(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】工具システム及び旋削方法
(51)【国際特許分類】
B23B 29/00 20060101AFI20221222BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20221222BHJP
B23B 27/16 20060101ALI20221222BHJP
B23B 1/00 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
B23B29/00 A
B23B27/14 C
B23B27/16 Z
B23B1/00 Z
(21)【出願番号】P 2020533613
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2018081849
(87)【国際公開番号】W WO2019120824
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-12-15
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500005837
【氏名又は名称】セラティチット オーストリア ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】マイアー,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ケルレ,ジークフリート エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ホフェッガー,アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】ウルシッツ,ハラルト
(72)【発明者】
【氏名】シュルダ,エイナル
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-148498(JP,A)
【文献】特開平11-254207(JP,A)
【文献】特表2011-506111(JP,A)
【文献】特開2002-370102(JP,A)
【文献】実開平01-166003(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0013995(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00
B23B 25/00 - 25/02
B23B 27/00 - 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋削加工を行うための工具システム(100)であって、
縦軸(L)に沿って延び、工作機械に接続するための第1の端部(11)と、交換可能な切削インサートのための座部(14)が形成された端面(13)を有する第2の端部(12)と、を有する工具本体(1)と、
回転止めされて前記座部(14)に取り付けられた交換可能な切削インサート(2)と、
を備え、
前記切削インサート(2)が、座面として設計された下面(21)、すくい面として設計された上面(22)、及び逃げ面として設計された周側面(24)を有し、刃先(26)が、前記上面(22)から前記周側面(24)までの移行部に形成されており、
前記切削インサート(2)は、前記上面(22)が前記工具本体(1)の縦軸(L)に垂直に延びるように、そして、前記刃先(26)が少なくとも2つの使用可能な切削コーナー(28a、28b、28c)及び前記切削コーナー(28a、28b、28c)の両側に隣接する刃先部で前記工具本体(1)の前記端面(13)の外周を超えて前記縦軸(L)に対して半径方向に突出するように、前記座部(14)に配置されており、
前記少なくとも2つの使用可能な切削コーナー(28a、28b、28c)は、少なくとも1つの第1の切削コーナー(28a)と前記第1の切削コーナー(28a)と異なる1つの第2の切削コーナー(28b)を有する、工具システム(100)。
【請求項2】
前記第1の切削コーナー(28a)及び前記第2の切削コーナー(28b)は、
コーナー角度(α1、α2)、コーナー形状、前記切削コーナーに沿って延びる補強用面取りの角度又は幅と、すくい面に形成されたチップ幾何構造(22a)、又は、前記切削コーナーの領域における前記切削インサートの材料若しくはその材料に塗布された硬質材料被膜のうちの1つ以上において互いに異なる、請求項1に記載の工具システム(100)。
【請求項3】
前記切削インサート(2)の前記下面(21)は、少なくとも1つの回転防止要素(25)を有し、当該少なくとも1つの回転防止要素(25)は、前記工具本体(1)の前記端面(13)上の相補的な回転防止要素(15)と、篏り合って接続するように、相互作用する、請求項1又は2に記載の工具システム(100)。
【請求項4】
前記切削インサート(2)の前記下面(21)は、少なくとも1つの芯出し要素を有し、当該少なくとも1つの芯出し要素は、前記工具本体(1)の前記縦軸(L)に対し前記切削インサート(2)を位置決めするために、前記工具本体(1)の前記端面(13)と、篏り合って接続するように、相互作用する、請求項1~3のいずれか1項に記載の工具システム(100)。
【請求項5】
前記切削インサート(2)の前記下面(21)及び前記工具本体(1)の前記端面(13)は、前記切削インサート(2)が1つの所定の調整状態でのみ前記工具本体(1)に固定可能であるように、設計されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の工具システム(100)。
【請求項6】
