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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/09 20060101AFI20221222BHJP
   C07F 9/655 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
C07F9/09 Z
C07F9/655
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019533107
(86)(22)【出願日】2017-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 AU2017051381
(87)【国際公開番号】W WO2018112512
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】2016905298
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】519207217
【氏名又は名称】アベーチョ バイオテクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲイテンビーク、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】スターリング、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ギャビン、ポール デイビッド
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-501367(JP,A)
【文献】特表2003-526623(JP,A)
【文献】特表2006-523623(JP,A)
【文献】特開2010-241818(JP,A)
【文献】特表2005-511725(JP,A)
【文献】特開平08-041082(JP,A)
【文献】特開平08-325279(JP,A)
【文献】a-Tocopheryl phosphate; A novel, natural form of vitamin E,Free Radical Biology & Medicine,2005年,39 p970-976
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合アルコールをリン酸化するための方法であって、
(a) 混合物がその発熱反応温度を達成するまで、前記複合アルコール及びP10を混合し、任意に加熱する、ステップであり、ここで、前記発熱反応温度は、前記複合アルコールとP10との間の化学反応が前記混合物に熱を放出し始める温度である、ステップと、
(b) 前記発熱反応が完了するまで、ステップ(a)の反応混合物を反応させるステップであり、ここで、前記発熱反応が完了するのは、前記複合アルコールとP10との間の化学反応を含み前記混合物の温度が低下し始めたときである、ステップと、
(c) ステップ(b)の前記反応混合物を、80℃~160℃の範囲内の温度に加熱し又は冷却するステップと、
(d) ステップ(c)の前記反応混合物を加水分解するステップであって、加水分解は30~90分間行われるステップと
を含み、
記複合アルコールが、炭素環式、複素環式、単環式若しくは多環式である環状複合アルコールであるか、又は、前記複合アルコールが、クロマノールである、
前記方法。
【請求項2】
前記クロマノールが、トコフェロール又はトコトリエノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複合アルコールが、医薬化合物、麻酔薬、抗酸化剤、又は溶媒である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記複合アルコールが、モノヒドロキシ又はポリヒドロキシである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(d)が、水溶液の添加を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)において、前記温度が、30~180分間、60~180分間、60~120分間、又は60分間、前記温度範囲内で維持される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(d)において、前記加水分解が、少なくとも80℃、少なくとも80℃~150℃の範囲内、85℃~120℃の範囲内、90℃~110℃の範囲内、90℃~100℃の範囲内、又は100℃~110℃の範囲内の加水分解温度で維持されて行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
加水分解が、60~90分間行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
加水分解ステップ(d)の生成物が、リン酸化モノ複合アルコール及びリン酸化ジ複合アルコールの混合物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記リン酸化モノ複合アルコール及び前記リン酸化ジ複合アルコールの前記混合物のモル比が、6:4~8:2の範囲内、又は2:1である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法であって、前記複合アルコールはトコフェロールであり、前記方法は、ステップ(d)の前記反応混合物を両性界面活性剤と反応させるステップをさらに含み、前記両性界面活性剤は、式NRの三級アミンであり、Rは、C6~22アルキルからなる群から選択され、R及びRは、H、(CHCOOX、(CHCHOHCHSOX、(CHCHOHCHOPOX(式中、Xは、Hであるか、又はナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、アルキルアンモニウム及びアルカノールアミンからなる群から選択される陽イオンと塩を形成し、nは1又は2である)からなる群から独立して選択される、前記方法。
