(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】交流モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/16 20060101AFI20221223BHJP
H02K 3/28 20060101ALI20221223BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20221223BHJP
H02K 3/50 20060101ALI20221223BHJP
H02K 17/08 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
H02K3/16
H02K3/28 J
H02K3/34 C
H02K3/50 A
H02K17/08 D
(21)【出願番号】P 2022505876
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2021006039
(87)【国際公開番号】W WO2021182052
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2020043508
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】森 洸太郎
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 康仁
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-235572(JP,A)
【文献】特開2003-088031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/16
H02K 3/28
H02K 3/34
H02K 3/50
H02K 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、インシュレータと巻線と端子ピンとを有する固定子と、前記固定子の内周に設けられた回転子と、を有する交流モータであって、
前記コアは、
主コアと、
補助コアと、を備え、
前記主コアと前記補助コアとを周方向に交互に接続した円環状に形成され、
前記巻線は、
前記主コアに環状に引き回された主巻線と、
前記補助コアに環状に引き回された補助巻線と、
前記主巻線または前記補助巻線の一方に重ねて巻き回され、所定のコアAから前記コアAとは異なるコアBまで環状に引き回され
、さらに前記コアBから前記コアAまで環状に重ね巻きされた速調線と、を備え、
前記速調線は、
始端または終端の少なくとも一方を、前記コアA及び前記コアBとは異なる、コアCに対応するインシュレータに設けられた前記端子ピンに接続され
ている交流モータ。
【請求項2】
前記速調線は、
前記コアCに引き回されたのち、前記終端を当該コアCに対応するインシュレータに設けられた前記端子ピンに接続されている請求項1記載の交流モータ。
【請求項3】
前記インシュレータは、
前記コアの内周側に設けられた内壁と、
前記コアの外周側に設けられた外壁と、を備え、
前記端子ピンは、
前記内壁に設けられ、
前記インシュレータは、
前記端子ピンを固定するピン固定部を備え、
前記ピン固定部は、
前記内壁よりも前記円環状における径方向外側へ突出し、
前記外壁は、
前記ピン固定部の外周径よりも薄い請求項
1記載の交流モータ。
【請求項4】
前記外壁は、
前記内壁よりも薄肉に形成され、
前記端子ピンは、
前記内壁にのみ設けられた請求項
3記載の交流モータ。
【請求項5】
前記インシュレータは、
前記コアの内周側に設けられた内壁と、
前記コアの外周側に設けられた外壁と、を備え、
前記端子ピンは、
前記外壁に設けられた請求項1記載の交流モータ。
【請求項6】
前記内壁は、
前記外壁よりも薄肉に形成され、
前記端子ピンは、
前記外壁にのみ設けられた請求項5記載の交流モータ。
【請求項7】
前記速調線による重ね巻きは、
重ねられる前記主巻線または前記補助巻線に対して少なくとも一重に重ね巻される請求項1から6のいずれかに記載の交流モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、巻線方法を工夫することで、回転速度を変更可能な交流モータが知られている。
【0003】
その一例として、特許文献1に開示された技術について説明する。
【0004】
単相誘導モータ(交流モータ)のステータ(固定子)は、コアおよび複数のコイル(巻線)を備え、上下に延びる中心軸を中心とした環状のコアバッグ(継鉄部)、コアバックから径方向内側へ延びる複数のティース(歯基部)、複数のティースにそれぞれ巻き回される複数のコイルよりなる。コイルは、
図8に示すように、主巻線8000と、三種類の補助巻線(第1補助巻線8100、第2補助巻線8200、第3補助巻線8300)と、を含む。主巻線8000は、連続する導線(導電線)を1つおきのティース6100に巻き回す方向を反転しつつ引き回し形成させ、第1補助巻線8100は、主巻線8000が巻き回された1つおきのティース6100の中間に位置するティース6100に巻き回される方向を反転しつつ引き回され形成される。
