IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エクサウィザーズの特許一覧

特許7198959情報処理方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置
<>
  • 特許-情報処理方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置 図1
  • 特許-情報処理方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置 図2
  • 特許-情報処理方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置 図3
  • 特許-情報処理方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置 図4
  • 特許-情報処理方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】情報処理方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/10 20180101AFI20221222BHJP
   G06Q 30/0201 20230101ALI20221222BHJP
【FI】
G16H20/10
G06Q30/02 300
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022104799
(22)【出願日】2022-06-29
【審査請求日】2022-07-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517255566
【氏名又は名称】株式会社エクサウィザーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】松田 修一
(72)【発明者】
【氏名】木股 瑠惟
(72)【発明者】
【氏名】出町 彰啓
(72)【発明者】
【氏名】リン ホェイルー
【審査官】森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-234003(JP,A)
【文献】特開2018-081529(JP,A)
【文献】若杉 徹,[6] ビッグデータ化する医療情報 -専門家から,患者自身・マーケティングへの活用へ-,ビッグデータの収集,調査,分析と活用事例 ,第1版,技術情報協会,2016年04月07日,p.219-238
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 20/10
G06Q 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置が、
医薬品の処方に関する情報を含むヘルスケアデータを取得し、
取得した前記ヘルスケアデータから、患者単位での前記医薬品の処方状況を判定し、
前記患者単位での前記医薬品の処方状況を基に、前記医薬品毎又は前記医薬品の薬効毎の処方状況を集計し、
取得した前記ヘルスケアデータに含まれる自然言語情報から、前記処方状況に関連するキーワードを取得し、
集計した処方状況及び前記キーワードを対応付けて出力
前記処方状況には、別医薬品から前記医薬品への変更、及び、前記医薬品から別医薬品への変更を含む、
情報処理方法。
【請求項2】
前記処方状況には、前記医薬品の患者に対する新規の処方、及び、前記医薬品の処方中止を含む、
請求項に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記自然言語情報には、電子カルテの情報を含み、
前記情報処理装置は、
前記電子カルテから前記処方状況に対応するキーワードを取得し、
前記処方状況毎に複数の患者に係る前記キーワードを集計して出力する、
請求項に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記情報処理装置は、複数の時点における前記処方状況及び前記キーワードを対応付けて出力する、
請求項に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記情報処理装置は、前記別医薬品に係る設定を受け付ける、
請求項に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記情報処理装置は、前記医薬品を使用する施設毎又は前記施設が存在する地域毎に、前記処方状況及び前記キーワードを出力する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記情報処理装置は、前記処方状況及び前記キーワードを基に、前記医薬品の販売促進に係るメッセージを出力する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
医薬品の処方に関する情報を含むヘルスケアデータを取得し、
取得した前記ヘルスケアデータから、患者単位での前記医薬品の処方状況を判定し、
前記患者単位での前記医薬品の処方状況を基に、前記医薬品毎又は前記医薬品の薬効毎の処方状況を集計し、
取得した前記ヘルスケアデータに含まれる自然言語情報から、前記処方状況に関連するキーワードを取得し、
集計した処方状況及び前記キーワードを対応付けて出力する
処理を実行させ
前記処方状況には、別医薬品から前記医薬品への変更、及び、前記医薬品から別医薬品への変更を含む、
コンピュータプログラム。
【請求項9】
医薬品の処方に関する情報を含むヘルスケアデータを取得する第1の取得部と、
取得した前記ヘルスケアデータから、患者単位での前記医薬品の処方状況を判定する判定部と、
前記患者単位での前記医薬品の処方状況を基に、前記医薬品毎又は前記医薬品の薬効毎の処方状況を集計する集計部と、
取得した前記ヘルスケアデータに含まれる自然言語情報から、前記処方状況に関連するキーワードを取得する第の取得部と、
集計した処方状況及び前記キーワードを対応付けて出力する出力部と
を備え
前記処方状況には、別医薬品から前記医薬品への変更、及び、前記医薬品から別医薬品への変更を含む、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルスケアに係る情報処理を行う情報処理方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データ分析及びAI(Artificial Intelligence)等の技術の進歩により、いわゆるビッグデータの活用が注目されている。ヘルスケアに係るビッグデータには、例えばレセプトデータ、DPCデータ又は電子カルテデータ等のデータがある。
