(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】車両用の冷媒回路
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20221222BHJP
B60H 1/03 20060101ALI20221222BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20221222BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20221222BHJP
F25B 6/04 20060101ALI20221222BHJP
F25B 5/02 20060101ALI20221222BHJP
F25B 43/00 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
B60H1/22 651A
B60H1/22 671
B60H1/22 651B
B60H1/03 Z
B60H1/32 613A
F25B1/00 399Y
F25B1/00 321L
F25B1/00 321A
F25B6/04 Z
F25B5/02 Z
F25B1/00 331Z
F25B43/00 B
(21)【出願番号】P 2021516941
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 FR2019052276
(87)【国際公開番号】W WO2020065230
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-24
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】モハメド、ヤイア
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/093991(WO,A1)
【文献】特開2014-169830(JP,A)
【文献】特開2000-035250(JP,A)
【文献】特開平09-290622(JP,A)
【文献】特開2006-177632(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103143(WO,A1)
【文献】特開2018-071911(JP,A)
【文献】特開2013-184596(JP,A)
【文献】特開2013-139991(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0283874(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
F25B 1/00-49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主管(3)と、第1レグ(4)と、第2レグ(5)と、第3レグ(25)と、を少なくとも含む車両用の冷媒回路(1)であって、これら3つのレグはすべて前記主管(3)と直列に存在しており、前記主管(3)は冷媒(47)を圧縮する圧縮装置(2)と車室の外の外部気流(FE)がその中を通過するように構成されている主熱交換器(8)とを少なくとも含み、前記第1レグ(4)は熱伝導液(48)のループ(14)と熱的に結合した第1熱交換器(13)と前記冷媒(47)を蓄積する蓄圧装置(15)とを少なくとも含み、前記第2レグ(5)は前記熱伝導
液(48)の前記ループ(14)と熱的に結合した第2熱交換器(17)を少なくとも含み、前記第3レグ(25)は前記車室内へ送られる内部気流(FA)がその中を通過するように設計される第3熱交換器(26)を少なくとも含み、
前記第1レグ(4)と前記第2レグ(5)とは並列に存在していて前記蓄圧装置(15)と前記圧縮装置(2)との間に配置される集合点(6)で交わり、
前記第1レグ(4)と前記第3レグ(25)とは前記第1熱交換器(13)と前記蓄圧装置(15)との間に配置される第1接合点(19)で交わる、回路(1)。
【請求項2】
前記主管(3)は前記集合点(6)と分岐点(7)との間を延び、前記分岐点(7)はそれ以降では前記第1レグ(4)と前記第2レグ(5)とが分離する点である、請求項1に記載の回路(1)。
【請求項3】
前記主管(3)を前記分岐点(7)へ接続する第5レグ(32)を含み、前記第5レグ(32)は少なくとも1つの遮断弁(34)を含む、請求項2に記載の回路(1)。
【請求項4】
前記主管(3)は、前記主熱交換器(8)と前記分岐点(7)との間に配置される過冷却装置(10)を含む、請求項2
又は3に記載の回路(1)。
【請求項5】
2つの通路(61、62)を有する内部熱交換器(60)を含み、低圧の通路(61)は前記主管(3)内で前記集合点(6)と前記圧縮装置(2)との間に配置され、高圧の通路(62)は前記主管(3)内で前記過冷却装置(10)と前記分岐点(7)との間に配置される、請求項4に記載の回路(1)。
【請求項6】
2つの通路(61、62)を有する内部熱交換器(60)を含み、低圧の通路(61)は前記蓄圧装置(15)と前記集合点(6)との間に配置され、高圧の通路(62)は前記主管(3)内で前記過冷却装置(10)と前記分岐点(7)との間に配置される、請求項4に記載の回路(1)。
【請求項7】
前記過冷却装置(10)は、前記車室の外の前記外部気流(FE)がその中を通過するように設計されて前記外部気流(FE)の空気が前記主熱交換器(8)を通過するより前に前記外部気流(FE)がその中を通過するように設置されている第4熱交換器である、請求項
4~6のいずれか一項に記載の回路(1)。
【請求項8】
前記第1レグ(4)は前記第1接合点(19)を含み、前記第2レグ(5)は第2接合点(20)を含み、前記回路(1)の前記第3レグ(25)は前記第1接合点(19)と前記第2接合点(20)との間を延びる、請求項1~
7のいずれか一項に記載の回路(1)。
【請求項9】
前記主管(3)は、前記圧縮装置(2)と前記主熱交換器(8)との間に配置される第5熱交換器(12)を含み、前記第5熱交換器(12)は、前記車室内へ送られる前記内部気流(FA)がその中を通過するように設計される、請求項
8に記載の回路(1)。
【請求項10】
前記第1レグ(4)は前記第1接合点(19)を含み、前記第2レグ(5)は第2接合点(20)を含み、前記回路(1)の前記第3レグ(25)は前記第1接合点(19)と前記第2接合点(20)との間を延び、
