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  • 特許-圧縮機 図1
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  • 特許-圧縮機 図4A
  • 特許-圧縮機 図4B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20221223BHJP
【FI】
F04C18/02 311P
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019549183
(86)(22)【出願日】2018-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2018036625
(87)【国際公開番号】W WO2019077979
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2017203074
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】岡 秀人
(72)【発明者】
【氏名】船越 大輔
(72)【発明者】
【氏名】福田 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 健司
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-115767(JP,A)
【文献】特開2015-129476(JP,A)
【文献】実開昭58-006053(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
F04C 29/12
F16K 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定スクロールと、
前記固定スクロールに設けられた少なくとも一つの吐出口と、
少なくとも一つの前記吐出口を塞ぐように前記固定スクロールに設けられたリード弁と、
前記固定スクロールに設けられ、前記リード弁のリフト量を制限するように構成されたバルブストップと、
前記バルブストップに設けられた通気孔とを備え、
前記通気孔は、長孔形状であり、前記リード弁と接触しない位置で前記リード弁が取り付け部から延伸している方向と平行に配置され、前記吐出口よりも前記バルブストップ及び前記リード弁の前記固定スクロールへの取り付け側に配置された圧縮機。
【請求項2】
少なくとも一つの前記吐出口が複数の吐出口を備え、
前記通気孔が、複数の前記吐出口のうちの隣り合う二つの前記吐出口の間に配置された、請求項1に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷暖房空調装置、冷蔵庫などの冷却装置、またはヒートポンプ式の給湯装置などに用いられる圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却装置、給湯装置などに用いられる密閉型圧縮機では、冷凍サイクルから戻ってきた冷媒ガスは、吸入経路を経由して、圧縮機構部に形成された圧縮室に供給される。圧縮されて高温高圧になった冷媒ガスは、圧縮機構部から密閉容器内に吐出され、密閉容器に設けられた吐出管から冷凍サイクルに送り込まれる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4Aは、特許文献1に記載された従来のスクロール圧縮機の断面図である。図4Bは、従来のスクロール圧縮機における固定スクロール106の平面図である。図4A図4Bに示すように、低温低圧の冷媒ガスは、吸入管110および吸入室111を通って圧縮室109に導かれ、圧縮室109の容積の変化により圧縮される。
【0004】
吐出口112が、固定スクロール106の中央部に設けられる。リード弁113が、吐出口112を塞ぐように固定スクロール106に設けられる。マフラー空間114が、固定スクロール106の上部を覆うマフラー116内に形成される。
【0005】
圧縮された高温高圧の冷媒ガスは、吐出口112を通り、リード弁113を押し開けて、マフラー空間114に吐出される。その後、高温高圧の冷媒ガスは、マフラー空間114から吐出管117を通って冷凍サイクルに送出される。
【0006】
固定スクロール106の上面の中央部付近には、過剰な変形によるリード弁113の損傷を防止するため、リード弁113のリフト量(弁の開度)を制限するバルブストップ124が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-328965号公報
【発明の概要】
【0008】
しかしながら、従来の圧縮機では、冷媒ガスがリード弁113を通って出る際の冷媒ガスの通路の面積は、バルブストップ124により制限される。マフラー空間114も狭いため、吐出口112から出た冷媒ガスが抜け難い。その結果、圧縮損失が増加する。
【0009】
