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特許7198758(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/10 20060101AFI20221222BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20221222BHJP
   C08F 230/08 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
C08F220/10
C09K3/10 E
C08F230/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019537671
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2018031109
(87)【国際公開番号】W WO2019039537
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2017161004
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粟津 康博
(72)【発明者】
【氏名】島田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 光朗
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特許第5355848(JP,B2)
【文献】特開昭57-179210(JP,A)
【文献】特開平07-258535(JP,A)
【文献】特開平09-071749(JP,A)
【文献】特開2004-292609(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024963(WO,A1)
【文献】特開2015-025689(JP,A)
【文献】特許第5666904(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/002907(WO,A1)
【文献】特表2016-509618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00-220/70
C08F 230/00-230/10
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定される重量平均分子量(Mw)が30,000~75,000であり数平均分子量(Mn)が2,500以上19,000未満であり、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が2.35以上3.2以下であり、
アルキル基の炭素数が2~25である(メタ)アクリル酸アルキルエステルから導かれる構造単位を重合体の主鎖中に95重量%以上含有し、
重合体1分子あたり、
メチルジメトキシシリル基数が1.1~3.0個であり、
分子鎖側鎖のメチルジメトキシシリル基数が0.55~1.5個の範囲であり、
分子鎖末端のメチルジメトキシシリル基数が0.55~1.5個の範囲であり、かつ、
メチルジメトキシシリル基以外の架橋性シリル基を有さないことを特徴とする(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体。
【請求項2】
金属成分を実質的に含有しないことを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を含むことを特徴とするシーリング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング材用途に好適な、新規なアクリル系重合体および該重合体を用いたシーリング材に関する。
【背景技術】
【0002】
シーリング材は主に建築分野で大量に使用される材料であり、主な種類として、変成シリコーン系、ウレタン系、シリコーン系等が挙げられる。特に変成シリコーン系のシーリング材は、市場生産量で最も多い割合を占めている。この変成シリコーン系のシーリング材としては、両末端に反応性シリル基を架橋性基として有するポリプロピレングリコール(PPG)骨格の樹脂が広く用いられている(たとえば特許文献1参照)。しかしながら、このようなシーリング材では、PPG骨格中のC-Oの結合が切れ易く、耐候性が悪いという問題があった。
【0003】
一方で粘着剤組成物としては、反応性シリル基を両末端に有し、主鎖が(メタ)アクリル系であるポリマーと、硬化促進剤として有機金属化合物とを用いた樹脂組成物が、耐候性の問題を改善し得る技術として知られている(特許文献2)。
【0004】
また、ATRP法(原子移動ラジカル重合法)により、精度良く両末端に反応性シリル基を導入することで、伸びなどの特性面を更に向上させることが提案されている(特許文献3)。しかし、この方法では金属触媒を用いる必要がある為、精製できない金属触媒が残存し、シーリング材組成物とした際、架橋反応の阻害や、着色が起こるなどの問題があった。
【0005】
このため、適度な架橋反応性を有し、シーリング材用途に好適であり、金属成分を実質的に含まない重合体、および該重合体を用いたシーリング材の出現が望まれていた。
【0006】
このような状況において、特許文献4には、架橋可能な加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体(A)と、架橋可能な加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(B)とを含む、硬化性の樹脂組成物が提案されている。特許文献4には、アクリル系重合体(A)が、分子鎖側鎖に0.1~0.5個の加水分解性シリル基を有することにより、硬化特性を有し、硬化体が良好な伸びを示すことが教示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭50-156599号公報
