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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】スクリュープレスにおける背圧制御方法
(51)【国際特許分類】
   B30B 9/28 20060101AFI20221223BHJP
   C02F 11/125 20190101ALI20221223BHJP
   B01D 29/17 20060101ALI20221223BHJP
   B01D 29/25 20060101ALI20221223BHJP
   B01D 29/37 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
B30B9/28 E
B30B9/28 C
B30B9/28 K
C02F11/125 ZAB
B01D29/30 501
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020014940
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021121441
(43)【公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】西原 康昭
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-239314(JP,A)
【文献】特開2008-055450(JP,A)
【文献】特開2019-104032(JP,A)
【文献】特開昭58-054999(JP,A)
【文献】特開昭63-154297(JP,A)
【文献】特開2019-042686(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0088802(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 9/28
C02F 11/125
B01D 29/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュー軸(7)の回転数を調整してスクリュープレス(1)に供給する汚泥の圧入圧力を一定に制御しつつスクリュープレス(1)のプレッサー(14)を制御する背圧制御方法において、
予めスクリュー軸(7)の初期トルク(T0)と、スクリュー軸(7)の初期回転数(N0)と、段階的に増減させるプレッサー(14)の背圧の圧力幅(p)とを設定し、以下の<a>または<b>を行うことを特徴とするスクリュープレスにおける背圧制御方法。
<a>
トルクの計測値(T)とスクリュー軸(7)の回転数(N)がそれぞれ直前に計測したトルク(Tn-1)より低く、スクリュー軸(7)の回転数(Nn-1)より高い場合、プレッサー(14)に付与する圧力を圧力幅(p)だけ減少させた後、<b>の制御方法に移行し、
トルクの計測値(T)とスクリュー軸(7)の回転数(N)がそれぞれ直前に計測したトルク(Tn-1)より高くスクリュー軸(7)の回転数(Nn-1)より低い場合、プレッサー(14)に付与する圧力を圧力幅(p)だけ増加させた後、<a>の制御方法を繰り返し、
トルクの計測値(T)とスクリュー軸(7)の回転数(N)が上記条件を満足していない場合、スクリュープレス(1)の運転を継続するべく、<a>の制御方法を繰り返す。
<b>
トルクの計測値(T)とスクリュー軸(7)の回転数(N)がそれぞれ直前に計測したトルク(Tn-1)より高くスクリュー軸(7)の回転数(Nn-1)より低い場合、プレッサー(14)に付与する圧力を圧力幅(p)だけ減少させた後、<b>の制御方法を繰り返し、
トルクの計測値(T)とスクリュー軸(7)の回転数(N)がそれぞれ直前に計測したトルク(Tn-1)より低くスクリュー軸(7)の回転数(Nn-1)より高い場合、プレッサー(14)に付与する圧力を圧力幅(p)だけ増加させ、<a>の制御方法に移行し、
