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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】撮像装置、及びフォーカス調整方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/28 20210101AFI20221222BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20221222BHJP
   G03B 3/00 20210101ALI20221222BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20221222BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20221222BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20221222BHJP
【FI】
G02B7/28 M
G03B15/00 T
G03B3/00
G03B13/36
G01B11/00 Z
H04N5/232
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019133401
(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公開番号】P2021018307
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】宮井 博基
(72)【発明者】
【氏名】藤原 諒人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 芳裕
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-194521(JP,A)
【文献】特開2007-147289(JP,A)
【文献】特開平9-89520(JP,A)
【文献】特開2001-41711(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0017296(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28-7/40
G01B 11/00-11/30
G01B 21/00-21/32
G03B 13/36
G03B 15/00
H04N 5/222-5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支持箇所で試料を支持するステージと、
前記ステージに支持されている試料のたわみに応じたたわみデータを取得するたわみデータ取得部と、
前記ステージに支持されている前記試料の高さを検出する高さ情報検出部と、
前記試料の複数点において、前記高さ情報が示す高さと前記たわみデータが示す高さとの差分値を算出する差分値算出部と、
前記差分値に基づいて、補正データを算出する補正データ算出部と、
前記補正データを用いて前記たわみデータを補正することで、前記試料の高さを推定する推定データを算出する推定部と、
前記試料を撮像するために、前記推定データを用いて、フォーカスを調整する制御部と、を備えた撮像装置。
【請求項2】
前記補正データ算出部が、重調和方程式を用いて、前記補正データを算出する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
照明光を発生する照明光源と、
前記照明光で照明された前記試料からの光を集光する光学素子と、
前記光学素子からの光を検出する検出器と、をさらに備え、
前記制御部は、前記推定データの高さを基準として、前記光学素子と前記試料との距離を変えることで、オートフォーカスを行う請求項1、又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記たわみデータが、数値解析により得られている請求項1~3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
複数の支持箇所を有するステージに支持された試料に対するフォーカスを調整するフォーカス調整方法であって、
前記ステージに支持されている試料のたわみに応じたたわみデータを取得するステップと、
前記ステージに支持されている前記試料の高さを検出するステップと、
前記試料の複数点において、前記高さ情報が示す高さと前記たわみデータが示す高さとの差分値を算出するステップと、
