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特許7198818ピストン圧縮機を動作させる方法及びピストン圧縮機
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  • 特許-ピストン圧縮機を動作させる方法及びピストン圧縮機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】ピストン圧縮機を動作させる方法及びピストン圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 9/10 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
F04B9/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020528098
(86)(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018025281
(87)【国際公開番号】W WO2019101361
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】102017010789.0
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519288685
【氏名又は名称】リンデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Linde GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Carl-von-Linde-Str. 6-14, 82049 Pullach i. Isartal, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドルナー、サッシャ
(72)【発明者】
【氏名】ナーグル、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】フリッツァー、ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー、クラウス
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-170097(JP,A)
【文献】特開2012-127337(JP,A)
【文献】特表2019-507271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 9/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ(110)内に往復ピストン(111)を有するピストン圧縮機(100)を動作させる方法であって、入口弁(112)及び出口弁(113)が、前記シリンダ(110)内の、圧縮及び搬送される媒体(b)の側に設けられており、
前記往復ピストン(111)が、第1の容積(141)内の油圧媒体(a)を使用して、油圧ピストン(120)を有する油圧駆動部(120、121)によって往復運動され、前記油圧媒体と共に、前記往復ピストン(111)が、前記油圧駆動部(120、121)の側に装填され、
記往復ピストン(111)の位置(x)及び/又は前記第1の容積(141)内の圧力(p)との関連における、前記油圧ピストン(120)の位置、及び/又は前記油圧ピストン(120)を運動させるために設けられているシャフト(121)の回転角度(φ)に応じた方式で、油圧媒体(a)が、前記第1の容積(141)内に供給され、及び/又は、前記第1の容積(141)から排出される、方法において、
前記油圧媒体(a)を使用し且つ前記往復ピストン(111)によって少なくとも部分的に境界された第2の容積(142)を形成している油圧減衰ユニット(140)によって、前記往復ピストン(111)の運動が、前記油圧駆動部(120、121)の側で制限されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第2の容積(142)が、前記ピストン圧縮機(100)によって搬送される媒体(b)の量を低減するために、前記第1の容積(141)に接続されており、余剰の油圧媒体(a)が、前記第1の容積(141)からリザーバ(130)内に排出され、及び/又は、