トルクの計測値(T)とスクリュー軸(7)の回転数(N)が上記条件を満足していない場合、スクリュープレス(1)の運転を継続するべく、<b>の制御方法を繰り返す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュープレスの運転制御方法に関し、排出側の背圧を適正に制御することで安定的な運転を長時間維持するスクリュープレスにおける背圧制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水、し尿、あるいは食品生産加工排水等の有機性汚泥を濃縮・脱水するスクリュープレスは一般に知られている。スクリュープレスは連続的に汚泥を濃縮・脱水する装置である。汚泥は季節・時間・天候等に応じて性状が変動するため、スクリュープレスにて安定的な性能維持のために、スクリュー軸の回転数、圧入圧力、凝集剤供給量等の制御方法を必要とする。
【0003】
例えば、スクリュープレスに汚泥を供給する際の圧入圧力を一定に制御するために、スクリュー軸の回転数を制御する方法は特許文献1に記載されている。
【0004】
また、スクリュー軸のトルクを適正に制御するために、スクリュープレスに供給する汚泥の圧入圧力、凝集剤の薬注率を制御する方法は特許文献2に記載されている。
【0005】
さらに、スクリュープレスの排出口と背圧弁との開度を検出し、開度に応じた圧力を背圧弁に供給する制御方法は特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3542970号公報
【文献】特開2018-001075号公報
【文献】特許第3576492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の圧入圧力一定制御方法は、脱水制御の応答速度が遅くなると共に、圧入圧力を一定にする制御幅が大きくなるという問題があった。
【0008】
また、圧入圧力の制御はスクリュー軸の回転数に依存しており、供給される原液の固形物量が常時最適値であることを前提としている。しかし、季節や天候、時間帯により処理場に流入する汚泥の濃度や性状は変動する。圧入圧力一定制御によりスクリュープレスのろ過室の圧力は適正値に制御しているが、供給原液の濃度・性状変動により、ろ過室内で圧密される固形物量が適正値から外れ、所定の脱水ケーキを生成できないことがある。
【0009】
具体的には、スクリュープレスへの固形物量が増加すると、汚泥中の水分が少なくろ過室内が固形物で満たされるため、スクリュー軸の回転数が減少するとともに、スクリュー軸への負荷が増加してスクリュー軸のトルクが上昇する。逆に、スクリュープレスへの固形物量が減少すると、スクリュー軸の回転数が増加するとともに、スクリュー軸への負荷が減少してスクリュー軸のトルクが下降する。
【0010】
このように、一般的には圧入圧力一定制御での原液供給ポンプ(スクリュー軸)の調整により、スクリュー軸の回転数とスクリュー軸のトルクは反比例する関係となる。
【0011】
しかし、供給原液の濃度・性状変動により、例えば汚泥中の水分量・固形物量の割合が変動した場合、圧入圧力一定制御下でスクリュー軸の回転数とスクリュー軸のトルクの関係が比例(共に増加あるいは減少)することがある。この場合、ろ過室内部の脱水汚泥が脱水に不適切な圧密度であることを示している。この状態で脱水工程を継続しても所定の含水率から離れた脱水ケーキを生成することになるため、ろ過室内の脱水汚泥を脱水に適した圧密度に調整する必要がある。
【0012】
特許文献2は、スクリュー軸のトルクを適正範囲に制御して脱水ケーキの含水率を一定とするものであるが、スクリュープレスから脱水排出される脱水ケーキの含水率は、排出側の背圧(開口率)の影響を大きく受けるため、背圧一定の状態ではトルクを一定に制御するための他の要因(圧力、凝集剤の薬注率)を制御する効果が低い。
【0013】