前記差分値に基づいて、補正データを算出するステップと、
前記補正データを用いて前記たわみデータを補正することで、前記試料の高さを推定する推定データを算出するステップと、
前記推定データを用いて、フォーカスを調整するステップと、を備えたフォーカス調整方法。
【請求項6】
前記補正データが、重調和方程式を用いて、算出されている請求項5に記載のフォーカス調整方法。
【請求項7】
照明光で照明された前記試料からの光を、光学素子を介して検出器が検出しており、
前記推定データの高さを基準として、前記光学素子と前記試料との距離を変えることで、オートフォーカスを行う請求項5、又は6に記載のフォーカス調整方法。
【請求項8】
前記たわみデータが、数値解析により得られている請求項5~7のいずれか1項に記載のフォーカス調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、及びフォーカス調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多層膜の膜応力の変化に対応したパターンの位置を計測する装置、及び方法が開示されている。特許文献1の装置では、3つの支持点を有する保持具を用いて基板を支持している。この装置は、支持点により形成される3つの三角形の面積が異なる2組の保持具を有している。この装置は、それぞれの保持具で保持した状態でパターンを計測して、膜応力を算出している。この装置は、基板の自重によるたわみに、膜応力を反映して、計測位置を補正している。
【0003】
特許文献2には、フォトマスクの検査装置、及び検査方法が開示されている。特許文献2では、座標ずれ量データに基づいて、転写用パターンの設計データを補正している。自重たわみに起因する主平面の変形分を示すデータを求めて、座標ずれを補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015―64477号公報
【文献】特開2016―151733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フォトマスクの検査装置などでは、基板のパターンが形成されたパターン形成面(主面)にフォーカスを合わせて、試料を撮像している。試料を3点支持などの複数点で支持するステージを用いる場合、試料が撓む。そして、試料の位置(座標)に応じて、試料のたわみ量が異なる。さらに、基板にパターンが形成されている場合、膜応力により、たわみ量が変化する。オートフォーカス機構の高さ検出方法によっては、焦点位置の測定誤差が生じてしまうことがある。このため、フォーカスを速やかに調整することができない場合がある。例えば、オートフォーカス機構を搭載していたとしても、焦点位置が大きくずれる、合焦点位置に移動するまでに時間がかかることがある。
【0006】
本開示は、このような事情を背景としてなされたものであり、適切かつ速やかにフォーカスを調整することができる撮像装置、及びフォーカス調整方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の一態様にかかる撮像装置は、複数の支持箇所で試料を支持するステージと、前記ステージに支持されている試料のたわみに応じたたわみデータを取得するたわみデータ取得部と、前記ステージに支持されている前記試料の高さを検出する高さ情報検出部と、前記試料の複数点において、前記高さ情報が示す高さと前記たわみデータが示す高さとの差分値を算出する差分値算出部と、前記差分値に基づいて、補正データを算出する補正データ算出部と、前記補正データを用いて前記たわみデータを補正することで、前記試料の高さを推定する推定データを算出する推定部と、前記推定データを用いて、フォーカスを調整する制御部と、を備えている。
【0008】
上記の撮像装置において、前記補正データ算出部が、重調和方程式を用いて、前記補正データを算出してもよい
【0009】
上記の撮像装置は、照明光を発生する照明光源と、前記照明光で照明された前記試料からの光を集光する光学素子と、前記光学素子からの光を検出する検出器と、をさらに備え、前記制御部は、前記推定データの高さを基準として、前記光学素子と前記試料との距離を変えることで、オートフォーカスを行うようにしてもよい。
【0010】
上記の撮像装置において、前記たわみデータが、数値解析により得られていてもよい。
【0011】
