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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 7/02 20060101AFI20221223BHJP
   F24C 15/18 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
F24C7/02 301Z
F24C7/02 301S
F24C7/02 340
F24C15/18 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019525498
(86)(22)【出願日】2018-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2018022658
(87)【国際公開番号】W WO2018235703
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2017121917
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】谷口 直哉
(72)【発明者】
【氏名】今井 博久
(72)【発明者】
【氏名】松井 巌徹
(72)【発明者】
【氏名】中島 毅士
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/143267(WO,A1)
【文献】特開2016-010144(JP,A)
【文献】特開2017-015383(JP,A)
【文献】特開2011-102661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 7/02
F24C 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物が収納される加熱庫と、
前記加熱庫に収納された前記被加熱物を加熱する加熱部と、
前記加熱庫内を撮影する撮影部と、
前記被加熱物に付与された加熱制御情報の文字または情報コードを読み取る読取部と、
前記読取部で読み取られた前記加熱制御情報に基づいて、前記加熱部を制御する加熱制御部と、を備え、
前記撮影部から前記加熱制御情報の前記文字または情報コードまでの距離が250mm以下の範囲において
前記文字または情報コードのサイズから決まる認識基準解像度を(r)、
前記撮影部で撮影された画像の、水平解像度(h)、垂直解像度(p)、錯乱円(c)、ピクセルサイズ(x)としたときに、以下の関係が成立する
(x/c)×(h×p)>r2
ように構成され、
前記関係から前記加熱制御情報を前記読取部が適切に読み取ることができた場合、前記制御部は、前記加熱制御情報に基づいて、前記加熱部を制御する、
加熱調理器。
【請求項2】
前記加熱庫内に、前記被加熱物を載置すべき場所を、前記撮影部から前記加熱制御情報の前記文字または情報コードまでの距離が480mm以下となる場所に指定するマーカーを有する、
請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記加熱庫内の寸法は、横幅350mm以下、奥行320mm以下、および、高さ200mm以下である、
請求項1または請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記撮影部から前記加熱制御情報の前記文字または情報コードまでの距離は90mm以上である、
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記撮影部の視野角は31度以上である、
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食品を加熱する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な加熱調理器である電子レンジは、鍋およびフライパンを使うことなく、食品を、容器に入れたままの状態で加熱することができる。そして、弁当および総菜等を、容器に入れて販売する販売店において、購入された食品を、店員が、電子レンジを使って加熱し、提供するサービスが行われている。
【0003】
このサービスについて説明する。一般には、弁当および総菜等に、電子レンジで加熱するのに最適な加熱時間が表示されている。そして、販売店の店員は、その表示を見て、電子レンジで加熱時間を設定し、加熱する。電子レンジの操作部には数字キー等が設けられており、加熱時間(分、秒)を、手動で設定することができる。
【0004】
また、電子レンジが複数の操作ボタンを備え、各操作ボタンに、別々の加熱時間が割り当てられている場合もある。販売店の店員は、加熱する食品に対応したボタンを選択する。これにより、食品等が、その食品に適した加熱制御で加熱され、客に提供される。
【0005】
前者の構成のように、加熱時間(分、秒)が数字キーで設定される場合には、操作回数が多いので、煩わしい操作が必要になってしまう可能性がある。また、後者の構成、つまり、複数の操作ボタンそれぞれに、別々の加熱時間が割り当てられている場合には、食品の種類が増えてくると、店員にとって、ボタンと加熱時間との対応関係を覚えることが、難しくなる可能性がある。
【0006】
これらの、煩わしさおよび間違い等を解消するために、加熱調理器に、商品毎の加熱制御内容を予め記憶させ、販売店の店員は、バーコードリーダを使って商品のコード情報を読み取り、加熱調理器は、そのコード情報から、商品に対応した加熱制御内容を呼び出して、適切な加熱を行う、という方法が提案されている。
【0007】
さらに、バーコードリーダを使うのではなく、電子レンジが、庫内を撮影するカメラを備え、庫内に投入された商品の画像からバーコード部分が抽出され、そのバーコードが読み取られる。これにより、コード情報から、商品に対応した加熱制御内容が呼び出されて、適切な加熱が行われる。この方法によれば、店員の操作の負担が低減され、誤りのない加熱サービスを行うことが可能となる(例えば、特許文献1を参照。特許文献2については後述)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-349546号公報
【文献】国際公開第2016/143267号
【発明の概要】
【0009】
本開示は、加熱制御情報等が含まれる文字の、読み取り精度を高める加熱調理器を提供するものである。
【0010】
