(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】センサホルダ
(51)【国際特許分類】
G01D 11/30 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
G01D11/30 S
(21)【出願番号】P 2019196957
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】越後 賢太郎
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-201159(JP,A)
【文献】特開2010-162135(JP,A)
【文献】特開平10-175188(JP,A)
【文献】特開2016-197012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象面に対してセンサのセンシング面を密着させるセンサホルダであって、
前記センサを保持するセンサ保持部と、
第1方向を軸に前記センサ保持部を傾斜自在に支持するとともに前記第1方向とは異なる第2方向を軸に前記センサ保持部を傾斜自在に支持するリンク機構と、を備える
センサホルダ。
【請求項2】
前記第1方向と前記第2方向とが互いに直交する
請求項1に記載のセンサホルダ。
【請求項3】
前記リンク機構は、
前記センサ保持部に連結されて前記第1方向を軸に前記センサ保持部を傾斜自在に支持する第1リンク機構と、
前記第1リンク機構に連結されて前記第1リンク機構を介して前記第2方向を軸に前記センサ保持部を傾斜自在に支持する第2リンク機構と、を有する
請求項1または2に記載のセンサホルダ。
【請求項4】
前記第1リンク機構は、
前記センサ保持部を最短リンク、前記センサ保持部に連結される先端部を有する一対の第1リンクを揺動リンク、前記一対の第1リンクの基端部が連結されるジョイント部を静止リンクとする両てこ機構であり、
前記第2リンク機構は、
前記ジョイント部を最短リンク、前記ジョイント部に連結される先端部を有する一対の第2リンクを揺動リンク、前記一対の第2リンクの基端部が連結されるベース部を静止リンクとする両てこ機構である
請求項3に記載のセンサホルダ。
【請求項5】
前記一対の第1リンクを第1揺動リンク部、前記一対の第2リンクを第2揺動リンク部とするとき、
前記第1リンク機構は、
前記センサ保持部および前記ジョイント部の各々を挟持するように前記第1方向に対向配置された一対の前記第1揺動リンク部を有し、
前記第2リンク機構は、
前記ジョイント部および前記ベース部の各々を挟持するように前記第2方向に対向配置された一対の前記第2揺動リンク部を有する
請求項4に記載のセンサホルダ。
【請求項6】
前記センサ保持部、前記ジョイント部、および、前記ベース部の各々は、前記センサ保持部に保持されたセンサに接続される配線が配設される配線用貫通孔を有し、
前記センサ保持部の配線用貫通孔と前記ジョイント部の配線用貫通孔とが対向配置され、前記ジョイント部の配線用貫通孔と前記ベース部の配線用貫通孔とが対向配置されている
請求項4または5に記載のセンサホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象面にセンサのセンシング面を密着させるセンサホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
生産工場では、出荷前の製品について異常の有無を検査する検品工程において、試運転中の製品を測定対象として振動を測定することにより異常の有無を判定する場合がある。こうした振動測定には、測定対象面に対して平坦なセンシング面を密着させることにより振動を測定する振動センサが用いられる。例えば特許文献1には、弾性体を介して振動センサを支持し、該振動センサのセンシング面を測定対象面に押圧することによりセンシング面を測定対象面に密着させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法は、測定対象面に対してセンシング面を押圧したときに弾性体が圧縮されて弾性変形することとなる。そのため、圧縮部分が偏倚して形成された場合、弾性体の復元力がセンシング面に対して偏倚して作用することとなり、測定対象面にセンサが適切に配置されない場合があった。こうした問題は、振動を検出するセンサに限らず、測定対象面に対してセンシング面を密着させるセンサに共通する。