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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】硬質材料加工システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221222BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20221222BHJP
   B24B 7/22 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
H01L21/304 611W
H01L21/304 622N
H01L21/304 631
B24B27/06 D
B24B7/22 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021124137
(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公開番号】P2022176019
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】63/188,478
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】110118632
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】519404230
【氏名又は名称】日揚科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】寇崇善
(72)【発明者】
【氏名】葉文勇
(72)【発明者】
【氏名】張伯昌
(72)【発明者】
【氏名】呉坤益
(72)【発明者】
【氏名】陳建勳
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-169610(JP,A)
【文献】特開2013-161880(JP,A)
【文献】特開2017-105697(JP,A)
【文献】特開2017-208553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 27/06
B24B 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質材料を含有する処理予定加工物を加工する硬質材料加工システムであって、
接触方式または非接触方式により、前記処理予定加工物に対して第1の加熱工程および第2の加熱工程を行うことにより、前記処理予定加工物の前記硬質材料の硬さを降下することが可能な第1の温度まで前記処理予定加工物を加熱する加熱部材と、
前記加熱部材が前記処理予定加工物に対して前記第1の加熱工程を行うときに、前記硬質材料の前記硬さが一時的に降下した前記処理予定加工物に対して同時に第1の加工工程を行う少なくとも一つの第1の加工部材と、
前記加熱部材が前記処理予定加工物に対して前記第2の加熱工程を行うときに、前記硬質材料の前記硬さが一時的に降下した前記処理予定加工物に対して同時に第2の加工工程を行う少なくとも一つの第2の加工部材と、を少なくとも備え、
前記処理予定加工物の前記硬質材料は炭化ケイ素であり、
前記第1の加熱工程および前記第2の加熱工程を行うときに、前記処理予定加工物の前記硬質材料の前記硬さは、シリコンの硬さに近接するように降下し、
前記第1の加工工程は切断工程であり、
前記第2の加工工程は研削及び/又は研磨工程であることを特徴とする、
硬質材料加工システム。
【請求項2】
少なくとも一つの洗浄部材を備え、前記洗浄部材は、前記処理予定加工物に対して、前記第1の加工工程及び/又は前記第2の加工工程を行った後、前記処理予定加工物に対して洗浄工程を行うことを特徴とする、請求項に記載の硬質材料加工システム。
【請求項3】
前記第1の加工部材及び/又は前記第2の加工部材は、オイル含有環境において、前記処理予定加工物に対して、前記第1の加工工程及び/又は前記第2の加工工程を行い、前記オイル含有環境は、前記第1の温度に耐えることが可能な耐高温オイルを含むことを特徴とする、請求項に記載の硬質材料加工システム。
【請求項4】
前記第1の温度は摂氏100度より高いことを特徴とする、請求項に記載の硬質材料加工システム。
【請求項5】
