(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】電子部品付き樹脂筐体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 7/14 20060101AFI20221222BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20221222BHJP
B29C 33/14 20060101ALI20221222BHJP
H05K 1/03 20060101ALN20221222BHJP
【FI】
H05K7/14 K
B29C45/14
B29C33/14
H05K1/03 670
H05K1/03 610M
H05K1/03 610N
(21)【出願番号】P 2021056483
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2022-06-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】瀧西 徳勲
(72)【発明者】
【氏名】谷口 忠壮
(72)【発明者】
【氏名】川島 永嗣
(72)【発明者】
【氏名】仲川 元
(72)【発明者】
【氏名】吉田 剛規
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-304373(JP,A)
【文献】特開平4-39011(JP,A)
【文献】特開平3-42860(JP,A)
【文献】特許第7143046(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/14
B29C 45/14
B29C 33/14
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製
である、電気製品の筐体と、
前記筐体の内面に沿って配置されているベースフィルムと、前記ベースフィルムの少なくとも前記筐体側とは反対側の面に形成されている回路パターン層と、前記ベースフィルムの前記筐体側とは反対側の面に
のみ前記回路パターン層と接続されて実装されている電子部品と、前記ベースフィルムの前記筐体側に前記電子部品と対向し
かつ前記ベースフィルムの前記電子部品付近と重複するように形成されている補強層とを有し、前記電子部品が前記筐体内に埋没することなく前記筐体に一体化している電子部品実装フィルムとを備えている
電子部品付き樹脂筐体であって、
前記電子部品付き樹脂筐体がインサート成形物である、電子部品付き樹脂筐体。
【請求項2】
前記補強層が、前記ベースフィルムに貼り合わせられた補強板からなる、請求項1の電子部品付き樹脂筐体。
【請求項3】
前記補強板の材料が、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、金属のいずれかである、請求項2の電子部品付き樹脂筐体。
【請求項4】
前記補強層が、UV硬化性樹脂または熱硬化性樹脂の硬化塗膜からなる、請求項1の電子部品付き樹脂筐体。
【請求項5】
前記補強層が、層内部にメッシュ部材を含む、請求項2~4のいずれかの電子部品付き樹脂筐体。
【請求項6】
前記筐体から前記ベースフィルムまでの積層体を貫通する開口部を有しており、
前記補強層における前記開口部を構成する貫通穴と少なくとも重複するように、前記補強層内に前記メッシュ部材が存在する、請求項5の電子部品付き樹脂筐体。
【請求項7】
前記補強層の形成領域が、その形成領域内に前記電子部品の実装領域をすべて含む、請求項1~6のいずれかの電子部品付き樹脂筐体。
【請求項8】
前記補強層の形成領域が、前記電子部品の実装領域の一部である、請求項1~6のいずれかの電子部品付き樹脂筐体。
【請求項9】
ベースフィルムと、前記ベースフィルムの少なくとも一方の面に形成されている回路パターン層と、前記ベースフィルムの一方の面において前記回路パターン層と接続されて実装されている電子部品と、前記ベースフィルムの他方の面に前記電子部品と対向して形成されている補強層とを有している電子部品実装フィルムを用意し、
前記電子部品実装フィルムの前記電子部品を実装した面が第1型に面し、かつ、前記電子部品が前記第1型のポケットに収まるように、前記電子部品実装フィルムを前記第1型にセットし、
前記第1型と第2型とを型締めして、前記第1型および前記電子部品実装フィルムと前記第2型との間にキャビティを形成し、
前記キャビティに溶融樹脂を射出して筐体を成形するとともに、前記電子部品が前記筐体内に埋没していない状態で、前記筐体の内面に沿って前記電子部品実装フィルムを一体させる、電子部品付き樹脂筐体の製造方法。
【請求項10】
前記補強層の形成領域が、前記ポケットの形成領域をすべて含む、請求項9の電子部品付き樹脂筐体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気製品を小型化・薄型化し、アッセンブリを容易にするとともに、電子部品の破損や剥離を防止することのできる、電子部品付き樹脂筐体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気製品は、その筐体の内部に各種の電子部品が基板に実装されて内蔵されている。例えば、
図8は、従来技術の筐体と電子部品の配置の一例を示す部分拡大断面図である。