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、測定対象面に対してセンサを適切に配置することができるセンサホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するセンサホルダは、測定対象面に対してセンサのセンシング面を密着させるセンサホルダであって、前記センサを保持するセンサ保持部と、第1方向を軸に前記センサ保持部を傾斜自在に支持するとともに前記第1方向とは異なる第2方向を軸に前記センサ保持部を傾斜自在に支持するリンク機構と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、センサ保持部は、第1方向を軸として、また、第2方向を軸として傾斜自在に支持されていることから、センサ保持部に保持されたセンサを測定対象面に当接させたときに測定対象面に倣うようにセンサを傾斜させることができる。その結果、測定対象面に対してセンサを適切に配置することができる。
【0008】
上記構成のセンサホルダにおいて、前記第1方向と前記第2方向とが互いに直交するとよい。上記構成によれば、第1方向と第2方向とが直交することから、第1方向を軸にした傾斜と第2方向を軸にした傾斜とによって具現化されるセンサ保持部の姿勢についての自由度を高めることができる。その結果、測定対象面に対してセンサをより適切に配置することができる。
【0009】
上記構成のセンサホルダにおいて、前記リンク機構は、前記センサ保持部に連結されて前記第1方向を軸に前記センサ保持部を傾斜自在に支持する第1リンク機構と、前記第1リンク機構に連結されて前記第1リンク機構を介して前記第2方向を軸に前記センサ保持部を傾斜自在に支持する第2リンク機構と、を有するとよい。
【0010】
上記構成によれば、第1方向を軸にセンサ保持部を傾斜させる機構と、第2方向を軸にセンサ保持部を傾斜させる機構とが別々の機構となることから、各リンク機構の構造についての自由度を高めることができる。これにより、例えば、各リンク機構における機械的強度についての自由度を向上させることができる。
【0011】
上記構成のセンサホルダにおいて、前記第1リンク機構は、前記センサ保持部を最短リンク、前記センサ保持部に連結される先端部を有する一対の第1リンクを揺動リンク、前記一対の第1リンクの基端部が連結されるジョイント部を静止リンクとする両てこ機構であり、前記第2リンク機構は、前記ジョイント部を最短リンク、前記ジョイント部に連結される先端部を有する一対の第2リンクを揺動リンク、前記一対の第2リンクの基端部が連結されるベース部を静止リンクとする両てこ機構であるとよい。
【0012】
上記構成のように、第1リンク機構が両てこ機構で具現化されることにより、第1リンク機構により、センサ保持部が保持するセンサが傾斜するときの傾斜軸をセンサに近い位置に配置することができる。また、第2リンク機構が両てこ機構で具現化されることにより、第2リンク機構によりセンサが傾斜するときの傾斜軸をセンサに近い位置に配置することができる。これにより、センサの傾斜量に対して揺動リンクの揺動量が小さくなることから、第1方向および第2方向において、傾斜にともなうセンサの位置ずれが小さくなる。その結果、測定対象面とセンサとの接触位置の精度を高めることができる。
【0013】
上記構成のセンサホルダは、前記一対の第1リンクを第1揺動リンク部、前記一対の第2リンクを第2揺動リンク部とするとき、前記第1リンク機構は、前記センサ保持部および前記ジョイント部の各々を挟持するように前記第1方向に対向配置された一対の前記第1揺動リンク部を有し、前記第2リンク機構は、前記ジョイント部および前記ベース部の各々を挟持するように前記第2方向に対向配置された一対の前記第2揺動リンク部を有するとよい。
【0014】
上記構成によれば、第1リンク機構の機械的強度が高められることで、センサ保持部が傾斜するときに各第1リンクに作用する機械的な負荷を低減することができるとともに、測定対象面に倣うセンサ保持部の傾斜にともなう力が第2リンク機構に伝達されやすくなる。また、第2リンク機構の機械的強度が高められることで、センサ保持部が傾斜するときに各第2リンクに作用する機械的な負荷を低減することができる。
【0015】
上記構成のセンサホルダにおいて、前記センサ保持部、前記ジョイント部、および、前記ベース部の各々は、前記センサ保持部に保持されたセンサに接続される配線が配設される配線用貫通孔を有し、前記センサ保持部の配線用貫通孔と前記ジョイント部の配線用貫通孔とが対向配置され、前記ジョイント部の配線用貫通孔と前記ベース部の配線用貫通孔とが対向配置されているとよい。
【0016】