前記加熱部材は、高周波加熱部材またはマイクロ波加熱部材であることを特徴とする、請求項に記載の硬質材料加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置およびシステムに関し、特に、硬質材料加工装置とそのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体技術の継続的かつ活発な発展により、技術製品は大きな進歩を遂げることができた。半導体の製造工程では、加工機器により、ウエハーなどの材料に対して、切断、研削、研磨などの機械加工工程を行う。半導体材料である例えば炭化ケイ素(SiC)は、エネルギーバンドギャップが広く、硬度が高く、熱伝導率が高く、化学的不活性であるという利点があるため、高温電子部品や高周波・高出力部品の製造に最適な材料である。しかし、炭化ケイ素の硬さは高いため、スライス、研削または研磨などの加工工程を行うことが容易ではなく、加工部材であるカッターが摩耗しやすい。このため、高硬度半導体材料の加工効率と品質を向上させる方法が、現在最も重要な研究開発のトピックの一つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の主な目的は、加工速度を上げることができ、生産能力を上げることができ、加工部材の摩耗を減少することが可能な硬質材料加工装置とそのシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る硬質材料加工装置は、硬質材料を含有する処理予定加工物を加工する硬質材料加工装置であって、接触方式または非接触方式により、前記処理予定加工物に対して第1の加熱工程を行うことにより、前記処理予定加工物の前記硬質材料の硬さを降下することが可能な第1の温度まで前記処理予定加工物を加熱する加熱部材、前記加熱部材が前記処理予定加工物に対して前記第1の加熱工程を行うときに、前記硬質材料の前記硬さが一時的に降下した前記処理予定加工物に対して同時に第1の加工工程を行う少なくとも一つの第1の加工部材と、を少なくとも備え、前記処理予定加工物の前記硬質材料は炭化ケイ素であり、且つ前記加熱部材は、前記第1の加熱工程を行うときに、シリコンの硬さに近接するように、前記処理予定加工物の前記硬質材料の前記硬さを降下し前記第1の加工工程は切断、研削及び/又は研磨工程であることを特徴とする。
【0005】
本発明に係る硬質材料加工装置は、前記第1の加工部材は、オイル含有環境において、前記処理予定加工物に対して前記第1の加工工程を行い、前記オイル含有環境は、前記第1の温度を耐えることが可能な耐高温オイルを含むことを特徴とする。
【0006】
本発明に係る硬質材料加工装置は、前記第1の温度は摂氏100度より高いことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る硬質材料加工装置は、前記加熱部材は、高周波加熱部材またはマイクロ波加熱部材であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る硬質材料加工システムは、硬質材料を含有する処理予定加工物を加工する硬質材料加工装置であって、前記加熱部材は、接触方式または非接触方式により、前記処理予定加工物に対して第1の加熱工程および第2の加熱工程を行うことにより、前記処理予定加工物の前記硬質材料の硬さを降下することが可能な第1の温度までする加熱部材と、前記加熱部材が前記処理予定加工物に対して前記第1の加熱工程を行うときに、前記硬質材料の前記硬さが一時的に降下した前記処理予定加工物に対して同時に第1の加工工程を行う少なくとも一つの第1の加工部材と、前記加熱部材が前記処理予定加工物に対して前記第2の加熱工程を行うときに、前記第2の加工部材は、前記第1の加工工程が行われ、前記硬質材料の前記硬さが一時的に降下した前記処理予定加工物に対して同時に第2の加工工程を行う少なくとも一つの第2の加工部材と、を少なくとも備え前記処理予定加工物の前記硬質材料は炭化ケイ素であり、且つ前記第1の加熱工程および前記第2の加熱工程を行うときに、前記処理予定加工物の前記硬質材料の前記硬さは、シリコンの硬さに近接ように降下し、前記第1の加工工程は切断工程であり、前記第2の加工工程は研削及び/又は研磨工程であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る硬質材料加工システムは、更に、少なくとも一つの洗浄部材を備え、前記洗浄部材は、前記処理予定加工物に対して、前記第1の加工工程及び/又は前記第2の加工工程を行った後、前記処理予定加工物に対して洗浄工程を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る硬質材料加工システムは、前記第1の加工部材及び/又は前記第2の加工部材は、オイル含有環境において、前記処理予定加工物に対して