複数の支持箇所を有するステージに支持された試料に対するフォーカスを調整するフォーカス調整方法であって、前記ステージに支持されている試料のたわみに応じたたわみデータを取得するステップと、前記ステージに支持されている前記試料の高さを検出するステップと、前記試料の複数点において、前記高さ情報が示す高さと前記たわみデータが示す高さとの差分値を算出するステップと、前記差分値に基づいて、補正データを算出するステップと、前記補正データを用いて前記たわみデータを補正することで、前記試料の高さを推定する推定データを算出するステップと、前記推定データを用いて、フォーカスを調整するステップと、を備えている。
【0012】
上記のフォーカス調整方法において、前記補正データが、重調和方程式を用いて、算出されている請求項5に記載のフォーカス調整方法。
【0013】
上記のフォーカス調整方法において、照明光で照明された前記試料からの光を、光学素子を介して検出器が検出しており、前記推定データの高さを基準として、前記光学素子と前記試料との距離を変えることで、オートフォーカスを行うようにしてもよい。
【0014】
上記のフォーカス調整方法において、前記たわみデータが、数値解析により得られていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、速やかにフォーカスを合わせることができる撮像装置、及びフォーカス調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施の形態にかかる撮像装置の全体構成を示す模式図である。
図2】高さ情報検出部の構成を示す図である。
図3】支持ピンの位置と高さ情報の検出位置を模式的に示す上面図である。
図4】たわみデータを示す3次元グラフである。
図5】高さデータを示す3次元グラフである。
図6】補正データを示す3次元グラフである。
図7】推定データを示す3次元グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0018】
本実施の形態に係る光学装置は、例えば、試料を撮像する撮像装置である。ここでは、撮像装置が試料を撮像した画像(以下、試料画像ともいう)に基づいて検査を行う検査装置とする。検査装置は、微細なパターンが形成されたフォトマスクや半導体ウェハ等の試料を検査する。検査装置は、試料画像の情報を用いて、検査を行う。例えば、検査装置は、試料画像の信号強度を閾値したり、試料画像を他の画像と比較したりすることで、欠陥を検出する。以下の説明では、半導体装置のフォトリソグラフィ工程に用いられるフォトマスクを試料とする。
【0019】
本実施の形態にかかる撮像装置、及びフォーカス調整方法について、図1を用いて説明する。図1は、撮像装置の全体構成を模式的に示す図である。撮像装置100は、ステージ10と、撮像光学系20と、高さ情報検出部30と、処理装置50と、を備えている。
【0020】
図1では、説明の明確化のため、XYZの3次元直交座標系を示している。なお、Z方向が鉛直方向であり、試料40の厚さ方向と平行な方向である。したがって、Z方向が高さ方向となる。試料40の上面には、遮光膜などのパターン41が形成されている。Z方向は、試料40のパターン形成面(主面)の法線方向である。X方向、及びY方向が水平方向であり、試料40のパターン方向と平行な方向である。Z方向は、試料40の厚さ方向である。試料40がフォトマスクであるため、矩形状の基板となっている。そして、X方向、及びY方向は試料40の端辺と平行な方向となっている。
【0021】
ステージ10には、撮像対象の試料40が載置されている。上記のように、試料40はフォトマスクである。ステージ10は、3次元駆動ステージであり、処理装置50の駆動制御部56でXYZ方向に駆動される。なお、駆動制御部56によるステージ10の制御はXYZ方向の制御に限らず、回転方向などの姿勢制御を含んでいても良い。
【0022】
ステージ10は、台座11と支持ピン12とを備えている。台座11の上面には複数の支持ピン12が設けられている。つまり、支持ピン12は、台座11から+Z方向に突出している。そして、支持ピン12の上に試料40が載置される。支持ピン12の上面が試料40の下面に当接する。支持ピン12が試料40の支持箇所となる。複数の支持ピン12の高さは一致している。
【0023】
図2は支持ピン12の配置例を示す上面図である。図2に示すように、3つの支持ピン12が試料40を支持している。試料40は、3箇所でステージ10に支持されている。具体的には、矩形状の試料40の右上角、右下角、及び左端辺中央に支持ピン12が配置されている。もちろん、支持ピン12の配置は、図2に示す配置に限られるものではない。また、支持箇所も3点に限られるものではない。支持ピン12以外の支持部材で試料40を支持してもよい。なお、図2の測定点Mについては後述する。
【0024】
