(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】固定ユニット
(51)【国際特許分類】
F16B 21/04 20060101AFI20221223BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20221223BHJP
F16L 3/08 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
F16B21/04 H
H02G3/30
F16L3/08 D
(21)【出願番号】P 2018134730
(22)【出願日】2018-07-18
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591150270
【氏名又は名称】日本ぱちんこ部品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安田 健人
(72)【発明者】
【氏名】足立 義一
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-014081(JP,U)
【文献】実開平03-088077(JP,U)
【文献】実開昭61-160309(JP,U)
【文献】特開2018-045124(JP,A)
【文献】実開平03-121206(JP,U)
【文献】実開昭49-105899(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 21/02-21/04
F16B 19/00
H02G 3/30- 3/34
F16L 3/08- 3/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体が有する取付板部に対して線材を固定支持する固定具
と、を具備する固定ユニットであって、
前記固定具は、
前記取付板部に形成される取付孔に対して取り付けられる固定部と、
前記線材を保持する保持部と、
を備え、
前記固定部は、
軸状の基部と、
前記基部の一端部側から径方向に張り出し、前記取付板部の一方の板面に当接する当接部と、
前記基部の他端部側から径方向に突出し、前記当接部とともに前記取付板部を挟持する係合片と、
前記取付板部に係止することで、前記基部を前記取付板部に対して位置決め
し、前記基部から径方向に突出する位置決め部と、
を有し、
前記取付孔は、
前記基部が挿通される挿通孔と、
前記挿通孔と連通し、前記係合片が挿通される切り欠き孔と、
を具備し、
前記取付板部は、前記挿通
孔において前記挿通孔の周方向に沿って配列され、前記位置決め部が係止可能な係止部を複数具備する位置決め係止群を有
し、
前記位置決め係止群は、所定間隔に設けられた前記係止部の集合体であり、前記係止部が前記挿通孔の内周面において周方向に沿って配列されることを特徴とする固定
ユニット。
【請求項2】
前記保持部は、所定の間隔をおいて対向するように前記固定部から延出する一対の保持片を有し、一対の前記保持片の間に前記線材が配置されることで前記線材を保持することを特徴とする請求項1に記載の固定ユニット。
【請求項3】
一対の前記保持片の先端部には、それぞれの前記保持片を互いに連結する係合手段が設けられ、
一対の前記保持片のうち少なくともいずれかの前記保持片は、前記係合手段が一対の前記保持片を互いに連結する状態になるまで弾性変形可能な可撓性を有することを特徴とする請求項2に記載の固定ユニット。
【請求項4】
一対の前記保持片は、それぞれ対向方向に延出する爪片を有し、
一対の前記爪片の対向する先端部によって、前記線材が通過するスリット部が構成され、
前記スリット部は、対向するスリット面が、前記保持片の対向方向に対して前記基部の軸方向に直交する面内で傾斜していることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の固定ユニット。
【請求項5】
前記保持部の外側に延出して、前記保持部に巻装した前記線材の離脱を抑制する抑制部を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の固定ユニット。
【請求項6】
前記基体は、前記当接部と前記係合片とにより前記取付板部を挟持する状態で、前記取付孔の近傍において、前記固定部の回転軌跡上に位置するように前記取付板部から突出する規制部を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の固定ユニット。
【請求項7】
前記基体は、前記取付孔の近傍において、前記取付板部に対する前記保持部の回転度合を示す目盛りを有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の固定ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品から引き延ばされる配線を所定の基体に固定するために、基体に形成された取付孔に弾性力を用いて着脱する固定具が知られている。このような固定具は、変形し易いため、外部から大きな力が加えられた場合に、基体から簡単に脱落してしまう虞があった。
【0003】
そこで、このような脱落を防止するために、特許文献1のような構成が提案されている。特許文献1の固定具は、配線を保持するクランプ部と、当該クランプ部と一体化して基板の取付穴に嵌合する固定部と、を備えている。また、固定部は、円柱状のポストと、ポストの先端に設けられて一方向に延長された係合片と、ポストの基端から両外側方向に延びる一対の羽根片と、を備えている。そして、係合片を取付穴に挿通して基板の表面に沿って90°回転させることで、一対の羽根片が基板の表面に当接されて係合片とともに基板を挟持する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の固定具は、基板に対して90°回転させてロックさせる構成であるため、基板に対するクランプ部の配置状態(固定角度)が一定になってしまう。そのため、クランプ部が保持する配線の誘導方向が固定されてしまい、配線の引き回しに不具合が生じる虞がある。また、特許文献1の固定具は、配線を保持することはできても、配線の余長を調整することができないため、配線の長さの厳密な管理が必要であった。そのため、固定具等の僅かな設計変更があっても、配線の長さを調整することが困難であった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、基体に対する着脱を容易に行いつつ、線材の誘導方向を任意に選択し得るとともに、線材の余長調節を行い得る構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様の固定具は、
基体が有する取付板部に対して線材を固定支持する固定具であって、
前記取付板部に形成される取付孔に対して取り付けられる固定部と、
前記線材を保持する保持部と、
を備え、
前記固定部は、
軸状の基部と、
