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  • 特許-給水装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】給水装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 3/00 20060101AFI20221223BHJP
   F16K 27/02 20060101ALI20221223BHJP
   F16K 11/044 20060101ALI20221223BHJP
   E03D 9/08 20060101ALN20221223BHJP
【FI】
E03D3/00
F16K27/02
F16K11/044 Z
E03D9/08 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018120927
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020002568
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】嵐 謙次郎
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-026963(JP,A)
【文献】特開2006-307428(JP,A)
【文献】特開2012-158936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0118981(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-13/00
F16K 27/00-27/12
F16K 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体の下方からの液体流入による押圧と、該弁体の自重とにより該弁体が通水・遮断の往復移動をなす弁装置を備えた給水装置であって、
前記弁装置は液体流出路に接続され、該液体流出路の下流側には、液体の流れを滞らせる流水抵抗部が配されており、
前記液体流出路には、前記流水抵抗部よりも上流側の前記弁体より低い位置において、主流路から分岐し、下流口が大気開放された副流路が分岐部を介して分岐形成されており、
前記副流路は、前記分岐部から下方向に傾斜して前記分岐部よりも下方に位置することを特徴とする給水装置。
【請求項2】
請求項1において、
ボウル部を有した便器装置に設置されており、
前記副流路は前記下流口が前記ボウル部に通じていることを特徴とする給水装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記副流路の内径は前記主流路の内径より小とされることを特徴とする給水装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、
前記主流路は前記弁装置の下方に、上下方向に延びるように配されており、
前記副流路は前記主流路の中途より横方向に延びてなることを特徴とする給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体が通水・遮断の往復移動をなす弁装置を備えた給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の弁装置は、弁体の下方からの液体流入による押圧と、弁体の自重とにより、弁体が上記の往復動作をなす構成とされている(例えば、特許文献1参照)。このような構成により、液体の通水と遮断(逆流防止)が可能とされている。この弁装置において液体が遮断された正常な状態では、流入側と流出側との間に空気層が存在し液体が縁切りされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4525969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、弁装置に接続された液体流出路の下流側に、液体の流れを滞らせる止水弁などの流水抵抗部がある場合、液体が遮断された状態において、弁装置内に液体が残留し、流入側と流出側との間で液体が縁切りされない可能性がある。そのように弁装置内に残留水があれば、液体が装置内へ流入してきた際に、流量の少ない流路構造などにおいては流入液体の水勢では弁体を押し上げにくくなり、弁体が正常に動作しにくくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、液体の弁装置内への流入の際に弁体が異常な動作を起こすことを抑制できる弁装置を備えた給水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の給水装置は、弁体の下方からの液体流入による押圧と、該弁体の自重とにより該弁体が通水・遮断の往復移動をなす弁装置を備えた給水装置であって、前記弁装置は液体流出路に接続され、該液体流出路の下流側には、液体の流れを滞らせる流水抵抗部が配されており、前記液体流出路には、前記流水抵抗部よりも上流側の前記弁体より低い位置において、主流路から分岐し、下流口が大気開放された副流路が分岐部を介して分岐形成されており、前記副流路は、前記分岐部から下方向に傾斜して前記分岐部よりも下方に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の給水装置は上述した構成とされているため、液体が弁装置内に流入する際に、弁体が異常な動作を起こすことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る給水装置の説明図であり、弁装置の動作の一態様を示す給水装置の模式的断面図である。