本開示の加熱調理器は、被加熱物が収納される加熱庫と、加熱庫に収納された被加熱物を加熱する加熱部と、加熱庫内を撮影する撮影部と、被加熱物に付与された加熱制御情報の文字を読み取る読取部と、読取部で読み取られた加熱制御情報に基づいて、加熱部を制御する加熱制御部と、を備えている。そして、撮影部から加熱制御情報の文字までの距離が480mm以下である。
【0011】
このような構成により、加熱調理器の加熱庫内において、被加熱物に付与された文字と、撮影部との距離が離れて、被加熱物に付与された加熱制御情報の文字が読取部で認識されない、という問題の発生する可能性を極力低くすることができる。よって、加熱制御情報の文字が認識されないために、加熱を開始することができないことが少なくなる。また、使用者が、加熱調理器のドアを開けて、被加熱物の置き位置を変更したりする等の、煩わしい作業を極力少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の実施の形態に係る、加熱調理器の一例である電子レンジの外観を示す斜視図である。
図2A図2Aは、本開示の実施の形態に係る、電子レンジの概略構成を示す図である。
図2B図2Bは、本開示の実施の形態に係る、電子レンジの加熱庫の内壁の概略構成を示す図である。
図3図3は、本開示の実施の形態における、商品に付与されたシールの一例を示す図である。
図4図4は、本開示の実施の形態における、シールに表示された位置指定マークの一例を示す図である。
図5A図5Aは、本開示の実施の形態における、加熱庫内の底面を上方から見た状態を示す平面図である。
図5B図5Bは、本開示の実施の形態における、加熱庫内の底面を上方から見た状態で、商品が置かれた状態を示す平面図である。
図5C図5Cは、本開示の実施の形態における、加熱庫内の底面を上方から見た状態を示す、他の平面図である。
図6図6は、本開示の実施の形態における、カメラが、加熱庫の上面の、ほぼ中央に設置された場合の電子レンジの加熱庫内壁の例を示す概略図である。
図7図7は、本開示の実施の形態における、カメラから被写体までの距離と、ボケ度との関係を示す図である。
図8図8は、本開示の実施の形態における、水平解像度および垂直解像度と、カメラから被写体までの距離との関係を示す図である。
図9図9は、本開示の実施の形態における、撮影部のレンズから加熱制御情報の文字までの距離と、認識解像度との関係を示す図である。
図10図10は、本開示の実施の形態における、加熱制御部、読取部、および誤り判定部の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本開示の基礎となった知見)
一般に、販売店で販売されている、弁当および総菜等には、バーコードが貼り付けられている。このバーコードに入っている情報は、弁当および総菜等の商品を特定する情報であり、加熱時間の情報は入っていない。したがって、バーコードを認識し、自動的に加熱時間の設定を行うには、商品と加熱時間との対応関係が、予め電子レンジに登録されている必要がある。
【0014】
電子レンジでの加熱対象となる、弁当および総菜等の、販売店で扱われる商品の品数は、非常に多い。また、日替わり、または週替わりで新商品が出て、旧商品と入れ替わる場合もあり、常に、新しい商品と加熱時間との対応関係を電子レンジに登録する作業が発生し続ける。
【0015】
また、規模の大きい販売店では、複数の商品を、同時に並行して加熱できるように、複数の電子レンジを備えている販売店もある。この場合、複数台の電子レンジすべてに対して、商品を特定するコードと加熱時間との対応関係を登録する作業を行わなければならず、煩わしさが解決するとはいえない。
【0016】
また、販売店では、複数の商品が同時に購入される場合もある。この場合、店員は、商品を、一つずつ電子レンジの庫内に入れて、バーコードを読み取らせる作業を繰り返し行わなければならず、煩わしさが解決するとはいえない。
【0017】
また、店員が、電子レンジの庫内に商品を入れて、扉を閉じた後に、バーコードの読取を開始させようとするときに、バーコードの読取に失敗した場合、店員は、扉の開閉と商品の入れ直しとを頻繁に行わなければならず、煩わしさが解決するとはいえない。
【0018】
そこで、店員が、商品の加熱時間を入力したり、商品に対応したボタンを選択したりすることなく、自動で加熱時間を設定でき、かつ、商品のコードと加熱時間との関係を登録するような、煩わしい作業を不要とする技術が提案されている。
【0019】
すなわち、加熱調理器において、加熱庫内を撮影する撮影部と、被加熱物に貼付された貼付物から、加熱制御情報の文字を抽出して読み取る読取部と、読取部で読み取られた加熱制御情報に基づいて、加熱部を制御するものである(例えば、特許文献2を参照)。
【0020】
しかしながら、この構成では、被加熱物に付与された文字を、撮影部で、正確に読み取れない場合がある。カメラのピントの合う範囲は規定されており、ピントの合う範囲から外れると、画像がボケるので、正確に読み取ることが難しくなる。特に、加熱調理器の加熱庫内において、被調理物に付与された文字と、撮影部との距離が、ピントの合う範囲から外れ、遠くなってしまうほど、文字が小さく撮影され、かつボケる。よって、文字を正確に認識できる可能性が低下してしまう。一方で、被加熱物に付与された文字と撮影部との距離が、ピントの合う範囲から外れても、距離の近い方に外れた場合には、文字は、ボケはするものの、大きく撮影されるので、ピントの合う範囲から、距離の遠い方に外れて認識しづらい場合に比べれば、文字の認識精度を高く維持できる。
【0021】
(本開示の取りうる態様の一例)
本開示の第1の態様は、被加熱物が収納される加熱庫と、加熱庫に収納された被加熱物を加熱する加熱部と、加熱庫内を撮影する撮影部と、被加熱物に付与された加熱制御情報の文字を読み取る読取部と、読取部で読み取られた加熱制御情報に基づいて、加熱部を制御する加熱制御部と、を備えている。そして、撮影部から加熱制御情報の文字までの距離が480mm以下である。
【0022】
このような構成により、加熱調理器の加熱庫内における、被加熱物に付与された文字と、撮影部との距離が離れてしまい、被加熱物に付与された加熱制御情報の文字を読取部で認識できない可能性を、極力小さくすることができる。よって、加熱制御情報の文字が認識されずに加熱を開始することができないことが少なく、使用者が、加熱調理器のドアを開けて、被加熱物の置き位置を変更したりする等の煩わしい作業を、極力少なくすることができる。
【0023】
第2の態様は、第1の態様において、加熱庫内に、被加熱物を載置する場所を、撮影部から加熱制御情報の文字までの距離が480mm以下となる場所に指定するマーカーを有する構成であってもよい。