前記基部の一端部側から径方向に張り出し、前記取付板部の一方の板面に当接する当接部と、
前記基部の他端部側から径方向に突出し、前記当接部とともに前記取付板部を挟持する係合片と、
前記取付板部に係止することで、前記基部を前記取付板部に対して位置決めする位置決め部と、
を有し、
前記取付孔は、
前記基部が挿通される挿通孔と、
前記挿通孔と連通し、前記係合片が挿通される切り欠き孔と、
を具備し、
前記取付板部は、前記挿通孔又はその近傍において前記挿通孔の周方向に沿って配列され、前記位置決め部が係止可能な係止部を複数具備する位置決め係止群を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の第2態様の固定具は、
基体が有する取付板部に対して線材を固定支持する固定具であって、
前記取付板部に形成される取付孔に対して取り付けられる固定部と、
前記線材を保持する保持部と、
を備え、
前記固定部は、
軸状の基部と、
前記基部の一端部側から径方向に張り出し、前記取付板部の一方の板面に当接する当接部と、
前記基部の他端部側から径方向に延出し、前記当接部とともに前記取付板部を挟持する係合片と、
前記基部の周方向に沿って配列され、前記取付板部に対し位置決め可能な位置決め部を複数具備する位置決め群と、
を有し、
前記取付孔は、
前記基部が挿通される挿通孔と、
前記挿通孔と連通し、前記係合片が挿通される切り欠き孔と、
を具備し、
前記取付板部は、前記位置決め群のいずれかの位置決め部に係止することで、前記基部を前記取付板部に対して位置決めする係止部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の固定構造は、上記固定具が備える前記固定部と、
前記固定部が取り付けられる前記取付孔を有する前記取付板部と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の態様の固定具は、固定部が、軸状の基部と、基部の一端部側から径方向に延出して取付板部の一方の板面に当接する当接部と、基部の他端部側から径方向に延出して当接部とともに取付板部を挟持する係合片と、を有している。そして、係合片が切り欠き孔を通過するように基部を挿通孔に挿通し、基部を軸として取付板部に対して固定具を回転させることで、当接部と係合片とによって取付板部を挟持させて、固定具を取付板部に組み付けることができる。一方で、固定具を回転させて係合片が切り欠き孔を通過する状態として、基部を挿通孔から抜け出させることで、固定具を取付板部から外すことができる。そのため、固定具を回転させる作業のみで、基体に対する固定具の着脱を容易に行うことができる。
その上で、固定部は、取付板部における挿通孔又はその近傍において挿通孔の周方向に沿って配列される複数の係止部(位置決め係止群)に係止可能な位置決め部を有している。そのため、取付板部に対して固定具を回転させることで、位置決め部が係止する係止部が順次変わっていき、固定具の回転位置が多段階調整される。このように取付板部に対する固定具の回転位置を調整することで、保持部に保持された線材の配線方向を所望の方向に誘導することができる。これにより、固定具は、線材の誘導方向を任意に選択することができる。また、固定具の回転に伴って、線材を保持部に巻き付けることで、線材の余長の巻き取りを行うことが可能である。そのため、固定具は、線材の余長調節が可能になる。
したがって、固定具は、基体に対する着脱を容易に行いつつ、線材の誘導方向を任意に選択できるとともに、線材の余長調節を行うことができる。
【0011】
本発明の固定具は、位置決め係止群が、所定間隔に設けられた係止部の集合体であり、係止部が挿通孔の内周面において周方向に沿って配列されていてもよい。
【0012】
この構成によれば、取付板部に対する固定具の回転位置の調整を、係止部が挿通孔の内周面で周方向に沿って所定間隔で配列される簡易な構成で実現することができる。
【0013】
本発明の第2の態様の固定具は、固定部が、軸状の基部と、基部の一端部側から径方向に延出して取付板部の一方の板面に当接する当接部と、基部の他端部側から径方向に延出して当接部とともに取付板部を挟持する係合片と、を有している。そして、係合片が切り欠き孔を通過するように基部を挿通孔に挿通し、基部を軸として取付板部に対して固定具を回転させることで、当接部と係合片とによって取付板部を挟持させて、固定具を取付板部に組み付けることができる。一方で、固定具を回転させて係合片が切り欠き孔を通過する状態として、基部を挿通孔から抜け出させることで、固定具を取付板部から外すことができる。そのため、固定具を回転させる作業のみで、基体に対する固定具の着脱を容易に行うことができる。
その上で、固定部は、基部の周方向に沿って配列され、取付板部の係止部に対し位置決め可能な位置決め部を複数具備する位置決め群を有している。そのため、取付板部に対して固定具を回転させることで、係止部が係止する位置決め部が順次変わっていき、固定具の回転位置が多段階調整される。このように取付板部に対する固定具の回転位置を調整することで、保持部に保持された線材の配線方向を所望の方向に誘導することができる。これにより、固定具は、線材の誘導方向を任意に選択することができる。また、固定具の回転に伴って、線材を保持部に巻き付けることで、線材の余長の巻き取りを行うことが可能である。そのため、固定具は、線材の余長調節が可能になる。
したがって、固定具は、基体に対する着脱を容易に行いつつ、線材の誘導方向を任意に選択できるとともに、線材の余長調節を行うことができる。
【0014】
本発明の固定具は、位置決め群が、所定間隔に設けられた位置決め部の集合体であり、位置決め部が基部の周方向に沿って配列されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、取付板部に対する固定具の回転位置の調整を、位置決め部が基部の周方向に沿って所定間隔で配列される簡易な構成で実現することができる。
【0016】
本発明の固定具は、保持部が、所定の間隔をおいて対向するように固定部から延出する一対の保持片を有し、一対の保持片の間に線材が配置されることで線材を保持してもよい。
【0017】
この構成によれば、取付板部に組み付けられた固定具に対して、一対の保持片の間に線材を配置するだけで、線材を取付板部に対して固定支持することができる。
【0018】
本発明の固定具は、一対の保持片の先端部には、それぞれの保持片を互いに連結する係合手段が設けられ、一対の保持片のうち少なくともいずれかの保持片は、係合手段が一対の保持片を互いに連結する状態になるまで弾性変形可能な可撓性を有していてもよい。
【0019】
この構成によれば、一対の保持片の間に線材を配置した後、係合手段によって両保持片を互いに連結させることで、一対の保持片によって線材を離脱不能に保持することができる。特に、いずれかの保持片を相手側の保持片の方向へ弾性変形させることで、係合手段によって両保持片が連結状態となるため、保持部による線材の保持を容易に行うことができる。
【0020】