【文献】特許第2539485号公報
【文献】特許第4098890号公報
【文献】特許第5355848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、適度な架橋反応性を有し、シーリング材用途に好適であり、好ましくは金属成分を実質的に含まない新規なアクリル系重合体、および該重合体を用いたシーリング材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、特定構造を有するアクリル系重合体では、ATRP法で両末端に反応性シリル基を導入した重合体ではなくても、シーリング材としての破断伸び、残留タック、モジュラス性能が良好になる領域があることを見出し、本発明の完成に到った。また、このアクリル系重合体は、金属触媒を用いずとも重合することができるため、金属触媒の残留による架橋反応の阻害なども改善することができることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、以下の〔1〕~〔6〕に関する。
〔1〕ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定される重量平均分子量(Mw)が30,000~150,000であり、かつ、数平均分子量(Mn)が20,000未満であり、
重合体1分子あたり、
メチルジメトキシシリル基数が1.1~3.0個であり、
分子鎖側鎖のメチルジメトキシシリル基数が0.5個を超え、かつ、
分子鎖末端のメチルジメトキシシリル基数が0.5個を超えることを特徴とする(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体。
〔2〕アルキル基の炭素数が2~25である(メタ)アクリル酸アルキルエステルから導かれる構造単位を有することを特徴とする前記〔1〕に記載の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体。
〔3〕ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とから求められる分子量分布(Mw/Mn)が、1.8以上であることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体。
〔4〕金属成分を実質的に含有しないことを特徴とする前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体。
〔5〕メチルジメトキシシリル基以外の架橋性シリル基を有さないことを特徴とする前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体。
〔6〕前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を含むことを特徴とするシーリング材。
【発明の効果】
【0011】
本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は、適度な架橋反応性を有し、シーリング材用途に好適であり、通常金属成分を実質的に含まないものとすることができる。また、本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は、分子量分布が広く、比較的粘度が低いことから、ハンドリング性や他の樹脂との混合性に優れ、金属成分を実質的に含まないことから、架橋反応の阻害や、着色・変色等の問題が生じにくく、適度な架橋反応性を有することからシーリング材などの架橋性組成物とした場合に十分なポットライフを有する。
【0012】
本発明のシーリング材は、施工性が良好で、十分なポットライフを有するとともに、硬化後の破断伸び、残留タック、モジュラス性能などの特性に優れ、良好なシーリング性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0014】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体
本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は、重量平均分子量(Mw)が30,000~150,000であり、かつ、数平均分子量(Mn)が20,000未満であり、重合体1分子あたりの平均で、架橋性シリル基を1.1~3.0個有する。また本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は、重合体1分子あたりの分子鎖側鎖の架橋性シリル基が0.5個を超え、かつ、分子鎖末端の架橋性シリル基が0.5個を超える重合体である。
【0015】
本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0016】
本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルから導かれる構造を有する重合体である。本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は、重合体の主鎖中に(メタ)アクリル酸アルキルエステルから導かれる構造単位を通常50重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは98重量%以上含有する。(メタ)アクリル酸アルキルエステルから導かれる構造単位が、重合体中に50重量%未満である場合には、耐候性等が低下する場合がある。
