(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】混ぜ入れ二酸化チタン顔料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 17/00 20060101AFI20221222BHJP
C09C 3/06 20060101ALI20221222BHJP
C09C 3/08 20060101ALI20221222BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20221222BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20221222BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221222BHJP
【FI】
C09D17/00
C09C3/06
C09C3/08
C09D201/00
C09D7/62
C09D7/63
(21)【出願番号】P 2020543198
(86)(22)【出願日】2018-04-02
(86)【国際出願番号】 US2018025659
(87)【国際公開番号】W WO2019160568
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-01-25
(32)【優先日】2018-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500002799
【氏名又は名称】トロノックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ゴパラジュ、 ヴェンカタ ラマ ラオ
(72)【発明者】
【氏名】ス、 クアン
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特公平01-024732(JP,B2)
【文献】特表平04-505172(JP,A)
【文献】特表2008-521970(JP,A)
【文献】特開昭50-020570(JP,A)
【文献】特開昭55-120674(JP,A)
【文献】特開昭55-125165(JP,A)
【文献】特開2005-179482(JP,A)
【文献】特表2014-534996(JP,A)
【文献】特開平5-255609(JP,A)
【文献】特開平9-124968(JP,A)
【文献】特開2016-89160(JP,A)
【文献】特表2016-515156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00- 3/12
C09D 1/00- 10/00
C09D 15/00- 17/00
C09D101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ラテックス塗料配合物中に使用するための二酸化チタン顔料組成物であって、
複数の二酸化チタン粒子と;
前記二酸化チタン粒子および分散剤パッケージの合計重量を基準にして約5重量%を超えない量で前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、分散剤パッケージと
を含み、
前記分散剤パッケージが、
少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する有機化合物、無機アルカリ塩、
またはそれらの組合
せから選択される、少なくとも1つの不揮発性中和剤と;
低分子量単量体分散剤、ポリマー分散剤、
またはそれらの組合
せから選択される、少なくとも1つの分散剤成分と;
トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、グリセロール、ジグリセロール、ペンタエリスリトール、またはそれらの組合せと
を含む、
乾燥形態にある二酸化チタン顔料組成物。
【請求項2】
前記二酸化チタン粒子が塩化物法によって形成されるものである、請求項1に記載の二酸化チタン顔料組成物。
【請求項3】
前記二酸化チタン粒子が、その表面上に堆積された少なくとも1つの無機コーティングを有し、前記無機コーティングが、金属酸化物コーティング、金属水酸化物コーティング、
またはそれらの組合
せから選択される、請求項1に記載の二酸化チタン顔料組成物。
【請求項4】
前記二酸化チタン粒子が、その表面上に堆積された少なくとも1つの無機コーティングを有し、前記無機コーティングが、シリカコーティング、アルミナコーティング、ジルコニウムコーティング、
またはそれらの組合
せから選択される、請求項
1に記載の二酸化チタン顔料組成物。
【請求項5】
前記分散剤パッケージが、前記二酸化チタン粒子と前記分散剤パッケージとの合計重量を基準にして約2重量%を超えない量で前記顔料組成物中に存在する、請求項1に記載の二酸化チタン顔料組成物。
【請求項6】
少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する前記有機化合物が、アルキルアミンヒドロキシル、芳香族アミンヒドロキシル、
またはそれらの組合
せから選択される、請求項1に記載の二酸化チタン顔料組成物。
【請求項7】
少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する前記有機化合物が、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリエタノールアミン、N-ブチル-ジエタノールアミン、ジメチルグルカミン、
またはそれらの組合
せから選択される、請求項6に記載の二酸化チタン顔料組成物。
【請求項8】
前記無機アルカリ塩が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、
またはそれらの組合
せから選択される、請求項1に記載の二酸化チタン顔料組成物。
【請求項9】
前記低分子量単量体分散剤が、ホスフェート、カルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸、ホスホネート、ホスホネート系カルボン酸、
またはそれらの組合
せから選択される、請求項1に記載の二酸化チタン顔料組成物。
【請求項10】
前記低分子量単量体分散剤が、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ホスフェートカルボン酸、ホスフェートカルボン
酸の塩、ヒドロキシルカルボン酸、ヒドロキシルカルボン酸の塩、
またはそれらの組合
せから選択される、請求項9に記載の二酸化チタン顔料組成物。
【請求項11】
前記ポリマー分散剤が、アミン、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸
、アミン
の塩、カルボン酸
の塩、スルホン酸
の塩、ホスホン酸
の塩、リン酸の塩、
またはそれらの組合
せから選択される1つ以上
の官能基を含むポリマー分子である、請求項1に記載の二酸化チタン顔料組成物。
【請求項12】
前記ポリマー分散剤が、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸コポリマー、ポリアクリル酸
の塩、ポリアクリル酸コポリマーの塩、マレイン酸コポリマー、マレイン酸コポリマーの塩、
またはそれらの組合
せから選択される、請求項11に記載の二酸化チタン顔料組成物。
【請求項13】
水性ラテックス塗料配合
物中に使用するための
、乾燥形態の二酸化チタン顔料組成物を形成する方法であって、
複数の二酸化チタン粒子を提供することと;
分散剤パッケージであって、
少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する有機化合物、無機アルカリ塩、
またはそれらの組合
せから選択される、少なくとも1つの不揮発性中和剤;
低分子量単量体分散剤、ポリマー分散剤、
またはそれらの組合
せから選択される、少なくとも1つの分散剤成分;および
トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、グリセロール、ジグリセロール、ペンタエリスリトール、またはそれらの組合せ
を含む、分散剤パッケージを提供することと;
前記分散剤パッケージを、前記二酸化チタン粒子および前記分散剤パッケージの合計重量を基準にして約5重量%を超えない量で前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積させることと
;
前記分散剤パッケージを前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積させた後に、前記二酸化チタン粒子を乾燥することと
を含む、方法。
【請求項14】
前記二酸化チタン粒子は
無機材料でコーティングされていない二酸化チタン粒子であり、
前記方法は、前記分散剤パッケージを前
記二酸化チタン粒子の表面上に堆積させることの前に、前記二酸化チタン粒子を所望の粒径に粉砕し、前記粉砕された二酸化チタン粒子を濾過および洗浄して、湿った顔料濾過ケーキを形成することをさらに含み、
前記分散剤パッケージを前記湿った顔料濾過ケーキと混合することによって、前記分散剤パッケージが前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積される、