【0003】
特許文献1においては、レセプトデータの用語が表現されたワンホットベクトルを入力ベクトルとして、入力層行列により別次元の隠れベクトルに変換する入力層と、隠れベクトルを出力層行列によりワンホットベクトルと同じ次元の出力ベクトルに変換する出力層とを有するモデルを用いて、レセプトデータの用語と共起する別の用語の対数確率値が大きくなるように入力層行列と出力層行列を更新し、用語表現行列を生成して各用語の表現ベクトルを生成し、分類情報で算出した特定の分類に属する用語の表現ベクトルと各用語の表現ベクトルとの類似度が所定閾値以上の場合に、分類に用語を追加して拡張分類情報を生成するヘルスケアデータ分析装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-22186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘルスケアに係る商品として、例えば医薬品がある。医薬品の製造及び販売等を行う製薬会社では、ヘルスケアに係るビッグデータを利用して、例えば自社商品のシェア又は競合商品の販売状況等を分析し、分析結果を自社商品の販売促進等に役立てることが期待されている。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ヘルスケアデータの分析を支援することが期待できる情報処理方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る情報処理方法は、情報処理装置が、医薬品の処方に関する情報を含むヘルスケアデータを取得し、取得した前記ヘルスケアデータから、患者単位での前記医薬品の処方状況を判定し、前記患者単位での前記医薬品の処方状況を基に、前記医薬品毎又は前記医薬品の薬効毎の処方状況を集計し、取得した前記ヘルスケアデータに含まれる自然言語情報から、前記処方状況に関連するキーワードを取得し、集計した処方状況及び前記キーワードを対応付けて出力前記処方状況には、別医薬品から前記医薬品への変更、及び、前記医薬品から別医薬品への変更を含む。
【発明の効果】
【0008】
一実施形態による場合は、ヘルスケアデータの分析を支援することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る情報処理システムの概要を説明するための模式図である。
図2】本実施の形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図3】本実施の形態に係る情報処理装置が行う処理の手順を示すフローチャートである。
図4】本実施の形態に係る情報処理装置が表示する分析画面の一表示例を示す模式図である。
図5】本実施の形態に係る情報処理装置が表示する分析画面の一表示例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る情報処理システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
<システム概要>
図1は、本実施の形態に係る情報処理システムの概要を説明するための模式図である。本実施の形態に係る情報処理システムでは、一又は複数の病院等の医療施設において医師等による患者に対する医薬品の処方が行われ、この処方記録に関するデータが各医療施設のコンピュータ等からサーバ装置3へ送信される。本実施の形態に係るサーバ装置3は、ヘルスケアに係るデータを記録する医療DB(データベース)3aを有しており、各病院から送信されるデータを受信して医療DB3aに記録して蓄積する。
【0012】
本実施の形態において医療DB3aに蓄積されるヘルスケアデータには、例えばレセプトデータ、DPC(Diagnosis Procedure Combination)データ及び電子カルテデータ等が含まれ得る。レセプトデータは、診療報酬明細書であり、患者の傷病名及び医療施設が実施した医療行為等の情報と、各医療行為に対する請求額に関する情報とを含む。各医療施設では、例えば1ヶ月に1回の頻度で患者毎にレセプトデータが作成され、サーバ装置3へ送信される。DPCデータは、診療情報の全国統一データであり、例えば様式1、Eファイル、Fファイル、Dファイル、Hファイル等の複数のファイルで構成されるデータである。DPCデータのこれら複数のファイルには、例えば患者の性別、生年月日、入退院年月日、病名及び手術情報等の様々な情報が含まれ得る。電子カルテデータは、患者の診断内容、検査結果、処方した医薬品、及び、診察後の経過等について医師等が記載(入力)したデータである。
【0013】
本実施の形態においてレセプトデータ及びDPCデータは、含まれるデータの型及び配置等が予め定められた構造となるように整形されたデータ、いわゆる構造化データである。これに対して、本実施の形態において電子カルテデータは、非構造化データであり、医師等が入力した文章等の情報を含む自然言語データである。
【0014】
サーバ装置3は、医療施設で作成されたレセプトデータ、DPCデータ及び電子カルテデータ等を含むヘルスケアデータを医療DB3aに記録すると共に、記録したこれらのヘルスケアデータを情報処理装置1からの要求に応じて提供する。情報処理装置1は、例えば製薬会社等において医薬品のマーケティングに関する分析等を行うユーザが使用する装置であり、例えばパーソナルコンピュータ、タブレット型端末装置又はスマートフォン等の汎用的な情報処理装置に対して、本実施の形態に係る情報処理システムを利用するためのアプリケーションプログラムをインストールしたものである。また情報処理装置1は、例えばクラウド環境上に構築された仮想的な情報処理装置であってよい。サーバ装置3についても同様である。
【0015】
情報処理装置1は、例えば1日に1回、1週間に1回もしくは1ヶ月に1回等の所定の周期で、又は、ユーザによる操作に応じて、ネットワークを介したサーバ装置3との通信を行い、サーバ装置3の医療DB3aに記録されたヘルスケアデータを取得する。情報処理装置1は、例えば取得したヘルスケアデータに含まれるレセプトデータ又はDPCデータ等の情報を集計することにより、例えば医薬品の処方量の時系列的な変化、又は、自社医薬品及び競合医薬品のシェア等の集計結果をグラフ等に可視化してユーザに提供する。なお本実施の形態においては、医薬品毎にデータの集計及び分析等を行うものとして説明するが、これに限るものではなく、例えば医薬品の薬効毎にデータの集計及び分析等を行ってもよい。
【0016】