図1に戻り、撮像光学系20について説明する。撮像光学系20は、光源21と、ビームスプリッタ22と、対物レンズ23と、撮像素子24と、を備えている。なお、図1に示す撮像光学系20は、適宜、簡略されている。撮像光学系20は上記の構成以外の光学素子、レンズ、光スキャナ、ミラー、フィルタ、ビームスプリッタなどが設けられていてもよい。また、ビームスプリッタがない場合もある。例えば、撮像光学系20はコンフォーカル光学系であってもよい。
【0025】
光源21は、照明光L11を発生する。光源21は、ランプ光源、LED(Light Emitting Diode)光源、レーザ光源などである。光源21からの照明光L11は、ビームスプリッタ22に入射する。ビームスプリッタ22は、例えば、ハーフミラーであり、照明光L11のほぼ半分を試料40の方向に反射する。ビームスプリッタ22で反射した照明光L11は、対物レンズ23に入射する。対物レンズ23は照明光L11を試料40に集光する。これにより、試料40の表面(パターン形成面)を照明することができる。対物レンズ23の光軸OXは、Z方向と平行となっている。また、対物レンズ23の代わりに対物反射鏡などの他の光学素子を用いて、照明光L11を集光してもよい。
【0026】
試料40の表面で反射した反射光L12は、対物レンズ23で集光されて、ビームスプリッタ22に入射する。ビームスプリッタ22は、反射光L12のほぼ半分を透過する。ビームスプリッタ22を透過した反射光L12は、撮像素子24に入射する。これにより、試料40を撮像することができる。また、反射光L12を撮像素子24の受光面に結像するためのレンズなどを設けてもよい。
【0027】
撮像素子24は、CCD((Charge Coupled Device)カメラやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの2次元アレイセンサである。あるいは、撮像素子24は、ラインセンサ、フォトダイオード、光電子増倍管などの光検出器であってもよい。撮像素子24は、受光量に応じた検出データを処理装置50に出力する。処理装置50は、検出データが示す反射輝度値に基づいて、試料40を検査する。検査する処理については、公知の手法を用いることができるため説明を省略する。
【0028】
ステージ10は駆動ステージであり、試料40をXY方向に移動させることができる。処理装置50の駆動制御部56が、ステージ10の駆動を制御している。駆動制御部56が、ステージ10をXY方向の移動させることで、試料40における照明位置を変化させることができる。このため、試料40の任意の位置を撮像することができ、試料40の全面を検査することができる。もちろん、駆動制御部56が、ステージ10ではなく、撮像光学系20を駆動してもよい。すなわち、ステージ10に対する撮像光学系20の相対位置が移動可能になっていればよい。あるいは、光スキャナなどを用いて、照明光L11を走査してもよい。
【0029】
さらに、ステージ10は試料40をZ方向に移動させることができる。これにより、フォーカス位置を試料40のパターン形成面に合わせることができる。つまり、駆動制御部56が、ステージ10をZ方向荷移動させると、Z方向における対物レンズ23と試料40との距離が変化する。これにより、フォーカス調整を行うことができる。試料40のパターン形成面にフォーカス(焦点)があった状態で、撮像光学系20が試料40を撮像することができる。試料40を適切に検査することができる。もちろん、ステージ10の代わりに、撮像光学系20をZ方向に移動させることで、フォーカスを調整してもよい。駆動制御部56は、ステージ10、又は対物レンズ23を駆動して、フォーカス調整を行う。
【0030】
次に、高さ情報検出部30について説明する。図3は、高さ情報検出部30の構成を模式的に示す側面図である。ここでは、高さ情報検出部30が、光てこ方式によって、試料40の高さ情報を検出している。光てこ方式を用いることで、検出用の特定のパターンがない場合であっても、高さ情報を検出することができる。
【0031】
高さ情報検出部30は、Z方向における試料40のパターン形成面の位置を高さ情報として、検出する。試料40の自重によるたわみや、膜応力などにより、試料40が変形する。つまり、試料40のパターン形成面は完全な平面にはならない。このため、高さ情報が示す高さはXY座標に応じて変化する。パターン形成面の高さ(Z位置)は、XY座標に応じて変化する。高さ情報検出部30は、XY座標に対応付けて高さ情報を検出する。高さ情報検出部30は、高さ情報を処理装置50に出力する。
【0032】