【0005】
さらに主巻線8000または第1補助巻線8100のどちらか一方に、2本以上の第2、第3の補助巻線8200、8300が重ね巻きされる。ここで、ティース6100の近傍におけるインシュレータの軸方向一端面には、軸方向一方に伸びる複数の絡げピン(端子ピン)が配置される。絡げピンには、主巻線8000の始端もしくは終端、または、第1補助巻線8100および重ね巻きされた複数の補助巻線8200、8300の、始端もしくは終端が、それぞれ一本ずつ絡げられる。上記構成により、交流モータに速度調節機能(速調機能)を付与することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
交流モータにおいて、近年、インシュレータの薄肉化が進んでいる。これは、インシュレータを薄肉化することで、コアに巻き回すことのできる巻線の巻回し回数を増加させることが目的である。これにより、巻線に電流が流れた際に発生する磁束量も増え、同一サイズの交流モータであってもより大きなトルクを発生させることが出来る。しかし一方で、インシュレータの薄肉化により、インシュレータに設けることの出来る端子ピンの数が制限され、速調数、つまり調節可能な速度数が減少するという課題がある。
【0008】
そして、この課題を解決するために、本発明に係る交流モータは、コアと、インシュレータと巻線と端子ピンとを有する固定子と、固定子の内周に設けられた回転子と、を有する。コアは、主コアと、補助コアと、を備え、主コアと補助コアとを周方向に交互に接続した円環状に形成される。巻線は、主コアに環状に引き回された主巻線と、補助コアに環状に引き回された補助巻線と、主巻線または補助巻線の一方に重ねて巻き回され、所定のコアAからコアAとは異なるコアBまで環状に引き回され、さらにコアBからコアAまで環状に重ね巻きされた速調線と、を備える。速調線は、始端または終端の少なくとも一方を、コアA及びコアBとは異なる、コアCに対応するインシュレータに設けられた端子ピンに接続されている構成とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【0009】
本発明によれば、交流モータにおいて、速調数を減少させることなくインシュレータの薄肉化が可能な交流モータを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る交流モータの展開図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る固定子の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係るコアの斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係るインシュレータの斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係る固定子の斜視断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態に係る固定子の断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態に係る巻線仕様の簡略図である。
【
図8】
図8は、従来の単層誘導モータにおける巻線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、全図面を通して、同一の部位については同一の符号を付して二度目以降の説明を省略している。さらに、各図面において、本発明に直接には関係しない各部の詳細については説明を省略している。
【0012】
(実施の形態)
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
まず、
図1を参照して本実施の形態に係る交流モータ10について説明する。なお、
図1は交流モータ10の展開図である。
【0014】
交流モータ10は、例えば一般家庭コンセント等で得られる交流電圧(単相交流)を印加することで回転するモータであり、換気扇、空気清浄機、加湿器、送風機等に用いられる。交流モータ10は、固定子1と、回転子2と、ハウジング3a、3bと、を備える。
【0015】
固定子1は、外部より電流が供給されることで、磁束を発生し、回転子2に対して回転力を発生させる。固定子1の詳細については後述する。
【0016】
回転子2は、固定子1より得られた回転力で中心軸11を中心として回転運動し、回転運動で得られた動力を、シャフト21を介して交流モータ10の外部へ伝達する。回転子2は、シャフト21と、ダイカスト部22と、ベアリング23と、を備える。
【0017】
シャフト21は、炭素鋼材やステンレス鋼材等で形成され、回転子2の動力を外部へ伝達する回転軸である。またシャフト21は円筒棒形状であり、中心軸11と同心である。シャフト21は、ダイカスト部22に空けられたシャフト径と略同径の穴に、圧入固定される。