上記構成によれば、センサの取り付けの利便性が高まるとともに、センサに接続される配線が保護されて検査時におけるトラブルを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】センサホルダの一実施形態の概略構成を示す図であって、待機状態のセンサホルダを-Z方向から見た斜視図。
【
図2】センサホルダの待機状態において+Z方向から見たセンサ保持部の斜視図。
【
図3】-Z方向から見たセンサホルダの分解斜視図。
【
図4】-X方向から見たセンサホルダの待機状態を示す側面図。
【
図5】-Y方向から見たセンサホルダの待機状態を示す側面図。
【
図6】-X方向から見たセンサホルダを示す側面図であって、(a)Y方向に対してセンサ保持部が傾斜した状態を示す図、(b)Y方向に対してセンサ保持部が傾斜したときのセンシング面付近を示す図。
【
図7】-Y方向から見たセンサホルダを示す側面図であって、(a)X方向に対してセンサ保持部が傾斜した状態を示す図、(b)X方向に対してセンサ保持部が傾斜したときのセンシング面付近を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1~
図7を参照して、センサホルダの一実施形態について説明する。
図1に示すように、センサホルダ10は、センサ11を保持するセンサ保持部12と、第1方向であるX方向を軸にセンサ保持部12を傾斜自在に支持するとともにX方向に直交する第2方向であるY方向を軸にセンサ保持部12を傾斜自在に支持するリンク機構13と、を備えている。リンク機構13は、ジョイント部14を介して連結された第1リンク機構15と第2リンク機構16とで構成されている。第1リンク機構15は、X方向を軸に傾斜自在にセンサ保持部12を支持する。第2リンク機構16は、Y方向を軸に傾斜自在に第1リンク機構15を支持することにより、Y方向を軸に傾斜自在にセンサ保持部12を支持する。センサホルダ10は、X方向およびY方向に直交するZ方向にリンク機構13を移動可能に支持する移動機構17を有している。Z方向は、測定対象の測定対象面18に対してセンサ保持部12が近づいたり離れたりする方向である。+Z方向はセンサ保持部12を測定対象面18に近づける接近方向であり、-Z方向はセンサ保持部12を測定対象面18から離す離間方向である。センサホルダ10は、センサ保持部12の保持するセンサ11が測定対象面18の-Z方向に配置されているときに移動機構17が+Z方向にリンク機構13を移動させることにより、センサ11を測定対象面18に密着させる。
【0019】
なお、
図1において、+X,-XはX方向において相反する一対の方向を示し、+Y,-YはY方向において相反する一対の方向を示している。
図2~7に示すX,Y,Zは、
図1に示すX,Y,Zに対応している。センサホルダ10の各部位について
図1~
図5を用いて説明する場合、センサホルダ10が待機状態にあることを前提として説明する。
【0020】
(センサ11)
図2に示すように、センサ11は、例えば、測定対象面18の振動を検出する振動センサである。センサ11は、センサベース20、センサ本体21、および、コネクタ22を有している。センサベース20は、+Z方向に位置する端面であって測定対象面18に当接するセンシング面23を有している。センサベース20は、測定対象面18の振動がセンシング面23を介して伝達されることにより測定対象面18の振動に応じた圧力が作用する図示されないピエゾ素子を内蔵している。センサ本体21は、センサベース20に対する-Z方向に位置している。センサ本体21は、センサ保持部12に保持される部位である。センサ本体21は、Z方向に延びており、その外周面がセンサ保持部12に保持される保持面に設定されている。コネクタ22は、センサ本体21に対する-Z方向に位置している。コネクタ22は、Z方向に延びており、センサ本体21よりも小径に形成されている。センサ本体21およびコネクタ22の内部空間には、センサ11からの電気信号を伝送する図示されない電気信号線が配策される。
【0021】
(センサ保持部12)
図1~4を参照してセンサ保持部12について説明する。
図1~4に示すように、センサ保持部12は、センサ11が取り付けられるセンサ取付部30と、第1リンク機構15を構成する第1リンク52の先端部が連結される第1先端連結部31とを有している。センサ取付部30と第1先端連結部31とは一体的に連結されている。
【0022】
図2に示すように、センサ取付部30は、センサ11のセンサ本体21をクランプすることによりセンサ11が固定されるすり割り付きクランプ機構である。センサ取付部30は、全体として略円筒形状に形成されている。センサ取付部30は、Z方向に延びるセンサホルダ10の中心軸Cを中心としてZ方向に延びる取付孔32を有している。センサ取付部30は、間隙36を介して対向配置された挿通孔39と雌ねじ部40(