本発明の固定具は、一対の保持片が、それぞれ対向方向に延出する爪片を有していてもよい。一対の爪片の対向する先端部によって、線材が通過するスリット部が構成されていてもよい。スリット部は、対向するスリット面が、保持片の対向方向に対して基部の軸方向に直交する面内で傾斜していてもよい。
【0021】
この構成によれば、スリット部は、スリット面が保持片の対向方向に直交するような傾斜しない構成に比べて、スリット面の幅を広くすることができる。そのため、スリット部を通過して一対の保持片の間に配置された線材は、保持片の間からスリット部を介して離脱しようとしても、爪片に引っ掛かり易く、保持片の間から離脱し難くなる。
【0022】
本発明の固定具は、保持部の外側に延出して、保持部に巻装した線材の離脱を抑制する抑制部を有していてもよい。
【0023】
この構成によれば、保持部に巻装された線材が、保持部に沿って移動しようとした場合に、保持部の外側に延出する抑制部に当接させて離脱を抑制することができる。
【0024】
本発明の固定具は、基体が、当接部と係合片とにより取付板部を挟持する状態で、取付孔の近傍において、固定部の回転軌跡上に位置するように取付板部から突出する規制部を有していてもよい。
【0025】
この構成によれば、規制部が固定部の回転軌跡上に位置することで、固定具が所定の回転位置に位置する状態で、固定具が規制部に当接することで回転が規制される。そのため、固定具の回転範囲を所望の範囲に制限することができる。
【0026】
本発明の固定具は、基体が、取付孔の近傍において、取付板部に対する保持部の回転度合を示す目盛りを有していてもよい。
【0027】
この構成によれば、取付板部に対する保持部の回転度合を示す目盛りを基準にすることで、固定具を所望の回転位置に回転させ易くなる。
【0028】
本発明の固定構造は、上記固定具が備える固定部と、固定部が取り付けられる取付孔を有する取付板部と、を備えている。
【0029】
この構成によれば、固定構造は、上記固定具が奏する効果と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る固定具、基体、および線材を例示する斜視図である。
【
図2】
図2(A)は、
図1の固定具を斜め上方側から見た斜視図であり、
図2(B)は、斜め下方側から見た斜視図である。
【
図3】
図3(A)は、基体の取付孔に挿通された固定具を、基体の板面に平行な切断面で切断した状態を示す平面図であり、
図3(B)は、取付孔に組み付けられた状態を示す平面図である。
【
図4】
図4は、基体の取付孔に組み付けられた固定具を、基体の板面と直交する切断面で切断した状態を示す側面図である。
【
図5】
図5は、固定具によって基体に対して線材を固定支持する工程を説明する説明図である。
図5(A)は、基体の底面図であり、
図5(B)は、平面図である。
図5(C)は、基体の取付孔に固定具を挿通した状態を示す底面図であり、
図5(D)は、平面図である。
【
図6】
図6は、
図5に続く工程を説明する説明図である。
図6(A)は、基体に固定具を組み付けた状態を示す底面図であり、
図6(B)は、平面図である。
図6(C)は、線材を抜け止めする状態まで回転した固定具を示す底面図であり、
図6(D)は、平面図である。
【
図7】
図7は、
図6に続く工程を説明する説明図である。
図7(A)は、保持片に線材が巻き付けられた状態の固定具を示す底面図であり、
図7(B)は、平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態に係る固定具、および基体を例示する斜視図である。
【
図9】
図9(A)は、本発明の第3実施形態に係る基体に組み付けられた固定具を例示する平面図であり、
図9(B)は、本発明の第4実施形態に係る基体に組み付けられた固定具を例示する平断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第5実施形態に係る固定具、および基体を例示する斜視図である。
【
図11】
図11(A)は、本発明の第6実施形態に係る固定具を例示する斜視図であり、
図11(B)は、保持片に線材が巻き付けられた状態を例示する平面図である。
【
図12】
図12(A)は、本発明の第7実施形態に係る固定具が基体に組み付けられた状態を例示する斜視図であり、
図12(B)は、一対の保持片が係合部によって係合して線材を保持した状態を例示する平面図である。
【
図13】
図13(A)は、本発明の第8実施形態に係る固定具を例示する平面図であり、
図13(B)は、基体に組み付けられた固定具を例示する側断面図であり、
図13(C)は、一対の保持片が係合部によって係合して線材を保持した状態を例示する平面図であり、
図13(D)は、その側断面図である。
【
図14】
図14(A)は、本発明の第9実施形態に係る固定具、および基体を例示する斜視図であり、
図14(B)は、固定具と基体の係止部分を拡大して示す側断面図である。
【
図15】
図15は、本発明の第10実施形態に係る固定具と基体の係止部分を拡大して示す側断面図である。
【
図16】
図16(A)は、本発明の第11実施形態に係る固定具を例示する底面図であり、
図16(B)は、本発明の第11実施形態に係る基体を例示する平面図である。
【
図17】
図17(A)は、本発明の第12実施形態に係る固定具を例示する底面図であり、
図17(B)は、本発明の第12実施形態に係る基体を例示する平面図であり、固定具と基体の係止部分を拡大して示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る固定具を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
【0032】
図1に示す固定具10は、取付対象である基体40に対して、線材Lを着脱可能に固定支持するための道具である。基体40は、例えば、電気機器内に収容される基盤などであり、板状の取付板部41を有している。線材Lは、例えば、回路基板に電気的に接続された配線などである。固定具10は、線材Lを電気機器内などで引き回すために、線材Lを支持した状態で、取付板部41に取り付けられる。固定具10と基体40とによって、固定ユニット100が構成されている。
【0033】
固定具10は、
図2に示すように、取付板部41に形成される取付孔42(
図3、
図4参照)に対して取り付けられる固定部20と、線材L(
図1参照)を保持する保持部30と、を備えている。固定部20は、保持部30と一体的に形成されている。
【0034】
固定部20は、
図2に示すように、軸状の基部21と、取付板部41の一方の板面(上面41A(
図1参照))に当接する当接部22(
図4参照)と、当接部22とともに取付板部41を挟持する一対の係合片23(
図3、
図4参照)と、基部21を取付板部41に対して位置決めする一対の位置決め部24(
図3参照)と、を有している。なお、固定部20と取付板部41とによって、本願発明の固定構造が構成されている。
【0035】