【0017】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキルエステルのアルキル基の炭素数が通常1~30、好ましくは2~25、より好ましくは3~18、さらに好ましくは4~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが望ましく、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は、メチルジメトキシシリル基を、重合体1分子あたり、数平均で1.1~3.0個、好ましくは1.1~2.5個、より好ましくは1.1~2.0個有する。この重合体1分子あたりのメチルジメトキシシリル基数は、重合体の分子鎖側鎖のメチルジメトキシシリル基数と、分子鎖末端のメチルジメトキシシリル基数とを合計した総量である。本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は、特に限定されるものではないが、メチルジメトキシシリル基を含む架橋性シリル基の総量が、重合体1分子あたり、数平均で1.1~3.0個の範囲を満たすのが好ましく、メチルジメトキシシリル基以外の架橋性シリル基を有さないことがより好ましい。
【0019】
本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は、分子鎖側鎖と、分子鎖末端の両方にメチルジメトキシシリル基を有する。分子鎖側鎖のメチルジメトキシシリル基数は、重合体1分子あたり、数平均で0.5個を超え、また、分子鎖末端のメチルジメトキシシリル基数は、重合体1分子あたり、数平均で0.5個を超える。分子鎖側鎖のメチルジメトキシシリル基数は、重合体1分子あたり、通常、数平均で0.5個を超えて2.5個未満であり、好ましくは0.55~1.5個の範囲である。また分子鎖末端のメチルジメトキシシリル基数は、重合体1分子あたり、通常、数平均で0.5個を超えて2.5個未満であり、好ましくは0.55~1.5個の範囲である。
【0020】
メチルジメトキシシリル基の個数は、組成比と数平均分子量(Mn)より理論上のポリマー1分子あたりの反応性シリル基含有モノマーの個数計算を行うことによって算出することができる。
【0021】
本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体が、このような量でメチルジメトキシシリル基を有すると、適度な架橋性を有し、架橋体を形成する用途に好適に用いることができ、適切なポットライフを有する架橋性組成物を容易に調製することができ、シーリング材用途や粘着剤用途などの架橋性用途に用いた場合には、ハンドリングに優れ、施工が容易となるため好ましい。
【0022】
本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体において、分子鎖側鎖のメチルジメトキシシリル基と、分子鎖末端のメチルジメトキシシリル基は、どのようにして重合体中に導入されてもよいが、通常、メチルジメトキシシリル基を有するモノマーを(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合することで導入することができる。
【0023】
たとえば、分子鎖側鎖のメチルジメトキシシリル基は、アルキル基の炭素数が通常1~30、好ましくは2~10、より好ましくは2~5の(メタ)アクリロキシアルキルメチルジメトキシシランを用いて導入することができ、具体的には、たとえば、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシブチルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシブチルメチルジメトキシシラン等を用いることができる。
【0024】
また、分子鎖末端のメチルジメトキシシリル基は、アルキル基の炭素数が通常1~30、好ましくは2~10、より好ましくは2~5の3-メルカプトアルキルメチルジメトキシシランを用いて導入することができ、具体的には、たとえば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトブチルメチルジメトキシシラン等を用いることができる。3-メルカプトアルキルメチルジメトキシシランは連鎖移動性の高い官能基を有することから、連鎖移動剤として作用し、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等とともに重合を行った場合にメチルジメトキシシランを分子鎖末端に導入することができる。3-メルカプトアルキルメチルジメトキシシランは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびその他のモノマーの総量100重量部に対して、好ましくは0.4~2.0重量部、より好ましくは0.5~1.5重量部の範囲で用いることにより、分子鎖末端のメチルジメトキシシリル基数が0.5個を超え、かつ重合体1分子あたりのメチルジメトキシシリル基数が1.1~3.0個の範囲を満たす(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を好適に製造することができる。
【0025】
また、本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は、本発明の目的を損なわない範囲で、共重合可能なその他のモノマーから導かれる構造単位を含んでいてもよく(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸エステルから導かれる構造単位を含んでいてもよい。このようなその他のモノマーから導かれる構造単位の含有量は、重合体を構成する全構造単位中の10重量%以下、好ましくは5重量%以下であることが望ましい。
【0026】