【請求項12】
前記三級アミンが、3-[2-カルボキシエチル(ドデシル)アミノ]プロパン酸、3,3’-(ドデシルイミノ)ジプロピオン酸一ナトリウム塩、ラウリルイミノジプロピオン酸、ラウリルイミノジプロピオン酸ナトリウム及びN-ラウリルイミノジプロピオナートからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合アルコールのリン酸化方法、及びその方法によって得られる生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において先行技術の刊行物が参照される場合、そのような参照は、その刊行物がオーストラリア又は他のいかなる国においても当該技術分野における一般常識の一部を形成することの承認を構成するものではないことが理解されよう。
【0003】
リン酸化プロセス及び試薬は、リン酸化されている化合物の著しい分解を回避し、所望の収率を生じるように選択される。
【0004】
いくつかのリン酸化プロセスにおいて、2:2:2-トリクロロエチルジクロロホスファート、ジ-イミダゾリドクロロホスファート及びジ-アナリドクロロホスファート等の試薬は、リン酸化されている化合物の分解を回避するために穏やかな条件下で使用される。しかしながら、そのような方法は限られた収率を生じることが見出されており、これは経済的ではない、又は商業目的には適さないであろう。
【0005】
他のリン酸化プロセスにおいては、試薬オキシ塩化リンが使用されるが、反応は典型的には種々の副生成物及び塩化水素を生成する。試薬オキシ塩化リンは取り扱いが困難であることを考えると、そのような方法も商業的に実行可能ではない可能性がある。
【0006】
五酸化リンとして一般に知られているが、酸化リン(V)、無水リン酸及び五酸化二リン等の他の名称を有する試薬P10は、白色の結晶性固体である。この試薬は、エタノール及び他の短鎖一級アルコール(すなわち、6個未満の炭素原子)のリン酸化に使用されており、一級脂肪アルコール、二級アルコール及び芳香族アルコール等のアルコールのリン酸化に適していることが分かっている。オーストラリア特許第200043870号は、80℃未満の温度で、これらのアルコールの1種以上とP10、部分的に水和したP10又はそれらの混合物との均質混合物を形成し、リン酸化されたアルコールの形成が実質的に形成されるまで、この温度で、すなわち80℃未満である期間、その均質混合物を反応させ続けることを含む方法を記載している。劣化を避けるために、温度を最低80℃以下に維持しなければならないことは明らかである。
【0007】
二級アルコール及び三級アルコール等の複合アルコールの高温でのP10によるリン酸化は、分解及び/又は脱水及び二重結合形成等の副反応をもたらすと考えられていた。これらの問題は、高温での複合アルコールの効率的かつ商業的なリン酸化のためのP10の使用からは離れていることを教示している。
【0008】
本発明者らは、複合アルコールを高温でリン酸化することができ、そのような温度では、複合アルコールの分解を最小限に抑えながら望ましい収率を得ることができることを見出した。
【発明の概要】
【0009】
したがって、複合アルコールをリン酸化するための方法であって、
(a) その発熱反応温度が達成されるまで、複合アルコール及びP10を混合するステップと、
(b) 発熱反応が完了するまでステップ(a)の反応混合物を反応させ、必要に応じてステップ(a)の反応混合物を少なくとも約90℃~140℃の範囲内に加熱するステップと、
(c) ステップ(b)の反応混合物を、少なくとも80℃に冷却するステップと、
(d) ステップ(c)の反応混合物を加水分解するステップであって、加水分解は約30~約90分間行われるステップと
を含む方法が提供される。
【0010】
この方法によって得られる生成物もまた提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、複合アルコールをリン酸化するための方法であって、
(a) その発熱反応温度が達成されるまで、複合アルコール及びP10を混合するステップと、
(b) 発熱反応が完了するまでステップ(a)の反応混合物を反応させ、必要に応じてステップ(a)の反応混合物を少なくとも約90℃~140℃の範囲内に加熱するステップと、
(c) ステップ(b)の反応混合物を、少なくとも80℃に冷却するステップと、
(d) ステップ(c)の反応混合物を加水分解するステップであって、加水分解は約30~約90分間行われるステップと
を含む方法に関する。
【0012】
<複合アルコール>
複合アルコールは、少なくとも6個の炭素原子(すなわち、6個以上の炭素原子)を含む直鎖状又は分岐状アルコールであってもよい。いくつかの実施形態において、複合アルコールは、少なくとも7個の炭素原子を含む。他の実施形態において、複合アルコールは、少なくとも8個の炭素原子を含む。特定の実施形態において、複合アルコールは、少なくとも10個の炭素原子を含む。本明細書で言及される炭素原子の数は、直鎖状若しくは分岐状複合アルコールの主鎖又は環状複合アルコールの環系を構成する炭素原子の数を指す。
【0013】