また本実施の形態に係る情報処理装置1は、例えば取得したヘルスケアデータに含まれる電子カルテデータを基に、医師等が記載した文章等の自然言語データの中から医薬品の処方に関連するキーワードを抽出し、抽出した一又は複数のキーワードを医薬品の使用状況(処方状況)等に対応付けてユーザに提示する。本実施の形態において医薬品の使用状況には、例えば患者に対して新規に処方された、競合医薬品が処方されていた患者に対して自社医薬品が処方された、患者に対する医薬品の処方が中止された、自社医薬品が処方されていた患者に対して競合医薬品が処方された、及び、患者に対する医薬品の処方量が変化(増加又は減少)した等の状況が含まれ得る。例えば自社医薬品が処方されていた患者に対して競合医薬品が処方されたという使用状況に対して、この状況に対応する電子カルテデータからキーワードを情報処理装置1が抽出して表示することにより、ユーザは自社医薬品から競合医薬品へ切り替えられた原因等を分析することが期待できる。
【0017】
<装置構成>
図2は、本実施の形態に係る情報処理装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る情報処理装置1は、処理部11、記憶部(ストレージ)12、通信部(トランシーバ)13、表示部(ディスプレイ)14及び操作部15等を備えて構成されている。本実施の形態に係る情報処理装置1は、例えばパーソナルコンピュータ又はタブレット型端末装置等の汎用的な情報処理装置を用いて構成され得る。なお本実施の形態においては、1つの情報処理装置1にて処理が行われるものとして説明を行うが、複数の情報処理装置が分散して処理を行ってもよい。
【0018】
処理部11は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)又は量子プロセッサ等の演算処理装置、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を用いて構成されている。処理部11は、記憶部12に記憶されたプログラム12aを読み出して実行することにより、サーバ装置3の医療DB3aに記録されたヘルスケアデータを取得する処理、及び、取得したヘルスケアデータから医薬品の使用状況及び関連するキーワードを抽出する処理等の種々の処理を行う。
【0019】
記憶部12は、例えばハードディスク等の大容量の記憶装置を用いて構成されている。記憶部12は、処理部11が実行する各種のプログラム、及び、処理部11の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部12は、処理部11が実行するプログラム12aを記憶する。また記憶部12には、サーバ装置3の医療DB3aから取得したヘルスケアデータを記憶するヘルスケアデータ記憶部12bが設けられている。
【0020】
本実施の形態においてプログラム(コンピュータプログラム、プログラム製品)12aは、メモリカード又は光ディスク等の記録媒体99に記録された態様で提供され、情報処理装置1は記録媒体99からプログラム12aを読み出して記憶部12に記憶する。ただし、プログラム12aは、例えば情報処理装置1の製造段階において記憶部12に書き込まれてもよい。また例えばプログラム12aは、遠隔のサーバ装置等が配信するものを情報処理装置1が通信にて取得してもよい。例えばプログラム12aは、記録媒体99に記録されたものを書込装置が読み出して情報処理装置1の記憶部12に書き込んでもよい。プログラム12aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体99に記録された態様で提供されてもよい。
【0021】
ヘルスケアデータ記憶部12bは、情報処理装置1がサーバ装置3の医療DB3aから取得したヘルスケアデータを、必要に応じて一時的に又は恒久的に記憶する。また情報処理装置1は、ヘルスケアデータ記憶部12bにヘルスケアデータそのものを記憶しておくのではなく、例えばヘルスケアデータから抽出した種々の情報、又は、抽出した情報を基に生成した情報等を記憶してもよい。
【0022】
通信部13は、例えばインターネット、LAN(Local Area Network)又は携帯電話通信網等を含むネットワークNを介して、種々の装置との間で通信を行う。本実施の形態において通信部13は、ネットワークNを介して、医療DB3aを有する一又は複数のサーバ装置3との間で通信を行う。通信部13は、処理部11から与えられたデータを他の装置へ送信すると共に、他の装置から受信したデータを処理部11へ与える。
【0023】
表示部14は、液晶ディスプレイ等を用いて構成されており、処理部11の処理に基づいて種々の画像及び文字等を表示する。操作部15は、ユーザの操作を受け付け、受け付けた操作を処理部11へ通知する。例えば操作部15は、機械式のボタン又は表示部14の表面に設けられたタッチパネル等の入力デバイスによりユーザの操作を受け付ける。また例えば操作部15は、マウス及びキーボード等の入力デバイスであってよく、これらの入力デバイスは情報処理装置1に対して取り外すことが可能な構成であってもよい。
【0024】
また本実施の形態に係る情報処理装置1には、記憶部12に記憶されたプログラム12aを処理部11が読み出して実行することにより、ヘルスケアデータ取得部11a、使用状況情報取得部11b、キーワード取得部11c及び表示処理部11d等が、ソフトウェア的な機能部として処理部11に実現される。なお本図においては、処理部11の機能部として、ヘルスケアデータの分析を支援する処理に関連する機能部を図示し、これ以外の処理に関する機能部は図示を省略している。
【0025】
ヘルスケアデータ取得部11aは、通信部13にてサーバ装置3との通信を行うことによって、サーバ装置3が医療DB3aに記録したヘルスケアデータを取得する処理を行う。ヘルスケアデータ取得部11aは、例えば1日に1回、1週間に1回もしくは1ヶ月に1回等の所定の周期で、又は、ユーザの操作に応じて、サーバ装置3にヘルスケアデータの送信を要求し、この要求に応じてサーバ装置3が送信するヘルスケアデータを通信部13にて受信することにより、ヘルスケアデータを取得する。ヘルスケアデータ取得部11aは、取得したヘルスケアデータをヘルスケアデータ記憶部12bに記憶する。
【0026】
使用状況情報取得部11bは、ヘルスケアデータ取得部11aが取得したヘルスケアデータを基に、一又は複数の医薬品の使用状況に関する情報を取得する処理を行う。本実施の形態において使用状況情報取得部11bは、例えばヘルスケアデータに含まれるレセプトデータ及びDPCデータを基に、対象の医薬品が処方された1人の患者についての情報を抽出し、この患者に対する対象の医薬品の処方日時及び処方量等の情報を取得する。使用状況情報取得部11bは、対象の医薬品が処方された全ての患者について同様に処方日時及び処方量等の情報を取得する。次いで使用状況情報取得部11bは、対象の医薬品が処方された各患者が、この医薬品についていずれの使用状況であるかを判定する。本実施の形態においては、下記の(1)~(4)のいずれの使用状況に各患者が該当するかを、ヘルスケアデータから取得した対象の医薬品の処方日時及び処方量等の情報を基に使用状況情報取得部11bが判定する。