図4参照)を有している。
【0023】
図2,3に示すように、第1先端連結部31は、センサ取付部30に形成された取付孔32の-Z方向の位置に、センサホルダ10の中心軸Cを中心としてZ方向に延びる配線用貫通孔45が形成されている(
図3参照)。配線用貫通孔45は、センサ11からの電気信号を伝送する電気信号線が配策される空間を第1先端連結部31に形成する。
【0024】
図2~4に示すように、第1先端連結部31は、+X方向の端面46と-X方向の端面47とに開口を有してX方向に沿って延びる一対の第1先端支持孔48を有している。一対の第1先端支持孔48は、
図4に示す-X方向からのセンサホルダ10の平面視において、センサホルダ10の中心軸Cを対称軸として線対称となる位置に形成されている。一対の第1先端支持孔48は、中心間距離が第1先端ピッチP1Aで形成されている。第1先端連結部31は、第1リンク機構15を構成する第1リンク52の先端部を支持する。
【0025】
センサ11の取付工程においては、センサ11のコネクタ22およびセンサ本体21がセンサ保持部12の取付孔32に対して+Z方向から差し入れられる。そして、クランプボルトで締め込むことによりセンサ本体21がクランプされる。これにより、センサ11がセンサ保持部12に取り付けられる。センサ11は、待機状態にあるセンサホルダ10において、センシング面23の中心位置23Cを通る法線方向がセンサホルダ10の中心軸Cに重なるように保持される。
【0026】
(第1リンク機構15)
図1,3,4を参照して第1リンク機構15について説明する。第1リンク機構15は、センサ保持部12の第1先端連結部31を含んで構成されたリンク機構である。第1リンク機構15は、X方向において対向配置された一対の第1揺動リンク部50と、第1先端連結部31に対する-Z方向に位置する第1基端連結部51とを有している。
【0027】
図1,3に示すように、一対の第1揺動リンク部50は、第1先端連結部31および第1基端連結部51の各々をX方向において挟持する。一対の第1揺動リンク部50の各々は、一対の第1リンク52で構成されている。
【0028】
図3に示すように、第1リンク52は、+Z方向側の端部である第1先端部52Aにおいて第1先端回転軸部53を介して第1先端連結部31に連結されている。第1先端回転軸部53は、X方向に延びる回転軸部であって、第1先端部52Aに形成された図示されない第1先端回転軸孔に回転自在に支持されている。第1先端回転軸部53は、第1先端連結部31に向かって第1リンク52から突出する部分53Aが第1先端連結部31の第1先端支持孔48に支持される。
【0029】
図3に示すように、第1リンク52は、-Z方向側の端部である第1基端部52Bにおいて第1基端回転軸部54を介して第1基端連結部51に連結されている。第1基端回転軸部54は、X方向に延びる回転軸部であって、第1リンク52の第1基端部52Bに形成された図示されない第1基端回転軸孔に回転自在に支持されている。第1基端回転軸部54は、第1基端連結部51に向かって第1リンク52から突出する部分54Aが第1基端連結部51の第1基端支持孔63に支持される。第1先端部52Aの回転中心56Aと第1基端部52Bの回転中心56Bとの距離である第1リンク長さL1は、例えば、第1先端ピッチP1Aよりも大きく、かつ、後述の第1基端ピッチP1Bよりも小さい長さに設定される。
【0030】
図3に示すように、第1基端連結部51は、ジョイント部14を構成する。ジョイント部14は、第1基端連結部51と、第1基端連結部51に対する-Z方向に位置して第1基端連結部51に一体的に連結された第2先端連結部65(詳細は後述)とで構成されている。ジョイント部14は、第1先端連結部31に形成された配線用貫通孔45に対する-Z方向の位置に、第1基端連結部51および第2先端連結部65を貫通する貫通孔であってセンサホルダ10の中心軸Cを中心としてZ方向に延びる配線用貫通孔60が形成されている。配線用貫通孔60は、配線用貫通孔45よりも大きな孔であるとよい。こうした構成によれば、第1リンク機構15に内部において電気信号線の配策経路についての自由度が高まるため、リンク機構13の動作にともなう電気信号線への機械的な負荷を抑えることができる。
【0031】
図3,4に示すように、第1基端連結部51は、+X方向の端面61と-X方向の端面62とに開口を有してX方向に沿って延びる一対の第1基端支持孔63を有している。一対の第1基端支持孔63は、