、前記第1の加工工程及び/又は前記第2の加工工程を行い、前記オイル含有環境は、前記第1の温度を耐えることが可能な耐高温オイルを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る硬質材料加工システムは、前記第1の温度は摂氏100度より高いことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る硬質材料加工システムは、前記加熱部材は、高周波加熱部材またはマイクロ波加熱部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る硬質材料加工装置とそのシステムには、次のような効果がある。
(1)処理予定加工物に対して加熱を行うことにより、処理予定加工物における硬質材料の硬さが降下するため、加工部材が切断、研削及び/又は研磨などの工程を行うことが容易となり、加工速度を上げることができる。これによって、生産能力を上げることができ、加工部材の磨耗を低減することもできる。
(2)従来の切断方式では、完了後、応力(Stress)を減少するために、テンパー処理(加熱)を行うことが必要であるのに対し、本発明によれば、テンパー処理を行うことが必要ないため、操作工数を減少することができる。
(3)同じカッターを例にして挙げると、本発明によれば、単位時間当たりの生産量が、従来の技術による生産量より多い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る硬質材料加工装置の第1の実施形態を示す模式図である。
図2】本発明に係る硬質材料加工装置の第2の実施形態を示す模式図である。
図3】本発明に係る硬質材料加工装置の第3の実施形態を示す模式図である。
図4】本発明に係る硬質材料加工装置の第4の実施形態を示す模式図である。
図5】本発明に係る硬質材料加工システムの加工プロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施の形態の図面における各部材の比率は、説明を容易に理解するために示され、実際の比率ではない。また、図に示すアセンブリの寸法の比率は、各部品とその構造を説明するためのものであり、もちろん、本発明はこれに限定されない。一方、理解を便利にするために、下記の実施の形態における同じ部品については、同じ符号を付して説明する。
【0016】
さらに、明細書全体および特許請求の範囲で使用される用語は、特に明記しない限り、通常、この分野、本明細書に開示される内容、および特別な内容で使用される各用語の通常の意味を有する。本発明を説明するために使用されるいくつかの用語は、当業者に本発明の説明に関する追加のガイダンスを提供するために、本明細書の以下または他の場所で説明される。
【0017】
明細書全体および特許請求の範囲で使用される「第1」、「第2」、「第3」などの用語については、順序や順番を具体的に示すものではなく、本発明を制限するためにも使用されていない。これは、同じ専門用語で説明するコンポーネントまたは操作を区別するだけために使用される。
【0018】
明細書全体および特許請求の範囲で「含む」、「備える」、「有する」、「含有する」などの用語が使用されている場合、それらはすべてオープンな用語である。つまり、これらは、含むがこれに限定されないことを意味する。
【0019】
本発明に係る硬質材料加工装置は、硬質材料を含む処理予定加工物を加工する硬質材料加工装置であって、処理予定加工物に対して第1の加熱工程を行うことにより、処理予定加工物の硬質材料の硬さを降下することが可能な第1の温度まで処理予定加工物を加熱することにより、第1の加熱工程を行うときに、処理予定加工物の硬質材料の硬さを一時的に降下する加熱部材と、加熱部材が処理予定加工物に対して、第1の加熱工程を行うときに、第1の加工部材は、硬質材料の硬さが一時的に降下した処理予定加工物に対して、同時に、第1の加工工程を行う少なくとも一つの第1の加工部材と、を少なくとも備える。
本発明に係る硬質材料は、例えば炭化ケイ素であり、本発明における処理予定加工物は、例えば炭化ケイ素インゴット(SiC Ingot)100であるが、これに限定されない。
【0020】
第1の加工部材は、例えば、ワイヤーソー切断機(Wire-Saw Slicing Machine)、研削機(Grinding Machine)、又は研磨機(Polishing Machine)である。第1の加工工程は、例えば、切断、研削及び/又は研磨工程である。