前記主管(3)は前記主熱交換器(8)と前記分岐点(7)との間に配置される第3接合点(29)を含み、第4レグ(30)は前記第3接合点(29)と前記第1接合点(19)との間を延び、前記第4レグ(30)は少なくとも1つの遮断弁(31)を含む、請求項2
~7のいずれか一項に記載の回路(1)。
【請求項11】
前記第1熱交換器(13)は前記第2熱交換器(17)よりも大きい熱出力を作り出すよう構成される、請求項1~
10のいずれか一項に記載の回路(1)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の冷媒(47)用の冷媒回路(1)と、前記第1熱交換器(13)および前記第2熱交換器(17)を介して冷媒流体(47)用の前記冷媒回路(1)と熱的に結合した熱伝導液(48)のループ(14)と、を含む車両の熱処理のためのシステム(38)であって、前記第1熱交換器(13)および前記第2熱交換器(17)は前記車両の電気けん引動力伝達装置の少なくとも1つの同じ部分(39)の熱処理を担当する、システム(38)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は車両用の冷媒回路、特に自動車用の冷媒回路の分野である。
【背景技術】
【0002】
今日、自動車は車両の様々な区域や様々な構成要素を加熱または冷却するのに使用される冷媒回路を装備している。この冷媒回路を使ってそのような回路を装備している車両の室内へ送られる気流を熱処理することは、特に知られた実施例である。
【0003】
この回路の別の適用では、この回路を使用して車両の電気けん引動力伝達装置(electric traction driveline)の一部を冷却することが知られた実施例である。この一部とは、特に、前記車両を移動させることができる電気モータへ電力を供給するのに使用される蓄電装置(electrical storage device)である。したがって、冷媒回路は、運転中に使用される場合、蓄電装置の冷却が可能なエネルギーを提供する。したがって、冷媒回路は、この蓄電装置を中程度に留まる温度へ冷却するように設計される。
【0004】
また、車両の蓄電装置が家庭の電力網に数時間接続されることで充電されるのも知られた実施例である。この長時間充電の技術により蓄電装置の温度をある閾値より低く保つことが可能となり、蓄電装置を冷却するシステムを省くことが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
新しい急速充電技術が近年開発された。これには、数分という短時間で蓄電装置を充電するために、高い電圧とアンペア数で蓄電装置を充電することが含まれる。この急速充電は、冷却する必要がある蓄電装置を加熱する。この加熱は、これが最も厳しい状況であるため、構成要素の定格に影響を与える。この定格は、特に蓄電装置用の冷却器の下流に生じる過熱(superheating)のために、急速充電を除く通常動作に強い影響を与える。
【0006】
それゆえ、技術的課題は、一方では車両の電気けん引動力伝達装置の一部により生成された熱エネルギーを消散させる能力にあり、他方では許容できると考えられるレベルの回路性能を維持しながら同時に車室を冷却する能力にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこの文脈の範囲内にあり、この目的、すなわち、蓄電装置を閾値温度より下に保つこと、および/または、車室を所与の達成レベルまで冷却することを、車両の電気けん引動力伝達装置の一部を冷却することに特化した2つの熱交換器(heat exchanger)および車室を冷却することに特化した第3熱交換器を用いて動作するよう巧みに設計される冷媒回路を用いて実現を追求する技術的解決策を提案し、これにより圧縮装置(compression device)の流入口での過熱を簡単で経済的な方法で実現することが可能となる。
【0008】
それゆえ、本発明の一つの主題は車両用の冷媒回路であり、この回路は主管(main pipe)、第1レグ(leg、区間)、第2レグ、および第3レグを少なくとも含み、これら3つのレグはすべて主管と直列に存在しており、主管は冷媒を圧縮する圧縮装置と車室の外の外部気流がその中を通過するように構成されている主熱交換器を少なくとも含み、第1レグは熱伝導液のループと熱的に結合した第1熱交換器と冷媒を蓄積する蓄圧装置(accumulator device)を少なくとも含み、第2レグは熱伝導流体のループと熱的に結合した第2熱交換器を少なくとも含み、第3レグは車室内へ送られる内部気流がその中を通過するように設計される第3熱交換器を少なくとも含み、第1レグと第2レグは並列に存在していて蓄圧装置と圧縮装置との間に配置される集合点で交わり、第1レグと第3レグは第1熱交換器と蓄圧装置との間に配置される第1接合点で交わることを特徴とする、冷媒回路である。第1熱交換器および第3熱交換器は蓄圧装置に冷媒を供給することを目的としており、第2熱交換器は蓄圧装置を迂回するように接続される。第2熱交換器は、冷媒の観点から実際には蓄圧装置の下流に接続される。第2熱交換器は冷媒に過熱を生じさせることができる。この冷媒は、過熱された場合は気体状態である。第2熱交換器から流れてくる気体状態の冷媒は、それゆえ直接圧縮装置へ到達し、これは回路の性能係数を高めることに寄与する。「直接」が意味するのは、第2熱交換器と圧縮装置との間にはボトルや蓄圧装置が存在しない、ということである。
【0009】
第1熱交換器と第2熱交換器が一緒に動作している場合、蓄圧装置から流れてくる飽和蒸気状態に近い(特に、蒸気量が0.95に近い)冷媒と、第2熱交換器から直接流れてくる過熱された気体の冷媒が主管内の集合点で合流する。その結果、この冷媒は混合されて、適度に過熱される。この過熱が回路の性能係数の全体的な向上をもたらす。
【0010】
第1熱交換器が冷媒の観点から蓄圧装置の上流に接続されるという事実と、第2熱交換器が蓄圧装置の下流に接続されるという事実は、例えば、蓄電装置を急速充電中の最大冷却能力をはるかに下回る中程度の冷却で高速道路を走行中に、第2熱交換器の動作を第3熱交換器の動作から分離することができる、ということを意味する。そのような設定がない場合は、回路は、第2熱交換器の過熱を補償するために第1熱交換器をあふれさせるように作動され得るが、これは最適化および制御装置を複雑にする。