特許文献3は、ろ過室で脱水された脱水ケーキが背圧弁に付与する圧力に応じて、それに対抗する背圧弁の開閉圧力を調整するものであるが、背圧弁のみの制御では脱水ケーキの含水率が大きく振れ、非常にシビアな制御を必要とするため現実的でない。また、一般的には背圧弁に付与する圧力を大きくすると脱水ケーキの含水率は低下するが、脱水機への供給量も低下し、ろ過室内での圧密が不十分な状態で高含水率の脱水ケーキを排出することがあった。
【0014】
本発明は、圧入圧力一定制御を行いつつ、汚泥性状の変動にリアルタイムに対応するために、スクリュー軸の回転数とスクリュー軸のトルクに基づいてプレッサー(背圧板)を押圧する圧力を調整するスクリュープレスにおける背圧制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、スクリュー軸の回転数を調整してスクリュープレスに供給する汚泥の圧入圧力を一定に制御しつつスクリュープレスのプレッサーを制御する背圧制御方法において、予めスクリュー軸の初期トルクと、スクリュー軸の初期回転数と、段階的に増減させるプレッサーの背圧の圧力幅とを設定し、以下の<a>または<b>を行うものである。
<a>
トルクの計測値とスクリュー軸の回転数がそれぞれ直前に計測したトルクより低く、スクリュー軸の回転数より高い場合、プレッサーに付与する圧力を圧力幅だけ減少させた後、<b>の制御方法に移行し、
トルクの計測値とスクリュー軸の回転数がそれぞれ直前に計測したトルクより高くスクリュー軸の回転数より低い場合、プレッサーに付与する圧力を圧力幅だけ増加させた後、<a>の制御方法を繰り返し、
トルクの計測値とスクリュー軸の回転数が上記条件を満足していない場合、スクリュープレスの運転を継続するべく、<a>の制御方法を繰り返す。
<b>
トルクの計測値とスクリュー軸の回転数(N)がそれぞれ直前に計測したトルクより高くスクリュー軸の回転数より低い場合、プレッサーに付与する圧力を圧力幅だけ減少させた後、<b>の制御方法を繰り返し、
トルクの計測値とスクリュー軸の回転数がそれぞれ直前に計測したトルクより低くスクリュー軸の回転数より高い場合、プレッサーに付与する圧力を圧力幅だけ増加させ、<a>の制御方法に移行し、
トルクの計測値とスクリュー軸の回転数が上記条件を満足していない場合、スクリュープレスの運転を継続するべく、<b>の制御方法を繰り返す。
【0016】
<a>または<b>の制御を行うことで、スクリュー軸のトルクおよび回転数に応じてスクリュープレスの背圧を制御するので、汚泥の性状変動に対して安定した脱水ケーキを排出できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、スクリュー軸の回転数による圧力一定制御と平行して、スクリュー軸の回転数およびスクリュー軸のトルクからろ過室内の汚泥の状況をリアルタイムに推測し、排出口の背圧を制御するので、常時ろ過室内を脱水に最適な状態に維持できる。また、汚泥の性状変動に対して応答速度が早く、脱水機の急激な運転変化がない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この実施の形態に係るスクリュープレスの縦断面図である。
図2】同じく、脱水機の運転制御システムである。
図3】同じく、制御方法の概略フローチャートである。
図4】同じく、圧入圧力一定制御方法のフローチャートである。
図5】同じく、プレッサー制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1はスクリュープレスの縦断面図であって、スクリュープレス1は架台2の前後のフレーム3,4間に、周部にろ過面を有する外筒スクリーン5にスクリュー羽根6を巻き掛けたスクリュー軸7を内設している。外筒スクリーン5の内部に配設したスクリュー軸7は始端側から終端側に向かってテーパー状にその径を増大させ、外筒スクリーン5とスクリュー軸7を延伸方向に向かって相対的な間隔を減少させるようにしている。そして、スクリュー軸7の前端部には汚泥の供給管8が連結しており、供給管8は外筒スクリーン5の始端側に開孔したスクリュー軸7の供給孔9に連通させている。スクリュー軸7の後端部にはスクリュー駆動軸10が連結しており、スクリュー駆動軸10には駆動用のスプロケット11を嵌着している。このスプロケット11をスクリュー駆動機12で駆動させ、スクリュー軸7を回転させる。供給孔9から供給された汚泥は、スクリュー羽根6によって始端側から終端側に向かって移送され、外筒スクリーン5からろ液を分離させながら濃縮・脱水するようになっている。必要に応じて外筒スクリーン5は回動自在としても良い。
