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特許7198747接着剤組成物、硬化物、積層体、及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】接着剤組成物、硬化物、積層体、及び装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 183/07 20060101AFI20221222BHJP
   C09J 183/06 20060101ALI20221222BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221222BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20221222BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
C09J183/07
C09J183/06
C09J11/06
C09J7/35
B32B27/00 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019518849
(86)(22)【出願日】2018-05-16
(86)【国際出願番号】 JP2018018998
(87)【国際公開番号】W WO2018212257
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2017098511
(32)【優先日】2017-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017098513
(32)【優先日】2017-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】芝本 明弘
(72)【発明者】
【氏名】前谷 臣治
(72)【発明者】
【氏名】西田 一博
(72)【発明者】
【氏名】宇佐 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山川 章
(72)【発明者】
【氏名】辻 直子
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/030116(WO,A1)
【文献】特開2015-096559(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204114(WO,A1)
【文献】特開2017-008148(JP,A)
【文献】特開2003-238923(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129818(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/204115(WO,A1)
【文献】特表2016-511784(JP,A)
【文献】特開2014-177632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B27/00
C08G77/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサン構成単位として、下記式(I)
[R a SiO 3/2 ] (I)
(式(I)中、R a は、ラジカル重合性基を含む基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアルケニル基を示す)
で表される構成単位(T3体)と、下記式(II)
[R b SiO 2/2 (OR c )] (II)
(式(II)中、R b は、ラジカル重合性基を含む基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアルケニル基を示す。R c は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示す)
で表される構成単位(T2体)を含むポリオルガノシルセスキオキサンであって、
前記T3体とT2体のモル比[T3体/T2体]が5~100であり、
前記T3体として、下記式(1)
[R1SiO3/2] (1)
[式(1)中、R1は(メタ)アクリロイルオキシ基を含む基を示す]
で表される構成単位を少なくとも含み、
ポリオルガノシルセスキオキサンを構成するシロキサン構成単位の全量(100モル%)に対する上記式(1)で表される構成単位及び下記式(2)
[R1SiO2/2(OR2)] (2)
[式(2)中、R1は上記に同じ。R2は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示す]
で表される構成単位の合計割合が55~100モル%であり、
数平均分子量が1500~50000、分子量分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.0~4.0であるポリオルガノシルセスキオキサン(A)を含有する接着剤組成物。
【請求項2】
前記ポリオルガノシルセスキオキサン(A)が、さらに、下記式(1-1)
[R3SiO3/2] (1-1)
[式(1-1)中、R3は、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアルケニル基を示す]
で表される構成単位を有する請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
さらに、ポリオルガノシルセスキオキサン(A)以外のラジカル重合性化合物(B)を含有する請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
さらに、ラジカル重合開始剤(C)を含有する請求項1~3のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
さらに、下記式(d)
【化1】
(式(d)中、R11~R13は同一又は異なって、OR基又はR基を示し、少なくとも1つはOR基である。尚、前記Rは置換基を有していてもよい1価の炭化水素基である。Yはラジカル重合性基を含む基を示す)
で表されるシランカップリング剤(D)を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
熱ラジカル重合開始剤と、熱ラジカル重合開始剤1重量部に対して0.1~10.0重量部の酸化防止剤(E)を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
熱ラジカル重合開始剤と、熱ラジカル重合開始剤1重量部に対して0.05~1.0重量部の連鎖移動剤(F)を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の接着剤組成物の硬化物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の接着剤組成物に、硬化温度を段階的に変化させる加熱処理を施して硬化物を製造する方法であって、1段階目の加熱処理終了時の硬化度を85%以下とし、2段階目以降の加熱処理によって硬化度を85%超とすることを特徴とする硬化物の製造方法。
【請求項10】
基材上に、請求項1~7のいずれか1項に記載の接着剤組成物の固化物からなる接着剤層を備える接着剤層付き基材。
【請求項11】
2個以上の基材が、請求項1~7のいずれか1項に記載の接着剤組成物の硬化物を介して積層された構成を有する積層体。
【請求項12】
請求項11に記載の積層体を備えた装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、その硬化物、前記接着剤組成物を用いて形成された積層体、並びに前記積層体を備える装置に関する。本願は、2017年5月17日に日本に出願した、特願2017-098511号、及び特願2017-098513号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
半導体の積層や電子部品の接着に用いられる接着剤としては、ベンゾシクロブテン(BCB)、ノボラック系エポキシ樹脂、又はポリオルガノシルセスキオキサンを含有する熱硬化型接着剤が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
しかし、BCBを含有する熱硬化型接着剤を硬化させるためには200~350℃程度の高温で加熱することが必要であり、前記高温に曝されることで被着体がダメージを受ける可能性があった。また、ノボラック系エポキシ樹脂を含有する熱硬化型接着剤は、鉛フリー半田リフローなどの高温プロセス(例えば、260~280℃)に付した際に接着剤が分解してアウトガスが発生し、それにより密着性が低下する問題があった。
【0004】
また、冷熱衝撃の付与等により、配線が施された基材を積層してなる積層体の接着剤層にクラックや剥離が生じると、基材が剥離したり、配線が破壊される原因となり、結果として積層体を備えた装置の故障の原因となることが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-279840号公報
【文献】特開2010-226060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、低温で硬化して、絶縁性、耐熱性、及び接着性に優れた硬化物を形成することができる接着剤組成物(接着剤)を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、低温で硬化して、絶縁性、耐熱性、耐クラック性(若しくは、耐冷熱衝撃性)、及び接着性に優れた硬化物を形成することができる接着剤組成物(接着剤)を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、前記接着剤組成物の硬化物を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、前記接着剤組成物で基材を接着して得られる積層体、及び該積層体を備えた装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ラジカル重合性基を含むシルセスキオキサン構成単位(単位構造)を備え、特定の数平均分子量と特定の分子量分散度とを有するポリオルガノシルセスキオキサンを含む接着剤組成物は、低温で硬化して、絶縁性、耐熱性、及び接着性に優れた硬化物を形成することができ、さらに、特定のラジカル重合性基含有シラン化合物を併用することによって、耐クラック性(若しくは、耐冷熱衝撃性)にも優れた硬化物を形成することができること、本発明の接着剤組成物は、半導体の積層や電子部品等の接着に好適に使用できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、シロキサン構成単位を含むポリオルガノシルセスキオキサンであって、前記シロキサン構成単位が、下記式(1)
[R1SiO3/2] (1)
[式(1)中、R1はラジカル重合性基を含む基を示す]
で表される構成単位を少なくとも含み、ポリオルガノシルセスキオキサンを構成するシロキサン構成単位の全量(100モル%)に対する上記式(1)で表される構成単位及び下記式(2)
[R1SiO2/2(OR2)] (2)
[式(2)中、R1は上記に同じ。R2は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示す]
で表される構成単位の割合が55~100モル%であり、数平均分子量が1500~50000、分子量分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.0~4.0であるポリオルガノシルセスキオキサン(A)を含有する接着剤組成物を提供する。
【0009】
本発明は、また、前記ポリオルガノシルセスキオキサン(A)が、さらに、下記式(1-1)
[R3SiO3/2] (1-1)
[式(1-1)中、R3は、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアルケニル基を示す]