図4に示す-X方向からのセンサホルダ10の平面視において、センサホルダ10の中心軸Cを対称軸として線対称となる位置に形成されている。一対の第1基端支持孔63は、中心間距離が第1先端ピッチP1Aよりも大きい第1基端ピッチP1Bで形成されている。第1リンク52の第1基端部52Bに回転自在に支持された第1基端回転軸部54は、第1基端連結部51に向かって第1リンク52から突出する部分54Aが第1基端連結部51の第1基端支持孔63によって支持される。
【0032】
図4に示すように、第1先端ピッチP1Aと第1基端ピッチP1Bは、待機状態にあるセンサホルダ10の-X方向からの平面視において、第1先端部52Aの回転中心56Aと第1基端部52Bの回転中心56Bとを結ぶ第1仮想線64の交点である第1仮想交点Pi1がセンシング面23に重なるように設定される。なお、ここでいう「重なる」は、センシング面23の面上に第1仮想交点Pi1が位置することではなく、あくまでも-X方向からの平面視において重なることをいう。
【0033】
図4に示すように、上述した構成の第1リンク機構15は、X方向からのセンサホルダ10の平面視において、センサ保持部12の第1先端連結部31を最短リンク、一対の第1リンク52を揺動リンク、ジョイント部14の第1基端連結部51を静止リンクとする4リンク機構である両てこ機構である。第1リンク機構15は、Y方向に対するセンサ保持部12の傾斜に合わせて第1リンク52が揺動する。
【0034】
(第2リンク機構16)
図1,3,5を参照して第2リンク機構16について説明する。第2リンク機構16は、第1リンク機構15を支持するリンク機構である。第2リンク機構16は、ジョイント部14を構成する第2先端連結部65と、Y方向において対向配置された一対の第2揺動リンク部70と、第2先端連結部65に対する-Z方向に位置するベース部71とを有している。
【0035】
図3に示すように、ジョイント部14を構成する第2先端連結部65には、上述した配線用貫通孔60が形成されている。
図3,5に示すように、第2先端連結部65は、+Y方向の端面66と-Y方向の端面67とに開口を有してY方向に沿って延びる一対の第2先端支持孔68を有している。一対の第2先端支持孔68は、
図5に示す-Y方向からのセンサホルダ10の平面視において、センサホルダ10の中心軸Cを対称軸として線対称となる位置に形成されている。一対の第2先端支持孔68は、中心間距離が第2先端ピッチP2Aで形成されている。第2先端ピッチP2Aは、例えば、第1先端ピッチP1Aよりも大きく、かつ、第1基端ピッチP1Bよりも小さい。第2先端連結部65は、第2揺動リンク部70を構成する第2リンク72の+Z方向側の端部である第2先端部72Aを支持する。
【0036】
図1,3に示すように、一対の第2揺動リンク部70は、ジョイント部14の第2先端連結部65およびベース部71の第2基端連結部71Bの各々をY方向において挟持している。一対の第2揺動リンク部70の各々は、一対の第2リンク72で構成されている。
【0037】
図3に示すように、第2リンク72は、第2先端部72Aにおいて第2先端回転軸部73を介して第2先端連結部65に連結される。第2先端回転軸部73は、Y方向に延びる回転軸部であって、第2先端部72Aに形成された図示されない第2先端回転軸孔に回転自在に支持されている。第2先端回転軸部73は、第2先端連結部65に向かって第2リンク72から突出する部分73Aが第2先端連結部65の第2先端支持孔68に支持される。
【0038】
図3に示すように、第2リンク72は、-Z方向側の端部である第2基端部72Bにおいて第2基端回転軸部74を介してベース部71の第2基端連結部71Bに連結されている。第2基端回転軸部74は、Y方向に延びる回転軸部であって、第2基端部72Bに形成された図示されない第2基端回転軸孔に回転自在に支持されている。第2基端回転軸部74は、第2基端連結部71Bに向かって第2リンク72から突出する部分74Aが第2基端連結部71Bに支持される。
【0039】
図3に示すように、ベース部71は、移動機構17に対してリンク機構13を連結する際にベースとなる部材である。ベース部71は、ジョイント部14に形成された配線用貫通孔60に対する-Z方向に、センサホルダ10の中心軸Cを中心としてZ方向の延びる円形孔である配線用貫通孔75が形成されている。配線用貫通孔75は、配線用貫通孔60と略等しい孔径を有している。
【0040】
図3,5に示すように、ベース部71は、+Y方向の端面76と-Y方向の端面77とに開口を有してY方向に沿って延びる一対の第2基端支持孔78を第2基端連結部71Bに有している。一対の第2先端支持孔68は、