基部21は、中空の円筒形状に形成されている。当接部22は、基部21の一端部側(
図2では上端部)から径方向(半径方向)外向きに一律に張り出してフランジ状に形成されている。また、当接部22は、基部21の中空部と連通する中心が貫通された円板形状である。一対の係合片23は、
図3に示すように、基部21の他端部側(
図2では下端部)から基部21の中心に対して対称となる位置に径方向(半径方向)に突出して形成されている。また、係合片23は、側面側および下端部側の角部が丸みを帯びた直方体形状になっている。位置決め部24は、基部21の側面において、係合片23に隣接する位置(軸方向で係合片23と重なる位置)から径方向(半径方向)に突出している。また、位置決め部24は、基部21の軸方向に沿うように、当接部22と係合片23との間に亘って半円柱形のリブ状に形成されている。
【0036】
保持部30は、
図2に示すように、所定の間隔をおいて対向するように固定部20(当接部22)から立設する一対の保持片31を有しており、一対の保持片31の間に線材Lが配置されることで線材Lを保持する。具体的には、保持片31は、当接部22の一方面(
図2では上面)から、当該一方面に直交する方向に延出している。保持片31は、他方の保持片31と対向する面(内側面)が、延出方向から見て円弧状に凹むように湾曲している。
【0037】
保持片31は、先端部において、他方の保持片31と対向する方向(内側方向)で他方の保持片31側に延出する爪片32を有している。一対の爪片32は、基部21の軸に対して対称となるように三角板状に形成されている(
図5(C)参照)。一対の爪片32の互いに対向する両先端部によって、線材Lが通過するスリット部33が形成されている。スリット部33を構成する一対の対向するスリット面34は、
図5(D)に示すように、上記対向方向に対して、基部21の軸方向に直交する面内(当接部22の一方面(
図2では上面)と平行な面内)で傾斜している。すなわち、基部21の軸方向に直交する方向(
図4では上下方向)から見て、保持片31の対向方向に対して所定の角度傾斜している。これにより、スリット部33は、スリット面34が傾斜しない構成に比べて、スリット面34の幅つまり線材Lを通過させる幅を広くすることができ、線材Lを保持した状態で線材Lが外れ難くなる。
【0038】
保持片31は、
図2に示すように、保持片31の対向方向とは反対方向に当接部22の外周位置まで突出する突出部35が保持片31の延出方向全体に亘って長手状に延びて形成されている。突出部35は、保持片31の補強をすると共に、線材Lの巻装部となっている。
【0039】
取付板部41は、
図1に示すように、固定部20が取り付けられる取付孔42が形成されている。取付孔42は、基部21が挿通される挿通孔43と、係合片23が挿通される一対の切り欠き孔44と、を具備している。挿通孔43は、断面円形の貫通孔として形成されている。切り欠き孔44は、挿通孔43と連通しており、断面略四角形の貫通孔として形成されている。一対の切り欠き孔44は、係合片23と同様に挿通孔43の中心に対して対称となる位置(
図3では、左右方向の両端部)においてそれぞれ外側に切り欠かれるように形成されている。
【0040】
取付板部41は、
図1に示すように、位置決め部24が係止可能な係止部46を複数具備する位置決め係止群45を有している。係止部46は、挿通孔43において、周方向に沿って配列されている。具体的には、位置決め係止群45は、所定間隔で連続的に設けられた係止部46の集合体であり、係止部46が挿通孔43の内周面(切り欠き孔44を除く部分)において周方向に沿って配列されている。係止部46は、開放端部が外側に広がるような凹部として形成されている。係止部46は、開放端部が隣り合う係止部46の開放端部と連続することで、外側に向かって凸状となる湾曲面43Aが連続する位置決め係止群45を構成している。このような構成では、位置決め係止群45は、挿通孔43の内周面において周方向に沿って凹凸を連続的に繰り返す形状となり、しかも湾曲面43Aが連続することから、位置決め部24の係脱がスムーズで、位置決め部24と係止部46とが係止する際のクリック感で位置決め状態が解り易い。また、成形が容易であり、十分な強度も確保することができる。
【0041】
取付板部41は、
図1に示すように、取付孔42の近傍(縁部より僅かに外側の位置)において、取付板部41に対する固定具10(具体的には保持部30)の回転度合を示す目盛り47を有している。目盛り47は、1,3,5,7,9の番号として、取付板部41の上面41Aに形成されている。目盛り47は、所定の係止部46に対応して設けられており、1,3,5,7,9の番号が取付板部41に対する固定具10の所定の回転位置を示している。なお、実施例では1,3,5,7,9の番号が付されているが、取付孔42の半周に10か所の係止部46が設けられており、固定具10を10段階の回動位置調整が可能となっている。
【0042】
次に、固定具10によって基体40に対して線材Lを固定支持する工程について説明する。
まず、
図5(A)(B)に示すように用意された基体40の取付板部41に対して、
図5(C)(D)に示すように、固定具10を取付孔42に挿通する。一対の係合片23を一対の切り欠き孔44にそれぞれ挿通するように位置合わせを行い、基部21を挿通孔43に挿通する。すると、一対の位置決め部24も一対の切り欠き孔44にそれぞれ挿入され、当接部22が取付板部41の上面41Aに当接する。そして、係合片23は、取付板部41の下面41Bよりも下方に位置するようになる。
【0043】
続いて、
図6(A)(B)に示すように、固定具10を、基部21を軸にして、取付板部41に対して時計回り(
図6(B)のように取付板部41の上面41A側から見たときの時計回り)に回転させる。具体的には、固定具10を、一方の突出部35が目盛り47の「3」の数字に隣接する位置に位置するように回転させる。このとき、一方の位置決め部24は、
図3(A)に示す切り欠き孔44内の位置から、
図3(B)に示す係止部46に係止する位置に移動する。そして、
図4に示すように当接部22と係合片23とによって取付板部41が挟持され、固定具10が取付板部41に組み付けられる。このようにして、固定具10を回転させる作業のみで、取付板部41に対する固定具10の取り付けを容易に行うことができる。続いて、線材Lを、取付板部41の上面41A側からスリット部33を介して、一対の保持片31の間に配置させる。このとき、線材Lの配線方向(長さ方向)は、上下方向で一対のスリット面34と平行になっている。このようにして、固定具10によって取付板部41に対して線材Lを保持させることができる。
【0044】
その後、