直鎖状及び分岐状の複合アルコールの例としては、これらに限定されないが、ヘキサノール、ヘキサン-1-オール、ヘプタノール、ヘプタン-1-オール、オクタノール、オクタン-1-オール、デカノール、デカン-1-オール、ウンデカノール、ドデカノール、1-ドデカノール、トリデカノール、1-テトラデカノール、ペンタデカノール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、1-メチルヘキサン-1-オール、2-メチルヘキサン-1-オール、3-メチル-ヘプタン-1-オール、4-メチルヘキサン-1-オール、1-メチルヘキサン-2-オール、2-メチルヘキサン-2-オール、3-メチル-ヘキサン-2-オール、4-メチルヘキサン-2-オール、1-メチルヘキサン-3-オール、2-メチルヘキサン-3-オール、3-メチル-ヘキサン-3-オール、4-メチルヘキサン-3-オール、1-メチルヘキサン-4-オール、2-メチルヘキサン-4-オール、3-メチル-ヘキサン-4-オール、4-メチルヘキサン-4-オール、1-メチルヘキサン-5-オール、2-メチルヘキサン-5-オール、3-メチル-ヘキサン-5-オール、4-メチルヘキサン-5-オール、1-メチルヘキサン-6-オール、2-メチルヘキサン-6-オール、3-メチル-ヘキサン-6-オール、4-メチルヘキサン-6-オール、1-エチルヘキサン-1-オール、2-エチルヘキサン-1-オール、3-エチル-ヘキサン-1-オール、4-メチルヘキサン-1-オール、1-エチルヘキサン-2-オール、2-エチルヘキサン-2-オール、3-エチル-ヘキサン-2-オール、4-エチルヘキサン-2-オール、1-エチルヘキサン-3-オール、2-エチルヘキサン-3-オール、3-エチル-ヘキサン-3-オール、4-エチルヘキサン-3-オール、1-エイルヘキサン-4-オール、2-エチルヘキサン-4-オール、3-エチル-ヘキサン-4-オール、4-エチルヘキサン-4-オール、1-エチルヘキサン-5-オール、2-エチルヘキサン-5-オール、3-エチル-ヘキサン-5-オール、4-エチルヘキサン-5-オール、1-エチルヘキサン-6-オール、2-エチルヘキサン-6-オール、3-エチル-ヘキサン-6-オール、4-エチルヘキサン-6-オール、1-メチルヘプタン-1-オール、2-メチルヘプタン-1-オール、3-メチル-ヘプタン-1-オール、4-メチルヘプタン-1-オール、1-メチルヘプタン-2-オール、2-メチルヘプタン-2-オール、3-メチル-ヘプタン-2-オール、4-メチルヘプタン-2-オール、1-メチルヘプタン-3-オール、2-メチルヘプタン-3-オール、3-メチル-ヘプタン-3-オール、4-メチルヘプタン-3-オール、1-メチルヘプタン-4-オール、2-メチルヘプタン-4-オール、3-メチル-ヘプタン-4-オール、4-メチルヘプタン-4-オール、1-メチルヘプタン-5-オール、2-メチルヘプタン-5-オール、3-メチル-ヘプタン-5-オール、4-メチルヘプタン-5-オール、1-メチルヘプタン-6-オール、2-メチルヘプタン-6-オール、3-メチル-ヘプタン-6-オール、4-メチルヘプタン-6-オール、1-メチルヘプタン-7-オール、2-メチルヘプタン-7-オール、3-メチル-ヘプタン-7-オール、4-メチルヘプタン-7-オール、1-エチルヘプタン-1-オール、2-エチルヘプタン-1-オール、3-エチル-ヘプタン-1-オール、4-メチルヘプタン-1-オール、1-エチルヘプタン-2-オール、2-エチルヘプタン-2-オール、3-エチル-ヘプタン-2-オール、4-エチルヘプタン-2-オール、1-エチルヘプタン-3-オール、2-エチルヘプタン-3-オール、3-エチル-ヘプタン-3-オール、4-エチルヘプタン-3-オール、1-エチルヘプタン-4-オール、2-エチルヘプタン-4-オール、3-エチル-ヘプタン-4-オール、4-エチルヘプタン-4-オール、1-エチルヘプタン-5-オール、2-エチルヘプタン-5-オール、3-エチル-ヘプタン-5-オール、4-エチルヘプタン-5-オール、1-エチルヘプタン-6-オール、2-エチルヘプタン-6-オール、3-エチル-ヘプタン-6-オール、4-エチルヘプタン-6-オール、1-エチルヘプタン-7-オール、2-エチルヘプタン-7-オール、3-エチル-ヘプタン-7-オール、4-エチルヘプタン-7-オール、1-メチルオクタン-1-オール、2-メチルオクタン-1-オール、3-メチル-オクタン-1-オール、4-メチルオクタン-1-オール、1-メチルオクタン-2-オール、2-メチルオクタン-2-オール、3-メチル-オクタン-2-オール、4-メチルオクタン-2-オール、1-メチルオクタン-3-オール、2-メチルオクタン-3-オール、3-メチル-オクタン-3-オール、4-メチルオクタン-3-オール、1-メチルオクタン-4-オール、2-メチルオクタン-4-オール、3-メチル-オクタン-4-オール、4-メチルオクタン-4-オール、1-メチルオクタン-5-オール、2-メチルオクタン-5-オール、3-メチル-オクタン-5-オール、4-メチルオクタン-5-オール、1-メチルオクタン-6-オール、2-メチルオクタン-6-オール、3-メチル-オクタン-6-オール、4-メチルオクタン-6-オール、1-メチルオクタン-7-オール、2-メチルオクタン-7-オール、3-メチル-オクタン-7-オール、4-メチルオクタン-7-オール、1-メチルオクタン-8-オール、2-メチルオクタン-8-オール、3-メチル-オクタン-8-オール、4-メチルオクタン-8-オール、1-エチルオクタン-1-オール、2-エチルオクタン-1-オール、3-エチル-オクタン-1-オール、4-メチルオクタン-1-オール、1-エチルオクタン-2-オール、2-エチルオクタン-2-オール、3-エチル-オクタン-2-オール、4-エチルオクタン-2-オール、1-エチルオクタン-3-オール、2-エチルオクタン-3-オール、3-エチル-オクタン-3-オール、4-エチルオクタン-3-オール、1-エチルオクタン-4-オール、2-エチルオクタン-4-オール、3-エチル-オクタン-4-オール、4-エチルオクタン-4-オール、1-エチルオクタン-5-オール、2-エチルオクタン-5-オール、3-エチル-オクタン-5-オール、4-エチルオクタン-5-オール、1-エチルオクタン-6-オール、2-エチルオクタン-6-オール、3-エチル-オクタン-6-オール、4-エチルオクタン-6-オール、1-エチルオクタン-7-オール、2-エチルオクタン-7-オール、3-エチル-オクタン-7-オール、4-エチルオクタン-7-オール、1-エチルオクタン-8-オール、2-エチルオクタン-8-オール、3-エチル-オクタン-8-オール、4-エチルオクタン-8-オール、1-メチルノナン-1-オール、2-メチルノナン-1-オール、3-メチル-ノナン-1-オール、4-メチルノナン-1-オール、1-メチルノナン-2-オール、2-メチルノナン-2-オール、3-メチル-ノナン-2-オール、4-メチルノナン-2-オール、1-メチルノナン-3-オール、2-メチルノナン-3-オール、3-メチル-ノナン-3-オール、4-メチルノナン-3-オール、1-メチルノナン-4-オール、2-メチルノナン-4-オール、3-メチル-ノナン-4-オール、4-メチルノナン-4-オール、1-メチルノナン-5-オール、2-メチルノナン-5-オール、3-メチル-ノナン-5-オール、4-メチルノナン-5-オール、1-メチルノナン-6-オール、2-メチルノナン-6-オール、3-メチル-ノナン-6-オール、4-メチルノナン-6-オール、1-メチルノナン-7-オール、2-メチルノナン-7-オール、3-メチル-ノナン-7-オール、4-メチルノナン-7-オール、1-メチルノナン-8-オール、2-メチルノナン-8-オール、3-メチル-ノナン-8-オール、4-メチルノナン-8-オール、1-メチルノナン-9-オール、2-メチルノナン-9-オール、3-メチル-ノナン-9-オール、4-メチルノナン-9-オール、1-エチルノナン-1-オール、2-エチルノナン-1-オール、3-エチル-ノナン-1-オール、4-メチルノナン-1-オール、1-エチルノナン-2-オール、2-エチルノナン-2-オール、3-エチル-ノナン-2-オール、4-エチルノナン-2-オール、1-エチルノナン-3-オール、2-エチルノナン-3-オール、3-エチル-ノナン-3-オール、4-エチルノナン-3-オール、1-エチルノナン-4-オール、2-エチルノナン-4-オール、3-エチル-ノナン-4-オール、4-エチルノナン-4-オール、1-エチルノナン-5-オール、2-エチルノナン-5-オール、3-エチル-ノナン-5-オール、4-エチルノナン-5-オール、1-エチルノナン-6-オール、2-エチルノナン-6-オール、3-エチル-ノナン-6-オール、4-エチルノナン-6-オール、1-エチルノナン-7-オール、2-エチルノナン-7-オール、3-エチル-ノナン-7-オール、4-エチルノナン-7-オール、1-エチルノナン-8-オール、2-エチルノナン-8-オール、3-エチル-ノナン-8-オール、4-エチルノナン-8-オール、1-エチルノナン-9-オール、2-エチルノナン-9-オール、3-エチル-ノナン-9-オール、及び4-エチルノナン-9-オールが挙げられる。
【0014】
複合アルコールは、環状複合アルコールでもよく、炭素環式又は複素環式でもよい。さらに、炭素環式又は複素環式複合アルコールは芳香族又は非芳香族であってもよい。いくつかの実施形態において、複素環式複合アルコールは、1個以上のヘテロ原子を含む。一実施形態において、複素環式複合アルコールは1個のヘテロ原子を含む。別の実施形態において、複素環式複合アルコールは、2個のヘテロ原子を含む。ヘテロ原子は、N、O、S及びPからなる群から選択され得る。
【0015】
環状複合アルコールはまた、単環式又は多環式であってもよい。多環式複合アルコールは、2個以上の環を含んでもよい。いくつかの実施形態において、多環式複合アルコールは、2つ以上の環を含み、少なくとも2つの環が縮合している。
【0016】
特定の実施形態において、複合アルコールは、ステロールである。ステロールは、植物ステロールであってもよい。特定の一実施形態において、ステロールは、コレステロールである。
【0017】
他の特定の実施形態において、複合アルコールは、クロマノールである。いくつかの実施形態において、クロマノールは、トコフェロール又はトコトリエノールである。
【0018】
いくつかの実施形態において、トコフェロールは、天然、合成、又はそれらの組み合わせである。天然トコフェロールは通常、約96%のα-トコフェロール及び少量のγ-トコフェロールを含む。一方、合成トコフェロールは、典型的には約99~98%のα-トコフェロールを含む。さらに、合成トコフェロールは、8つの可能な立体異性体の混合物を含み、ここで1つのみが天然に存在する。
【0019】
他の実施形態において、トコフェロールは、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、又はそれらの組み合わせである。特定の実施形態において、トコフェロールは、α-トコフェロールを含む。一実施形態において、トコフェロールは、約90%以上のα-トコフェロールを含む。別の実施形態において、トコフェロールは、α-トコフェロール(すなわち、100%α-トコフェロール)である。
【0020】
複合アルコールはまた、医薬化合物、麻酔薬、又は抗酸化剤であってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態において、医薬化合物は、タキサン、ヌクレオシド又はキナーゼ阻害剤等の腫瘍薬、ステロイド、オピオイド鎮痛薬、呼吸器薬、中枢神経系(CNS)薬、高コレステロール血症薬、降圧薬、免疫抑制薬、抗生物質、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、LHRHアンタゴニスト、抗ウイルス薬、抗レトロウイルス薬、エストロゲン受容体モジュレータ、ソマトスタチン模倣薬、抗炎症薬、ビタミンD類似体、合成チロキシン、抗ヒスタミン剤、抗真菌剤、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)又は麻酔薬である。
【0022】