請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記湿った顔料濾過ケーキを乾燥して乾燥顔料濾過ケーキを形成することと;
前記乾燥顔料濾過ケーキを粉砕して粉砕顔料濾過ケーキを形成することと;
前記粉砕濾過ケーキを蒸気微粉化して、前記二酸化チタン顔料組成物を形成することと
をさらに含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
水性ラテックス塗料配合物中に使用するための二酸化チタン顔料組成物スラリーを形成する方法であって、
水性媒体を提供することと;
複数の二酸化チタン粒子を提供することと;
分散剤パッケージであって、
少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する有機化合物、無機アルカリ塩、
またはそれらの組合
せから選択される、少なくとも1つの不揮発性中和剤;
低分子量単量体分散剤、ポリマー分散剤、
またはそれらの組合
せから選択される、少なくとも1つの分散剤成分;および
トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、グリセロール、ジグリセロール、ペンタエリスリトール、またはそれらの組合せ
を含む、分散剤パッケージを提供することと;
前記分散剤パッケージを、前記二酸化チタン粒子および前記分散剤パッケージの合計重量を基準にして約5重量%を超えない量で前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積させて二酸化チタン顔料組成物を形成することと;
前記二酸化チタン顔料組成物を前記水性媒体中に分散させることと
を含
み、
前記水性媒体中に分散される前に、前記二酸化チタン顔料組成物は乾燥形態にある、方法。
【請求項17】
前記二酸化チタン粒子が
無機材料でコーティングされていない二酸化チタン粒子であり、
前記方法は、前記分散剤パッケージを前
記二酸化チタン粒子の表面上に堆積させることの前に、前記二酸化チタン粒子を所望の粒径に粉砕し、前記粉砕された二酸化チタン粒子を濾過および洗浄して、湿った顔料濾過ケーキを形成することをさらに含み、
前記分散剤パッケージを前記湿った顔料濾過ケーキと混合することによって、前記分散剤パッケージが前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積される、
請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記二酸化チタン顔料組成物を前記水性媒体中に分散させる前に、
前記湿った顔料濾過ケーキを乾燥して乾燥顔料濾過ケーキを形成することと;
前記乾燥顔料濾過ケーキを粉砕して粉砕顔料濾過ケーキを形成することと;
前記粉砕濾過ケーキを蒸気微粉化して前記二酸化チタン顔料組成物を形成することと、
をさらに含む、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記二酸化チタン顔料組成物スラリーは、混ぜ入れ二酸化チタン顔料組成物スラリーである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記方法によって形成される二酸化チタン顔料組成物は、混ぜ入れ二酸化チタン顔料組成物である、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記二酸化チタン顔料組成物は混ぜ入れ二酸化チタン顔料組成物である、請求項1に記載の二酸化チタン顔料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
二酸化チタンは、水性ラテックス塗料における白色不透明化剤としての使用のための有効な無機顔料である。二酸化チタンは、硫酸塩法または塩化物法のいずれかによって形成され得る。
【背景技術】
【0002】
硫酸塩法で製造されるか塩化物法で製造されるかにかかわらず、製造された二酸化チタン粒子は、典型的には、特定の用途のために顔料の特性および特徴を改変または増強するために、1つ以上の無機材料で被覆される。例えば、顔料粒子は、顔料の不透明度、光安定性および耐久性を改善するように機能する化合物で被覆されることが多い。二酸化チタン顔料を被覆するために使用される無機材料の例としては、アルミナおよびシリカが挙げられる。
【0003】
二酸化チタン顔料がラテックス塗料配合物に寄与する主要な特性は、隠蔽力である。ラテックス塗料配合物における二酸化チタン顔料の隠蔽力は、塗料配合物中で光を散乱させる顔料の能力に基づく。塗料配合物中で光を散乱させる顔料の能力(顔料の光散乱効率)は、顔料の粒径、顔料粒子とその周囲との屈折率の差、および顔料粒子同士の近接性を含む様々な要因に依存する。例えば、顔料粒子と塗料配合物との屈折率の大きな差は、高い散乱効率をもたらす。
【0004】
塗料配合物の製造過程において、水性ラテックス塗料配合物に二酸化チタン顔料が添加される。残念ながら、これは高エネルギー装置および分散剤を必要とする困難なプロセスである。二酸化チタン顔料を塗料配合物に添加できる前に、一般に、それを粉砕し、水中に分散させて水性顔料スラリーを形成しなければならない。粉砕工程は、顔料の凝集体を分解して、顔料をより容易に水中に分散させてスラリーを形成できるようにする。典型的には分散剤および界面活性剤がスラリーに添加されて、顔料表面を湿潤させ、粒子が分離した後にそれらを安定化させる。次いでスラリーを塗料配合物に添加することができる。
【0005】
粉砕工程は多大な労力がかかり、高速粉砕装置を必要とし、大量のエネルギーを消費する。さらに、二酸化チタン顔料をまず粉砕してそれを水に分散させる必要性も、塗料製造プロセス全体を複雑にする。例えば、最初にラテックス塗料配合物のバッチが製造された後には、配合物の隠蔽力および着色強度は低くなり得、これはそのバッチが規格外であることを意味する。結果として、その隠蔽力および着色強度を高めるために、さらなる二酸化チタン顔料をバッチに添加することが必要になり得る。しかし、これを行うためには、まず二酸化チタンを粉砕し、水中に分散させて顔料スラリーを形成しなければならない。これは余分な時間と労力を必要とし、生産プロセス全体を遅延させる。追加のスラリーはまた、塗料配合物にさらなる水も添加し、このこともそれ自体問題となり得る。
【発明の概要】
【0006】
一側面では、水性ラテックス塗料配合物に使用するための二酸化チタン顔料組成物が提供される。該顔料組成物は、複数の二酸化チタン粒子と、二酸化チタン粒子および分散剤パッケージの合計重量に基づいて約5重量%を超えない量で二酸化チタン粒子の表面上に堆積された(deposited)分散剤パッケージとを含む。分散剤パッケージは、少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する有機化合物、無機アルカリ塩、およびそれらの組合せの群から選択される少なくとも1つの不揮発性中和剤と、低分子量単量体分散剤、ポリマー分散剤、およびそれらの組合せの群から選択される少なくとも1つの分散剤成分と、少なくとも1つの多価アルコール成分とを含む。
【0007】
別の態様では、水性ラテックス塗料配合物に使用するための二酸化チタン顔料組成物スラリーが提供される。該顔料組成物は、水性媒体と、水性媒体中に分散された複数の二酸化チタン粒子と、二酸化チタン粒子および分散剤パッケージの合計重量に基づいて約5重量%を超えない量で二酸化チタン粒子の表面上に堆積された分散剤パッケージとを含む。分散剤パッケージは、少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する有機化合物、無機アルカリ塩、およびそれらの組合せの群から選択される少なくとも1つの不揮発性中和剤と、低分子量単量体分散剤、ポリマー分散剤、およびそれらの組合せの群から選択される少なくとも1つの分散剤成分と、少なくとも1つの多価アルコール成分とを含む。
【0008】
別の態様では、水性ラテックス塗料配合物に使用するための二酸化チタン顔料組成物を形成する方法が提供される。本方法は、複数の二酸化チタン粒子を提供することと、分散剤パッケージを提供することとを含む。分散剤パッケージは、少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する有機化合物、無機アルカリ塩、およびそれらの組合せの群から選択される少なくとも1つの不揮発性中和剤、低分子量単量体分散剤、ポリマー分散剤、およびそれらの組合せの群から選択される少なくとも1つの分散剤成分、ならびに少なくとも1つの多価アルコール成分を含む。この方法は、さらに、二酸化チタン粒子と分散剤パッケージとの合計重量を基準にして約5重量%を超えない量で分散剤パッケージを二酸化チタン粒子の表面上に堆積させることを含む。
【0009】