で表される構成単位を有する前記接着剤組成物を提供する。
【0010】
本発明は、また、前記ラジカル重合性基が(メタ)アクリロイルオキシ基である前記接着剤組成物を提供する。
【0011】
本発明は、また、さらに、ポリオルガノシルセスキオキサン(A)以外のラジカル重合性化合物(B)を含有する前記接着剤組成物を提供する。
【0012】
本発明は、また、さらに、ラジカル重合開始剤(C)を含有する前記接着剤組成物を提供する。
【0013】
本発明は、また、さらに、下記式(d)
【化1】
(式(d)中、R11~R13は同一又は異なって、OR基又はR基を示し、少なくとも1つはOR基である。尚、前記Rは置換基を有していてもよい1価の炭化水素基である。Yはラジカル重合性基を含む基を示す)
で表されるシランカップリング剤(D)を含有する前記接着剤組成物を提供する。
【0014】
本発明は、また、ラジカル重合開始剤(C)として熱ラジカル重合開始剤を含有し、さらに、酸化防止剤(E)を熱ラジカル重合開始剤1重量部に対して0.1~10.0重量部含有する前記接着剤組成物を提供する。
【0015】
本発明は、また、ラジカル重合開始剤(C)として熱ラジカル重合開始剤を含有し、さらに、連鎖移動剤(F)を熱ラジカル重合開始剤1重量部に対して0.05~1.0重量部含有する前記接着剤組成物を提供する。
【0016】
本発明は、また、前記接着剤組成物の硬化物を提供する。
【0017】
本発明は、また、前記接着剤組成物に、硬化温度を段階的に変化させる加熱処理を施して硬化物を製造する方法であって、1段階目の加熱処理終了時の硬化度を85%以下とし、2段階目以降の加熱処理によって硬化度を85%超とすることを特徴とする硬化物の製造方法を提供する。
【0018】
本発明は、また、基材上に、前記接着剤組成物の固化物からなる接着剤層を備える接着剤層付き基材を提供する。
【0019】
本発明は、また、2個以上の基材が、前記接着剤組成物の硬化物を介して積層された構成を有する積層体を提供する。
【0020】
本発明は、また、前記積層体を備えた装置を提供する。
【発明の効果】
【0021】
高温で加熱する必要がある熱硬化性接着剤を用いた場合は、被着体が熱によるダメージを受ける場合があるが、本発明の接着剤組成物は、低温で硬化して、耐熱性、及び接着性に優れた硬化物を形成することができる。また、得られる硬化物は良好な絶縁性を示す。更に、本発明の接着剤組成物と、特定のラジカル重合性基含有シラン化合物を併用すれば、耐クラック性にも優れた硬化物を形成することができる。
そのため、本発明の接着剤組成物は、絶縁性を必要とする電子材料用部品の接着用途に好適である。
また、本発明の接着剤組成物を使用して得られる積層体は、熱によるダメージを有さず、冷熱衝撃を付与しても接着剤層にクラックや剥離が生じることがない。そのため、前記積層体を備えた装置は高い信頼性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】製造例1で得られたアクリロイル基含有ポリオルガノシルセスキオキサン(1)の1H-NMRチャートである。
図2】製造例1で得られたアクリロイル基含有ポリオルガノシルセスキオキサン(1)の29Si-NMRチャートである。
図3】製造例2で得られたアクリロイル基含有ポリオルガノシルセスキオキサン(2)の1H-NMRチャートである。
図4】製造例2で得られたアクリロイル基含有ポリオルガノシルセスキオキサン(2)の29Si-NMRチャートである。
図5】硬化物の耐熱性の評価方法を示す説明図(熱重量分析結果の模式図)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[接着剤組成物]
本発明の接着剤組成物は、シロキサン構成単位を含むポリオルガノシルセスキオキサンであって、前記シロキサン構成単位が、下記式(1)
[R1SiO3/2] (1)
[式(1)中、R1はラジカル重合性基を含む基を示す]
で表される構成単位を少なくとも含み、ポリオルガノシルセスキオキサンを構成するシロキサン構成単位の全量(100モル%)に対する上記式(1)で表される構成単位及び下記式(2)
[R1SiO2/2(OR2)] (2)
[式(2)中、R1は上記に同じ。R2は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示す]
で表される構成単位の割合が55~100モル%であり、数平均分子量が1500~50000、分子量分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.0~4.0であるポリオルガノシルセスキオキサン(A)を含有する。
【0024】
本発明の接着剤組成物は、さらに、ポリオルガノシルセスキオキサン(A)以外のラジカル重合性化合物(B)、熱ラジカル重合開始剤(C)、シランカップリング剤(D)、酸化防止剤(E)、及び連鎖移動剤(F)等を含んでいてもよい。
【0025】
[ポリオルガノシルセスキオキサン(A)]
本発明におけるポリオルガノシルセスキオキサン(A)はシロキサン構成単位からなる主鎖を含む。前記シロキサン構成単位は、下記式(1)
[R1SiO3/2] (1)
[式(1)中、R1はラジカル重合性基を含む基を示す]
で表される構成単位を少なくとも含む。
【0026】
上記式(1)で表される構成単位は、一般に[RSiO3/2]で表されるシルセスキオキサン構成単位(いわゆるT単位)であり、なかでもT3体である。尚、上記式中のRは、水素原子又は1価の有機基を示し、以下においても同じである。上記式(1)で表される構成単位は、対応する加水分解性三官能シラン化合物(例えば、後述の式(a)で表される化合物)の加水分解及び縮合反応により形成される。
【0027】
式(1)中のR1は、ラジカル重合性基を含む基(1価の基)を示す。即ち、本発明におけるポリオルガノシルセスキオキサン(A)は、分子内にラジカル重合性基を少なくとも有する重合性化合物である。
【0028】
上記ラジカル重合性基としては、例えば、ビニル基、ビニルエーテル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等が挙げられる。接着剤組成物の硬化性、及び得られる硬化物の絶縁性、耐熱性、耐クラック性の観点から、(メタ)アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0029】
ポリオルガノシルセスキオキサン(A)は、上記式(1)で表される構成単位を1種のみ有するものであってもよいし、上記式(1)で表される構成単位を2種以上有するものであってもよい。
【0030】
また、ポリオルガノシルセスキオキサン(A)は、シルセスキオキサン構成単位[RSiO3/2]として、上記式(1)で表される構成単位以外にも、下記式(1-1)、(1-2)で表される構成単位を有していてもよい。
[R3SiO3/2] (1-1)
[HSiO3/2] (1-2)
【0031】
上記式(1-1)、(1-2)で表される構成単位は、対応する加水分解性三官能シラン化合物(例えば、後述の式(b)、(c)で表される化合物)の加水分解及び縮合反応により形成される。
【0032】
上記式(1-1)中のR3は、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアルケニル基を示す。上記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。上記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基等の直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基が挙げられる。
【0033】
上述の置換アリール基、置換アラルキル基、置換シクロアルキル基、置換アルキル基、置換アルケニル基としては、上述のアリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルキル基、アルケニル基のそれぞれにおける水素原子又は主鎖骨格の一部若しくは全部が、エーテル基、エステル基、カルボニル基、シロキサン基、ハロゲン原子(フッ素原子等)、メルカプト基、アミノ基、及びヒドロキシ基(水酸基)からなる群より選択された少なくとも1種で置換された基が挙げられる。
【0034】
なかでも、R3としては、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基が好ましく、より好ましくは置換若しくは無置換のアリール基、さらに好ましくはフェニル基である。
【0035】
ポリオルガノシルセスキオキサン(A)は、T単位として、更に、一般に[RSiO2/2(OR)]で表されるシルセスキオキサン構成単位(T2体)を含有していても良い。前記T2体としては、例えば、下記式(2)、(2-1)、(2-2)で表される構成単位等が挙げられる。下記式中のR1、R3は前記に同じ。R2は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示す。下記式(2)、(2-1)、(2-2)で表される構成単位は、いずれも対応する加水分解性三官能シラン化合物の加水分解及び縮合反応により形成される。
[R1SiO2/2(OR2)] (2)
[R3SiO2/2(OR2)] (2-1)
[HSiO2/2(OR2)] (2-2)
【0036】
前記炭素数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等の直鎖又は分岐鎖状アルキル基が挙げられる。
【0037】
ポリオルガノシルセスキオキサン(A)における上述の各シルセスキオキサン構成単位(T単位)の割合は、これらの構成単位を形成するための原料(加水分解性三官能シラン)の組成により適宜調整することが可能である。
【0038】
ポリオルガノシルセスキオキサン(A)は、T単位以外にも、さらに、[R3SiO1/2]で表される構成単位(いわゆるM単位)、[R2SiO2/2]で表される構成単位(いわゆるD単位)、及び[SiO4/2]で表される構成単位(いわゆるQ単位)からなる群より選択される少なくとも1種のシロキサン構成単位を有していてもよい。
【0039】
ポリオルガノシルセスキオキサン(A)における、下記式(I)で表される構成単位(T3体)と、下記式(II)で表される構成単位(T2体)のモル比[式(I)で表される構成単位/式(II)で表される構成単位(モル比);「T3体/T2体」と記載する場合がある]は、例えば5~500であり、下限値は、好ましくは10である。上限値は、好ましくは100、より好ましくは50ある。[T3体/T2体]を上記範囲に調整することにより、接着剤組成物に含まれるポリオルガノシルセスキオキサン(A)以外の成分との相溶性が向上し、取扱い性が向上する。
[RaSiO3/2] (I)
[RbSiO2/2(ORc)] (II)
【0040】
上記式中、Ra、Rbは、同一又は異なって、ラジカル重合性基を含む基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアルケニル基を示す。これらは、R1、R3と同様の例が挙げられる。
【0041】
上記式中、Rcは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、R2と同様の例が挙げられる。
【0042】
上記式(I)で表される構成単位をより詳細に記載すると、下記式(I’)で表される。また、上記式(II)で表される構成単位をより詳細に記載すると、下記式(II’)で表される。下記式(I’)で表される構造中に示されるケイ素原子に結合した3つの酸素原子はそれぞれ、他のケイ素原子(式(I’)に示されていないケイ素原子)と結合している。一方、下記式(II’)で表される構造中に示されるケイ素原子の上と下に位置する2つの酸素原子はそれぞれ、他のケイ素原子(式(II’)に示されていないケイ素原子)に結合している。
【化2】
【0043】