【0027】
(1)新規処方:対象の医薬品が処方されていなかった患者に対して新規にこの医薬品の処方がなされた場合。
(2)競合からの切り替え:競合医薬品が処方されていた患者に対して対象の医薬品が処方された場合。
(3)処方中止(脱落):対象の医薬品が処方されていた患者についてこの医薬品の処方が中止された場合。
(4)競合への切り替え:対象の医薬品が処方されていた患者に対して競合医薬品が処方された場合。
【0028】
また更に使用状況情報取得部11bは、上記の(1)~(4)の4種類の使用状況に下記の(5)、(6)の2種類の使用状況を加えた合計6種類の使用状況について各患者が該当するか否かを判定してもよい。
(5)増量:対象の医薬品が処方されていた患者についてこの医薬品の処方量が増加した場合。
(6)減量:対象の医薬品が処方されていた患者についてこの医薬品の処方量が減少した場合。
【0029】
なお使用状況情報取得部11bが判定する使用状況は上記の(1)~(6)に限らず、どのような状況であってもよい。使用状況情報取得部11bは、各患者がいずれの衣装状況に該当するかの判定結果、更には各使用状況に該当する患者数の集計結果等の情報を、使用状況情報としてヘルスケアデータ記憶部12bに記憶することができる。
【0030】
キーワード取得部11cは、ヘルスケアデータ取得部11aが取得したヘルスケアデータに含まれる電子カルテデータを基に、使用状況情報取得部11bが判定した上記の各使用状況について、関連するキーワードを取得する処理を行う。本実施の形態に係る情報処理システムでは、各患者に対して患者ID等の識別情報が一意に付されており、ヘルスケアデータに含まれるレセプトデータ、DPCデータ及び電子カルテデータは患者IDに基づいて紐付けられている。例えばキーワード取得部11cは、ある使用状況に該当する患者の患者ID等の情報をヘルスケアデータに含まれるレセプトデータ又はDPCデータから取得し、取得した患者IDが付された電子カルテデータを抽出する。キーワード取得部11cは、抽出した電子カルテデータに記載された文章等の自然言語データから、一又は複数のキーワードを抽出する。
【0031】
キーワード取得部11cによる自然言語データからのキーワードの抽出は、どのような方法により行われてもよい。例えばキーワード取得部11cは、電子カルテデータの文章等に対する構文解析、形態素解析及び/又は字句解析等の処理を行うことにより、キーワードの候補となる単語又は短文等を抽出し、これらの候補の電子カルテデータ中における出現頻度又は出現回数等を計測し、出現頻度が高い上位数個の候補又は出現階数が閾値を超える候補等を最終的にキーワードとして抽出することができる。
【0032】
また例えばキーワード取得部11cは、事前言語処理を行う機械学習モデル、いわゆるAI(Artificial Intelligence)を用いて電子カルテデータからキーワードを取得してもよい。機械学習モデルは、例えばTransformer、BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)又はGPT-3(Generative Pre-trained Transformer - 3)等のモデルが採用され、電子カルテデータに含まれる文章を入力として受け付けて、医薬品の使用状況に関連するキーワードを出力するように予め機械学習がなされる。
【0033】
キーワード取得部11cは、上記の複数の使用状況について、該当する全ての患者の電子カルテデータからキーワードを取得する。キーワード取得部11cは、取得した複数のキーワードについて、例えば何人の患者の電子カルテデータに各キーワードが含まれていたか等を集計する。キーワード取得部11cは、電子カルテデータから取得したキーワードを、使用状況に対応付けてヘルスケアデータ記憶部12bに記憶すると共に、キーワードに関する集計結果等の情報をヘルスケアデータ記憶部12bに記憶することができる。
【0034】
表示処理部11dは、画像及び文字等の種々の情報を表示部14に表示する処理を行う。本実施の形態において表示処理部11dは、例えば使用状況情報取得部11bが取得した使用状況と、キーワード取得部11cが取得したキーワードとを対応付けて表示する。また表示処理部11dは、例えば医薬品の処方量の変化又は自社医薬品のシェア等の情報をグラフ表示してもよい。
【0035】
<ヘルスケアデータ分析支援処理>
本実施の形態に係る情報処理装置1は、例えば1日に1回、1週間に1回もしくは1ヶ月に1回等の所定の周期でサーバ装置3の医療DB3aに記録されたヘルスケアデータを取得する処理を行う。ヘルスケアデータを取得する周期は、ユーザが設定してもよく、本システムの設計者等により予め定められてもよい。また情報処理装置1は、所定の周期ではなく、ユーザの操作に応じてヘルスケアデータの取得を行ってもよい。情報処理装置1は、医療DB3aに記録されたヘルスケアデータのうち、前回に取得した時点より後に記録されたヘルスケアデータ、即ち差分のデータのみを取得してもよい。また情報処理装置1は、例えばユーザが分析対象とする医薬品に関連するヘルスケアデータを抽出して取得してもよい。
【0036】
本実施の形態に係る情報処理システムでは、医療DB3aに記録されたヘルスケアデータには、レセプトデータ及び/又はDPCデータと、電子カルテデータとが含まれている。本実施の形態においてレセプトデータ及びDPCデータには、患者を識別する患者ID等の識別情報と、この患者に対して処方した医薬品の名称又は医薬品ID等の識別情報と、この医薬品を処方した年月日と、この医薬品の処方量とが対応付けて記憶されている。レセプトデータ及びDPCデータには、これら以外の種々の情報が含まれ得るが、本実施の形態に係る情報処理装置1は、レセプトデータ及びDPCデータに含まれる種々の情報の中から、上述のような患者の識別情報、医薬品の識別情報、処方年月日及び処方量の対応情報を抽出して構造化データを生成し、以降の処理で用いる。なおこの構造化データの生成は、情報処理装置1にて行われるのではなく、サーバ装置3等の他の装置にて行われてもよい。
【0037】