共重合可能なその他のモノマーとしては、たとえば、スチレン、インデン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、p-クロロメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブトキシスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン誘導体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニル等のビニルエステル基を持つ化合物;無水マレイン酸、N-ビニルピロリドン、N-ビニルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、tert-アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4-ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン-1,4-ジオール-ジビニルエーテル、ヘキサン-1,6-ジオール-ジビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール-ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4-ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4-ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4-ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール-モノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル3-アミノプロピルビニルエーテル、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテル等のビニロキシ基を持つ化合物;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシ-ポリエチレングリコール-(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物;2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;その他の官能基を有する(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。
【0027】
本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常30,000~150,000、好ましくは31,000~100,000、より好ましくは32,000~75,000の範囲である。重量平均分子量(Mw)が、30,000~150,000の範囲を満たすと、通常500Pa・s以下の適度な粘度を有し、シーリング材用途などに好適に用いることができる。また、重量平均分子量(Mw)が31,000~100,000、好ましくは32,000~75,000の範囲であると、400Pa・s以下のより適度な粘度を有し、ハンドリング性や他の樹脂との混合性に優れるため好ましい。
【0028】
本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の数平均分子量(Mn)は、通常20,000未満であり、好ましくは19,000未満である。また、この数平均分子量(Mn)は、特に限定されるものではないが、2,500以上であることが好ましい。数平均分子量がこのような条件を満たすと、ハンドリング性や他の樹脂との混合性に優れる点から好ましい。
【0029】
本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)から求められる分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは1.8以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.1以上の範囲であるのが望ましい。また、この分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されるものではないが、3.2以下であることが好ましい。分子量分布がこのような範囲にある場合には、分子量分布が比較的広く、適度な流動性を有し、シーリング材などへの適用に好適であるため好ましい。
【0030】
なお、本発明において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定される値を意味し、測定方法は後記する実施例に記載の方法で行う。
【0031】
本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の粘度は、特に限定されるものではないが、好ましくは500Pa・s以下、より好ましくは400Pa・s以下、さらに好ましくは10~400Pa・sの範囲であるとシーリング材への適用に好適である。
【0032】
本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を製造する方法としては、上述した各モノマー成分を重合し得る方法をいずれも採用することができるが、金属触媒を用いない方法が好ましく、重合開始剤としてアゾ化合物系重合開始剤または過酸化物系重合開始剤を用いた重合法で重合を行うことが好ましく、アゾ化合物系重合開始剤を用いた重合法で重合を行うことがより好ましい。このような方法で製造した(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は、分子量分布が比較的広く、適度な流動性を有し、シーリング材などに適用した場合の施工性に優れるとともに、重合体中に触媒に由来する金属成分を含まないため、架橋反応の阻害や着色などを改善することができ、シーリング材などの架橋性用途に用いた場合に好適なポットライフを有するものとできるため好ましい。
【0033】
アゾ化合物系重合開始剤としては、たとえば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2'-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕、2,2'-アゾビス(イソブチルアミド)ジヒドレート、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2'-アゾビス(2-シアノプロパノール)、ジメチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等が挙げられる。また、過酸化物系重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリウム等が挙げられる。