ポリオルガノシルセスキオキサン(A)における[T3体/T2体]は、例えば、29Si-NMRスペクトル測定により求めることができる。29Si-NMRスペクトルにおいて、上記式(I)で表される構成単位(T3体)におけるケイ素原子と、上記式(II)で表される構成単位(T2体)におけるケイ素原子とは、異なる位置(化学シフト)にシグナル(ピーク)を示すため、それぞれのピークの積分比を算出することにより、[T3体/T2体]が求められる。
【0044】
ポリオルガノシルセスキオキサン(A)の29Si-NMRスペクトルは、例えば、下記の装置及び条件により測定することができる。
測定装置:商品名「JNM-ECA500NMR」(日本電子(株)製)
溶媒:重クロロホルム
積算回数:1800回
測定温度:25℃
【0045】
ポリオルガノシルセスキオキサン(A)の[T3体/T2体]が5~500であることは、T3体に対してT2体の存在量が相対的に少なく、シラノールの加水分解・縮合反応がより進行していることを意味する。
【0046】
ポリオルガノシルセスキオキサン(A)は、カゴ型、不完全カゴ型、ラダー型、ランダム型のいずれのシルセスキオキサン構造を有していてもよく、これらシルセスキオキサン構造の2以上が組み合わせられた構造を有していてもよい。
【0047】
ポリオルガノシルセスキオキサン(A)におけるシロキサン構成単位の全量[全シロキサン構成単位;M単位、D単位、T単位、及びQ単位の全量](100モル%)に対する、上記式(1)で表される構成単位及び上記式(2)で表される構成単位の割合(合計割合)は、55~100モル%であり、好ましくは65~100モル%、さらに好ましくは80~99モル%である。上記割合を55モル%以上とすることにより、接着剤組成物の硬化性が向上し、また、硬化物の絶縁性、耐熱性、耐クラック性や接着性が著しく高くなる。尚、ポリオルガノシルセスキオキサン(A)における各シロキサン構成単位の割合は、例えば、原料の組成やNMRスペクトル測定等により算出できる。
【0048】
ポリオルガノシルセスキオキサン(A)におけるシロキサン構成単位の全量[全シロキサン構成単位;M単位、D単位、T単位、及びQ単位の全量](100モル%)に対する、上記式(1-1)で表される構成単位及び上記式(2-1)で表される構成単位の割合(合計割合)は、特に限定されないが、0~70モル%が好ましく、より好ましくは0~60モル%、さらに好ましくは0~40モル%、特に好ましくは1~15モル%である。上記割合を70モル%以下とすることにより、相対的に式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位の割合を多くすることができるため、接着剤組成物の硬化性が向上し、硬化物の絶縁性、耐熱性、耐クラック性や接着性がより高くなる傾向がある。一方、上記割合を1モル%以上とすることにより、硬化物のガスバリア性が向上する傾向がある。
【0049】
ポリオルガノシルセスキオキサン(A)におけるシロキサン構成単位の全量[全シロキサン構成単位;M単位、D単位、T単位、及びQ単位の全量](100モル%)に対する、上記式(1)で表される構成単位、上記式(2)で表される構成単位、上記式(1-1)で表される構成単位、及び上記式(2-1)で表される構成単位の割合(合計割合)は、特に限定されないが、60~100モル%が好ましく、より好ましくは70~100モル%、さらに好ましくは80~100モル%である。上記割合を60モル%以上とすることにより、硬化物の絶縁性、耐熱性、耐クラック性や接着性がより高くなる傾向がある。
【0050】
ポリオルガノシルセスキオキサン(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は1500~50000であり、好ましくは2000~10000、より好ましくは2000~8000、特に好ましくは2000~7000である。数平均分子量を1500以上とすることにより、硬化物の絶縁性、耐熱性、耐クラック性、接着性が向上する。一方、数平均分子量を50000以下とすることにより、接着剤組成物における他の成分との相溶性が向上し、硬化物の絶縁性、耐熱性、耐クラック性が向上する。
【0051】
ポリオルガノシルセスキオキサン(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の分子量分散度(Mw/Mn)は1.0~4.0であり、好ましくは1.1~3.0、より好ましくは1.2~2.7である。分子量分散度を4.0以下とすることにより、硬化物の耐熱性、耐クラック性や接着性がより高くなる。一方、分子量分散度を1.0以上とすることにより、液状となりやすく、取り扱い性が向上する傾向がある。
【0052】
尚、ポリオルガノシルセスキオキサン(A)の数平均分子量、分子量分散度は、下記の装置及び条件により測定することができる。
測定装置:商品名「LC-20AD」((株)島津製作所製)
カラム:
Shodex GPC KF-801(昭和電工(株)製)×2本
Shodex GPC KF-802(昭和電工(株)製)×1本
Shodex GPC KF-803(昭和電工(株)製)×1本
測定温度:40℃
溶離液:THF、試料濃度0.1~0.2重量%
流量:1mL/分
検出器:UV-VIS検出器(商品名「SPD-20A」、(株)島津製作所製)
分子量:標準ポリスチレン換算
【0053】
ポリオルガノシルセスキオキサン(A)は上記構成を有するため、詳細には、[T3体/T2体]が5~500、数平均分子量が1500~50000、分子量分散度が1.0~4.0であるため、ポリオルガノシルセスキオキサン(A)の硬化物は耐熱性に優れ、空気雰囲気下における5%重量減少温度(Td5)は、例えば330℃以上(例えば、330~450℃)であり、好ましくは340℃以上、さらに好ましくは350℃以上である。
【0054】
尚、5%重量減少温度は、一定の昇温速度で加熱した場合における、加熱前の重量の5%が減少した時点での温度であり、耐熱性の指標となる。上記5%重量減少温度は、TGA(熱重量分析)により、空気雰囲気下、昇温速度5℃/分の条件で測定することができる。
【0055】
ポリオルガノシルセスキオキサン(A)は、公知乃至慣用のポリシロキサンの製造方法により製造することができ、特に限定されないが、例えば、1種又は2種以上の加水分解性シラン化合物を加水分解及び縮合させる方法により製造できる。
【0056】
より具体的には、例えば、ポリオルガノシルセスキオキサン(A)におけるシルセスキオキサン構成単位(T単位)を形成するための加水分解性シラン化合物である下記式(a)で表される化合物、必要に応じてさらに、下記式(b)で表される化合物、下記式(c)で表される化合物を、加水分解及び縮合させる方法により、ポリオルガノシルセスキオキサン(A)を製造できる。
1Si(X13 (a)
3Si(X23 (b)
HSi(X33 (c)
【0057】
上記式中のR1、R3は上記式(1)、(1-1)中のR1、R3に同じ。X1、X2、X3は、同一又は異なって、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す。前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等の炭素数1~4のアルコキシ基等が挙げられる。また、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。X1、X2、X3としては、なかでもアルコキシ基が好ましく、より好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。
【0058】
上記加水分解性シラン化合物としては、上記式(a)~(c)で表される化合物以外の加水分解性シラン化合物を併用してもよい。例えば、上記式(a)~(c)で表される化合物以外の加水分解性三官能シラン化合物、M単位を形成する加水分解性単官能シラン化合物、D単位を形成する加水分解性二官能シラン化合物、Q単位を形成する加水分解性四官能シラン化合物等が挙げられる。
【0059】
上記加水分解性シラン化合物の使用量や組成は、所望するポリオルガノシルセスキオキサン(A)の構造に応じて適宜調整できる。例えば、上記式(a)で表される化合物の使用量は、特に限定されないが、使用する加水分解性シラン化合物の全量(100モル%)に対して、55~100モル%が好ましく、より好ましくは65~100モル%、さらに好ましくは80~99モル%である。
【0060】
また、上記式(b)で表される化合物の使用量は、特に限定されないが、使用する加水分解性シラン化合物の全量(100モル%)に対して、0~70モル%が好ましく、より好ましくは0~60モル%、さらに好ましくは0~40モル%、特に好ましくは1~15モル%である。
【0061】
さらに、使用する加水分解性シラン化合物の全量(100モル%)に対する式(a)で表される化合物と式(b)で表される化合物の割合(総量の割合)は、特に限定されないが、60~100モル%が好ましく、より好ましくは70~100モル%、さらに好ましくは80~100モル%である。
【0062】
また、上記加水分解性シラン化合物として2種以上を併用する場合、これらの加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、同時に行うこともできるし、逐次行うこともできる。上記反応を逐次行う場合、反応を行う順序は特に限定されない。
【0063】
上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、1段階で行ってもよいし、2段階以上に分けて行ってもよい。例えば、[T3体/T2体]が5以上20未満であるポリオルガノシルセスキオキサンを効率よく製造するためには、1段階で加水分解及び縮合反応を行うことが好ましい。
【0064】
また、[T3体/T2体]が20以上であるポリオルガノシルセスキオキサンを効率よく製造するためには、2段階以上(好ましくは、2段階)で加水分解及び縮合反応を行うことが好ましく、第1段目の加水分解及び縮合反応で、[T3体/T2体]が5以上20未満であり、数平均分子量が1000~3000であるポリオルガノシルセスキオキサンを得、得られたポリオルガノシルセスキオキサンを、さらに第2段目の加水分解及び縮合反応に付すことが好ましい。
【0065】
第1段目の加水分解及び縮合反応は、溶媒の存在下で行うこともできるし、非存在下で行うこともできる。なかでも溶媒の存在下で行うことが好ましい。上記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール等が挙げられる。上記溶媒としては、なかでも、ケトン又はエーテルを少なくとも含有することが好ましい。尚、溶媒は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0066】
第1段目の加水分解及び縮合反応における溶媒の使用量は、特に限定されず、加水分解性シラン化合物の全量100重量部に対して、0~2000重量部の範囲内で、所望の反応時間等に応じて、適宜調整することができる。
【0067】
第1段目の加水分解及び縮合反応は、触媒及び水の存在下で進行させることが好ましい。上記触媒には、酸触媒及びアルカリ触媒が含まれる。上記酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸;リン酸エステル;酢酸、蟻酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸;活性白土等の固体酸;塩化鉄等のルイス酸等が挙げられる。上記アルカリ触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム等のアルカリ金属の有機酸塩(例えば、酢酸塩);酢酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の有機酸塩(例えば、酢酸塩);リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド;ナトリウムフェノキシド等のアルカリ金属のフェノキシド;トリエチルアミン、N-メチルピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン等のアミン類(第3級アミン等);ピリジン、2,2’-ビピリジル、1,10-フェナントロリン等の含窒素芳香族複素環化合物等が挙げられる。尚、触媒は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、触媒は、水や溶媒等に溶解又は分散させた状態で使用することもできる。前記触媒としては、なかでも、取り扱い性に優れる点において、アルカリ触媒が好ましい。