図8に示す電気製品はスマートウオッチであり、電子部品としてスピーカー53が内蔵されている。樹脂製の筐体50の内部には、電子部品実装基板55が筐体50から離れて固定されている。電子部品実装基板55は、ガラスエポキシなどからなる基板51の筐体50側の面に銅箔などをパターニングした回路パターン層52が形成され、回路パターン層52にスピーカー53が電気的に接続されている。また。筐体50のスピーカー53と重なる部分には、スピーカー穴50が設けられている。さらに筐体50の内面50aには、スピーカー53を塵や埃から保護するメッシュ部材54が粘着剤56にて貼合されている。
【0003】
しかし、電気製品の小型化・薄型化のニーズは常にあり、電子部品を収容する収容空間をさらに小さくすることが望まれる。また、電気製品のアッセンブリ時に、電子部品実装基板を筐体の内部に固定するネジ止めなどの工程が煩雑である。さらに、製品の外部空間に直接作用する電子部品(例えば、上記したスピーカー)の場合には、その機能効果を高めるために、電子部品を出来るだけ筐体に近づけて筐体の外面との距離を減らすことも望まれる。
【0004】
そこで、本出願人は、2020年12月7日出願の特願2020-202467にて新たな提案を行っている。
上記出願には、樹脂製の筐体と下記のような電子部品実装フィルムとを一体化している電子部品付き樹脂筐体が記載されている。すなわち、電子部品実装フィルムは、筐体の内面に沿って配置されているベースフィルムと、ベースフィルムの少なくとも筐体側とは反対側の面に形成されている回路パターン層と、ベースフィルムの筐体側とは反対側の面に回路パターン層と接続されて実装されている電子部品とを有する構造である。
筐体と電子部品実装フィルムとを一体化するには、所謂インサート成形を用いる。具体的には、電子部品実装フィルムの電子部品を実装した面が第1型に面し、かつ、電子部品が第1型のポケットに収納されるように、電子部品実装フィルムを第1型にセットし、次いで第1型と第2型とを型締めし、第1型および電子部品実装フィルムと第2型との間にキャビティを形成した後、最後にキャビティに溶融樹脂を射出して筐体を成形する。
このような構成とすることより、筐体によって電子部品をしっかりと固定できるので、別途基板が不要となり、電子部品を収容する収容空間が小さくて済む。したがって、電気製品を小型化・薄型化できる。また、ネジ止めなどの煩雑な工程も不要となるので、アッセンブリも容易である。さらに、電子部品と筐体の外面との距離を減らして、電気製品の外部空間に電子部品が直接作用する機能効果を高めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記したように電子部品が第1型のポケットに収納された状態で電子部品実装フィルムのインサート成形を行なう場合、溶融樹脂の樹脂圧によって、電子部品の裏面側が破損し、電子部品内に樹脂が流入することがある。
例えば、
図10に示すように、電子部品33が基板に複数のパーツを実装し、これらの複数のパーツをアルミニウムなどからなるカバー338で覆っているものの場合、電子部品33の表面側はカバー338で保護されているが、電子部品33の裏面側はカバー338で保護されていないので、裏面側の強度が低い。
図10中、331はМEМSチップ、332はICチップ、333は振動膜、334はセラミック基板、335は音孔、336は端子電極、337ははんだボールである。
また、電子部品実装フィルムの電子部品が金型のポケットに収納される部分のベースフィルムは、キャビティ内壁によって支えられていないため、溶融樹脂の熱圧によって電子部品を実装した面がうねり、歪み、凹凸などの変形をすることがある。その結果、ベースフィルムや回路パターン層からの電子部品の剥離も発生することもある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決し、電気製品を小型化・薄型化し、アッセンブリを容易にするとともに、電子部品の破損や剥離を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0008】
本発明の電子部品付き樹脂筐体は、筐体と電子部品実装フィルムとを備える。筐体は、樹脂製である。電子部品実装フィルムは、筐体の内面に沿って配置されているベースフィルムと、ベースフィルムの少なくとも筐体側とは反対側の面に形成されている回路パターン層と、ベースフィルムの筐体側とは反対側の面に回路パターン層と接続されて実装されている電子部品と、ベースフィルムの筐体側に電子部品と対向して形成されている補強層とを有し、電子部品が筐体内に埋没することなく筐体に一体化している。
【0009】
このような構成を備える電子部品付き樹脂筐体は、筐体の内面に沿って電子部品実装フィルムが一体化している。これにより、筐体によって電子部品をしっかりと固定できるので、別途基板が不要となり、電子部品を収容する収容空間が小さくて済む。したがって、電気製品を小型化・薄型化できる。また、ネジ止めなどの煩雑な工程も不要となるので、アッセンブリも容易である。さらに、電子部品と筐体の外面との距離を減らして、電気製品の外部空間に電子部品が直接作用する機能効果を高めることができる。
【0010】
また、電子部品付き樹脂筐体の電子部品は、筐体内に埋まらずに一体化している。これにより、筐体の電子部品実装フィルムとの一体成形時に、電子部品が溶融樹脂の樹脂圧を側面方向から受けることがなく、電子部品の位置ずれや破損を防ぐことができる。また、電子部品実装フィルムのベースフィルムに設けられた回路パターン層が電子部品の側面に沿うことによる屈曲をしないので、回路パターン層の断線を抑制できる。また、電子部品のリペアも容易である。
【0011】
さらに、ベースフィルムの筐体側に電子部品と対向して形成されている補強層を有しているので、電子部品付き樹脂筐体は、補強層が電子部品実装フィルムの電子部品付近と重複している。これにより、筐体の電子部品実装フィルムとの一体成形時に、溶融樹脂の樹脂圧によって電子部品の裏面側が破損するのを防ぐことができる。