【0011】
第1熱交換器は、車両の電気けん引動力伝達装置の少なくとも一部、例えば前記車両を動かすことができる電気モータへ電力を供給するのに使用される蓄電装置、ならびに/または、電子装置および/もしくは電気モータ自体を熱処理するよう構成される。それゆえ、第1熱交換器は蒸発器(evaporator)として動作する。
【0012】
第2熱交換器は、車両の電気けん引動力伝達装置の少なくとも一部、例えば前記車両を動かすことができる電気モータへ電力を供給するのに使用される蓄電装置、ならびに/または、電子装置および/もしくは電気モータを熱処理するよう構成される。それゆえ、第2熱交換器は蒸発器として動作する。
【0013】
有利には、第1熱交換器および第2熱交換器は車両の電気けん引動力伝達装置の一つの同じ部分、例えば蓄電装置の熱処理を担当する。
【0014】
第1熱交換器および第2熱交換器は、それぞれが冷媒と車両の電気けん引動力伝達装置の一部との間で、直接、すなわち第1熱交換器と車両の電気けん引動力伝達装置の一部との間の対流、および/または、第2熱交換器と車両の電気けん引動力伝達装置の一部との間の対流により、熱エネルギーの交換を可能とする。そのような場合、車両の電気けん引動力伝達装置の要素の冷却は直接的である。あるいは、熱エネルギーの交換は、熱エネルギーを車両の電気けん引動力伝達装置の一部から第1熱交換器および/または第2熱交換器へ運ぶことを目的とした熱伝導液のループを介して間接的に行われることがある。それゆえ、車両の電気けん引動力伝達装置の要素の冷却は間接的となりうることが理解される。
【0015】
第1熱交換器および第2熱交換器は、互いから物理的に遠く離れた、車両内の異なる場所に配置することができるという意味で、それぞれ個別化されている。
【0016】
第3熱交換器は、暖房、換気、および/または空調の設備内に設置することができる。したがって、この第3熱交換器は車室内へ送られる気流を冷却するために蒸発器として使用することができる。
【0017】
第1接合点は回路の集合点である。第1熱交換器から流れてくる冷媒および第3熱交換器から流れてくる冷媒は、第1接合点で合流しうる。
【0018】
圧縮装置は、例えばコンプレッサ(compressor)であり、本発明は、コンプレッサが固定シリンダ容積で可変速度の電動コンプレッサである場合に特に適用可能である。したがって、本発明に係る回路の熱出力を制御することが可能である。
【0019】
主熱交換器は凝縮器(condenser)として使用することができる。主熱交換器は、走行中に外部気流の供給から恩恵を受けるために車両の前面に配置される。主熱交換器は、回路がヒートポンプとして動作可能である場合は蒸発器として使用されることがある。
【0020】
冷媒は、例えば参照番号R134AやR1234YFで知られる亜臨界流体(sub-critical fluid)である。本発明に係る冷媒回路は、熱力学サイクルを行う閉回路である。
【0021】
回路の第1レグおよび第2レグは、冷媒の観点から並列に存在する。回路の第1レグおよび第2レグは、冷媒の観点からそれぞれ主管と直列に存在している。
【0022】
本発明の一態様によれば、主管は集合点と分岐点との間を延び、分岐点とはそれ以降では第1レグと第2レグとが分離する点である。
【0023】
本発明の一態様によれば、主管は主熱交換器と分岐点との間に配置される過冷却装置(subcooling unit)を含む。主熱交換器は冷媒過冷却装置と関連付けられる。過冷却装置は冷媒の過冷却を生じさせる、つまり、冷媒の温度をその凝縮温度より下げることができる。
【0024】
本発明の一態様によれば、過冷却装置は、車室の外の外部気流がその中を通過するように設計されて外部気流の空気が主熱交換器を通過するより前に外部気流がその中を通過するように設置されている第4熱交換器である。したがって過冷却装置は、走行中に外部気流が供給される恩恵を受けるために主熱交換器と共に車両の前面に配置されることがある。外部気流は、まず最初に過冷却装置を通過する。そして過冷却装置を後にすると、外部気流は主熱交換器を通過する。
【0025】
過冷却装置および主熱交換器が共に冷媒を冷却するのに使用される場合、外部気流は過冷却装置で第1の熱交換、主熱交換器で第2の熱交換、という順番で行う。
【0026】
本発明の一態様によれば、第1レグは第1接合点を含み、第2レグは第2接合点を含み、回路の第3レグは第1接合点と第2接合点との間を延びる。
【0027】
第2接合点は回路の分岐点である。主管から流れてくる冷媒は第2接合点で分かれて、第2熱交換器および第3熱交換器へ供給することができる。
【0028】
第3レグは少なくとも第1レグの第1部分と並列に存在していて、第1レグの第1部分は少なくとも第1熱交換器を含み、第1レグの第2部分は少なくとも蓄圧装置を含む。
【0029】
本発明の一態様によれば、主管は主膨張部材を含む。主膨張部材は、冷媒の観点から主熱交換器の上流に存在する。主熱交換器が凝縮器として動作している場合、主膨張部材は動作不能である。それゆえ、完全に開かれている。主熱交換器が蒸発器として動作している場合、主膨張部材は冷媒を膨張させる。
【0030】
本発明の一態様によれば、第1レグは第1膨張部材を含む。第1膨張部材は、冷媒の観点から第1熱交換器の上流に存在する。
【0031】
本発明の一態様によれば、第2レグは第2膨張部材を含む。第2膨張部材は、冷媒の観点から第2熱交換器の上流に存在する。
【0032】
本発明の一態様によれば、第3レグは第3膨張部材を含む。第3膨張部材は、冷媒の観点から第3熱交換器の上流に存在する。
【0033】
主膨張部材、第1膨張部材、第2膨張部材、および/または第3膨張部材は、例えば電子膨張弁である。これらは遮断機能を装備していることがある。遮断機能が膨張部材のうちの一つ、および/または別の物の一部ではない場合、遮断機能は前記関連する膨張部材の上流にオフセットされ、専用の構成要素により実行される。
【0034】
これらの膨張部材のうちの1つおよび/または別のものは、完全に開く、または部分的に開くことができる。開かれている場合、それらはその中を通過する冷媒の状態を変化させず、動作不能とみなされて完全に開かれている。それらが閉じられている場合は、冷媒が通過するのを防ぐ。それらが部分的に開かれている場合は、それらは冷媒を膨張させ、したがって関連する熱交換器により供給される冷却能力に影響を与える。
【0035】