前記工具本体(1)の前記端面(13)の形状は、前記切削インサート(2)の形状と対応する、請求項1~5のいずれか1項に記載の工具システム(100)。
【請求項7】
前記刃先(26)は、前
記周側面(24)
の全体に沿って形成され、前記工具本体(1)の前記端面(13)の外周を超えて、前記縦軸(L)に対して半径方向に全周にわたって突出している、請求項1~6のいずれか1項に記載の工具システム(100)。
【請求項8】
前記周側面(24)は、前記切削インサート(2)の全周にわたって正の切削インサート固有の逃げ角を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の工具システム(100)。
【請求項9】
工具システム(100)を用いた被加工物(W)の旋削方法であって、
交換可能な切削インサート(2)は、回転止めされて
工具本体(1)の端面(13)に、以下のように、すなわち、すくい面として設計された上面(22)が工具本体(1)の縦軸(L)に対して垂直に調整されているように、そして、前記上面(22)と周側面(24)の間に形成された刃先(26)は、少なくとも2つの使用可能な切削コーナー(28a、28b、28c)及び前記切削コーナー(28a、28b、28c)の両側に隣接する刃先部を通って前記工具本体(1)の前記端面(13)の外周を超えて縦軸(L)に対し半径方向に突出するように、配置されており、
前記旋削方法が、
- 前記被加工物(W)を、被加工物軸(Z)を中心として回転させる工程、
- 生成された削り屑が、前記切削インサート(2)の前記上面(22)で離れ出るように、前記切削コーナー(28a,28b,28c)の1つを用いて前記被加工物
(W)の表面を機械加工する工程、
- 前記工具本体(1)のその縦軸(L)を中心とした制御された回転によって、及び、前記工具本体(1)の前記制御された回転に連動し、前記被加工物軸(Z)に直行する並進運動成分を有する、前記縦軸(L)に対し垂直に延びる平面での前記工具本体(1)の並進運動(T)によって、削り屑の生成を変更する工程、
を含む、
工具システム(100)を用いた被加工物(W)の旋削方法。
【請求項10】
前記工具本体(1)の縦軸(L)は、前記被加工物軸(Z)に垂直な平面(XY)内で調整されている、請求項9に記載の旋削方法。
【請求項11】
前記少なくとも2つの使用可能な切削コーナー(28a、28b、28c)は、第1の切削コーナー(28a)と、前記第1の切削コーナー(28a)とは異なる第2の切削コーナー(28b)を有する、請求項9又は10に記載の旋削方法。
【請求項12】
縦軸(L)を中心とした前記工具本体(1)の制御された回転及び前記工具本体(1)の前記制御された回転に連動した前記並進運動(T)は、動作中の切削加工刃先の取付角(κ1、κ2)が変更されるように行われる、請求項9~11のいずれか1項に記載の旋削方法。
【請求項13】
前記工具本体(1)の制御された回転及び前記工具本体(1)の前記制御された回転に連動した前記並進運動(T)は、機械加工時に、前記被加工物の輪郭が変わらないように行われる、請求項9~12のいずれか1項に記載の旋削方法。
【請求項14】
動作中の切削コーナーは、機械加工時に、前記被加工物軸(Z)を含む平面に配置される、請求項9~13のいずれか1項に記載の旋削方法。
【請求項15】
請求項9~14のいずれか1項に記載の旋削方法において、すくい面として設計された上面(22)、座面として設計された下面(21)、逃げ面として機能する周側面(24)、及び前記上面(22)と前記周側面(24)の間に形成された刃先(26)を有し、
機械加工に用いることができる少なくとも2つの切削コーナー(28a,28b,28c)と、前記切削コーナーの両側に隣接する刃先部を持つ切削インサート(2)の使用。
【請求項16】
前記切削インサート(2)の前記下面(21)が、前記工具本体(1)の前記端面(13)上の相補的な回転防止要素(15)と、篏り合って接続するように、相互作用する少なくとも1つの回転防止要素(25)を有する、請求項15に記載の切削インサート(2)の使用。
【請求項17】
前記切削インサート(2)の前記下面(21)は、前記工具本体(1)の縦軸(L)に対し前記切削インサート(2)を位置決めするために、前記工具本体(1)の端面(13)と、篏り合って接続するように、相互作用する少なくとも1つの芯出し要素を有する、請求項15又は16に記載の切削インサート(2)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋削加工するための工具システム及び被加工物の旋削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
旋削による加工では、特に、金属材料の場合、工具を使用することが多く、工具本体には、交換可能な切削インサートが配置されている。この工具本体は、通常、鉄製であり、その上には、被加工物が係合する刃先部が形成されている。使用する切削インサートは、通常、硬質金属(超硬合金)、サーメット又はセラミック切削など、著しく硬く耐摩耗性の高い材料で作られている。切削インサートは、例えば、機械加工及び隣接する刃先部に使用できる切削コーナー、又は複数の使用可能な切削コーナーを有することができる。
【0003】
通常、工具システム、特に、いわゆる一体型ホルダーを旋削作業において使用する。そこでは、すくい面として設計された交換可能な切削インサートの上面が、切削インサートを担持する工具本体の縦軸に少なくとも実質的に平行に延びる平面内を延在している。その結果、DIN6581に準拠した工具基準面も、少なくとも実質的に工具本体の縦軸に平行に調整されている。
【0004】