図5に示す-Y方向からのセンサホルダ10の平面視において、センサホルダ10の中心軸Cを対称軸として線対称となる位置に形成されている。一対の第2基端支持孔78は、中心間距離が第2基端ピッチP2Bで形成されている。第2基端ピッチP2Bは、例えば、第2先端ピッチP2Aよりも大きく、かつ、第1基端ピッチP1Bよりも小さい。第2基端部72Bに回転自在に支持された第2基端回転軸部74は、第2基端連結部71Bに向かって第2リンク72から突出する部分74Aが第2基端連結部71Bの第2基端支持孔78に支持される。第2先端部72Aの回転中心79Aと第2基端部72Bの回転中心79Bとの距離である第2リンク長さL2は、例えば、第2先端ピッチP2Aよりも大きく、かつ、後述する第2基端ピッチP2Bよりも小さい長さに設定される。
【0041】
図5に示すように、第2先端ピッチP2Aと第2基端ピッチP2Bは、待機状態にあるセンサホルダ10の-Y方向からの平面視において、第2先端部72Aの回転中心79Aと第2基端部72Bの回転中心79Bとを結ぶ第2仮想線80の交点である第2仮想交点Pi2がセンシング面23に重なるように設定される。なお、ここでいう「重なる」は、センシング面23の面上に第2仮想交点Pi2が位置することではなく、あくまでも-Y方向からの平面視において重なることをいう。
【0042】
図5に示すように、上述した構成の第2リンク機構16は、-Y方向からのセンサホルダ10の平面視において、ジョイント部14の第2先端連結部65を最短リンク、一対の第2リンク72を揺動リンク、第2基端連結部71Bを静止リンクとする4リンク機構である両てこ機構である。第2リンク機構16は、X方向に対するセンサ保持部12の傾斜に合わせて第1リンク機構15を介して第2リンク72が揺動する。
【0043】
図6および
図7を参照して、上述したセンサホルダ10の動作態様について説明する。
センサホルダ10は、測定対象面18に対する-Z方向にセンサ11が配置され、移動機構17によって+Z方向へと移動する。このとき、センサホルダ10は
図1に示す待機状態にある。そして、センシング面23が測定対象面18に接触すると、測定対象面18の傾斜に倣ってセンシング面23が傾斜する際にリンク機構13が作動する。
【0044】
図6(a)に示すように、測定対象面18がY方向に対して角度θyだけ傾斜していると、第1リンク機構15は、センシング面23が測定対象面18の傾斜に倣うように第1リンク52が揺動し、Y方向に対してセンサホルダ10を角度θyだけ傾斜させる。
【0045】
図6(b)に示すように、このとき、センシング面23の中心位置23Cは、センサホルダ10の中心軸Cに対して僅かに+Y方向側の位置P11へ移動する。一方、例えば、一対の第1先端部52Aの回転中心56Aの中点56C(
図4参照)を中心として角度θyだけセンシング面23を傾斜させると、センシング面23の中心位置23Cは、中点56Cを中心とした円弧56E(
図4参照)上の位置であって、位置P11よりもさらに+Y方向側の位置P12まで移動する。すなわち、第1リンク機構15は、Y方向に対して角度θyだけセンシング面23を傾斜させる際に中心軸Cに対する中心位置23Cのずれ量を小さくすることができる。
【0046】
図7(a)に示すように、測定対象面18がX方向に対して角度θxだけ傾斜していると、第2リンク機構16は、センシング面23が測定対象面18の傾斜に倣うように第2リンク72が揺動し、X方向に対してセンサホルダ10を角度θxだけ傾斜させる。
【0047】
図7(b)に示すように、このとき、センシング面23の中心位置23Cは、センサホルダ10の中心軸Cに対してほんの僅か-X方向側の位置P21に移動する。一方、例えば、一対の第2先端部72Aの回転中心79Aの中点79C(
図5参照)を中心として角度θxだけセンシング面23を傾斜させると、センシング面23の中心位置23Cは、中点79Cを中心とした円弧79E(
図5参照)上の位置であって、中心軸Cに対して+X方向にて大きなずれ量を有する位置P22に移動する。すなわち、第2リンク機構16は、X方向に対して角度θxだけセンシング面23を傾斜させる際に中心軸Cに対する中心位置23Cのずれ量を小さくすることができる。
【0048】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)センサホルダ10は、X方向を軸として、また、Y方向を軸として傾斜自在にセンサ保持部12を支持している。そのため、センサ保持部12に保持されたセンサ11を測定対象面18に当接させたときに測定対象面18に倣うようにセンサ11を傾斜させることができる。その結果、測定対象面18に対してセンサ11を適切に配置することができる。
【0049】