【0068】
第1段目の加水分解及び縮合反応における上記触媒の使用量は、特に限定されず、加水分解性シラン化合物の全量1モルに対して、0.002~0.200モルの範囲内で、適宜調整することができる。
【0069】
第1段目の加水分解及び縮合反応に際しての水の使用量は、特に限定されず、加水分解性シラン化合物の全量1モルに対して、0.5~20モルの範囲内で、適宜調整することができる。
【0070】
第1段目の加水分解及び縮合反応における上記水の添加方法は、特に限定されず、使用する水の全量を一括で添加してもよいし、逐次的に添加してもよい。逐次的に添加する際には、連続的に添加してもよいし、間欠的に添加してもよい。
【0071】
第1段目の加水分解及び縮合反応の反応温度は、特に限定されないが、40~100℃が好ましく、より好ましくは45~80℃である。また、反応時間は、特に限定されないが、0.1~10時間が好ましく、より好ましくは1.5~8時間である。また、第1段目の加水分解及び縮合反応は、常圧下で行うこともできるし、加圧下又は減圧下で行うこともできる。更に、第1段目の加水分解及び縮合反応を行う際の雰囲気は、特に限定されず、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気下、空気下等の酸素存在下等のいずれであってもよいが、不活性ガス雰囲気下が好ましい。
【0072】
上記第1段目の加水分解及び縮合反応により、[T3体/T2体]が5以上20未満であるポリオルガノシルセスキオキサンが得られる。上記第1段目の加水分解及び縮合反応の終了後には、触媒を中和することが好ましい。また、反応生成物には、例えば、水洗、酸洗浄、アルカリ洗浄、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段等による分離精製処理を施してもよい。
【0073】
第1段目の加水分解及び縮合反応により得られた[T3体/T2体]が5以上20未満であるポリオルガノシルセスキオキサンを、第2段目の加水分解及び縮合反応に付すことにより、[T3体/T2体]が20以上であるポリオルガノシルセスキオキサンを製造することができる。
【0074】
第2段目の加水分解及び縮合反応は、溶媒の存在下で行うこともできるし、非存在下で行うこともできる。第2段目の加水分解及び縮合反応を溶媒の存在下で行う場合、使用できる溶媒としては、第1段目の加水分解及び縮合反応で使用できる溶媒と同様の例が挙げられる。第1段目の加水分解及び縮合反応の反応溶媒、抽出溶媒等を含む[T3体/T2体]が5以上20未満であるポリオルガノシルセスキオキサンをそのまま、又は一部留去したものを、第2段目の加水分解及び縮合反応に付してもよい。尚、溶媒は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0075】
第2段目の加水分解及び縮合反応において溶媒を使用する場合、その使用量は、特に限定されず、[T3体/T2体]が5以上20未満であるポリオルガノシルセスキオキサン100重量部に対して、0~2000重量部の範囲内で、所望の反応時間等に応じて、適宜調整することができる。
【0076】
第2段目の加水分解及び縮合反応は、触媒及び水の存在下で進行させることが好ましい。上記触媒としては、第1段目の加水分解及び縮合反応で使用できる触媒と同様の例が挙げられる。なかでも、好ましくはアルカリ触媒であり、さらに好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属の炭酸塩である。尚、触媒は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、触媒は、水や溶媒等に溶解又は分散させた状態で使用することもできる。
【0077】
第2段目の加水分解及び縮合反応における上記触媒の使用量は、特に限定されず、[T3体/T2体]が5以上20未満であるポリオルガノシルセスキオキサン(1000000ppm)に対して、好ましくは0.01~10000ppm、より好ましくは0.1~1000ppmの範囲内で、適宜調整することができる。
【0078】
第2段目の加水分解及び縮合反応に際しての水の使用量は、特に限定されず、[T3体/T2体]が5以上20未満であるポリオルガノシルセスキオキサン(1000000ppm)に対して、好ましくは10~100000ppm、より好ましくは100~20000ppmの範囲内で、適宜調整することができる。水の使用量が100000ppmよりも大きいと、ポリオルガノシルセスキオキサン(A)の[T3体/T2体]や数平均分子量を、所定の範囲に制御することが困難となる傾向がある。
【0079】
第2段目の加水分解及び縮合反応における上記水の添加方法は、特に限定されず、使用する水の全量を一括で添加してもよいし、逐次的に添加してもよい。逐次的に添加する際には、連続的に添加してもよいし、間欠的に添加してもよい。
【0080】
第2段目の加水分解及び縮合反応の反応温度は、使用する触媒により変動し、特に限定されないが、5~200℃が好ましく、より好ましくは30~100℃である。反応温度を上記範囲に制御することにより、[T3体/T2体]、数平均分子量をより効率的に所望の範囲に制御できる傾向がある。また、第2段目の加水分解及び縮合反応の反応時間は、特に限定されないが、0.5~1000時間が好ましく、より好ましくは1~500時間である。
【0081】
第2段目の加水分解及び縮合反応は、常圧下で行うこともできるし、加圧下又は減圧下で行うこともできる。また、第2段目の加水分解及び縮合反応を行う際の雰囲気は、特に限定されず、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気下、空気下等の酸素存在下等のいずれであってもよいが、不活性ガス雰囲気下が好ましい。
【0082】
上記第2段目の加水分解及び縮合反応により、[T3体/T2体]が20以上であるポリオルガノシルセスキオキサンが得られる。上記第2段目の加水分解及び縮合反応の終了後には、触媒を中和することが好ましい。また、反応生成物には、例えば、水洗、酸洗浄、アルカリ洗浄、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段等による分離精製処理を施してもよい。
【0083】
ポリオルガノシルセスキオキサン(A)は上述の構成を有するため、該ポリオルガノシルセスキオキサン(A)を必須成分として含む接着剤組成物は低温で硬化して、高い絶縁性、耐熱性、耐クラック性(若しくは、耐冷熱衝撃性)を有し、接着性に優れた硬化物を形成できる。
【0084】
本発明の接着剤組成物は、ポリオルガノシルセスキオキサン(A)の1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0085】
本発明の接着剤組成物における重合性化合物(特に、ラジカル重合性化合物)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、接着剤組成物の不揮発分全量(100重量%)に対して、70重量%以上100重量%未満が好ましく、より好ましくは80~99.8重量%、さらに好ましくは90~99.5重量%である。重合性化合物の含有量を70重量%以上とすることにより、硬化物の絶縁性、耐熱性、耐クラック性や接着性がより向上する傾向がある。また、重合性化合物の含有量を100重量%未満とし、硬化触媒を含有させることで、接着剤組成物の硬化をより効率的に進行させることができる。
【0086】
本発明の接着剤組成物におけるポリオルガノシルセスキオキサン(A)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、接着剤組成物の不揮発分全量(100重量%)に対して、40重量%以上が好ましく、特に好ましくは45重量%以上、最も好ましくは50重量%以上である。含有量の上限は例えば96重量%程度である。ポリオルガノシルセスキオキサン(A)を上記範囲で含有することにより、得られる硬化物の耐熱性がより向上する傾向がある。
【0087】
本発明の接着剤組成物に含まれる重合性化合物の全量(100重量%)に対するポリオルガノシルセスキオキサン(A)の割合は、特に限定されないが、30~100重量%が好ましく、より好ましくは35~98重量%、特に好ましくは40~95重量%、最も好ましくは40~90重量%、とりわけ好ましくは45~85重量%である。ポリオルガノシルセスキオキサン(A)を上記範囲で含有することにより、得られる硬化物の耐熱性がより向上する傾向がある。
【0088】
[ラジカル重合性化合物(B)]
本発明の接着剤組成物は、上述のポリオルガノシルセスキオキサン(A)に加えて、ラジカル重合性化合物(B)(すなわち、ラジカル重合性基を有する化合物であって、上述のポリオルガノシルセスキオキサン(A)以外の化合物)を1種又は2種以上含有してもよい。本発明の接着剤組成物がラジカル重合性化合物(B)を含有することにより、得られる硬化物の耐クラック性が向上する傾向がある。
【0089】
ラジカル重合性化合物(B)が有するラジカル重合性基には、例えば、ビニル基、ビニルエーテル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等が含まれる。なかでも、硬化物の耐熱性向上の観点から、(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0090】
ラジカル重合性化合物(B)は、上記ラジカル重合性基の1種を含むものであっても、2種以上を組み合わせて含むものであってもよい。
【0091】
ラジカル重合性化合物(B)が1分子内に有するラジカル重合性基の数は、特に限定されないが、1~50個が好ましく、より好ましくは1~30個、さらに好ましくは2~20個である。
【0092】
ラジカル重合性化合物(B)は、モノマーであってもよく、モノマーが重合した、反応性オリゴマー又は反応性ポリマーであってもよいが、なかでも、低粘度で、接着剤組成物の他の成分と均一に混合することができる点において、モノマー及び/又は反応性オリゴマー(すなわち、ラジカル重合性基を有するオリゴマー)が好ましい。
【0093】
ラジカル重合性化合物(B)の分子量(オリゴマー又はポリマーの場合は、重量平均分子量)は、特に限定されないが、接着剤組成物の他の成分と均一に混合することができ、その上、硬化物の耐クラック性を向上する効果が得られる点で、200~5000が好ましく、より好ましくは200~3000である。ラジカル重合性化合物(B)の重量平均分子量は、上述のポリオルガノシルセスキオキサン(A)と同様の方法で測定することができる。
【0094】
ラジカル重合性化合物(B)のラジカル重合性基当量は、特に限定されないが、硬化物の耐クラック性向上の観点から、60~3000が好ましく、より好ましくは70~1500である。ラジカル重合性化合物(B)のラジカル重合性基当量は、官能基1個当たりの化合物の分子量(高分子化合物の場合は、重量平均分子量)を意味する。
【0095】
モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、DA-141(ナガセケムテックス製)等の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物;エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ポリアリル(メタ)アクリレート等のビニルエーテル基を有する化合物;スチレン、ジビニルベンゼン等のビニル基を有する化合物が挙げられる。
【0096】