別の態様では、水性ラテックス塗料配合物に使用するための二酸化チタン顔料組成物スラリーを形成する方法が提供される。本方法は、水性媒体を提供することと、複数の二酸化チタン粒子を提供することと、分散剤パッケージを提供することとを含む。分散剤パッケージは、少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する有機化合物、無機アルカリ塩、およびそれらの組合せの群から選択される少なくともつの不揮発性中和剤と、低分子量単量体分散剤、ポリマー分散剤、およびそれらの組み合せの群から選択される少なくとも1つの分散剤成分と、少なくとも1つの多価アルコール成分とを含む。本方法は、さらに、二酸化チタン粒子と分散剤パッケージとの合計重量を基準にして約5重量%を超えない量で分散剤パッケージを二酸化チタン粒子の表面上に堆積させること、および二酸化チタン顔料組成物を水性媒体中に分散させることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、この詳細な説明およびそこに含まれる実施例を参照することによって、より容易に理解され得る。本明細書に記載される例の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が記載される。しかしながら、本明細書に記載の実施例は、これらの特定の詳細点がなくとも実施され得ることが当業者には理解されるであろう。他の例では、記述されている関連の特徴を不明瞭にしてしまうことを避けるために、方法、手順および構成要素は、詳細には記載されていない。また、説明は、実施例の範囲を限定するものと解されるべきではない。
【0011】
1つの態様において、水性ラテックス塗料配合物に使用するための二酸化チタン顔料組成物が本明細書で提供される。別の態様では、水性ラテックス塗料配合物に使用するための二酸化チタン顔料組成物スラリーが提供される。さらに別の態様では、水性ラテックス塗料配合物に使用するための二酸化チタン顔料組成物を形成する方法が提供される。さらに別の態様では、水性ラテックス塗料配合物に使用するための二酸化チタン顔料組成物スラリーを形成する方法が提供される。
【0012】
本明細書中および添付の特許請求の範囲において使用される場合、「水性ラテックス塗料配合物」は、水性ベースのラテックス塗料配合物を意味する。
【0013】
本明細書に開示される、水性ラテックス塗料配合物に使用するための二酸化チタン顔料組成物は、複数の二酸化チタン粒子と、二酸化チタン粒子および分散剤パッケージの合計重量に基づいて約5重量%を超えない量で二酸化チタン粒子の表面上に堆積された分散剤パッケージとを含む。
【0014】
例えば、二酸化チタン粒子は、ルチル結晶構造、またはアナターゼ結晶構造とルチル結晶構造との組合せを有し得る。例えば、二酸化チタン粒子はルチル結晶構造を有することができる。例えば、二酸化チタンは、塩化物法または硫酸塩法により形成され得る。例えば、二酸化チタンは、塩化物法によって形成することができる。例えば、二酸化チタンは硫酸塩法により形成することができる。
【0015】
二酸化チタンを製造するための塩化物法では、乾燥二酸化チタン鉱石を、コークスおよび塩素と共に塩素化装置に供給して、ガス状ハロゲン化チタン(四塩化チタン等)を生成する。得られたハロゲン化チタンを精製し、特殊な反応器中で高温で酸化させて、所望の粒径の二酸化チタン粒子を製造する。酸化反応器中で典型的にはハロゲン化チタンに塩化アルミニウムまたは他の共酸化剤が添加されて、ルチルの形成を促進し、粒子サイズを制御する。次いで、二酸化チタンおよびガス状反応生成物を冷却し、二酸化チタン粒子を回収する。
【0016】
二酸化チタンを製造するための硫酸塩法では、硫酸にチタンスラグ鉱石を溶解して硫酸チタニルを形成させる。次いで、硫酸チタニルを加水分解して、含水二酸化チタンを形成する。水和した二酸化チタンを焼成器内で加熱して、二酸化チタン結晶を顔料寸法に成長させる。
【0017】
例えば、二酸化チタン粒子は、その表面上に堆積された少なくとも1つの無機コーティングを有することができ、無機コーティング(複数可)は、金属酸化物コーティング、金属水酸化物コーティング、およびそれらの組合せの群から選択される。例えば、無機コーティング(複数可)は、シリカコーティング、アルミナコーティング、リン酸アルミニウムコーティング、ジルコニアコーティング、チタニアコーティング、およびこれらの組合せの群から選択することができる。例えば、無機コーティング(複数可)は、シリカコーティング、アルミナコーティング、ジルコニアコーティング、およびこれらの組合せの群から選択することができる。
【0018】
無機コーティング(複数可)を使用して、二酸化チタン粒子に1つ以上の特性および/または特徴を付与し、該二酸化チタン顔料組成物が添加される特定の水性ラテックス塗料配合物により適した粒子にすることができる。例えば、シリカおよび/またはアルミナコーティングを用いて、二酸化チタン顔料粒子の濡れ特性および分散特性の改善を助けることができる。例えば、分散剤パッケージが二酸化チタン顔料粒子上に堆積されるかまたは他の態様で顔料組成物に添加される前に、1つ以上の無機コーティングが二酸化チタン粒子の表面上に堆積され得る。
【0019】
例えば、無機コーティング(複数可)は、二酸化チタン粒子と無機コーティング(複数可)との合計重量に基づいて、約0.5重量%~約15重量%の範囲内の量で、二酸化チタン粒子の表面上に堆積され得る。例えば、無機コーティング(複数可)は、二酸化チタン粒子と無機コーティング(複数可)との合計重量に基づいて、約1重量%~約10重量%の範囲内の量で、二酸化チタン粒子の表面上に堆積され得る。
【0020】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される「二酸化チタン粒子の表面上に堆積される」とは、別段の記載がない限り、二酸化チタン粒子の表面上に直接的または間接的に堆積されることを意味する。例えば、分散剤パッケージは、二酸化チタン粒子と分散剤パッケージとの合計重量に基づいて約3重量%を超えない量で、二酸化チタン粒子の表面上に堆積され得る。例えば、分散剤パッケージは、二酸化チタン粒子と分散剤パッケージとの合計重量に基づいて約2重量%を超えない量で、二酸化チタン粒子の表面上に堆積され得る。例えば、分散剤パッケージは、二酸化チタン粒子と分散剤パッケージとの合計重量に基づいて約1.5重量%を超えない量で、二酸化チタン粒子の表面上に堆積され得る。
【0021】
例えば、分散剤パッケージは、二酸化チタン粒子と分散剤パッケージの合計重量に基づいて、約0.1重量%~約5重量%の範囲内の量で、二酸化チタン粒子の表面上に堆積され得る。例えば、分散剤パッケージは、二酸化チタン粒子と分散剤パッケージの合計重量に基づいて、約0.3重量%~約3重量%の範囲の量で、二酸化チタン粒子の表面上に堆積され得る。例えば、分散剤パッケージは、二酸化チタン粒子と分散剤パッケージの合計重量に基づいて、約0.2重量%~約2重量%の範囲の量で、二酸化チタン粒子の表面上に堆積され得る。例えば、分散剤パッケージは、二酸化チタン粒子と分散剤パッケージの合計重量に基づいて、約0.5重量%~約1.5重量%の範囲の量で、二酸化チタン粒子の表面上に堆積され得る。
【0022】
分散剤パッケージは、
a) 少なくとも1つのアミン官能基(-NH2R、-NHR2、または-NR3)および少なくとも1つのヒドロキシ官能基(-OH)を有する有機化合物、無機アルカリ塩、およびそれらの組合せの群から選択される、少なくとも1つの不揮発性中和剤;
b) 低分子量単量体分散剤、ポリマー分散剤、およびそれらの組合せの群から選択される、少なくとも1つの分散剤成分;ならびに
c) 少なくとも1つの多価アルコール成分
を含む。
【0023】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される「不揮発性中和剤」とは、200℃以上の沸点を有する中和剤を意味する。中和剤の「不揮発性」は、本明細書に開示される二酸化チタン顔料組成物に中和剤が組み込まれたときに中和剤が安定であり続けることを可能にする。「無機アルカリ塩」は、水に溶解することができ酸水溶液を中和するために使用することができる無機アルカリ塩を意味する。
【0024】
例えば、分散剤パッケージの不揮発性中和剤(複数可)としてまたはその一部として用いられる、少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する有機化合物は、アルキルアミンヒドロキシル、芳香族アミンヒドロキシル、およびそれらの組合せの群から選択することができる。例えば、本明細書に開示される顔料の分散剤パッケージの不揮発性中和剤(複数可)としてまたはその一部として用いることができる、少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する有機化合物は、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリエタノールアミン、N-ブチル-ジエタノールアミン、ジメチルグルカミン、およびそれらの組合せの群から選択することができる。分散剤パッケージの不揮発性中和剤(複数可)としてまたはその一部としての使用に適したジメチルグルカミンの一例は、Clariant CorporationによりGenamin(登録商標)Gluco 50の商標に関連して販売されている。例えば、少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する有機化合物は、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールであり得る。