【0024】
この構成によれば、さらに、使用者が、加熱調理器の加熱庫内に被加熱物を置くとき、読取部で読取りしやすい場所に、被加熱物を置くように誘導することができる。そして、加熱調理器の加熱庫内における、被加熱物に付与された文字と撮影部との距離が離れて、被加熱物に付与された加熱制御情報の文字を、読取部が認識できない可能性を極力小さくすることができる。よって、加熱制御情報の文字が認識されずに加熱を開始することができないことを少なくでき、使用者が、加熱調理器のドアを開けて、被加熱物の置き位置を変更する等の煩わしい作業を、極力少なくすることができる。
【0025】
第3の態様は、第1の態様または第2の態様において、加熱庫内の寸法は、横幅350mm以下、奥行320mm以下、および、高さ200mm以下であってもよい。
【0026】
このような構成によれば、さらに、加熱調理器の加熱庫内における、被調理物に付与された文字と撮影部との距離が離れて、被加熱物に付与された加熱制御情報の文字を、読取部が認識できない可能性を、極力小さくすることができる。よって、加熱制御情報の文字が認識されずに加熱を開始することができないことを少なくでき、使用者が、加熱調理器のドアを開けて、被加熱物の置き位置を変更する等の煩わしい作業を、極力少なくすることができる。
【0027】
第4の態様は、第1の態様から第3の態様までのいずれかの態様において、撮影部は、撮影部から加熱制御情報の文字までの距離が250mm以下の範囲において、文字のサイズから決まる認識基準解像度(r)、撮影部で撮影された画像の、水平解像度(h)、垂直解像度(p)、錯乱円(c)、ピクセルサイズ(x)としたときに、以下の式が成立してもよい。(x/c)×(h×p)>r
【0028】
この構成によれば、さらに、加熱調理器の加熱庫内という比較的狭い空間のなかで、撮影部と被加熱物に付与された文字との距離が、所定の距離よりも短い距離範囲において、どの位置に被加熱物が置かれた場合であっても、加熱制御情報等が含まれる文字の読み取り精度を極力高めることができる。また、被加熱物に付与された文字と撮影部との距離が相当程度近い場合であっても、加熱制御情報等が含まれる文字の読み取り精度を、極力高めることができる。
【0029】
第5の態様は、第1の態様から第4の態様までのいずれかの態様において、撮影部から加熱制御情報の文字までの距離は90mm以上であってもよい。
【0030】
この構成によれば、さらに、加熱制御情報等が含まれる、読取りが必要な文字の長さが50mm以内の場合において、加熱制御情報等が含まれる文字の読み取り精度を、極力高めることができる。
【0031】
第6の態様は、第1の態様から第5の態様までのいずれかの態様において、撮影部の視野角は31度以上であってもよい。
【0032】
このような構成によれば、さらに、撮影部から加熱制御情報の文字までの距離が相当程度近い場合であっても、加熱制御情報等が含まれる、読取り必要な文字の長さが50mm以内であれば、加熱制御情報等が含まれる文字の読み取り精度を、極力高めることができる。
【0033】
以下、本開示の実施の形態について説明する。なお、これらの実施の形態によって、本開示が限定されるものではない。
【0034】
(実施の形態)
本開示の実施の形態について説明する。
【0035】
図1は、本開示の実施の形態に係る、加熱調理器の一例である電子レンジ1の外観を示す斜視図である。
【0036】
図1に示されるように、電子レンジ1は、食品を格納するための筐体2を備え、筐体2には、食品を出し入れするためのドア3が設けられている。ドア3には、外部から筐体2内部が見えるようにするための、透明のガラス窓4と、ドア3を開閉するときに掴まれる取っ手5と、操作表示部6とが設けられている。
【0037】
操作表示部6は、液晶表示器7、時間設定ボタン群8、加熱開始ボタン9、取消ボタン10、および一時停止ボタン11を有している。電子レンジ1は、後述するように、加熱対象(被加熱物)である商品を、撮影部によって撮影し、商品に表示されている加熱時間を読み取り、その加熱時間で商品を加熱する。
【0038】
液晶表示器7には、読み取られた加熱時間が表示される。加熱時間がうまく読み取られなかった場合、加熱時間の表示されていない商品を加熱する場合、および、使用者が、好みで加熱時間を設定する場合等のために、電子レンジ1には、時間設定ボタン群8が設けられている。
【0039】
使用者は、数字ボタン、ならびに、「分」、および「秒」のボタンを使って、加熱時間を設定することができる。この場合、液晶表示器7には、設定された加熱時間が表示される。
【0040】
加熱開始ボタン9は、使用者が、液晶表示器7に表示された加熱時間を確認した後に、加熱を開始するときに押されるボタンである。取消ボタン10は、使用者が、加熱開始ボタン9を押して、加熱が開始された後に、加熱途中で加熱を停止させる場合に押されたり、液晶表示器7に表示されている加熱時間の設定を取り消す場合に押されたりするボタンである。
【0041】
一時停止ボタン11は、使用者が、加熱途中で加熱を一時的に停止させる場合に押されるボタンである。また、加熱が一時停止された場合に、使用者が、再度、加熱開始ボタン9を押すことにより、途中から残りの加熱を行うことができる。なお、取消ボタン10および一時停止ボタン11は、機能を兼用させて、一つのボタンで構成されてもよい。
【0042】
図2Aは、本開示の実施の形態に係る、電子レンジ1の概略構成を示す図である。
【0043】
電子レンジ1は、高周波による食品の加熱が可能であり、食品等の被加熱物を収納する加熱庫12の外側、かつ筐体2の内側に、高周波を出力する加熱部であるマグネトロン13を備えている。電子レンジ1は、高周波を加熱庫12に供給して、食品を加熱する。マグネトロン13は、加熱制御部14により制御される。
【0044】
電子レンジ1は、照明15と、照明15が設けられたのと同じ側面に、撮影部であるカメラ16とを備えている。撮影部であるカメラ16は、加熱庫12内の映像を撮影する。
【0045】
カメラ16は、照明15と同じ側面に配置されていることにより、逆光の影響を受けることなく、加熱庫12内を撮影することができる。なお、カメラ16および照明15は、加熱庫12内の側面に設けられても、上面に設けられても、背面に設けられてもよい。また、照明15を間接照明にする等して、照明15とカメラ16とが、加熱庫12内の、互いに異なる面に設置されてもよい。
【0046】
本実施の形態における、カメラ16の仕様の一例は、以下のとおりである。
【0047】
水平画素数t=2592、垂直画素数u=1944