サーバ装置3から取得したヘルスケアデータに含まれるレセプトデータ又はDPCデータから上述の構造化データを生成した情報処理装置1は、今回に生成した構造化データと、過去(少なくとも前回)に取得したヘルスケアデータを基に生成した構造化データとに基づいて、各患者について分析の対象となる医薬品の使用状況を判定する。例えば情報処理装置1は、過去の構造化データをヘルスケアデータ記憶部12bに記憶していてもよく、ヘルスケアデータ記憶部12bに記憶された過去のヘルスケアデータから過去の構造化データを生成してもよい。また例えば情報処理装置1は、今回に取得したヘルスケアデータと記憶しておいた過去のヘルスケアデータとを基に構造化データを生成してもよく、過去分を含めたヘルスケアデータをサーバ装置3から取得して構造化データを生成してもよい。本実施の形態に係る情報処理装置1は、これらの構造化データに基づいて、ヘルスケアデータに含まれる各患者が上述の(1)~(4)又は(1)~(6)の使用状況のいずれに該当するかを判定する。
【0038】
(1)新規処方
情報処理装置1は、例えば過去に対象の医薬品及びこの医薬品の競合医薬品が処方されていなかった患者に対し、新たに対象の医薬品が処方されている場合に、この患者について対象の医薬品の使用状況を「新規処方」と判定することができる。また情報処理装置1は、例えば新規に登録された患者に対して対象の医薬品が処方された場合についても使用状況を「新規処方」と判定することができる。
【0039】
(2)競合からの切り替え
情報処理装置1は、例えば過去に対象の医薬品の競合医薬品が処方されていた患者に対し、この競合医薬品の処方が中止されて新たに対象の医薬品が処方されている場合に、この患者について対象の医薬品の使用状況を「競合からの切り替え」と判定することができる。
【0040】
(3)処方中止
情報処理装置1は、例えば過去に対象の医薬品が処方されていた患者に対し、対象の医薬品の処方が中止され、更に対象の医薬品の競合医薬品の処方もなされていない場合に、この患者について対象の医薬品の使用状況を「処方中止」と判定することができる。
【0041】
(4)競合への切り替え
情報処理装置1は、例えば過去に対象の医薬品が処方されていた患者に対し、対象の医薬品の処方が中止されて新たに競合医薬品が処方されている場合に、この患者について対象の医薬品の使用状況を「競合への切り替え」と判定することができる。
【0042】
(5)増量
情報処理装置1は、例えば過去に対象の医薬品が処方されていた患者に対し、現在も同じ医薬品が処方されており、その処方量が前回と比べて増加している場合に、この患者について対象の医薬品の使用状況を「増量」と判定することができる。
【0043】
(6)減量
情報処理装置1は、例えば過去に対象の医薬品が処方されていた患者に対し、現在も同じ医薬品が処方されており、その処方量が前回と比べて減少している場合に、この患者について対象の医薬品の使用状況を「減量」と判定することができる。
【0044】
なお本実施の形態に係る情報処理システムにおいて、分析対象の医薬品は、ユーザが予め情報処理装置1にて設定しておくものとする。また競合医薬品は、例えばユーザにより予め設定されてもよく、また例えば分析対象の医薬品以外の医薬品を競合医薬品として扱ってもよい。また例えば、情報処理装置1が同じ薬効の医薬品の一覧情報等を保持し、分析対象の医薬品と同じ薬効の他の医薬品を競合医薬品としてもよい。
【0045】
情報処理装置1が上記の処理を行うことにより、レセプトデータ又はDPCデータに含まれる各患者は、上記の(1)~(4)又は(1)~(6)の使用状況に分類されることとなる。ただし本実施の形態に係る情報処理システムにおいて、対象の医薬品の使用状況が上記(1)~(6)のいずれにも該当しない患者は存在し得る。例えば、過去に対象の医薬品が処方されていた患者に対し、現在も同じ医薬品が処方されており、その処方量が前回と同じである場合、この患者は上記(1)~(6)のいずれにも該当しない。このような患者について情報処理装置1は、例えば以降の処理からこの患者を除外してもよく、また例えば使用状況を「その他」等としてもよく、また例えば「現状維持」等の7つ目以降の使用状況を割り当ててもよい。
【0046】
次いで情報処理装置1は、複数の使用状況に分類された各患者について、対応する電子カルテデータを今回に取得したヘルスケアデータの中から抽出する。例えば情報処理装置1は、「新規処方」に分類された患者の中から1人の患者を選択し、この患者について患者ID等の識別情報を構造化データから取得し、取得した識別情報と同じ識別情報が付された電子カルテデータを今回に取得したヘルスケアデータから抽出する。情報処理装置1は、「新規処方」に分類された他の患者についても同様に電子カルテデータを取得し、更に「競合からの切り替え」及び「処方中止」等の他の使用状況についても同様に電子カルテデータを取得する。なお今回に取得したヘルスケアデータの中に、1人の患者について電子カルテデータが複数存在する場合、情報処理装置1は、例えば最も新しい電子カルテデータを取得してもよく、また例えば複数の電子カルテデータを取得してもよい。
【0047】
なお同一の患者についてヘルスケアデータに含まれる患者IDと電子カルテデータに含まれる患者IDとは完全に一致する必要はない。例えば患者IDが数値で表される場合に、ヘルスケアデータの患者IDと電子カルテデータの患者IDとで数値の桁数が異なっていてもよい。この場合に情報処理装置1は、適宜に桁数をそろえる演算等を行って、同一の患者であるか否かを判別してよい。また例えば患者IDが文字列及び数値で表される場合に、数値は同じであるが、文字列の一部又は全部が異なっていてもよい。この場合に情報処理装置1は、適宜に文字列の一部又は全部を置換又は削除して患者IDを比較してもよい。情報処理装置1は、同一の患者であるか否かを患者IDに基づいて判断するための条件又は演算式等を予め記憶している。情報処理装置1は、例えば各患者についてヘルスケアデータの患者IDと電子カルテデータの患者IDとの対応を記憶したテーブルを有していてもよい。
【0048】
本実施の形態に係る情報処理システムの電子カルテデータには、患者を識別する患者ID等の識別情報と、この患者に対して医師等が入力した文章等による診断結果又はコメント等の自然言語データとが含まれている。本実施の形態に係る情報処理装置1は、例えば電子カルテデータの自然言語データからキーワードの候補となる単語又は短文等を複数抽出し、抽出した各候補が電子カルテデータにおいて出現する頻度又は回数等を計測し、頻度又は回数等が高い複数個の候補を最終的なキーワードとして抽出する。
【0049】
情報処理装置1は、各患者について電子カルテデータからのキーワードの抽出を行い、上記の使用状況毎にキーワードの集計を行う。例えば情報処理装置1は、「新規処方」に分類された患者の電子カルテデータから抽出した各キーワードが何人の患者の電子カルテデータに含まれていたかを集計する。情報処理装置1は、同様にして「競合からの切り替え」及び「処方中止」等の他の使用状況についてもキーワードの集計をそれぞれ行う。情報処理装置1は、対象の医薬品について患者の使用状況毎にキーワード及びキーワードの集計結果をまとめて表示部14に表示する。