高さ情報検出部30で検出された高さ情報に基づいて、撮像装置100が、オートフォーカス(AF)を行っている。具体的には、駆動制御部56が、高さ情報に基づいて、ステージ10のZ位置を調整している。そして、パターン形成面にフォーカスが合った状態で、撮像光学系20が試料40を撮像している。
【0033】
高さ情報検出部30は、AF光源31と、レンズ33と、レンズ33と、光検出器34と、を備えている。図3では、試料のパターン形成面が基準高さにある場合を試料40のパターン形成面42として実線で示している。一方、試料のパターン形成面が基準高さからずれている場合を試料40aのパターン形成面42aとして破線で示している。基準高さは、例えば、撮像光学系20における合焦点位置に、試料40のパターン形成面42がある高さである。また、図3では、簡略化のため、パターン41を省略して図示している。
【0034】
AF光源31は、AF用の光ビームL21を発生する。AF光源31は、例えば、LED光源又はレーザダイオードなどの点光源である。AF光源31から出射された光ビームL21は、レンズ32に入射する。レンズ32は、光ビームL21を試料40に集光する。ここで、AF光源31の光軸は、Z軸から傾いて配置されている。つまり、光ビームL21は、斜め上方向から試料40に入射している。
【0035】
試料40で反射した光ビームL22は、レンズ33に入射する。なお、レンズ33と、レンズ32とは、撮像光学系20の光軸OXを挟んで左右対称に配置されている。レンズ33は、光ビームL22を光検出器34の受光面に集光する。光ビームL21が斜め方向から試料40に入射している。光ビームL21、L22の光軸がZ軸から傾いている。試料40の高さが変わると、光検出器34における受光位置が変化する。例えば、試料40のパターン形成面42が基準高さにある場合、光検出器34の中心に光ビームL22が入射する。試料40aのパターン形成面42aが基準高さからずれている場合、光検出器34の中心位置から受光位置がずれる。
【0036】
光検出器34は、例えば2分割フォトダイオードであり、2つのフォトダイオード34a、34bを備えている。光検出器34のフォトダイオード34a、34bの受光量を比較することで、基準高さに対する試料40のずれ量を求めることができる。例えば、パターン形成面42が基準高さになる場合、光ビームL22の半分がフォトダイオード34aで受光され、残り半分がフォトダイオード34bで受光される。フォトダイオード34aとフォトダイオード34bの受光量が一致する。パターン形成面42aが基準高さよりも高い場合、フォトダイオード34aの受光量がフォトダイオード34bよりも低くなる。また、パターン形成面が基準高さよりも低い場合、フォトダイオード34aの受光量がフォトダイオード34bよりも高くなる。さらに、パターン形成面42aが基準高さからずれるほど、2つのフォトダイオード34a、34bの受光量の差が大きくなる。
【0037】
フォトダイオード34a、34bの受光量を比較することで、試料40の高さを検出することができる。さらに、フォトダイオード34a、34bの受光量が等しくなるようにフィードバック制御することで、オートフォーカスを行うことができる。光検出器34での検出結果に基づいて、駆動制御部56が、ステージ10を駆動する。具体的には、フォトダイオード34a、34bの出力値の差が0に追従するように、駆動制御部56が、対物レンズ23と試料40との距離を変える。これにより、合焦点位置に追従するように、パターン形成面42の高さを調整することができる。よって、フォーカスが合った状態で、撮像光学系20が試料40を撮像することができる。
【0038】
高さ情報検出部30は、パターン形成面42aの基準高さからのずれ量を高さ情報として検出してもよい。あるいは、パターン形成面42aの絶対的なZ位置を高さ情報として検出してもよい。つまり、高さ情報が示す高さは、絶対位置であっても、相対位置であってもよい。高さ情報を算出するための処理の一部又は全部が、処理装置50で実施されていてもよい。
【0039】
なお、上記の説明では、光検出器34として2分割フォトダイオードを用いたが、4分割フォトダイオード、位置検出素子(PSD:Position Sensitive Device)、CCDセンサ等を用いても良い。これらのセンサを用いた場合でも、光ビームL22の受光位置に基づいて、高さ情報を検出することができる。
【0040】
なお、図3では、高さ情報検出部30がレンズ32,及びレンズ33を有しているが、レンズ32,及びレンズ33の代わりに、撮像光学系20の対物レンズ23を用いても良い。具体的には、光ビームL21を対物レンズ23の片側半分に入射させるようしてもよい。この場合、試料40で反射した光ビームL22を対物レンズ23の反対側の片側半分を通過する。このようにしても、高さ情報検出部30が同様に高さ情報を検出することができる。あるいは、高さ情報検出部30は、レンズ32,及びレンズ33以外の光学素子を用いても良い。