加熱部材は、例えば、高周波(Radio Frequency,RF)加熱部材またはマイクロ波加熱部材であり、周波数は例えば1 KHz~10 GHzである。本発明に係る加熱部材は、処理予定加工物に対して加熱を行うためのものであるため、本発明では、高周波加熱部材またはマイクロ波加熱部材を例にして説明したが、これに限定されない。換言すると、加熱部材は、処理予定加工物に対して加熱を行うことができれば、何れかを採用してもよい。
図1に示すように、高周波加熱部材30を例にして挙げると、本発明では、高周波加熱部材30により、炭化ケイ素インゴット100を加熱して、炭化ケイ素インゴット100の硬さを降下することができる。このため、炭化ケイ素インゴット100に対して加工処理を容易に行うことができ、例えば、ワイヤーソー切断機10により、炭化ケイ素インゴット100を炭化ケイ素スライス102(第1の加工工程)に切断し、切断工程が更に容易となる。また、炭化ケイ素インゴット100は、例えば円柱状を呈するが、これに限定されない。また、本発明では、シリコン(Si)の硬さに近接するように、炭化ケイ素インゴット100の硬さを降下することが好ましいが、炭化ケイ素インゴット100の硬さを降下することができれば、次の加工工程が容易となる。
例えば、炭化ケイ素インゴット100を摂氏200度に加熱すると、その硬さは約25GPaであるが、炭化ケイ素インゴット100を摂氏350度に加熱すると、その硬さは約21.5GPaに降下し、且つ炭化ケイ素インゴット100を摂氏500度に加熱すると、その硬さは僅か約15GPaである。同様に、炭化ケイ素インゴット100を摂氏600度に加熱すると、炭化ケイ素インゴット100の硬さ(14GPa)は降下して、シリコンの硬さ(14GPa)に近接し、又は同じであるため、第1の加工部材は、シリコンインゴットに対して加工工程を行う加工部材と同じものを採用して、炭化ケイ素インゴット100に対して第1の加工工程を行うことができる。
【0021】
また、第1の加工部材は、オイル含有環境200において、処理予定加工物(すなわち、炭化ケイ素インゴット100)に対して第1の加工工程を行ってもよい。オイル含有環境200は、第1の温度を耐えることが可能な耐高温オイルを含む。オイル含有環境200は、例えば上記の耐高温オイルが充填されているタンクである。第1の温度は、摂氏100度より高く、摂氏200度と900度の間であることが好ましいが、これに限定されない。
図2に示すように、炭化ケイ素インゴット100の一部または全部をオイル含有環境200に置いてもよい。炭化ケイ素インゴット100の全部をオイル含有環境200に浸漬して、高周波加熱部材30により、炭化ケイ素インゴット100を加熱することが好ましい。これにより、炭化ケイ素インゴット100の硬さを降下することができる。このうち、高周波加熱部材30は、市販されている高周波加熱部材を採用してもよい。処理予定加工物に対して加熱を行うことができるものを採用すればよいため、本発明では、特定のブランドや型番の高周波加熱部材に限定されない。次に、ワイヤーソー切断機10により、硬さが降下した炭化ケイ素インゴット100を炭化ケイ素スライス102(第1の加工工程)に切断することにより、切断工程が更に容易となる。このうち、ワイヤーソー切断機10は、同様に、市販されているワイヤーソー切断機を採用してもよい。処理予定加工物に対して切断を行うことができるものであればよい。このため、本発明では、特定のブランドや型番のワイヤーソー切断機に限定されない。ここで、炭化ケイ素インゴット100を切断する切断機器は、良く知られた技術であり、且つ本発明の技術の重点ではないため、説明を省略する。
上記のオイル含有環境200は、例えば、フッ素系のオイルを含有してもよい。これは、上記の加熱部材の処理予定加工物に対して行う第1の加熱工程を耐えることができ、且つ広い作動温度範囲、優れた極高温耐性、耐薬品性、広い材料適合性、並外れた電気絶縁性能、優れた皮膜形成、耐荷重性、潤滑性能などの特性を備え、潤滑性と加熱均一性を提供する。上記のフッ素系を含むオイルは、例えばフッ素オイル(Per-Fluorina Ted Poly Ethers,PFPE)であり、その分子構造は、例えば三種類の成分から構成され、これらは、炭素(Carbon)21.6%、酸素(Oxygen)9.4%、フッ素(Fluorine)69.0%である。ここで、上記のフッ素系を含むオイルとして、フッ素オイルを例にして挙げたが、上記の組成の比例は例示にすぎず、本発明はこれに限定されない。オイル含有環境200において、高温に耐えることが可能なオイルであれば良い。
【0022】