反応性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニルアクリレート、シリコーンアクリレート、ポリスチリルエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0097】
反応性オリゴマーとしては、例えば、商品名「アロニックスM-211B」、「アロニックスM-208」(以上、東亞合成(株)製)、「NKエステル」、「ABE-300」、「A-BPE-4」、「A-BPE-10」、「A-BP E-20」、「A-BPE-30」、「BPE-100」、「BPE-200」、「BPE-500」、「BPE-900」、「BPE-1300N」(以上、新中村化学(株)製)等が挙げられる。
【0098】
ラジカル重合性化合物(B)としては、なかでも、モノマー又はウレタン骨格をお有さない反応性オリゴマー(特に、エポキシアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニルアクリレート、シリコーンアクリレート、及びポリスチリルエチルメタクリレートから選択される少なくとも1種)を使用することが、得られる硬化物の耐熱性の点で好ましく、とりわけ官能基の数が2以上であるラジカル重合性化合物を使用することが好ましい。
【0099】
本発明の接着剤組成物がラジカル重合性化合物(B)を含有する場合、その含有量(配合量)は、特に限定されないが、重合性化合物全量(100重量%)に対して、例えば5~80重量%であり、上限は得られる硬化物の耐熱性が向上する点において、好ましくは60重量%、特に好ましくは55重量%である。また、下限は、耐クラック性を向上する効果が得られる点で、好ましくは10重量%、特に好ましくは15重量%である。
【0100】
また、ポリオルガノシルセスキオキサン(A)とラジカル重合性化合物(B)の配合割合(前者/後者:重量比)は、特に制限されないが、耐熱性と耐クラック性とを併せ持つ硬化物が得られる点で、90/10~10/90が好ましく、より好ましくは85/15~35/65、特に好ましくは85/15~50/50である。ポリオルガノシルセスキオキサン(A)の配合割合が上記範囲を下回ると、耐熱性が低下する傾向がある。一方、ラジカル重合性化合物(B)の配合割合が上記範囲を下回ると、耐クラック性が低下する傾向がある。
【0101】
[ラジカル重合開始剤(C)]
本発明の接着剤組成物は、さらに、ラジカル重合開始剤(C)を含むことが好ましい。ラジカル重合開始剤(C)には加熱することによってラジカルを発生して、重合性化合物の硬化反応を開始させる熱ラジカル重合開始剤と、紫外線を照射することによってラジカルを発生して、重合性化合物の硬化反応を開始させる光ラジカル重合開始剤が含まれる。なかでも、取扱性に優れる点で、熱ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0102】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、過酸化物等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0103】
前記アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2'-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、ジエチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジブチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等が挙げられる。
【0104】
前記過酸化物としては、例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド(例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイル)パーオキシヘキサン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジブチルパーオキシヘキサン、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,4-ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート)等が挙げられる。なかでも、保存安定性の観点から、ケトンパーオキサイドが好ましく、とりわけ、耐熱性の観点から、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
【0105】
本発明の接着剤組成物がラジカル重合開始剤を含有する場合、ラジカル重合開始剤の含有量(配合量)は、特に限定されないが、重合性化合物(ポリオルガノシルセスキオキサン(A)の総量、又は、ラジカル重合性化合物(B)及び/又はシランカップリング剤(D)を含有する場合は、ポリオルガノシルセスキオキサン(A)とラジカル重合性化合物(B)とシランカップリング剤(D)の総量)100重量部に対して、0.1~3.0重量部が好ましい。ラジカル重合開始剤の含有量を0.1重量部以上とすることにより、硬化反応を効率的に、且つ十分に進行させることができ、接着性がより向上する傾向がある。一方、ラジカル重合開始剤の含有量を3.0重量部以下とすることにより、得られる硬化物の耐熱性が向上する傾向がある。
【0106】
[シランカップリング剤(D)]
本発明の接着剤組成物は、さらに、シランカップリング剤(D)を1種又は2種以上含有してもよい。シランカップリング剤(D)を含有することにより、得られる硬化物に優れた耐クラック性、密着性、耐熱性の特性を付与することができる。
【0107】
前記シランカップリング剤(D)としては、下記式(d)で表される化合物を使用することが好ましい。
【化3】
(式(d)中、R11~R13は同一又は異なってOR基又はR基を示し、R11~R13のうち少なくとも1つはOR基である。尚、前記Rは置換基を有していてもよい1価の炭化水素基である。Yはラジカル重合性基を含む基を示す)
【0108】
前記Rにおける1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1~15のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~15のアルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等の炭素数3~15のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数6~15のアリール基:及びこれらの2以上が単結合を介して結合した基(例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル-アルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基)や、これらの2以上がエーテル結合(-O-)、チオエーテル結合(-S-)、エステル結合(-CO-O-)、アミド結合(-CO-NH-)、カルボニル基(-CO-)等の連結基を介して結合した基が挙げられる。
【0109】
前記1価の炭化水素基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0110】
前記式(d)中のYはラジカル重合性基を含む基を示し、前記ラジカル重合性基としては、例えば、ビニル基、ビニルエーテル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等が挙げられる。Yとしては、硬化物の耐熱性向上の観点から、ラジカル重合性基として(メタ)アクリロイルオキシ基を含む基が好ましい。
【0111】
従って、前記シランカップリング剤(D)としては、下記式(d-1)で表される化合物が好ましい。
【化4】
(式(d-1)中、R11~R13は同一又は異なってOR基又はR基を示し、R11~R13の少なくとも1つはOR基である。尚、前記Rは置換基を有していてもよい1価の炭化水素基である。Lは炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、R14は水素原子又はメチル基を示す)
【0112】
前記式(d-1)中のR11~R13は上記に同じ。Lは炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、デカメチレン基等の炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基;1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の炭素数3~20のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等が挙げられる。Lとしては、なかでも、硬化物の耐クラック性向上の観点から、炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、特に炭素数3~20(なかでも炭素数3~10、とりわけ炭素数3~5)の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。
【0113】
シランカップリング剤(D)としては、特に、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、及び3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシランから選択される少なくとも1種が好ましい。
【0114】
シランカップリング剤(D)としては、例えば、商品名「KBM-5103」(3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)等の市販品を使用することができる。
【0115】
シランカップリング剤(D)を含有する場合、その使用量としては、本発明の接着剤組成物に含まれる重合性化合物(ポリオルガノシルセスキオキサン(A)の総量、又は、ラジカル重合性化合物(B)も含有する場合は、ポリオルガノシルセスキオキサン(A)とラジカル重合性化合物(B)の総量)100重量部に対して、例えば0.01~50重量部程度であり、その上限は、好ましくは30重量部、特に好ましくは20重量部、最も好ましくは10重量部、とりわけ好ましくは5重量部である。下限は、好ましくは0.2重量部、特に好ましくは1重量部である。
【0116】
[酸化防止剤(E)]
本発明の接着剤組成物が、熱ラジカル重合開始剤を含有する場合は、さらに、酸化防止剤(E)を1種又は2種以上含有することが好ましい。酸化防止剤(E)は、加熱処理を施すことにより熱ラジカル重合開始剤から発生するラジカルをトラップして、ラジカル重合反応の進行を遅延させる効果を発揮する。本発明の接着剤組成物が酸化防止剤(E)を含有すると、加熱開始直後においてラジカル重合反応の進行を遅延させる効果が得られ、接着剤組成物が溶媒を含有する場合は、ラジカル重合反応が遅延している間に溶媒を蒸発させて除去することができ、シランカップリング剤(D)を含有する場合は、ラジカル重合反応が遅延している間にシランカップリング剤(D)の接着機能を発現させることができ、これにより、一層優れた絶縁性、耐熱性、接着性、及び密着性を備えた硬化物が得られる。
【0117】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエステル系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。本発明においては、フェノール系酸化防止剤を使用することが、得られる硬化物の耐熱性をより一層向上することができる点で好ましい。