【0025】
例えば、本明細書に開示される顔料の分散剤パッケージの不揮発性中和剤(複数可)としてまたはその一部として使用することができる無機アルカリ塩は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、およびそれらの組合せの群から選択することができる。使用可能なアルカリ金属炭酸塩の例としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、および炭酸カリウムが挙げられる。使用可能なアルカリ金属重炭酸塩の例としては、重炭酸リチウム、重炭酸ナトリウム、および重炭酸カリウムが挙げられる。例えば、分散剤パッケージの不揮発性中和剤(複数可)としてまたはその一部として使用されるアルカリ金属塩は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、およびこれらの組合せからなる群から選択されるアルカリ金属炭酸塩であり得る。例えば、アルカリ金属塩は、炭酸ナトリウムであり得る。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される「低分子量単量体分散剤」は、他の同一分子と結合してポリマーを形成し得、1000を超えない分子量を有する分子を含む化合物を意味する。化合物の「分子量」は、その化合物の数平均分子量を意味する。多価アルコール成分とは、2個以上のヒドロキシ(-OH)基を有する有機化合物を意味する。
【0027】
例えば、分散剤パッケージの分散剤成分(複数可)としてまたはその一部として使用される低分子量単量体分散剤は、ホスフェート、カルボン酸、ジトリカルボン酸またはトリカルボン酸、ホスホネート、ホスホネート系カルボン酸、およびそれらの組合せの群から選択することができる。例えば、本明細書に開示される顔料の分散剤パッケージの分散剤成分(複数可)としてまたはその一部として用いることができる低分子量単量体分散剤は、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ホスフェートカルボン酸、ホスフェートカルボン酸の塩、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸の塩、およびそれらの組合せの群から選択することができる。使用され得るヒドロキシカルボン酸の塩の例としては、クエン酸および酒石酸が挙げられる。例えば、低分子量単量体分散剤は、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸であり得る。例えば、低分子量単量体分散剤は、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸であり得る。
【0028】
例えば、本明細書に開示される顔料の分散剤パッケージの分散剤成分(複数可)としてまたはその一部として使用することができるポリマー分散剤は、アミン、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸、アミンの塩、およびそれらの組合せの群から選択される1つ以上の化合物の官能基を含有するポリマー分子であり得る。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される「ポリマー分子」は、ポリマーおよびコポリマーの両方を包含する。例えば、分散剤パッケージの分散剤成分(複数可)としてまたはその一部として使用されるポリマー分散剤は、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸コポリマー、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸コポリマーの塩、マレイン酸コポリマー、マレイン酸コポリマーの塩、ならびにそれらの組合せの群から選択され得る。例えば、ポリマー分散剤は、スルホン化スチレン/無水マレイン酸コポリマーであり得る。
【0029】
例えば、分散剤パッケージの多価アルコール成分は、アルキル直鎖ポリオール、アルキル分岐鎖ポリオール、およびそれらの組合せの群から選択することができる。例えば、本明細書に開示される顔料の分散剤パッケージの一部として使用することができる多価アルコール成分は、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、グリセロール、ジグリセロール、ペンタエリスリトール、マンニトール、およびそれらの組合せの群から選択される。例えば、多価アルコール成分はグリセロールであり得る。
【0030】
例えば、二酸化チタン顔料は、乾燥、粉末または顆粒の形態である。
【0031】
例えば、一実施形態では、二酸化チタン顔料組成物は、以下のものを含む:
二酸化チタン粒子と分散剤パッケージとの合計重量に基づいて約95%~約99.5重量%の量で顔料組成物中に存在する、複数の二酸化チタン粒子;
二酸化チタン粒子と分散剤パッケージとの合計重量に基づいて約0.5%~約5重量%の範囲内の量で顔料組成物中に存在する、分散剤パッケージであって、以下のものを含む分散剤パッケージ:
少なくとも1つのアミン官能基と少なくとも一つのヒドロキシ官能基とを有する有機化合物、無機アルカリ塩、およびそれらの組合せの群から選択される、少なくとも1つの不揮発性中和剤であって、二酸化チタン粒子と分散剤パッケージとの合計重量に基づいて約0.02重量%~約4.86重量%の範囲内の量で顔料組成物中に存在する、不揮発性中和剤;
低分子量単量体分散剤、ポリマー分散剤、およびそれらの組合せの群から選択される、少なくとも1つの分散剤成分であって、二酸化チタン粒子と分散剤パッケージとの合計重量に基づいて約0.02重量%~約4.86重量%の範囲の量で顔料組成物中に存在する分散剤成分;および
二酸化チタン粒子と分散剤パッケージとの合計重量に基づいて約0.10重量%~約4.86重量%の範囲内の量で顔料組成物中に存在する、少なくとも1つの多価アルコール成分。
【0032】
例えば、別の実施形態では、二酸化チタン顔料組成物は、以下のものを含む:
二酸化チタン粒子と分散剤パッケージとの合計重量を基準にして、少なくとも約98重量%の量で顔料組成物中に存在する、複数の二酸化チタン粒子であって、その表面上に堆積された少なくとも1つの無機コーティングを有し、その無機コーティング(複数可)が、金属酸化物コーティング、金属水酸化物コーティング、およびそれらの組合せの群から選択される、二酸化チタン粒子;
二酸化チタン粒子と分散剤パッケージとの合計重量を基準にして約2重量%を超えない量で顔料組成物中に存在する、分散剤パッケージであって、以下のものを含む、分散剤パッケージ:
少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する有機化合物、無機アルカリ塩、およびそれらの組合せの群から選択される、少なくとも1つの不揮発性中和剤であって、二酸化チタン粒子と分散剤パッケージとの合計重量を基準にして約0.05重量%~約1.0重量%の範囲内の量で顔料組成物中に存在する、不揮発性中和剤;
低分子量単量体分散剤、ポリマー分散剤、およびそれらの組合せの群から選択される、少なくとも1つの分散剤成分であって、二酸化チタン粒子と分散剤パッケージとの組合せ重量を基準にして約0.05重量%~約1.0重量%の範囲内の量で顔料組成物中に存在する、分散剤成分;および
二酸化チタン粒子と分散剤パッケージとの合計重量を基準にして約0.05%~約1.0%の範囲内の量で顔料組成物中に存在する、少なくとも1つの多価アルコール成分。
【0033】
例えば、本明細書に開示される二酸化チタン顔料組成物は、水溶液中に容易に混合されて、水性ラテックス塗料配合物に使用するためのスラリーを形成するか、または水性ラテックス塗料配合物中に直接混合されることができるという点で、「混ぜ入れ(stir-in)」二酸化チタン顔料組成物とみなすことができる。例えば、本明細書に開示される二酸化チタン顔料組成物は、最初に高速粉砕装置を用いて顔料を粉砕することなく、水溶液中に混合されて、水性ラテックス塗料配合物中で使用するためのスラリーを形成するか、または、水性ラテックス塗料配合物中に直接混合することができる。塗料製造過程で二酸化チタン顔料を粉砕するために一般的に使用される高速粉砕機の一例は、VMA-Getzmann GmbHによって製造されるDispermat(登録商標)高速分散機であり、このような分散機はCowlesブレードと共に使用され得る。
【0034】
本明細書に開示される水性ラテックス塗料配合物に使用するための二酸化チタン顔料組成物スラリーは、水性媒体と、水性媒体中に分散された複数の二酸化チタン粒子と、二酸化チタン粒子および分散剤パッケージの合計重量を基準として約5重量%を超えない量で水性媒体中に存在する、分散剤パッケージとを含む。例えば水性媒体は水である。該二酸化チタン粒子および分散剤パッケージは、本明細書に開示される二酸化チタン顔料組成物との関係で上述した二酸化チタン粒子および分散剤パッケージである。
【0035】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される、「水性媒体中に存在する」分散剤パッケージとは、水性媒体中に分散されるかまたは他の態様で水性媒体中に存在する二酸化チタン粒子の表面上にその分散剤パッケージの成分が堆積されることを意味する。例えば、分散剤パッケージが最初に二酸化チタン粒子の表面上に堆積されてそれと共に水性媒体に添加され得るが、いったん顔料組成物が水性媒体に添加されると、多価アルコールが二酸化チタン粒子から分離することがある。