焦点距離f=2.3mm
絞り値F=2.4
ピクセルサイズ 1.12μm(0.00112mm)×1.12μm
水平視野角θh=71.15度、垂直視野角θp=56.42度
なお、カメラ16は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、または、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等を有し、加熱庫12内の撮影を行う。
【0048】
筐体2には、ドア3の開閉を検知するための、ドアスイッチ17が設けられている。ドア3には、ドアスイッチ17を押し込むための、突起部18が設けられている。
【0049】
図2Bは、本開示の実施の形態に係る、電子レンジ1の加熱庫12の内壁の概略構成を示す図である。
【0050】
図2Bは、ドア3を除いた、加熱庫12の内壁を示しており、手前側の面は、ドア3側にある、前面開口部を示している。加熱庫12の内壁は、多少の凹凸があるものの、略直方体形状(直方体を含む)をしており、幅(d)、奥行(e)、および高さ(f)の寸法で規定される。本実施の形態では、幅(d)=約332mm、奥行(e)=約300mm、高さ(f)=約180mmである。そうすると、庫内の対角距離としての、庫内最長直線距離(g)は、約480mmとなる。よって、カメラ16を、加熱庫12の上側の角部付近に取り付けた場合、カメラ16から加熱庫12内壁面への最長距離は、約480mmとなる。
【0051】
図3は、本開示の実施の形態における、商品に付与されたシール20の一例を示す図である。
【0052】
加熱庫12には、弁当、おにぎり、および惣菜等の商品(被加熱物)が入れられる。それらの商品それぞれには、主として上面部分に、商品の加熱制御情報22である、加熱パワーおよび加熱時間が表示された貼付物である、シール20が貼付されている。
【0053】
このシール20には、一般的な家庭用の電子レンジ1で加熱する時の目安として、例えば500Wの加熱パワーで加熱する場合の加熱時間、および、業務用の電子レンジ1で、家庭用よりも大きい加熱パワーで短時間加熱する時の目安として、例えば1500Wの加熱パワーで加熱する場合の加熱時間が併記されている。具体的には、例えば、「500W2分00秒1500W0分40秒」等の表示がなされている。
【0054】
より具体的には、加熱制御情報22は、所定の加熱パワーでの加熱量を表す数字である第1文字列、例えば「500」と、その加熱パワーの単位を表す第2文字列、例えば「W」と、その加熱パワーでの加熱時間である数字である第3文字列、例えば「2」とを、この順に含む文字列である。また、加熱制御情報22は、第3文字列の後に、その加熱時間の単位を表す第4文字列、例えば「分」と、その加熱パワーでの加熱時間を示す数字である第5文字列、例えば「00」と、その加熱時間の単位を表す第6文字列、例えば「秒」とを、この順に含む文字列である。
【0055】
また、加熱制御情報22は、第6文字列の後に、前述した、所定の加熱パワーよりも大きい加熱パワーの加熱量を表す数字である第7文字列、例えば「1500」と、その加熱パワーの単位を表す第8文字列、例えば「W」とを、この順に含む文字列である。また、加熱制御情報22は、第8文字列の後に、その加熱パワーでの加熱時間である数字である第9文字列、例えば「0」と、その加熱時間の単位を表す第10文字列、例えば「分」と、その加熱パワーでの加熱時間を示す数字である第11文字列、例えば「40」と、その加熱時間の単位を表す第12文字列、例えば「秒」とを、この順に含む文字列である。
【0056】
なお、本実施の形態では、第2文字列、および、第8文字列として、熱量を表すSI単位である「W(ワット)」を用いたが、加熱パワーの単位を表すものであれば、他の文字または単位でもよい。また、第4文字列、第6文字列、第10文字列、および、第12文字列として、時間の単位を表す文字として「分」または「秒」を用いたが、時間の単位を表すものであれば、他の文字または単位でもよい。
【0057】
図2Aに戻って、読取部19は、カメラ16によって撮影された画像から、商品に付与された加熱制御情報22が表示されている個所を抽出して、加熱制御情報22の文字(少なくとも数字を含む文字)を読み取る。
【0058】
したがって、カメラ16は、読取部19で加熱制御情報22を読み取り可能な位置であれば、加熱庫12内の側面に設けられても、上面に設けられても、背面に設けられてもよい。通常、加熱制御情報22を表示するシール20が貼付された商品の高さは、約3cm~約9cmほどである。よって、その高さよりも高い加熱庫12内の位置に、カメラ16が設置されればよい。
【0059】
図3に示されるように、シール20には、商品名21、加熱制御情報22、金額情報23、消費期限情報24、商品を特定するコード記号の一例であるバーコード25、栄養情報26、および、お知らせ情報27等の、いろいろな情報が表示されている。このような様々な情報の中から、読取部19が加熱制御情報22を抽出しやすいように、シール20の、加熱制御情報22の文字列の先頭部分付近には、先頭マーク28が表示されている。なお、ここでは、貼り付けられたシール20に付与された、加熱制御情報22の文字列が読取られるものとしているが、本開示はこれに限定されない。例えば、商品のパッケージに、シール20を介することなく直接付与された文字列(本実施の形態と同様の加熱制御情報22)をカメラ16で撮影し、読取部19で読み取ることも可能である。
【0060】
読取部19は、カメラ16によって撮影された画像から、まず、特殊な形(所定の形、ここでは星型)をした先頭マーク28を抽出する。次に、読取部19は、先頭マーク28に続く英数字を、「500W2001500W040」という文字列として読み取る。ここで、読取部19は、「分」、および「秒」といった、時間の単位を表す文字は読み取らない、または、読み取ったとしても、解析には用いない。
【0061】
これは、読み取りおよび解析のうち、少なくともいずれかを英数字のみとすることにより、読み取るべき文字の種類を少ない数に限定できるので、回路、およびプログラム等を小規模にできるためであり、また、英数字の形は、漢字等よりも単純であり、読取が容易であり、認識性を高めることができるからである。
【0062】
そして、読取部19は、予め定められた解析ルールに従って、文字列を、「W」までの数字列、「W」の後の3桁の数字列、その数字列に続く「W」までの数字列、および、「W」の後の3桁の数字列の四つに分解して、「500」、「200」、「1500」、および「040」を得る。さらに、読取部19は、2番目の数字列および4番目の数字列それぞれを、最初の1桁が「分」であり、後の2桁が「秒」であるとして解析する。