【0020】
そして、上記スクリュープレス1において、脱水処理を行った直後の汚泥(脱水ケーキ)を外部へ排出する脱水ケーキの排出部13には、排出される脱水ケーキに背圧を作用させるためのテーパーコーン状のプレッサー(押圧板)14が備えられている。このプレッサー14は、エアーシリンダあるいは油圧シリンダ等のごとき流体圧シリンダ15によって軸方向(図1において左右方向)へ往復動自在に設けられている。流体圧シリンダ15には公知のプレッサーポンプ16を用いて圧力を付与する。
【0021】
スクリュープレス1のろ過室内の汚泥がプレッサー14を排出側に押圧することで排出部13から脱水ケーキが排出される。汚泥がプレッサー14に付与する圧力と、流体圧シリンダ15がプレッサー14に付与する圧力のバランスにより、適切な排出部13が形成され、安定した含水率とケーキ厚の脱水ケーキが生成される。
【0022】
スクリュープレス1は凝集スラリーを連続的に脱水処理できるもので、ベルト型脱水機や遠心脱水機等の従来の連続式脱水機と比較して、サイズが小さくコンパクトであり、電動機容量も小さく省電力である。また、スクリュープレス1はろ過室内を最適圧力に維持することで、安定的なろ過作用を発揮でき、最適含水率で連続脱水を行うことができる。
【0023】
図2はこの発明に係る脱水機の運転制御システムであり、その運転制御方法について説明する。汚泥貯留槽20に貯留されている汚泥等の処理原液は、原液供給ポンプ21により所定の流量QSで原液供給管22を経て凝集混和槽23に供給される。そして、原液供給管22の途中には、処理原液の原液流量QSを測定するための流量計24が、原液供給ポンプ21と凝集混和槽23との間に設けられている。なお、必要に応じて濃度計を設けてもよい。
【0024】
さらに、流量計24と凝集混和槽23との間の原液供給管22の途中には、高分子凝集剤を供給するための薬液供給管27が接続されている。薬液供給管25は凝集混和槽23に直接連結してもよい。
【0025】
原液供給管22の終端は密閉型の凝集混和槽23の下方に連結しており、高分子凝集剤を添加した汚泥を凝集混和槽23の下方から圧入し、撹拌機26で混合撹拌して凝集スラリーを生成する。凝集混和槽23の上部には、スラリー供給管27が連結してあり、このスラリー供給管27の他端をスクリュープレス1に接続しており、図1に示すスクリュープレス1の供給管8に凝集スラリーを凝集混和槽23のタンク圧で圧入供給する。
【0026】
図3はこの実施の形態に係る制御方法の概略フローチャートである。
本発明に係る運転制御方法は、スクリュープレス1を安定して運転するために、圧入圧力を一定に制御する方法と、この制御により変動するスクリュー軸7の回転数NとトルクTの変動に応じて、プレッサー14の背圧を調整する方法の2系統の制御を同時に行うことで、ろ過室内の汚泥性状の変動にリアルタイムに対応し、スクリュープレス1をさらに安定して運転することが可能とするものである。
【0027】
(圧入圧力一定制御)
図4はこの実施の形態に係る圧入圧力一定制御方法のフローチャートである。
スラリー供給管27には圧力計28が配設してあり、スクリュープレス1に供給される凝集スラリーの圧入圧力PSを計測している。圧入圧力は汚泥性状の変動により増減しており、この圧力計28で計測した圧力Pと予め設定している基準圧力P0とを比較判断して、基準圧力P0となるようにスクリュー軸7の回転数Nを調整する。
【0028】
具体的には、スクリュー駆動機12に指令を与え、スクリュー軸7の回転数Nを増減して、圧入圧力一定制御運転を行うようにしている。実際には、圧力計28で計測した検知信号を制御装置29に送信し、制御装置29で比較判断し、制御装置29からスクリュー駆動機12に指令を与えている。