適切な腫瘍薬は、タキサン、例えばパクリタキセル、カバジタキセル及びドセタキセル、カンプトテシン及びその類似体、例えばイリノテカン及びトポテカン、他の微小管作用剤、例えばビンフルニン、ヌクレオシド、例えばゲムシタビン、クラドリビン、フルダラビン、カペシタビン、デシタビン、アザシチジン、クロファラビン及びネララビン、キナーゼ阻害体、例えばスプリセル、テミシロリムス、ダサチニブ、AZD6244、AZD1152、PI-103、R-ロスコビチン、オロモウシン及びプルバラノールA、並びにエポチロンB類似体、例えばイクサベピロン、アントロサイクリン、例えばアムルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン及びバルルビシン、スーパーオキシド誘発剤、例えばトラベクテシン、プロテオソーム阻害剤、例えばボルテゾミブ、並びに他のトポイソメラーゼ阻害剤、挿入剤及びアルキル化剤を含む。
【0023】
適切なステロイドは、タンパク同化ステロイド、例えばテストステロン、ジヒドロテストステロン、エストラジオール及びエチニルエストラジオール、並びにコルチコステロイド、例えばコルチゾン、プレドニゾロン、ブデソニド、トリアムシノロン、フルチカゾン、モメタゾン、アムシノニド、フルシノロン、フルオシノニド、デソニド、ハルシノニド、プレドニカルベート、フルオコルトロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン及びフルプレドニジンを含む。
【0024】
適切なオピオイド鎮痛薬は、モルヒネ、オキシモルフォン、ナロキソン、コデイン、オキシコドン、メチルナルトレキソン、ヒドロモルフォン、ブプレノルフィン及びエトルフィンを含む。
【0025】
適切な呼吸器薬は、気管支拡張剤、吸入ステロイド剤、及び鬱血除去剤を含み、より具体的には、サルブタモール、臭化イプラトロピウム、モンテルカスト及びホルモテロールを含む。適切なCNS薬は、クエチアピン等の抗精神病薬及びベンラファキシン等の抗鬱薬を含む。
【0026】
高コレステロール血症を抑制するのに適した薬物は、エゼチミブ及びスタチン、例えばシンバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン及びロスバスタチンを含む。
【0027】
適切な降圧薬は、ロサルタン、オルメサルタン、メドキソミル、メトロロール、トラボプロスト及びボセンタンを含む。
【0028】
適切な免疫抑制薬は、グルココルチコイド、細胞増殖抑制剤、抗体断片、抗イムノフィリン、インターフェロン、TNF結合タンパク質、より具体的にはカシニューリン阻害剤、例えばタクロリムス、ミコフェノール酸及びその誘導体、例えばミコフェノール酸モフェチル及びシクロスポリンを含む。
【0029】
適切な抗菌剤は、アモキシシリン、メロペネム及びクラブラン酸等の抗生物質を含む。
【0030】
適切なLHRHアゴニストは、酢酸ゴセレリン、デスロレリン及びロイプロレリンを含む。
【0031】
適切なLHRHアンタゴニストは、セトロレリクス、ガニレリクス、アバレリクス及びデガレリクスを含む。
【0032】
適切な抗ウイルス薬は、ヌクレオシド類似体、例えばラミブジン、ジドブジン、アバカビル及びエンテカビルを含み、適切な抗レトロウイルス薬は、プロテアーゼ阻害剤、例えばアタザナビル、ラピナビル及びリトナビルを含む。適切な選択的エストロゲン受容体モジュレータは、ラロキシフェン及びフルベストラントを含む。
【0033】
適切なソマスタチン模倣薬は、オクトレオチドを含む。
【0034】
適切な抗炎症薬は、メサラジンを含み、適切なNSAIDは、アセトアミノフェン(パラセタモール)を含む。
【0035】
適切なビタミンD類似体は、パリカルシトールを含む。
【0036】
適切な合成チロキシンは、レボチロキシンを含む。
【0037】
適切な抗ヒスタミン薬は、フェキソフェナジンを含む。
【0038】
適切な抗真菌剤は、ビリコナゾール等のアゾールを含む。
【0039】
適切な抗酸化剤は、アスコルビン酸、ヒドロキシカロテノイド、例えばレチノール、及びカルシフェロールを含む。
【0040】
適切な麻酔薬は、プロポフォールを含む。
【0041】
複合アルコールはまた、例えばテトラグリコール及びラウリルアルコール等の溶媒であってもよい。
【0042】
いくつかの実施形態において、複合アルコールは、水溶液に難溶性又は不溶性である。例えば、複合アルコールは、ファルネソールであってもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、複合アルコールは、2つ以上の複合アルコールの混合物であってもよい。
【0044】
上記の実施形態において、直鎖状、分岐状又は環状の複合アルコールは、モノヒドロキシ又はポリヒドロキシである。いくつかの実施形態において、ポリヒドロキシ複合アルコールは、2つのヒドロキシ基を含む。他の実施形態において、ポリヒドロキシ複合アルコールは、3つ以上のヒドロキシ基を含む。例えば、ポリヒドロキシ複合アルコールは、3つ、4つ又は5つのヒドロキシ基を含んでもよい。特定の実施形態において、複合アルコールは、モノヒドロキシ複合アルコールである。
【0045】
上記実施形態において、直鎖状、分岐状又は環状の複合アルコールは、非置換であっても、又は1つ以上の置換基で置換されていてもよい。別段に定義されない限り、「置換」又は「置換基」という用語は、本明細書で使用される場合、C1~6アルキル、C1~6アルケニル、C1~6アルキニル、アリール、アルデヒド、ハロゲン、ハロC1~6アルキル、ハロC1~6アルケニル、ハロC1~6アルキニル、ハロアリール、ヒドロキシ、C1~6アルキルヒドロキシ、C1~6アルコキシ、-OC1~6アルキルヒドロキシ、-OC1~6アルキルC1~6アルコキシ、C1~6アルケニルオキシ、アリールオキシ、ベンジルオキシ、ハロC1~6アルコキシ、ハロC1~6アルケニルオキシ、ハロアリールオキシ、ニトロ、ニトロC1~6アルキル、ニトロC1~6アルケニル、ニトロC1~6アルキニル、ニトロアリール、ニトロヘテロシクリル、アミノ、C1~6アルキルアミノ、C1~6ジアルキルアミノ、C1~6アルケニルアミノ、C1~6アルキニルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ベンジルアミノ、ジベンジルアミノ、アシル、C1~6アルケニルアシル、C1~6アルキニルアシル、アリールアシル、アシルアミノ、ジアシルアミノ、アシルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、アリールスルフェニルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロキシ、ヘテロシクロアミノ、ハロヘテロシクリル、アルキルスルフェニル、アリールスルフェニル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、メルカプト、C1~6アルキルチオ、ベンジルチオ、アシルチオ、及びリン含有基から選択される1つ以上の基でさらに置換されていても、又は置換されていなくてもよい基を指す。