また、補強層があることにより、ベースフィルムの電子部品を実装した面が溶融樹脂の熱圧によってうねり、歪み、凹凸などの変形をすることがなく、ベースフィルムや回路パターン層からの電子部品の剥離も防ぐこともできる。
【0012】
1つの態様として、補強層が、ベースフィルムに貼り合わせられた補強板からなると好適である。とくに、補強板の材料は、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、金属のいずれかが好適である。
上記構成により、補強層の強度が増すため、電子部品の破損や剥離を防ぐ効果を向上させることができる。
【0013】
また、1つの態様として、補強層が、UV硬化性樹脂または熱硬化性樹脂の硬化塗膜からなると好適である。
上記構成によっても、補強層の強度が増すため、電子部品の破損や剥離を防ぐ効果を得られる。塗膜であるので、補強層の形成やパターン化が容易である。
【0014】
また、1つの態様として、補強層が、層内部にメッシュ部材を含むと好適である。
上記構成により、電磁波シールドなどの電気的機能を付与するメッシュ部材を別途設けることなく、補強層と兼用できる。また、メッシュ部材が芯材としての働きを発揮して補強層の強度を増すこともできる。
【0015】
また、1つの態様として、筐体からベースフィルムまでを貫通する開口部を有しており、補強層における開口部を構成する貫通穴と少なくとも重複するように、補強層内にメッシュ部材が存在すると好適である。
上記構成により、スピーカー穴やマイク穴などの開口部を保護するメッシュ部材を別途設けることなく、補強層と兼用できる。また、この場合もメッシュ部材が芯材としての働きを発揮して補強層の強度を増すことができる。
【0016】
また、1つの態様として、補強層の形成領域が、その形成領域内に前記電子部品の実装領域をすべて含むと好適である。
上記構成により、補強層の形成領域が広いので、電子部品のどの部分においても漏れなく、電子部品の破損や剥離を防ぐことができる。
【0017】
また、1つの態様として、補強層の形成領域が、電子部品の実装領域の一部であると好適である。
上記構成により、電子部品の耐圧性の低い部分だけをピンポイントで補強し、電子部品の破損や剥離を防ぐことができる。この場合、補強層の平面視した形成面積を小さくすることができる、すなわち補強層の側面面積を小さくすることができるので、溶融樹脂の樹脂圧による補強層の位置ズレや溶融樹脂300の充填不良を防ぐこともできる。また、補強層の材料使用量を減らすことができるので、コストメリットもある。
【0018】
本発明の電子部品付き樹脂筐体の製造方法は、前出の電子部品実装フィルムを用意し、電子部品実装フィルムを第1型にセットし、第1型と第2型とを型締めしてキャビティを形成し、キャビティに溶融樹脂を射出して筐体を成形するとともに、筐体の内面に沿って電子部品実装フィルムを一体させる。電子部品実装フィルムは、第1型へのセット時に、電子部品を実装した面が第1型に面している。第1型は、ポケットを有する。第1型のポケットは、電子部品実装フィルムのセット時に、電子部品を収納する。キャビティは、第1型および電子部品実装フィルムと第2型との間に形成される。
このような構成を備える電子部品付き樹脂筐体の製造方法は、筐体の内面に沿って電子部品実装フィルムを一体化する。これにより、筐体によって電子部品をしっかりと固定できるので、別途基板が不要となり、電子部品を収容する収容空間が小さくて済む。したがって、電気製品を小型化・薄型化できる。また、ネジ止めなどの煩雑な工程も不要となるので、アッセンブリも容易である。さらに、電子部品と筐体の外面との距離を減らして、電気製品の外部空間に電子部品が直接作用する効果を高めることができる。
【0019】
また、電子部品付き樹脂筐体の製造方法は、電子部品が第1型のポケットに収納された状態で一体成形が行なわれる。これにより、電子部品が溶融樹脂の樹脂圧を側面方向から受けることがなく、電子部品の位置ずれや破損を防ぐことができる。また、電子部品のリペアも容易である。
【0020】
また、1つの態様として、補強層の形成領域が、ポケットの形成領域をすべて含むと好適である。
上記構成により、補強層がポケットの周囲を構成するキャビティ内壁で支持され、溶融樹脂の樹脂圧に対するベースフィルムのポケット域全体の平坦性を容易に維持するため、電子部品の破損や剥離を防ぐ効果を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電子部品付き樹脂筐体は、電気製品を小型化・薄型化し、アッセンブリを容易にするとともに、電子部品の破損や剥離を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体が適用されるスマートウオッチの一例を示す斜視図。
【
図2】第1実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体の分解斜視図。
【
図3】第1実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体の部分拡大断面図(
図1のA-A線断面)。
【
図4】第1実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体の補強層の一例を示す模式図。
【
図5】電子部品実装フィルムを第1型にセットする前の状態の一例を示す部分拡大断面図。
【
図6】電子部品実装フィルムを第1型にセットした後の状態の一例を示す部分拡大断面図。
【
図7】溶融樹脂をキャビティへ射出している状態の一例を示す部分拡大断面図。