【0041】
高さ情報検出部30は、光てこ方式以外の手法により、高さ情報を検出してもよい。例えば、撮像素子24で撮像したパターン画像のコントラストを用いて高さ情報を取得してもよい。具体的には、合焦点位置にある場合、パターンがぼけていない画像が撮像されるため。コントラストが高くなる。一方、合焦点位置からずれた場合、撮像素子24でパターンがぼけた画像が撮像されるため、コントラストが低くなる。よって、撮像したパターン画像のコントラストに応じて、高さ情報を検出することができる。
【0042】
図1に戻り、処理装置50について説明する。処理装置50は、試料40のパターン形成面の形状を推定するための処理を行っている。処理装置50は、たわみデータ取得部51、高さデータ取得部52、差分値算出部53、補正データ算出部54、推定部55、駆動制御部56を備えている。
【0043】
たわみデータ取得部51は試料40のたわみデータを取得する。たわみデータは、ステージ10に支持されている状態の試料40のたわみ量を示すデータである。具体的には、ステージ10における支持ピン12の位置、数、大きさ等は既知であるため、シミュレーションによりたわみデータを算出することができる。たわみデータは、XY座標とたわみ量とを対応付けたデータである。たわみ量は、支持ピン12を基準とするZ位置で示される。
【0044】
図4は、たわみデータを示す3次元グラフである。図4には、XY座標をステージ座標として、たわみデータが示す高さの曲面が表されている。たわみデータが示す曲面を基準曲面とする。基準曲面は、自重たわみによる試料40の変形量を示す。ここでは、図3に示す支持ピン12で支持されている試料40のたわみデータが数値解析手法により求められている。具体的には、たわみデータ取得部51は、有限要素法によって、各XY座標におけるたわみ量を求めている。
【0045】
支持ピン12による支持箇所ではたわみ量が0となる。たわみデータ取得部51は、X方向、及びY方向において一定間隔で、たわみ量を算出する。たわみデータのたわみ量は、各XY座標での試料40のパターン形成面の高さを示す計算値となる。ここでは、たわみデータ取得部51は、遮光膜などのパターンが形成されていない状態における試料40のたわみ量を算出して、たわみデータとしている。例えば、試料40となるフォトマスクの基板の厚さ、材料、及び大きさと、支持ピン12の位置、数、大きさ等を用いて、たわみデータ取得部51がたわみデータを算出する。もちろん、たわみデータ取得部51は、パターン41が形成されている状態における試料40のたわみ量をたわみデータとして算出してもよい。
【0046】
たわみデータ取得部51が、数値解析を行うことでたわみデータを算出しているが、処理装置50と異なる装置がたわみデータを算出していても良い。この場合、処理装置50がたわみデータを予めメモリなどに格納しておく。たわみデータ取得部51がメモリなどからたわみデータを読み出す。あるいは、たわみデータはサーバなどの他の装置に保存されていてもよい。この場合、たわみデータ取得部51は、ネットワークを介して、たわみデータをダウンロードする。なお、たわみデータのたわみ量は、シミュレーションによる計算値に限らず、測定器を用いて標準的なサンプルを測定した場合の実測値でもよい。
【0047】
高さデータ取得部52は、試料40の高さデータを取得する。具体的には、高さデータ取得部52は、高さ情報検出部30で検出された高さ情報を高さデータとして取得する。高さ情報検出部30は、試料40の複数箇所における試料40のパターン形成面の高さ情報を検出する。高さデータに含まれる高さ情報は、高さ情報検出部30による実測値となっている。
【0048】
図2では、高さ情報検出部30が高さ情報を検出した箇所が、測定点Mとして示されている。高さ情報検出部30が、試料40の8つの測定点Mにおいて、高さ情報を検出している。具体的には、破線で示す矩形状の四角、及び各辺の中点が測定点Mとなっている。もちろん、測定点Mの数は8に限られるものではない。
【0049】
高さデータ取得部52は、8つの測定点Mにおける高さ情報を高さデータとして取得する。高さデータでは、高さ情報が、XY座標に対応付けられている。高さデータは、測定点Mにおけるパターン形成面42の高さを示す。ここでは、高さデータは、8つの測定点Mでの高さを示すデータである。高さデータに含まれるデータ数は、8となっており、たわみデータのデータ数よりも十分に小さいデータ数である。
【0050】