図6(C)(D)に示すように、固定具10を、さらに時計回りに回転させる。具体的には、固定具10を、一方の突出部35が目盛り47の「3」の数字から「7」の数字に隣接する位置に移動するように回転させる。このとき、一方の位置決め部24は、図示は省略するが、目盛り47の「3」の数字に隣接する係止部46から、「7」の数字に隣接する係止部46に係止するように移動する。そして、上下方向から見て一対のスリット面34が線材Lの配線方向(長さ方向)に対して傾斜して、線材Lの上方に一対の爪片32が位置しているため、線材Lが上方に移動しようとしても、両爪片32に干渉して、スリット部33を介して抜け出すことがなく、一対の保持片31の間に安定して固定保持することができる。
【0045】
続いて、
図7(A)(B)に示すように、固定具10を、さらに時計回りに回転させる。具体的には、固定具10を、他方の突出部35が目盛り47の「1」の数字に隣接する位置に位置するように回転させる。このとき、他方の位置決め部24は、目盛り47の「1」の数字に隣接する係止部46(図示略)に係止するように移動する。そして、線材Lは、一端側(
図7(B)では左側)が一方の突出部35と保持片31の外周に巻装されて固定されて保持片31の内側端部に当接しており、他端側(
図7(B)では右側)が、他方の保持片31の内側面に当接した部分を支点に時計回り方向に配線方向が誘導される。すなわち、
図7(B)では、線材Lの他端側が、目盛り47の「5」の数字を通る直線と平行になるように配線方向が誘導される。
【0046】
図7(A)(B)の状態からさらに固定具10を時計回りに回転させると、位置決め部24が係止する係止部46(図示略)が多段階的に変わっていく。そのため、固定具10を目盛り47の数字に合わせて回転させることで、線材Lの他端側の配線方向を所望の誘導方向を向くように簡単に調整することができる。また、固定具10の回転に伴って、線材Lが各突出部35に外側から当接しつつ保持部30に巻き付けられるため、線材Lの余長の巻き取りを行うことができ、線材Lの余長調節が可能になる。
【0047】
また、固定具10を取付板部41から取り外す際には、一対の係合片23が一対の切り欠き孔44にそれぞれ上下方向で重なる状態(
図5(C)(D)に示す状態)になるまで回転して戻し、一対の係合片23が一対の切り欠き孔44にそれぞれ挿通するように、基部21を挿通孔43から抜け出させる。これにより、固定具10を取付板部41から容易に取り外すことができる。
【0048】
(第1実施形態の主な効果)
本第1実施形態の固定具10は、固定部20が、軸状の基部21と、基部21の一端部側から径方向に延出して取付板部41の一方の板面に当接する当接部22と、基部21の他端部側から径方向に延出して当接部22とともに取付板部41を挟持する係合片23と、を有している。そして、係合片23が切り欠き孔44を通過するように基部21を挿通孔43に挿通し、基部21を軸として取付板部41に対して固定具10を回転させることで、当接部22と係合片23とによって取付板部41を挟持させて、固定具10を取付板部41に組み付けることができる。一方で、固定具10を逆回転させて係合片23が切り欠き孔44を通過する状態として、基部21を挿通孔43から抜け出させることで、固定具10を取付板部41から外すことができる。そのため、固定具10を回転させる作業のみで、基体40に対する固定具10の着脱を容易に行うことができる。
その上で、固定部20は、取付板部41における挿通孔43において周方向に沿って配列される複数の係止部46(位置決め係止群45)に係止可能な位置決め部24を有している。そのため、取付板部41に対して固定具10を回転させることで、位置決め部24が係止する係止部46が順次変わっていき、固定具10の回転位置が多段階調整される。このように取付板部41に対する固定具10の回転位置を調整することで、保持部30に保持された線材Lの配線方向を所望の方向に誘導することができる。これにより、固定具10は、線材Lの誘導方向を任意に選択することができる。また、固定具10の回転に伴って、線材Lを保持部30に巻き付けることで、線材Lの余長の巻き取りを行うことが可能である。そのため、固定具10は、線材Lの余長調節が可能になる。
したがって、固定具10は、基体40に対する着脱を容易に行いつつ、線材Lの誘導方向を任意に選択できるとともに、線材Lの余長調節を行うことができる。
【0049】
また、位置決め係止群45は、所定間隔で連続的に設けられた係止部46の集合体であり、係止部46が挿通孔43の内周面において周方向に沿って配列されている。
これによれば、取付板部41に対する固定具10の回転位置の調整を、係止部46が挿通孔43の内周面で周方向に沿って所定間隔で配列される簡易な構成で実現することができる。
【0050】
また、保持部30は、所定の間隔をおいて対向するように固定部20から延出する一対の保持片31を有し、一対の保持片31の間に線材Lが配置されることで線材Lを保持する。
これによれば、取付板部41に組み付けられた固定具10に対して、一対の保持片31の間に線材Lを配置するだけで、線材Lを取付板部41に対して固定支持することができる。
【0051】
また、一対の保持片31は、それぞれ対向方向に延出する爪片32を有している。一対の爪片32の対向する先端部によって、線材Lが通過するスリット部33が構成されている。スリット部33は、対向するスリット面34が、保持片31の対向方向に対して基部21の軸方向に直交する面内で傾斜している。
これによれば、スリット部33は、スリット面34が保持片31の対向方向に直交するような傾斜しない構成に比べて、スリット面34の幅を広くすることができる。そのため、スリット部33を通過して一対の保持片31の間に配置された線材Lは、保持片31の間からスリット部33を介して離脱しようとしても、爪片32に引っ掛かり易く、保持片31の間から離脱し難くなる。
【0052】
また、基体40は、取付孔42の近傍において、取付板部41に対する保持部30の回転度合を示す目盛り47を有している。
これによれば、取付板部41に対する保持部30の回転度合を示す目盛り47を基準にすることで、固定具10を所望の回転位置に回転させ易くなる。
【0053】
本第1実施形態の固定構造は、固定部20と、取付板部41と、によって構成されている。この固定構造は、固定部20が、取付板部41における挿通孔43において周方向に沿って配列される複数の係止部46(位置決め係止群45)に係止可能な位置決め部24を有している。そのため、取付板部41に対して固定具10を回転させることで、位置決め部24が係止する係止部46が順次変わっていき、固定具10の回転位置が多段階調整される。
【0054】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
第2実施形態の固定ユニット100は、取付板部41に固定具10の回転を規制する規制部241が形成されている点が主に第1実施形態の固定ユニット100と異なっている。したがって、第1実施形態と同一の部分については第1実施形態と同一の符号を付し、適宜、
図1~7を参照し、詳細な説明は省略する。
【0055】
取付板部41は、