本発明の一態様によれば、蓄圧装置が第1接合点と集合点との間に配置される。したがって、蓄圧装置は第1熱交換器から、および/もしくは第3熱交換器から、ならびに/または主熱交換器から供給を受けることができる。
【0036】
本発明の一態様によれば、主管は圧縮装置と主熱交換器との間に配置されて車室内へ送られる内部気流がその中を通過するように設計される第5熱交換器を含む。この第5熱交換器は、暖房、換気、および/または空調の設備内に設置することができる。第5熱交換器は、車室内へ送られる気流を加熱するために凝縮器として使用される。したがって、第5熱交換器は暖房、換気、および/または空調の設備内に第3熱交換器と一緒に設置することができる。凝縮器として動作している第5熱交換器がある場合、主熱交換器は蒸発器として、ヒートポンプモードで動作可能である。
【0037】
本発明の一態様によれば、主管は主熱交換器と分岐点との間に配置される第3接合点を含み、第4レグが第3接合点と第1接合点との間を延び、第4レグは少なくとも1つの遮断弁を含む。第3接合点は回路の分岐点である。遮断弁は開く、または閉じることができて、第4レグ内で冷媒が循環できるようにする、または循環できないようにすることができる。第1接合点は第4レグ、第1熱交換器、および第3熱交換器から流れてくる冷媒の集合点である。
【0038】
本発明の一態様によれば、第3接合点は主熱交換器と過冷却装置との間に配置される。主熱交換器から流れてくる冷媒は、第3接合点で分かれて第4レグへ供給することができて、それゆえ第1接合点、蓄圧装置、および過冷却装置へ供給することができる。
【0039】
本発明の一態様によれば、回路は主管を分岐点へ接続する第5レグを含み、第5レグは少なくとも1つの遮断弁を含む。遮断弁は、開く、または閉じることができて、第5レグ内で冷媒が循環できるようにする、または循環できないようにすることができる。
【0040】
第5レグは、分岐点と、主管内で第5熱交換器と主熱交換器との間に配置される第4接合点との間を延びる。有利には、第4接合点は第5熱交換器と主膨張部材との間に配置される。したがって、主膨張部材が閉じられている場合、冷媒は回路の分岐点へ到達するために第5レグを利用する。
【0041】
本発明の一態様によれば、第1熱交換器は第2熱交換器よりも大きい熱出力を作り出すよう構成される。第1熱交換器および第2熱交換器は異なる熱性能を有する。この差異は、第1熱交換器と第2熱交換器が、例えば大きさの点で、形状の点で、および/または異なる熱性能特徴を与える技術および/または材料を使用して設計されていて、異なる型式であるという事実に由来し得る。例えば、第1熱交換器はより多い流量の冷媒用に構成される。これらの熱交換器が同一のプレート型交換器である別の例によれば、第1熱交換器は第2熱交換器よりも多い枚数のプレートを有する。
【0042】
第1熱交換器および/または第2熱交換器は、熱伝導液のループにより冷却される電気けん引動力伝達装置の一部を冷却する必要性に応じて使用される。走行中に冷却の必要性が低いと、その結果使用されるのは第2熱交換器である。急速充電時には、必要な能力の大部分を提供するのは第1熱交換器である。第2熱交換器は支援を提供し、圧縮装置の流入口での過熱動作点を可能とし、それゆえ動作サイクルを改善する。
【0043】
本発明の一態様によれば、回路は2つの通路を有する内部熱交換器を含み、低圧の通路は主管内で集合点と圧縮装置との間に配置され、高圧の通路は主管内で過冷却装置と分岐点との間に配置される。
【0044】
本発明の別の態様によれば、回路は2つの通路を有する内部熱交換器を含み、低圧の通路は蓄圧装置と集合点との間に配置され、高圧の通路は主管内で過冷却装置と分岐点との間に配置される。
【0045】
また、本発明は、上述されたような冷媒用の冷媒回路と、第1熱交換器および第2熱交換器を介して冷媒回路と熱的に結合した熱伝導液のループとを含む車両の熱処理のためのシステムに関し、第1熱交換器および第2熱交換器は車両の電気けん引動力伝達装置の少なくとも1つの同じ部分の熱処理を担当する。
【0046】
熱伝導液のループは、主導管、第1熱交換器および第2熱交換器、ならびに、例えばポンプなどの、主導管内に熱伝導液を循環させることができる循環誘発手段を少なくとも含む閉回路である。
【0047】
したがって、第1熱交換器および第2熱交換器は冷媒回路の一部、および熱伝導液のループの一部を成す。そしてこれらは、冷媒および熱伝導液の両方がその中を通過するように構成されている二流体の、特に二液体の熱交換器である。一方で第1熱交換器内に、他方で第2熱交換器内に、冷媒と熱伝導液との間の熱エネルギーの移動があり、熱伝導液は第1熱交換器および/または第2熱交換器が蒸発器として動作する場合に冷却される。
【0048】
車両の電気けん引動力伝達装置の一部は、例えば、電池や電池パックなどの車両の蓄電装置である。また、車両の電気けん引動力伝達装置の一部は、車両の電気けん引モータまたは電気けん引モータ用の電子制御装置に相当することがある。つまり、前記一部は、車両の冷却する必要がある電気けん引動力伝達装置の任意の一部に相当し得る。また、熱処理はこれらの多くの部分を対象にし得る。
【0049】
本発明の更なる特徴、詳細、および利点は、図面を参照しながら以下で情報目的で提供される説明を読むことでより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本発明に係る、第1実施形態における回路の概略図である。
【
図2】車室および/または車両の電気けん引動力伝達装置の一部を冷却する異なる運転モードに従って作動される第1実施形態の主題である回路を示す。
【
図3】車室および/または車両の電気けん引動力伝達装置の一部を冷却する異なる運転モードに従って作動される第1実施形態の主題である回路を示す。
【
図4】車室および/または車両の電気けん引動力伝達装置の一部を冷却する異なる運転モードに従って作動される第1実施形態の主題である回路を示す。
【
図5】車室および/または車両の電気けん引動力伝達装置の一部を冷却する異なる運転モードに従って作動される第1実施形態の主題である回路を示す。
【
図6】車室および/または車両の電気けん引動力伝達装置の一部を冷却する異なる運転モードに従って作動される第1実施形態の主題である回路を示す。
【
図7】本発明に係る、第2実施形態における回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