差分値算出部53は、高さデータが示す高さと、たわみデータが示す高さとの差分値を求める。差分値は、試料40の変形量についての実測値と計算値との差を示すデータとなる。差分値算出部53は、測定点M毎に差分値を算出する。図2では、測定点Mが8点であるため、差分値算出部53は、8つの差分値を求める。差分値算出部53は、測定点Mの数を同じ数の差分値を算出する。さらに、支持ピン12による支持箇所の差分値を加えてもよい。支持ピン12による支持箇所では、差分値が0となる。支持ピン12による支持箇所の差分値は、測定せずに求めることができる。これにより、より多くの差分値を取得することができるため、精度を向上することができる。
【0051】
なお、測定点MのXY座標でのたわみ量がたわみデータに含まれていない場合、差分値算出部53は、測定点Mの近傍でのたわみ量を補間してもよい。つまり、差分値算出部53は、たわみデータのたわみ量を補間することで、測定点MのXY座標でのたわみ量を求めてよい。
【0052】
補正データ算出部54は、差分値に基づいて補正データを算出する。補正データは、XY座標毎に補正量を示すデータとなる。図6は、補正データを示す3次元グラフである。補正データが示す曲面を補正曲面とする。補正曲面は、基準曲面を実際のパターン形成面の表面形状に補正するための曲面となる。
【0053】
補正データは、試料40の自重たわみ以外の成分による変形量を示す。例えば、試料40は、膜応力などにより変形する。自重たわみ以外の成分は低周期成分のみが支配的な成分となる。したがって、補正データ算出部54は、測定点Mでの差分値に基づいて、低周期成分のみを抽出することができる
【0054】
補正データ算出部54は、重調和方程式を用いて補正データを求めることができる。以下、補正曲面の計算原理について説明する。内挿曲面が重調和方程式を満たすとき、最小曲率を満たす。重調和方程式は、以下の式(1)で示される。
【数1】
【0055】
重調和演算子Δのグリーン関数を線形結合することで、測定点Mを通る滑らかな曲面を形成することができる。重調和演算子のグリーン関数φは以下の(2)となる。
【数2】
【0056】
δ(x)はデルタ関数である。なお、2次元空間(XY空間)である場合、ラプラス演算子Δは以下の式(3)となる。
【数3】
【0057】
上記を満たすグリーン関数を線形結合して、補正曲面を作成する。測定点M以外、つまり内挿区間では重調和方程式を満たすため、補正曲面S(x,y)は以下の式(4)で得られる。また、測定点Mでは、実測値が得られているため、補正曲面は以下の式(5)で得られる。
【数4】
【数5】
【0058】
ここで、j(jは1以上の整数)番目の測定点における座標を(x、y)として、その差分値をdzとしている。補正データ算出部54が、式(4)、及び式(5)を用いてαを計算することで、補正曲面S(x,y)を得ることができる。補正曲面S(x,y)は、測定点Mが示す高さを通る滑らかな曲面となる。
【0059】
式(6)は、1次元、式(7)は2次元の場合の変位uを示している。つまり、(x、y)において、薄板に力fiを加えると、変位uは以下の式(7)に従う。なお、これも上記の式と同様であるため、変位由来の解析結果とのずれを適切に補正することができる。
【数6】
【数7】
【0060】
上記したように補正データ算出部54は、重調和演算子のグリーン関数を用いて、差分値から補正データを算出している。補正データ算出部54は、重調和方程式を満たす関数を基底として、補正曲面を近似している。重調和方程式を用いることで、効率的に補正曲面を近似することができる。具体的には,重調和演算子のグリーン関数を用いることで、複雑な演算を行うことなく、適切な補正曲面を得ることができる。
【0061】
推定部55が、補正データを用いてたわみデータを補正することで、試料の高さを推定する推定データを算出する。具体的には、たわみデータに、補正データを足し合わせることで、推定データを算出する。推定データが示す曲面を予測曲面とする。推定データは、試料40のパターン形成面の高さを推定する推定値を含んでいる。つまり、推定データでは、高さの推定値にXY座標が対応付けられている。推定データが示す高さを推定高さとも称する。図7は、図4のたわみデータと図6の補正データから得られた推定データを示す3次元グラフである。
【0062】