前記第1の容積(141)が、前記ピストン圧縮機(100)によって搬送される媒体(b)の量を増大させるために、前記油圧媒体用の前記リザーバ(130)に接続されており、必要とされる油圧媒体が、前記リザーバ(130)から供給される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも2つの往復ピストンと、対応するシリンダとを有する、多段ピストン圧縮機が、前記ピストン圧縮機(100)として使用される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
イオン流体が、動作流体として使用される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
シリンダ(110)内に往復ピストン(111)を有するピストン圧縮機(100)であって、入口弁(112)及び出口弁(113)が、前記シリンダ(110)内の、圧縮及び搬送される媒体(b)の側に設けられており、
油圧ピストン(120)を備える油圧駆動部(120、121)を有し、前記油圧駆動部によって、前記往復ピストン(111)が、第1の容積(141)内の油圧媒体(a)を使用して往復運動され、前記油圧媒体と共に、前記往復ピストン(111)を、前記油圧駆動部(120、121)の側に装填することができ、
少なくとも1つの測定装置(160、161、162)を有し、前記少なくとも1つの測定装置(160、161、162)によって、前記油圧ピストン(111)の位置、及び/又は前記油圧ピストン(120)を運動させるために設けられているシャフト(121)の回転角度(φ)と、前記往復ピストンの位置(x)、及び/又は前記第1の容積(141)内の圧力(p)とを決定することができ、
前記ピストン圧縮機(100)は、前記往復ピストン(111)の前記位置(x)及び/又は前記第1の容積(141)内の前記圧力(p)との関連における、前記油圧ピストン(111)の前記位置、及び/又は前記油圧ピストン(120)を運動させるために設けられている前記シャフト(121)の前記回転角度(φ)に応じた方式で、前記第1の容積(141)内に油圧媒体(a)を供給するように、及び/又は、前記第1の容積(141)から前記油圧媒体を排出するように構成されている、ピストン圧縮機(100)において、
前記油圧媒体(a)を使用し且つ前記往復ピストン(111)によって少なくとも部分的に境界された第2の容積(142)を形成している油圧減衰ユニット(140)を有し、前記油圧減衰ユニットによって、前記油圧駆動部(120、121)の側への前記往復ピストン(111)の運動を制限することができることを特徴とする、ピストン圧縮機(100)
【請求項6】
前記第2の容積(142)を前記第1の容積(141)に接続することが可能な、第1の弁(150)を有し、油圧媒体(a)を前記第1の容積(141)から前記油圧媒体用のリザーバ(130)内に排出することが可能な、第2の弁(155)を有し、及び/又は、
前記油圧媒体用の前記リザーバ(130)に前記第1の容積(141)を接続することが可能な、第3の弁(153)を有する、請求項に記載のピストン圧縮機(100)。
【請求項7】
少なくとも2つの往復ピストンと、対応するシリンダとを有する、多段ピストン圧縮機として設計されている、請求項のいずれか一項に記載のピストン圧縮機(100)。
【請求項8】
イオン流体が、動作流体として提供される、請求項のいずれか一項に記載のピストン圧縮機(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストン圧縮機を動作させる方法、及びピストン圧縮機に関する。
【0002】
圧縮機は、特に、ガス状媒体を圧縮するために使用される。従来のピストン圧縮機の効率は、上死点における残留容積又はデッドスペースの存在によって、極めて強く影響を受ける。この領域内のガス又は媒体は、吸引サイクルにおいて、再膨張、及び可能な流入送達容積の低減を引き起こす。この領域は、構成要素の製造公差及び熱膨張を補償するために、並びに、その後、圧縮機内での往復ピストンとシリンダヘッドとの機械的接触を回避するために不可避である。吸引弁及び圧力弁(すなわち、入口弁及び出口弁)のためのチャネルが、この負の効果を増大させる。
【0003】