【0063】
また、読取部19は、1番目の数字列が、加熱パワーであって、2番目の数字列の時間と対応しており、3番目の数字列が、加熱パワーであって、4番目の数字列の時間と対応しているとして解析する。この結果、「500Wで2分」、および、「1500Wで40秒」という加熱制御情報22が読み取られる。
【0064】
図2Aに戻って、使用者は、ドア3を開けて、商品を加熱庫12に入れる。読取部19は、ドアスイッチ17によって、ドア3が開けられたことが検出されると、カメラ16によって撮影された加熱庫12内部の画像から、上述したように加熱制御情報22を読み取る。
【0065】
ここで、読取部19が有する、誤り判定部29について説明する。
【0066】
上述した例においては、読取部19により、「500Wで2分」、および「1500Wで40秒」の二通りの加熱制御情報22が読み取られた。ここで、誤り判定部29は、この二つの加熱制御情報22の関係が正しいかどうかを判定する。
【0067】
食品を加熱するのに必要な総エネルギーは、その食品で一定に決まるものである。加熱パワーが大きければ短時間で、小さければ長時間で加熱される。加熱パワーと加熱時間とは、ほぼ反比例の関係になる。したがって、読取部19が、二通りの加熱制御情報22を読み取った場合、誤り判定部29は、それらの関係が、ほぼ反比例の関係になっているか否かを判定して、例えば、反比例の関係から10%以内の差になっていれば、正しく読み取れたと判定する。詳細は後述する。
【0068】
読取部19が、カメラ16で撮影された画像から加熱制御情報22を読み取る際に、読取間違いの発生する可能性がある。例えば、読取部19が、「6」と「9」、および、「0」と「8」等の、互いに形状が良く似た数字を、別の数字として読取ってしまう可能性がある。また、読取部19が先頭マーク28を読み間違った場合には、図3に示されるように、シール20には、金額情報23および消費期限情報24等の、他の数字も表示されているので、それらが加熱制御情報22の数字として、誤って読み取られる可能性もある。
【0069】
誤って読取られた数字で加熱制御が行われてしまうと、過剰加熱、または、加熱不足という結果になってしまう可能性がある。これを防止するために、誤り判定部29は、読取部19の読み取りの誤りを判定する。
【0070】
図2Aに戻って、誤り判定部29が、二通りの加熱制御情報22の関係が正しいと判定すれば、読取部19は、その二通りの加熱制御情報22を、加熱制御部14に送る。加熱制御部14は、二通りの加熱制御情報22のうちのいずれか、具体的には、その電子レンジ1で加熱できる加熱パワーの範囲内で、より大きい加熱パワーの加熱制御情報22を選択し、操作表示部6に送る。操作表示部6は、液晶表示器7に、選択された加熱制御情報22の加熱時間を表示する。
【0071】
使用者は、液晶表示器7に適切な加熱時間が表示されたことを確認して、ドア3を閉じて、加熱開始ボタン9を押す。加熱制御部14は、ドアスイッチ17から、ドアが閉じていることを示す信号を受け、かつ、操作表示部6から加熱開始ボタン9が押されたことを示す信号を受けとると、上述のように選択された加熱制御情報22の、加熱パワーおよび加熱時間で商品が加熱されるように、マグネトロン13を加熱制御する。
【0072】
ここで、本実施の形態の電子レンジ1は、シール20から加熱制御情報22を読み取る際に、先頭マーク28を用いるものとして説明を行った。しかしながら、本開示はこの例に限定されず、加熱制御情報22と所定の位置関係にある、所定形状の位置指定マーク128を用いることで、精度良く、加熱制御情報22を読み取ることができる。
【0073】
図4は、本開示の実施の形態における、シール20に表示された位置指定マーク128の一例を示す図である。
【0074】
図4の例では、加熱制御情報22を囲むように形成された、矩形状の位置指定マーク128が示されている。読取部19は、位置指定マーク128を抽出して、その内部に記載されている加熱制御情報22を読み取る。なお、位置指定マーク128は、矩形に限定されず、任意の形状とすることができる。また、加熱制御情報22と位置指定マーク128との位置関係も、図4の例に限定されず、任意の位置関係とすることができる。
【0075】
図5Aは、本開示の実施の形態における、加熱庫12内の底面を上方から見た状態を示す平面図であり、図5Bは、同加熱庫12内の底面を上方から見て、商品が置かれた状態を示す平面図であり、図5Cは、同加熱庫12内の底面を上方から見た状態を示す、他の平面図である。
【0076】
図5Aに示されるように、「食品は中央に置いてください」といった、文字の記載されたマーカー、および、カギカッコ(「」)型のマーカーのうち少なくともいずれかが、加熱庫12内の底面に付与される。これにより、図5Bに示されるように、使用者に、シール20が貼付された商品(被調理物)を載置すべき場所を想起させることができる。このように、使用者が加熱調理器の加熱庫12内に被加熱物を置くときに、読取部19で読取りしやすい場所に被加熱物を置くよう、使用者を誘導することができる。これにより、加熱調理器の加熱庫12内において、被加熱物に付与された文字と、カメラ16との距離が離れて、被加熱物に付与された加熱制御情報22の文字が、読取部19によって認識されない可能性を、極力小さくすることができる。よって、加熱制御情報22の文字が認識されないために、加熱を開始できないことを少なくできる。また、使用者が、加熱調理器のドア3を開けて、被加熱物の置き位置を変更する等の煩わしい作業を、極力少なくすることができる。
【0077】
さらに、図5Cに示されるように、マーカーの形状および文言のうち、少なくともいずれかの内容を変更(ここでは、形状は略長方形であり、文言は「商品をこの範囲に置いてください」である)したり、マーカーの位置を、カメラ16の位置に合わせて、ずらしたりしてもよい(例えば、カメラ16が、マーカーの付与されている左下隅側に対応する上方位置に設置された場合には、図5Cのようにマーカーを配置する等)。
【0078】
なお、カメラ16から、シール20に付与されている加熱制御情報22の文字までの距離は、カメラ16から、加熱庫12内壁面までの最長距離である、約480mm以下となっている。
【0079】
図6は、カメラ16が、加熱庫12の上面の、ほぼ中央に設置された場合の、電子レンジ1の加熱庫12内壁の例を示す図である。
【0080】