【
図8】従来技術に係る筐体と電子部品の配置の一例を示す部分拡大断面図。
【
図9】電子部品を収納するポケットが無い場合を示す部分拡大断面図。
【
図11】第2実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体の部分拡大断面図
【
図12】第3実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体の部分拡大断面図
【
図13】第3実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体の補強層およびメッシュ部材の積層状態の一例を示す模式図。
【
図14】第4実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体の部分拡大断面図
【
図15】変形例に係る電子部品付き樹脂筐体の部分拡大断面図
【
図16】変形例に係る別の電子部品付き樹脂筐体の部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体およびその製造方法について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体が取り付けられているスマートウオッチの一例を示す斜視図である。
図1に示されているスマートウオッチ60は、大画面搭載で小型化・薄型化のニーズが常にあり、本発明の適用される電気製品に適したものである。なお、本実施形態ではスマートウオッチ60が本発明の適用される電気製品の一例であるが、本発明が適用される電気製品はスマートウオッチ60に限られるものではない。
スマートウオッチ60の本体は、表示パネル65の表示面とは反対側の面および側面を覆う形で配される筐体を備えている。
図1に示す例では、底面部を構成する筐体20Aと、C字状の枠を構成する筐体20Bと、筐体20Bの両端間に設けられて枠を構成しスピーカーを備えた電子部品付き樹脂筐体10の3つの筐体を組み合わせている。このうちスピーカーを備えた電子部品付き樹脂筐体10が、本発明の第1実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体である。
【0024】
(1)電子部品付き樹脂筐体10の概要
電子部品付き樹脂筐体10は、インサート成形によって成形されるものであって、
図2および
図3に示されているように、熱可塑性樹脂からなる筐体20Cと、電子部品実装フィルム30とが完全に一体化されたスマートウオッチ60の部品である。
【0025】
(2)筐体20C
筐体20Cは、細長い上面部20C1と細長い側面部20C2とを有する断面L字状の樹脂製成形品である。側面部20C2は、長手方向中央付付近に貫通したスピーカー穴20CHを有している。
【0026】
筐体20Cの材料としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂若しくはAS樹脂などの汎用の熱可塑性樹脂が好適に用いられる。それ以外に、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル系樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、エンジニアリング樹脂(ポリスルホンフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート系樹脂など)、ポリアミド系樹脂、又はウレタン系、ポリエステル系若しくはスチレン系のエラストマーを成形体21の材料として使用することができる。また、天然ゴムや合成ゴムを成形体21の材料として用いることができる。筐体20Cには、ガラス繊維や無機フィラーなどの補強材を添加することもできる。
また、筐体20Cは着色されていてもよいし、筐体20Cの外面が加飾層で被覆されていてもよい。また、その両方であってもよい。
【0027】
(3)電子部品実装フィルム30
図2および
図3には、電子部品実装フィルム30の構造が示されている。
電子部品実装フィルム30は、ベースフィルム31と、回路パターン層32と、スピーカー33(電子部品の例)と、補強層36とを備えている。
【0028】
(3-1)ベースフィルム31
ベースフィルム31は、
図3に示すように、筐体20Cの側面部20C2に沿って内面20Ca側に配置されている。
ベースフィルム31が配置される筐体20Cの側面部20C2にはスピーカー穴20CHが設けられているが、ベースフィルム31と筐体20Cのスピーカー穴20CHとの間にはメッシュ部材36Мが介在するため、ベースフィルム31はスピーカー穴20CHから露出しない。したがって、ベースフィルム31は透明・不透明を問わない。
ベースフィルム31の材料は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、スチレン樹脂若しくはABS樹脂からなる樹脂フィルム、アクリル樹脂とABS樹脂の多層フィルム、又はアクリル樹脂とポリカーボネート樹脂の多層フィルムから選択される。ベースフィルム31の厚さは、例えば15μm~400μmの範囲から選択される。このように撓みやすい厚みであるので、この状態で筐体20Cの内部に配置するだけでは位置が安定しない。電子部品実装フィルム30を筐体20Cと一体化することで電子部品33をしっかり固定できる。
【0029】
(3-2)回路パターン層32
回路パターン層32は、
図3に示すように、ベースフィルム31の筐体20C側とは反対側の面に形成される。