【0036】
本明細書に開示される二酸化チタン顔料組成物スラリーは、水性ラテックス塗料配合物中に容易に直接混合することができるという点で、「混ぜ入れ」二酸化チタン顔料組成物スラリーとみなすことができる。例えば、本明細書に開示される二酸化チタン顔料組成物は、最初に高速粉砕装置を用いて顔料スラリーを粉砕することなく、水性ラテックス塗料配合物中に直接混合することができる。下記の例示的な実施例によって示されるように、スラリーは50℃において少なくとも7ヶ月間安定であり、そして時間を経たスラリーで作られたラテックス塗料の特性は対照試料と同等である。
【0037】
本願明細書に開示される水性ラテックス塗料配合物に使用するための二酸化チタン顔料組成物を形成する方法は、複数の二酸化チタン粒子を提供することと、分散剤パッケージを提供することと、二酸化チタン粒子および分散剤パッケージの合計重量に基づいて約5重量%を超えない量で分散剤パッケージを二酸化チタン粒子の表面に堆積させることとを含む。該二酸化チタン粒子および分散剤パッケージは、本明細書に開示される二酸化チタン顔料組成物との関係で上述した二酸化チタン粒子および分散剤パッケージである。この方法により形成される二酸化チタン顔料組成物は、上述した二酸化チタン顔料組成物と同様である。
【0038】
本願明細書に開示される水性ラテックス塗料配合物に使用するための二酸化チタン顔料組成物スラリーを形成する方法は、水性媒体を提供することと、複数の二酸化チタン粒子を提供することと、分散剤パッケージを提供することと、二酸化チタン粒子および分散剤パッケージの合計重量を基準にして約5重量%を超えない量で分散剤パッケージを二酸化チタン粒子の表面上に堆積させて、二酸化チタン顔料組成物を形成することと、二酸化チタン顔料組成物を水性媒体中に分散させることとを含む。例えば水性媒体は水である。該二酸化チタン粒子および分散剤パッケージは、本明細書に開示される二酸化チタン顔料組成物との関係で上述した二酸化チタン粒子および分散剤パッケージである。この方法により形成される二酸化チタン顔料組成物は、上述した二酸化チタン顔料組成物と同様である。
【0039】
例えば、二酸化チタン顔料組成物を形成する方法および二酸化チタン顔料組成物スラリーを形成する方法の両方の一実施形態において、二酸化チタン粒子を製造するためのプロセスに関連させてこの方法を実施することにより、二酸化チタン粒子上に分散剤パッケージが堆積される。方法のこれらの実施形態では、提供される二酸化チタン粒子は、例えば塩化物法または硫酸塩法のいずれかによって生成された未加工の顔料粒子である。例えば、未加工の粒子が塩化物法によって製造され得る。
【0040】
これらの実施形態では、方法はさらに、未加工二酸化チタン粒子の表面上に分散剤パッケージを堆積させる前に、未加工二酸化チタン粒子を所望の粒径に粉砕し、粉砕した二酸化チタン粒子を濾過および洗浄して湿った顔料濾過ケーキを形成することを含み、ここで、分散剤パッケージを湿った顔料濾過ケーキと混合することにより、二酸化チタン粒子の表面上に分散剤パッケージが堆積される。この方法は、さらに、湿った顔料濾過ケーキを乾燥して乾燥顔料濾過ケーキを形成すること、乾燥顔料濾過ケーキを粉砕して粉砕顔料濾過ケーキを形成すること、および粉砕顔料濾過ケーキを蒸気微粉化(steam micronizing)して二酸化チタン顔料組成物を形成することを含むことができる。
【0041】
二酸化チタン顔料組成物スラリーの形成するための方法において、湿った顔料濾過ケーキを乾燥して乾式顔料濾過ケーキを形成するステップ、乾燥顔料濾過ケーキを粉砕して粉砕顔料濾過ケーキを形成するステップ、および粉砕顔料濾過ケーキを蒸気微粉化して二酸化チタン顔料組成物を形成するステップは、二酸化チタン顔料組成物が水性媒体中に分散される前に行われる。
【0042】
例えば、これらの実施形態では、方法は、未加工の二酸化チタン粒子を所望の粒径に粉砕する前に、二酸化チタン粒子を少なくとも1つの無機コーティングでコーティングすることも含み得る。例えば、無機コーティング(複数可)は、本明細書に開示される二酸化チタン顔料組成物との関係で上述された有機コーティング(複数可)と同じであり得る。
【0043】
例えば、これらの実施形態では、オーブン乾燥法、スプレー乾燥法、およびスピンフラッシュ乾燥法を含む様々な乾燥方法によって、湿った顔料濾過ケーキを乾燥させて乾式顔料濾過ケーキを形成することができる。
【0044】
例えば、これらの実施形態では、スチームインジェクタ圧力を160 psiに、マイクロナイザーリング圧力を118 psiに設定して、1:2.5の蒸気対顔料重量比を利用することによって、粉砕された乾燥顔料濾過ケーキを蒸気微粉化し二酸化チタン顔料組成物を形成することができる。
【0045】
当該二酸化チタン顔料組成物、二酸化チタン顔料組成物スラリー、二酸化チタン顔料組成物の形成方法、および二酸化チタン顔料組成物スラリーの形成方法によって、水性ラテックス塗料配合物に使用するために多くの利点が達成される。例えば、上述したように、本明細書に開示される二酸化チタン顔料組成物は、最初に高速粉砕装置を用いて顔料を粉砕することなく、水溶液中に混合して、水性ラテックス塗料配合物で使用するためのスラリーを形成することができ、または、水性ラテックス塗料配合物中に直接混合することができる。同様に、本明細書に開示される二酸化チタン顔料組成物スラリーは、最初に高速粉砕装置を用いて顔料を粉砕することなく、水性ラテックス塗料配合物中に直接混合することができる。
【0046】
結果として、他の二酸化チタン顔料組成物を水性ラテックス塗料配合物中に混合することに関連して必要とされるエネルギーよりも、本二酸化チタン顔料組成物を水性塗料配合物中に混合するために要するエネルギーははるかに小さい。これにより、著しいコスト削減がもたらされる。下記に示すように、本明細書に開示される二酸化チタン顔料組成物、スラリーおよび方法は、従来の粉砕装置と比較して、電力消費をほぼ90%節約することができる。
【0047】
二酸化チタン顔料スラリーは、例えば、エネルギー消費が大きい粉砕装置とは対照的に、単純なプロペラブレードを用いて、撹拌するだけで水またはラテックス塗料配合物に導入することができる。顔料の特性およびラテックス塗料配合物の特性は影響を受けない。バッチが規格外であると判明し、より多くの二酸化チタン顔料が必要な場合は、追加の二酸化チタン顔料を、単に撹拌するだけで、水またはラテックス塗料配合物中に導入すればよいだけである。多大な労力を要しコストのかかる粉砕プロセスは関与する必要がない。
【0048】
二酸化チタン顔料組成物の分散剤パッケージは、顔料組成物の少量部分を構成する。このことは、塗料に比較的大量の望ましくない化学物質を導入することなく、顔料組成物をラテックス塗料製造に使用することを可能にする。顔料製造プロセス中に二酸化チタン顔料組成物を形成することができるという事実は、コストを節約し、他の利点を達成する。
【0049】
本開示は以下の実施形態を含む。
実施形態1
水性ラテックス塗料配合物中に使用するための二酸化チタン顔料組成物であって、
複数の二酸化チタン粒子と;
前記二酸化チタン粒子および分散剤パッケージの合計重量を基準にして約5重量%を超えない量で前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、分散剤パッケージと
を含み、
前記分散剤パッケージが、
少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する有機化合物、無機アルカリ塩、およびそれらの組合せの群から選択される、少なくとも1つの不揮発性中和剤と;
低分子量単量体分散剤、ポリマー分散剤、およびそれらの組合せの群から選択される、少なくとも1つの分散剤成分と;
少なくとも1つの多価アルコール成分と
を含む、
二酸化チタン顔料組成物。
実施形態2
前記二酸化チタン粒子が塩化物法によって形成されるものである、実施形態1に記載の二酸化チタン顔料組成物。
実施形態3
前記二酸化チタン粒子が、その表面上に堆積された少なくとも1つの無機コーティングを有し、前記無機コーティングが、金属酸化物コーティング、金属水酸化物コーティング、およびそれらの組合せの群から選択される、実施形態1に記載の二酸化チタン顔料組成物。
実施形態4
前記無機コーティングが、シリカコーティング、アルミナコーティング、ジルコニウムコーティング、およびそれらの組合せの群から選択される、実施形態3に記載の二酸化チタン顔料組成物。
実施形態5
前記分散剤パッケージが、前記二酸化チタン粒子と前記分散剤パッケージとの合計重量を基準にして約2重量%を超えない量で前記顔料組成物中に存在する、実施形態1に記載の二酸化チタン顔料組成物。
実施形態6
少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する前記有機化合物が、アルキルアミンヒドロキシル、芳香族アミンヒドロキシル、およびそれらの組合せの群から選択される、実施形態1に記載の二酸化チタン顔料組成物。
実施形態7