第1の加工工程は、上記の切断工程でもいいし、研削及び/又は研磨工程でもよい。換言すると、本発明は、切断工程を行った後、研削及び/又は研磨工程を行うことに限定されない。実際の製造プロセスのニーズによって、処理予定加工物に対して切断工程を行わず、研削及び/又は研磨工程だけを行ってもよい。同じ理由で、本発明に係る研削及び/又は研磨工程は、市販されている研削機及び/又は研磨機を採用してもよい。これは、例えば化学機械研削機(CMP)を採用してもよい。処理予定加工物に対して研削及び/又は研磨を行うことができれば良い。このため、本発明では、特定のブランドや型番の研削機及び/又は研磨機に限定されない。なお、炭化ケイ素インゴット100を研削及び/又は研磨する研削及び/又は研磨機器は、従来の技術であり、且つ本発明の技術の重点ではないため、説明を省略した。
例えば、図3に示すように、図1の切断工程を行って得られる炭化ケイ素スライス102を、受け部材40に置いてもよい。受け部材40は、例えば、穴を有するセラミックプレートであるため、空気抽出装置50(例えば空気抽出ポンプ)により、炭化ケイ素スライス102を受け部材40に固定して、次の研削及び/又は研磨工程を行うことができる。そして、高周波加熱部材30により、炭化ケイ素スライス102を加熱することにより、炭化ケイ素スライス102の硬さを降下することが可能なため、研削研磨機20により、炭化ケイ素スライス102に対して研削及び/又は研磨工程を行うことが容易となる。
図3において、高周波加熱部材30は受け部材40の下方に置かれるが、これに限定されない。高周波加熱部材30は、他の適当な位置に置いてもよい。これにより、炭化ケイ素スライス102に対して加熱を行って、その硬さを降下することができる。また、研削及び/又は研磨工程を行うときには、潤滑剤60を使用してもよい。潤滑剤60は、例えば、何れかのフッ素系を含むオイルであり、潤滑および加熱均一性の効果を提供することができる。
【0023】
また、図4に示すように、本発明では、オイル含有環境200において、炭化ケイ素スライス102に対して研削及び/又は研磨工程を行ってもよい。オイル含有環境200は、第1の温度に耐えることが可能な耐高温オイルを含む。第1の温度は、摂氏100度より高く、摂氏200度と900度の間であることが好ましいが、これに限定されない。例えば、本発明では、炭化ケイ素スライス102の一部または全部を、オイル含有環境200に置いてもよい。炭化ケイ素スライス102の全部をオイル含有環境200に浸漬して、高周波加熱部材30により、炭化ケイ素スライス102を加熱することにより、炭化ケイ素スライス102の硬さを降下することが好ましい。
次に、研削研磨機20により、硬さが降下した炭化ケイ素スライス102に対して、研削及び/又は研磨工程を行う。同様に、炭化ケイ素スライス102の硬さの降下の程度は限定されない。しかし、炭化ケイ素スライス102の硬さがシリコンの硬さに近接し、又はシリコンの硬さと同じであるように降下すると、本発明に係る研削研磨機20は、シリコンスライスに対して、研削及び/又は研磨工程を行う、研削及び/又は研磨機と同じものを採用してもよい。図4における高周波加熱部材30は、オイル含有環境200の外部に置かれるが、本発明はこれに限定されない。高周波加熱部材30は他の適当な位置に置かれてもよく、これにより、炭化ケイ素スライス102に対して加熱を行って、その硬さを降下することもできる。
【0024】
本発明では、加熱部材は、第1の加熱工程において、接触方式または非接触方式により、処理予定加工物を加熱する。例えば、高周波加熱部材30により、炭化ケイ素インゴット100又は炭化ケイ素スライス102に対して加熱を行うときに、炭化ケイ素インゴット100又は炭化ケイ素スライス102に直接接触して加熱を行ってもいいし、間接的な方式を採用し、例えば、オイル含有環境200により、炭化ケイ素インゴット100又は炭化ケイ素スライス102に対して加熱を行ってもよい。本発明が属する技術分野の一般的な知識を持っている者は、本発明で開示された内容に基づいて、高周波加熱部材30を、どのようにオイル含有環境200の外部または内部に置き、且つどのように直接的な接触方式または間接的な接触方式により、炭化ケイ素インゴット100又は炭化ケイ素スライス102に対して加熱を行うかを明確に知ることができるはずであるため、説明を省略する。
【0025】
本発明は、別途硬質材料加工システムを提案する。これは、例えば、複数の上記の硬質材料加工装置から構成され、複数の上記の加工工程をそれぞれ行い、又は一つの上記の硬質材料加工装置から構成され、複数の上記の加工工程を行う。