回路パターン層32は、銅箔をエッチングして形成されるか、導電性インキを厚膜印刷で印刷して形成される。回路パターン層32の厚さは、例えば1μm~30μmである。導電性インキは、導電性フィラーとバインダーとを含んでいる。導電性フィラーとしては、例えば、導電性材料の粉末や非導電性粒子の表面に金属をメッキした導電性粉末が使用できる。導電性材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、カーボンおよびグラファイトが挙げられる。金属をメッキした導電性粉末としては、例えば、ウレタン粒子やシリカ粒子の表面に銅、ニッケルあるいは銀をメッキした導電性粉末が挙げられる。また、バインダーとしては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル・マレイン酸共重合樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂にロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂および石油樹脂等の熱により粘着性を発現するタッキファイヤーを配合して使用することができる。このインキに用いられる溶剤は、例えば、厚膜印刷に適合するものである。厚膜印刷として、例えば、スクリーン印刷およびインクジェット印刷が挙げられる。バインダーには、熱可塑性樹脂以外にも、例えば、エポキシ系、ウレタン系あるいはアクリル系の熱硬化性樹脂や紫外線硬化型樹脂を用いることも可能である。なお、バインダーに熱硬化性樹脂や紫外線硬化型樹脂を用いていても、回路パターン層32に分散された導電性フィラーの割合が多いため、補強層36のような強度は得られない。回路パターン層32回路パターン層32は、以上のような材料および厚みで構成されるので、屈曲することで断線が生じやすい。
【0030】
(3-3)スピーカー33
スピーカー33は、
図3に示すように、ベースフィルム31の筐体20C側とは反対側の面に回路パターン層32と接続されて実装されている。
スピーカー33の音波発生方向は、筐体20C側である。そのため、ベースフィルム31には、背後のスピーカー33からの音波を透過しやすいように貫通穴31Hが設けられている。
スピーカー33は、モバイル機器などに搭載される小型で薄型のスピーカーを用いる。また、スピーカー33は、図示しない半田付け、導電性接着剤ペーストの塗布硬化または異方性導電性ペーストでの圧着にて実装される。
【0031】
(3-4)補強層36
補強層36は、
図3に示すように、ベースフィルム31の筐体20C側に電子部品33と対向して形成されている。本実施形態では、補強層36の形成領域は、その形成領域内にスピーカー33の実装領域をすべて含んでいる。
【0032】
また、本実施形態では、補強層36は、ベースフィルム31に貼り合わせられた補強板からなる。補強板の材料は、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ガラスエポキシ樹脂、ABS樹脂 、PC/ABSアロイ、金属などを使用することができる。これらの中でも、強度の点から、とくにポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、金属が好ましい。さらに、補強層36の強度を維持しつつも、溶融樹脂300の熱によって補強層36を筐体20Cと密着して一体化させることができる点で、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。
【0033】
補強板をベースフィルム31の筐体20C側に形成する手段としては、図示しない接着層を用いる。
接着層としては接着剤や接着フィルムを用いることができる。接着剤としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エチレンブチルアルコール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などを用いることができる。接着層などの形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法や、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法を採用することができる。また、接着層として、接着フィルムをベースフィルム31の筐体20C側にラミネートして用いることもできる。接着フィルムは、たとえば未延伸ポリプロピレンフィルムを用い、ドライラミネート方式にて積層することができる。
【0034】
本実施形態の電子部品付き樹脂筐体1Cは、電子部品実装フィルム30の最背面にスピーカー33を配置するため、筐体20Cからベースフィルム31までの積層体を貫通する開口部を有している。したがって、この開口部を備えるために、筐体20Cのスピーカー穴20CHおよびベースフィルム21の貫通穴31Hとともに、補強層36にも貫通穴36Hが設けられている(
図3,
図4参照)。
【0035】
補強板の板厚は20μm以上で筐体20Cの肉厚の二分の一以下が好ましい。補強板の板厚が筐体20Cの二分の一を超えると、溶融樹脂300の樹脂圧を受ける補強板の側面面積が大きいため、補強板の位置ズレや溶融樹脂300の充填不良が起こる。補強板の板厚の膜厚が20μmに満たないと、補強板が十分な強度を得られず、溶融樹脂300の樹脂圧によってスピーカー33の構造部材内にベースフィルム31を介して溶融樹脂300が侵入する。
【0036】
(3-5)メッシュ部材36M
メッシュ部材36Mは、本実施形態では、補強層36の層内部に含まれるシートである(
図3、
図4参照)。
図4中、
図4(a)はメッシュ部材36Mを含む補強層36の平面図であり、