少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する前記有機化合物が、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリエタノールアミン、N-ブチル-ジエタノールアミン、ジメチルグルカミン、およびそれらの組合せの群から選択される、実施形態6に記載の二酸化チタン顔料組成物。
実施形態8
前記無機アルカリ塩が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、およびそれらの組合せの群から選択される、実施形態1に記載の二酸化チタン顔料組成物。
実施形態9
前記低分子量単量体分散剤が、ホスフェート、カルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸、ホスホネート、ホスホネート系カルボン酸、およびそれらの組合せの群から選択される、実施形態1に記載の二酸化チタン顔料組成物。
実施形態10
前記低分子量単量体分散剤が、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ホスフェートカルボン酸、ホスフェートカルボン酸カルボン酸の塩、ヒドロキシルカルボン酸、ヒドロキシルカルボン酸の塩、およびそれらの組合せの群から選択される、実施形態9に記載の二酸化チタン顔料組成物。
実施形態11
前記ポリマー分散剤が、アミン、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸、ならびにアミン、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、およびリン酸の塩、ならびにそれらの組合せの群から選択される1つ以上の化合物の官能基を含むポリマー分子である、実施形態1に記載の二酸化チタン顔料組成物。
実施形態12
前記ポリマー分散剤が、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸コポリマー、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸コポリマーの塩、マレイン酸コポリマー、マレイン酸コポリマーの塩、ならびにそれらの組合せの群から選択される、実施形態11に記載の二酸化チタン顔料組成物。
実施形態13
前記多価アルコール成分が、アルキル直鎖ポリオール、アルキル分岐鎖ポリオール、およびそれらの組合せの群から選択される、実施形態1に記載の二酸化チタン顔料組成物。
実施形態14
前記多価アルコール成分が、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、グリセロール、ジグリセロール、ペンタエリスリトール、マンニトール、およびそれらの組合せの群から選択される、実施形態13に記載の二酸化チタン顔料組成物。
実施形態15
水性ラテックス塗料配合物中に使用するための二酸化チタン顔料組成物スラリーであって、
水性媒体と;
前記水性媒体中に分散された、複数の二酸化チタン粒子と;
前記二酸化チタン粒子および分散剤パッケージの合計重量を基準にして約5重量%を超えない量で前記水性媒体中に存在する、分散剤パッケージと
を含み、
前記分散剤パッケージが、
少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する有機化合物、無機アルカリ塩、およびそれらの組合せの群から選択される、少なくとも1つの不揮発性中和剤と;
低分子量単量体分散剤、ポリマー分散剤、およびそれらの組合せの群から選択される、少なくとも1つの分散剤成分と;
少なくとも1つの多価アルコール成分と
を含む、
二酸化チタン顔料組成物スラリー。
実施形態16
前記二酸化チタン粒子が、その表面上に堆積された少なくとも一つの無機コーティングを有し、前記無機コーティングが、金属酸化物コーティング、金属水酸化物コーティング、およびそれらの組合せの群から選択される、実施形態15に記載の二酸化チタン顔料組成物スラリー。
実施形態17
前記分散剤パッケージが、前記二酸化チタン粒子と前記分散剤パッケージとの合計重量を基準にして約2重量%を超えない量で前記顔料組成物中に存在する、実施形態15に記載の二酸化チタン顔料組成物スラリー。
実施形態18
少なくとも一つのアミン官能基および少なくとも一つのヒドロキシ官能基を有する前記有機化合物が、アルキルアミンヒドロキシル、芳香族アミンヒドロキシル、およびそれらの組合せの群から選択される、実施形態15に記載の二酸化チタン顔料組成物スラリー。
実施形態19
少なくとも一つのアミン官能基および少なくとも一つのヒドロキシ官能基を有する前記有機化合物が、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリエタノールアミン、N-ブチル-ジエタノールアミン、ジメチルグルカミン、およびそれらの組合せの群から選択される、実施形態18に記載の二酸化チタン顔料組成物スラリー。
実施形態20
前記無機アルカリ塩が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、およびそれらの組合せの群から選択される、実施形態15に記載の二酸化チタン顔料組成物スラリー。
実施形態21
前記低分子量単量体分散剤が、ホスフェート、カルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸、ホスホネート、ホスホネート系カルボン酸、およびそれらの組合せの群から選択される、実施形態15に記載の二酸化チタン顔料組成物スラリー。
実施形態22
前記低分子量単量体分散剤が、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ホスフェートカルボン酸、ホスフェートカルボン酸の塩、ヒドロキシルカルボン酸、ヒドロキシルカルボン酸の塩、およびそれらの組合せの群から選択される、実施形態21に記載の二酸化チタン顔料組成物スラリー。
実施形態23
前記ポリマー分散剤が、アミン、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、リン酸、ならびにアミン、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、およびリン酸の塩、ならびにそれらの組合せから選択される群から選択される1つ以上の化合物の官能基を含むポリマー分子である、実施形態15に記載の二酸化チタン顔料組成物スラリー。
実施形態24
前記ポリマー分散剤が、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸コポリマー、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸コポリマーの塩、マレイン酸コポリマー、マレイン酸コポリマーの塩、ならびにそれらの組合せの群から選択される、実施形態23に記載の二酸化チタン顔料組成物スラリー。
実施形態25
前記多価アルコール成分が、アルキル直鎖ポリオール、アルキル分岐鎖ポリオール、およびそれらの組合せの群から選択される、実施形態15記載の二酸化チタン顔料組成物スラリー。
実施形態26
前記多価アルコール成分が、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、グリセロール、ジグリセロール、ペンタエリスリトール、マンニトール、およびこれらの組合せの群から選択される、実施形態25に記載の二酸化チタン顔料組成物スラリー。
実施形態27
水性ラテックス塗料配合中に使用するための二酸化チタン顔料組成物を形成する方法であって、
複数の二酸化チタン粒子を提供することと;
分散剤パッケージであって、
少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する有機化合物、無機アルカリ塩、およびそれらの組合せの群から選択される、少なくとも1つの不揮発性中和剤;
低分子量単量体分散剤、ポリマー分散剤、およびそれらの組合せの群から選択される、少なくとも1つの分散剤成分;および
少なくとも1つの多価アルコール成分
を含む、分散剤パッケージを提供することと;
前記分散剤パッケージを、前記二酸化チタン粒子および前記分散剤パッケージの合計重量を基準にして約5重量%を超えない量で前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積させることと
を含む、
方法。
実施形態28
前記二酸化チタン粒子は未加工の二酸化チタン粒子であり、
前記方法は、前記分散剤パッケージを前記未加工の二酸化チタン粒子の表面上に堆積させることの前に、前記二酸化チタン粒子を所望の粒径に粉砕し、前記粉砕された二酸化チタン粒子を濾過および洗浄して、湿った顔料濾過ケーキを形成することをさらに含み、
前記分散剤パッケージを前記湿った顔料濾過ケーキと混合することによって、前記分散剤パッケージが前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積される、
実施形態27に記載の方法。
実施形態29
前記湿った顔料濾過ケーキを乾燥して乾燥顔料濾過ケーキを形成することと;
前記乾燥顔料濾過ケーキを粉砕して粉砕顔料濾過ケーキを形成することと;
前記粉砕濾過ケーキを蒸気微粉化して、前記二酸化チタン顔料組成物を形成することと