まず最初に、図は本発明を実施するために本発明を詳細に説明しているが、前記図は必要であれば本発明をより良く定義する役割を果たすことももちろん可能であることに留意すべきである。これらの図は、回路がどのように作られるか、何が回路を構成しているか、および、冷媒が回路の中をどのように循環するか、を示す概略表現である。特に、本発明に係る回路は、冷媒を圧縮する装置と、熱伝導液のループに結合されて空気と交換する2つの熱交換器と、蓄圧装置と、少なくとも3つの膨張部材と、これらの構成要素のそれぞれと接続する配管と、を主に含む。
【0052】
以下の説明で使用される上流および下流という用語は、問題になっている流体、すなわち冷媒、車室内へ送られる内部気流、または車室の外の外部気流の循環の方向を指す。
【0053】
図2~6では、冷媒は問題の配管内の後者の循環の方向を示す矢印で記号化されている。実線は、冷媒が循環する回路の一部を示すのに対し、破線は冷媒が循環しないことを示す。高圧で高温の冷媒は黒塗りの矢印で表される。低圧で低温の冷媒は白抜きの矢印で表される。
【0054】
「主(主要な)」、「第1」、「第2」などの識別子は、階層のレベルを示すことや、それらが付される用語を順序付けることは意図していない。これらの識別子はそれらが付される用語を区別する役割を果たし、本発明の範囲を狭めることなく交換可能である。
【0055】
それゆえ、
図1は第1実施形態の回路1を示す。この回路1は、冷媒が圧縮装置2により循環させられる閉ループである。圧縮装置2は電動コンプレッサ、すなわち、圧縮機構、電気モータ、および場合によっては制御装置を含むコンプレッサの形態を取り得る。
【0056】
示される第1実施形態によれば、回路1は、主管3、第1レグ4、および第2レグ5を少なくとも含む。第1レグ4および第2レグ5は、いずれも主管3と直列に存在している。第1レグ4および第2レグ5は並列に存在していて集合点6で交わる。主管3は集合点6と分岐点7との間を延び、分岐点7はそれ以降では第1レグ4と第2レグ5とが分離する点である。
【0057】
主管3は、冷媒圧縮装置2と主熱交換器8とを少なくとも含む。主熱交換器8は、車室の外の空気の流れがその中を通過するように設計される。したがって、主熱交換器8は、この外部気流が供給されるように車両の前面に配置される。主熱交換器8は凝縮器として動作可能である。
【0058】
主管3は主膨張部材9を含む。主膨張部材9は冷媒の観点から主熱交換器8の上流に配置される。したがって、主膨張部材9と関連付けられることで、主熱交換器8は蒸発器として動作可能である。主膨張部材9は、遮断機能が組み込まれているので、完全に開く、もしくは部分的に開く、または閉じることができる。
【0059】
主管3は主熱交換器8と分岐点7との間に配置される過冷却装置10を含む。過冷却装置10は第4熱交換器である。過冷却装置10は、外部気流が供給されるように車両の前面に配置される。したがって、主熱交換器8および過冷却装置10は、車両の前部に一緒に存在する。過冷却装置10は、外部気流が主熱交換器8を通過する前に過冷却装置10の中を通過するように設置される。外部気流の観点から、第4熱交換器は主熱交換器8の上流に存在する。
【0060】
主管3は逆流防止弁11を含む。逆流防止弁11は過冷却装置10と分岐点7との間に配置される。逆流防止弁11は、冷媒が分岐点7から過冷却装置10に向かって循環するのを防ぐ。
【0061】
主管3は、圧縮装置2と主熱交換器8との間に配置される第1熱交換器12を含む。この例では、第5熱交換器12は圧縮装置2と主膨張部材9との間に配置される。第5熱交換器12は、車室内へ送られる内部の空気の流れがその中を通過するように設計される。第5熱交換器12は、暖房、換気、および/または空調の設備内で凝縮器として動作するよう構成される。
【0062】
第1レグ4は、熱伝導液のループ14と熱的に結合した第1熱交換器13および冷媒を蓄積する蓄圧装置15を少なくとも含む。
【0063】
第1熱交換器13は蒸発器として動作するよう構成される。第1熱交換器13は、第1熱交換器13の上流に配置される第1膨張部材16と関連付けられる。主膨張部材16は、遮断機能が組み込まれているので、完全に開く、もしくは部分的に開く、または閉じることができる。
【0064】
蓄圧装置15は、冷媒の観点から集合点6の上流に存在する。蓄圧装置15は、冷媒の液相を気相から分離して、冷媒の液相を蓄積することができる。それゆえ、回路1は乾燥剤のボトルを持たない。
【0065】
第2レグ5は、熱伝導液のループ14と熱的に結合した第2熱交換器17を少なくとも含む。第2熱交換器17は蒸発器として動作するよう構成される。第2熱交換器17は、第2熱交換器17の上流に配置される第2膨張部材18と関連付けられる。第2膨張部材18は、遮断機能が組み込まれているので、完全に開く、もしくは部分的に開く、または閉じることができる。
【0066】
熱伝導液のループ14を使用する条件によって、第2熱交換器17の内部の冷媒に過熱が生じ得る。この過熱は、同じ圧力での飽和温度を超えて冷媒の温度が上昇することに相当する。
【0067】
集合点6は、蓄圧装置15と圧縮装置2との間に配置される。したがって、蓄圧装置15には第2熱交換器17ではなく第1熱交換器13により冷媒を供給することができる。
【0068】
第1熱交換器13は第2熱交換器17よりも大きい熱出力を作り出すよう構成される。例えば、第1熱交換器13は第2熱交換器17と比べて大きさがより大きい。
【0069】
第1レグ4は第1接合点19を含み、第2レグ5は第2接合点20を含み、回路1の第3レグ25は第1接合点19と第2接合点20との間を延びる。
【0070】
第1レグ4は第1部分21と第2部分22とに分かれる。第1部分21は分岐点7から第1接合点19へ延びる。第2部分22は第1接合点19から集合点6へ延びる。第1膨張部材16および第1熱交換器13は、第1レグ4の第1部分21に含まれる。蓄圧装置15は、それ自体が第1レグ4の第2部分22に含まれる。
【0071】
第2レグ5は第1部分23と第2部分24に分かれる。第1部分23は分岐点7と第2接合点20との間を延びる。第2部分24は第2接合点20と集合点6との間を延びる。第2膨張部材18および第2熱交換器17は、第2レグ5の第2部分24に含まれる。
【0072】