【0018】
中心軸11は、交流モータ10の軸方向へ延びる軸であり、回転運動の中心である。
【0019】
ダイカスト部22は、中心軸11と同一方向、つまり中心軸11の伸長方向に積層した複数枚の電磁鋼板と、アルミニウム等で形成されるかご型導体と、を備える。固定子1より発生した磁束が、ダイカスト部22の電磁鋼板を通ることで、かご型導体に誘導電流が流れ、フレミング左手の法則より回転力が発生する。ダイカスト部22は、円筒形状でシャフト21と同心である。
【0020】
べアリング23は、シャフト21と同心の中空円形状であり、回転運動するシャフト21を支持する。ベアリング23の内径は、シャフト21の径と略同径であり、ダイカスト部22をシャフト21の両側から挟み込む形で2個、シャフト21に圧入固定される。
【0021】
ハウジング3a、3bは、固定子1の外径と略同径の内部空間を有し、固定子1を内部空間に保持する有底円筒形状を有する外郭である。ハウジング3aは、有底円筒形状における天面開口を固定子1に向けて、固定子1の軸方向における一方より固定子1を格納する。ハウジング3bは、ハウジング3aとほぼ同一の形状を有し、同じく天面開口を固定子1に向けて、固定子1の軸方向における他方より固定子1を格納する。これによりハウジング3a、3b内に、固定子1及び回転子2が格納される。
【0022】
続いて、
図2、
図3を参照して本実施の形態に係る交流モータ10の固定子1について説明する。なお、
図2は固定子1の斜視図、
図3はコア5の斜視図である。
【0023】
固定子1は、コア5と、インシュレータ6と、巻線7と、端子ピン8と、基板9と、を備える。
【0024】
コア5は、複数枚の電磁鋼板を中心軸11と同一方向に積層した構造であり、巻線7に電流を流すことで発生する磁束の通り道、つまりは磁気回路を形成する。コア5は、複数の分割コア51を一体として環形状に形成され、または独立した複数の分割コア51を接続して環形状に形成される。
【0025】
分割コア51は、継鉄部511と、歯基部512と、鍔部513とを備える。
【0026】
継鉄部511は、分割コア51の外周側に設けられ、コア5の外周面を形成する。
【0027】
歯基部512は、継鉄部511から内周側に突出し、中心軸11に垂直な断面において断面視して矩形状となる。
【0028】
鍔部513は、歯基部512の内周側先端部から周方向両側に突出する。鍔部513は、歯基部512の内周側先端部より遠ざかるに従い、中心軸11から半径方向の厚みが薄くなる。鍔部513は、隣接する鍔部513と接触しないが、コア5の内周面を形成する。
【0029】
インシュレータ6は、絶縁材の樹脂成型品であり、円筒形状を有するコア5の巻線部分、つまり歯基部512と継鉄部511の内周側と鍔部513の外周側とで形成される空間を、内周からを覆う形状を有する。インシュレータ6は、巻線7を、インシュレータ6を介して複数の分割コア51に対して巻き回すことで、コア5と巻線7の電気的絶縁を図る役割を果たす。インシュレータ6は、コア5と同様に、分割コア51に対応した環形状を形成する。
【0030】
巻線7は、銅やアルミニウムの合金を主な素材とする導電線であり、インシュレータ6を備えたコア5に巻き回される。要求される仕様に応じ、巻き回し仕様が異なる。
【0031】
端子ピン8は、主として導電素材で形成され、インシュレータ6の上面、つまりは基板9と対向する面に、中心軸11と並行に設置される。端子ピン8は、はんだ等により基板9と電気的に接続し、巻線7の始端または終端が絡げられることで、基板9と巻線7との電気的接続を仲介する。インシュレータ6における端子ピン8の位置は、ハウジング3aとの法定絶縁距離を考慮し決定される。
【0032】
基板9は、複数の電気的接点を接続することで、外部のインバータ回路等と巻線7とを接続し、巻線7への電流供給を可能にする。基板9は、複数の電気的接点と、ランド92と、スルーホール91と、を備える。
【0033】
ランド92は、複数の電気的接点を通電可能に接続する銅箔である。
【0034】
スルーホール91は、端子ピン8を貫通させるために、基板9に空けられた貫通穴である。
【0035】
基板9は、中心角を約160度とした中空円形の一部分を輪郭とし、中心軸11と同心であって、中心軸11に垂直な平面上に、中心軸11からコア5の方向に所定の距離を離した位置に配置される。基板9は、インシュレータ6の天面側の外周部に載置される。
【0036】
続いて
図4を参照してインシュレータ6の詳細について説明する。なお、
図4はインシュレータ6の斜視図である。
【0037】
インシュレータ6は、内壁62と、外壁63と、接続部64と、突出部65と、を備える。
【0038】
内壁62は、環状に形成されたインシュレータ6の内周側に位置する。内壁62は、分割コア51の歯基部512の外周側に隣接し、歯基部512の外周面を覆う。内壁62は、ピン固定部61を備える。
【0039】