このデッドスペースを低減することで、残存媒体の再膨張が低減され、それにより、圧縮プロセスの送達容積又は効率が増大する。いわゆるイオン圧縮機、特にピストン圧縮機は、一方では油圧で動作し、他方では、媒体又は気体と液体潤滑剤(すなわち、イオン流体)とからなる二相混合物を圧縮するが、イオン流体は、蒸発することができず、この理由により、単純な蒸着プロセスによって再び完全に分離することができる。そのようなイオン圧縮機の利点は、圧縮チャンバ内で液相を使用することによって、シリンダ内のデッドスペースを最小限まで低減することができ、それにより、圧縮プロセスの効率が最適化される点である。
【0004】
結果としてもたらされる不利な点は、追加的な構成要素の負荷、またそれによる、液体の衝突と同様の特性に起因する音放出の増大である。更には、油圧駆動式の圧縮構想では、油圧回路における内部漏れにより、必要に応じて、油の充填量を制御及び補償しなければならない。主要な問題点は、往復ピストンの反転点における機械的接触、またそれによる構成要素の負荷及び騒音放出の増大に起因するものであり、それらは、特に住宅区域の付近に設置する場合には問題視されることになり、追加的な遮音が必要となる。
【0005】
例えば、減衰の構想が、特に緩衝装置の場合に、自動車組立の分野から既知である。この場合、運動エネルギーは、振動の形態で消散される。このことにより、車両の望ましくない揺動又は振動が低減されることに加えて、構成要素の負荷及び音放出の低減もまた可能となる。
【0006】
このような背景の下で、提示される目的は、ピストン圧縮機の動作を、特に構成要素の負荷及び音放出に関して、改善する可能性を提供することである。
発明の開示
【0007】
この目的は、独立請求項の特徴を有する、ピストン圧縮機を動作させる方法によって、及び圧縮機によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項の主題、及び以下の説明である。
本発明の利点
【0008】
本発明は、シリンダ内に往復ピストンを有するピストン圧縮機を動作させる方法に関し、入口弁及び出口弁(あるいは、吸引弁及び圧力弁)が、シリンダ内の、圧縮及び搬送される媒体の側(すなわち、シリンダヘッド内)に設けられている。油圧ピストンを備える油圧駆動部によって、往復ピストンは、第1の容積内の油圧媒体を使用して往復(又は、上下)運動され、この油圧媒体と共に、往復ピストンは、油圧駆動部の側に装填される。
【0009】
油圧ピストンは、シリンダ内で、いわゆる下死点(bottom dead center、BDC)と、いわゆる上死点(top dead center、TDC)との、2つの反転点の間で振動する。上死点の方向に運動する際に、シリンダ又はシリンダヘッド内に存在する媒体が圧縮されて、次いで出口弁を通って排出され、下死点の方向に運動する際に、媒体が入口弁を通って引き込まれる。
【0010】
原理的に、往復ピストンは、この場合、油圧ピストンと同期して運動されることになる。しかしながら、油圧媒体の回路(すなわち、上述の第1の容積)における漏れ効果により、往復ピストンが、もはや油圧ピストンと同期して運動されないことが起こる場合がある。このことは、例えば、下死点において、往復ピストンがシリンダボトムに衝突するが、油圧ピストンは更に下方に運動することを意味する。このことにより、第1の容積内又は油圧回路内で、負圧が生じる。往復ピストンはまた、シリンダヘッドにも衝突し得るが、その一方で、油圧ピストンは更に上方に運動する。このことにより、第1の容積内又は油圧回路内で、過圧が生じる。
【0011】
ここで、必要に応じて、往復ピストンの位置及び/又は第1の容積内の圧力との関連における、油圧ピストンの位置、及び/又は油圧ピストンを運動させるために設けられているシャフトの回転角度に応じた方式で、油圧媒体が、第1の容積内に供給され、及び/又は、第1の容積から排出されることが規定される。このプロセスでは、各変数は、1つ以上の好適な測定装置によって決定することができる。
【0012】
油圧ピストンの位置と、油圧ピストンを運動させるために設けられているシャフトの回転角度とは、互いに連係しており、油圧駆動部の現在位置を示す。往復ピストンの位置と、第1の容積内の圧力ともまた、往復ピストンがシリンダ内で衝突する際に、圧力が上昇又は下降することから、互いに連係している。ここで、これらの変数が決定される場合には、往復ピストンの衝突が発生しているか否か、又は、適用可能な場合には、そのような往復ピストンの衝突が差し迫っているか否かを検出することができるように、それらの変数を互いに関連させて設定することができる。それに応じて、次いで油圧媒体を、第1の容積内に供給するか、又は第1の容積から排出することができる。
