(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】レンジフード
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20221223BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
F24F7/06 101A
F24F7/007 B
(21)【出願番号】P 2018176748
(22)【出願日】2018-09-21
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】平木 雅人
(72)【発明者】
【氏名】佐川 美晴
(72)【発明者】
【氏名】殿垣内 崇
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-186839(JP,A)
【文献】特開2018-105568(JP,A)
【文献】特開2009-144964(JP,A)
【文献】特開平11-264579(JP,A)
【文献】実公昭57-049073(JP,Y2)
【文献】特開2016-040493(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107940533(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 7/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口および排気口を有するフード本体と、
前記フード本体に内蔵された
ファンと、
前記
ファンの風量を制御する制御部と、を備え、
前記
ファンの軸方向は水平方向であり、
前記
ファンの吐出口から吹き出される空気は、鉛直方向上方に向かって吹き出されて前記排気口から排気され、
前記制御部は、通常運転モードと、油飛散運転モードと、を有し、
前記通常運転モードでは、前記吸込口から吸い込んだ油煙を前記排気口から排気し、
前記油飛散運転モードでは、前記通常運転モードより大きい回転数で前記
ファンを運転し、
前記
ファンの切信号受信後、
前記油飛散運転モードで運転していた場合には、
前記油飛散運転モードよりも小さい回転数で一定時間前記ファンを運転させた後に前記ファンを停止する残置運転を行わずに運転を終了し、
前記通常運転モードで運転していた場合には、前記通常運転モードでの運転開始からの経過時間が一定時間以下であれば前記残置運転及び前記油飛散運転モードを行わずに前記通常運転モードでの運転を終了し、前記経過時間が前記一定時間を超えていれば前記残置運転を実施した後に前記油飛散運転モードへ移行することを特徴とするレンジフード。
【請求項2】
前記吸込口から吸い込まれた油煙に含まれる油を捕集する油捕集機構部を備え、
前記
ファンは、油抜き穴を有するケーシングに内包され、
前記吸込口から吸い込まれた油煙に含まれる油は、前記ケーシングの内壁に付着した後、前記油抜き穴を通って前記油捕集機構部に回収されることを特徴とする請求項1に記載のレンジフード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロ、電磁調理器等の厨房器具の上方に設けられ、調理時に発生する煙や熱気等を捕集して屋外に排出するレンジフードのファン及び排気経路構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レンジフードのファンへの油埃汚れ付着量の低減及びお手入れ頻度削減方法として、排気用のファンの上流に円盤形に形成した回転自在のフィルターを設けて排気ガス中の油埃を捕集するとともに、排気運転中に円盤形フィルターを高速回転させることで捕集した油埃を油分捕集部材に捕集するレンジフードが知られている(例えば、特許文献1参照)。以下、そのレンジフードについて
図8を参照しながら説明する。
【0003】
図8に示すように、排気用のファン105と、ファン105の上流に円盤形のフィルター110およびフィルターを高速回転駆動させるモータ111とを有し、排気運転中に円盤形フィルター110を高速回転させることにより、ファンへの油埃汚れの付着量を低減するとともにフィルターの目詰まりを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来のレンジフードにおいては、排気用ファンのモータに加えて円盤形のフィルターを高速回転させるモータも電力を消費するために、運転時の消費電力が大きいという課題およびフィルターの高速回転により騒音が発生するという課題を有している。