【0034】
これらの重合開始剤は1種単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。また、重合開始剤は、複数回にわたって逐次添加して用いることも好ましい。
【0035】
重合開始剤の使用量は、モノマー100質量部に対して、通常0.001~2質量部、好ましくは0.002~1質量部である。重合開始剤を前記範囲内で使用することにより、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の重量平均分子量を適切な範囲内に調整することができる。
【0036】
本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は、金属成分を実質的に含有しないことが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体が、金属成分を実質的に含有しないとは、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体中の金属成分が100ppm未満であることを意味する。含有量については、実施例に記載の方法で検出する。
【0037】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の用途
本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は、良好な架橋性を有することから、架橋により硬化させて用いる用途、あるいは、硬化体の弾性を利用した用途、さらにこの重合体が粘稠な液体であることを利用した用途等に使用することができる。
【0038】
たとえば、シーリング材、粘着剤、接着剤、塗料用ビヒクル、プライマー用樹脂、インキ用バインダー、セメントやモルタル、金属、ガラス等の無機材料表面の被覆コーティング樹脂、シート成形品(例;通気性シート、保護シート、遮水シート、制振シート、転写シート、調光シート、帯電防止シート、導電シート、養生シート、遮音シート、遮光シート、化粧シート、マーキングシート、難燃シート)、フィルム成形品(例;マーキングフィルム、保護フィルム、インキ定着フィルム、ラミネートフィルム)、発泡体(硬質発泡体、軟質発泡体、半硬質発泡体、難燃発泡体などを含む)、反応性可塑剤、可塑剤、希釈剤、相溶化剤、ポリマー型のシランカップリング剤、シリカ被覆剤、中間原料として、シリコーン樹脂のグラフト剤やブロック剤、シリコーンゴムの変成剤等としての変成樹脂用原料、マクロマーとしての各種ブロックポリマーなどの樹脂用原料または、改質用原料、添加剤、更には、繊維改質剤、繊維表面処理剤、紙加工剤、紙改質剤、界面活性剤、分散安定剤、分散媒、溶剤、粘度調整剤、吸着剤、毛髪処理剤、トナー用添加剤、帯電制御剤、帯電防止剤、低収縮剤、防曇剤、防汚剤、親水性付与剤、親油性付与剤、医薬担体、農薬用担体、化粧品用配合剤、滑剤、ポリマーアロイ用添加剤、ゲルコート剤、FRP用樹脂、FRP樹脂用添加剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用樹脂添加剤、注入成型品用樹脂、UV・EV硬化樹脂用原料、粘着付与剤、各種バインダー(例;磁気記録媒体用バインダー、鋳造用バインダー、焼成体用バインダー、グラスファイバーサイジング材用バインダー)、RIM用ウレタン改質剤、合わせガラス用樹脂、制振材、遮音材、分離膜用樹脂、防音材、吸音材、人工皮革、人工皮膚、合成皮革、各種工業用部品、日用品、トイレタリー用成型品、アクリルシリコーンゴム、アクリルシリコーンゴム改質剤、アクリルシリコーンフォーム改質剤、シリコーンゴム改質剤、シリコーンフォーム可塑剤、シリコーンフォーム改質剤、アクリルゴム改質剤などとして使用することができる。
【0039】
本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は、適度な架橋性を有し、シーリング材等の用途に用いた場合には、金属触媒の残留による不具合がなくハンドリングに優れるため好適である。
【0040】
シーリング材
本発明のシーリング材は、上述した本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を含有する。本発明のシーリング材は、比較的広い分子量分布を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を含有することから、他の樹脂や添加剤との相溶性がよく、シーリング材としての粘度も低くなる為、ハンドリング性に優れる。
【0041】
本発明のシーリング材は、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体とともに、それ以外の重合体を含むことも好ましい。シーリング材に含有することのできるその他の重合体としては、特に限定されるものではないが、たとえば、架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体を挙げることができる。
【0042】
また本発明のシーリング材は、必要に応じて、硬化特性を調整するための触媒や助触媒、脱水剤、充填剤、タレ防止剤、顔料、酸化防止剤等を含有することもできる。
【0043】
このような本発明のシーリング材は、良好なポットライフを有し、施工性に優れるとともに、硬化後の破断伸びやモジュラスにも優れる。
【実施例
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
以下の実施例および比較例において、部は重量部を示す。
<評価方法>
以下の実施例および比較例において、各重合体の特性・性状の測定および評価は、次の方法により行った。