【0118】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトール テトラキス[3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレン ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル、N,N'-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチル、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール、カルシウムビス[3,5-ジ(t-ブチル)-4-ヒドロキシベンジル(エトキシ)ホスフィナート]等を挙げることができる。本発明では、例えば、商品名「Irganox 1010」、「Irganox 1035」、「Irganox 1076」、「Irganox 1098」、「Irganox 1135」、「Irganox 1330」、「Irganox 1726」、「Irganox 1425WL」(以上、BASF社製)等の市販品を使用することができる。
【0119】
酸化防止剤(E)を含有する場合、その使用量としては、本発明の接着剤組成物に含まれる熱ラジカル重合開始剤1重量部に対して、例えば0.1~10.0重量部、好ましくは0.5~5.0重量部、特に好ましくは0.5~3.0重量部である。
【0120】
また、酸化防止剤(E)を含有する場合、その使用量としては、本発明の接着剤組成物に含まれる重合性化合物(ポリオルガノシルセスキオキサン(A)の総量、又は、ラジカル重合性化合物(B)も含有する場合は、ポリオルガノシルセスキオキサン(A)とラジカル重合性化合物(B)の総量)100重量部に対して、例えば0.05~10.0重量部、好ましくは0.1~3.0重量部である。
【0121】
[連鎖移動剤(F)]
本発明の接着剤組成物が、熱ラジカル重合開始剤を含有する場合は、さらに、連鎖移動剤(F)を1種又は2種以上含有することが好ましい。連鎖移動剤(F)は、重合性化合物の重合反応を停止させ、ラジカルを別の重合性化合物に移動させる効果を発揮する。本発明の接着剤組成物が連鎖移動剤(F)を含有すると、加熱開始直後においてラジカル重合反応の進行を遅延させる効果が得られ、接着剤組成物が溶媒を含有する場合は、ラジカル重合反応が遅延している間に溶媒を蒸発させて除去することができ、シランカップリング剤(D)を含有する場合は、ラジカル重合反応が遅延している間にシランカップリング剤(D)の接着機能を発現させることができ、これにより、一層優れた絶縁性、耐熱性、接着性、及び密着性を備えた硬化物が得られる。
【0122】
前記連鎖移動剤(F)としては、例えば、チオール類(n-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、n-ラウリルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、トリエチレングリコールジメルカプタン等)、チオール酸類(メルカプトプロピオン酸、チオ安息香酸、チオグリコール酸、チオリンゴ酸等)、アルコール類(イソプロピルアルコール等)、アミン類(ジブチルアミン等)、次亜燐酸塩類(次亜燐酸ナトリウム等)、α-メチルスチレンダイマー、タービノーレン、ミルセン、リモネン、α-ピネン、β-ピネン等が挙げられる。
【0123】
連鎖移動剤(F)を含有する場合、その使用量としては、本発明の接着剤組成物に含まれる熱ラジカル重合開始剤1重量部に対して、例えば0.05~1.0重量部、好ましくは0.1~0.5重量部である。
【0124】
また、連鎖移動剤(F)を含有する場合、その使用量としては、本発明の接着剤組成物に含まれる重合性化合物(ポリオルガノシルセスキオキサン(A)の総量、又は、ラジカル重合性化合物(B)も含有する場合は、ポリオルガノシルセスキオキサン(A)とラジカル重合性化合物(B)の総量)100重量部に対して、例えば0.05~1.0重量部、好ましくは0.05~0.1重量部である。
【0125】
[その他]
本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、更に他の成分を1種又は2種以上含有していても良い。他の成分としては、例えば、溶剤、架橋促進剤、粘着付与剤、老化防止剤、充填剤、導電性金属粉末、硬化助剤、安定化剤(紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤、重金属不活性化剤など)、難燃剤、難燃助剤、補強材、核剤、滑剤、ワックス、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、離型剤、耐衝撃改良剤、色相改良剤、透明化剤、レオロジー調整剤、加工性改良剤、着色剤、帯電防止剤、分散剤、表面調整剤、表面改質剤、艶消し剤、消泡剤、抑泡剤、脱泡剤、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、光増感剤、発泡剤などの慣用の添加剤が挙げられる。
【0126】
前記溶剤としては、例えば、水、有機溶剤等が挙げられ、ポリオルガノシルセスキオキサン(A)、及び必要に応じて使用される添加物を溶解することができ、且つ重合を阻害しないものであれば特に制限されることはない。
【0127】
溶剤は、スピンコートによって塗布するのに適した流動性を付与することができ、且つ重合の進行を抑制可能な温度で加熱することにより容易に除去できる溶剤を使用することが好ましく、常圧下における沸点が170℃以下の溶剤が好ましい。
【0128】
前記溶剤としては、例えば、トルエン、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、キシレン、メシチレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0129】
溶剤は、接着剤組成物に含まれる不揮発分の濃度が例えば30~80重量%程度、好ましくは40~70重量%、特に好ましくは50~60重量%となる範囲で使用することが、スピンコートする際に塗布性に優れる点で好ましい。溶剤の使用量が過剰であると、接着剤組成物の粘度が低くなりすぎ、適度な膜厚(例えば、0.5~30μm程度)の層を形成することが困難となる傾向がある。一方、溶剤の使用量が少なすぎると、接着剤組成物の粘度が高くなりすぎ、被着体に均一に塗布することが困難となる傾向がある。
【0130】
本発明の接着剤組成物は、例えば、上記の各成分を室温で又は必要に応じて加熱しながら撹拌・混合することにより調製することができる。尚、本発明の接着剤組成物は、各成分があらかじめ混合されたものをそのまま使用する1液系の組成物として使用することもできるし、例えば、別々に保管しておいた2以上の成分を使用前に所定の割合で混合して使用する多液系[例えば、2液系(例えば、上記成分(A)、(B)、(C)、(E)、(F)を含む第1剤と、上記成分(D)を含む第2剤)]の組成物として使用することもできる。また、本発明の接着剤組成物が、上記成分(A)、(B)、(C)、(E)、(F)を含む第1剤と、上記成分(D)を含む第2剤(例えば、アンカーコート剤)からなる2液系である場合、これらを使用前に混合することなく、別々に被着体に塗布し、塗布面において第1剤と第2剤の少なくとも一部が混合する使用方法であってもよい。
【0131】
本発明の接着剤組成物は、特に限定されないが、常温(約25℃)で液体であることが好ましい。本発明の接着剤組成物の粘度は、特に限定されないが、スピンコートにて塗布を行う際の膜厚に応じて調整することが好ましく、例えば、0.1~50μmの膜厚で塗布する場合、1~5000mPa・sとすることが好ましい。本発明の接着剤組成物の粘度が上記範囲内である場合、シリコンウエハなどの薄膜基材に均一な膜厚を有する塗膜を容易に形成することができる。尚、本発明の接着剤組成物の粘度は、粘度計(商品名「MCR301」、アントンパール社製)を用いて、振り角5%、周波数0.1~100(1/s)、温度25℃の条件で測定できる。
【0132】
本発明の接着剤組成物は、硬化させることにより、耐熱性、絶縁性、耐熱性、耐クラック性、被着体に対する接着性及び密着性に優れた硬化物へと転化させることができる。そのため、所望の物品(部品等)同士を接着する用途に好適に使用することができる。
【0133】
[硬化物]
本発明の硬化物は、上記接着剤組成物の硬化物である。本発明の硬化物は、上記接着剤組成物に含まれる重合性化合物(ポリオルガノシルセスキオキサン(A)等)の重合反応を進行させることにより得られる。
【0134】
重合性化合物の重合反応を進行させる方法、すなわち硬化の方法は、周知の方法より適宜選択でき、例えば、本発明の接着剤組成物が熱ラジカル重合開始剤を含有する場合は、加熱処理を施すことにより硬化させることができる。また、例えば、本発明の接着剤組成物が光ラジカル重合開始剤を含有する場合は、活性エネルギー線を照射することにより硬化させることができる。
【0135】
加熱処理を施して硬化させる場合において、本発明の接着剤組成物はポリオルガノシルセスキオキサン(A)を含有するため、200℃未満の低温で加熱することにより速やかに硬化物を形成することができる。すなわち、低温硬化性を有する。加熱温度は、例えば50~190℃である。
【0136】
本発明の接着剤組成物を硬化させる方法としては、なかでも、硬化温度を段階的に変化させる加熱処理を施すことが、より一層優れた耐クラック性を有する硬化物を得ることができる点で好ましく、例えば、1段階目の加熱処理終了時の硬化度を85%以下(例えば50~85%、特に好ましくは55~85%、更に好ましくは60~80%)とし、2段階目以降の加熱処理によって硬化度を85%超(好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上。尚、硬化度の上限は100%)とすることが好ましい。
【0137】
尚、1段階目の加熱処理終了時の硬化度は、1段階目の加熱処理終了時のサンプルの発熱量、及び加熱処理を施す前のサンプルの発熱量をDSCにより測定し、以下の式から算出できる。
硬化度(%)=[1-(1段階目の加熱処理終了時の発熱量/加熱処理を施す前の発熱量)]×100
【0138】
1段階目の加熱処理終了時の硬化度を85%以下に制御することによって、応力緩和しやすい構造体を形成することができ、最終的に得られる硬化物の耐クラック性が向上すると考えられる。
【0139】
1段階目の加熱処理における加熱温度は、5分以上加熱処理を行っても1段階目の加熱処理終了時の硬化度が85%を超えない温度であることが、より一層優れた耐クラック性を有する硬化物を得ることができる点で好ましく、例えば90℃以上150℃未満、好ましくは100~140℃、特に好ましくは110~140℃である。また、ある程度時間をかけてゆっくりと硬化させることが、より一層優れた耐クラック性を有する硬化物を得ることができる点で好ましく、加熱時間は、例えば5分以上(好ましくは5~120分、特に好ましくは10~60分、最も好ましくは30~60分)が好ましい。
【0140】
2段階目以降の加熱処理における加熱温度は、例えば150~200℃、好ましくは160~190℃、特に好ましくは160~180℃である。加熱時間は、例えば5~120分、好ましくは10~60分である。
【0141】
このようにして得られる本発明の硬化物は耐熱性に優れ、熱分解温度は、例えば200℃以上(例えば200~500℃、好ましくは260℃以上、特に好ましくは300℃以上)である。尚、熱分解温度は実施例に記載の方法で求められる。
【0142】
また、本発明の硬化物は、優れた絶縁性、被着体に対する接着性及び密着性を有する。また、耐クラック性に優れ、冷熱衝撃を付与してもクラックの発生が抑制される。
【0143】
[接着剤層付き基材]
本発明の接着剤層付き基材は、基材上に、上記の接着剤組成物の固化物からなる接着剤層を備える。本発明の接着剤層付き基材は、基材の片面側に接着剤層を有する片面接着剤層付き基材であってもよいし、基材の両面側に接着剤層を有する両面接着剤層付き基材であってもよい。本発明の接着剤層付き基材が両面接着剤層付き基材である場合、少なくとも一方の接着剤層が本発明の接着剤組成物の固化物からなる層であればよく、他方は、その他の接着剤からなる層であってもよい。
【0144】
前記前記基材には、有機基材(例えば、プラスチック基材、紙基材、木基材等)や無機基材(例えば、金属基材、セラミックス基材、半導体基材、ガラス基材等)が挙げられる。