図4(b)はその断面図(
図4(a)のB-B線断面)である。また、メッシュ部材36Mは、補強層36の貫通穴36Hと少なくとも重複するように、補強層36内に存在する。
図3に示すように、筐体20Cのスピーカー穴20CHを覆うように配置されているのが、美観の点から好ましい。
メッシュ部材36Mは、スピーカー穴2CHおよび貫通穴31H,36Hを通じて、スマートウオッチ60のスピーカー33に埃や塵などが入り込んでしまうのを抑制する。
メッシュ部材36Mの材料は、ニッケル、銅、鉄、アルミニウム、チタンなどの金属およびその合金(例えば、モネル、鋼、黄銅、丹銅、リン青銅、ハステロイ(米ヘインズ社商標)、インコネル(スペシャルメタルズ社商標)、ニクロムなど)の他、アクリル樹脂、ナイロン(デュポン社商標)、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、テフロン(デュポン社登録商標)などの樹脂を用いることができる。また、メッシュ部材36Mは織物であってもよい。なお、メッシュ部材36Mの孔は、音波を不要に遮らなければ孔の形状、配列は問わない。例えば、複数の四角形などの多角形状や円形状の孔が配列されていてもよいし、複数のスリット状の孔であってもよい。さらに、防水のために、撥水加工がされていてもよい。
【0037】
(4)電子部品付き樹脂筐体10の製造
電子部品付き樹脂筐体10の製造方法の一例について
図5~
図7を用いて説明する。
【0038】
まず、
図5に示すように、電子部品実装フィルム30は、筐体20Cを成形するための第1型100と第2型200(図示せず)との間に挿入される。このとき、電子部品実装フィルム30は、スピーカー33を実装した面が第1型100に面している。
【0039】
第1型100には、スピーカー33を収納するするポケット110が設けられている。これにより、スピーカー33を成形後に筐体20C内に埋まらせないようにすることができる。仮に第1型100にポケット110が設けられていない平滑面の場合、スピーカー33のベースフィルム31側とは反対側の面がその周囲と面一となるように成形される(
図9参照)。すなわち、スピーカー33が筐体20C内に埋まる。この場合、スピーカー33が溶融樹脂300の樹脂圧を側面方向から受け、スピーカー33の位置ずれや破損が生じるおそれがある。また、電子部品実装フィルム30のベースフィルム31および回路パターン層32がスピーカー33の厚みHの分だけ屈曲することになるため、回路パターン層32の断線するおそれが生じる。さらに、スピーカー33が筐体20C内に埋まると、スピーカー33のリペアも出来ない。
【0040】
第1型100のポケット110のサイズは、ポケット110に収納されるスピーカー33のサイズよりも大きめに形成される。ポケット110の寸法をスピーカー33と同一サイズにすると、スピーカー33をポケット110に嵌め込み難く、また成形後にスピーカー33をポケット110から取り出し難いからである。ポケット110の寸法をスピーカー33と同一サイズのまま強引に嵌め込んだり、強引に取り出したりすれば、スピーカー33が破損するおそれがある。さらに、電子部品付き樹脂筐体10におけるスピーカー33の実装には、水平方向および垂直方向で微小な実装誤差もあることもポケット110のサイズを大きめにする理由のひとつである。
【0041】
また、第1型100の電子部品実装フィルム30と対向する面には、複数の吸引孔120が設けられている。これにより、真空吸引を行なうことで、電子部品実装フィルム30を第1型100に吸着固定できる。
【0042】
その後、
図6に示すように、電子部品実装フィルム30は、第1型100にセットされる。このとき、スピーカー33が、第1型100のポケット110内に収納される。
【0043】
図7には、第1型100と第2型200が閉じた状態が示されている。
第1型100および電子部品実装フィルム30と第2型200との間にキャビティ250が形成されている。第2型200には、電子部品実装フィルム30のメッシュ部材36aに対向して突出したピン210が設けられている。ピン210は、成形品20Cのスピーカー穴20CHを形成するためのものである。
【0044】
スピーカー33が補強層36で覆われた状態で、溶融樹脂300がキャビティ250に射出されて(
図7参照)、筐体20Cが成形される。そして、溶融樹脂300が冷えて固まるときに、溶融樹脂300が固まって成形される筐体20Cと電子部品実装フィルム30とが完全に一体化する。溶融樹脂300の材料は、前述した筐体20Cの材料の通りであり、融点以上の温度で溶融した状態で射出される。
【0045】
次に、第1型100と第2型200の型開きが行なわれる。電子部品付き樹脂筐体10は、例えば、第2型200より突き出されるエジェクタピン(図示せず)によって第2型200から外され、進入した取り出しロボット(図示せず)に保持されて取り出される。
【0046】
(6)変形例
(6-1)変形例1
上記第1実施形態では、補強層36の形成領域は、その形成領域内にスピーカー33の実装領域をすべて含んでいる場合を図示して説明したが、補強層36の形成領域はこれに限定されない。例えば、
図15に示すように、補強層36の形成領域が、スピーカー33の実装領域の一部であってもよい。
【0047】
(6-2)変形例2
上記第1実施形態では、回路パターン層32は、ベースフィルム31の筐体20C側とは反対側の面のみに形成されている場合を図示して説明したが、回路パターン層32の形成の仕方はこれに限定されない。例えば、回路パターン層32は、ベースフィルム31の両面に形成されていてもよい。
【0048】
(6-3)変形例3