をさらに含む、実施形態28に記載の方法。
実施形態30
水性ラテックス塗料配合物中に使用するための二酸化チタン顔料組成物スラリーを形成する方法であって、
水性媒体を提供することと;
複数の二酸化チタン粒子を提供することと;
分散剤パッケージであって、
少なくとも1つのアミン官能基および少なくとも1つのヒドロキシ官能基を有する有機化合物、無機アルカリ塩、およびそれらの組合せの群から選択される、少なくとも1つの不揮発性中和剤;
低分子量単量体分散剤、ポリマー分散剤、およびそれらの組合せの群から選択される、少なくとも1つの分散剤成分;および
少なくとも1つの多価アルコール成分
を含む、分散剤パッケージを提供することと;
前記分散剤パッケージを、前記二酸化チタン粒子および前記分散剤パッケージの合計重量を基準にして約5重量%を超えない量で前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積させて二酸化チタン顔料組成物を形成することと;
前記二酸化チタン顔料組成物を前記水性媒体中に分散させることと
を含む、方法。
実施形態31
前記二酸化チタン粒子が未加工の二酸化チタン粒子であり、
前記方法は、前記分散剤パッケージを前記未加工の二酸化チタン粒子の表面上に堆積させることの前に、前記二酸化チタン粒子を所望の粒径に粉砕し、前記粉砕された二酸化チタン粒子を濾過および洗浄して、湿った顔料濾過ケーキを形成することをさらに含み、
前記分散剤パッケージを前記湿った顔料濾過ケーキと混合することによって、前記分散剤パッケージが前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積される、
実施形態30に記載の方法。
実施形態32
前記二酸化チタン顔料組成物を前記水性媒体中に分散させる前に、
前記湿った顔料濾過ケーキを乾燥して乾燥顔料濾過ケーキを形成することと;
前記乾燥顔料濾過ケーキを粉砕して粉砕顔料濾過ケーキを形成することと;
前記粉砕濾過ケーキを蒸気微粉化して前記二酸化チタン顔料組成物を形成することと、
をさらに含む、実施形態31に記載の方法。
以下の実施例は、本開示と合致する特定の実施形態を示すが、本開示や添付の特許請求の範囲を限定するものではない。特に記載のない限り、濃度およびパーセンテージは重量基準である。
【実施例】
【0050】
実施例1―混ぜ入れ特性試験
顔料組成物120.0 gをプラスチックカップ中の脱イオン水37.0 gに注ぎ入れ、次いで舌圧子を用いてカップ内の成分を手動で混合することによって、本明細書に開示された二酸化チタン顔料組成物の混ぜ入れ特性の迅速なチェックを行った。76.5%固形分のスラリーが得られた。
【0051】
実施例2―シリカおよびアルミナで処理された二酸化チタン濾過ケーキの調製
塩化物法により形成され、その結晶格子中に1.0%のアルミナを含有する微粒子二酸化チタン顔料を、0.075%のヘキサメタリン酸ナトリウム分散剤、および分散物のpHを9.5以上に調整するために十分な量の水酸化ナトリウムの存在下で水中に分散させ、固形分35%の水性分散物を得た。得られたスラリーを、Microtrac X 100粒度アナライザーによる決定で粒子の94%が0.63ミクロンより小さい粒度を有するようになるまで、サンディングミリング(4:1のジルコン砂対顔料重量比を使用)にかけた。
【0052】
得られたスラリーを固形分30%に希釈し、75℃に加熱し、次いで、20分かけて添加された3.0%のケイ酸ナトリウム(最終顔料の重量基準でシリカとして計算)で処理した。温度を75℃に維持しながら、濃硫酸のゆるやかな添加を介して、55分間にわたってスラリーのpHをpH 5.5までゆっくりと低下させた。スラリーを15分間消化した後、1.6%のアルミン酸ナトリウム(最終顔料の重量基準でアルミナとして計算)を10分間かけて添加した。濃硫酸の同時添加によりスラリーのpHを8.25~9.25に維持した。スラリーを75℃で15分間消化した。それから濃硫酸でスラリーのpHを6.2に調整した。熱いうちにスラリーを濾過した。得られた濾過物を60℃に予熱した水で洗浄した。シリカ/アルミナ処理を有する湿った二酸化チタン濾過ケーキが得られた。
【0053】
実施例3―標準的顔料調製
実施例2の湿った二酸化チタン濾過ケーキ(乾燥顔料1000 gに相当)を脱イオン水と混合して50%スラリーを得た。次に、10.61 gの33%トリメチロールプロパン(TMP)水溶液を加え、スラリーに完全に混合した。次いで、TMP処理二酸化チタンスラリーを115°Cのオーブン中で含水率1%未満に乾燥させた。乾燥顔料を粉砕して乾燥顔料粉末を得た。次いで、蒸気噴射器圧力を160 psiに、マイクロナイザーリング圧力を118 psiに設定して、1:2.5の蒸気対顔料重量比を用いて、乾燥顔料粉末を蒸気微粉化した。得られた顔料を、実施例1に記載のように混ぜ入れ特性試験に供した。ペーストを形成しただけであった。標準固形分76%でのスラリーは得ることができなかった。
【0054】
次に、実施例2の湿った二酸化チタン濾過ケーキを脱イオン水と混合して、50%スラリーを得た。TMP水溶液を加え、TiO2の重量基準で0.35 %の量でスラリーに完全に混合した。TMPスラリーを様々な部分に分割し、各部分は1000 gの二酸化チタンを含有した。次いで各部分を、種々のよく知られた分散剤、例えば、(i) Tamol 1124、(ii) Tamol 1254、(iii) Zephram PD7000、(iv) Zephram 3300B、(v) Supersperse 95、(vi) Nuosperse 2000、(vii) Borchi Gen 451、(viii) Borchi Gen 755、および (ix) ホスホノブタントリカルボン酸ナトリウム塩で処理した。これらの試料をすべて115℃のオーブン中で含水率1%未満に乾燥させた。次いで、乾燥顔料を粉砕して、乾燥顔料粉末を得た。次いで、蒸気噴射器圧力を160 psiに、マイクロナイザーリング圧力を118 psiに設定して、1:2.5の蒸気対顔料重量比を用いて、乾燥顔料粉末を蒸気微粉化した。得られた顔料を、実施例1に記載のように混ぜ入れ特性試験に供した。これら試料はすべて、低固形分含量(<60%)のスラリーは形成したが、より高い固形分含量ではペーストしか形成しなかった。ホスホノブタントリカルボン酸塩を用いた試料の場合を除いて、76%の標準固形分においてスラリーを得ることはできなかった。この試料ではスラリーは形成できたが、グリット含量が高かった。
【0055】
実施例4― 2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールを用いた混ぜ入れ顔料調製物
実施例2の湿った二酸化チタン濾過ケーキ(乾燥顔料1000 gに相当)をステンレス鋼製ポット中で秤量した。10.61 gの33% TMP水溶液、2.0 gのグリセロール、3.0 gの2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1.75 gの40% 2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸テトラナトリウム塩水溶液、および1.48 gのPat-Add 603(Patcham Ltd.のポリマー分散剤)を用いて化学物質混合物を調製した。この化学物質混合物をポット中の濾過ケーキと混合した。混合すると、濾過ケーキを流動化して、追加の水なしでスラリーを形成することができた。次いで、処理された二酸化チタンスラリーを115℃のオーブン中で含水率1%未満に乾燥させた。乾燥顔料を粉砕して乾燥顔料粉末を得た。次いで、蒸気噴射器圧力を160 psiに、マイクロナイザーリング圧力を118 psiに設定して、1:2.5の蒸気対顔料重量比を用いて、乾燥顔料粉末を、蒸気微粉化した。得られた顔料を、実施例1に記載されたように混ぜ入れ特性試験に供した。それは低グリットで固形分含量77%の液体スラリーを形成した。
【0056】
実施例5―トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いた混ぜ入れ顔料調製物
実施例2の湿った二酸化チタン濾過ケーキ(乾燥顔料1000 gに相当)をステンレススチール製ポット中で秤量した。10.61 gの33%トリメチロールプロパン水溶液、2.88 gのグリセロール、3.0 gのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、1.75 gの40% 2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸テトラナトリウム塩水溶液、および1.48 gのPat-Add 603(Patcham Ltd.のポリマー分散剤)を用いて化学物質混合物を調製した。この化学物質混合物をポット中の濾過ケーキと混合した。混合すると、濾過ケーキを流動化して、追加の水なしでスラリーを形成することができた。次いで、処理された二酸化チタンスラリーを115℃のオーブン中で含水率1%未満に乾燥させた。乾燥顔料を粉砕して乾燥顔料粉末を得た。次いで、蒸気噴射器圧力を160 psiに、マイクロナイザーリング圧力を118 psiに設定して、1:2.5の蒸気対顔料重量比を用いて、乾燥顔料粉末を蒸気微粉化した。得られた顔料を、実施例1に記載のように、混ぜ入れ特性試験に供した。それは固形分77%で低グリットの液体スラリーを形成した。