それとは対照的に、EP1260294B1は、旋削加工のための工具システムを記載しており、複数の交換可能な切削インサートは、すくい面として設計された切削インサートのそれぞれの上面が、それぞれ、回転軸Dとして設計された工具ヘッドの縦軸に対し実質的に垂直になるように、工具ヘッドとして設計された工具本体上に配置され、切削インサートの関連する工具基準面Prも縦軸に対し垂直に走るようになっている。EP1260294B1に記載された工具システムは、特に、多種多様な機械加工の可能性を示しているが、工具システムの比較的高い所要スペースは、用途によっては最適であることが立証されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、工作機械において、所要スペースが少ないながら、多種多様な異なる機械加工作業を可能にする旋削加工のための改良された工具システム及び被加工物を旋削するための改良された旋削方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、請求項1に記載の旋削加工するための工具システムによって達成される。有利なさらなる発展形態は従属クレームに記載されている。
【0007】
工具システムは、縦軸に沿って延び、工作機械に接続するための第1の端部と、交換可能な切削インサートのための座部が形成される端面を有する第2の端部と、回転止めされて(独:rotationsfest。「回転止めされて」、「回転止めされた」、「回転に対して耐性をもって」、「回転に対して耐性をもった」)座部に固定された交換可能な切削インサートとを備えている。切削インサートは、座面として設計された下面、すくい面として設計された上面、及び逃げ面として設計された周側面を有する。上面から周側面への移行部に刃先が形成されている。切削インサートは、上面が工具本体の縦軸に垂直に延び、両側に隣接する少なくとも2つの使用可能な切削コーナー及び切削コーナーの両側に隣接する刃先部を通って工具本体の端面の外周を超えて縦軸に対し半径方向に突出するように座部上に配置されている。少なくとも2つの使用可能な切削コーナーは、少なくとも1つの第1の切削コーナーと、第1の切削コーナーとは異なる少なくとも1つの第2の切削コーナーとを有する。工具本体の縦軸に対して垂直な切削インサートの上面の調整によって、及び、半径方向に突出している少なくとも2つの異なる使用可能な切削コーナーによって、工具本体をその縦軸を中心にして回転させることで、別の切削インサートを加工位置に移動させなくても、異なる旋削作業を簡単かつ特にコンパクトに行うことができる。異なる切削コーナーが同じ切削インサート上に形成されるので、工具システムも周知の工具システムと比較して特にコンパクトであり、工作機械内で非常に少ない設置スペースしか要しない。切削インサートの工具本体への回転止めされた固定に基づいて、係合する刃先部が被加工物に対して調整されている取付角も簡単で確実に変更できるため、異なる機械加工作業のための調整の間で切り替えることができる。ここで、第2の切削コーナーは、第1の切削コーナーとは多種多様に異ってもよい。例えば、1つの特別な特徴、例えば、コーナー角度、コーナー半径、又は他の複数の特徴、例えば、コーナー半径及び角度及び/又は切削コーナーに沿って走る補強面取りの幅、異なるチップ幾何構造などにおいて第1の切削コーナーとは異なっていてもよい。切削コーナーを適切に設計することにより、1本の工具本体とそれに取り付けた切削インサートだけで、例えば、縦旋削、倣い旋削、面削りのいずれの作業も任意の方向に行える。
【0008】
さらなる発展形態によれば、上記第1の切削コーナーと上記第2の切削コーナーは、コーナー角度、コーナー形状、逃げ角、切削コーナーに沿って走る補強面取りの角度及び/又は幅、及びすくい面に形成されるチップ幾何構造、切削コーナーの領域における切削インサートの材料及び/又はその材料に塗布された硬質材料被膜、切削コーナーを設計するための機械加工作業のうちの1つ以上において互いに異なる。このようにして、機械加工条件は、所定の角度だけ、縦軸を中心とした工具本体の回転により、例えば、荒削りと仕上げ削りとの間、高い送り速度での縦軸旋削と特定の被加工物輪郭の微細加工との間などで、目的とする方法で変更することができる。すぐに、数多くの組み合わせの可能性があることが直ちに明らかになる。例えば、異なるコーナー形状により、コーナー半径を異なるものとすることができ、その結果、例えば、異なる移行半径を有する段部を機械加工される被加工物上に生成することができる。チップ幾何構造の違いは、例えば、異なる切削深さ又は異なる送り速度での機械加工に使用することができる。異なるコーナーでの切削インサートの異なる材料又は異なるコーナーでの異なる被膜は、例えば、特に、異なる種類の機械加工に使用することができ、又は、例えば、被加工物上の異なる材料から成る領域にも使用することができる。異なる機械加工作業のための1つの設計において、例えば、1つの切削コーナーは、旋削用に、他のもう1つは、溝削り又はねじ切り用に設計することができる。さらに、例えば、外面機械加工用の1つ以上の切削コーナーと内面機械加工用の1つ以上の他の切削コーナーを設計することも可能である。可能な組み合わせが多数存在することすとは直ちに明らかである。
【0009】