【0006】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するものであり、静音化かつ消費電力を抑えたレンジフードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために、本発明の一態様に係るレンジフードは、吸込口および排気口を有するフード本体と、フード本体に内蔵されたファンと、ファンの風量を制御する制御部と、を備え、ファンの軸方向は水平方向であり、ファンの吐出口から吹き出される空気は、鉛直方向上方に向かって吹き出されて排気口から排気され、制御部は、通常運転モードと、油飛散運転モードと、を有し、通常運転モードでは、吸込口から吸い込んだ油煙を排気口から排気し、油飛散運転モードでは、通常運転モードより大きい回転数でファンを運転し、ファンの切信号受信後、油飛散運転モードで運転していた場合には、油飛散運転モードよりも小さい回転数で一定時間ファンを運転させた後にファンを停止する残置運転を行わずに運転を終了し、通常運転モードで運転していた場合には、通常運転モードでの運転開始からの経過時間が一定時間以下であれば残置運転及び油飛散運転モードを行わずに通常運転モードでの運転を終了し、経過時間が一定時間を超えていれば残置運転を実施した後に油飛散運転モードへ移行することとしたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、油飛散運転によって一度ファンに付着した油埃汚れを吹き飛ばすことで排気ファンの油埃汚れ付着量を低減できる。また、円盤形フィルターなどを高速回転することが不要となるので、運転時の消費電力を抑えたレンジフードを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るレンジフードの外観斜視図
【
図6】同レンジフードの油飛散運転制御のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一態様に係るレンジフードは、吸込口および排気口を有するフード本体と、フード本体に内蔵された送風機と、送風機の風量を制御する制御部と、を備え、送風機の軸方向は、水平方向であり、送風機の吐出口から吹き出される空気は、鉛直方向上方に向かって吹き出されて排気口から排気され、制御部は、通常運転モードと、油飛散運転モードと、を有し、通常運転モードは、吸込口から吸い込んだ油煙を排気口から排気するモードであり、油飛散運転モードは、通常運転モードより高い(大きい)回転数で送風機を運転するモードである。これにより、油飛散運転モードにおいて送風機を高速回転させることで、送風機に付着した油等の汚れを吹き飛ばし、お手入れ性が向上するという効果を奏する。また、ファンの回転軸を水平方向にして上向きに吹き出す(ファンを縦向きに設置する)構成とすることで、ファンと油捕集機構部との距離を大きくとることができるので、騒音が小さくなるという効果を奏する。
【0011】
また、通常運転モード終了後に油飛散運転モードに移行するという構成であってもよい。これにより、通常運転モードにおいて付着した油等の汚れを、運転の都度吹き飛ばし、送風機に汚れがたまりにくくなるという効果を奏する。
【0012】
また、吸込口から吸い込まれた油煙に含まれる油を捕集する油捕集機構部を備え、油抜き穴を有するケーシングは、送風機を内包し、吸込口から吸い込まれた油煙に含まれる油は、ケーシングの内壁に付着した後、油抜き穴を通って油捕集機構部に回収されるという構成であってもよい。これにより、油飛散運転モードで吹き飛ばされた油を効率的に油捕集機構部にて回収することができるという効果を奏する。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施の形態1)
本発明の一態様に係るレンジフードは、ガスコンロやIHコンロ等の厨房器具(図示せず)の上方に設けられる。レンジフードは、フード本体1と、整流板4と、油捕集機構部9と、制御部(図示せず)と、を有する。
【0015】
フード本体1は、汚染された空気を吸込む吸込口2と、排気装置3(ダクトカバー)と、を有する。排気装置3は、ファン5と、ファンモータ11と、ケーシング6と、を有する。ファン5は、フード本体1の内部に設けられ、吸込口2から吸込まれた空気を排気する。ファン5は、鉛直方向上方に向かって吹き出すように吐出口が設けられる。ファン5の回転軸方向は水平方向である。なお、ここでいう「水平」とは完全な水平のみならず、水平から10度ほど傾けたものも含むものとする(
図5(b)参照)。このように、ファン5を水平方向から前方に傾かせることでファン5をお手入れする際の脱着性が向上する。
【0016】
ケーシング6はファン5を内包する。ケーシング6は、後述する油飛散運転により吹き飛ばされた油汚れが油捕集機構部9まで流れ落ちる連続した壁面と底部の油抜き穴10とを有する。油抜き穴10は、ケーシング6下部のたとえば中央であって油捕集機構部9の上方に設けられる。ケーシング6の壁面に付着した油汚れは
図4における矢印Aに示すように、ケーシング6の壁面を伝って下部にある油抜き穴10へ導かれる。そして油抜き穴10から油捕集機構部9に滴下する。このように、ケーシング6壁面を流れ落ちる面を曲面で構成することにより効率良く油埃汚れを油捕集機構部9へ集めることができる。すなわち、後述する油飛散運転により吹き飛ばした油埃汚れがケーシング6壁面を伝って下方へ流れ落ち、効率的に油捕集機構部9に集めることができる。またケーシング6に設けた油抜き穴10から油捕集機構部9に直接油が流れ落ちるために、油を捕集する過程で汚染される構成部材を最小限に抑えたお手入れしやすいレンジフードを提供できる。