【0029】
スクリュー駆動機12によるスクリュー軸7の回転数Nの制御によりろ過室内の汚泥搬送速度(汚泥排出量)が増減するため、スクリュープレス1への圧入圧力が変動し、スクリュー軸7の回転数Nに反比例して圧入圧力が増減する。
【0030】
このように、スクリュー駆動機12を制御して、ろ過室内の圧力が常時一定となるようにスクリュープレス1を運転することで安定した脱水処理を行うことが可能となる。
【0031】
(プレッサーの背圧制御)
圧入圧力を一定に制御する運転では、スクリュープレス1のスクリュー軸7の回転数Nと、スクリュー軸7のトルクTが変動する。そこで、圧入圧力一定制御を行いつつ、スクリュー軸7のトルクTと回転数Nからろ過室内部のリアルタイムな汚泥状態を推測し、脱水工程をより安定化させるためにスクリュープレス1の背圧制御(プレッサー開口率調整)を行う。
【0032】
図5はこの実施の形態に係るプレッサー制御方法のフローチャートである。
スクリュープレス1の駆動軸系(例えばスクリュー駆動軸10)にはトルク計30および回転計31が配設してあり、汚泥性状の変動により増減するスクリュー軸7のトルクTおよび回転数Nを計測している。このトルク計30で計測したトルクTと回転計31で計測した回転数Nに応じてプレッサー14の圧力(背圧)を調整する。
【0033】
プレッサー14の開度を大きくするべくプレッサー14の背圧を減少すると、スクリュープレス1の圧入圧力が減少し、スクリュー軸7の回転数が増加(供給流量が増加)するとともにスクリュー軸7のトルクTが下降する。逆に、プレッサー14の開度を小さくするべくプレッサー14の背圧を増加すると、スクリュープレス1の圧入圧力が増加し、スクリュー軸7の回転数Nが減少(供給流量が減少)するとともにスクリュー軸7のトルクTが上昇する。
【0034】
予め定めた所定の間隔でスクリュー軸7のトルクTとスクリュー軸7の回転数Nを計測し、直前に計測したデータと比較してプレッサー14の背圧を制御することにより、スクリュープレス1のろ過室内の汚泥圧密状態が脱水運転の最適値に近づくように制御する。
【実施例
【0035】
図5のフローチャートを詳述する。
A.初期設定
スクリュープレス1に圧入供給する際の初期圧入圧力P0、スクリュー軸7の初期回転数N0、スクリュー軸の初期トルクT0を設定する。
また、スクリュープレスの排出部13の開口率を決定するプレッサー14の背圧の基準圧力PP0と、段階的に増減させるプレッサー14の背圧の圧力幅pとを設定する。
【0036】
B.運転開始
上記基準値および初期値にて各機器を運転し、汚泥をスクリュープレス1に供給する。本制御では、原液供給ポンプ21の回転数は予め定めた定格回転数で運転する。
スクリュープレス1の運転が開始され、安定運転となった状態にてトルク計30で計測したスクリュー軸7の初期トルクT0を制御装置29に送信し記憶する。この初期トルクT0を初期値Tn-1とし、以降のトルクTと比較する。
同様に、安定運転となった状態にて回転計31で計測したスクリュー軸7の回転数N0を制御装置29に送信し記憶する。この初期回転数N0を初期回転数Nn-1とし、以降の回転数Nと比較する。
【0037】
C.圧入圧力一定制御(スクリュー軸制御)
スクリュープレス1の運転が開始されると、スクリュープレス1に供給される汚泥の圧入圧力Pは、圧力計28で検知されて制御装置29に送られる。
スクリュープレス1の運転中は、汚泥の性状変動による供給汚泥濃度の上昇や、外筒スクリーン5のろ過性(脱水性)の悪化等により、スクリュープレス1への負荷が増加すると、供給汚泥の圧入圧力Pが上昇する。一方、汚泥の性状変動による供給汚泥濃度の下降や、外筒スクリーン5のろ過性(脱水性)の回復等により、スクリュープレス1への負荷が減少すると、供給汚泥の圧入圧力Pが減少する。