【0057】
実施例6―Genamin Gluco 50を用いた混ぜ入れ顔料調製物
実施例2の湿った二酸化チタン濾過ケーキ(1000 gの乾燥顔料に相当)をステンレス鋼ポット中で重量測定した。10.61 gの33%トリメチロールプロパン水溶液、2.0 gのグリセロール、10.0 gのGenamin Gluco 50、1.75 gの40% 2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸四ナトリウム塩水溶液、および1.48 gのPat-Add 603(Patcham Ltd.のポリマー分散剤)を用いて化学物質混合物を調製した。この化学物質混合物をポット中の濾過ケーキと混合した。混合すると、濾過ケーキを流動化して、追加の水なしでスラリーを形成することができた。次いで、処理された二酸化チタンスラリーを115℃のオーブン中で含水率1%未満に乾燥させた。次いで、乾燥顔料を粉砕して乾燥顔料粉末を得た。次いで、蒸気噴射器圧力を160 psiに、マイクロナイザーリング圧力を118 psiに設定して、1:2.5の蒸気対顔料重量比を用いて、乾燥顔料粉末を蒸気微粉化した。得られた顔料を、実施例1に記載のように、混ぜ入れ特性試験に供した。それは固形分77%で低グリットの液体スラリーを形成した。
【0058】
実施例7―炭酸ナトリウムを用いた混ぜ入れ顔料調製物
実施例2の湿った二酸化チタン濾過ケーキ(乾燥顔料1000 gに相当)をステンレススチール製ポット中で秤量した。10.61 gの33%トリメチロールプロパン水溶液、2.0 gのグリセロール、2.0 gの炭酸ナトリウム、1.75 gの40% 2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸テトラナトリウム塩水溶液、および1.48 gのPat-Add 603(Patcham Ltd.のポリマー分散剤)を用いて化学物質混合物を調製した。この化学物質混合物をポット中の濾過ケーキと混合した。混合すると、濾過ケーキを流動化して、余分な水を追加することなくスラリーを形成することができた。次いで、処理された二酸化チタンスラリーを115℃のオーブン中で含水率1%未満に乾燥させた。乾燥顔料を粉砕して乾燥顔料粉末を得た。次いで、蒸気噴射器圧力を160 psiに、マイクロナイザーリング圧力を118 psiに設定して、1:2.5の蒸気対顔料重量比を用いて、乾燥顔料粉末を蒸気微粉化した。得られた顔料を、実施例1に記載のように、混ぜ入れ特性試験に供した。それは低グリットで77%固形分の液体スラリーを形成した。
【0059】
実施例8―混ぜ入れスラリーの特性
8a.標準的顔料粉砕スラリー調製物
実施例3の標準的顔料を、親水性アクリル酸系分散剤およびヒドロキシルアミン系共分散剤を伴う脱イオン水中で湿潤させた後、カウルスブレードで10分間高速粉砕した。スラリーの特性を表1に示す。
【0060】
8b.混ぜ入れ顔料混ぜ入れスラリーの調製
実施例4~7の混ぜ入れ顔料を脱イオン水に添加し、プロペラブレードで撹拌した。スラリーの特性を表1に示す。
【0061】
8c.分散剤パッケージ化学物質の個々の成分を有するスラリー(本願で開示されクレームされている二酸化チタン顔料組成物の範囲内にない)の調製
本明細書に開示される二酸化チタン顔料組成物の混ぜ入れ特性は、分散剤パッケージの3つ全ての構成成分、すなわち中和剤、分散剤成分および多価アルコール成分の組合せにより得られる。これらの構成成分はいずれも個別には有効ではない。このことを確認するために、以下の実験を行った。
【0062】
実施例2の湿った二酸化チタン濾過ケーキを取り出し、それぞれ1000 gの乾燥顔料を含む二つの等しい部分に分けた。各部分はステンレス鋼ポット中で秤量され
、すなわち(i) 第1のポットには、10.61 gの33%トリメチロールプロパン水溶液および1.48 gのPat-Add 603(Patcham Ltd.のポリマー分散剤)の化学物質混合物を添加し
、(ii) 第2のポットには、10.61 gの33%トリメチロールプロパン水溶液および3.0 gの2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールの化学物質混合物を添加した。これら化学物質混合物をポット中の濾過ケーキと混合した。処理された二酸化チタン濾過ケーキをそれから115℃のオーブン中で含水率1%未満まで乾燥させた。乾燥顔料を粉砕して乾燥顔料粉末を得た。次いで、蒸気噴射器圧力を160 psiに、マイクロナイザーリング圧力を118 psiに設定して、1:2.5の蒸気対顔料重量比を用いて、乾燥顔料粉末を蒸気微粉化した。得られた顔料サンプルを実施例1に記載した
通り混ぜ入れ特性試験に供し、その結果を表1に示す。他の単独化学物質、Tamol 1124(親水性アクリル酸共重合体アンモニウム塩)、Pat-Add 603(ポリマー分散剤)、およびCublen 8514 GR(1-ヒドロキシエチリデンジホスホン酸ナトリウム塩型)も、別々にTMPと使用して混ぜ入れ顔料を作成し、混ぜ入れ特性について試験した。結果を表1に示す。
【表1】
【0063】
塗料中の混ぜ入れ顔料の試験
試験例2:光沢アクリル塗料配合物中の標準的顔料および混ぜ入れ顔料の試験
各試験において、試料および標準品は表に示すように同一の配合物に調製した。スラリーの実際の使用量は、固形分のパーセントに基づいて調整した。水も調整した。その後、レネタカード上に両方の塗料を並べて引延し(drawn down)した。光沢計を用いて、乾燥塗膜の光沢を、60度の角度での反射光から測定した。積分球分光光度計を用いて乾燥塗料のCIE L*値とb*値を測定し、これらの値を用いて着色強度と着色色調を計算した。
着色強度(Tint strength)は、下記のKubelka Munk式を使用して計算した。
【数1】
式中、
K=カーボンブラック顔料の吸光度
S=二酸化チタン顔料の散乱
着色色調(Tint Tone)は以下のように計算した。
【数2】
【表2】
【0064】
上記のデータは、混ぜ入れ顔料が顔料特性にいかなる悪影響も及ぼさないことを示している。光学特性の改善のみが観察された。
【0065】
試験例2:混ぜ入れ顔料による塗料の着色強度の調節
塗料製造の際に、低い着色強度(tint strength:TS)は、バッチが規格外になる主要因の一つである。着色力を高めるために、二酸化チタン顔料を後から添加する必要がある。しかしながら、従来の二酸化チタン顔料は、後添加の前に粉砕して顔料分散体を作らなければならない。この実施例は、本願で開示された二酸化チタン顔料組成物の、TS調節に関する利点を実証する。
【0066】
対照1は、100ガロンの高光沢ラテックス塗料配合物であった。対照2は対照1と同じだが、ただし対照1配合物の100ガロンに基づいて3ガロン余分の水を有し、過剰な水によって引き起こされる規格外の
塗料TSをシミュレートした。
乾燥状態の本開示の顔料組成物を
手で撹拌しながらスラリーを形成させ対照2塗料に直接添加してTSを増加させた。後添加された二酸化チタン顔料の重量は、配合物中の二酸化チタンの総重量に基づいて7%であった。混ぜ入れスラリーを手で混合する場合には、乾燥顔料組成物を手で舌圧子を用いて水中に混ぜ入れて、固形分顔料72%を達成した。結果を
下記表に示す。このデータは、本明細書に開示された二酸化チタン顔料組成物の後添加が、塗料の光学特性に悪影響を及ぼすことなく、着色強度を容易に調節できたことを示している。本明細書に開示された顔料組成物では、TS調節を行う際に、二酸化チタン顔料の粉砕プロセスが回避された。
【0067】
塗料への、混ぜ入れスラリーを手で混合する後添加、または乾燥顔料組成物の直接的な後添加のいずれかによる、対照2のTS調節。
【表3】
【0068】
したがって、当該顔料、組成物および方法は、言及された目的および利点、ならびにそれらに固有の目的および利点を達成するためによく適合される。上記に開示された特定の実施例は例示にすぎず、本発明の顔料、組成物および方法は、当業者には明らかな、本明細書の教示の利益を有する、異ってはいるが同等の態様で改変および実施され得る。従って、上に開示された特定の例示的な実施例は変更または修正され得ることは明らかであり、そのような変形は全て本発明の顔料、組成物および方法の範囲および趣旨の内にあると考えられる。顔料、組成物および方法が様々な成分または工程を「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」、あるいは「包含する(including)」という言葉で記述されているが、いくつかの例では、該顔料、組成物および方法は、その様々な成分または工程「から本質的に成る」または「から成る」こともあり得る。下限値および上限値を有する数値範囲が開示される場合はいつでも、その範囲内にあるあらゆる数およびあらゆる包含範囲が具体的に開示されている。特に、本明細書に開示されているすべての数値範囲(「約aから約bまで」あるいは同様に「およそaからbまで」あるいは同様に「およそa~bから」の形式のもの)は、より広い数値範囲に包含されるすべての数および範囲を示すものと理解されるべきである。また、クレーム中の用語は、特許権者により明示的かつ明確に別段の定義がされていない限り、それらの用語の平明な通常の意味を有する。