第3レグ25は、車室内へ送られる内部の空気の流れがその中を通過するように設計される第3熱交換器26を少なくとも含む。第3熱交換器26は、車両に装備されている暖房、換気、および/または空調の設備27内で蒸発器として動作するよう構成される。第3熱交換器26は、第3熱交換器26の上流に配置される第3膨張部材28と関連付けられる。第3膨張部材28は、完全に開く、もしくは部分的に開く、または閉じることができる。
【0073】
第3熱交換器26は、第5熱交換器12と共に暖房、換気、および/または空調の設備27内に配置することができる。例えば、第3熱交換器26は、内部気流の観点から第5熱交換器12の上流に配置される。
【0074】
第3熱交換器26は、第3熱交換器26の下流で第1接合点19と集合点6との間に配置されている蓄圧装置15へ冷媒を供給することができる。
【0075】
回路は、第1熱交換器13が単独で動作するよう構成される。その結果、第2膨張部材18および第3膨張部材28は閉じられる。
【0076】
主管3は主熱交換器8と第1接合点19との間に配置される第3接合点29を含み、第4レグ30は第3接合点29と第1接合点19との間を延びる。主熱交換器8は、第4レグ30を介して蓄圧装置15へ冷媒を供給することができる。
【0077】
第4レグ30は少なくとも1つの遮断弁31を含む。遮断弁31は、開かれている場合には冷媒が第4レグ30を循環できるようにし、閉じられている場合にはこの循環を防ぐ。
【0078】
回路1は主管3を分岐点7へ接続する第5レグ32を含む。
【0079】
第5レグ32は第4接合点33と分岐点7との間を延びる。第4接合点33は主管3内で第5熱交換器12と主熱交換器8との間に配置される。有利には第4接合点33は第5熱交換器12と主膨張部材9との間に配置される。
【0080】
第5レグ32は少なくとも1つの遮断弁34を含む。遮断弁34は、開かれている場合には冷媒が第5レグ32を循環できるようにし、閉じられている場合にはこの循環を防ぐ。
【0081】
主管3は、第1部分35、第2部分36、および第3部分37に分かれる。第1部分35は集合点6と第4接合点33との間を延びる。圧縮装置2および第5熱交換器12は、主管3の第1部分35に含まれる。第2部分36は第4接合点33と第3接合点29との間を延びる。主膨張部材9および主熱交換器8は、主管3の第2部分36に含まれる。第3部分37は第3接合点29と分岐点7との間を延びる。過冷却装置10および逆流防止弁11は、主管3の第3部分37に含まれる。
【0082】
冷媒回路1は車両の熱処理システム38に含まれる。熱処理システム38は、冷媒回路1および熱伝導液のループ14を含む。熱伝導液のループ14と冷媒回路1とは、第1熱交換器13および第2熱交換器17を介して熱的に結合している。
【0083】
第1熱交換器13および第2熱交換器17は、車両の電気けん引動力伝達装置の少なくとも1つの同じ部分39の熱処理を担当する。
図1の例では、第1熱交換器13および第2熱交換器17は車両の蓄電装置40の熱処理を担当する。
【0084】
熱伝導液のループ14は、主導管41、第1熱交換器13および第2熱交換器17、ならびに循環誘発手段42を少なくとも含む閉回路1である。
図1の例では、熱伝導液のループ14は、主導管41、第1導管43、および第1連結点45と第2連結点46との間を延びる第2導管44を含む。主導管41は、熱伝導液の観点から、第1導管43および第2導管44と直列に存在している。第1導管43および第2導管44は、同じ観点から互いに並列に存在している。
【0085】
主導管41は蓄電装置40および循環誘発手段42を含む。蓄電装置40は第2連結点46と循環誘発手段42との間に配置される。第1導管43は第1熱交換器13を含む。第2導管44は第2熱交換器17を含む。
【0086】
循環誘発手段42は、熱伝導液が主導管41を循環できるようにすることができる。例えば、循環誘発手段42はポンプである。
【0087】
図2~6は、本発明に係る、
図1に示される実施形態における回路1を示す。
図2~6は、車室および/または車両の蓄電装置40に対する熱処理が必要とされる様々な状況に対応する。必要な冷却能力は提示される運転モードに応じて異なる。その結果、熱交換器または第5熱交換器12のうちの1つ、および/または他方が必要とされる。
【0088】
図2は、空調モードで使用されて走行中に蓄電装置40の熱処理を行う、本発明に係る回路1を示す。この運転モードによって車室と蓄電装置40の同時冷却が可能となる。室内の冷却は第3熱交換器26により行われる。蓄電装置40の冷却は第2熱交換器17により行われる。
【0089】
図2の例では、圧縮装置2は主管3内の冷媒47に高温および高圧を与える。冷媒47が動作不能とされた第5熱交換器12を通過するのは、その状態にある場合である。
【0090】
冷媒47は第4接合点33を通って主管3の第2部分36へ入り、遮断弁34は閉じられているので第5レグ32を通過するのを阻止される。
【0091】
主管3の第2部分36では、冷媒47は完全に開かれている主膨張部材9を通過する。それゆえ、冷媒は主膨張部材9の中ではまったく膨張されない。
【0092】
図2の例では、主熱交換器8は凝縮器として動作している。少なくともその一部がすでに過冷却装置10を通過した外部気流FEは主熱交換器8を通過する。冷媒47は熱エネルギーを外部気流FEへ伝達し、凝結する。主熱交換器8を過ぎて冷媒47は第3接合点29を通過し、主管3の第3部分37へ到達し、遮断弁31は閉じられている。冷媒47は、外部気流FEが同じ時間に通過する過冷却装置10を通過する際に、過冷却を受ける。
【0093】
次に、冷媒47は逆流防止弁11を通過して分岐点7まで移動する。第1膨張部材16が閉じられているので、冷媒47は第2レグ5および第3レグ25へ入り、第2膨張部材18および第3膨張部材28が部分的に開かれているので、冷媒47は第2膨張部材18および第3膨張部材28を通過できる。
【0094】
第2レグ5では、高圧で高温となっている冷媒47は、第2膨張部材18によりもたらされる膨張を受ける。冷媒47は、低圧・低温で第2熱交換器17を通過する。その際に、冷媒47は、熱伝導液48を冷却するために、第2熱交換器17の内部で熱伝導液48のループ14と熱交換を行う。電気けん引動力伝達装置の部分39により与えられた熱的条件により冷媒47の過熱が可能となり、その結果、冷媒47は完全に気相となる。冷媒47が集合点6へ到達するのは、この過熱された状態である。
【0095】