【0046】
≪重合体の評価≫
分子量
共重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による分析を行い、下記条件でポリスチレン換算により算出した。
・装置:GPC-8220(東ソー社製)
・カラム:G7000HXL/7.8mmID×1本 +
GMHXL/7.8mmID×2本 +
G2500HXL/7.8mmID×1本
・媒体:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
・濃度:1.5mg/ml
・注入量:300μL
・カラム温度:40℃
ゲル分率
試料約1gを量りとり、酢酸エチルに24hr.浸漬させた後、シェイカー(SA300、ヤマト科学)で2hr.振とうし、溶剤不溶分をSUSメッシュ♯200でろ過し採取した。採取した溶剤不溶分を80℃で1hr.乾燥し、溶剤浸漬前後での重量変化を百分率で算出した。
シリル基数
組成比と数平均分子量(Mn)より理論上のポリマー1分子あたりの反応性シリル基含有モノマーの個数計算を行い、ポリマー1分子あたりの平均側鎖、末端シリル基数を算出した。
粘度
液温25℃条件下にてB型粘度計(DV-II+Pro、ブルックフィールド)を用いて測定した。
【0047】
≪混合液の物性評価≫
・物性評価用混合液作成条件
共重合体100重量部、触媒としてジブチル錫ジラウレート(ネオスタンU-100、日東化成工業)0.5重量部、助触媒としてγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(Silquest A-1120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル)5重量部、脱水剤としてビニルトリメトキシシラン(Silquest A-171、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル)1重量部をガラス瓶に量りとり、スパチュラで予備混合した後、自転・公転ミキサー(ARE-310、シンキー)で2000rpm×5分混合し、混合液(I)を作成した。
【0048】
ポットライフ
混合液(I)を23℃、50%RH条件下で静置し、混合液(I)の粘度が2倍になるまでの時間が5時間以上となった場合を○、5時間未満となった場合を×と評価した。
【0049】
破断伸び
混合液(I)を硬化後の厚さが2mmになるように23℃、50%RHで7日間硬化させることで試験片を得た。
【0050】
3号ダンベル型に打ち抜いた後、オートグラフ(AG-X、島津製作所)を用いて引張速度100mm/min.で試験片が破断するまで引き伸ばし、破断するまでの距離を求め、試料長からの伸び率をパーセンテージであらわした。なお、破断伸びは靭性の指標であり、高い方が良好である。
≪硬化物の物性評価≫
モジュラス
混合液(I)を厚さ6mmのシート状試験片にし、23℃50%RHで7日間硬化させた。
【0051】
ゴム硬度計(JIS K6253タイプA、高分子計器)を用いて測定した。なお、モジュラスは低いと復元性が劣り、高いと破断伸びが低下することを示す指標となる。
【0052】
残留タック
混合液(I)を厚さ2mmのシート状試験片にし、23℃50%RHで7日間硬化させたサンプルを指触による官能試験で評価した。
【0053】
触った時のべたつき感がきつく、触った後の指にべたつきがはっきり残る場合を×、少しべたつき感があり、指にべたつきが少し残る場合を△、べたつきが感じられず、指にべたつきが残らない場合を○と評価した。また硬化しなかった場合は硬化せずと表記した。
【0054】
金属量
ICP発光分光分析装置(ICPE-9000、島津製作所)を用いて重合体の金属残渣を測定した。
【0055】
検出限界は2ppmであり、検出された場合を○、検出限界以下であった場合を×とした。
[実施例1](共重合体A1の製造および評価)
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、メチルエチルケトン50部、n-ブチルアクリレート49.43部、2-エチルヘキシルアクリレート49.43部、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-502、信越化学工業)1.15部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを導入しながら30分攪拌して窒素置換を行った後、フラスコの内容物を60℃まで昇温した。次いで、フラスコ内の内容物を60℃に維持しながら、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-802、信越化学工業)0.89部を添加し30分攪拌後、初期開始剤アゾビスイソブチロニトリル0.05部を添加し重合を開始した。その後アゾビスイソブチロニトリル0.5部を30分毎に計4回添加した。初期開始剤の添加から360分後に室温まで冷却し、共重合体溶液を得た。この共重合体溶液を、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、共重合体(A1)を得た。この共重合体(A1)は、重量平均分子量(Mw)=4.4万、数平均分子量(Mn)=1.4万であった。
【0056】
得られた共重合体(A1)を用いて、上述の評価方法に従い、混合液および硬化物を評価した。結果を表1に示す。なお、金属成分は検出されなかった。
[実施例2~4、比較例1~5,7,8](共重合体A2~A3,B1~B5,B7,B8の製造および評価)
実施例1において、モノマーおよび連鎖移動剤を表1に示す組成としたこと以外は、実施例1と同様の手順で共重合を行い、共重合体A2~A3,B1~B5,B7,B8を得た。またこれらについて、実施例1と同様に混合液および硬化物を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0057】
[比較例6](共重合体B6の製造および評価)