図8に示すように、取付板部41の下面41Bにおいて、取付孔42の近傍(挿通孔43の周方向で、一方の切り欠き孔44に隣接する位置)から下方に直方体形状の規制部241が突出して形成されている。規制部241は、固定具10が取付板部41に組み付けられた状態(当接部22と係合片23とにより取付板部41を挟持する状態)で、固定部20(具体的には、係合片23)の回転軌跡上に位置するように配置されている。
【0056】
これにより、固定具10が所定の回転位置に位置する状態で、係合片23が規制部241に当接することで回転が規制される。そのため、固定具10の回転範囲を所望の範囲に制限することができる。例えば、規制部241は、目盛り47(
図1等参照)の「9」に対応する係止部46の時計回りに隣り合う係止部46(目盛り47の「10」(表示されていない数字)に相当する部分に対応する係止部46)よりも、保持片31が時計回りに回転しないような位置に形成することができる。これにより、固定具10を、目盛り47の「10」に相当する回転位置を超えて回転することを規制することができる。言い換えれば、規制部241を設けることにより、固定部20を挿通孔43に挿入して180度回転して係合片23が挿入した切り欠き孔44と反対側の切り欠き孔44に合致して、固定具10が取付孔42から外れる位置まで回転しないように規制している。
【0057】
(第2実施形態の主な効果)
本第2実施形態の固定具10は、基体40が、当接部22と係合片23とにより取付板部41を挟持する状態で、取付孔42の近傍において、係合片23の回転軌跡上に位置するように取付板部41から突出する規制部241を有している。
これによれば、規制部241が係合片23の回転軌跡上に位置することで、固定具10が所定の回転位置に位置する状態で、係合片23が規制部241に当接することで回転が規制される。そのため、固定具10の回転範囲を所望の範囲に制限することができる。
【0058】
[第3実施形態]
第3実施形態は、第2実施形態と異なる構成で、固定具10Aの回転範囲を所望の範囲に制限することができる。
図9(A)に示すように、固定具10Aに形成された被規制部322と、取付板部41に形成された規制部341と、によって固定具10の回転を規制することができる。
【0059】
取付板部41は、
図9(A)に示すように、取付板部41の上面41Aにおいて、取付孔42の近傍から上方に円柱形状の規制部341が突出形成されている。規制部341は、固定具10Aが取付板部41に組み付けられた状態で、当接部22に形成された被規制部322の回転軌跡上に位置するように配置されている。
【0060】
固定部20は、
図9(A)に示すように、当接部22の外縁部から径方向に突出して被規制部322が略直方体形状に形成されている。被規制部322は、固定部20を挿通孔43に挿入して被規制部322の回転軌跡上に位置する規制部341に被規制部322が衝止するまで固定具10Aが回転するように形成されている。
【0061】
これにより、固定具10Aは、実施形態2の固定具10と同様に、固定具10Aが所定の回転位置に位置する状態で、被規制部322が規制部341に当接することで回転が規制される。
【0062】
[第4実施形態]
第4実施形態は、第2、第3実施形態と異なる構成で、固定具10の回転範囲を所望の範囲に制限する。
図9(B)に示すように、取付板部41に規制部441を形成することによって、固定具10の回転を規制することができる。
【0063】
取付板部41は、
図9(B)に示すように、挿通孔43の内周面において、一方の切り欠き孔44に隣接する位置に規制部441が形成されている。規制部441は、挿通孔43の内周面において、周方向に沿って複数の係止部46とともに配列されており、先端の凸状の湾曲面が基部21の外周に略接触するように突出して形成されている。また、規制部441は、固定具10が取付板部41に組み付けられた状態で、固定具10の位置決め部24の回転軌跡上に位置するように形成されている。
【0064】
これにより、固定具10は、実施形態2の固定具と同様に、固定具10が所定の回転位置に位置する状態で、位置決め部24が規制部441に当接することで回転が規制される。
【0065】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。
第1実施形態の固定具10は、固定部20が一対の係合片23、および一対の位置決め部24を有していたが、第5実施形態の固定具10Bは、
図10に示すように、固定部20が3つの係合片523、および3つの位置決め部524を有する構成である。
【0066】
3つの係合片523は、
図10に示すように、基部21の外周面において、それぞれ同じ間隔(基部21の周方向で120°間隔)で形成されている。同様に、3つの位置決め部524も、基部21の外周面において、それぞれ同じ間隔(基部21の周方向で120°間隔)で形成されている。また、取付板部41は、3つの係合片523に対応して、3つの切り欠き孔544が形成されている。このような構成によって、固定具10Bを取付板部41に対してがたつきがなく安定した状態で強固に組み付けることができる。
【0067】
[第6実施形態]
次に、第6実施形態について説明する。
第6実施形態の固定具10Cは、保持部30に巻装した線材Lの離脱を抑制する抑制部631が形成されている点が主に第1実施形態の固定具10と異なっている。したがって、第1実施形態と同一の部分については第1実施形態と同一の符号を付し、適宜、
図1~7を参照し、詳細な説明は省略する。
【0068】
保持部30は、
図11に示すように、保持片31の先端部において、爪片32とは反対側の外周に抑制部631が延出形成されている。抑制部631は、側面の角部が丸みを帯びた直方体形状である。
【0069】
図11(B)に示すように、線材Lを保持した状態の固定具10Cを取付板部41に対して回転させることによって、線材Lは、保持片31の外周面及び突出部35に巻装され、保持部30の周りに巻き回されていくことになる。これにより、保持部30に巻装された線材Lが、保持部30に沿って上方に移動しようとした場合に、保持部30の外側に延出する抑制部631に当接して離脱が抑制される。なお、抑制部631は¬状に形成して、線材Lがより離脱し難いようにしてもよい。
【0070】
(第6実施形態の主な効果)
本第6実施形態の固定具10Cは、保持部30の先端部において外側に延出して、保持部30に巻装した線材Lの離脱を抑制する抑制部631を有している。
これによれば、保持部30に巻装された線材Lが、保持部30に沿って移動しようとした場合に、保持部30の外側に延出する抑制部631に当接させて離脱を抑制し、線材Lの余長調整を確実に維持することができる。
【0071】
[第7実施形態]
次に、第7実施形態について説明する。
第7実施形態の固定具10Dは、一対の保持片731を互いに連結する係合手段としての係合部736が設けられている点が主に第1実施形態の固定具10と異なっている。したがって、第1実施形態と同一の部分については第1実施形態と同一の符号を付し、適宜、
図1~7を参照し、詳細な説明は省略する。
【0072】
第7実施形態の一対の保持片731は、