【0050】
図3は、本実施の形態に係る情報処理装置1が行う処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る情報処理装置1の処理部11のヘルスケアデータ取得部11aは、例えば周期的にサーバ装置3との通信を行うことによって、医療DB3aに記憶されたヘルスケアデータを取得する(ステップS1)。このステップS1においてヘルスケアデータ取得部11aは、前回にヘルスケアデータを取得して以降に医療DB3aに記憶されたヘルスケアデータのみを取得してよい。ヘルスケアデータ取得部11aは、ステップS1にて取得したヘルスケアデータを、記憶部12のヘルスケアデータ記憶部12bに記憶する(ステップS2)。なおヘルスケアデータ取得部11aは、取得したヘルスケアデータから必要な情報を抽出してヘルスケアデータ記憶部12bに記憶してもよく、ヘルスケアデータに含まれる情報に対する演算又は加工等を行ってヘルスケアデータ記憶部12bに記憶してもよい。
【0051】
処理部11の使用状況情報取得部11bは、ステップS1にて取得したヘルスケアデータから、レセプトデータ及び/又はDPCデータを取得する(ステップS3)。使用状況情報取得部11bは、取得したレセプトデータ及び/又はDPCデータから患者の識別情報、医薬品の識別情報、処方年月日及び処方量の対応情報を抽出して構造化データを生成する(ステップS4)。使用状況情報取得部11bは、今回に取得したヘルスケアデータから生成した構造化データと、以前に取得したヘルスケアデータから生成した構造化データとに基づいて、各患者について分析の対象となる医薬品の使用状況を判定する(ステップS5)。使用状況情報取得部11bは、ステップS5にて判定した各患者についての医薬品の使用状況を基に、この医薬品を使用した複数の患者について使用状況を集計する(ステップS6)。
【0052】
処理部11のキーワード取得部11cは、ステップS1にて取得したヘルスケアデータから、電子カルテデータを取得する(ステップS7)。キーワード取得部11cは、ステップS7にて取得した電子カルテデータに含まれる自然言語データから、一又は複数のキーワードを抽出する(ステップS8)。このときにキーワード取得部11cは、例えば1つの電子カルテデータについて登場頻度が高いキーワードの上位数個をキーワードとして抽出することができる。キーワード取得部11cは、ステップS3~S6にて集計した医薬品の使用状況毎に、ステップS8にて抽出したキーワードを集計する(ステップS9)。例えばキーワード取得部11cは、医薬品の使用状況毎に、各キーワードの抽出数をカウントして順位付けすることができる。
【0053】
処理部11は、ヘルスケアデータから取得した使用状況及びキーワードを対応付けてヘルスケアデータ記憶部12bに記憶する(ステップS10)。処理部11の表示処理部11dは、例えば使用状況及びキーワードの対応を表形式で示した解析画面を表示部14に表示して(ステップS11)、処理を終了する。
【0054】
図4は、本実施の形態に係る情報処理装置1が表示する分析画面の一表示例を示す模式図である。本実施の形態に係る情報処理装置1は、医療DB3aに記録されたヘルスケアデータに基づいて分析対象の医薬品に関する使用状況及びキーワードの情報をまとめた分析画面を表示部14に表示する処理を行う。図示の分析画面において情報処理装置1は、例えば表示部14の画面上部に「医薬品Aの使用状況分析」のタイトル文字列を表示し、このタイトル文字列の下方に「使用状況」及び「キーワード」の対応を表形式で表示している。タイトル文字列に含まれる「医薬品A」は、例えばユーザが分析対象の医薬品として設定した医薬品の名称又はID等の識別情報であり、ユーザの設定に応じて変更され得る。
【0055】
また図示の分析画面において情報処理装置1は、「使用状況」として「新規処方」、「競合からの切り替え」、「処方中止」及び「競合への切り替え」の4種類を扱っている。情報処理装置1は、各使用状況に対応付けて、該当する患者の人数と、これらの患者の電子カルテデータから抽出した複数のキーワードの一覧とを表示する。また例えば情報処理装置1は、複数の患者の電子カルテデータから抽出した複数のキーワードを、該当する患者数が多い順に上から下へ並べて表示する。
【0056】
図示の例では、「新規処方」の使用状況について、該当する患者数が123人であることが示されている。また「新規処方」の患者の電子カルテデータからは、「ホルモン療法効果減弱」のキーワードが36人の患者について抽出され、「腫瘍増大」のキーワードが15人の患者について抽出され、「ほてり感の強まり」のキーワードが9人の患者について抽出されたことが示されている。
【0057】
同様に、「競合からの切り替え」の使用状況について、該当する患者数が87人であることが示されている。また「競合への切り替え」の患者の電子カルテデータからは、「ステージ3へ進行」のキーワードが17人の患者について抽出され、「脱毛の改善を期待」のキーワードが11人の患者について抽出され、「耐性発生」のキーワードが6人の患者について抽出されたことが示されている。
【0058】
同様に、「処方中止」の使用状況について、該当する患者数が71人であることが示されている。また「処方中止」の患者の電子カルテデータからは、「ステージ4へ進行」のキーワードが11人の患者について抽出され、「脱毛の発生」のキーワードが9人の患者について抽出され、「引越しによる住所変更」のキーワードが4人の患者について抽出されたことが示されている。
【0059】
同様に、「競合への切り替え」の使用状況について、該当する患者数が103人であることが示されている。また「競合への切り替え」の患者の電子カルテデータからは、「ステージ4へ進行」のキーワードが22人の患者について抽出され、「脱毛の発生」のキーワードが13人の患者について抽出され、「引越しによる住所変更」のキーワードが3人の患者について抽出されたことが示されている。
【0060】
情報処理装置1がこのような分析画面を表示部14に表示することによって、ユーザは例えば自社の医薬品が処方される要因、又は、競合医薬品が処方される要因等を、使用状況に対応するキーワードから分析することが期待できる。なお本図に示したキーワードは一例であり、電子カルテデータにはどのようなキーワードが含まれてもよく、情報処理装置1はどのようなキーワードを電子カルテデータから抽出して表示してもよい。
【0061】
なお本例において情報処理装置1は、各使用状況及び各キーワードに対して該当する患者の人数を表示しているが、これに限るものではなく、例えば同じ医薬品が処方された全患者数に対する各使用状況に該当する患者の割合を表示するなど、人数以外の表示を行ってもよい。また本例において情報処理装置1は、使用状況及びキーワードの対応を表形式で表示しているが、これに限るものではなく、例えばグラフ表示等の表形式以外での表示を行ってもよい。