【0013】
油圧ピストンが、下死点においてシリンダボトムに衝突する際、又は衝突する前に、油圧媒体を供給することによって、第1の容積内又は油圧回路内で生じる負圧を、それゆえ打ち消すことができる。それゆえ、衝突を低減するか、又は更に防止することができ、このことは、音放出及び構成要素の負荷の低減をもたらす。
【0014】
したがって、油圧媒体を排出することによって、上死点への衝突を低減するか、又は更に防止することができ、このことは同様に、音放出及び構成要素の負荷の低減をもたらす。この目的のために、好適な弁を設けることができ、それらの弁は、対応して作動され、すなわち、開放又は閉鎖される。そのような弁の、より詳細な説明のために、この点においてピストン圧縮機の説明又は図の説明が参照される。
【0015】
好ましくは、油圧媒体を使用し、往復ピストンによって少なくとも部分的に境界された第2の容積を形成している、油圧減衰ユニットを使用して、油圧駆動部の側への往復ピストンの運動が、必要に応じて制限される。そのような減衰ユニットは、往復ピストンの運動を更に減衰させるためのみならず、圧縮比を調節するためにも使用することができる。
【0016】
この目的のために、第2の容積は、好ましくは、ピストン圧縮機によって搬送される媒体の量を低減するために、第1の容積に接続されている。このことは、シリンダヘッド内のデッドスペースの増大を伴う。この目的のために、余剰の油圧媒体が(それゆえ、第2の容積内の油圧媒体を低減するために)第1の容積からリザーバ内に排出される。また、ピストン圧縮機によって搬送される媒体の量を増大させるために、第1の容積が、油圧媒体用のリザーバに接続されている場合も好ましい。このことは、シリンダヘッド内のデッドスペースの低減を伴う。この場合、必要とされる油圧媒体が(それゆえ、第2の容積内の油圧媒体の量を増大させるか、又は、第2の容積を充填して満たすために)リザーバから供給される。
【0017】
必要に応じて、それゆえ第2の容積は、より多くの油圧媒体又はより少ない油圧媒体で充填することができる。下死点の方向への(それゆえ、油圧駆動部の方向への)往復ピストンの運動は、第2の容積内の油圧媒体によって制限することができるため、シリンダヘッド又は上死点における、圧縮に関して利用可能な容積を、それゆえ変更することができる。したがって、圧縮比を変更することができる。
【0018】
少なくとも2つの往復ピストンと、対応するシリンダとを有する、多段ピストン圧縮機が、有利には、このピストン圧縮機として使用される。しかしながら、これらの往復ピストンの、対応するシリンダ内での運動は、依然として、1つの油圧駆動部を使用して、次いで、対応する数のそのような第1の容積を使用して実施することができる。その場合また、対応する数の、そのような減衰ユニットも設けることができる点は、言うまでもない。状況に応じて、個々のシリンダを、その場合、例えば直列に、又は星の形状に配置することができる。その場合、圧縮は、シリンダから排出された媒体が、別のシリンダに供給され、そこで更に圧縮されるような方式で実施される。
【0019】
動作流体としてイオン流体が使用される場合が、特に好ましい。このことに関連して、圧縮機はまた、いわゆるイオン圧縮機とも称される。既に上述されたように、そのようなイオン圧縮機は、デッドボリュームの低減などの利点を提供する。本明細書で提案される、油圧媒体の供給又は排出を通じて、残されていた音放出又は構成要素の摩耗の欠点もまた、ここで低減することができる。
【0020】
本発明は更に、シリンダ内に往復ピストンを有するピストン圧縮機に関し、入口弁及び出口弁が、シリンダ内の、圧縮及び搬送される媒体の側に設けられている。更には、ピストン圧縮機は、油圧ピストンを備える油圧駆動部を有し、この油圧駆動部によって、往復ピストンは、第1の容積内の油圧媒体を使用して往復運動することができ、この油圧媒体と共に、往復ピストンを、油圧駆動部の側に装填することができる。この場合、少なくとも1つの測定装置が設けられており、それらの測定装置によって、油圧ピストンの位置、及び/又は油圧ピストンを運動させるために設けられているシャフトの回転角度と、往復ピストンの位置、及び/又は第1の容積内の圧力とを決定することができる。ピストン圧縮機は、ここで、往復ピストンの位置及び/又は第1の容積内の圧力との関連における、油圧ピストンの位置、及び/又は油圧ピストンを運動させるために設けられているシャフトの回転角度に応じた方式で、必要に応じて、第1の容積内に油圧媒体を供給するように、及び/又は、第1の容積から油圧媒体を排出するように構成されている。