例えば、弾性体を介してセンサ11を支持する構成においては、測定対象面18の傾斜に合わせて弾性体が弾性変形すると、センシング面23には弾性体の復元力が作用することとなる。このとき、弾性体の圧縮部分が偏倚していると弾性体の復元力がセンシング面23に偏倚して作用することとなり、センサ11の測定誤差が大きくなってしまう。こうした測定誤差は、ピエゾ素子を用いた振動センサにおいては特に大きくなる。この点、センサホルダ10においては、センシング面23の傾斜に合わせてリンク機構13が作動する。そのため、上述した弾性体の弾性変形などが生じず、センシング面23に対して不必要な力が作用することがない。このように、センサホルダ10においては、センサ11を適切に配置することで測定誤差を小さくすることができる。
【0050】
(2)センサホルダ10は、互いに直交するX方向とY方向とを軸として傾斜自在にセンサ保持部12を支持している。これにより、センサ保持部12の傾斜についての自由度を高めることができる。その結果、測定対象面18に対してセンサ11をより適切に配置することができる。
【0051】
(3)リンク機構13は、第1リンク機構15と第2リンク機構16とによって構成されている。すなわち、リンク機構13は、X方向を軸にセンサ保持部12を傾斜させる機構と、Y方向を軸にセンサ保持部12を傾斜させる機構とが別々の機構で構成されている。これにより、第1および第2リンク機構15,16の構造についての自由度を高めることができる。その結果、例えば、第1および第2リンク機構15,16の各々における機械的強度についての自由度を向上させることができる。
【0052】
(4)第1リンク機構15が第1基端連結部51を最短リンクとする両てこ機構であることで、Y方向に対してセンサ保持部12が傾斜する際の傾斜軸をセンシング面23に近い位置に配置することができる。これにより、第1リンク52の揺動量に対して第1先端連結部31、すなわちセンサ保持部12の傾斜量を大きくすることができる。換言すれば、センサ保持部12の傾斜量に対して第1リンク52の揺動量を小さくすることができる。これにより、測定対象面18に密着させる際にセンシング面23がY方向に対して傾斜したとしても、Y方向におけるセンシング面23のずれ量を小さくすることができる。
【0053】
(5)第2リンク機構16がジョイント部14を最短リンクとする両てこ機構であることで、X方向に対してセンサ保持部12が傾斜する際の傾斜軸をセンシング面23に近い位置に配置することができる。これにより、第2リンク72の揺動量に対して第2先端連結部65、すなわち第1リンク機構15の傾斜量を大きくすることができる。換言すれば、第1リンク機構15の傾斜量(センサ保持部12)に対して第2リンク72の揺動量を小さくすることができる。これにより、測定対象面18に密着させる際にセンシング面23がY方向に傾斜したとしても、X方向におけるセンシング面23のずれ量を小さくすることができる。
【0054】
(6)上記(4)(5)により、センサホルダ10は、より高い精度でセンサ11を配置することができる。また、X方向の傾斜軸とY方向の傾斜軸とを中心に傾斜自在にセンサ11を保持する機構としては、例えば、ジンバル機構が挙げられる。しかしながら、ジンバル機構においてX方向の傾斜軸とY方向の傾斜軸とをセンシング面23付近に設定するとなれば、センサの周辺構造が複雑化・大型化してしまう。そのため、測定対象面18の周辺部材に干渉しやすくなり、狭小な測定対象面18の測定が困難なものとなる。この点、上記構造のセンサホルダ10においては、センサ11の周辺構造が簡素化されることで測定対象面18の周辺部材と干渉しにくくなる。その結果、測定対象面18の設定について自由度を高めることができる。
【0055】
(7)第1リンク機構15は、センサ保持部12およびジョイント部14の各々を挟持するようにX方向において対向配置された第1揺動リンク部50を有している。こうした構成によれば、第1リンク機構15の機械的強度が高められることで、センシング面23が傾斜するときに各第1リンク52に作用する機械的な負荷を低減することができる。
【0056】
(8)第1リンク機構15が一対の第1揺動リンク部50を有することで第1リンク機構15の剛性が高くなる。そのため、測定対象面18に倣うセンシング面23の傾斜にともなう力が第1リンク機構15を介して第2リンク機構16に伝達されやすくなり、当該力が第2リンク機構16を動作させる力として作用しやすくなる。
【0057】