【0062】
図5は、本実施の形態に係る情報処理装置1が表示する分析画面の一表示例を示す模式図である。本実施の形態に係る情報処理装置1は、上述の処理にて取得した医薬品の使用状況及びキーワードに関する情報を、ヘルスケアデータ記憶部12bに記憶している。情報処理装置1は、ヘルスケアデータ記憶部12bに記憶した過去の情報を読み出すことによって、医薬品の使用状況に対応する過去のキーワードと現在のキーワードとを対比した分析画面を表示部14に表示してもよい。
【0063】
図示の分析画面において情報処理装置1は、例えばヘルスケアデータの取得を1ヶ月に1回の周期で行っているものとし、1ヶ月前に取得したヘルスケアデータに基づく使用状況及びキーワードの情報と、最新(現在)に取得したヘルスケアデータに基づく使用状況及びキーワードの情報とを並べて表形式で表示している。なお図5の分析画面において示す1ヶ月前のキーワードは、図4に示したキーワードと同じものであるため、説明は省略する。
【0064】
図5に示す例では、「現在」の「新規処方」の使用状況について、該当する患者数が101人であることが示されている。また「現在」の「新規処方」の患者の電子カルテデータからは、「ホルモン療法効果減弱」のキーワードが28人の患者について抽出され、「腫瘍収縮効果に期待」のキーワードが10人の患者について抽出され、「生存期間の延長」のキーワードが8人の患者について抽出されたことが示されている。
【0065】
また本例では、「現在」の各キーワードに対して、上方向を指す矢印マーク、右方向を指す矢印マーク又は下方向を指す矢印マークが付されている。本例において情報処理装置1は、複数のキーワードを該当する患者数の順で並べて表示する、いわゆるランキング形式でキーワードを並べて表示している。各キーワードに付された矢印マークは、1ヶ月前と比較して順位が上昇したか、維持したか又は下降したかを示している。
【0066】
同様に、「現在」の「競合からの切り替え」の使用状況について、該当する患者数が99人であることが示されている。また「現在」の「競合への切り替え」の患者の電子カルテデータからは、「ステージ2へ進行」のキーワードが20人の患者について抽出され、「脱毛の改善を期待」のキーワードが15人の患者について抽出され、「ステージ3へ進行」のキーワードが14人の患者について抽出されたことが示されている。
【0067】
同様に、「現在」の「処方中止」の使用状況について、該当する患者数が60人であることが示されている。また「現在」の「処方中止」の患者の電子カルテデータからは、「本人希望によりACPへ」のキーワードが16人の患者について抽出され、「ウィッグの推奨」のキーワードが11人の患者について抽出され、「ステージ5へ進行」のキーワードが9人の患者について抽出されたことが示されている。
【0068】
同様に、「現在」の「競合への切り替え」の使用状況について、該当する患者数が92人であることが示されている。また「現在」の「競合への切り替え」の患者の電子カルテデータからは、「本人希望によりACPへ」のキーワードが13人の患者について抽出され、「ウィッグの推奨」のキーワードが10人の患者について抽出され、「ステージ5へ進行」のキーワードが7人の患者について抽出されたことが示されている。
【0069】
情報処理装置1がこのような分析画面を表示部14に表示することによって、ユーザは医薬品の使用状況に関するキーワードの変化を知ることができ、例えば自社の医薬品から競合医薬品へ切り替えられた要因の変化等を分析することが期待できる。なお本図に示した例では、分析画面に現在及び1ヶ月前の2つの時点のキーワードを表示しているが、これに限るものではない。情報処理装置1は、例えば3つ以上の時点についてキーワードを表示してもよい。また情報処理装置1がキーワードを表示する一又は複数の時点は、1ヶ月前及び現在に限らず、どのような時点が採用されてもよく、キーワードを表示する時点をユーザが選択することが可能な構成であってよい。
【0070】
また本例において情報処理装置1は、キーワードの順位の変化を矢印マークにて示しているが、これに限るものではなく、例えば順位の上昇、維持及び下降に応じた異なる色でキーワードを表示するなど、異なる表示方法で順位の変化を表現してもよい。また情報処理装置1は、例えばキーワードの順位の変化をグラフにて表示してもよい。
【0071】
<その他>
本実施の形態に係る情報処理装置1は、図4及び図5等に示した分析画面の他に、例えば医薬品を処方した病院等の施設毎に使用状況及びキーワードを集計し、施設毎に使用状況及びキーワードを対応付けて表示してもよい(図示は省略する)。この場合、情報処理装置1がサーバ装置3の医療DB3aから取得するヘルスケアデータには、各患者が医薬品を処方された病院等の施設がいずれであるかを示す施設ID等の識別情報が含まれる。情報処理装置1は、医療DB3aから取得したヘルスケアデータに含まれるレセプトデータ、DPCデータ及び電子カルテデータ等を上記の施設ID等に基づいて施設毎に分類し、施設毎に使用状況及びキーワードを集計する。情報処理装置1は、例えば縦方向に使用状況の項目を並べ、横方向に施設名を並べた表を作成して表示部14に表示し、使用状況及び施設名が対応する箇所に電子カルテデータから取得した一又は複数のキーワードを表示することができる。
【0072】
また、情報処理装置1は、例えば医薬品を処方した病院等の施設が存在する地域毎に使用状況及びキーワードを集計し、地域毎に使用状況及びキーワードを対応付けて表示してもよい(図示は省略する)。この場合、ヘルスケアデータには病院等の施設がいずれの地域に存在するかを示す住所又は地域ID等の情報が含まれるか、又は、ヘルスケアデータには施設ID等の識別情報が含まれると共に、各施設が存在する地域の情報を記憶したテーブル等の情報を情報処理装置1が保持する。情報処理装置1は、医療DB3aから取得したヘルスケアデータに含まれるレセプトデータ、DPCデータ及び電子カルテデータ等を施設が存在する地域毎に分類し、地域毎に使用状況及びキーワードを集計する。情報処理装置1は、例えば縦方向に使用状況の項目を並べ、横方向に地域名を並べた表を作成して表示部14に表示し、使用状況及び地域名が対応する箇所に電子カルテデータから取得した一又は複数のキーワードを表示することができる。地域には、例えば東京都及び大阪府等の都道府県、名古屋市及び福岡市等の市町村、関東地方及び関西地方等の地方、又は、日本及びアメリカ等の国等の種々のものが採用され得る。
【0073】