【0046】
<リン酸化試薬>
複合アルコールは、P10と混合される。いくつかの実施形態において、P10は、部分的に水和されていてもよい(又はポリリン酸)。
【0047】
リンに対する(複合アルコールの)ヒドロキシル基のモル比は、約3:1~約1:3の範囲内であってもよい。いくつかの実施形態において、モル比は、約2:1~約1:2の範囲内である。一実施形態において、モル比は、約2:1である。
【0048】
別の実施形態において、モル比は、約1:1、又は実質的に等モルである。この特定の実施形態において、P10に対する(複合アルコールの)ヒドロキシル基のモル比は、約1:0.25であろう。
【0049】
<方法>
この方法は、複合アルコールをリン酸化するためのものであり、
(a) その発熱反応温度が達成されるまで、複合アルコール及びP10を混合するステップと、
(b) 発熱反応が完了するまでステップ(a)の反応混合物を反応させ、必要に応じてステップ(a)の反応混合物を少なくとも約90℃~140℃の範囲内に加熱するステップと、
(c) ステップ(b)の反応混合物を、少なくとも80℃に冷却するステップと、
(d) ステップ(c)の反応混合物を加水分解するステップであって、加水分解は約30~約90分間行われるステップと
を含む。
【0050】
<ステップ(a)>
このステップは、その発熱反応温度が達成されるまで、複合アルコール及びP10を混合することを含む。
【0051】
「発熱反応」の意味は、関連技術分野において周知である。これは、光又は本発明のように熱によってエネルギーを放出する化学反応を表す。「発熱反応温度」という用語は、本明細書において、複合アルコールとP10との間の化学反応が熱を放出し始める温度を指すように使用される。
【0052】
複合アルコール及びP10は、その発熱反応温度が達成されるまで混合され、また均質混合物を形成するために混合されてもよい。混合は、撹拌(手動又は機械的)を含む任意の利用可能な手段によって達成することができる。いくつかの実施形態において、混合はまた、高剪断ミキサーの使用を含み得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、このステップはまた、複合アルコールとP10との間の化学反応をその発熱反応温度まで進めるために、複合アルコール及びP10を加熱することを含んでもよい。例えば、複合アルコール及びP10は、その発熱反応温度がより短時間で達成されるように加熱されてもよい。例えば、複合アルコールとP10との間の化学反応を約15~30分でその発熱反応温度まで進めるために、複合アルコール及びP10を加熱してもよい。
【0054】
他の実施形態において、加熱は適用されず、したがって、複合アルコールとP10との間の化学反応は、この温度に達するのに必要な時間にわたってその発熱反応温度を達成する。
【0055】
<ステップ(b)>
このステップは、発熱反応が完了するまでステップ(a)の反応混合物を反応させることを含む。いくつかの実施形態において、反応が進行するにつれて、発熱反応プロセスによって熱が発生し、反応温度は外部からの加熱なしに上昇する。
【0056】
発熱反応は、複合アルコールとP10との間の化学反応の温度が低下し始めたときに完了する。
必要に応じて、ステップ(a)の反応混合物の温度が、複合アルコールとP 10 との間の発熱反応が完了した後に約90℃より低い場合、ステップ(b)は加熱を含んでもよい。1つのそのような実施形態において、ステップ(a)の反応混合物は、少なくとも約90℃~140℃の範囲内に加熱されてもよい。他のそのような実施形態において、ステップ(a)の反応混合物は、約90℃、約100℃、又は約110℃に加熱されてもよい。
ステップ(a)の反応混合物の温度は、約30~約180分間、適切な温度に維持されてもよい。いくつかの実施形態において、ステップ(a)の反応混合物は、約60~約180分間この温度に維持される。一実施形態において、ステップ(a)の反応混合物は、約60~約120分間この温度に維持される。別の実施形態において、ステップ(a)の反応混合物は、約60分間この温度に維持される。
【0057】
いくつかの実施形態において、このステップは、混合を含まない。代替の実施形態において、このステップは、混合を含む。上述のように、混合は、撹拌(手動又は機械的)を含む任意の利用可能な手段によって達成することができ、また高剪断ミキサーの使用を含み得る。
【0058】
<ステップ(c)>
このステップは、ステップ(b)の反応混合物を少なくとも80℃に冷却することを含む。
【0059】
このステップにおいて、温度は、少なくとも80℃である。「少なくとも80℃」という用語は、本明細書において80℃以上の温度を指すように使用される。いくつかの実施形態において、温度は、少なくとも80℃~約160℃の範囲内である。他の実施形態において、温度は、約90℃~140℃の範囲内である。一実施形態において、温度は、約90℃である。別の実施形態において、温度は、約100℃である。さらに別の実施形態において、温度は、約110℃である。
【0060】
複合アルコールとP10との間の発熱反応が完了した後にステップ(b)の反応混合物の温度がこの温度より高い場合、ステップ(b)の反応混合物は、適切な温度に冷却される。
【0061】