そこで、制御装置29では、圧力計28の圧力計測値Pと予め設定した基準圧力P0とを比較判断して、基準圧力P0より高い場合は、スクリュー軸7の回転Nを増やすべくスクリュー駆動機12に指令を与えてケーキ排出量を増加させる。一方、圧力計測値Pが基準圧力P0より低い場合は、スクリュー軸7の回転数Nを減らすべくスクリュー駆動機12に指令を与えてケーキ排出量を減少させる。
【0038】
D.プレッサーの背圧制御
本発明に係る運転制御方法は、スクリュープレス1を安定して運転するために、スクリュー軸7の回転数Nを調整してスクリュープレス1の圧入圧力一定制御を行いつつ、トルク・スクリュー軸の回転速度からプレッサー14の背圧制御も同時に行う。
【0039】
フローチャートD1~D5を工程<a>とする。
<D1>
リアルタイムにトルク計30で計測したスクリュー軸7のトルクを制御装置29に送信し、制御装置29にてトルク計30で計測したトルクTと直前に計測したトルクTn-1とを比較する。
トルク計30のトルク計測値Tが直前に計測したトルクTn-1と同等の場合は、各機器の運転を現状の状態で維持して再度トルクを計測する。なお、同等との判断について、ある程度の幅をもたせてもよい。
トルク計30のトルク計測値Tが直前に計測したトルクTn-1より高い場合は、フローチャートD2に移行して、スクリュー軸7の回転数Nを直前に計測したスクリュー軸7の回転数Nn-1と比較する。
トルク計30のトルク計測値Tが直前に計測したトルクTn-1より低い場合は、フローチャートD3に移行して、スクリュー軸7の回転数Nを直前に計測したスクリュー軸7の回転数Nn-1と比較する。
【0040】
<D2>
リアルタイムに回転計31で計測したスクリュー軸7の回転数を制御装置29に送信し、制御装置29にて回転計31で計測した回転数Nと直前に計測した回転数Nn-1とを比較する。
回転計31の計測値Nが直前に計測した回転数Nn-1以上の場合は、各機器の運転を現状の状態で維持してフローチャートD1に移行する。
回転計31の計測値Nが直前に計測した回転数Nn-1より低い場合は、トルクと回転数が比例しており、ろ過室内の汚泥圧密状態が不適切であると判断し、フローチャートD4に移行して、プレッサー14の背圧を増加させるべくプレッサー14に圧力を付与するプレッサーポンプ16に指令を与える。
【0041】
<D3>
リアルタイムに回転計31で計測したスクリュー軸7の回転数を制御装置29に送信し、制御装置29にて回転計31で計測した回転数Nと直前に計測した回転数Nn-1とを比較する。
回転計31の計測値Nが直前に計測した回転数Nn-1以下の場合は、各機器の運転を現状の状態で維持してフローチャートD1に移行する。
回転計31の計測値Nが直前に計測した回転数Nn-1より高い場合は、トルクと回転数が比例しており、ろ過室内の汚泥圧密状態が不適切であると判断し、フローチャートD5に移行して、プレッサー14の背圧を減少させるべくプレッサー14に圧力を付与するプレッサーポンプ16に指令を与える。
【0042】
<D4>
制御装置29により予め設定した圧力幅pだけ圧力を増加させるようにプレッサーポンプ16に指令を与え、プレッサー14の圧力を増加する。その後、各機器の運転を現状の状態で維持してフローチャートD1に移行し、トルクおよび回転数が最適値の範囲内に復帰しているか確認する。
【0043】
<D5>
制御装置29により予め設定した圧力幅pだけ圧力を減少させるようにプレッサーポンプ16に指令を与え、プレッサー14の圧力を減少する。その後、フローチャートD6に移行して、リアルタイムにトルク計30で計測したトルクTと直前に計測したトルクTn-1とを比較し、トルクおよび回転数が最適値の範囲内に復帰しているか確認する。工程<a>の制御で背圧を減少させた場合、工程<b>に移行して工程<b>の背圧制御を行う。
【0044】
フローチャートD6~D10を工程<b>とする。
<D6>
リアルタイムにトルク計30で計測したスクリュー軸7のトルクを制御装置29に送信し、制御装置29にてトルク計30で計測したトルクTと直前に計測したトルクTn-1とを比較する。