本発明に係る硬質材料加工システムは、硬質材料を含む処理予定加工物を加工する硬質材料加工システムであって、処理予定加工物に対して、第1の加熱工程と第2の加熱工程とを行って、処理予定加工物の硬質材料の硬さを降下することが可能な第1の温度まで処理予定加工物を加熱することにより、第1の加熱工程と第2の加熱工程とを行うときに、処理予定加工物の硬質材料の硬さを一時的に降下する加熱部材と、加熱部材が処理予定加工物に対して第1の加熱工程を行うときに、第1の加工部材は、硬質材料の硬さが一時的に降下した処理予定加工物に対して、同時に、第1の加工工程を行う少なくとも一つの第1の加工部材と、加熱部材が処理予定加工物に対して第2の加熱工程を行うときに、第2の加工部材は、第1の加工工程を行って、硬質材料の硬さが一時的に降下した処理予定加工物に対して、第2の加工工程を行う少なくとも一つの第2の加工部材と、少なくとも備える。そのうち、第1の加工工程は、例えば切断工程であり、且つ上記のようなワイヤーソー切断機10により切断工程を行うことができる。なお、第2の加工工程は、例えば研削及び/又は研磨工程であり、且つ上記のような研削研磨機20により、研削及び/又は研磨工程を行うことができる。
【0026】
第1の加熱工程と第2の加熱工程とは、同じ加熱部材によって行ってもよいし、異なる加熱部材によって行ってもよい。例えば、高周波加熱部材30により、第1の加熱工程と第2の加熱工程とを行ってもよい。また、高周波加熱部材30を固定的な空間(例えば上記のオイル含有環境200)の内部または外部に置いて、オイル含有環境200において、まず、切断工程を行って、研削及び/又は研磨工程を行ってもよい。或いは、二つの高周波加熱部材30をそれぞれ異なる位置に置いて、切断工程を行うときに、まず、そのうちの一つの高周波加熱部材30により加熱を行って、切断工程を行った後、別の位置に搬送して(搬送の過程中に、洗浄工程を選択的に行ってもよい。)、別の高周波加熱部材30により加熱を行ってもよい。必要によって、上記の高周波加熱部材30の代わりに、マイクロ波加熱部材を採用してもよい。
【0027】
また、本発明に係る硬質材料加工システムは、更に、少なくとも一つの洗浄部材(図示せず)を備えてもよい。処理予定加工物は、第1の加工工程及び/又は第2の加工工程を受けた後、洗浄部材により、洗浄工程を受けてもよい。
図5に示すように、切断工程S10を行った後、洗浄部材は、処理予定加工物に対して洗浄工程S21を行って、次いで、研削工程S30及び洗浄工程S22を行って、続いて、研磨工程S40及び洗浄工程S23を行ってもよい。切断工程S10は、図1又は図2の方式によって行ってもよいが、これに限定されない。なお、研削工程S30及び研磨工程S40は、図3又は図4の方式によって行ってもよいが、これに限定されない。洗浄工程を行って、前の工程で処理予定加工物に残った物質を洗浄することにより、次の工程を便利に行うことができる。そのうち、洗浄工程において、プラズマにより清潔してもいいし、油脂を除去する有機溶剤(例えばアセトン)により、洗浄工程を行ってもよい。本発明に係る洗浄工程は、処理予定加工物に対して洗浄を行う場合に、プラズマ又は有機溶剤を例にして説明したが、本発明はこれに限定されない。換言すると、洗浄工程は、処理予定加工物に対して洗浄を行うことができれば良い。そして、本発明が属する技術分野の一般的な知識を持っている者は、本発明の内容に基づいて、どのように処理予定加工物に対して洗浄を行うかがよく分かるため、説明を省略する。
【0028】
本発明に係る硬質材料加工装置とそのシステムは、次のような効果がある。
(1)処理予定加工物に対して加熱を行うことにより、処理予定加工物における硬質材料の硬さが降下するため、加工部材が切断、研削及び/又は研磨などの工程を行うことが容易となり、加工速度を上げることができる。これによって、生産能力を上げることができ、加工部材の磨耗を減少することもできる。
(2)従来の切断方式によれば、完了後、応力(Stress)を減少するために、テンパー処理(加熱)を行うことが必要である。一方、本発明によれば、テンパー処理を行うことが必要ないため、操作工数を減少することができる。
(3)同じカッターを例にして挙げると、本発明による、単位時間当たりの生産量は、従来技術による生産量より多い。
【0029】
以上の記述は例を挙げたものにすぎず、限定するものではない。本発明の精神及び範疇から逸脱しない、それに対して行ういかなる同等効果の修正又は変更も、添付の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
10 ワイヤーソー切断機
20 研削研磨機
30 高周波加熱部材
40 受け部材
50 空気抽出装置
60 潤滑剤
100 炭化ケイ素インゴット
102 炭化ケイ素スライス
200 オイル含有環境
S10 切断工程
S21,S22,S23 洗浄工程
S30 研削工程
S40 研磨工程
図1
図2
図3
図4
図5