図12に示すように、それぞれ対向位置にない構成(平行で僅かにずれている構成)である。一対の保持片731の先端部には、それぞれ爪片732が内向き方向に延出され、保持片731を互いに連結する係合部736が設けられている。係合部736は、一対の保持片731にそれぞれ形成された凹部737と凸部738によって構成されている。凸部738は、対向する爪片732における近接側の縁部に形成され、凹部737は凸部に隣接(先端よりも僅かに基端寄りの位置)して切り欠くように形成されている。また、保持片731は、弾性変形可能な可撓性を有している。保持片731は、
図12(B)に示すように、爪片732よりも幅狭に形成されており、撓み変形し易くなっている。
【0073】
次に、保持部30によって線材Lを保持させる工程について説明する。
図12(A)に示す状態(保持片731が弾性変形していない自由状態)において、線材Lを、スリット部733を介して、一対の爪片732の間に配置させる。このとき、保持片731が弾性変形可能な可撓性を有していることから、複数の線材Lを纏めてスリット部733を介して保持させることができる。その後、
図12(A)に示す矢印のように、それぞれの保持片731を他方の保持片731に向かう方向へ弾性変形させ、それぞれの凹部737と凸部738を互いに係合させる。これにより、両保持片731を互いに連結させることができ、一対の保持片731によって線材Lを離脱不能に保持することができる。なお、いずれか一方の保持片731を他方の保持片731に向かう方向へ弾性変形させて、それぞれの凹部737と凸部738を係合させてもよい。このように、少なくともいずれか一方の保持片731を他方の保持片731に向かって弾性変形させることで、両保持片731を容易に連結状態にできるため、保持部30による線材Lの抜脱を防止して確実に保持することができる。
【0074】
(第7実施形態の主な効果)
本第7実施形態の固定具10Dは、一対の保持片731の先端部に、それぞれの保持片731を互いに連結する係合部736が設けられている。また、一対の保持片731は、係合部736が一対の保持片731を互いに連結する状態になるまで弾性変形可能な可撓性を有している。
これによれば、一対の保持片731の間に線材Lを配置した後、係合部736によって両保持片731を互いに連結させることで、一対の保持片731によって線材Lを離脱不能に保持することができる。特に、いずれかの保持片731を相手側の保持片731の方向へ弾性変形させることで、係合部736によって両保持片731が連結状態となるため、保持部30による線材Lの保持を容易に行うことができる。
【0075】
[第8実施形態]
固定具10Eは、第7実施形態と異なる構成の係合手段を備えていてもよい。第8実施形態の係合手段としての係合部836は、
図13に示すように、一方の爪片832の凸部837と、他方の爪片832の凹部838と、によって構成されている。凸部837は、一方の爪片832の先端部の下面(固定部20側の面)において下方に半球状に突出している。凹部838は、他方の爪片832の先端部の上面(固定部20とは反対側の面)において下方に断面円形で凹んで形成されている。また、
図13(B)に示すように凹部838が形成された爪片832は、凸部837が形成された爪片832より先端が僅かに下傾して下方に位置しており、爪片832の係合時に凸部837が形成された爪片832が凹部838が形成された爪片832の下方に入り込み易くなっている。なお、保持片831は、弾性変形可能な可撓性を有している。
【0076】
次に、保持部30によって線材Lを保持させる工程について説明する。
図13(A)(B)に示す状態(保持片831が弾性変形していない自由状態)において、線材Lを、スリット部833を介して、一対の保持片831の間に配置させる。その後、
図13(C)(D)に示す矢印のように、それぞれの保持片831を他方の保持片831に向かう方向へ弾性変形させ、爪片832が重なるようにして凸部837と凹部838を嵌め合わせる。このように、第7実施形態と同様に、両保持片831を互いに連結させることができ、一対の保持片831によって線材Lを離脱不能に保持することができる。
【0077】
[第9実施形態]
次に、第9実施形態について説明する。
第9実施形態の固定具10Fは、位置決め部、および位置決め係止群の構成が主に第1実施形態の固定具10と異なっている。したがって、第1実施形態と同一の部分については第1実施形態と同一の符号を付し、適宜、
図1~7を参照し、詳細な説明は省略する。
【0078】
固定部20は、
図14に示すように、位置決め部924を有している。位置決め部924は、係合片23の上面(当接部22側の面)において上方に僅かに突出する半球状の突起である。
【0079】
取付板部41は、
図14に示すように、取付板部41の下面41Bにおいて、位置決め部924が係止可能な係止部946を複数具備する位置決め係止群945を有している。係止部946は、挿通孔43の縁部に周方向に沿って配列されている。具体的には、位置決め係止群945は、所定間隔で連続的に設けられた係止部946の集合体である。係止部946は、位置決め部924の突起が嵌まる上方に凹む円形の凹部である。なお、係止部946は、取付板部41を貫通する複数の穴を挿通孔43の縁部に周方向に沿って設けるような構成であってもよい。
【0080】
固定具10Fは、取付孔42に挿通された後、取付板部41に対して回転することで、
図14(B)に示すように、位置決め部924がいずれかの係止部946に入り込んで係止する。そして、取付板部41に対して固定具10Fを回転させることで、位置決め部924が係止する係止部946が順次変わっていき、固定具10Fの回転位置が多段階調整される。したがって、第9実施形態の固定具10Fは、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0081】
[第10実施形態]
第10実施形態の固定具10Gは、第9実施形態と異なる構成の位置決め部、および位置決め係止群を備えている。固定部20は、
図15に示すように、位置決め部1024を有している。位置決め部1024は、係合片23を貫通する断面円形の孔として形成されている。
【0082】
取付板部41は、
図15に示すように、位置決め部1024が係止可能な係止部1046を複数具備する位置決め係止群1045を有している。係止部1046は、取付板部41の下面41Bにおいて、挿通孔43の縁部に周方向に沿って所定間隔で連続的に配列されている。係止部1046は、下方に僅かに突出する半球状の突起である。
【0083】
このような構成によっても、取付板部41に対して固定具10を回転させることで、位置決め部1024が係止する係止部1046が順次変わっていき、固定具10Gの回転位置が多段階調整される。
【0084】
[第11実施形態]
次に、第11実施形態について説明する。
第1実施形態では、固定具10が位置決め部24を備え、基体40が位置決め係止群45を備える構成であったが、
図16に示すように、固定具10Hが位置決め群1125を備え、基体40が係止部1145を備える構成であってもよい。