例示すると、一対の第1揺動リンク部50の一方でセンサ保持部12が片持ち梁状に支持される構成においては、測定対象面18に倣うようにセンサ保持部12が傾斜したときにその傾斜にともなう力が第1リンク52とセンサ保持部12との連結部分にモーメントとして作用する。そのため、傾斜にともなう力が第2リンク機構16を動作させる力として作用しにくい。この点、センサホルダ10においては、センサ保持部12が一対の第1揺動リンク部50によって挟持されている。そのため、Y方向を軸にしたセンサ保持部12の傾斜にともなう力が第1リンク機構15を介して第2リンク機構16に伝達されやすくなる。その結果、傾斜にともなう力が第2リンク機構16を動作させる力として作用しやすくなる。
【0058】
(9)同様に、第2リンク機構16は、ジョイント部14の第2先端連結部65およびベース部71の第2基端連結部71Bの各々を挟持するようにY方向において対向配置された第2揺動リンク部70を有している。こうした構成によれば、第2リンク機構16の機械的強度が高められることで、センシング面23が傾斜するときに各第2リンク72に作用する機械的な負荷を低減することができる。
【0059】
(10)センサホルダ10は、Z方向に延びる配線用貫通孔45,60,75を有している。こうした構成によれば、センサ11に接続される電気信号線をセンサホルダ10の内部空間に配策させることができる。その結果、該電気信号線が保護されて検査時におけるトラブルを低減することができる。
【0060】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・センサホルダ10は、センサホルダ10の外部空間を電気信号線が配策される構成であってもよい。
【0061】
・第1リンク機構15は、一対の第1揺動リンク部50でセンサ保持部12を支持する構成に限られない。例えば、第1リンク機構15は、Y方向におけるセンサ保持部12の中央部分を支持する一対の第1リンク52で構成されてもよい。
【0062】
・第1リンク機構15は、第1先端連結部31を最短リンクとする両てこ機構に限られない。例えば、第1リンク機構15は、X方向におけるセンサホルダ10の平面視において、第1先端ピッチP1Aが第1基端ピッチP1Bよりも大きい構成であってもよい。
【0063】
・第2リンク機構16は、一対の第2揺動リンク部70で第1リンク機構15を支持する構成に限られない。例えば、第2リンク機構16は、X方向における第1リンク機構15の静止リンクの中央部分を支持する一対の第2リンク72で構成されてもよい。
【0064】
・第2リンク機構16は、第2先端連結部65を最短リンクとする両てこ機構に限られない。例えば、第2リンク機構16は、Y方向におけるセンサホルダ10の平面視において、第2先端ピッチP2Aが第2基端ピッチP2Bよりも大きい構成であってもよい。
【0065】
・第1リンク機構15が形成する傾斜軸と第2リンク機構16が形成する傾斜軸は、互いに直交する構成がもっとも好ましいが互いに直交する構成に限られない。
・センサ11は、振動センサに限らず、測定対象面18に対してセンシング面23が密着することにより測定するものであればよい。
【0066】
・センサ保持部12は、センシング面23の中心位置23Cを通る法線方向がセンサホルダ10の中心軸Cに重なるようにセンサ11が固定される構成を有していればよい。そのため、センサ保持部12は、すり割り付きクランプ機構に限らず、Vブロックや三つ爪、パワーロックなどでセンサ11が固定されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
C…中心軸、10…センサホルダ、11…センサ、12…センサ保持部、13…リンク機構、14…ジョイント部、15…第1リンク機構、16…第2リンク機構、17…移動機構、18…測定対象面、20…センサベース、21…センサ本体、22…コネクタ、23…センシング面、23C…中心位置、30…センサ取付部、31…第1先端連結部、32…取付孔、36…間隙、39…挿通孔、40…雌ねじ部、45…配線用貫通孔、46,47…端面、48…第1先端支持孔、50…第1揺動リンク部、51…第1基端連結部、52…第1リンク、52A…第1先端部、52B…第1基端部、53…第1先端回転軸部、53A,54A…部分、54…第1基端回転軸部、56A,56B…回転中心、56C…中点、60…配線用貫通孔、61,62…端面、63…第1基端支持孔、64…第1仮想線、65…第2先端連結部、66,67…端面、68…第2先端支持孔、70…第2揺動リンク部、71…ベース部、71B…第2基端連結部、72…第2リンク、72A…第2先端部、72B…第2基端部、73…第2先端回転軸部、73A,74A…部分、74…第2基端回転軸部、75…配線用貫通孔、76,77…端面、78…第2基端支持孔、79A,79B…回転中心、79C…中点、80…第2仮想線。