前後左右それぞれの壁面から20mmの間隔を空けた領域にシール20が入るように、食品を置くことを指示するマーカーを表示するものとする。上述したように、食品の高さは、概ね30~90mmであるので、最も背の低い食品の高さである30mmの高さの面において、カメラ16から最も遠い位置となる四隅までの距離は、約250mmとなる。
【0081】
この250mm以下の距離で、確実に文字を読取る方法について、次に説明する。なお、ここでは、カメラ16を加熱庫12の上面の、ほぼ中央に設置しているが、カメラ16の位置は、加熱庫12の前方寄りであってもよいし、後方寄りであってもよいものとする。ここで、再度、カメラ16の仕様および被写界深度について、説明する。本実施の形態におけるカメラ16の仕様の一例は、以下のとおりである。
【0082】
水平画素数t=2592、垂直画素数u=1944
焦点距離f=2.3mm
絞り値F=2.4
ピクセルサイズ 1.12μm(0.00112mm)×1.12μm
水平視野角θh=71.15度、垂直視野角θp=56.42度
ピント合わせをする被写体までの距離の中心d=200mm
この仕様において、前方被写界深度Dは、一般的に以下の式で表される。ここで、許容錯乱円径cを、ピクセルサイズとしている。
【0083】
【数1】
【0084】
また、後方被写界深度Dは、一般的に以下の式で表される。
【0085】
【数2】
【0086】
よって、被写体から前方の前方被写界深度Dは、18.45mmとなり、被写体から後方の後方被写界深度Dは、22.62mmとなる。すなわち、ピント合わせをする被写体までの距離の中心200mmから、18.45mm手前の181.55mmまではピントが合っているとともに、中心から22.62mm後方の222.62mmまでもピントが合っていることになる。一般にいわれる被写界深度は、18.45mm+22.62mm=41.07mmとなる。
【0087】
カメラ16から被写体までの距離が、この181.55~222.62mmの範囲であれば、ピントが合っている。この範囲から外れると、ピントがずれていく。前述の範囲から外れれば外れるほど、ピントのずれは大きくなる。ピントがずれると、画像がボケる。この画像のボケ度合いを表す指標として、錯乱円径(c)がある。
【0088】
一般に、錯乱円径(c)は、カメラから被写体までの距離をd(d>d)としたときに以下の式で表される。なお、本開示において、カメラ(撮影部)から被写体までの距離とは、カメラの光学系の光軸方向の中心点から被写体までの光軸方向の距離である。
【0089】
【数3】
【0090】
(d<d)とした場合には、分子の(d-d)が、(d-d)に変わる。したがって、この錯乱円径と許容錯乱円径との比率rが、仮にボケ度と定義できる。
【0091】
そして、許容錯乱円径をピクセルサイズ(x)として、その比率であるb=x/cをボケ度とする。そして、ボケ度b=x/cの値が1を超える場合には、ボケ度bの値を「1」に固定する。こうすると、ボケ度bの最大値は1となり、錯乱円が大きいほど、つまり、ボケ度合いが大きいほど、小さい値となる。そして、c≦xとなる範囲が被写界深度の範囲であり、この範囲ではピントが合っているので、ボケ度を、最大値のb=1とすればよい。
【0092】
カメラ16の仕様を、焦点距離f=2.3mm、絞り値F=2.4、ピクセルサイズ1.12μm(0.00112mm)×1.12μmで、ピント合わせをする被写体までの距離の中心d=200mmとする。このときの、カメラ16から被写体までの距離と、ボケ度b=x/cとの関係を、図7に示す。ピントを合わせた中心を含む被写界深度の範囲でのボケ度は、最大値の1であり、そこから離れるほど、ボケ度が低くなる、つまり、ボケた画像になることが示されている。
【0093】
次に、カメラ16で撮影される解像度について説明する。カメラ16から離れるに従って、被写体は小さく写り、カメラ16に近づくほど、被写体は大きく写る。つまり、カメラ16から被写体までの距離が遠いほど、解像度は低く、距離が近いほど、解像度は高い。カメラ16から被写体までの距離をdとするとき、1ピクセルが占める長さを、2×tan(θ/(n/2))の三角関数で表すことができる。ここで、θは視野角であり、nは画素数である。そして、一般にいう解像度は、その逆数となる。
【0094】
カメラ16の仕様として、水平画素数t=2592、垂直画素数u=1944、水平視野角θh=71.15度、垂直視野角θp=56.42度としたときの水平解像度(h)、垂直解像度(p)と、距離との関係を、解像度をdpiの単位として、図8に示す。この値が大きいほど、読取りは易しくなり、この値が小さいほど、読取りは難しくなる。
【0095】
ここで、文字を適切に読み取るために必要な解像度について説明する。読み取る文字を英数字に限定した場合、最少8ドット×8ドットで印字されるフォントがある。つまり、8ドット×8ドットあれば、英数字を区別する表示が可能である。一方、それを読み取るには、一般に、その2倍の解像度が必要であり、1文字に対して16ドット×16ドットの解像度があれば、区別することが可能になる。文字サイズを、一般的に使われる大きさのうち、比較的小さな10ポイントとすると、縦の長さは0.14インチになる。よって、必要な縦の解像度であり、認識する文字サイズから決まる認識基準解像度r=115dpiとなる。文字は大きさを有していて、横方向も、同様に、認識基準解像度r=115dpiとすると、面積で表せば、r=115×115dpiとなる。
【0096】
図8に示された、水平解像度(h)と垂直解像度(p)の積が、この認識解像度rよりも大きければ、読み取ることができると考えられるが、そこにボケの要素が加味されなければならない。ボケてくると、実質的な解像度が低下するので、図8に示された、水平解像度(h)と垂直解像度(p)との積に、図7で示されたボケ度を掛け合わせたものが、実質的な解像度ということになる。この実質的な解像度を、認識解像度qとして図9に示す。
【0097】
この認識解像度qが、認識基準解像度rを上回っている範囲では、文字の読取が可能ということになり、ピントがずれていても、距離が近い方(ピントが合っている範囲よりも距離が近い場合)では、文字を読み取ることができることがわかる。この電子レンジ1では、カメラ16から文字までの最大距離を250mmとして、ピントを200mmに合わせたとして、被写界深度から判断すると、文字までの距離は、ピントの合った範囲を超える。しかしながら、距離の長い方(ピントが合っている範囲よりも距離が遠い場合)では、距離の短い方と比較して、ピントの合った範囲を超える程度が少ないこと、および、距離の近い方は、ピントの合った範囲を超える程度が大きくても解像度が上がることにより、250mmよりも短い距離の範囲では、すべての範囲で、認識解像度qが認識基準解像度rを上回ることとなる。したがって、指定の領域にシール20が置かれていれば、精度よく文字を読み取ることができる。