【0145】
本発明の接着剤層付き基材は、基材を1層のみ有するものであってもよいし、2層以上有するものであってもよい。また、基材の厚みは特に限定されず、例えば、1~10000μmの範囲で適宜選択できる。
【0146】
また、本発明の接着剤層付き基材は、接着剤層を1層のみ有するものであってもよいし、2種以上有するものであってもよい。また、接着剤層の厚みは、特に限定されず、例えば、0.1~10000μmの範囲で適宜選択できる。
【0147】
本発明の接着剤層付き基材は、接着剤層が第1剤の固化物からなる層と第2剤の固化物からなる層の2層を少なくとも有する場合、第1剤の固化物からなる層の厚みは、特に限定されず、例えば、0.1~10000μmの範囲で適宜選択できる。また、第2剤の固化物からなる層(いわゆる、アンカーコート剤層)の厚みは、特に限定されず、例えば、0.001~10000μmの範囲で適宜選択できる。
【0148】
本発明の接着剤層付き基材は、基材、接着剤層以外にも、その他の層(例えば、中間層、下塗り層等)を有するものであってもよい。
【0149】
前記接着剤層付き基材における接着剤層は、上記の接着剤組成物の固化物からなり、上記接着剤組成物が上記成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)を含む組成物である場合は、それらの固化物である。一方、上記接着剤組成物が、上記成分(A)、(B)、(C)、(E)、(F)を含む第1剤と、上記成分(D)を含む第2剤(いわゆる、アンカーコート剤)からなる2液系であり、これらを使用前に混合することなく別々に使用する場合、上記接着剤層は、前記第1剤の固化物からなる層と第2剤の固化物からなる層の2層を少なくとも有する。前記2層の積層順は、接着剤層が設けられる基材の種類によって適宜変更することが好ましく、無機基材と直に接する面には第2剤の固化物からなる層(いわゆる、アンカーコート剤層)が設けられることが好ましい。
【0150】
例えば、基材が無機基材である場合、[無機基材/第2剤の固化物からなる層/第1剤の固化物からなる層]の順に積層されてなる接着剤層付き基材が、接着性及び密着性の点で好ましい。
【0151】
一方、基材が有機基材である場合は、接着剤組成物としては、上記成分(D)を含む必要はなく、これを含まない接着剤組成物を使用することが好ましい。
【0152】
本発明の接着剤層付き基材は、例えば、基材の少なくとも一方の表面に本発明の接着剤組成物を塗布し、さらに、必要に応じて乾燥させることによって得ることができる。塗布の方法は特に限定されず、周知慣用の手段を利用することができる。また、乾燥の手段や条件も特に限定されず、硬化反応の進行を抑制しつつ、速やかに溶媒等の揮発分を除去できる条件を設定することができる。このようにして得られる接着剤層は50℃未満では接着性を有さず、半導体チップ等の電子部品へのダメージを抑制可能な温度で加熱することにより接着性を発現し、その後、速やかに硬化する。
【0153】
本発明の接着剤層付き基材の形状としては、例えば、シート状、フィルム状、テープ状、板状等が挙げられる。また、接着剤層の表面には剥離ライナーを貼着してもよい。
【0154】
[積層体]
本発明の積層体は、2個以上の基材が、上記接着剤組成物の硬化物を介して積層された構成を有する。
【0155】
前記基材としては、上記接着剤層付き基材における基材と同様の例が挙げられる。
【0156】
本発明の積層体としては、ウエハ上にウエハ、チップ上にチップ、又はウエハ上にチップが、上記接着剤組成物の硬化物を介して積層された構成を有する積層体が好ましい。
【0157】
本発明の積層体は、例えば、基材の少なくとも一方に、上記接着剤組成物を塗布して接着剤層を形成し、そこに他の基材を貼り合わせ、接着剤組成物を硬化させることにより製造することができる。
【0158】
例えば、上記接着剤組成物が上記成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)を含む組成物である場合は、これを基材の貼り合わせ面に塗布して接着剤層を形成し、そこに他の基材を貼り合わせ、接着剤組成物を硬化させることにより製造することができる。
【0159】
例えば、上記接着剤組成物が上記成分(A)、(B)、(C)、(E)、(F)を含む第1剤と、上記成分(D)を含む第2剤(いわゆる、アンカーコート剤)からなる2液系であり、これらを使用前に混合することなく別々に塗布する場合、基材の種類によって塗布順を適宜変更することが好ましく、無機基材にはまず第2剤を塗布することが好ましい。
【0160】
例えば、2個以上の無機基材の積層体を製造する場合、まず、積層される全無機基材の貼り合わせ面に第2剤を塗布し、第2剤が塗布された無機基材同士を第2剤塗布面側に第1剤を塗布して貼り合わせ、第1剤を硬化させることにより製造することができる。
【0161】
例えば、有機基材上に無機基材が積層された積層体を製造する場合、有機基材の貼り合わせ面には第1剤を塗布し、無機基材の貼り合わせ面には第2剤を塗布し、第1剤が塗布された有機基材と第2剤が塗布された無機基材とを、塗布面同士が合わさるように貼り合わせ、第1剤を硬化させることにより製造することができる。
【0162】
また、上述の接着剤層付き基材を積層し、接着剤組成物を硬化させることにより製造してもよい。
【0163】
本発明の積層体の総厚みは、例えば1~100000μmの範囲で適宜選択できる。また、接着剤層の厚み(2層以上有する場合はその総厚み)も特に限定されず、例えば1~100000μmの範囲で適宜選択できる。
【0164】
本発明の積層体は、上記接着剤組成物の硬化物からなる層と基材からなる層以外にも、その他の層(例えば、中間層、下塗り層、その他の接着剤層等)を有するものであってもよい。
【0165】
本発明の積層体としては、具体的には、半導体ウエハ上に半導体ウエハ、半導体チップ上に半導体チップ、又は半導体ウエハ上に半導体チップが上記接着剤組成物の硬化物を介して積層された構成を有する積層体が挙げられる。
【0166】
積層体が半導体チップの三次元積層体である場合、積層体中の上記接着剤組成物の硬化物からなる層にクラックや剥離が生じることは、配線の破壊の原因となり、該積層体を用いた装置の故障の原因となるが、本発明の積層体は、複数の基板が、被着体に対する接着性、密着性、耐クラック性、及び耐熱性に優れる硬化物によって強固に接合された構成を有する。そのため、高い信頼性を有する。
【0167】
そのため、本発明の積層体を備えた装置(例えば、マイクロプロセッサ、半導体メモリ、電源用IC、通信用IC、半導体センサー、MEMS、及びこれらを備えるサーバー、ワークステーション、車載用コンピュータ、パーソナルコンピュータ、通信機器、撮影機器、画像表示装置等の半導体デバイス)も高い信頼性を有する。
【実施例
【0168】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
尚、生成物の分子量の測定は、Alliance HPLCシステム 2695(Waters製)、Refractive Index Detector 2414(Waters製)、カラム:Tskgel GMHHR-M×2(東ソー(株)製)、ガードカラム:Tskgel guard column HHRL(東ソー(株)製)、カラムオーブン:COLUMN HEATER U-620(Sugai製)、溶媒:THF、測定条件:40℃により行った。
また、生成物における[T3体/T2体]の測定は、JEOL ECA500(500MHz)による29Si-NMRスペクトル測定により行った。
【0169】
製造例1:アクリロイル基含有ポリオルガノシルセスキオキサンの製造(1)
温度計、撹拌装置、還流冷却器、及び窒素導入管を取り付けた1000mLのフラスコ(反応容器)に、窒素気流下で3-(アクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン370ミリモル(80g)、及びアセトン320gを仕込み、50℃に昇温した。このようにして得られた混合物に、5%炭酸カリウム水溶液10.144g(炭酸カリウムとして3.67ミリモル)を5分かけて添加した後、水3670.0ミリモル(66.08g)を20分かけて添加した。尚、添加の間、著しい温度上昇は起こらなかった。その後、50℃のまま、窒素気流下で重縮合反応を2時間行った。
その後、反応溶液を冷却すると同時に、メチルイソブチルケトン160gと5%食塩水99.056gとを投入した。この溶液を1Lの分液ロートに移し、再度メチルイソブチルケトン160gを投入し、水洗を行った。分液後、水層を抜き取り、下層液が中性になるまで水洗し、上層液を分取した後、1mmHg、50℃の条件で上層液から溶媒を留去し、メチルイソブチルケトンを22.5重量%含有する無色透明で液状の生成物(アクリロイル基含有ポリオルガノシルセスキオキサン(=ASQ)(1))を71g得た。
生成物を分析したところ、数平均分子量は2051であり、分子量分散度は1.29であった。上記生成物の29Si-NMRスペクトルから算出される[T3体/T2体]は13.4であった。
得られたアクリロイル基含有ポリオルガノシルセスキオキサン(1)の1H-NMRチャートを図129Si-NMRチャートを図2にそれぞれ示す。
【0170】
製造例2:アクリロイル基含有ポリオルガノシルセスキオキサンの製造(2)
温度計、撹拌装置、還流冷却器、及び窒素導入管を取り付けた1000mLのフラスコ(反応容器)に、窒素気流下に製造例1で得られたアクリロイル基含有ポリオルガノシルセスキオキサン(1)を含む混合物(71g)を仕込み、アクリロイル基含有ポリオルガノにシルセスキオキサン(1)の正味含有量(55.0g)に対して水酸化カリウムを10ppm(0.55mg)、水を2000ppm(110mg)添加し、40℃で30時間加熱した時点でサンプリングして分子量を測定したところ、数平均分子量Mnが5693まで上昇していた。その後、室温まで冷却し、メチルイソブチルケトンを300mL添加し、水を300mL添加し、水洗を繰り返すことでアルカリ成分を除去して濃縮すると、メチルイソブチルケトンを25重量%含有する無色透明で液状の生成物(アクリロイル基含有ポリオルガノシルセスキオキサン(=ASQ)(2))を71g得た。
生成物を分析したところ、数平均分子量は5693であり、分子量分散度は2.58であった。上記生成物の29Si-NMRスペクトルから算出される[T3体/T2体]は47.3であった。
得られたアクリロイル基含有ポリオルガノシルセスキオキサン(2)の1H-NMRチャートを図329Si-NMRチャートを図4にそれぞれ示す。
【0171】
実施例1~24(接着剤組成物(2液型)の調製)
(第1剤の調製)
下記表に示す処方(単位は重量部)に従って各成分を混合溶解して、接着剤組成物(第1剤)を調製した。
【0172】
(アンカーコート剤の調製)
下記表に示す処方(単位は重量部)に従って各成分を混合して、アンカーコート剤を得た。
【0173】
(積層体の作製)
シリコン板(サイズ:2cm×5cm、(株)SUMCO製、直径100mmのシリコンウエハをダイシングして得た)と、ガラス板(4インチ、SCHOTT日本(株)製)に、それぞれ、上記で得られたアンカーコート剤をスピンコートで塗布し、120℃で5分加熱して、アンカーコート剤層付きシリコン板、及びアンカーコート剤層付きガラス板を得た。
【0174】
アンカーコート剤層付きシリコン板のアンカーコート剤層表面に上記で得られた接着剤組成物をスピンコートで塗布し、80℃で4分、次いで100℃で2分加熱して残留する溶剤を除去して、接着剤層付きシリコン板[接着剤層/アンカーコート剤層/シリコン板]を得た。接着剤層の膜厚は5~6μmであった。そこに、アンカーコート剤層付きガラス板をアンカーコート剤層側が接するように、減圧下で、60℃に加熱しながら200g/cm2の圧力をかけて貼り合わせた後、下記表1に記載の1段階目の硬化温度で30分加熱(1段階目)し、その後170℃で30分加熱(2段階目)して接着剤層を硬化させて、積層体[シリコン板/アンカーコート剤層/接着剤層の硬化物/アンカーコート剤層/ガラス板]を得た。
【0175】