さらなる発展形態によれば、切削インサートの下面は、少なくとも1つの回転防止要素を有し、これは、工具本体の端面上の相補的な回転防止要素と篏り合って接続するように(独:formschluessig。「嵌り合うように」、「形状接続的に」、「形状に基づき接続するように」)相互作用する。この場合、工具本体へ切削インサートの回転止めされた固定がもたらされ、これにより機械加工条件の変更が可能となり、外周の逃げ面は、切削インサートの全周にわたって回転止めされた固定のための締結構造をなくすことができる。従って、この場合には、切削インサートの確実に回転止めされた固定状態で、切削インサートの全周を機械加工に用いることが可能となる。切削インサート上の回転防止要素は、例えば、切削インサートの下面から突出する構造として、また、対応する窪み構造として工具本体の端面上の相補的な回転防止要素として形成することができる。一方、例えば、工具本体の端面上の回転防止要素を突出構造として形成でき、切削インサートの下面の相補的な回転防止要素を対応する窪み構造として形成できる。
【0010】
さらなる発展形態によれば、切削インサートの下面は、切削インサートを工具本体の縦軸に対し位置決めするために、工具本体の端面と篏り合って接続するように相互作用する少なくとも1つの芯出し要素を有する。この場合、工具本体上での切削インサートの特に簡単で信頼性の高い組立が可能である。芯出し要素は、例えば、切削インサートの下面の突起によって、特に、例えば、下面からの距離の増加に伴って増加し、工具本体の端面の相補的な凹部と相互作用する円錐状又は先細りの突起によって形成することができる。一方、芯出し要素は、例えば、工具本体の端面上の対応する突出部と相互作用する、切削インサートの下面の対応する凹部によって形成することもできる。また、回転防止要素回が芯出し要素として同時に機能するように形成することも可能である。
【0011】
さらなる発展形態によれば、切削インサートの下面及び工具本体の端面は、正確に1つの所定の調整でのみ切削インサートを工具本体に固定可能であるように形成されている。これにより、格別に簡単で便利な使用が可能となり、当該使用においては、切削インサートが間違って不適切に取り付けられないこと、及び、切削コーナーがそれに対して意図された調整で工具本体にて調整されること、が保障されている。所定の方向のみへの制限は、例えば、工具本体の端面及び切削インサートの下面上の互いに相補的な回転防止要素の対応する非対称構成によって実現することができる。
【0012】
さらなる発展形態によれば、工具本体の端面の基本形状は、実質的に、切削インサートの基本形状に対応する。この場合、工具本体の縦軸のさらなる傾斜を必要とせずに、上面の外周の少なくとも大部分を用いた旋削を可能にするために、切削インサートが、外周側で、外周の少なくとも大部分にわたって、十分に開放され得ることが、達成されている。
【0013】
さらなる発展形態によれば、刃先は、全周側面に沿って形成され、工具本体の端面の外周を超えて半径方向に全周にわたって突出する。この場合、切削インサートの上面の全周は、工具本体がその縦軸を中心として制御された方法で回転することにより、必要に応じて、被加工物軸に垂直な平面内で直線的に移動する簡単に機械加工に使用することができる。
【0014】
さらなる発展形態によれば、側面は、切削インサートの全周にわたって正の切削インサート固有の逃げ角を有する。この場合、旋削作業時に、逃げ面として機能する周側面が外周全域にわたって十分に確実に解放されるので、工具本体の縦軸の追加的な傾斜が必要なくなり、工具本体の制御がさらに複雑になる。切削インサート固有の逃げ角は、切削インサートの全周にわたって一定である必要はないが、側面も異なる部分において異なる逃げ角を有することができる。
【0015】
上記目的は、請求項9に記載の被加工物の旋削方法によっても達成される。有利なさらなる発展は従属請求項に記載されている。
【0016】
この方法は、すくい面として設計された上面が工具本体の縦軸Lに対して垂直に調整されており、かつ、その上面と周側面との間に形成された刃先が、少なくとも2つの使用可能な切削コーナー及び切削コーナーの両側に隣接する刃先部を通って工具本体の端面の外周を超えて縦軸に対し半径方向に突出するように、交換可能な切削インサートが回転止めされて工具本体の端面に配置されている工具システムで行われる。この方法は以下の、
- 被加工物を、被加工物軸Zを中心として回転させる工程、
- 生成された削り屑が、切削インサートの上面で離れ出るように、切削コーナーの1つを用いて被加工物の表面を機械加工する工程、
- 工具本体のその縦軸Lを中心とした制御された回転によって、及び、それに連動し、被加工物軸Zに直行する並進運動成分を有する、縦軸Lに対し垂直に延びる平面内での工具本体の並進運動によって、削り屑の生成を変更する工程、
を含む。
縦軸を中心とした工具本体の制御された回転と、並進運動を被加工物軸Zに垂直にして、縦軸に垂直な平面内での工具本体の連動した並進運動とにより、旋削作業時に、制御して機械加工条件を特に簡単に変更することができる。例えば、係合された刃先の取付角は、切削深さを変化させることなく変化させることができ、又は別の刃先部又は異なる特徴を有する異なる切削コーナーを使用することができる。交換可能な切削インサートは工具本体に回転止めされて固定されており、機械加工に使用することができる少なくとも2つの切削コーナーを通って工具本体の外周を越えて突出するので、1つの切削インサートを用いた特にコンパクトな構成で異なる機械加工条件を実現することができる。ここで、工具本体の連動した並進運動による工具本体の制御された回転により、機械加工を中断することなく機械加工条件を変更することができる。
【0017】
さらなる発展形態によれば、工具本体の縦軸Lは、被加工物軸Zに対して垂直な平面XY内で調整されている。この場合、被加工物に係合した刃先部の取付角の変更や異なる切削コーナーの使用は、制御の点で特に簡単に行うことができる。特に好ましくは、工具本体の縦軸Lは、旋削作業のY軸に対して平行に調整されていてもよい。
【0018】