トルク計30のトルク計測値Tが直前に計測したトルクTn-1と同等の場合は、各機器の運転を現状の状態で維持して再度トルクを計測する。なお、同等との判断について、ある程度の幅をもたせてもよい。
トルク計30のトルク計測値Tが直前に計測したトルクTn-1より高い場合は、フローチャートD7に移行して、スクリュー軸の回転数Nを直前に計測したスクリュー軸7の回転数Nn-1と比較する。
トルク計30のトルク計測値Tが直前に計測したトルクTn-1より低い場合は、フローチャートD8に移行して、スクリュー軸7の回転数Nを直前に計測したスクリュー軸7の回転数Nn-1と比較する。
【0045】
<D7>
リアルタイムに回転計31で計測したスクリュー軸7の回転数を制御装置29に送信し、制御装置29にて回転計31で計測した回転数Nと直前に計測した回転数Nn-1とを比較する。
回転計31の計測値Nが直前に計測した回転数Nn-1以上の場合は、各機器の運転を現状の状態で維持してフローチャートD6に移行する。
回転計31の計測値Nが直前に計測した回転数Nn-1より低い場合は、トルクと回転数が比例しており、ろ過室内の汚泥圧密状態が不適切であると判断し、フローチャートD9に移行して、プレッサー14の背圧を減少させるべくプレッサー14に圧力を付与するプレッサーポンプ16に指令を与える。
【0046】
<D8>
リアルタイムに回転計31で計測したスクリュー軸7の回転数を制御装置29に送信し、制御装置29にて回転計31で計測した回転数Nと直前に計測した回転数Nn-1とを比較する。
回転計31の計測値Nが直前に計測した回転数Nn-1以下の場合は、各機器の運転を現状の状態で維持してフローチャートD6に移行する。
回転計31の計測値Nが直前に計測した回転数Nn-1より高い場合は、トルクと回転数が比例しており、ろ過室内の汚泥圧密状態が不適切であると判断し、フローチャートD10に移行して、プレッサー14の背圧を増加させるべくプレッサー14に圧力を付与するプレッサーポンプ16に指令を与える。
【0047】
<D9>
制御装置29により予め設定した圧力幅pだけ圧力を減少させるようにプレッサーポンプ16に指令を与え、プレッサー14の圧力を減少する。その後、フローチャートD6に移行して、リアルタイムにトルク計30で計測したトルクTと直前に計測したトルクTn-1とを比較し、トルクおよび回転数が最適値の範囲内に復帰しているか確認する。
【0048】
<D10>
制御装置29により予め設定した圧力幅pだけ圧力を増加させるようにプレッサーポンプ16に指令を与え、プレッサー14の圧力を増加する。その後、各機器の運転を現状の状態で維持してフローチャートD1に移行し、トルクおよび回転数が最適値の範囲内に復帰しているか確認する。工程<b>の制御で背圧を増加させた場合、工程<a>に移行して工程<a>の背圧制御を行う。
【0049】
ここで、それぞれの計測時間の間隔は、脱水機の型式や汚泥の性状、処理量から適宜定める。
また、トルクおよびスクリュー軸の回転数の直前の計測値は、単一の計測値あるいは複数の計測値を平均化したものでもよい。
【0050】
なお、本実施例ではプレッサー14の背圧制御をフローチャートD1から開始して、フローチャートD1~D5の後にフローチャートD6に移行しているが、フローチャートD6から開始して、フローチャートD6~D10の後にフローチャートD1に移行してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のスクリュープレスにおける背圧制御方法は、スクリュープレスのろ過室内の汚泥性状にリアルタイムに応じてプレッサーの背圧を制御するもので、安定した脱水性能を維持できる。したがって、処理原液の性状が季節や天候等で刻々と変動する下水汚泥を固液分離する各種固液分離装置、特に連続式のスクリュープレスに適用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 スクリュープレス
7 スクリュー軸
14 プレッサー
T スクリュー軸のトルク
N スクリュー軸の回転数
p プレッサーの背圧の圧力幅
図1
図2
図3
図4
図5