本開示は従来の問題を解決したもので、圧縮損失の抑制により高効率な圧縮機を提供することを目的とする。
【0010】
本開示の一態様の圧縮機は、固定スクロールと少なくとも一つの吐出口とリード弁とバルブストップと通気孔とを備える。少なくとも一つの吐出口は、固定スクロールに設けられる。リード弁は、少なくとも一つの吐出口を塞ぐように固定スクロールに設けられる。バルブストップは、固定スクロールに設けられ、リード弁のリフト量を制限する。通気孔は、バルブストップに設けられる。通気孔は、長孔形状であり、リード弁と接触しない位置でリード弁が取り付け部から延伸している方向と平行に配置され、吐出口よりもバルブストップ及びリード弁の固定スクロールへの取り付け側に配置される。
【0011】
本開示によれば、冷媒ガスの流れを円滑にして圧縮損失を抑制し、かつ、リード弁に加わる力を抑制することができる。その結果、効率および信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の実施の形態に係る圧縮機の断面図である。
図2図2は、実施の形態に係る圧縮機の要部を示す拡大断面図である。
図3A図3Aは、実施の形態に係る圧縮機における固定スクロールの平面図である。
図3B図3Bは、リード弁と通気孔との位置関係を示す図である。
図3C図3Cは、吐出口と通気孔との距離を示す図である。
図4A図4Aは、従来のスクロール圧縮機の断面図である。
図4B図4Bは、従来のスクロール圧縮機における固定スクロールの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の第1の態様の圧縮機は、固定スクロールと少なくとも一つの吐出口とリード弁とバルブストップと通気孔とを備える。少なくとも一つの吐出口は、固定スクロールに設けられる。リード弁は、少なくとも一つの吐出口を塞ぐように固定スクロールに設けられる。バルブストップは、固定スクロールに設けられ、リード弁のリフト量を制限する。通気孔は、バルブストップに設けられる。通気孔は、長孔形状であり、リード弁と接触しない位置でリード弁が取り付け部から延伸している方向と平行に配置され、吐出口よりもバルブストップ及びリード弁の固定スクロールへの取り付け側に配置される。
【0014】
本開示の第2の態様の圧縮機では、第1の態様に加えて、少なくとも一つの吐出口が複数の吐出口を備え、通気孔が、複数の吐出口のうちの隣り合う二つの吐出口の間に配置される。
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る圧縮機の断面図である。図2は、本実施の形態に係る圧縮機の要部を示す拡大断面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態の圧縮機は、密閉容器1内に設けられた圧縮機構部2および電動機部3を備える。
【0018】
密閉容器1内に、主軸受部材4が溶接や焼き嵌めなどにより固定される。主軸受部材4により、シャフト5が軸支される。主軸受部材4上に、固定スクロール6がボルトで取り付けられる。固定スクロール6と主軸受部材4との間に、固定スクロール6と噛み合う旋回スクロール7を挟み込むことで、スクロール式の圧縮機構部2が構成される。固定スクロール6と旋回スクロール7との間に、圧縮室9が形成される。
【0019】
図2に示すように、旋回スクロール7と主軸受部材4との間には、自転拘束機構8が設けられる。自転拘束機構8は、旋回スクロール7の自転を防止して旋回スクロール7を円軌道運動させるオルダムリングなどで構成される。シャフト5の上端に、偏心軸部5aが設けられる。
【0020】
偏心軸部5aにより旋回スクロール7を偏心駆動することで、旋回スクロール7が円軌道運動する。これにより、圧縮室9の容積が縮小され、圧縮室9内の冷媒ガスが圧縮される。
【0021】
この動作を利用して、冷媒ガスが、吸入管10から吸入室11を経由して圧縮室9に吸入される。吸入管10は、密閉容器1外の冷凍サイクルに接続される。吸入室11は、吸入管10と圧縮室9との間にある固定スクロール6に設けられ、常に吸入圧力を有する。
【0022】
圧縮されて所定の圧力になった冷媒ガスは、吐出口12を通り、リード弁13を押し開けて圧縮室9の外に吐出される。吐出口12は、固定スクロール6の中央部に配置される。本実施の形態では、三つの吐出口12が設けられる(図3A参照)。リード弁13は、吐出口12を塞ぐように、固定スクロール6の上面に配置される。
【0023】
リード弁13を通過した冷媒ガスは、マフラー空間14に吐出され、容器内空間15と吐出管17とを経由して冷凍サイクルに送出される(図1参照)。マフラー空間14は、固定スクロール6の上面に取り付けられたマフラー16によって覆われた空間である。
【0024】
固定スクロール6の上面の中央部付近には、過剰な変形によるリード弁13の損傷を防止するため、リード弁13のリフト量(弁の開度)を制限するバルブストップ24が設けられる。
【0025】