さらなる発展形態によれば、少なくとも2つの使用可能な切削コーナーは、第1の切削コーナーと、第1の切削コーナーとは異なる第2の切削コーナーとを有する。工具システムに関して既に説明したように、第1の切削コーナーと第2の切削コーナーは、例えば、1つの特徴においてのみ、又は複数の特徴においても互いに異なることができる。
【0019】
さらなる発展形態によれば、工具本体のその縦軸の周りの制御された回転とそれに連動した並進運動は、動作中の機械加工の刃先の取付角が変更されるように行われる。例えば、さらなる機械加工パラメータを変更することなく、取付角のみを変更するように行うことが好ましい。この場合、例えば、比較的平坦な取付角を有する縦旋削が行うことができ、被加工物内の段部に近づくと、取付角を増加させることができる。これは、ただ1つの可能な機械加工作業であり、追加の他の機械加工作業も行うことができる。
【0020】
さらなる発展形態によれば、工具本体の制御された回転とそれに連動した並進運動は、機械加工時に、被加工物の輪郭が変わらないように行われる。この場合、例えば、切削を中断することなく、旋削作業時に、被加工物に係合する刃先の取付角を簡単に変更することができる。これは可能な作業の1つだけであり、これに加えて、例えば、切削深さも変更可能な他の旋削作業も可能である。
【0021】
機械加工時に、動作中の切削コーナーが被加工物軸Zを含む平面に配置されれば、工具本体をその縦軸を中心にして回転させることによって、特に、簡単に機械加工条件を変更することができる。
【0022】
また、上記目的は、請求項15に記載の切削インサートを使用することによって達成される。切削インサートは、すくい面として設計された上面、座面として設計された下面、逃げ面となる円側面、上面と周側面との間に形成された刃先を有し、機械加工に使用することができる少なくとも2つの切削インサートと切削インサートの両側に隣接する刃先部とを持つ。切削インサートは、上述の削り屑除去旋削方法で使用される。切削インサートを使用することにより、この方法に関して上述した利点が達成される。特に、1本の工具本体とその上に配置された切削インサートだけで、縦旋削、面削り、倣い削りなど、様々な旋削加工を実現することができる。
【0023】
さらなる発展形態によれば、切削インサートの下面は、工具本体の端面上の相補的な回転防止要素と篏り合って接続するように相互作用する少なくとも1つの回転防止要素を有する。この場合、工具本体への切削インサートの回転止めされた(独:verdrehfest。「回転止めされて」、「回転止めされた」、「回転に対して耐性をもって」、「回転に対して耐性をもった」)確実な固定がもたらされ、それは機械加工条件の目標を定めた変更を可能とし、周方向の逃げ面は、切削インサートの全周にわたって回転止めされた固定のための固定構造がない状態に保つことができる。
【0024】
さらなる発展形態によれば、切削インサートの下面は、切削インサートを工具本体の縦軸に対し位置決めするために、工具本体の端面と篏り合って接続するように相互作用する少なくとも1つの芯出し要素を有する。この場合、工具本体上での切削インサートの特に簡単で信頼性の高い取付けが可能になる。
【0025】
本発明のさらなる利点及び有利な態様は、添付された図面を参照しながら、例示的実施形態の以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】一実施形態による工具システムの側面図における概略分解図を示す。
【
図4】実施形態における切削インサートの下面の概略斜視図を示す。
【
図5】被加工物の旋削加工時の工具システムの概略斜視図を示す。
【
図6】被加工物軸に沿った方向の被加工物の旋削加工時の工具システムの概略図を示す。
【
図7】被加工物軸に垂直で、工具本体の縦軸に垂直な方向の
図5に対応する図を示す。
【
図8】工具本体の縦軸に沿った方向の
図5に対応する図を示す。
【
図9】工具本体の縦軸に沿った方向で、
図8に対して縦軸を中心として工具本体を回転させた工具本体の工具システムの概略図を示す。
【
図10】第
1変形例に係る切削インサートの平面図における概略図を示す。
【
図11】第1変形例に係る切削用インサートの下方から見た斜視図を示す。
【
図12】第1変形例に係る切削用インサートの上方から見た斜視図を示す。
【
図13】第
2変形例に係る切削インサートの平面図における概略図を示す。
【
図14】第2変形例に係る切削用インサートの概略斜視図を示す。
【
図15】第3変形例に係る切削インサートの平面図における概略図を示す。
【
図16】第3変形例に係る切削用インサートの概略斜視図を示す。
【
図17】第4変形例に係る切削用インサートの平面図における概略図を示す。
【
図18】第4変形例に係る切削用インサートの概略斜視図を示す。
【
図19】第5変形例に係る切削インサートの平面図における概略斜視図を示す。
【
図20】第5変形例に係る切削用インサートの概略斜視図を示す。
【
図21】第6変形例に係る切削インサートの概略斜視図を示す。
【
図22】第7変形例に係る切削インサートの概略斜視図を示す。
【
図23】第8変形例に係る切削用インサートの概略斜視図を示す。
【
図24】第9変形例に係る切削インサートの概略斜視図を示す。
【
図25】第10
変形例に係る切削インサートの平面図における概略図を示す。
【
図26】第10変形例に係る切削用インサートの概略斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
旋削加工を機械加工するための工具システムの実施形態を
図1~
図9を参照して以下に説明する。図に概略的に示されている工具システム100は、特に、金属材料の旋削加工のために設計されており、工具本体1と、それに回転