第3レグ25では、高圧で高温となっている冷媒47は、第3膨張部材28によりもたらされる膨張を受ける。冷媒47は、低圧・低温で第3熱交換器26を通過する。その際に、冷媒47は車室用の内部気流FAと熱交換を行う。第3熱交換器26を後にすると、冷媒47は二相の形態となる。蓄圧装置15の内部で液相は分離され、集合点6へ到達するのは基本的に気相である。
【0096】
集合点6で、第2レグ5から流れてくる過熱された冷媒47および第3レグ25から流れてくる冷媒47が圧縮装置2へ到達する前に混合され、熱力学サイクルが完了する適度の過熱が生じる。
【0097】
図2の例では、冷媒47は主管3の全体を、第2レグ5および第3レグ25を通って循環する。冷媒47は第1膨張部材16が閉じているため第1レグ4は循環せず、遮断弁31が閉じているため第4レグ30も循環せず、遮断弁34が閉じているため第5レグ32も循環しない。第2接合点20は冷媒47が分かれる場所であり、集合点6は冷媒47が合流する場所である。
【0098】
図2の例では、熱伝導液48は、電気けん引動力伝達装置の部分39、例えば蓄電装置40を冷却するために、少なくとも主導管41および第2導管44を循環する。
【0099】
図3は、走行中に空調モードだけで作動される、本発明に係る回路1を示す。この運転モードによって、暖房、換気、および/または空調の設備27の第3熱交換器26を使用して車室を冷却することが可能となる。
【0100】
図2で説明されたことに対する差異を以下で説明する。これらの差異を除いて
図2の説明は準用され、
図3で説明される本発明の実装に関して
図2の説明を参照できる。
【0101】
図3の例では、第1膨張部材16および第2膨張部材18は閉じられている。その結果、冷媒47は第2レグ5の第2部分24を循環しない。第2接合点20で、冷媒47は第2レグ25のみを利用する。集合点6は第2レグ5から流れてくる過熱された冷媒47を受け入れない。
【0102】
図3の例では、冷媒47は主管3の全体を、第2レグ5の第1部分23および第3レグ25を通って循環する。冷媒47は第1膨張部材16が閉じているため第1レグ4を循環せず、第2膨張部材18が閉じているため第2レグ5の第2部分24も循環せず、遮断弁31が閉じているため第4レグ30も循環せず、遮断弁34が閉じているため第5レグ32も循環しない。
【0103】
図4は、空調モードで使用されて前記蓄電装置40の急速充電の間に蓄電装置40の熱処理を行う、本発明に係る回路1を示す。この運転モードは、例えば、車両が静止して充電されている間に車両の内部に乗員が残っている場合に使用される。この運転モードによって、車室と、走行時と比べて冷却の必要性がより大きい蓄電装置40との同時冷却が可能となる。室内の加熱は第5熱交換器12により行われる。蓄電装置40の冷却は第1熱交換器13および第2熱交換器17により行われる。集合点6は、過熱された冷媒47と過熱されていない冷媒47の混合物を受け入れる。
【0104】
図4の例では、冷媒47は、第1レグ4に関して説明されることを除いて、
図2に対して説明したように循環する。第1レグ4の循環について、以下で説明する。他のレグ、および主管3については、
図2に対してなされた説明を参照することができて、準用される。
【0105】
第1レグ4を冷媒47は循環し、第1膨張部材16によりもたらされる膨張を受ける。結果として低温、低圧がもたらされた後に、冷媒47は熱伝導液48が同時に通過する第1熱交換器13の内部で熱交換を行う。第2分岐5において、冷媒47は
図2に対して説明されたように循環する。したがって、蓄電装置40は、更なる冷却の必要性に応えるために、第1熱交換器13および第2熱交換器17による共同での熱処理により冷却される。
【0106】
第1レグ4および第3レグ25から流れてくる冷媒47は、蓄圧装置15に入る前に第1接合点19へ到達する。この蓄圧装置15を過ぎて、気体状態の冷媒47は第2レグ5から流れてくる、第2熱交換器17で蒸発した過熱された冷媒47と混合される。
【0107】
図4の例では、熱伝導液48は、第1熱交換器13および第2熱交換器17の同時動作により蓄電装置40を冷却するために、熱伝導液48のループ14の全体を循環する。
【0108】
図5は、走行中に内部加熱モードで作動される、本発明に係る回路1を示す。
【0109】
図5の例では、圧縮装置2は主管3の内部の冷媒47に高温および高圧を与える。冷媒47が第5熱交換器12を通過するのは、その状態にある場合である。冷媒47は、第5熱交換器12を通過する際に内部気流FAと交換する。それゆえ、第5熱交換器12は冷媒47に対して凝縮器として使用される。その際に、内部気流FAは加熱され、車室を加熱する。
【0110】
冷媒47は第4接合点33を通って主管3の第2部分36および第5レグ32へ入り、遮断弁34は閉じられている。
【0111】
主管3の第2部分36において主膨張部材9が冷媒47を膨張させて、冷媒47は高圧で高温から低圧で低温へ移行する。蒸発器として動作している主熱交換器8により、冷媒47が外部気流FEによってもたらされる熱エネルギーを回収することが可能となる。
【0112】
第3接合点29で、遮断弁31が開かれているので、冷媒47は第4レグ30を通過して第1接合点19まで移動する。冷媒47は実際には下流の圧縮装置2により吸い込まれる。したがって、冷媒47は主管3の第3部分37へ進まない。冷媒47は、蓄圧装置15を介して圧縮装置2へ到達する。
【0113】
図5の例では、冷媒47は、第4レグ30および第1レグ4の第2部分22を通って主管3の第1部分35および第2部分36を循環する。冷媒47は主要なレグの第3部分37は循環せず、第1膨張部材16が閉じているため第1レグ4も循環せず、第2膨張部材18が閉じているため第2レグ5も循環せず、第3膨張部材28が閉じているため第3レグ25も循環せず、遮断弁34が閉じているため第5レグ32も循環しない。
【0114】
図6は、走行中に室内の加熱を提供するモードおよび電気けん引動力伝達装置の部分39の冷却を提供するモードで作動される、本発明に係る回路1を示す。したがって、この運転モードによって車室の加熱と蓄電装置40の冷却を同時に行うことが可能となる。車室の加熱は、
図5で説明された実施形態の第5熱交換器12により行われる。蓄電装置40の冷却は、
図2で説明された実施形態の第2熱交換器17により行われる。集合点6は、過熱された冷媒47と過熱されていない冷媒47の混合物を受け入れる。
