素子 20:感光体 21:帯電器 22:露光ユニット 23:現像器 24:転写部 25:クリーニングユニット 26:定着器 27:給紙カセット 28:排紙トレイ 30:画像形成装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18