防止して(独:verdrehsicher。「回転防止した」、「回転防止された」、「回転に対する耐性のある」)そして中心に固定された交換可能な切削インサート2とを有している。切削インサート2は、硬質で耐摩耗性の材料で作られており、特に、硬質合金(超硬合金)、サーメット又はセラミック切断で作ることができる。実施形態において、工具本体1は、例えば、工具鋼のようなより強靭な材料で作られている。しかし、例えば、硬質合金(超硬合金)、サーメット又は他の材料から工具本体1を形成することもできる。
【0028】
工具本体1は、縦軸Lに沿って延び、工作機械に取り付けるために設計された第1の端部11と、縦軸Lに対し横方向に延びる端面13を有する第2の端部12とを有する。第1の端部11は、工作機械の工具レセプタクル(図示せず)に収納されるように設計されており、例えば、市販の標準レセプタクルの1つに収納されるように設計することができる。例示した好適な実施形態では、工具本体1は内部冷却剤ガイドを有しており、このガイドは第1の端部11の内部冷却剤流入口から複数の冷却剤流出口18に冷却剤を運ぶように設計されている。冷却材流出部18は、冷却材が第2の端部12及びその上に配置された交換可能な切削インサート2の方向に流出できるように設計されている。
【0029】
図に示すように、工具本体1は、以下に詳述するように、その第2の端部12において工具シャンクとして形成され、かつ縦軸Lに垂直な断面において、切削インサート2と実質的に同じ断面形状を有するように形成されている。第2の端部12においてこの断面形状を有する工具シャンクとして形成される領域は、工具本体1の全長の少なくとも1/10にわたって延在している。切削インサート2の回転防止した固定のための座部14が、縦軸Lに対し横方向に延びる端面13上に形成されている。座部14には、締結ネジ3のネジ部を受け入れるためのネジ穴16が設けられており、このネジ穴16は、交換可能な切削インサート2を座部14に固定する役割を果たす。実施形態では、ねじ穴16は、安定性の観点から有利な縦軸Lと同軸に延びるが、ねじ穴16の中心から外れた配置も可能である。
【0030】
切削インサート2
の回転
防止した固定
を可能とするために、座部14は、特に、
図3に示すように、座面として設計された切削インサート2の下面21上の相補的な回転防止要素25と
相互作用するように設計された複数の回転防止要素15を有する。この実施形態では、3つの回転防止要素15が設けているが、例えば、1つのみ、又は2つ、又は3つ以上のこのような回転防止要素15を設けることができる。例示の実施形態では、座部14上の回転防止要素15は凹溝として設計されており、各溝は端面13の中心から半径方向外向き方向に延びている。実施形態において、座部14上の回転防止要素15と相補的な切削インサート2の下面21上の回転防止要素25は、下面21から突出するリブとして設計され、これは下面21から突出し、下面の中心から半径方向外側に延びている。実施形態においては、回転防止要素25は突出リブとして設計され、座部14上の回り止め要素15は凹溝として設計されているが、例えば、逆の構成も可能である。さらに、突出リブとして設計された回り止め要素の数が、凹溝として設計された相補的な回り止め要素の数と正確に一致することも必須ではない。実施形態において、それらの配置により、回転防止要素25は、切削インサート2を座部14上に芯出しするための芯出し要素として同時に機能する。
【0031】
実施形態において、回転防止要素25は、芯出し要素としても同時に機能することを示しているが、例えば、これらの機能性を切り離し、少なくとも1つの回転防止要素及び少なくとも1つの芯出し要素を互いに別々に設けることも可能である。
【0032】
特に、
図4に示すように、切削インサート2の下面21は、締結ネジ3のネジ部を通すことができる貫通孔23を囲む中央突起27も有する。中央突起27は、切削インサート2の下面からの距離の増加に伴って先細りとなり、例えば、特に、円錐形の先細り形状とすることができる。中央突起27は、座部14上の対応する構造17
内へ入り込む。この構造は、実施形態において、ねじ穴16を取り囲み、中央突起27と相補的な形状を有する窪みとして形成されている。
【0033】
実施形態において、切削インサート2の下面21及び工具本体1の端面13は、切削インサート2を正確に所定の調整状態でのみ工具本体1に固定できるように、設計されている。例示の実施形態では、これは、ねじ穴16又は貫通穴23に対して周方向に回転防止要素15及び25を非対称配置することによって実現される。
【0034】
この切削インサート2は、上述した下面21とは反対側にすくい面として設計された上面22と、逃げ面として設計された周側面24とを有している。
図3に示すように、すくい面には、旋削作業中に生成される削り屑を成形、除去、及び砕くためのチップ幾何構造22aが設けられている。周側面24への上面22の移行部には、刃先26が形成されている。刃先26は、複数の切削コーナー28を有し、切削コーナーの両側に隣接する刃先部を持つ。この切削コーナーは、以下では一括して切削コーナー28と呼び、個々の切削コーナーは、例えば、第1の切削コーナー28a、第2の切削コーナー28b等と呼ぶ。図示の実施形態では、刃先26は、旋削加工に使用できる刃先として、切削インサート2の全周にわたって延在している。その代わりに、上面22から周側面24への移行部も、例えば、機械加工に使用できる刃先26として円周の一部にわたってのみ形成することができる。
【0035】
図に示すように、切削インサート2が工具本体1に固定されると、切削インサート2の上面22は、工具本体1の縦軸Lに対し垂直に延びる。図示の実施形態では、切削インサート2は、3つの切削コーナー28を有するが、例えば、旋削作業に使用することができ、隣接する刃先部を有する2つ又は3つ以上の切削コーナー28のみを設けることも可能である。