また、情報処理装置1は、ヘルスケアデータから取得した使用状況及びキーワードに基づいて、例えば医薬品の販売促進のためのメッセージをユーザに提案する処理を行ってもよい。情報処理装置1は、「新規処方」及び「競合からの切り替え」等の使用状況の中で該当する患者数が最も多い使用状況を選択し、この使用状況に関して抽出された複数のキーワードの中から該当する患者数が最も多いキーワードを選択する。情報処理装置1は、例えば医薬品の使用状況及びキーワードに対応付けて一又は複数のメッセージを記憶したデータベースを備え、選択した使用状況及びキーワードに基づいてデータベースを参照することで一又は複数のメッセージを取得し、取得したメッセージを表示部14に表示することができる。又は、情報処理装置1は、使用状況及びキーワードの入力を受け付けてメッセージを生成するよう機械学習がなされた学習モデルを備え、選択した使用状況及びキーワードを学習モデルへ入力し、この学習モデルが生成して出力するメッセージを取得して表示してもよい。
【0074】
<まとめ>
以上の構成の本実施の形態に係る情報処理システムでは、サーバ装置3が医療DB3aに記録したヘルスケアデータを情報処理装置1が取得し、ヘルスケアデータから医薬品等のヘルスケアに係る商品の使用状況に関する情報を取得し、ヘルスケアデータに含まれる自然言語データから使用状況に関連するキーワードを取得し、取得した使用状況及びキーワードに関する情報を表示部14に表示(出力)する。これにより本実施の形態に係る情報処理システムでは、ヘルスケアに係る商品の使用状況及びキーワードを対応付けてユーザに提示することができるため、ユーザによるヘルスケアデータの分析を支援することが期待できる。
【0075】
また本実施の形態に係る情報処理システムでは、ヘルスケアに係る商品として例えば医薬品を扱い、ヘルスケアデータには患者に対する医薬品の処方に関する情報を含む。情報処理装置1は、取得したヘルスケアデータから患者単位での医薬品の処方状況(使用状況)を判定し、患者単位での処方情報を基に医薬品毎又は医薬品の薬効毎の処方状況を集計し、集計した処方状況及びキーワードを対応付けて出力する。これにより本実施の形態に係る情報処理システムでは、患者に対する医薬品の処方状況の変化等を、医薬品毎又は薬効毎にユーザが分析することが期待できる。
【0076】
また本実施の形態に係る情報処理システムでは、医薬品に関して情報処理装置1が判定する処方状況に、対象の医薬品の患者に対する新規処方、競合医薬品(別医薬品)から対象の医薬品への変更、対象の医薬品の処方中止、及び、対象の医薬品から競合医薬品への変更を含む。これにより本実施の形態に係る情報処理システムでは、患者に処方する医薬品の決定又は変更等がなされた要因等をユーザが分析することが期待できる。
【0077】
また本実施の形態に係る情報処理システムでは、ヘルスケアデータに自然言語データとして電子カルテデータを含む。情報処理装置1は、医薬品の処方状況に対応するキーワードを電子カルテデータから取得し、処方状況毎に複数の患者の電子カルテデータから取得した複数のキーワードを集計して出力する。これにより本実施の形態に係る情報処理システムでは、医師等が入力した自然言語データからキーワードを取得してユーザに提示することができる。
【0078】
また本実施の形態に係る情報処理システムでは、例えば現在及び1ヶ月前等の複数の時点における処方状況及びキーワードの対応を対比して表示する。これにより本実施の形態に係る情報処理システムでは、医薬品の処方状況の変化及び処方状況の要因の変化等の分析を支援することが期待できる。
【0079】
また本実施の形態に係る情報処理システムでは、情報処理装置が競合医薬品に関する設定をユーザから受け付ける。これにより本実施の形態に係る情報処理システムでは、例えば自社の医薬品等の使用状況として「競合からの切り替え」又は「競合への切り替え」を判定する際に、いずれの医薬品を競合医薬品として情報処理装置1が判定を行うかをユーザが決定することができる。
【0080】
また本実施の形態に係る情報処理システムでは、医薬品を処方した病院等の施設毎又はこの施設が存在する地域毎に、情報処理装置1が処方状況及びキーワードを対比して表示する。これにより本実施の形態に係る情報処理システムでは、ユーザが医薬品の処方状況等を施設毎又は地域毎に検証することが期待できる。
【0081】
なお本実施の形態に係る情報処理システムでは、ヘルスケアに係る商品として医薬品を扱う構成を例に説明を行ったが、ヘルスケアに係る商品は医薬品に限定されるものではない。ヘルスケアに係る商品は、例えば医療機器、介護用品又は生命保険等の様々な商品であってよい。また本実施の形態に係る情報処理システムでは、使用状況の判定及びキーワードの抽出等の結果を医薬品毎にまとめた分析画面を情報処理装置1が表示しているが、これに限るものではなく、例えば使用状況の判定及びキーワードの抽出等の結果を医薬品の薬効毎にまとめて分析画面に表示してもよい。
【0082】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0083】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも1つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 情報処理装置(コンピュータ)
3 サーバ装置
3a 医療DB
11 処理部
11a ヘルスケアデータ取得部
11b 使用状況情報取得部
11c キーワード取得部
11d 表示処理部
12 記憶部
12a プログラム(コンピュータプログラム)
12b ヘルスケアデータ記憶部
13 通信部
14 表示部
15 操作部
N ネットワーク
【要約】
【課題】ヘルスケアデータの分析を支援することが期待できる情報処理方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置を提供する。
【解決手段】本実施の形態に係る情報処理方法は、情報処理装置が、ヘルスケアデータを取得し、取得した前記ヘルスケアデータから、ヘルスケアに係る商品の使用状況に関する情報を取得し、取得した前記ヘルスケアデータに含まれる自然言語情報から、前記使用状況に関連するキーワードを取得し、前記使用状況及び前記キーワードを対応付けて出力する。前記商品は、医薬品であり、前記ヘルスケアデータには、前記医薬品の処方に関する情報を含み、前記情報処理装置は、前記ヘルスケアデータから患者単位での前記医薬品の処方状況を判定し、前記患者単位での前記医薬品の処方状況を基に、前記医薬品毎又は前記医薬品の薬効毎の処方状況を集計し、集計した処方状況及び前記キーワードを対応付けて出力してもよい。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5