図1に示すように、旋回スクロール7を旋回駆動するシャフト5の下端には、ポンプ18が設けられる。ポンプ18は、その吸い込み口が、密閉容器1の底部に設けられたオイル貯留部19内に位置するように配置される。
【0026】
ポンプ18はスクロール圧縮機と同時に駆動される。このため、ポンプ18は、オイル貯留部19内のオイルを、圧力条件や運転速度に関係なく確実に吸い上げる。
【0027】
ポンプ18により吸い上げられたオイルは、シャフト5内を貫通するオイル供給穴20を通して圧縮機構部2に供給される。オイルをポンプ18で吸い上げる前または吸い上げた後に、オイルフィルタなどによりオイルから異物を除去すると、圧縮機構部2に異物が混入するのを防止することができる。
【0028】
圧縮機構部2に導かれたオイルの圧力は、スクロール圧縮機の吐出圧力にほぼ等しく、旋回スクロール7に対する背圧源としても作用する。これにより、旋回スクロール7は、固定スクロール6から離れることがなく、所定の圧縮機能を安定して発揮する。
【0029】
オイルの一部は、供給圧や自重によって、偏心軸部5aと旋回スクロール7との嵌合部、シャフト5と主軸受部材4との間の軸受部21に進入し、これらの要素を潤滑した後、オイル貯留部19に戻る。
【0030】
図2に示すように、オイル供給穴20から高圧領域22に供給されたオイルの一部は、経路7aを通って背圧室23に進入する。経路7aは、旋回スクロール7に形成され、高圧領域22に開口端を有する。背圧室23には、自転拘束機構8が配置される。
【0031】
背圧室23に進入したオイルは、スラスト摺動部と自転拘束機構8の摺動部とを潤滑するとともに、背圧室23において旋回スクロール7に背圧を加える。
【0032】
圧縮機構部2によって圧縮される冷媒ガスは、上述の通り、吐出口12とリード弁13とを通ってマフラー空間14に吐出される。リード弁13を通って出る際の冷媒ガスの通路の面積は、バルブストップ24により制限される。マフラー空間14も狭いため、冷媒ガスが抜け難い。
【0033】
図3Aは、本実施の形態に係る圧縮機における固定スクロールの平面図である。図3Bは、リード弁13と通気孔25との位置関係を示す図である。図3Cは、吐出口12と通気孔25との距離を示す図である。
【0034】
図3A図3Cに示すように、本実施の形態では、バルブストップ24に、冷媒ガスの通路である通気孔25が設けられる。具体的には、通気孔25は、矩形部と、この矩形部の二つの短辺に設けられた円弧部とを含む長孔形状を有する。通気孔25は、冷媒ガスの通路の面積を増加させる。その結果、冷媒ガスが円滑に流れ、圧縮損失が抑制される。
【0035】
通気孔25は、隣り合う二つの吐出口12の間に配置される。これにより、三つの吐出口12のいずれが開いても、効果的に圧縮損失を抑制することができる。
【0036】
通気孔25を設けることで、リード弁13に加わる力を抑制することもできる。このため、効率と信頼性とを向上させることができる。
【0037】
通気孔25は、リード弁13と接触しないバルブストップ24の部分に配置される。これにより、通気孔25はリード弁13と干渉することがない。このため、リード弁13が通気孔25の周囲に接触した場合に生じる可能性のあるリード弁13の破損を防止することができる。その結果、効率と信頼性とを向上させることができる。
【0038】
長孔形状を有する通気孔25が、リード弁13に平行に配置される。これにより、冷媒ガスの通路の面積をより増加させることができる。その結果、冷媒ガスがより円滑に流れ、圧縮損失を抑制することができる。
【0039】
通気孔25と吐出口12との距離は最大で10mmである(図3Cに示すA寸法26参照)。これにより、冷媒ガスがより抜けやすくなる。その結果、冷媒ガスがより円滑に流れ、圧縮損失を抑制することができる。
【0040】
本実施の形態では、三つの吐出口12が設けられる。しかし、二つまたは四つ以上の吐出口12が設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
上述の通り、本開示の圧縮機によれば、冷媒ガスの流れを円滑にして圧縮損失を抑制し、かつ、リード弁に加わる力を抑制することができる。その結果、効率および信頼性を向上させることができる。本開示の圧縮機は、冷凍サイクルを用いる各種機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 密閉容器
2 圧縮機構部
3 電動機部
4 主軸受部材
5 シャフト
6、106 固定スクロール
7 旋回スクロール
8 自転拘束機構
9、109 圧縮室
10、110 吸入管
11、111 吸入室
12、112 吐出口
13、113 リード弁
14、114 マフラー空間
15 容器内空間
16、116 マフラー
17、117 吐出管
18 ポンプ
19 オイル貯留部
20 オイル供給穴
21 軸受部
22 高圧領域
23 背圧室
24、124 バルブストップ
25 通気孔
26 A寸法
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B