上記第1実施形態では、回路パターン層32は、ベースフィルム31の筐体20C側とは反対側の面のみに形成されている場合を図示して説明したが、回路パターン層32の形成の仕方はこれに限定されない。例えば、回路パターン層32は、ベースフィルム31の両面に形成されていてもよい。
なお、ベースフィルム31の筐体20C側とは反対側の面に形成され、スピーカー33と電気的に接続される回路パターン層32が、スルーホールを介してベースフィルム31の筐体20C側の面まで引き回されていてもよい。このとき、ベースフィルム31の筐体20C側とは反対側の面においては、回路パターン層32は、最短の場合はスピーカー33を実装するためのランドだけで構成されていてもよい。
【0049】
(6-4)変形例4
上記第1実施形態では、電子部品実装フィルム30は、ベースフィルム31の筐体20C側の面が筐体20Cと直接一体化している場合を図示して説明したが、電子部品実装フィルム30と筐体20Cとの一体化はこれに限定されない。例えば、電子部品実装フィルム30と筐体20Cとの間に、接着層が介在していてもよい。
接着層としては接着剤や接着フィルムを用いることができる。接着剤の材料や接着層などの形成方法は、補強板の貼合で用いたものと同様である。
【0050】
(6-5)変形例5
上記第1実施形態では、電子部品実装フィルム30は、ベースフィルム31の筐体20C側とは反対側の面に形成されている回路パターン層32が露出している場合を図示して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ベースフィルム31の筐体20C側とは反対側の面に形成されている回路パターン層32が、少なくともスピーカー33を実装するために必要な領域を除いて、カバーフィルムで覆われていてもよい。なお、スピーカー33を実装するために必要は領域とは、スピーカー33およびその周辺でもよいし、スピーカー33との接続領域だけでもよい。また、スピーカー33を実装するために必要な領域以外にも、例えば、他の端子部も露出させることができる。いずれにしろ、カバーフィルムは、スピーカー33を実装するために必要な領域を除いて覆うので、本発明の補強層36の代わりは出来ない。
変形例5において、カバーフィルムは、回路パターン層32の一部を除いて回路パターン層32が外部に露出しないように接着剤により回路パターン層32を覆って貼着されている。カバーフィルムは、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリルフィルムなどで形成されている。
また、回路パターン層32がベースフィルム31の両面に形成されていている場合には、筐体20C側の回路パターン層32が、カバーフィルムで覆われていてもよい。また、両面に形成されている回路パターン層32のいずれもが、カバーフィルムで覆われていてもよい。
なお、筐体20C側の回路パターン層32をカバーフィルムで覆う場合、筐体20Cとの一体化を強固にするために、補強板の貼合で用いた接着層を設けるのが好ましい。
【0051】
(6-6)変形例6
上記第1実施形態では、筐体20Cと電子部品実装フィルム30とが完全に一体化された場合を例にして説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、電子部品実装フィルム30のスピーカー33が筐体20Cのスピーカー穴20CHに対して正確な位置で固定されるのであれば、電子部品実装フィルム30の一部が筐体20Cと一体化していなくてもよい。
一例として、電子部品実装フィルム30の一部が、回路パターン層32を有して筐体20Cの内面20Caから離れて自由となっていてもよい。すなわち、電子部品実装フィルム30の一部を、FPC(Flexible printed circuits)として機能させることもできる。この場合、電子部品付き樹脂筐体10の製造時に、第1型100に電子部品実装フィルム30の筐体20Cから自由となる部分を収納させるようにする。
【0052】
(6-7)変形例7
上記第1実施形態では、電子部品付き樹脂筐体10に電子部品としてスピーカー33を実装する場合について説明したが、実装する電子部品はこれに限定されない。例えば、電子部品としてマイクを実装してもよい。この場合、筐体20Cのスピーカー穴20CHは、マイク穴となる。
【0053】
(6-8)変形例8
上記第1実施形態では、電子部品付き樹脂筐体10が組み込まれた電気製品はスマートウオッチ60であったが、本発明が適用される電気製品はスマートウオッチ60に限られるものではない。例えば、スマートグラス、ノートパソコン、タブレット端末、スマートフォン、ゲーム機、その他の各種家電製品や自動車内装品などであってもよい。したがって、筐体20Cの形状も第1実施形態の形状に限定されない。
【0054】
(6-9)変形例9
上記第1実施形態では、筐体20Cと電子部品実装フィルム30とを一体化する製造工程において、スピーカー33のみが、第1型100のポケット110内に収納される場合について説明したが、これに限定されない。例えば、前述の特願2020-202467にも記載の通り、スピーカー33が、衝撃吸収層40とともに第1型100のポケット110を満たすように、ポケット110内に収納されていてもよい(
図16参照)。
【0055】
衝撃吸収層40は、第1型100と第2型200の型締め時に、電子部品実装フィルム30の回路パターン層32が電子部品の実装された部分の周囲で非屈曲を維持できるように、自らが形状変化するものである。
衝撃吸収層40の材料は、例えば、1)優れた耐熱性とクッション性を有する材料、2)ホットメルト材料などを用いることができる。