いくつかの実施形態において、ステップ(b)の反応混合物の冷却は、経時的に徐々に進行させてもよい。他の実施形態において、時間は、特定の期間に制限されてもよい。例えば、期間は、約30~約90分に制限されてもよく、その後、外部手段を用いてステップ(b)の反応混合物がさらに冷却される。
【0062】
冷却温度になったら、ステップ(b)の反応混合物は、この温度で約30~約180分間維持されてもよい。いくつかの実施形態において、ステップ(b)の反応混合物は、この温度で約60~約180分間維持される。一実施形態において、ステップ(b)の反応混合物は、この温度で約60~約120分間維持される。別の実施形態において、ステップ(b)の反応混合物は、この温度で約60分間維持される。
【0063】
<ステップ(d)>
このステップは、ステップ(c)の反応混合物を加水分解することを含む。
【0064】
加水分解は、水溶液の添加を含む。水溶液は、水(例えば、脱イオン水)であってもよい。いくつかの実施形態において、加水分解のステップ中に、過剰量の水が添加される。加水分解の間、ステップ(c)の反応混合物は、少なくとも80℃の加水分解温度に維持されてもよい。「少なくとも80℃」という用語は、上記の意味を有する。いくつかの実施形態において、加水分解温度は、少なくとも80℃~約150℃の範囲内である。いくつかの実施形態において、加水分解温度は、約85℃~120℃の範囲内である。一実施形態において、加水分解温度は、約90℃~110℃の範囲内である。別の実施形態において、加水分解温度は、約90℃~100℃の範囲内である。さらに別の実施形態において、加水分解温度は、約100℃~110℃の範囲内である。
【0065】
加水分解は、約30~約180分間行われてもよい。いくつかの実施形態において、加水分解は、約30~約120分間行われる。いくつかの実施形態において、加水分解は、約30~約90分間行われる。一実施形態において、加水分解は、約60~約120分間行われる。別の実施形態において、加水分解は、約90から約120分間行われる。一実施形態において、加水分解は、約60~約90分間行われる。
【0066】
<任意選択の溶媒>
方法は、追加の溶媒の非存在下で行われてもよい。「追加の溶媒」という用語は、本明細書において、加水分解ステップ中に使用される水等の水溶液以外の溶媒を指すように使用される。いくつかの実施形態において、複合アルコール及びP10が純粋な形態で混合されるように、追加の溶媒なしで反応が行われる。
【0067】
<生成物>
本発明はまた、方法によって得られる生成物に関する。
【0068】
方法によって得られる生成物は、リン酸化モノ複合アルコール、リン酸化ジ複合アルコール、又はそれらの混合物であってもよい。特定の実施形態において、生成物は、リン酸化モノ複合アルコール及びリン酸化ジ複合アルコールの混合物である。これらの実施形態において、リン酸化モノ複合アルコール及びリン酸化ジ複合アルコールの混合物のモル比は、少なくとも約2:1、約2:1、約6:4若しくは約8:2、又は約4:1~約1:4若しくは約6:4~約8:2の範囲内であってもよい。
【0069】
いくつかの実施形態において、方法によって得られる生成物は、クロスカップリングされたホスファートジエステルであってもよい。
【0070】
方法によって得られる生成物は、残留量の未反応複合アルコール及び/又は関連物質も含み得ることが理解されるべきである。いくつかの実施形態において、方法によって得られる生成物は、最大約2%w/wの量の未反応複合アルコールを含む。いくつかの実施形態において、方法によって得られる生成物は、最大約1%w/wの量の未反応複合アルコールを含む。そのような実施形態において、方法はさらに精製ステップを含んでもよい。
【0071】
<さらなる生成物を得るためのさらなる方法ステップ>
方法によって得られる生成物はまた、両性界面活性剤とさらに反応させることができる。
【0072】
これらの実施形態において、複合アルコールは、トコフェロールであり、リン酸化複合アルコールは、トコフェリルホスファートである。トコフェリルホスファートは、モノ-トコフェリルホスファート、ジ-トコフェリルホスファート、又はそれらの混合物であってもよい。
【0073】
一実施形態において、両性界面活性剤は、式NRの第3級アミンであり、Rは、C6~22アルキルからなる群から選択され、R及びRは、H、(CHCOOX、(CHCHOHCHSOX、(CHCHOHCHOPOX(式中、Xは、Hであるか、又はナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、アルキルアンモニウム及びアルカノールアミンからなる群から選択される陽イオンと塩を形成し、nは、1又は2である)からなる群から独立して選択される。
【0074】
「C6~22アルキル」という用語は、6~22個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状又は環状炭化水素基を指す。例としては、これらに限定されないが、ヘキシル、シクロヘキシル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル及びオクタデシルが挙げられる。
【0075】
いくつかの実施形態において、Rは、C12アルキル(ドデシル)であり、R及びRは、CHCHCOOH及びCHCHCOONaから独立して選択される。
【0076】
特定の実施形態において、三級アミンは、3-[2-カルボキシエチル(ドデシル)アミノ]プロパン酸である。他の実施形態において、三級アミンは、3,3’-ドデシルイミノ)ジプロピオン酸一ナトリウム塩(又はラウリルイミノジプロピオン酸、ラウリルイミノジプロピオン酸ナトリウム又はN-ラウリルイミノジプロピオナート)である。
【0077】
このさらなる方法によって得られる生成物は、ラウリルイミノジプロピオン酸トコフェリルホスファート又はその塩であってもよい。いくつかの実施形態において、塩は、ナトリウム塩である。
【実施例
【0078】
ここで、以下の非限定的な例を参照しながら、本発明の様々な実施形態/態様を説明する。