駆動制御部56が、推定データに基づいて、ステージ10の駆動を制御する。駆動制御部56は、推定データの高さ(推定高さ)を基準として、フォーカス調整を行う。駆動制御部56は、予測曲面に沿って焦点位置が移動するように、ステージ10を駆動する。これにより、予測曲面に追従するように焦点位置が移動する。さらに、予測曲面への追従動作に加えて、駆動制御部56がオートフォーカスを行うことも可能である。具体的には、駆動制御部56が推定高さを起点として、オートフォーカスを行うように、Z方向にステージ10を駆動する。駆動制御部56は、フォーカスを調整するために、対物レンズ23と試料40との間の距離を変える。このようにすることで、焦点位置と試料40のパターン形成面が大きくずれることなく、フォーカスを調整することできる。したがって、適切かつ速やかにフォーカスを調整することが可能となる。オートフォーカスを行う場合、高さ情報検出部30以外の計測手段を用いて、ステージ10のZ位置を計測してもよい。これにより、高さ情報検出部30を用いずとも、焦点が合った状態で撮像素子24が試料40を撮像することができる。
【0063】
本実施の形態では、差分値算出部53が、たわみデータが示す高さと、高さデータが示す高さとの差分値を求めている。たわみデータが示す高さはシミュレーションによる計算値であり、高さデータが示す高さは、実測値となる。補正データ算出部54が、差分値に基づいて補正データを求めている。補正データは、計算によるたわみデータと、実測による高さデータとの間の変形量の差分を示す補正曲面となる。推定部55が、たわみデータを補正データで補正することで、推定データを求めている。推定部55が、基準曲面を補正曲面で補正している。処理装置50は、適切な予測曲面を少ない計算量で取得することができる。駆動制御部56は、推定データの高さを基準として、オートフォーカスを行う。
【0064】
本実施の形態の方法によれば、測定点Mの数が少ない場合であっても、高い精度でパターン形成面の高さを推定することができる。つまり、測定点Mの高さから直接予測曲面を求めていないため、変形量の誤差を抑制することができる。より高い精度でパターン形成面の高さを推定することができる。推定高さを基準としてオートフォーカスを行うことができるため、フォーカス位置が大きくずれることを防ぐことができる。よって、迅速かつ速やかにフォーカスを調整することができる。さらに、補正データ算出部54が、重調和方程式を用いているため、より少ない測定点数で、補正曲面を求めることができる。推定部55が、高い精度で予測曲面を求めることができる。
【0065】
なお、上記の説明では、重調和方程式を用いて補正データを用いたが、重調和方程式以外の曲面近似により、補正曲面を求めてよい。例えば、2次以上の多項式等を用いた曲面近似により、補正データを算出してもよい。近似関数は、X及びYのそれぞれに対して4次以上の多項式とすることが好ましい。多項式で近似する場合、次数に応じて、必要な測定点数を決めればよい。
【0066】
高さ情報検出部30による高さ検出を検査時に併用することで、試料40の構造を検出することも可能である。例えば、試料40がフォトマスクである場合、パターン形成面に設けられている遮光膜、多層膜、低反射層等を検出することができる。
【0067】
なお、AF時において、予測曲面とパターン形成面の高さの誤差が大きい場合、誤差成分を緩和するように駆動制御部56が制御してもよい。具体的には、局所的に、予測曲面が示す推定高さと、高さ情報検出部30が検出した高さの誤差が閾値以上となる場合がある。このように、予測曲面でのフォーカスずれ量が大きい場合、駆動制御部56が、予測曲面から所定値ずれた高さを基準としてオートフォーカスを行ってもよい。
【0068】
処理装置50は物理的に単一の装置に限られるものではない。つまり、処理装置50における処理は、複数の装置に分散されて実施されていてもよい。例えば、撮像素子24空の検出データ、及び光検出器34からの高さ情報を取得する処理装置と、演算処理を行う処理装置が物理的に異なる装置であってもよい。
【0069】
上記した処理装置50の処理のうちの一部又は全部は、コンピュータプログラムによって実行されてもよい。上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0070】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態による限定は受けない。
【符号の説明】
【0071】
100 撮像装置
10 ステージ
11 台座
12 支持ピン
20 撮像光学系
21 光源
22 ビームスプリッタ
23 対物レンズ
24 撮像素子
30 高さ情報検出部
31 AF光源
32 レンズ
33 レンズ
34 光検出器
40 試料
50 処理装置
51 たわみデータ取得部
52 高さデータ取得部
53 差分値算出部
54 補正データ算出部
55 推定部
56 駆動制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7