【0021】
好ましくは、ピストン圧縮機は、油圧媒体を使用し、往復ピストンによって少なくとも部分的に境界された第2の容積を形成している、油圧減衰ユニットを更に備え、この油圧減衰ユニットによって、油圧駆動部の側への往復ピストンの運動を、必要に応じて制限することができる。有利には、この場合、第2の容積を第1の容積に接続することが可能な、第1の弁と、油圧媒体を第1の容積から油圧媒体用のリザーバ内に排出することが可能な、第2の弁とが設けられている。それゆえ、ピストン圧縮機によって搬送される媒体の量を、低減することができる。また、油圧媒体用のリザーバに第1の容積を接続することが可能な、第3の弁が設けられる場合も好ましい。それゆえ、油圧媒体を第1の容積に供給することができる。この第3の弁は、好ましくはまた、第1の容積の側に、リザーバの側よりも低い圧力が存在する場合には、リザーバから第1の容積に油圧媒体を自動的に供給することができるような方式で、設計することもできる。この目的のために、第3の弁は、例えば逆止弁として設計することができる。
【0022】
ピストン圧縮機は、有利には、少なくとも2つの往復ピストンと、対応するシリンダとを有する、多段ピストン圧縮機として設計されている。イオン流体が、便宜上、動作流体としてピストン圧縮機内に提供される。
【0023】
本発明によるピストン圧縮機の、詳細な説明、並びに更なる好ましい実施形態及び利点に関しては、繰り返しを回避するために、上記の説明を参照するものとし、これらの説明は、したがって、ピストン圧縮機を参照して説明される、本発明による方法に関して、本明細書で適用されるものである。
【0024】
本発明は、例示的実施形態を使用して、図面で概略的に表されており、図面を参照して以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による方法を実施するために好適な好ましい実施形態における、本発明によるピストン圧縮機を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明による方法を実施するために好適な好ましい実施形態における、本発明によるピストン圧縮機100を概略的に示す。
【0027】
図示の形態では往復ピストン圧縮機とも称される、ピストン圧縮機100は、シリンダ110を備え、このシリンダ内で、往復ピストン111を、往復運動又は上下運動させることができる。原理的に、そのようなピストン圧縮機は、多段式としてもよく、すなわち、往復ピストン111を有して示される、いくつかのシリンダ110が存在し得る。その場合、往復ピストンを有するシリンダに関する以下の説明は、したがってまた、往復ピストンを有する更なるシリンダにも適用される。
【0028】
ピストン圧縮機100は、ここでは油圧ピストン120を含む、油圧駆動部によって駆動される。油圧ピストン120は、好適な連係機構(油圧クランク駆動)を使用する、シャフト121を有する回転ホイールによって駆動される。矢印によって示されるような、このシャフト121の回転は、同様に矢印によって示されるような、第1の容積141内の油圧媒体a(作動油)の使用による、往復ピストン110の上下運動を引き起こす。往復ピストン111は、シリンダ110内で、下死点(BDC)及び上死点(TDC)と称される、2つの反転点の間で振動する。
【0029】
シャフトが回転して往復ピストンが上下運動する周波数は、例えば、0.5Hz~12Hzとすることができ(ただし、一般には、一定に保たれ)、往復ピストンの行程は、例えば、30mm~100mmとすることができる。油圧ピストンの行程又は行程容積も、一般にはまた、一定である。
【0030】
それゆえ、油圧媒体aは、この場合、往復ピストン111の底部側に搬送される。往復ピストン111は、それに応じて、上方に運動され、いわゆるガスシリンダ114、すなわちシリンダの上部領域内の、二相混合物を圧縮する。この二相混合物は、この場合、一方では、圧縮及び搬送される媒体bと、他方では、イオン動作流体とを含む。シリンダ110内の圧力が、圧力弁又は出口弁113における背圧を超過する場合には、後者が開放され、上死点に到達するまで、媒体bが、ほぼ等圧的に圧力領域内に搬送される。
【0031】