【0017】
ファンモータ11の運転によりファン5は回転する。
【0018】
油捕集機構部9は、フード本体1に取り付けられる。油捕集機構部9は、ケーシング6の下方に設けられる。油捕集機構部9はたとえば箱型形状であって、内部に油汚れを含んだ空気が流入し、油捕集機構部9の内壁に接触することで、油を回収する構成であってもよい。
【0019】
整流板4は、例えば方形状で、吸込口2に取り付けられる。整流板4の周囲から吸込口2へと空気が流入する。
【0020】
排気装置3の天面には屋外と連通したダクト等を介して連通する排気口12を設ける。
【0021】
フード本体1および排気装置3の内部に、ファン5を介し吸込口2と排気口12を結ぶ通風路を形成する。
【0022】
油捕集機構部9は、例えば金属製であって、ファン5と吸込口2との間に設けられ、厨房器具から発生する油煙や周囲に浮遊する埃等を捕集する。
【0023】
制御部は、通常運転モードと、油飛散運転モードと、を有する。
【0024】
通常運転モードは、ファン5の運転により、吸込口2から汚染された空気を吸い込み、排気口12から排気するモードである。通常運転モードにおいてはファン5の回転数が異なる「弱・中・強」のいずれか1つの運転を使用者が選ぶことができる構成であってもよい。このとき例えば、弱、中、強の順にファンの回転数が大きくなる運転である。
【0025】
また、通常運転モードにおいて残置運転を行うという構成であってもよい。ここで、残置運転とは、「切」信号すなわちファン停止信号を受信してから、ファン5を一定時間運転させた後にファン5を停止する運転をいう。
【0026】
油飛散運転モードは、ファン5を通常運転モード終了ごとに高速回転することで油埃汚れを吹き飛ばすモードである。油飛散運転モードでのファン5の回転数は例えば、1200r/minである。油飛散運転モードでのファン5の回転数は通常運転モード時、特に、残置運転時の回転数より大きい回転数である。
【0027】
ここで、
図6を用いて、通常運転モードおよび油飛散運転モードについて説明する。
【0028】
運転開始後、制御部は、通常運転モードで運転中であるかを検知する。通常運転モードではない場合(例えば、油飛散運転モードで運転している場合)には、「切」信号を受信した後、残置運転を行わずに運転を終了する。
【0029】
「弱・中・強」のいずれかの通常運転モードにて運転をしている場合、制御部は、通常運転モードで一定時間運転しているかを検知する。一定時間運転をしていない場合には、「切」信号を受信した後、残置運転を行わずにファン5を停止し、運転を終了する。通常運転モードにて一定時間を超えて運転した後に「切」信号を受信した場合、残置運転を実施する。そして、残置運転実施後に、通常運転モードから油飛散運転モードに移行する。そして、油飛散運転モードにおいて、ファン5を通常運転モードより大きい(高い)、または通常運転モードの最大回転数にて数秒間高速回転させる油飛散運転を実施する。油飛散運転終了後にファン5を停止させ、運転を終了する。
【0030】
なお、「切」信号は、レンジフードの制御部からのファン停止信号でも、連動する調理機器からのファン停止信号であってもよい。
【0031】
以上の構成により、通常運転モードにおいて付着した油等の汚れを、運転の都度吹き飛ばすことで、送風機に汚れがたまりにくくなり、使用者のお手入れ性が向上する。また、本構成であれば円盤形のフィルターを高速回転するモータを別途搭載する必要がないため、運転消費電力を抑えたレンジフードを提供することができる。
【0032】
また、
図5に示すように、ファン5を上方向に吹き出すように(縦向きに)設置することで、油捕集機構部9とファン5との距離が大きくなる。このように、油捕集機構部9とファン5を離して配置することで通風抵抗が下がり、騒音低下の効果を奏する。
【0033】
ここで、
図7を用いて、通風抵抗低下と騒音低下の関係について説明する。
【0034】
ある運転状態において、送風機の「静圧―風量特性」と通風抵抗との交点Aで使用している。ここで通風抵抗が下がると、静圧―風量特性に沿って使用点が交点Bに移動するが、風量を一定に保つ制御により使用点がCに移動する。使用点CはAに比べて低い回転数での運転であるため、騒音低下の効果を奏する。
【0035】
このように、本実施の形態に係るレンジフードでは、ファンとフィルターとの距離が大きくなることで、通風抵抗が下がり、静音化を実現することができる。
【0036】
以上、本発明に係るレンジフードについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係るレンジフードは、送風機への油汚れの付着を低減するものであるので、台所の壁面に設置するキャビネット等にも有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 フード本体
2 吸込口
3 排気装置
4 整流板
5 ファン
6 ケーシング
9 油捕集機構部
10 油抜き穴
11 ファンモータ
12 排気口