【0036】
実施形態において、図に示すように、切削インサート2は、2つの異なる種類の切削コーナー28を有している。
図1~
図9に示す実施形態において、両側の第2の切削コーナー28bに隣接する刃先部が第1のコーナー角度α1とは異なる第2のコーナー角度α2を互いに包囲する点において、第1の切削コーナー28bとは異なる。刃先26は、旋削するために使用できる少なくとも2つの切削コーナー28を通って工具本体1の端面13の外周を超えて縦軸Lに対し半径方向に突出している。具体的に例示した好適な実施形態では、刃先26は、工具本体1の端面13を超えて半径方向に切削インサート2の全周にわたって突出している。
【0037】
例示の実施形態において、周側面24は、切削インサート2の全周にわたって正の切削インサート固有の逃げ角を有しているため、側面24は、上面22からの距離の増加に伴って全周にわたって縦軸Lに近づく。ここでは、切削インサート固有の逃げ角は、全周にわたって一定にすることができるが、異なる領域で異なる値を取ることもできる。
【0038】
被加工物Wの旋削方法における上述の工具システム100の使用を
図5~
図9を参照して以下に説明する。
【0039】
この方法では、被加工物Wは、被加工物軸Zを中心に回転するように工作機械に挟持される。工具本体1の縦軸Lは、例示的な実施形態において、
それが被加工物軸Zに対し垂直に
延びる平面XY内に位置するように
、調整されている。具体的には、実施形態において、縦軸Lは、Y軸と平行に走っている。動作加工位置にある切削コーナー28は、特に、
図6と
図7に示すように、工具本体1の縦軸Lに垂直に延びる切削インサートの上面22がすくい面として使用される。被加工物軸Zを含む平面に配置されている。その結果、旋削加工時に、例えば、第1のコーナー角度α1を有する第1の切削コーナー28aは、動作旋削位置に移動される。そこでは、工具本体が被加工物軸Zに平行な主移動方向Bに移動されると、一方の側の上の第1の切削コーナーさに隣接する刃先部が、旋削するために第1の取付角κ1として使用される。縦軸Lを中心とした制御された工具本体1の回転によって、例えば、高い送り速度での縦旋削を可能にするために、取付角κ1を小さくすることができ、あるいは、例えば、その側壁を機械加工するために肩部を形成したい場合には、取付角κ1を例えば90°に大きくすることができる。工具本体1の縦軸Lを中心とする回転により、削り屑形成に変化を生じさせる。このような取付角κ1の変化があった場合に、この実施形態に係る方法では、工具本体1の制御された回転に連動して、工具本体1の縦軸Lに直交して走る平面XZにおいて工具本体が並進運動する。また、平進運動は、被加工物軸Zに垂直なX方向の方向成分も有する。
【0040】
縦軸Lを中心とした制御された回転とそれに連動した工具本体1の並進運動Tにより、被加工物に対する切削コーナーの位置を変えることなく、取付角κ1を変えることができる。
【0041】
刃先26が被加工物Wと係合する取付角κ1のみの上述の変更に代えて、例えば、
図9に示すように、第1の切削コーナー28aの代わりに、縦軸Lを中心とした工具本体1の制御された回転により、第2の刃先28aと異なる第1の刃先28b動作切削位置へ移動させる事実によって、削り屑形成も変えることもできる。この場合に、所定の角度による工具本体1の制御された回転に連動して、工具本体1の平進運動Tが、被加工物Zに垂直な平進運動成分を有する工具本体1の平進運動が行われる。工具本体1の縦軸Lに垂直な平面XZにおいて、連動した平進運動Tにより切削深さの変化が補償される。そうでなければ、工具本体1の縦軸Lから第1の切削コーナー28aと第2の切削コーナー28bの半径方向距離が異なるために追従することになる。
図9に模式的に示すように、第2の切削コーナー28bを用いた切削は、例えば、係合している
刃先を異なる取付角κ2
に調整して、行われる。
【0042】
縦軸Lを中心とする所定の角度による工具本体1の制御された回転と、平面XZにおいて、被加工物Zに垂直な方向で平進運動成分を有する連動する平進運動Tとによって、取付角κ1、κ2は、削り屑形成を変更するために、旋削作業時に簡単に変更できる。これは、例えば、送り速度又は他のパラメータの変化と組み合わせて行うことができる。さらに、縦軸Lを中心とする所定の角度による工具本体1の制御された回転と、平面XZにおいて、被加工物軸Zに直交する方向の平進運動成分を有する連動した平進運動とによって、旋削加工時でも材料に係合する切削コーナー28を変更することができ、従って、第1の切削コーナー28aの代わりに、第1の切削コーナー28aと異なる第2の切削コーナー28bが動作切削位置に移動される。
【0043】
この方法が、2つの異なる種類の切削コーナー部28a、28bを有する交換可能な切削インサート2に使用できる実施形態に関連して説明したが、この方法は、複数の同様の切削コーナー28を有する切削インサートにも使用することができる。
【0044】
例えば、第1の切削コーナー28aと第2の切削コーナー28bとが、そのコーナー角度α1、α2において異なる実施形態について説明したが、例えば、それに代えて又はそれに加えて、切削コーナーがそれぞれの切削コーナーが湾曲するコーナー半径が異なることも可能である。
【0045】
変形例
上述の実施形態のいくつかの変形例を以下に説明するが、交換可能な切削インサートにおける相違点のみをより詳細に説明し、各々の場合に同じ参照番号を付与する。工具本体1の端面13の基本形状は、変更された切削インサートの形状及び大きさに適合していることは言うまでもない。
【0046】
上述の実施形態との相違点のみを以下に説明し、同じ参照符号を付与する。
【0047】
図10~
図12は、第