図2】同弁装置の動作の他の態様を示す給水装置の模式的断面図である。
図3】同給水装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面にもとづいて説明する。まず、実施形態に係る給水装置1の基本構成について説明する。
【0010】
給水装置1は、弁体20の下方からの液体流入による押圧と、弁体20の自重とにより弁体20が通水・遮断の往復移動をなす弁装置10を備えた装置である。弁装置10は液体流出路35に接続され、液体流出路35の下流側には、液体の流れを滞らせる流水抵抗部5が配されている。液体流出路35には、流水抵抗部5よりも上流側の弁体20より低い位置において、主流路36から分岐し、下流口37aが大気開放された副流路37が形成されている。
【0011】
ついで、給水装置1、それに含まれる弁装置10および給水装置1を備えた便器装置40について、図1図3を参照しながら説明する。この給水装置1は、ボウル部41を有した便器装置40に設置(内装)されている。なお、図1図2には、給水装置1を含む便器装置40について、給水装置1およびボウル部41などの要部を模式的に図示し、便器装置40内のその他の部位は図示を省略し、図3において便器装置40における構成部を模式的に示した。
【0012】
また、図1および図2には、流水抵抗部5をブロックで図示したが、図3に示すように、便器装置40内の流水抵抗部5としては、流出側に配された止水弁45、48(切替弁)や水ポンプ43など種々あるが、これらについては図3の説明とともに後述する。
【0013】
この給水装置1は、種々の用途に用いられ、本実施形態として例示したように便器装置40や便器装置40に組み込まれる局部洗浄装置などの洗浄水の供給路に設けられている。なお、以下の説明では、給水装置1に含まれる弁装置10を図1の状態に配したものを基準として、上下方向等の方向を規定している。
【0014】
給水装置1は、弁装置10と、その弁装置10に接続される液体流入路30と、液体流出路35とを少なくとも備えている。液体流入路30には電磁弁31が配されている。この電磁弁31が制御されることにより液体が液体流入路30を流通し、弁装置10の内部空間11に流入される。
【0015】
また、液体流出路35は内部空間11に連通するように設けられている。液体流出路35の主流路36は、弁装置10の下方に、上下方向に延びるように接続され、その主流路36に上記流水抵抗部5が配されている。主流路36における流水抵抗部5よりも上流側に、下流口37aが大気開放された副流路37が分岐部38を介して分岐形成されている。
【0016】
副流路37は、分岐部38から横方向に延び、かつ下方向に傾斜しており、その下流口37aはボウル部41に通じている。図1に示すように、この副流路37の内径は主流路36の内径より小とされる。なお、この副流路37の作用については、図3の説明において後述する。
【0017】
さらに弁装置10には空気路14が形成されており、この空気路14から空気が内部空間11に流入するように形成されている。また、内部空間11には円筒状の支持部15が配されており、弁体20の弁軸21を移動可能に支持している。
【0018】
弁体20は、円柱棒状の弁軸21を備えており、その弁軸21には円盤状の鍔部22が一体形成されている。また、弁軸21には、鍔部22の下面側に所定空間を空けて円盤状の第1押さえ部23が一体形成され、鍔部22の上面側に所定空間を空けて円盤状の第2押さえ部24が一体形成されている。鍔部22と第1押さえ部23との間には、第1押さえ部23により位置決めされた円盤状の第1シールゴム25が挟み込まれ、鍔部22と第2押さえ部24との間には、第2押さえ部24により位置決めされた円盤状の第2シールゴム26が挟み込まれている。これら鍔部22、第1押さえ部23、第2押さえ部24、第1シールゴム25および第2シールゴム26は同心上に配置されている。
【0019】
第1シールゴム25の下面および第1押さえ部23の下面、つまり弁体20の液体流入路30を向く面が液体流入路30を塞ぐ閉塞面とされる。また、第2シールゴム26は空気路14側に配され、弁体20が上方に移動した際に第2シールゴム26が空気路14を閉塞する。
【0020】
弁体20の上下移動の際の停止位置を定めるために、弁装置10は上下に弁体20の弁座を備えている。すなわち、液体流入路30側では、弁体20が液体流入路30を閉塞した際に当接する第1弁座部16が液体流入口13の周方向の外側に設けられている。この第1弁座部16は上方に突出する環状体とされ、弁体20が下方に移動したときに第1シールゴム25が当接する弁座である。
【0021】
また、空気路14側では、弁体20が空気路14を閉塞した際に弁体20が当接する第2弁座部17が、空気路14の開口の外周側に設けられている。この第2弁座部17は下方に突出する環状体とされ、弁体20が上方に移動したときに第2シールゴム26が当接する弁座である。
【0022】
つぎに、本実施形態の給水装置1の動作および作用について、図1および図2を参照しながら説明する。なお、図1および図2では液体の流れを2点鎖線で示した。
【0023】
図1に示すように、電磁弁31により液体流入路30内の液体(例えば水)の流通が停止している状態では、弁体20に作用する重力により弁体20が下方向に位置し、第1シールゴム25が第1弁座部16と接触して液体流入路30を閉塞する。この状態では、液体流出路35に通じる内部空間11と、弁装置10内の流入口空間12とが弁体20により区画されている。
【0024】
この状態で、流体抵抗部5が開放されるとともに、電磁弁31により液体流入路30が開放されると、液体が液体流入路30を弁体20に向かって流れ、流入口空間12に流れ込み、第1シールゴム25の閉塞面を押圧する。