【0098】
また、加熱庫12内の寸法は、横幅350mm以下、奥行320mm以下、かつ、高さ200mm以下とすることが望ましい。
【0099】
このような構成により、加熱調理器の加熱庫12内における、商品(被加熱物)に付与された文字と、カメラ16との距離が離れてしまい、被加熱物に付与された加熱制御情報22の文字を、読取部で認識できなくなってしまう可能性を、極力小さくすることができる。よって、加熱制御情報22の文字が認識されないために、加熱を開始できないことが少なくなる。また、使用者が、加熱調理器のドア3を開けて、被加熱物の置き位置を変更したりする等の煩わしい作業を、極力少なくすることができる。
【0100】
この構成により、加熱調理器の加熱庫12内という比較的狭い空間の中で、カメラ16と、被加熱物に付与された文字との距離を、所定の距離よりも短い距離として、カメラ16から被加熱物に付与された文字までの距離範囲において、指定の範囲のどの位置に被加熱物が置かれた場合であっても、加熱制御情報22等が含まれる文字の読み取り精度を、極力高めることができる。
【0101】
また、被加熱物に付与された文字と、カメラ16との距離が、相当程度近い場合であっても、加熱制御情報22等の含まれる文字の読み取り精度を、極力高めることができる。なお、本開示において、「相当程度近い」とは、被写体となる食品等の高さを考慮して、約90mm程度の距離のことをいう。
【0102】
なお、上述の説明では、認識解像度qが認識基準解像度r以上である範囲を、読み取り可能な範囲としたが、カメラ16と、加熱制御情報22等が含まれる読取り必要な文字との距離が近すぎると、文字の長さの関係で、カメラ16の視野におさまらない場合が発生する。
【0103】
そこで、カメラ16から、加熱制御情報22の文字までの距離を、90mm以上とすることが望ましい。加熱制御情報22等が含まれる、読取り必要な文字の長さが50mm以内であれば、加熱制御情報22等が含まれる文字の読み取り精度を、極力高めることができる。
【0104】
さらに、カメラ16の視野角を31度以上とすれば、カメラ16から加熱制御情報22の文字までの距離が、相当程度近い場合であっても、加熱制御情報22等が含まれる、読取り必要な文字の長さが50mm以内であれば、加熱制御情報22等が含まれる文字の読み取り精度を、極力高めることができる。
【0105】
次に、本実施の形態の電子レンジ1の動作ステップについて、説明する。
【0106】
図10は、本開示の実施の形態における、加熱制御部14、読取部19、および誤り判定部29の動作の流れを示すフローチャートである。
【0107】
ここで、加熱制御部14、読取部19、および誤り判定部29の機能の少なくとも一部は、一例として、マイクロコンピュータおよび周辺回路によって実現されてもよい。
【0108】
なお、このマイクロコンピュータおよび周辺回路は、後述する制御を行うものであれば、どのような形態であってもよい。加熱制御部14、読取部19、および誤り判定部29は、演算処理部と、制御プログラムを記憶する記憶部とで構成されていてもよい。演算処理部としては、MPU(Micro Processing Unit)、およびCPU(Central Processing Unit)が例示される。記憶部としては、メモリが例示される。記憶部に記録されている制御プログラムが、演算処理部によって実行される。
【0109】
また、加熱制御部14、読取部19、および誤り判定部29は、ハードロジックで構成されてもよい。ハードロジックで構成すれば、処理速度の向上に有効である。各構成要素は、一つの半導体チップで構成されてもよいし、物理的に複数の半導体チップで構成されてもよい。複数の半導体チップで加熱制御部14、読取部19、および誤り判定部29を構成した場合には、後述する各制御を、それぞれ別の半導体チップで実現することもできる。
【0110】
まず、読取部19は、ドアスイッチ17の状態により、ドア3が開いているか否かを判定する(S1)。ドア3が開いていれば(S1,YES)、ステップS2に進む。一方、ドア3が閉じられていれば(S1,NO)、読取部19は、ステップS1を繰り返して、ドア3が開くのを待つ。
【0111】
読取部19は、カメラ16により、加熱庫12底面の画像を撮影し(S2)、ステップS3に進む。
【0112】
読取部19は、画像の中から先頭マーク28、または、位置指定マーク128を探す(S3)。読取部19は、先頭マーク28、または、位置指定マーク128が見つかる(S3,YES)と、ステップS4に進む。一方、読取部19は、先頭マーク28、または、位置指定マーク128が見つからなければ(S3,NO)、ステップS12に進む。
【0113】
ステップS4において、読取部19は、先頭マーク28、または、位置指定マーク128に基づいて、英数字を読み取り、図3に示されたシール20の例であれば、「500W2001500W040」の文字列を読み取る。そして、予め定められた解析ルールにより、その文字列を、「500Wで2分」、「1500Wで40秒」という、二通りの加熱制御情報22であると解析する。
【0114】
次に、ステップS5において、誤り判定部29は、読取部19が読み取った加熱制御情報22が、正しく読まれたものであるかどうかを判定する。具体的には、誤り判定部29は、第1の加熱制御情報である「500Wで2分」に対して、第2の加熱制御情報である「1500Wで40秒」が、±10%以内の範囲で反比例の関係にあるかどうかを判定する。
【0115】
誤り判定について、より具体的に説明する。上述した例であれば、第1の加熱制御情報の加熱パワーが「500W」であるのに対して、第2の加熱制御情報の加熱パワーは「1500W」と3倍である。よって、誤り判定部29は、第1の加熱制御情報の加熱時間が「2分」なので、第2の加熱制御情報の加熱時間が、その3分の1の「40秒」の±10%以内、つまり、36秒~44秒であれば、正しい読取ができていると判定する。
【0116】
ステップS6においては、ステップS5における判定結果に基づいて、読み取りに誤りがあるか否かが判定される。読み取り結果に誤りがなければ(S6,NO)、ステップS7に進み、一方、誤りがあれば(S6,YES)、ステップS12に進む。
【0117】