1変形例に係る切削インサート2を示しており、この変形例では、特に、
図10に示すように、機械加工に用いることができる3つの切削コーナー28a、28bに加えて、さらにコーナー29も設けられている。第
1変形例では、第1の切削コーナー28aは、特に、
図10と
図12に示すように、それぞれの切削コーナー28a、28bの領域の上面22に形成されたチップ幾何構造22a及び22bの形状において、第2の切削コーナー28bとは異なる。具体的に示した例では、切削コーナーは、コーナー角度及び切削コーナーが形成されるコーナー半径においても異なる。しかし、その代わりに、例えば、第1の切削コーナー28a及び第2の切削コーナー28bについては、チップ幾何構造22a,22bの形状においてのみ互いに相違し、かつ他の特性と一致させることも可能である。
【0048】
図13と
図14は、第2変形例に係る切削インサート2を示しており、第1の切削コーナー28a及び第2の切削コーナー28bは、それらを形成する材質が異なる。この例では、切削コーナー28a、28bは全て同じコーナー角度α1及び同じコーナー半径を有するが、切削コーナーの材料は互いに異なる。例えば、切削インサート2は硬質合金(超硬合金)から形成することができ、第2の切削コーナー28bは、靭性、硬度、粒度、結合剤等の点で性質の異なる別の硬質合金から形成することができる。第2の切削コーナー28bは、例えば、特に、サーメット、PCD(多結晶ダイヤモンド)、CVDダイヤモンド、CBN(立方晶窒化ホウ素)又はセラミック切断のような別の硬質材料から形成することもできる。このような異なる材料からの形成の代替例として、第2の切削コーナー28bには、例えば、第1の切削コーナー28aとは異なる被膜のみを設けることができる。例では2つの異なる切削コーナー28a及び28bのみを示しているが、2つ以上の異なる切削コーナー28も設けることができ、例えば、及び/又は切削コーナー28a、28bもさらなる特性において互いに異なることができる。
【0049】
図15と
図16は、第
3変形例に係る交換可能な切削インサート2を示しており、異なる切削コーナーが異なる機械加工作業のために設計されている。上述の構成のように、第1の切削コーナー28aは、機械加工作業として、例えば、縦旋削のような「通常」切削コーナーとして設計されている。第
3変形例では、第2の切削コーナー28bは、溝削り用の切削コーナーとして設計されている。第
3変形例では、第3の切削コーナー28cは、ねじ切り用の切削コーナーとして設計されている。この場合、縦軸Lを中心とした工具本体1の制御された回転と、平面XZにおいて、被加工物軸Zに直交する並進運動成分を有する連動した並進運動とによって、この目的にために、工作機械内の工具を交換することなく、切削インサート2による旋削作業の種々の機械加工作業を行うことが可能になる。
【0050】
図17と
図18に示す第
4変形例において、また、第1の切削コーナー28aは、例えば、縦軸方向の旋削のための「通常」切削コーナーとして設計され、第2の切削コーナー28bは、溝削り用の切削コーナーとして設計されている。しかしながら、上述した第
3変形例とは対照的に、第3の切削コーナー28cも「通常」切削コーナーとして設計されているが、第1の切削コーナー28aとは異なるコーナー角度を有している。さらに、第4変形例に係る切削インサート2の基本形状は、
図17と
図18に示すように、第3変形例に係る切削インサート2の基本形状とは異なる。
【0051】
記載した方法で使用することができる切削インサート2の第
5変形例を
図19と
図20に示す。第5変形例において、切削インサート2は、旋削加工に使用できる合計3つの切削コーナー28a、28b、28cを有し、この場合、例えば、これは互いに同一である。この変形例において、切削インサート2は、上方から見て3つ尖った星形の形状を有している。3つの使用可能な切削コーナー28a、28b、28cの類似の設計の代替として、切削コーナーには、例えば、それぞれが少なくとも切削コーナー及びそれに隣接する刃先部の領域に延在する異なる補強面取りを設けることもできる。例えば、これらの補強面取りは、それらの幅(刃先に対して垂直に測定)又はそれらの角度(上面22の広がりの主方向に対して垂直な面に対して測定)において異なることができる。この場合も、異なる切削コーナーを使用することができる。例えば、異なる素材を旋削する場合や、異なる切削パラメータで旋削する場合に使用する。例えば、このタイプの異なる補強面取りは、
図19と
図20に示す切削インサート2の基本形状に限定されるものではなく、他の基本形状と併せて、さらに切削コーナー28a、28b、28c間の差異も併せて設けることができる。
【0052】
図21~24は、各々が少なくとも2つの異なる切削コーナー28a、28bを有する切削インサート2のさらなる変形例を概略的に示す。コーナー角度の差異に加えて、切削コーナー間のさらなる差異を設けることもできる。
【0053】
図25と
図26に示す第10変形例に係る切削インサート2では、切削インサート2は全体として、切削コーナーが全て同一のコーナー角度を有する略三角形状を有している。この実施形態では、第1の切削コーナー28aは、例えば、仕上げ削りのための小さなコーナー半径を有するように形成され、一方、第2の切削コーナー28bとしての他の切削コーナーは、例えば、荒削りのためのより大きなコーナー半径を有するように形成できる。
【0054】
切削インサート2の下面21上の上述の回動防止要素及び芯出し要素は、すべての変形例において図示していないが、これらの要素もまた、変形例において設けるのが好ましい。
【0055】
切削インサート2の場合は、それぞれの切削コーナー28間の上述の差異の所望の組合せが可能である。