実施例25~46(接着剤組成物(1液型)の調製)
下記表に示す処方(単位は重量部)に従って各成分を混合溶解して、接着剤組成物を調製した。
【0176】
(積層体の作製)
シリコン板(サイズ:2cm×5cm、(株)SUMCO製、直径100mmのシリコンウエハをダイシングして得た)に、上記で得られた接着剤組成物(1液型)をスピンコートで塗布し、80℃で4分、次いで100℃で2分加熱して残留する溶剤を除去して、接着剤層付きシリコン板[接着剤層/シリコン板]を得た。接着剤層の膜厚は5~6μmであった。
【0177】
ガラス板(4インチ、SCHOTT日本(株)製)に、減圧下で、上記接着剤層付きシリコン板[接着剤層/シリコン板]の接着剤層面を合わせ、60℃に加熱しながら200g/cm2の圧力をかけて貼り合わせた後、下記表2に記載の1段階目の硬化温度で30分加熱(1段階目)し、その後170℃で30分加熱(2段階目)して接着剤層を硬化させて、積層体[シリコン板/接着剤層の硬化物/ガラス板]を得た。
【0178】
実施例で得られた接着剤組成物、若しくは積層体について、以下の方法で1段階目加熱終了時の硬化度、絶縁性、耐熱性、耐クラック性、接着性、及び密着性を評価した。
【0179】
・1段階目加熱終了時の硬化度
実施例で得られた接着剤組成物について、1段階目の加熱処理終了時の硬化度を、接着剤組成物の発熱量(H0)、及び接着剤組成物に表に記載の1段階目の硬化温度で30分加熱処理を施したものの発熱量(H1)をDSCにより測定し、以下の式から算出した。
硬化度(%)=[1-(H1/H0)]×100
【0180】
・耐熱性
実施例で得られた接着剤組成物をガラス板上にスピンコートで塗布し、80℃で4分、次いで100℃で2分加熱して残留する溶剤を除去した。その後、150℃で30分加熱(1段階目)し、更に170℃で30分加熱(2段階目)して硬化物[接着剤組成物の硬化物/ガラス](尚、実施例1~24で得られた2液型接着剤組成物を用いた場合は、[接着剤組成物の硬化物/アンカーコート剤層/ガラス])を得た。
得られた硬化物について、熱分析装置(商品名「TG-DTA6300」、セイコーインスツル(株)製)を用いて熱重量分析し、熱分解温度を測定した。尚、熱分解温度とは、図5に示すように、初期の重量減少のない、或いは漸減しているところ(図5中のAで示される範囲)の接線と、急激に重量減少が起こっているところ(図5中のBで示される範囲)の変曲点の接線が交叉するところの温度である。そして、耐熱性を下記基準で評価した。
◎(極めて良好):熱分解温度が350℃以上
〇(良好):熱分解温度が260℃以上、350℃未満
×(不良):熱分解温度が260℃未満
【0181】
・接着性
実施例で得られた積層体の接着界面にカミソリ刃(商品名「片刃トリミング用カミソリ」、日新EM(株)製)を挿入し、積層体の接着界面を観察し、以下の基準で評価した。
○(良好):界面剥離は生じなかった
×(不良):少なくとも一部に界面剥離が生じた
【0182】
・密着性
実施例で得られた接着剤組成物をシリコン板上にスピンコートで塗布し、80℃で4分、次いで100℃で2分加熱して残留する溶剤を除去し、その後、150℃で30分加熱(1段階目)し、更に170℃で30分加熱(2段階目)して前記接着剤層を硬化させて、[接着剤組成物の硬化物/シリコン板](尚、実施例1~24で得られた2液型接着剤組成物を用いた場合は、[接着剤組成物の硬化物/アンカーコート剤層/シリコン板])を得た。
その後、得られた[接着剤組成物の硬化物/シリコン板](若しくは、[接着剤組成物の硬化物/アンカーコート剤層/シリコン板])における、接着剤層の硬化物に6本の格子状の切り込みを入れて1mm×1mmの25マスの碁盤目を形成した。これをサンプルとして使用し、碁盤目テープ試験(JIS K5400-8.5準拠)によって接着剤層の硬化物のシリコン板への密着性を以下の基準で評価した。
○(極めて良好):接着剤層の硬化物の剥離なし
△(良好):接着剤層の硬化物の一部分が剥離
×(不良):接着剤層の硬化物の全てが剥離
【0183】
・耐クラック性
実施例で得られた積層体を250℃で30分加熱し、続いて室温まで冷却した。そのときに発生したクラック数を評価するために、ガラス板の中心を頂点とする20mm角の範囲を計100マスの2mm角に分割し、クラックが発生していない2mm角の数を数えた。そして、以下の基準で評価した。
◎(極めて良好):クラックが発生していない2mm角マスの数が65以上
○(良好):クラックが発生していない2mm角マスの数が50以上65未満
△:クラックが発生していない2mm角マスの数が1以上50未満
×(不良):全ての2mm角マスにクラックが発生
【0184】
・絶縁性
実施例1~46で得られた接着剤組成物を希釈したもの(詳細には、PGMEA量を1000重量部に変更した以外は実施例1~46と同様にして得られた接着剤組成物)を用いて、接着剤層付きP型シリコン板、および接着剤層付きN型シリコン板を作成し、その接着剤塗布面にアルミ蒸着によりアルミ電極を作製して、アルミ電極付きP型シリコン板、およびアルミ電極付きN型シリコン板を準備した。
接着剤層付きP型またはN型シリコン板の下部と、接着剤塗布面に作製したアルミ電極に電極端子を接触させ、電圧をかけたときの電流値を測定し、絶縁性を評価した。尚、実施例1~24で得られた2液型接着剤組成物を用いた場合は、接着剤層/アンカーコート剤層付きP型シリコン板、接着剤層/アンカーコート剤層付きN型シリコン板を作成し、これを使用して絶縁性を評価した。接着剤層の膜厚は、いずれも約150nmであった。
評価基準:
○(絶縁性有り):電圧-0.5~0.5MV/cmの範囲で電流値1×10-8A/cm2以下
×(絶縁性無し):電圧-0.5~0.5MV/cmの範囲で電流値1×10-8A/cm2
【0185】
【表1】
【0186】
【表2】
【0187】
尚、表中の記号は下記化合物を示す。また、「-」は、その成分を配合していないことを示す。
[ポリオルガノシルセスキオキサン(A)]
ASQ(1):製造例1で得られたアクリロイル基含有ポリオルガノシルセスキオキサン
ASQ(2):製造例2で得られたアクリロイル基含有ポリオルガノシルセスキオキサン
[ラジカル重合性化合物(B)]
A-DCP:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、分子量:304、アクリロイル基当量:152、新中村化学(株)製
A-BPE-4:エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、分子量:512、アクリロイル基当量:256、新中村化学(株)製
A-BPE-10:エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、分子量:776、アクリロイル基当量:388、新中村化学(株)製
DA-212:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、分子量:226、アクリロイル基当量:113、ナガセケムテックス(株)製
DA-314:グリセリントリアクリレート、分子量:254、アクリロイル基当量:85、ナガセケムテックス(株)製
U-200PA:ウレタンアクリレート、重量平均分子量:2700、アクリロイル基当量:1350、新中村化学(株)製
UA-122P:ウレタンアクリレート、重量平均分子量:1100、アクリロイル基当量:550、新中村化学(株)製
[熱ラジカル重合開始剤(C)]
ジクミルパーオキシド
[酸化防止剤(E)]
Irg1010:ヒンダードフェノール系酸化防止剤、商品名「Irganox 1010」、BASF社製
[連鎖移動剤(F)]
n-Butyl mercaptan
[シランカップリング剤(D)]
KBM5103:3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、商品名「KBM-5103」、信越化学工業(株)製
KBM1003:ビニルトリエトキシシラン、商品名「KBM-1003」、信越化学工業(株)製
[その他]
PGMEA:溶媒、プロプレングリコールモノメチルエーテルアセテート、常圧下における沸点:146℃
【0188】
以上のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記する。
[1] シロキサン構成単位を含むポリオルガノシルセスキオキサンであって、前記シロキサン構成単位が、下記式(1)
[R1SiO3/2] (1)
[式(1)中、R1はラジカル重合性基を含む基を示す]
で表される構成単位を少なくとも含み、ポリオルガノシルセスキオキサンを構成するシロキサン構成単位の全量(100モル%)に対する上記式(1)で表される構成単位及び下記式(2)
[R1SiO2/2(OR2)] (2)
[式(2)中、R1は上記に同じ。R2は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示す]
で表される構成単位の割合が55~100モル%であり、数平均分子量が1500~50000、分子量分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.0~4.0であるポリオルガノシルセスキオキサン(A)を含有する接着剤組成物。
[2] 前記ポリオルガノシルセスキオキサン(A)が、さらに、下記式(1-1)
[R3SiO3/2] (1-1)
[式(1-1)中、R3は、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアルケニル基を示す]
で表される構成単位を有する[1]に記載の接着剤組成物。
[3] 前記ラジカル重合性基が(メタ)アクリロイルオキシ基である、[1]又は[2]に記載の接着剤組成物。
[4] さらに、ポリオルガノシルセスキオキサン(A)以外のラジカル重合性化合物(B)を含有する[1]~[3]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[5] さらに、ラジカル重合開始剤(C)を含有する[1]~[4]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[6] さらに、式(d)で表されるシランカップリング剤(D)を含有する、[1]~[5]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[7] ラジカル重合開始剤(C)として熱ラジカル重合開始剤を含有し、さらに、酸化防止剤(E)を熱ラジカル重合開始剤1重量部に対して0.1~10.0重量部含有する、[5]又は[6]に記載の接着剤組成物。
[8] ラジカル重合開始剤(C)として熱ラジカル重合開始剤を含有し、さらに、連鎖移動剤(F)を熱ラジカル重合開始剤1重量部に対して0.05~1.0重量部含有する、[5]~[7]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[9] [1]~[8]のいずれか1つに記載の接着剤組成物の硬化物。
[10] [1]~[8]のいずれか1つに記載の接着剤組成物に、硬化温度を段階的に変化させる加熱処理を施して硬化物を製造する方法であって、1段階目の加熱処理終了時の硬化度を85%以下とし、2段階目以降の加熱処理によって硬化度を85%超とすることを特徴とする硬化物の製造方法。
[11] 基材上に、[1]~[8]のいずれか1つに記載の接着剤組成物の固化物からなる接着剤層を備える接着剤層付き基材。
[12] 2個以上の基材が、[1]~[8]のいずれか1つに記載の接着剤組成物の硬化物を介して積層された構成を有する積層体。
[13] [12]に記載の積層体を備えた装置。
【産業上の利用可能性】
【0189】
高温で加熱する必要がある熱硬化性接着剤を用いた場合は、被着体が熱によるダメージを受ける場合があるが、本発明の接着剤組成物を使用すれば、低温で硬化して、耐熱性、良好な絶縁性、耐クラック性、及び接着性に優れた硬化物を形成することができる。そのため、電子材料用部品の接着用途に好適である。
【符号の説明】
【0190】
A 重量変化がほとんどない領域
B 急激に重量が減少する領域
図1
図2
図3
図4
図5