油圧ピストン120が下方に運動すると直ちに、シリンダ110内の背圧がアンダーシュートして、出口弁113が閉鎖される。下方運動する往復ピストン111は、吸引弁又は入口弁112における印加圧力が、吸引領域内のレベルを下回るまで、シリンダ110内の圧力を低減させる。
存在する残留容積又はデッドスペースが小さいほど、入口弁112は、より早く開放することができ、それに比例して、引き込み量が増大し得る。このシステムにより、往復ピストン111の位置は、油圧ピストン120の行程位置からずれる可能性がある。その後、油圧駆動部内での、漏れを含む圧縮により、結果的に、油圧ピストン120を通過して搬送された油圧媒体aが、最初にリザーバ130(又は、タンク)に入ることになる。
【0032】
そのリザーバから、油圧媒体は、油圧ピストン120と往復ピストン111との位置ずれを補償するために、ポンプ131及び熱交換器132、また最終的に逆止弁153を介して、油圧回路又は第1の容積141に搬送されて戻ることができる。
【0033】
ここで、必要とされる量は、本発明の範囲内では、例えば、測定装置161(例えば、変位測定システム)と測定装置160(例えば、回転角度センサ)との間のデータ比較を介して、計算及び補正することができる。例えば、往復ピストン111の位置xは、測定装置161によって決定することができる一方で、シャフト121の回転角度φは、測定装置160を使用して決定することができる。更には、第1の容積141内の圧力pもまた、例えば、好適な測定装置162によって検出することができる。
【0034】
ここで、シリンダヘッドに衝突する往復ピストン111が、実際の等圧伸長段階の終了時の過剰な圧力上昇によって検出され、それにより、余剰の油圧媒体が、圧力制限弁154を介してリザーバ130内へと搬送されて戻る。
【0035】
ピストン又はシリンダボトムとの往復ピストン111の機械的接触は、流入段階の間の圧力不足によって検出される。この場合、往復ピストン111を通常範囲へと運動させるために、油圧媒体の欠損量が、逆止弁153(本発明の範囲内では、第3の弁とも称されるもの)を介して引き込まれるか、又は供給される。
【0036】
例えば、ここで圧力測定が、シャフト121の回転角度に応じた方式で、第1の容積内で実施されるため、シリンダヘッド又はシリンダボトムへの往復ピストン111の衝突が発生するか若しくは差し迫っている場合を検出することができ、例えば弁153又は弁154の好適な作動によって、油圧媒体を排出又は供給することができる。
【0037】
更には、減衰ユニット140が設けられており、この減衰ユニットによって、周波数、ピストン圧縮機における圧力比、及び油圧領域における漏れに関わりなく、適応減衰システムを実現することができる。この減衰ユニット140は、往復ピストン111の下方運動を減衰させるために、またそれゆえ、下死点の方向に運動する間の音放出及び機械的負荷を低減するために使用することができる。
【0038】
油回路における、すなわち、ここでは、第1の容積141における漏れが、油圧システム内での、すなわち、ここでは、第1の容積141内での回転角度分解圧力測定を介して検出される場合には、この漏れを補償することができる。更には、この適応減衰システムによって、上死点並びに下死点を調節すること、またそれゆえ、圧縮比又は媒体の送達量を調節することも可能である。この目的のために、必要とされる量に対する需要又は必要性に応じて、追加的な油圧媒体が供給されるか、又は、余剰の油圧媒体がリザーバ内に排出されるか若しくは押し戻される。
【0039】
送達される量を増大させるか、又は既存のデッドスペースを低減する場合には、第1の弁150が閉鎖される。往復ピストン111は、それにより、油圧ピストン120が下方に運動する場合であっても、下死点の方向に、又は油圧駆動部の方向に運動することが防止される。それにより、必要とされる量の油圧媒体が、結果的に生じる負圧により、逆止弁153を介して、回路内又は第1の容積141内に引き込まれる。油圧ピストン120が再び上方に運動すると、このシステムが閉じられて、往復ピストン111は、(追加的に搬送された量の油圧媒体によって)規定の容積だけ上昇し、それにより、デッドスペースが低減され、圧縮される媒体の送達量が増大する。
【0040】
油圧媒体の量が過度に増大して、往復ピストン111がシリンダヘッドと衝突する危険性がある場合には、第3の弁155を開放することができ、充填量を低減することができる。
【0041】