【0025】
こうして液体流入路30を通ってきた液体により、第1シールゴム25が押圧されて内部空間11の圧力均衡に変化が生じると、弁体20は第1弁座部16から押し上げられて上方向に移動する。そしてやがて第2シールゴム26が第2弁座部17と接触する(図2参照)。このとき、第2シールゴム26は鍔部22により押圧されて、空気路14が閉塞される。空気路14が閉塞された状態で、液体流入路30から内部空間11に流入した液体は、液体流出路35から外部に流出される。なお、液体流出路35での液体は、副流路37の内径が小であるため、ほとんどの液体は主流路36を流れる。
【0026】
一方、液体流入路30から内部空間11への液体の流入が止まると、内部空間11の圧力均衡の変化により、弁体20が自重により下方向に再び移動し第1シールゴム25が第1弁座部16と接触する(図1参照)。第1シールゴム25は鍔部22により押圧されて、液体流入路30が閉塞される。このとき、内部空間11は空気路14と連通しており内部空間11に外部からの空気が流入している(エアー置換される)ので、内部空間11に残された液体が液体流出路35から外部に流出される。これにより、内部空間11には液体が残留しなくなる。特に、後述する液体流出路35の副流路37の作用により、内部空間11の液体の排出が促進される。
【0027】
以上のように、本給水装置1によれば、弁装置10の内部空間11に配置された弁体20により液体流入路30または空気路14のいずれか一方が閉塞された状態を実現でき、液体の流れを制御することができる。また、液体流入路30から内部空間11への液体の流入が止まっているときには、液体流出路35から汚水等が逆流する場合であっても、液体流入路30への流入を防止することができる。
【0028】
つぎに、液体流出路35の主流路36の中途より分岐した副流路37の作用について、図1図2および図3を参照しながら説明する。図3は、給水装置1を含む便器装置40の概略構成を示す模式図である。
【0029】
便器装置40内では、弁装置10よりも液体流入側の液体流入路30には電磁弁31、水抜き栓32が配されている一方、弁装置10よりも液体流出側の液体流出路35には、熱交換器42、水ポンプ43、分岐管44が配されている。この分岐管44で分かれた一方の分岐流出路36aは、切替弁(止水弁45)を介して局部洗浄ノズル46に通じ、他方の分岐流出路36bは、オゾンデバイス47、切替弁(止水弁48)、オゾン散布ノズル49に通じている。
【0030】
オゾンデバイス47はオゾン水を生成する装置である。オゾンデバイス47で生成されたオゾン水はボウル41に散布され、さらに局部洗浄ノズルの吐水口46aにも散布され、ボウル41や吐水口46aが消毒滅菌される。
【0031】
局部洗浄またはオゾン散布の操作がなされたときには、電磁弁31と水ポンプ43が制御される。電磁弁31が開放されるとともに、水ポンプ43が作動すると、弁装置10から流出した液体(水)は液体流出路35の主流路36を通り、分岐管44を介して、局部洗浄ノズル46またはオゾン散布ノズル49へと流れていく。
【0032】
その後、電磁弁31と水ポンプ43が制御され、弁装置10からの液体の流出が停止すると、停止した水ポンプ43、止水弁45、48が流水抵抗部5となり得る。そのため、弁装置10および液体流出路35の主流路36における副流路37の分岐部38までの流路には、液体が残留しやすい状態となる。しかし、そのような滞留気味の液体は、大気開放された副流路37を流れ、ボウル部41へ排出される。
【0033】
こうして、止水直後には、弁装置10の下流側の分岐部38までの部位A(図1では部位Aをクロスハッチングで図示)の液体は副流路37を通じて流出される。そのため、その部位Aには副流路37を通じて空気が流入し空気層が形成され、その結果、液体流入側と液体流出側の水は縁切りされる。このように水が縁切りされれば、つぎに通水が再開されたときに、弁装置10内の部位Aには空気層があるため、弁装置10への流入液体が弁体20を押し上げやすくなる。このような構成により、液体流入時に弁体20が上方に押し上げられないという異常の発生を抑制することができる。
【0034】
特に、本例のように局部洗浄ノズル46やオゾン散布ノズル49を配したものではそれらの吐水口径が小さいため、液体流出路35に液体が残留しやすくなるが、副流路37の作用により水の滞留を防止することができる。ようするに、流水抵抗部5としては、運転されていない状態の水ポンプ43、止水弁45、48、小さな口径の吐水口46a、49aなど、流出側における流水を妨げる種々の部位が含まれるが、副流路37の作用により液体の滞留は解消される。
【0035】
また、副流路37は主流路36の中途(分岐部38)より横方向に延びているが、主流路36が弁装置10の下方側で、上下方向に配されているため、液体は下方に落ちていきやすい。主流路36が閉塞されていれば、液体は自ずと大気開放された副流路37へと向かうことになる。そのため、内部空間11から主流路36の分岐部38までの空間には空気層ができやすくなる。
【0036】
以上の実施形態では、弁装置10とは別体の液体流出路35が弁装置10に接続してあるが、弁装置10が分岐部38までの主流路36を一体として備えた構成としてもよく、その分岐部38に別体の副流路37を接続するようにしてもよい。また以上の実施形態では、流水抵抗部5(水ポンプ43)は電磁弁31と連動して動作しているが、時間差をもって動作するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 給水装置
5 流水抵抗部
10 弁装置
20 弁体
35 液体流出路
36 主流路
37 副流路
37a 下流口
40 便器装置
41 ボウル部


図1
図2
図3