【0079】
<例1>
合成α-トコフェロール及びP10を混合し(質量比0.170)、加熱しながら約15分以内に発熱反応温度に到達させた。反応混合物が約120℃の温度に達するまで加熱を続け、次いで停止した。反応混合物の温度は、短時間上昇し続けた。発熱反応が完了したら、反応混合物を外部からの制御なしに約60分間冷却させた。次いで、反応物を約90℃の温度までさらに冷却してから、脱イオン水で約60分間加水分解を行った。
【0080】
このプロセスは、約58.52%w/wのモノ-トコフェリルホスファート及び約30.49%w/wのジ-トコフェリルホスファートを生成した。
【0081】
未反応合成α-トコフェロールが約0.21%w/w存在することもまた注目された。
【0082】
<例2>
合成α-トコフェロール及びP10を混合し(質量比0.170)、加熱しながら約15分以内に発熱反応温度に到達させた。反応混合物が約120℃の温度に達するまで加熱を続け、次いで停止した。反応混合物の温度は、短時間上昇し続けた。発熱反応が完了したら、反応混合物を外部からの制御なしに約60分間冷却させた。次いで、反応物を約90℃の温度までさらに冷却してから、脱イオン水での加水分解を約60分間行った。
【0083】
このプロセスは、約59.26%w/wのモノ-トコフェリルホスファート及び約30.91%w/wのジ-トコフェリルホスファートを生成した。
【0084】
未反応合成α-トコフェロールが約0.20%w/w存在することもまた注目された。
【0085】
<例3>
天然α-トコフェロール(0.07%w/w)及びP10を混合し(質量比0.170)、加熱しながら約15分以内に発熱反応温度に到達させた。反応混合物が約120℃の温度に達するまで加熱を続け、次いで停止した。反応混合物の温度は、短時間上昇し続けた。発熱反応が完了したら、反応混合物を外部からの制御なしに約60分間冷却させた。次いで、反応物を約90℃の温度までさらに冷却してから、脱イオン水での加水分解を約60分間行った。
【0086】
このプロセスは、約55.79%w/wのモノ-トコフェリルホスファート及び約27.68%w/wのジ-トコフェリルホスファートを生成した。
【0087】
未反応合成α-トコフェロールが約0.07%w/w存在することもまた注目された。
【0088】
<例4>
プロポフォール(1.07g、6.00mmol)及びP10(0.430g、1.51mmol)を、反応管内で混合し、激しく撹拌した。反応混合物を、HO浴(50~90℃)で120分以上加熱して発熱反応を完結させ、次いで90℃で60分間HO(0.260g)で加水分解した。
【0089】
室温に冷却した後、反応混合物をEtOH(30mL)に溶解し、100mLのRBFに移し、真空中で濃縮した(60℃のHO浴)。残った赤色油状固体を熱ヘキサン(90mL)中に懸濁し、熱時濾過した。ヘキサン濾液を真空中(60℃のHO浴)で約25mLに濃縮し、次いで氷浴上で約120分間冷却した。冷懸濁液を真空濾過し、フィルターケーキを冷ヘキサン(3×15mL)で洗浄し、真空炉(55℃)内で乾燥して白色粉末を得た。
【0090】
最終生成物の質量分析は、プロポフォールの所望のモノホスファート誘導体の形成を示した。
【0091】
<例5>
プロポフォール(0.565g、3.17mmol)、D-α-トコフェロール(1.35g、3.13mmol)及びP10(0.462g、1.63mmol)を、Radleys 12 Station Carousel反応管内で合わせた。反応混合物を100℃で120分間加熱して、それぞれの発熱反応を完了させた。次いで、反応混合物を90℃に冷却した後、その温度で60分間HO(0.360g)で加水分解した。
【0092】
室温に冷却した後、反応混合物をEtOH(30mL)で希釈し、濾過し、真空中(60℃のHO浴)で濃縮して、褐色油状物質を得た。
【0093】
最終生成物の質量分析は、プロポフォール及びD-α-トコフェロールのモノホスファート誘導体、並びにクロスカップリングされたホスファートジエステルの形成を示した。
【0094】
<例6>
ラウリルアルコール(0.990g、5.31mmol)及びP10(0.530g、1.87mmol)を、Radleys 12 Station Carousel反応管内で合わせ、激しく撹拌した。反応混合物を100℃で60分間加熱し、発熱反応を完了させた。次いで、反応混合物を90℃に冷却した後、その温度で60分間HO(0.140g)で加水分解した。
【0095】
室温に冷却した後、反応混合物をEtO(6mL)とHO(6mL)との間で分配した。EtO相を真空中(60℃のHO浴)で濃縮し、黄色液体を得た。
【0096】
最終生成物の質量分析は、ラウリルアルコールの所望のモノホスファート誘導体の形成を示した。
【0097】
<例7>
β-エストラジオール(0.490g、1.80mmol)及びP10(0.140g、0.493mmol)を、Radleys 12 Station Carousel反応管内で合わせ、トリアセチン(2mL)中に懸濁させた。反応混合物を100℃で60分間加熱し、発熱反応を完了させた。次いで、反応混合物を90℃に冷却した後、その温度で60分間HO(1.00g)で加水分解した。
【0098】
室温に冷却した後、反応混合物をヘキサン(2×25mL)で洗浄した。得られた懸濁液をTHF(30mL)に溶解し、真空中(60℃のHO浴)で濃縮して、油状のベージュ色の固体を得た。最終生成物の質量分析は、所望のモノホスファート誘導体の形成を示した。
【0099】
以下の特許請求の範囲及び本発明の上記の説明において、文脈上、明確な言語又は必要な意味合いにより別段に必要とされない限り、「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」等の変化形が包含的に用いられ、すなわち、記載された特徴の存在を特定するが、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在又は追加を排除するものではない。