1Lの耐圧反応容器に、n-ブチルアクリレート80部、エチルアクリレート20部、水酸基含有開始剤であるヒドロキシエチル-2-ブロモプロピオネート3.07部、臭化第一銅2.24部、2,2’-ビピリジル4.87部、酢酸エチル90部、アセトニトリル20部を仕込み、窒素ガスを導入しながら30分攪拌して窒素置換を行った後、封管した混合物を130℃に加熱し、2時間反応させた。反応容器を室温にもどし、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを4.06部加え、110℃で2時間反応させた。混合物を酢酸エチル200部で希釈し、不溶分を濾別した後、濾液を10%塩酸とブラインで洗浄、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去することで、末端に水酸基を有するn-ブチルアクリレート、エチルアクリレートの共重合体を得た。
【0058】
次に、この末端に水酸基を有するn-ブチルアクリレート、エチルアクリレートの共重合体を50部、およびピリジン10部のトルエン溶液100部に、窒素雰囲気下、75℃で、ウンデセン酸クロリド6.81部をゆっくりと滴下し、75℃で3時間撹拌した。生成した白色固体を濾過し、有機層を希塩酸およびブラインで洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で濃縮することにより、アルケニル基を有するn-ブチルアクリレート、エチルアクリレートの共重合体を得た。次に30mLの耐圧反応容器に、上記で得られた両末端にアルケニル基を有するn-ブチルアクリレート、エチルアクリレートの共重合体2部、メチルジメトキシシラン0.32部、オルトギ酸メチル0.09部(アルケニル基に対し3当量)、白金ビス(ジビニルテトラメチルジシロキサン)(8.3×10-8mol/Lキシレン溶液、アルケニル基に対し、10-4当量)を仕込み、100℃で1時間撹拌した。揮発分を減圧下留去することにより、架橋性シリル基を有するn-ブチルアクリレート、エチルアクリレートの共重合体(B6)を得た。得られた共重合体B6について、実施例1と同様に混合液および硬化物を評価した。結果を表1に示す。なお、金属成分としては、Cuが135ppm検出された。
【0059】
【表1】
実施例1~4で得られた共重合体(A1)~(A4)は、いずれも、本発明で特定する1分子あたりのメチルジメトキシシリル基数、分子鎖側鎖および分子鎖末端の各メチルジメトキシシリル基数を満たし、得られた共重合体自体に金属成分を含まず、適度な粘度を有し、硬化性組成物である混合液とした際には、好適なポットライフを有するとともに、ハンドリング性に優れ、混合液から得られが硬化物は、モジュラスおよび破断伸びのバランスがよく、べたつきがないものであった。このことから、これらの共重合体(A1)~(A4)はシーリング材成分として好適であることが分かった。
【0060】
比較例1の共重合体(B1)は、分子鎖側鎖のシリル基(側鎖シリル基)が2.5個を超えるため破断伸びが100%以下と悪く、比較例7の共重合体(B7)は、側鎖シリル基が0.5個以下であり、重量平均分子量(Mw)が30000未満のため破断伸びが悪くなったと考えられる。比較例8の共重合体(B8)は、分子鎖末端のシリル基(末端シリル基)が0.5個以下であるため、残留タックがやや悪く、連鎖移動剤(KBM-802)添加が少量であることに伴い分子量が高くなり、粘度が上がる為、ハンドリング性が悪いと考えられる。比較例5の共重合体(B5)は、側鎖シリル基が0.5個以下であり、架橋性シリル基の総量が、重合体1分子あたり1.1個未満のため物性評価用混合液が硬化しなかったと考えられる。
【0061】
比較例2および3の共重合体(B2)、(B3)は、側鎖シリル基がトリメトキシシリル基であるためポットライフが悪いと考えられる。
【0062】
比較例6の共重合体(B6)は、樹脂中に金属残渣が存在するためポットライフが悪いと考えられる。
【0063】
比較例4の共重合体(B4)は、側鎖シリル基と末端シリル基はともに0.5個を超えているが、架橋性シリル基の総量が、重合体1分子あたり1.1個未満のため残留タックが悪くなったと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は、良好な架橋性を有するため、架橋・硬化して用いる用途に好適に用いることができる。本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体およびその架橋物は、たとえば、シーリング材、粘着剤、接着剤、塗料用ビヒクル、プライマー用樹脂、インキ用バインダー、セメントやモルタル、金属、ガラス等の無機材料表面の被覆コーティング樹脂、シート成形品、フィルム成形品、発泡体、反応性可塑剤、可塑剤、希釈剤、相溶化剤、ポリマー型のシランカップリング剤、シリカ被覆剤、中間原料として、シリコーン樹脂のグラフト剤やブロック剤、シリコーンゴムの変性剤等としての変性樹脂用原料、マクロマーとしての各種ブロックポリマーなどの樹脂用原料または、改質用原料、添加剤、更には、繊維改質剤、繊維表面処理剤、紙加工剤、紙改質剤、界面活性剤、分散安定剤、分散媒、溶剤、粘度調整剤、吸着剤、毛髪処理剤、トナー用添加剤、帯電制御剤、帯電防止剤、低収縮剤、防曇剤、防汚剤、親水性付与剤、親油性付与剤、医薬担体、農薬用担体、化粧品用配合剤、滑剤、ポリマーアロイ用添加剤、ゲルコート剤、FRP用樹脂、FRP樹脂用添加剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用樹脂添加剤、注入成型品用樹脂、UV・EV硬化樹脂用原料、粘着付与剤、各種バインダー、RIM用ウレタン改質剤、合わせガラス用樹脂、制振材、遮音材、分離膜用樹脂、防音材、吸音材、人工皮革、人工皮膚、合成皮革、各種工業用部品、日用品、トイレタリー用成型品、アクリルシリコーンゴム、アクリルシリコーンゴム改質剤、アクリルシリコーンフォーム改質剤、シリコーンゴム改質剤、シリコーンフォーム可塑剤、シリコーンフォーム改質剤、アクリルゴム改質剤などとして使用することができる。