ピン固定部61は、内壁62の周方向両側に設けられ、端子ピン8を固定する穴である。ピン固定部61には、巻線7へ電流を供給するための端子ピン8が圧入固定される。また、ピン固定部61は、インシュレータ6の上面より中心軸11と平行して突出しており、かつ鍔部513の外周面より、中心軸11から径方向へ突出した形状を備える。そのため、巻線7をピン固定部61の内周側に引っ掛けることで、隣接するインシュレータ6への巻線7の渡りをサポートする。
【0040】
外壁63は、環状に形成されたインシュレータ6の外周側に位置する。外壁63は、分割コア51の継鉄部511の内周側に隣接し、継鉄部511の内周面を覆う。内壁62と外壁63の間は、巻線7を巻き回す空間であり、この空間が広い程巻き回せる巻線量を増量でき、高出力のモータを設計できる。そのため、内壁62もしくは外壁63の厚みを薄くするインシュレータの薄肉化が進んでいる。交流モータ10では、内壁62に端子ピン8が設けられるため、内壁62に比べ外壁63を薄肉化でき、外周方向に巻線量を増量できる。ここで、外壁63の厚みは、ピン固定部の外周径より薄く、端子ピン8を固定できない。また、内壁62に端子ピン8を設けることは、端子ピン8とハウジング3aとの間の法定絶縁距離の確保が不要となり、モータ小型化に寄与する。
【0041】
接続部64は、内壁62と外壁63を接続し、コア5の歯基部512を覆う。接続部64は、貫通孔66を備える。
【0042】
貫通孔66は、分割コア51の歯基部512を覆うための貫通した穴である。貫通孔66は、内壁62と外壁63とを接続する空間であり、歯基部512が位置する。
【0043】
突出部65は、インシュレータ6の上面より中心軸11と平行して突出しており、かつ内壁62より中心軸11から径方向へ突出した形状を備える。そのため、巻線7を突出部65の中心軸11から径方向へ突出した形状部に引っ掛けることで、隣接するインシュレータ6への巻線7の渡りをサポートする。これにより、巻線7をインシュレータ6の環に沿って引き回すことができ、巻線7の切断等を抑制する。突出部65の上面には基板9の裏面が位置し、基板9と巻線7との位置関係を決定する。
【0044】
続いて
図5を参照し基板9とインシュレータ6に設けられた端子ピン8の構成を説明する。なお、
図5は固定子1の斜視断面図である。
【0045】
インシュレータ6に設けられた端子ピン8aおよび端子ピン8bは、インシュレータ6の天面側に載置された基板9のスルーホール91に挿入し、基板9上のランド92と半田付けされ、固定される。ここで、端子ピン8aおよび端子ピン8b間の絶縁距離81は、端子ピン8aが半田付けされたランド端から、端子ピン8bが半田付けされたランド端までの最短距離である。そのため、小型モータである程、一つの分割コアに対応するインシュレータ6の内壁62に設けられた、周方向両側の端子ピン8間の絶縁距離81を保つことが、困難となる。つまり、小型化するにつれて、一つの分割コアに設けられる端子ピン8の距離は近接するため絶縁距離81も短くなり、結果的に複数の端子ピン8を設けることができない。したがって、一つの分割コアに設けられる端子ピン8の数は限られる。
【0046】
続いて
図6、
図7を参照して、コア5と巻線7について説明する。なお、
図6は中心軸に垂直な平面での固定子1の断面図、
図7は巻線仕様の簡略図である。
【0047】
コア5の分割コア51は、複数の主コア52と、複数の補助コア53と、で形成される。コア5は、主コア52と補助コア53を周方向に交互に接続した円環状を形成する。
【0048】
主コア52は、円環状に連続して配置された分割コア51のうち、1つおきの分割コア51である。
【0049】
補助コア53は、円環状に連続して配置された分割コア51のうち、主コア52の中間にあたる1つおきの分割コア51の事である。なお、主コア52と補助コア53とは便宜上の名称であって、物理的な形状、特性が異なるわけではない。また、主コア52同士、及び補助コア53同士が隣接することは無く、つまりコア5は、偶数個の分割コア51より構成される。
【0050】
巻線7は、主巻線72と、補助巻線73と、速調線74と、を備える。
【0051】
主巻線72は、連続する導電線を一つおきの主コア52に、巻き回す方向を主コア52毎に反転しつつ環状に、引き回され形成される。
【0052】
補助巻線73は、連続する導電線を複数の主巻線72が巻き回された1つおきの主コア52の中間に位置する補助コア53に、巻き回される方向を反転しつつ環状に引き回され形成される。
【0053】
速調線74は、主巻線72または補助巻線73のどちらか一方に重ね巻きされ、主巻線72や補助巻線73と同様に、巻き回す方向を反転しつつ環状に引き回される。また、速調線74は、速調数分、引き回されるため、速調数+1個の端子ピン8を必要とする。ここでは、速調線74は、補助巻線73に重ね巻きされる。
【0054】
主巻線72、補助巻線73および速調線74は、コア5の間を移動する際、ピン固定部61の内周側、突出部65の外周側、再度ピン固定部61の内周側、に順に引き回されることにより、渡り線が内壁62近傍に固定される。