【0115】
図5に対して記載されたことに対する差異を以下で説明する。これらの差異を除いて
図5の説明は準用され、
図6に係る本発明の実装に関して
図5の説明を参照できる。
【0116】
第4接合点33で、遮断弁34が開かれているので、冷媒47は第5レグ32を利用する。そして、冷媒47は
図4で説明されたように第2レグ5を循環し、
図6で説明される本発明の実装では
図4を参照することができる。
【0117】
図6の例では、冷媒47は、第4レグ30、第1レグ4の第2部分22、第1レグ32、および第2レグ5を通って主管3の第1部分35および第2部分36を循環する。冷媒47は第1レグ4の第3部分37を循環せず、第1膨張部材16が閉じているため第1レグ4も循環せず、第3膨張部材28が閉じているため第3レグ25も循環しない。第4接合点33は冷媒47が分かれる場所であり、集合点6は冷媒47が合流する場所である。
【0118】
図6の例では、熱伝導液48は、冷媒47と熱伝導液48との間で熱交換を行うために、少なくとも主導管41および第2導管44を循環する。
【0119】
図7は、本発明に係る回路1を含む熱管理システム38の第2実施形態を示す。
図1に対して記載されたことに対する差異を以下で説明する。これらの差異を除いて
図1の説明は準用され、
図7に係る本発明の実装に関して
図1の説明を参照できる。差異は、本発明に係る回路1および熱伝導液48のループ14に存在する。ただし、これらの差異のうちのいずれか一つは他の実施形態では別々に含まれうる。
【0120】
図7の例では、本発明に係る回路1は、2つの通路61、62を有する内部熱交換器60を含む。
【0121】
低圧の通路61は、好ましくは主管3内で集合点6と圧縮装置2との間に配置される。あるいは、低圧の通路61は蓄圧装置15と集合点6との間に配置される。
【0122】
高圧の通路62は主管3内で過冷却装置10と集合点7との間に配置され、より詳細には逆流防止弁11と分岐点7との間に配置される。
【0123】
低圧の通路61および高圧の通路62は、
図7をより理解しやすくするために、
図7では接続を明確にすることなく示されている。しかし、低圧の通路61および高圧の通路62は、低圧の通路61を循環する低圧の冷媒と高圧の通路62を循環する高圧の冷媒との間で熱交換を行うことができるように、一つの同じ内部熱交換器60の一部を形成していることは理解される必要がある。
【0124】
図7の例では、第1熱交換器13および第2熱交換器17は車両の電気けん引動力伝達装置の一つの同じ部分39、すなわち蓄電装置40の熱処理を担当する。
図7に示される熱伝導液48のループ14は、車両の電気けん引動力伝達装置の2つの部分39、すなわち電気モータ49とこの電気モータ49を制御する電子制御装置50とを熱処理することができる。第1熱交換器13および第2熱交換器17により提供可能な冷却を補うために、蓄電装置40は過冷却装置10と共に車両の前面に配置される放熱器(radiator)51により実現される追加の冷却を享受する。放熱器51は、車両の外の外部気流FEがその中を通過するよう構成される。この外部気流FEに対して、放熱器51は主熱交換器8の上流に存在する。
【0125】
放熱器51は、その内部の熱伝導液48に対して2つの温度レベルを生成することができる。2つの温度レベルを生成するために、放熱器51は、互いに平行な流入口52、第1排出口53、および第2排出口54を含む。第1排出口53は第1温度レベルの熱伝導液を送出することができて、第2排出口54は第1温度レベルとは異なる第2温度レベルの熱伝導液を送出することができる。第1排出口53は、第1温度レベルから恩恵を受けて電気モータ49へ供給することができる。第2排出口54は、第2温度レベルから恩恵を受けて蓄電装置40および電子装置50へ供給することができる。
【0126】
熱伝導液48のループ14は、第3連結点55および第4連結点56を含む。第3連結点55は、熱伝導液48が一方で第2連結点46へ向かい、他方で電子装置50へ向かうように、熱伝導液48を分割することを目的とした点である。第4連結点56は、熱伝導液48が一方で第1連結点45から、他方で電気モータ49から流れてくるようにすることを目的とした点である。
【0127】
放熱器51の第1排出口53から流れてくる熱伝導液48を循環させるために、熱伝導液48のループ14には熱伝導液を移動させる追加の変位手段57が提供される。追加の変位手段57は第1排出口53と電気モータ49との間に配置される。追加の変位手段57は、例えばポンプである。
【0128】
放熱器51の第1排出口53と熱伝導液を移動させる追加の変位手段57との間に、第5連結点58が存在する。第5連結点58は、第1排出口53から流れてくる熱伝導液48と電子装置50から流れてくる熱伝導液48とを合流させることができる集合領域である。
【0129】
第1導管43は三方弁59を含む。三方弁49は、熱伝導液48が分岐しうる点である。熱伝導液49は、熱伝導液49が循環する方向を与える循環誘発手段52により循環させられる。特に、第1熱交換器13および第2熱交換器17は熱伝導液49の観点から蓄電装置40の上流に配置される。したがって、熱伝導液49の循環を引き起こす装置42により与えられた循環方向のために、第1連結点45から流れてくる熱伝導液49は、それ自体が熱伝導液48を送出することができる三方弁59へ流れて、一方では第1熱交換器13へ、他方では第4連結点56へ流れ込むことができる。三方弁59は、これらの送出のうちの一つ、および/またはそれ以外を防ぐ、または可能とする遮断機能を有する。
【0130】
したがって、前述したことより、本発明は、過剰消費をすることなく削減されたノイズレベルで簡単に、例えば車両の電気駆動モータへ電力を供給するように構成されている蓄電装置などの車両の電気けん引動力伝達装置の一部の冷却、および車室内へ送られる内部気流を冷却することで車室の熱処理を確実に行うことを可能とする。したがって、回路の性能係数は向上し、特に車室の冷却と同時に急速充電するモードにある場合に向上する。
【0131】
本発明は、本明細書で説明され示された手段および構成に決して限定されず、また任意の同等の手段または構成、およびそのような手段の技術的に運用可能な任意の組み合わせまで及ぶ。特に、冷媒回路の構造は、本明細書に記載の機能を最終的に実現している限りにおいて、本発明を損なうことなく変更することができる。