送達される量を低減させるか、又は既存のデッドスペースを増大させる場合には、往復ピストン111の下方運動に影響を及ぼさないように、第1の弁150が開放される。同時に、第2の弁155が、油圧ピストン120の上方運動によって引き起こされる、規定量の油圧媒体の低減又は排出のために開放される。必要とされる往復ピストンの位置に到達すると、第1の弁150を再び閉鎖することができる。
【0042】
この閉鎖が、油圧ピストン120が下死点に到達する前に行われる場合には、油圧ピストンは、逆止弁153を介して必要量の油圧媒体を補充する。
【0043】
制御ループにおいて、繰り返し反復することによって、これらの調節を、必要とされる動作点に近づけることができる。個々の段の中間回路圧力の変更が必要とされる場合(それゆえ、多段ピストン圧縮機の場合)には、このことは、今説明されたものと同じ方式で実施することができる。圧力のみが制御変数として使用され、回路内で他の段との調整が行われる。
【0044】
動作点が設定された場合には、システム内での圧力の変化は、往復ピストン111の位置に正比例する。漏れによる、シャフト121の回転角度φに関連付けられた往復ピストン111の位置xの位置のずれは、減衰ユニット140によって往復ピストン111を阻止することによって発生し得るものであり、逆止弁153を介して油圧媒体が補充され、不正確な位置が補償される。
【0045】
この適応減衰システムにより、油圧駆動式ピストン圧縮機を、使用可能な行程容積に関して最適化することが可能となる。システムの要件に従って、ピストン行程を変化させ、送達容積、圧力、及び有効性を最適化することが可能となる。
【0046】
往復ピストンとシリンダヘッドとの間の残留容積、いわゆるデッドスペースは、往復ピストンの下方運動の間に膨張し、その大きさに応じて、通常のバネ作動式吸引弁の開放時間に影響を及ぼす。デッドスペースが大きいほど、開放が遅くなり、引き込むことが可能な送達容積が少なくなる。
【0047】
このことは、それぞれの圧縮機段の効率に、直接影響を及ぼす。それゆえ、特定の動作範囲において必要とされる場合がある、中間回路圧力の適合は、残りの段と協調して実施することができる。それゆえ、提案される方法又はピストン圧縮機を使用して、中間回路において、必要とされる送達容積及び印加圧力に関して卓越した可変性を実現することが可能である。
【0048】
往復ピストンの減衰、及び行程の最適化が可能であることにより、機械的負荷を恒久的に低減することが可能となり、これは一方では、圧縮機構成要素の、可能な耐用年数の延長をもたらし、他方では、より低品質の材料の使用を可能にすることにより、原材料及び生産コストに対するコスト最適化に関して、より多くの余裕を提供する。
【0049】
上述の効果は、振動及び騒音放出の低下を伴うものであり、その結果として、以前には必要とされていた減衰手段に関しても、節約を達成することができ、また、例えば住宅区域におけるタンク制御システム(例えば、そのようなピストン圧縮機を使用して水素が圧縮される、タンク制御システム)の動作を、結果的に、より容易なものにすることができる。
【0050】
説明された構成の結果として、そのようなピストン圧縮機は、極めて可変的であることにより、異なる動作媒体、限界値、及び要件に関しても、モジュラーシステムの適用を単純化し、それゆえ、異なる適用にも関わらず、ここで可能となる個々の構成要素の構造的均一性により、より単純な大量生産を可能にする。
【0051】
既存のピストン圧縮機又は既に供給されているピストン圧縮機を、提案されるピストン圧縮機へと拡張することにより、動作パラメータの最適化、及び効率の向上が可能となる。更には、既存の耐用年数を延長することと、振動及び音放出を低減することとが可能である。
【0052】
既存のシステム(すなわち、既存のピストン圧縮機、又はそのいくつか)への統合は、定期的な保守管理プロセスの過程において実施することができる。この目的のために、(上述の測定装置の意味での)変位測定システム及び回転角度送信機を、追加的に取り付けることができ、必要な制御ルーチンによって、システムの自動化プログラミングを拡張することができる。
【0053】
更なる実施形態は、例えば自動車用途において使用されるような、例えば圧電ベースの、制御可能な吸引弁及び圧力弁と併用される、膨張機システムを実装する可能性にある。そのような膨張機システムは、例えば、より低い圧力レベルのガスが必要とされる分配システムでの、ガスの膨張における膨張作用を使用するものであり、それにより、エネルギー回収システムに基づいて、発電のために使用することができる。
図1