【0055】
続いて、同様に
図6、
図7を参照して、巻線仕様について説明する。
【0056】
主巻線72は、まず端子ピン8aに絡げられ、主コア52aに巻き回される。そして、主コア52aから、主コア52b、主コア52c、主コア52dの順に、巻き回す方向を反転させつつ、引き回される。最後に、主巻線72は端子ピン8eに絡げられる。
【0057】
また補助巻線73は、まず端子ピン8bに絡げられ、補助コア53aに巻き回される。そして、補助コア53aから、補助コア53b、補助コア53c、補助コア53dの順に、巻き回す方向を反転させつつ、引き回される。最後に、補助巻線73は端子ピン8gに絡げられる。
【0058】
速調線74は、端子ピン8gに絡げられた補助巻線73と同一の導電線を使用して、巻き始められる。速調線74(74a)は、補助巻線73の終端が絡げられた端子ピン8gより、補助コア53d、補助コア53c、補助コア53b、補助コア53aの順に、既に巻き回されている補助巻線73と同一方向に巻き回され、引き回される。そして、速調線74は端子ピン8cに絡げられる。したがって、速調線74を補助巻線73に一回分重ね巻きしたことになるため、速調数は二となる。
【0059】
さらに速調線74(74b)は、端子ピン8cより、補助コア53a、補助コア53b、補助コア53c、補助コア53dの順に、既に巻き回されている補助巻線73と同一方向に巻き回され、引き回される。そして、端子ピン8fに絡げられる。したがって、速調線74を補助巻線73に二回分重ね巻きしたことになるため、速調数は三となる。
【0060】
従来、以上のように一つの分割コア51に対応するインシュレータ6に設けられた端子ピンの数が二本ならば、速調数は三が限界であった。さらにインシュレータ6の薄肉化が進み、モータが小型化すると、一つの分割コア51に対応するインシュレータ6に設けられた端子ピンの数は減少し、最低で一本になると予測される。つまり、一つの分割コア51に端子ピンが一本になった場合には、速調数も減少してしまう。この問題を解決すべく、本発明の例示的な実施の形態では、速調線74の始端もしくは終端の少なくとも一方は、補助巻線73が巻き回され始める補助コア53a(コアA)と、補助巻線73が巻き回し終わる補助コア53d(コアB)と、の二つのコアとは異なる補助コア53b(コアC)に対応するインシュレータ6に設けられた端子ピン8に絡げられる。
【0061】
具体的には、既に二回分重ね巻きされた速調線74(74c)が、絡げられている端子ピン8fより、補助コア53d、補助コア53c、補助コア53b、補助コア53aの順に、既に巻き回されている補助巻線73と同一方向に巻き回され、引き回される。ここで、最後に巻き回された補助コア53aに対応するインシュレータ6に設けられた端子ピン8は、二本とも既に巻線7が絡げられており使用できない。そこで、速調線74を補助コア53aに巻き回した後、再度、補助コア53bへ引き回し、半周もしくは一周分巻き回して端子ピン8dに絡げる。この方法をとれば、従来の速調数の限界を増やすことができ
る。さらに、モータ小型化により一つの分割コア51に対して端子ピン8を一本しか設けられない場合であっても、コア数÷2-2個の速調が実現できる。
【0062】
以上により、速調数を減少させることなくインシュレータの薄肉化が可能な交流モータを提供することが出来る。
【0063】
なお、本実施の形態では、外壁を薄肉化した例を開示しているが、内壁を薄肉化してもよい。この場合、内壁62を薄肉化しているため、外周方向に巻線量を増量できるのと同様、内周方向に巻線量を増量できるため、大きなトルクを発生させることができる。
【0064】
また、端子ピン8は外壁に設けられることとなる。そうすると、ハウジング3aと端子ピン8との間の法定絶縁距離を確保する必要があるが、弧の長さを内壁62よりも長く取れるため、端子ピン8を多く設けることが出来る。そのため、内壁62に端子ピン8を設ける場合に比べ、速調数を多くできる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る交流モータは、インシュレータ薄肉化やモータ小型化により、1分割コアに対応するインシュレータに設けられる端子ピンの数が減少しても、速調数を維持することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 固定子
2 回転子
3a、3b ハウジング
5 コア
6 インシュレータ
7 巻線
8、8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g 端子ピン
9 基板
10 交流モータ
11 中心軸
51 分割コア
52、52a、52b、52c、52d 主コア
53、53a、53b、53c、53d 補助コア
61 ピン固定部
62 内壁
63 外壁
64 接続部
65 突出部
66 貫通孔
72 主巻線
73 補助巻線
74、74a、74b、74c 速調線
81 絶縁距離
91 スルーホール
92 ランド
511 継鉄部
512 歯基部
513 鍔部