【0085】
固定部20は、
図16(A)に示すように、位置決め群1125を有している。位置決め群1125は、取付板部41に対し位置決め可能な位置決め部1126を複数具備している。位置決め部1126は、基部21の外周面において、周方向に沿って配列されている。位置決め群1125は、所定間隔で連続的に設けられた位置決め部1126の集合体である。位置決め部1126は、半円柱形のリブ状凸部として形成され、隣り合う位置決め部1126が連続することで、円弧面が波状に連続することになり係止部1145との係脱がスムーズで、位置決め部1126と係止部1145とが係止する際のクリック感で位置決め状態が解り易い。このような構成では、位置決め群1125は、基部21の外周面において周方向に沿って凹凸を繰り返す形状となり、成形が容易な形状であり、十分な強度も確保することができる。
【0086】
取付板部41は、
図16(B)に示すように、位置決め群1125が係止可能な4つの係止部1145を有している。係止部1145は、挿通孔43の内周面において、切り欠き孔44に隣接する位置に形成されている。係止部1145は、一対の突起部によって構成され、この一対の突起部の間の凹部に、位置決め部1126が入り込んで係止可能になっている。
【0087】
固定具10Hは、取付孔42に挿通された後、取付板部41に対して回転することで、いずれかの位置決め部1126が係止部1145に入り込んで係止する。そして、取付板部41に対して固定具10Hを回転させることで、係止部1145が係止する位置決め部1126が順次変わっていき、固定具10Hの回転位置が多段階調整される。したがって、第11実施形態の固定具10Hは、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0088】
(第11実施形態の主な効果)
本第11実施形態の固定具10Hは、取付板部41の取付孔42に対し係止部1145と係止して位置決め可能な複数の位置決め部1126が、基部21の周方向に沿って連続的に配列される位置決め群1125を有している。そのため、取付板部41に対して固定具10Hを回転させることで、係止部1145が係止する位置決め部1126が順次変わっていき、固定具10Hの回転位置が多段階調整される。このように取付板部41に対する固定具10Hの回転位置を調整することで、保持部30に保持された線材Lの配線方向を所望の方向に誘導することができる。これにより、固定具10Hは、線材Lの誘導方向を任意に選択することができる。また、固定具10Hの回転に伴って、線材Lを保持部30に巻き付けることで、線材Lの余長の巻き取りを行うことが可能である。そのため、固定具10Hは、線材Lの余長調節が可能になる。
したがって、固定具10Hは、基体40に対する着脱を容易に行いつつ、線材Lの誘導方向を任意に選択できるとともに、線材Lの余長調節を行うことができる。
【0089】
また、位置決め群1125は、所定間隔に設けられた位置決め部1126の集合体であり位置決め部1126が基部21の周方向に沿って配列されている。
これによれば、取付板部41に対する固定具10Hの回転位置の調整を、位置決め部1126が基部21の周方向に沿って所定間隔で配列される簡易な構成で実現することができる。
【0090】
[第12実施形態]
第12実施形態の固定具10Iは、第11実施形態と異なる構成の位置決め群、および係止部を備える構成である。固定部20は、
図17(A)に示すように、位置決め群1225を有している。位置決め群1225は、取付板部41に対し位置決め可能な位置決め部1226を複数具備している。位置決め部1226は、当接部22の下面(基部21側の面)において、周方向に沿って所定間隔で連続的に配列されている。位置決め部1226は、上方に凹む円形の凹部である。
【0091】
取付板部41は、
図17(B)に示すように、位置決め群1225が係止可能な一対の係止部1245を有している。係止部1245は、取付板部41の上面41Aにおいて、挿通孔43の縁部に形成されている。また、一対の係止部1245は、挿通孔43を挟む位置に形成されている。係止部1245は、
図17(C)に示すように、上方に僅かに突出する半球状の突起である。この係止部1245は、位置決め状態ではいずれかの位置決め部1226に入り込んで係止可能になっている。そのため、固定具10I(当接部22)と基体40(取付板部41)とはがたつきを起こすことなく位置決めされる。
【0092】
このような構成によっても、取付板部41に対して固定具10Iを回転させることで、係止部1245が係止する位置決め部1226が順次変わっていき、固定具10Iの回転位置が多段階調整される。
【0093】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0094】
上述した実施形態において、保持部30は、一対の保持片によって線材Lを保持する構成であったが、その他の構成によって線材Lを保持してもよい。例えば、保持部は、上方にコ字状に開口するベース部と、このベース部にヒンジ結合されるカバー部と、によって構成されるクランプ構造を有していてもよい。
【0095】
上記第1~10実施形態では、固定部20が一対の係合片、および一対の位置決め部(第5実施形態ではそれぞれ3つ)を有していたが、1つや、4つ以上の数を設けてもよい。また、係合片と位置決め部の数は異なっていてもよい。同様に、上記第11,12実施形態において、位置決め部、および係止部の数がその他の数であってもよい。また、固定部に位置決め部を複数具備する位置決め群を設け、取付板部に係止部を複数具備する位置決め係止群を設けるようにして、位置決め群と位置決め係止群が係止するようにしてもよい。また、位置決め群または位置決め係止群を鋸歯状に形成し、固定具が一方向のみ回転できるようにしてもよい。これにより、固定具に巻装された線材Lの余長が巻き戻されることがなく、確実に線材の余長調節を行うことができる。固定具を外す際は、係合片が次の切欠き孔まで回転させた時点で取り外しが可能となる。
【0096】
上述した実施形態において、保持部30が1本の線材Lを保持する例を示したが、複数本の束の線材を保持する構成であってもよい。なお、線材Lとして電気的に接続された配線を例に示したが、基体に引き回すワイヤーやアンテナ線等であってもよい。
【符号の説明】
【0097】
10,10A~10I…固定具
20…固定部
21…基部
22…当接部
23,523…係合片
24,924,1024…位置決め部
30…保持部
31…保持片
32,732,832…爪片
33…スリット部
34…スリット面
40…基体
41…取付板部
42…取付孔
43…挿通孔
44,544…切り欠き孔
45,945,1045…位置決め係止群
46,946,1046…係止部
47…目盛り
241,341,441…規制部
631…抑制部
736,836…係合部(係合手段)
1125,1225…位置決め群
1126,1226…位置決め部
1145,1245…係止部
L…線材