【0056】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体について、
図11を用いて説明する。第2実施形態は、補強層36が補強板ではなく、硬化塗膜からなる点で第1実施形態と異なる。
【0057】
第2実施形態において、補強層36を構成する硬化塗膜の材料としては、UV硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を用いることができる。このような樹脂としては、ウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂あるいはアクリル系樹脂や、これらの樹脂にイソシアネートなどの添加剤を加えた樹脂などを挙げることができる。
塗布方法としては、ポッティング法のほか、ディスペンサー法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、パッド印刷、インクジェット法、オフセット印刷法などの通常の印刷法や、グラビアコート法、ロールコート法、ダイコート法などが挙げられる。硬化塗膜の膜厚は50μm以上で筐体20Cの肉厚の二分の一以下が好ましい。硬化塗膜の膜厚が筐体20Cの二分の一を超えると、溶融樹脂300の樹脂圧を受ける硬化塗膜の側面面積が大きいため、補強板の位置ズレや溶融樹脂300の充填不良が起こる。硬化塗膜の膜厚が50μmに満たないと、硬化塗膜が十分な強度を得られず、溶融樹脂300の樹脂圧によってスピーカー33の構造部材内にベースフィルム31を介して溶融樹脂300が侵入する。
【0058】
硬化塗膜からなる補強層36の層内にメッシュ部材36Mを含ませるには、例えば、メッシュ部材36Mを配置した上から塗膜を被覆して、メッシュ部材36Mの孔内に塗膜材料を充填させたのちに硬化させる方法がある。また、塗膜を形成した上からメッシュ部材36Mを塗膜内に沈めたのちに硬化させる方法もある。メッシュ部材36Mは、層内の表面近くの深さ位置、中間の深さ位置、底面近くの深さ位置のいずれとなってもよい。
【0059】
その他の点については、第1実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。また、第1実施形態で説明した各変化例も、第2実施形態に適用できる。
【0060】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体について、
図12~
図13を用いて説明する。第2実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体が第1実施形態の電子部品付き樹脂筐体と異なるのは、補強層36が層内にメッシュ部材36Mを有しておらず、補強層36にメッシュ部材34が積層されている点である。
図13中、
図13(a)は補強層36とメッシュ部材34の積層体の平面図であり、
図13(b)はその断面図(
図13(a)のC-C線断面)である。
【0061】
第3実施形態において、補強層36に積層されているメッシュ部材34は、第1実施形態で用いたメッシュ部材36Mと同様のものを用いることができる。
メッシュ部材34の固定には、接着層を用いることができる。接着剤の材料や接着層などの形成方法は、補強板の貼合で用いたものと同様である。
なお、
図12に示す例では、補強層36の筐体12C側にメッシュ部材34が積層されているが、補強層36とベースフィルム31の間にメッシュ部材34が積層されてもよい。
【0062】
その他の点については、第1実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。また、第1実施形態で説明した各変化例も、第3実施形態に適用できる。
【0063】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体の製造方法について、
図14を用いて説明する。第4実施形態は、筐体20Cからベースフィルム31までの積層体を貫通する開口部および開口部からの埃や塵の侵入を保護するメッシュ部材36Mを有していない点で、第1実施形態と異なる。
例えば、スピーカー33やマイク以外の電子部品を実装する場合、音波を透過させるための経路は不要である。例えば、電子部品がIRセンサやLEDの場合、その表面を光透過可能な筐体20Cで完全に被覆してもよい。
【0064】
その他の点については、第1実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。また、第1実施形態で説明した各変化例も、第4実施形態に適用できる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態および変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 電子部品付き樹脂筐体
20A,20B,20C,50 筐体
20Ca,50a 内面
20CH,50H スピーカー穴
30 電子部品実装フィルム
31 ベースフィルム
31H 貫通穴
32,52 回路パターン層
33,53 スピーカー(電子部品の例)
34,54 メッシュ部材
36 補強層
36М メッシュ部材
36H 貫通穴
40 衝撃吸収層
51 基板
55 電子部品実装基板
56 粘着剤
60 スマートウオッチ
65 表示パネル
100 第1型
110 ポケット
120 吸引孔
130 注入口
200 第2型
210 ピン
250 キャビティ
300 溶融樹脂
331 МEМSチップ
332 ICチップ
333 振動膜
334 セラミック基板
335 音孔
336 端子電極
337 はんだボール
338 カバー