ステップS7において、読取部19は、加熱制御部14に、「500Wで2分」、および、「1500Wで40秒」の二通りの加熱制御情報22を送る。そして、加熱制御部14は、最大1500Wでマグネトロン13を制御することができるとすれば、「1500W」の加熱パワーに対応する加熱時間を、液晶表示器7に、例えば「40秒」と表示する。
【0118】
ステップS8において、読取部19は、ドアスイッチ17の状態を判定して、ドア3が閉じられているか否かを判定する。ドア3が閉じられたと判定されれば(S8,YES)、読み取りが確定したとして、ステップS9に進む。一方、ドア3が閉じられていないと判定されれば(S8,NO)、読み取りが未確定状態であるとして、ステップS2に戻り、ステップS2からステップS8までの処理が繰り返される。
【0119】
ステップS9では、加熱制御部14によって、使用者により取消ボタン10が押されたかどうかが判定される。取消ボタン10が押されていなければ(S9,NO)、ステップS10に進む。一方、取消ボタン10が押された場合(S9,YES)には、ステップS13に進む。これは、使用者が、液晶表示器7に表示された加熱時間を確認して、間違っていると判断した場合、または、別の加熱時間で加熱したいと思った場合に、取消ボタン10が押されることを検知して、読み取られた加熱時間以外の加熱時間で、加熱するためである。
【0120】
ステップS10において、加熱制御部14は、加熱開始ボタン9が押されたかどうかを判定し、押されていれば(S10,YES)、ステップS11に進んで加熱を開始する(S11)。一方で、加熱開始ボタン9が押されていなければ(S10,NO)、ステップS9に戻って、取消ボタン10が押されたかどうかの判定処理が繰り返される。
【0121】
ステップS3で、先頭マーク28、または、位置指定マーク128が見つからない場合(S3,NO)、および、ステップS6で、読取文字列に誤りがあると判定された場合(S6,YES)には、ステップS12に進み、読取部19は、ドアスイッチ17により、ドア3が閉じられたかどうかを判定する。ドア3が閉じられていれば(S12,YES)、ステップS13に進む。一方で、ドア3が閉じられていなければ(S12,NO)、ステップS2に戻って、カメラ16による撮影から、各処理が繰り返される。
【0122】
通常、使用者が、ドア3を開けてから、食品を加熱庫12内に入れて静止させるまでの間は、上述した、ステップS12からステップS2に戻るループが繰り返される。
【0123】
そして、ステップS9で取消ボタン10が押された場合(S9,YES)、および、ステップS12でドア3が閉じられた場合(S12,YES)には、ステップS13に進む。ステップS13では、使用者が手動で設定した加熱時間を、加熱制御部14が受け取る。これは、加熱制御情報22が表示されていない食品を加熱する場合、または、汚れ等により、加熱制御情報22を読取部19が読み取ることができない場合等に、使用者が、加熱時間を、時間設定ボタン群8を使って、手動で設定できるようにするためである。
【0124】
そして、ステップS14において、加熱制御部14は、加熱開始ボタン9が押されたかどうかを判定し、押されれば(S14,YES)、ステップS11に進んで、加熱を開始する。一方で、加熱開始ボタン9が押されていなければ(S14,NO)、ステップS13に戻って、加熱制御部14が使用者の手動設定操作を受け取る処理が、繰り返される。
【0125】
このように、本実施の形態によれば、読取部19が、商品に表示された加熱制御情報22の文字(少なくとも英数字を含む文字)を読み取り、その加熱制御情報22に基づいて、加熱制御部14が、マグネトロン13を制御する。これにより、店員が、商品の加熱時間を入力したり、商品に対応したボタンを選択したりすることなく、自動的に加熱時間を設定することができる。また、商品のコードと加熱時間との関係を登録する、煩わしい作業を不要とすることができる。
【0126】
また、誤り判定部29が、例えば「500W」および「1500W」の二つの加熱パワーそれぞれにおける加熱時間の情報から、加熱パワーと加熱時間との関係が正しいかどうかによって、読取りの誤りを判定する。これにより、誤った読取りにより、誤った加熱をしてしまうことがなく、適切に加熱することができる。
【0127】
また、読取部19は、ドアスイッチ17により、ドア3の開閉状態を検知し、ドア3が開けられると、カメラ16の撮影による読み取りを開始し、ドア3が閉じられると、読取内容を確定させる。これにより、使用者は、ドア3を開いた状態で加熱制御情報22がうまく読み取れない場合には、商品の場所、または向きを変更する等して、読み取りやすいような条件を作ることができる。
【0128】
なお、本実施の形態では、読取部19は、商品に付与された文字列から加熱制御情報22を読み取るものとして説明した。しかしながら、本開示はこの例に限定されない。例えば、誤り判定部29の動作に関する態様、ならびに、ドア3の開閉状態と、読取部19の動作開始および終了とに関する態様のうち、少なくともいずれかにおいて、読取部19は、商品に付与された情報コードである、バーコードまたは二次元コードから、加熱制御情報22を読み取るものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上のように、本開示によれば、加熱調理器の加熱庫内における、被調理物に付与された文字と撮影部との距離が離れて、被加熱物に付与された加熱制御情報の文字を、読取部が認識できない可能性を、極力小さくすることができる。よって、加熱制御情報の文字が認識されずに加熱を開始することができないことを少なくでき、使用者が、加熱調理器のドアを開けて、被加熱物の置き位置を変更する等の、煩わしい作業を極力少なくすることができる。よって、本開示は、販売店で使われる電子レンジの他、家庭用の電子レンジ、炊飯器、および、IHクッキングヒータ等の加熱調理器全般に適用でき、有用である。
【符号の説明】
【0130】
1 電子レンジ
2 筐体
3 ドア
4 ガラス窓
5 取っ手
6 操作表示部
7 液晶表示器
8 時間設定ボタン群
9 加熱開始ボタン
10 取消ボタン
11 一時停止ボタン
12 加熱庫
13 マグネトロン(加熱部)
14 加熱制御部
15 照明
16 カメラ(撮影部)
17 ドアスイッチ
18 突起部
19 読取部
20 シール
21 商品名
22 加熱制御情報
23 金額情報
24 消費期限情報
25 バーコード(コード記号)
26 栄養情報
27 お知らせ情報
28 先頭マーク
29 誤り判定部
128 位置指定マーク
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10